説明

形状測定装置

【課題】測定対象点に測定子を確実に接触させて被測定物の形状を測定することができる形状測定装置の提供。
【解決手段】三次元測定機1は、被測定物を測定するための球状の測定子を有するプローブ21と、プローブ21を保持するとともに、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22を制御するモーションコントローラ3とを備える。モーションコントローラ3は、測定子の中心位置と、測定子の半径と、測定子の振れ量とに基づいて、被測定物の表面と、測定子との接触点の位置を算出して取得する接触点取得部33と、接触点取得部33にて取得される接触点の位置に基づいて、移動機構22にてプローブ21を移動させるための位置指令値を算出する移動指令部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物に接触する測定子を有し、測定子を一定の範囲内で移動可能に構成されるプローブと、プローブを移動させる移動機構と、移動機構を制御する制御装置とを備え、測定子を被測定物に押し込んだ状態で被測定物の表面に倣って測定子を移動させることによって被測定物の形状を測定する形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の三次元測定機(形状測定装置)では、モーションコントローラ(制御装置)は、測定子を被測定物に押し込んだ状態で被測定物の表面に倣って測定子を移動させるための速度ベクトルを生成する自律倣いベクトル生成部を備えている。
【0003】
図4は、円錐台状の被測定物110の表面に倣って測定子100を移動させている状態を示す図である。
自律倣いベクトル生成部では、図4に示すように、被測定物110の中心軸をZ軸とし、Z軸に直交する2軸をX軸、及びY軸とした被測定物110の形状を測定するための座標系を設定している。以下では、Z軸方向、すなわち被測定物110の高さ方向における座標値をZで一定とする拘束平面S(図4中二点鎖線)内において、被測定物110の表面に倣って測定子100を移動させることによって、Z軸座標値Zにおける被測定物110の形状を測定する場合について説明する。なお、図4では、測定対象となる点(以下、測定対象点とする)の軌跡LSを二点鎖線で示している。また、図4では、図面を簡略化するため、前述したZ軸座標値Zの他、後述する数式内で用いられる一部の符号を省略している。
【0004】
自律倣いベクトル生成部は、測定子100を被測定物110に押し込む方向、言い換えると、測定子100を被測定物110に押し込んだ状態としたときの測定子100の振れ方向(以下、振れ方向とする)を、被測定物110の表面と、測定子100との接触点における法線方向であるとして、以下の式(1)に示すように、倣いプローブの進行方向に係る速度ベクトルVを生成する。
【0005】
【数1】

【0006】
ここで、Vは、進行方向の速度を制御するためのパラメータであり、例えば、振れ方向、または高さ方向の目標値からの偏差が大きくなると、Vは小さくなるように設定される。また、ベクトルPは、ベクトルPの単位ベクトルであり、以下の式(2),(3)によって求められる。
【0007】
【数2】

【0008】
なお、前述した式(3)において、演算子×は、ベクトルの外積を示している。したがって、ベクトルPは、測定子100の振れ量に基づくベクトルEと、Z軸方向の単位ベクトルZとの外積である。
【0009】
また、自律倣いベクトル生成部は、以下の式(4)に示すように、振れ方向に係る速度ベクトルVを生成する。
【0010】
【数3】

【0011】
ここで、Vは、振れ方向の速度を制御するためのパラメータである。また、Eは、振れ方向の目標値となる倣いプローブの基準振れ量である。
さらに、ベクトルEは、ベクトルEの単位ベクトルであり、以下の式(5)によって求められる。
【0012】
【数4】

【0013】
さらに、自律倣いベクトル生成部は、以下の式(6)に示すように、倣いプローブの高さ方向に係る速度ベクトルVを生成する。
【0014】
【数5】

【0015】
ここで、Vは、高さ方向の速度を制御するためのパラメータである。また、Cは、測定子100の中心位置のZ軸座標値であり、Zは、高さ方向の目標値となる拘束平面SのZ軸座標値である。
さらに、ベクトルHは、Z軸方向における大きさが1となる被測定物110の表面と平行なベクトルであり、以下の式(7),(8)によって求められる。
【0016】
【数6】

【0017】
なお、前述した式(7)において、演算子(,)は、ベクトルの内積を示している。したがって、ベクトルHは、ベクトルHと、Z軸方向の単位ベクトルZとの内積でベクトルHを除したものであり、ベクトルHは、ベクトルPと、ベクトルEとの外積である。
【0018】
そして、自律倣いベクトル生成部は、以下の式(9)に示すように、各速度ベクトルV,V,Vを合成することによって、被測定物110の表面に倣って測定子100を移動させるための倣い方向に係る速度ベクトルVを生成している。
【0019】
【数7】

【0020】
モーションコントローラは、自律倣いベクトル生成部にて生成される速度ベクトルVに基づいて、被測定物110の表面に倣って測定子100を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2005−345123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、特許文献1に記載の三次元測定機では、前述した式(6)に示すように、高さ方向の目標値となる拘束平面SのZ軸座標値Zと、測定子100の中心位置のZ軸座標値Cとの差に基づいて、倣いプローブの高さ方向に係る速度ベクトルVを生成しているので、被測定物110の表面と、測定子100との接触点の位置は、拘束平面S上には存在しない場合がある。
【0023】
図5は、円錐状の被測定物120の表面に倣って測定子100を移動させている状態を示す図である。
具体的に、モーションコントローラは、拘束平面SのZ軸座標値Zと、測定子100の中心位置CのZ軸座標値Cとの差に基づいて、倣いプローブの高さ方向に係る速度ベクトルVを生成しているので、図5に示すように、測定子100の中心位置Cを拘束平面S上で移動させることで被測定物120の表面に倣って測定子100を移動させる。ここで、円錐状の被測定物120の表面は、Z軸に対して傾斜しているので、被測定物110の表面と、測定子100との接触点Aの位置は、拘束平面S上には存在しない。したがって、三次元測定機は、接触点Aの軌跡LA(図5中実線)における被測定物120の形状を測定することとなり、測定対象点の軌跡LS(図5中二点鎖線)における被測定物120の形状を測定することができない。
【0024】
図6は、円柱状の被測定物130の表面に倣って測定子100を移動させている状態を示す図である。
また、図6に示すように、被測定物130の表面がZ軸に対して傾斜していない円柱状の被測定物130を測定する場合であっても、拘束平面SがZ軸に対して傾斜している場合には、三次元測定機は、接触点Aの軌跡LA(図6中実線)における被測定物130の形状を測定することとなり、測定対象点の軌跡LS(図6中二点鎖線)における被測定物130の形状を測定することができない。
すなわち、特許文献1に記載の三次元測定機では、測定対象点に測定子を接触させて被測定物の形状を測定することができない場合があるという問題がある。
【0025】
本発明の目的は、測定対象点に測定子を確実に接触させて被測定物の形状を測定することができる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の形状測定装置は、被測定物に接触する測定子を有し、前記測定子を一定の範囲内で移動可能に構成されるプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置とを備え、前記測定子を前記被測定物に押し込んだ状態で前記被測定物の表面に倣って前記測定子を移動させることによって前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、前記制御装置は、前記被測定物の表面と、前記測定子との接触点の位置を取得する接触点取得部と、前記接触点の位置に基づいて、前記移動機構にて前記プローブを移動させるための位置指令値を算出する移動指令部とを備えることを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、形状測定装置は、接触点取得部にて取得される接触点の位置に基づいて、移動機構にてプローブを移動させるための位置指令値を算出する移動指令部を備えるので、測定対象点に測定子を確実に接触させて被測定物の形状を測定することができる。
【0028】
本発明では、前記測定子は、球状とされ、前記接触点取得部は、前記測定子の中心位置と、前記測定子の半径と、前記接触点における法線方向とに基づいて、前記接触点の位置を算出して取得することが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、接触点取得部は、接触点の位置を算出して取得することができるので、前述した形状測定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
本発明では、前記接触点取得部は、前記接触点における法線方向を前記測定子の振れ量に基づいて算出することが好ましい。
【0031】
ここで、接触点における法線方向は、測定子を被測定物に押し込んだ状態としたときの測定子の振れ方向であると考えることができる。また、測定子の振れ方向は、測定子の振れ量に基づいて算出することができる。
したがって、本発明によれば、接触点取得部は、接触点における法線方向を測定子の振れ量に基づいて算出するので、従来の形状測定装置と同様の構成で接触点の位置を取得することができる。
【0032】
本発明では、前記制御装置は、前記移動機構の移動量と、前記接触点の位置とに基づいて測定値を算出する測定値算出部を備えることが好ましい。
【0033】
ここで、特許文献1に記載の三次元測定機のように、測定子の中心位置に基づいて、被測定物の表面に倣って測定子を移動させることによって被測定物の形状を測定する場合には、三次元測定機は、測定子の中心位置を測定値として取得し、この測定値を測定子の半径を用いて補正している。
本発明によれば、形状測定装置は、移動機構の移動量と、接触点取得部にて取得される接触点の位置とに基づいて測定値を算出する測定値算出部を備えるので、補正することなく測定値を取得することができ、測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元測定機を示す全体模式図。
【図2】前記実施形態における三次元測定機の概略構成を示すブロック図。
【図3】前記実施形態における円錐状の被測定物の表面に倣って測定子を移動させている状態を示す図。
【図4】円錐台状の被測定物の表面に倣って測定子を移動させている状態を示す図。
【図5】円錐状の被測定物の表面に倣って測定子を移動させている状態を示す図。
【図6】円柱状の被測定物の表面に倣って測定子を移動させている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機1を示す全体模式図である。図2は、三次元測定機1の概略構成を示すブロック図である。なお、図1では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸、及びY軸として説明する。
【0036】
形状測定装置としての三次元測定機1は、図1に示すように、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2の駆動制御を実行するモーションコントローラ3と、操作レバー等を介してモーションコントローラ3に指令を与え、三次元測定機本体2を手動で操作するための操作手段4と、モーションコントローラ3に所定の指令を与えるとともに、三次元測定機本体2上に設置された被測定物Wの形状解析等の演算処理を実行するホストコンピュータ5と、ホストコンピュータ5に接続される入力手段61、及び出力手段62とを備える。なお、入力手段61は、三次元測定機1における測定条件等をホストコンピュータ5に入力するものであり、出力手段62は、三次元測定機1による測定結果を出力するものである。また、本実施形態では、制御装置は、モーションコントローラ3と、ホストコンピュータ5とで構成されている。
【0037】
三次元測定機本体2は、被測定物Wを測定するための球状の測定子211Aを有するプローブ21と、プローブ21を保持するとともに、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22が立設される定盤23とを備える。
プローブ21は、測定子211Aを先端側(−Z軸方向側)に有するスタイラス211と、スタイラス211の基端側(+Z軸方向側)を支持する支持機構212とを備える。
【0038】
支持機構212は、スタイラス211をX,Y,Z軸の各軸方向に付勢することで所定位置に位置決めするように支持するとともに、外力が加わった場合、すなわち測定子211Aが被測定物Wに当接した場合には、スタイラス211を一定の範囲内でX,Y,Z軸の各軸方向に移動可能としている。すなわち、支持機構212は、測定子211Aを一定の範囲内で移動可能としている。
この支持機構212は、図2に示すように、スタイラス211の各軸方向の位置を検出するためのX軸プローブセンサ212X、Y軸プローブセンサ212Y、及びZ軸プローブセンサ212Zを備える。なお、各プローブセンサ212X,212Y,212Zは、スタイラス211の各軸方向の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。
【0039】
移動機構22は、プローブ21を保持するとともに、プローブ21のスライド移動を可能とするスライド機構24と、スライド機構24を駆動することでプローブ21を移動させる駆動機構25とを備える。
スライド機構24は、定盤23におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる2つのコラム241と、各コラム241にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム242と、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム242上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるスライダ243と、スライダ243の内部に挿入されるとともに、スライダ243の内部をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるラム244とを備える。
【0040】
駆動機構25は、図1、及び図2に示すように、各コラム241のうち、+X軸方向側のコラム241を支持するとともに、Y軸方向に沿ってスライド移動させるY軸駆動部251Yと、ビーム242上をスライドさせてスライダ243をX軸方向に沿って移動させるX軸駆動部251X(図1において図示略)と、スライダ243の内部をスライドさせてラム244をZ軸方向に沿って移動させるZ軸駆動部251Z(図1において図示略)とを備える。
【0041】
X軸駆動部251X、Y軸駆動部251Y、及びZ軸駆動部251Zには、図2に示すように、スライダ243、各コラム241、及びラム244の各軸方向の位置を検出するためのX軸スケールセンサ252X、Y軸スケールセンサ252Y、及びZ軸スケールセンサ252Zがそれぞれ設けられている。なお、各スケールセンサ252X,252Y,252Zは、スライダ243、各コラム241、及びラム244の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。
【0042】
モーションコントローラ3は、図2に示すように、プローブ21を移動させるための位置指令値を算出する移動指令部31と、移動指令部31にて算出される位置指令値に基づいて、駆動機構25を制御してプローブ21を移動させる駆動制御部32と、被測定物Wの表面と、測定子211Aとの接触点の位置を取得する接触点取得部33と、各スケールセンサ252X,252Y,252Z、及び各プローブセンサ212X,212Y,212Zから出力されるパルス信号を計数するカウンタ部34とを備える。
【0043】
このカウンタ部34は、各スケールセンサ252X,252Y,252Zから出力されるパルス信号をカウントしてスライド機構24の移動量(S、S、S)を計測するスケールカウンタ341と、各プローブセンサ212X,212Y,212Zから出力されるパルス信号をカウントしてスタイラス211の移動量、すなわち測定子211Aの振れ量(E、E、E)を計測するプローブカウンタ342とを備える。なお、スライド機構24の移動量は、支持機構212内におけるスタイラス211の移動が全く生じていない場合、すなわち測定子211Aの振れ量が0の場合における測定子211Aの中心位置を示すように調整されている。
【0044】
移動指令部31は、操作手段4、またはホストコンピュータ5からの指令に基づいて、測定子211Aを被測定物Wに押し込んだ状態で被測定物Wの表面に倣って測定子211Aを移動させるための位置指令値を算出する。具体的に、移動指令部31は、前述した式(1)〜(5)と、前述した式(6)に代えて用いる以下の式(10)と、前述した式(7)〜(9)とに基づいて、速度ベクトルVを生成し、この速度ベクトルVから位置指令値を算出する。
【0045】
【数8】

【0046】
ここで、前述した式(10)において、Aは、接触点取得部33にて取得される接触点AのZ軸座標値である。以下、接触点取得部33による接触点Aの取得方法について、前述した被測定物120を例示して説明する。
【0047】
図3は、円錐状の被測定物120の表面に倣って測定子211Aを移動させている状態を示す図である。
測定子211Aは、球状とされているので、図3に示すように、被測定物120の表面と、測定子211Aとの接触点Aの位置は、測定子211Aの中心位置Cと、測定子211Aの半径rと、接触点Aにおける法線方向とに基づいて算出することができる。
また、接触点Aにおける法線方向は、測定子211Aを被測定物120に押し込んだ状態としたときの測定子211Aの振れ方向であると考えることができる。そして、測定子211Aの振れ方向は、測定子211Aの振れ量(E、E、E)に基づいて算出することができる。
【0048】
したがって、本実施形態では、接触点取得部33は、接触点Aにおける法線方向を測定子211Aの振れ量に基づいて算出し、接触点Aの位置を、測定子211Aの中心位置Cと、測定子211Aの半径rと、接触点Aにおける法線方向とに基づいて算出する。
なお、測定子211Aと、被測定物120との摩擦によって、接触点Aにおける法線方向は、測定子211Aの振れ方向であると考えることができなくなる場合がある。そこで、本実施形態では、特開昭63−131016に記載の発明を利用することによって、測定子211Aと、被測定物120との摩擦による影響を低減させている。
【0049】
具体的に、被測定物120の中心軸をZ軸とし、Z軸に直交する2軸をX軸、及びY軸とした被測定物120の形状を測定するための座標系を設定し、測定子211Aの中心位置Cを示すスライド機構24の移動量に基づくベクトルをCとし、測定子211Aの振れ量に基づくベクトルをEとし、接触点Aの位置を示すベクトルをAとすると、接触点取得部33は、以下の式(11)に基づいて、接触点Aの位置を算出して取得する。
【0050】
【数9】

【0051】
ホストコンピュータ5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備えて構成され、モーションコントローラ3に所定の指令を与えることで三次元測定機本体2を制御するものであり、データ取得部51と、測定値算出部52と、形状解析部53とを備える。
データ取得部51は、スケールカウンタ341にて計測されたスライド機構24の移動量と、接触点取得部33にて取得された接触点Aの位置とを所定のサンプリング間隔で取得する。
測定値算出部52は、データ取得部51にて取得されたスライド機構24の移動量、及び接触点Aの位置とに基づいて測定値を算出する。
形状解析部53は、測定値算出部52にて算出された測定値に基づいて被測定物Wの表面形状データを算出し、算出された被測定物Wの表面形状データの誤差や歪みなどを求める形状解析を行う。
【0052】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)三次元測定機1は、接触点取得部33にて取得される接触点の位置に基づいて、移動機構22にてプローブ21を移動させるための位置指令値を算出する移動指令部31を備えるので、測定対象点に測定子211Aを確実に接触させて被測定物Wの形状を測定することができる。
(2)接触点取得部33は、接触点Aにおける法線方向を測定子211Aの振れ量に基づいて算出するので、従来の形状測定装置と同様の構成で接触点Aの位置を取得することができる。
(3)三次元測定機1は、移動機構22の移動量と、接触点取得部33にて取得される接触点の位置とに基づいて測定値を算出する測定値算出部52を備えるので、補正することなく測定値を取得することができ、測定時間を短縮することができる。
【0053】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、接触点取得部33は、接触点Aにおける法線方向を測定子211Aの振れ量に基づいて算出し、接触点Aの位置を、測定子211Aの中心位置Cと、測定子211Aの半径rと、接触点Aにおける法線方向とに基づいて算出していた。これに対して、例えば、接触点取得部は、センサを用いて接触点における法線方向を検出し、接触点の位置を、測定子の中心位置と、測定子の半径と、接触点における法線方向とに基づいて算出してもよい。また、例えば、接触点取得部は、センサを用いて直接的に接触点の位置を検出してもよい。要するに、接触点取得部は、接触点の位置を取得するように構成されていればよい。
前記実施形態では、測定子211Aは、球状とされていたが、半球状などの他の形状であってもよい。
【0054】
前記実施形態では、三次元測定機1は、スライド機構24の移動量と、接触点取得部33にて取得される接触点Aの位置とに基づいて測定値を算出する測定値算出部52を備えていたが、スライド機構24の移動量と、測定子211Aの振れ量とに基づいて測定値を算出し、この測定値を測定子211Aの半径rを用いて補正してもよい。
前記実施形態では、円錐状の被測定物120の形状を測定する場合を例示して説明していたが、被測定物はどのような形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、形状測定装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…三次元測定機(形状測定装置)
3…モーションコントローラ(制御装置)
5…ホストコンピュータ(制御装置)
21…プローブ
22…移動機構
31…移動指令部
33…接触点取得部
52…測定値算出部
110…被測定物
211A…測定子
W…被測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に接触する測定子を有し、前記測定子を一定の範囲内で移動可能に構成されるプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置とを備え、前記測定子を前記被測定物に押し込んだ状態で前記被測定物の表面に倣って前記測定子を移動させることによって前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、
前記制御装置は、
前記被測定物の表面と、前記測定子との接触点の位置を取得する接触点取得部と、
前記接触点の位置に基づいて、前記移動機構にて前記プローブを移動させるための位置指令値を算出する移動指令部とを備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の形状測定装置において、
前記測定子は、球状とされ、
前記接触点取得部は、前記測定子の中心位置と、前記測定子の半径と、前記接触点における法線方向とに基づいて、前記接触点の位置を算出して取得することを特徴とする形状測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の形状測定装置において、
前記接触点取得部は、前記接触点における法線方向を前記測定子の振れ量に基づいて算出することを特徴とする形状測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の形状測定装置において、
前記制御装置は、
前記移動機構の移動量と、前記接触点の位置とに基づいて測定値を算出する測定値算出部を備えることを特徴とする形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64466(P2011−64466A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212734(P2009−212734)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】