説明

往復ポンプ

【課題】クランクシャフトの回転運動を、スコッチ・ヨーク機構を介してピストンの往復運動に変換する構成を有する往復ポンプにおいて、前記機構において生じる機械損失の増大を可能な限り抑制しつつ、前記機構で発生する騒音を効果的に低減すること。
【解決手段】スコッチ・ヨーク機構10において、クランクシャフト12に偏心して取着されたクランクピン16に軸受18,20が嵌合されている。ヨーク14は、クランクピン16の軸と直交する方向に延び、かつ、クランクピン16を挟んで互いに平行に形成された第1および第2当接面28,30有するように構成されている。第1および第2当接面28,30が、対応する軸受18の外輪18Cおよび軸受け20の外輪20Cの周面に常時接触するように、第1と第2の当接面28,30間の、前記ピストンの移動方向における距離が決定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復ポンプに関し、特に、モータ等の回転駆動源からの回転運動をピストン等の往復運動に変換する機構として、スコッチ・ヨーク機構を採用した往復ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
回転駆動源からの回転運動をピストン等の往復運動に変換するための機構として採用されるスコッチ・ヨーク機構は、同じ目的が達成できる一般的なクランク機構と比べて、コンロッド等が不要であるためコンパクトで、かつ部品点数が少ないため構成が簡略になるといった利点がある。このため、スコッチ・ヨーク機構は、小型で経済性の要求される真空ポンプ、例えば、製品の組立工場などで用いられる、小ねじその他の小型部品の吸着用の真空ポンプに適している。
【0003】
従来のスコッチ・ヨーク機構の一例について、図8を参照しながら説明する。なお、図8に示す従来のスコッチ・ヨーク機構200は、特に往復ポンプ用に限ったものではなく、当該機構の動作を説明するために作図したものである。
図8(a)〜図8(d)は、スコッチ・ヨーク機構200の正面図であり、図8(b)〜図8(d)は、図8(a)に示す状態から、回転軸であるクランクシャフト202が矢印Mの向きに、所定角度分回転したときの状態を示している。
【0004】
図8(e)〜図8(h)は、図8(a)におけるN・N線に相当する位置で、それぞれ図8(a)〜図8(d)に示すスコッチ・ヨーク機構200を切断した断面図(なお、切断しているのは、後述するヨーク204のみである。)である。
スコッチ・ヨーク機構200は、矢印Yの方向に直動案内された板状のヨーク204を有する。ヨーク204は、長円形の長孔206を有しており、長孔206内に偏心カムであるクランクピン208が収納されている。
【0005】
クランクピン208には、偏心させてクランクシャフト202が取り付けられている。クランクシャフト202を矢印Mの向きに回転させると、クランクピン208はクランクシャフト202を中心として偏心状態で回転する。当該回転によって、クランクピン208の周面がヨーク204の長孔206内周の上側の直線部(以下、「上部当接面210」と言う。)と下側の直線部(以下、「下部当接面212」と言う。)に交互に当接し、クランクピン208の偏心量に応じたストロークでヨーク204が矢印Y方向に往復運動する(スライドする)。これにより、クランクシャフト202の回転運動がヨーク204の往復運動に変換されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−119609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したスコッチ・ヨーク機構200では、以下に記すように、クランクシャフト202の半回転毎に繰り返されるクランクピン208とヨーク204との衝突音が騒音となって現れるといった問題を有している。
ヨーク204が上死点にある図8(a)に示す状態からクランクシャフト202がさらに矢印Mの向きに回転すると、クランクピン208の外周面は、上部当接面210から離れる(すなわち、クランクピン208外周面は、長孔206内周面のいずれの部位とも非接触となる。)。さらにクランクシャフト202の回転が進むと、クランクピン208の外周面は、下側当接面212に衝突して(図8(c))後、ヨーク204を下方へスライドさせる間、下側当接面212に接触状態となる。そして、前記衝突の際に生じる音(衝突音)が騒音となって現れるのである。衝突音は、ヨーク204が下死点にある図8(d)の状態から、ヨーク204のスライドが上方へと転じる際にも生じる。
【0008】
上記衝突音を無くすために、クランクピン208の直径と上側当接面210と下側当接面212との間隔を略等しくして、クランクピン208と長孔206内周面との間隙を無くすことが考えられる。しかしながら、そうすると、クランクピン208は、常に上側当接面210と下側当接面212の両方に接触することとなるため、クランクピン208外周面と長孔206内周面との間のクランクピン208の回転に伴う摩擦抵抗が大きくなり、機械損失が増大してしまう。
【0009】
本発明は、上記した課題に鑑み、上記機械損失の増大を可能な限り抑制しつつ、効果的に上記騒音を低減できる往復ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る往復ポンプは、クランクシャフトの回転運動を、スコッチ・ヨーク機構を介して、ピストンの往復運動に変換する構成を有する往復ポンプであって、前記スコッチ・ヨーク機構は、クランクシャフトに偏心して取着されたクランクピンと、前記クランクピンの軸方向に並設され、当該クランクピンの軸回りに回転自在な第1および第2の円環部材と、前記クランクピンの軸と直交する方向に延び、かつ、当該クランクピンを挟んで互いに平行に形成された第1および第2の当接面を有するヨーク部材と、を備え、前記第1および第2の当接面の前記クランクピンの軸方向における位置が、それぞれ前記第1および第2の円環部材の位置に対応すると共に、第1および第2の当接面が、対応する第1および第2の円環部材の周面に常時接触するように、前記第1と第2の当接面間の、前記ピストンの移動方向における距離が決定されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記スコッチ・ヨーク機構は、さらに、前記クランクピンの軸方向に、前記第2の円環部材を挟んで前記第1の円環部材と反対側に並設され、当該クランクピンの軸回りに回転自在な第3の円環部材を有し、前記ヨーク部材は、さらに、前記クランクピンの軸と直交する方向に延び、かつ前記第1の当接面と同一平面上に在って、前記第3の円環部材の周面に常時接触する第3の当接面を有し、前記第2の円環部材が前記ピストンの軸心を通る位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、前記ヨーク部材は、前記ピストンの移動方向と直交する方向に長手方向を有する長孔が開設された合成樹脂製の枠体を有し、前記当接面の各々は、前記長孔の長手方向の内周面の一部からなり、前記円環部材の各々は、金属製であって、当該円環部材の各々が、対応する当接面から押圧力を受けるように、前記枠体に圧入されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記円環部材の各々が、前記クランクピンに嵌合されたころがり軸受の外輪であることを特徴とする往復ポンプ。
また、前記ヨーク部材は、前記ピストンの移動方向と直交する方向に長手方向を有する長孔が開設された合成樹脂製の枠体を有し、前記当接面の各々は、前記長孔の長手方向に伸びる一条の帯状をした内周面部分からなり、前記円環部材の各々は、前記クランクピンに嵌合されたころがり軸受の外輪であって、前記第1の当接面の前記第1の円環部材を構成する外輪との接触幅および第3の当接面の前記第3の円環部材を構成する外輪との接触幅の各々が、前記第2の当接面の前記第2の円環部材を構成する外輪との接触幅の半分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成からなる往復ポンプによれば、クランクピンの軸回りに回転自在に設けられた第1の円環部材がヨーク部材の第1の当接面と、同じく第2の円環部材が同じく第2の当接面と常時接触しているため、ヨーク部材を往復運動させるための部材の当該ヨーク部材との衝突が生じないため、上記スコッチ・ヨーク機構で発生する騒音を低減することができる。
【0015】
また、第1の円環部材がヨーク部材を押動している間、ヨーク部材の押動に寄与しない第2の円環部材は第2の当接面を転動でき、第2の円環部材がヨーク部材を押動している間、ヨーク部材の押動に寄与しない第1の円環部材は第1の当接面を転動できるため、すなわち、ヨーク部材の押動に寄与しない方の円環部材とこれに対応する当接面との間で発生する摩擦は転がり摩擦となるため、機械損失の増大を可能な限り抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は実施の形態に係るスコッチ・ヨーク機構の概略構成を示す斜視図であり、(b)は同正面図、(c)は(b)におけるA・A線断面図である。
【図2】上記スコッチ・ヨーク機構の動作を説明するための図である。
【図3】実施の形態に係る往復ポンプの外観斜視図である。
【図4】上記往復ポンプを正面から見た一部断面図であり、図5におけるG・G線に沿って切断したものである。
【図5】上記往復ポンプを上面となる方向から見た一部断面図であり、図4におけるE・E線に沿って切断したものである。
【図6】上記往復ポンプの一部構成部材の分解斜視図である。
【図7】上記往復ポンプの動作を説明するための図である。
【図8】従来のスコッチ・ヨーク機構の構成および動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る往復ポンプの実施の形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、実施の形態に係る往復ポンプの説明の前に、当該往復ポンプに用いるスコッチ・ヨーク機構について説明する。
<スコッチ・ヨーク機構>
図1(a)はスコッチ・ヨーク機構10の概略構成を示す斜視図であり、図1(b)は同正面図、図1(c)は図1(b)におけるA・A線断面図である。なお、図1(a)では後述するヨーク14の一部を切断しており、図1(c)ではヨーク14のみを切断している。
【0018】
スコッチ・ヨーク機構10は、回転軸であるクランクシャフト12の回転運動をヨーク14の往復運動に変換する機構である。
クランクシャフト12には、偏心カムであるクランクピン16が取り付けられている。クランクピン16は、円柱状をしており、クランクシャフト12に偏心して取着されている。すなわち、クランクピン16は、その軸心がクランクシャフト12の軸心と平行で、かつ両軸心が一定の間隔を隔てた状態でクランクシャフト12に取り付けられている。
【0019】
クランクシャフト12のクランクピン16への取り付けは、例えば、クランクピン16の軸心から偏心した位置に厚み方向に貫通孔を開設し、当該貫通孔にクランクシャフト12を圧入して行われる。
クランクピン16の外周面(円筒面)には、3個のころがり軸受(本例では、玉軸受)18,20,22がクランクピン16の軸方向に、この順に並設されている。なお、図1(a)では、煩雑さを避けるため、各ころがり軸受(以下、単に「軸受」という。)18,20,22の外輪、内輪、および両輪の間に在る複数の玉等を一体のものとして描いている。ここで、軸受18,20,22をそれぞれ、第1軸受18、第2軸受20、第3軸受22と呼ぶこととする。なお、本例では、この3個の軸受は全て同じもの(同じ仕様のもの)である。
【0020】
図1(b)では、第1〜第3軸受18,20,22の内、第1軸受18が現れている。第1軸受18は、その内輪18Aがクランクピン16に嵌合されて(圧入されて)取り付けられている。これにより、金属製(本例では、ステンレス製)の円環部材である外輪18Cは、クランクピン16の軸回りに回転自在に取り付けられていることになる。残りの第2および第3軸受20,22も、第1軸受18と同様、各々の内輪(図1では不図示)がクランクピン16に圧入されて取り付けられている。
【0021】
ここで、第1〜第3軸受18,20,22の外輪の各々を第1外輪18C、第2外輪20C、第3外輪22C(図1(c))と呼ぶこととする。
ヨーク14は、開口部が長孔24に形成されている枠体26からなる。ヨーク14は、金属と比べて弾性を有する材料、例えば、6ナイロンその他の合成樹脂からなる。
長孔24において長手方向に延びる2つの内周面の内、一方の内周面(図1における上側の内周面)は、図1(c)に示す横断面に現れているように、第2外輪20Cに対応する部分のみが突出している。この突出面が、前記長手方向に一条の帯状に延びていて、第2外輪20C外周との当接面30(以下、「第2当接面30」という)を形成している。第2当接面30の幅は、第2外輪20Cの最大幅と略等しい。第2当接面30は、第2外輪20Cとのみ接触し、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cとは常に非接触である。
【0022】
長孔24において長手方向に延びる2つの内周面の内の他方の内周面(図1における下側の内周面)は、図1(c)に示す横断面に現れているように、第2外輪20Cに対応する部分のみが窪んでいる(前記長手方向に溝が形成されている。)。換言すると、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cに対応する部分のみが突出している。この両突出面の各々が、前記長手方向に一条の帯条に延びていて、それぞれ第1外輪18Cの外周面および第3外輪22Cの外周面との当接面28,32を形成している。第1外輪18Cに対応する当接面28を第1当接面28、第3外輪22に対応する当接面32を第3当接面32と称することとする。第1当接面28と第3当接面32は、それぞれ、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cとのみ接触し、第2外輪20Cとは常に非接触である。第1当接面28と第3当接面32とは、同一平面上に在る。
【0023】
第1当接面28と第3当接面32の各々の幅は、第2当接面30の幅の半分としている。すなわち、第1当接面28の第1外輪18Cとの接触幅および第3当接面32の第3外輪22Cとの接触幅の各々は、第2当接面30の第2外輪20Cとの接触幅の半分としている。このようにした理由については後述する。
また、第1〜第3軸受18,20,22が取着されたクランクピン16が組み込まれる前のヨーク14における第2当接面30と第1当接面28および第3当接面32との間の前記長手方向と直交する方向の距離D(図1(c))は、第1〜第3外輪18C,20C,22Cの直径よりも若干短く設定している。したがって、第1〜第3軸受18,20,22が取着されたクランクピン16を、枠体26に組み込む際には、第1〜第3軸受18,20,22を、枠体26に圧入することとなる。すなわち、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cは、それぞれ第1当接面28および第3当接面32から押圧力を受け、第2外輪20Cは第2当接面30から押圧力を受けるように、枠体26に圧入されている。このようにした理由についても後述する。
【0024】
ヨーク14は、往復ポンプの構成部材として組み込まれた状態で、長孔24の長手方向と直交する方向(第1〜第3当接面28,30,32と直交する方向)に直動案内されているのであるが、当該直動案内の機構については後述することとし、以下、ヨーク14が前記直動案内をされているとの前提の下で、スコッチ・ヨーク機構10の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0025】
図2(a)〜図2(d)は、スコッチ・ヨーク機構10の正面図であり、図2(b)、図2(c)、図2(d)は、図2(a)に示す状態から、クランクシャフト12が矢印Rの向きに、90度ずつ回転したときの状態を示している。
図2(e)は、図2(a)におけるB・B線断面図であり、図2(f)、図2(g)は、それぞれ、図2(e)の場合と同様に切断した断面図であり、図2(h)は、図2(d)におけるC・C線断面図である。図2(e)〜図2(h)では、ヨーク14のみを切断している。
【0026】
なお、便宜上、図2に向って紙面上側を上方、紙面下側を下方として説明する。
クランクシャフト12の軸心に対し、偏心したクランクピン16の外周が最も上方に張り出し、ヨーク14が最も上方に位置する上死点の状態(図2(a)、図2(e))から、クランクシャフト12が矢印Rの向きに回転されると、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cの外周が、それぞれ、ヨーク14の第1当接面28および第3当接面32を押下する(図2(f))。
【0027】
これにより、ヨーク14は下方へ移動する(便宜上、ヨーク14の下方への移動を「往動」とする)。そして、クランクピン16の外周が最も下方に張り出し、ヨーク14が最も下方に位置する下死点(図2(c)、図2(g))に至るまで、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cの外周が、それぞれ、ヨーク14の第1当接面28および第3当接面32を押下し続ける。
【0028】
下死点の状態(図2(c)、図2(g))から、さらに、クランクシャフト12が矢印Rの向きに回転されると、今度は、第2外輪20Cの外周が、ヨーク14の第2当接面30を押し上げる(図2(h))。
これにより、ヨーク14は上方へ移動する(便宜上、ヨーク14の上方への移動を「復動」とする。)。そして、クランクピン16の外周が最も上方に張り出し、ヨーク14が最も上方に位置する上死点(図2(a)、図2(e))に至るまで、第2外輪20Cの外周が、それぞれ、ヨーク14の第2当接面30を押し上げ続ける。
【0029】
以上、クランクシャフト12が1回転するとヨーク14が上下方向に1往復する。
この間、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cは、それぞれ、第1当接面28および第3当接面32と常時接触している。このため、従来、ヨークが上死点から往動へ移行する際に生じていた偏心円板とヨークとの衝突が生じない。
また、第2外輪20Cは、第2当接面30と常時接触している。このため、従来、ヨークが下死点から復動へ移行する際に生じていた偏心円板とヨークとの衝突が生じない。
【0030】
すなわち、従来、ヨークが1往復する間に(クランクシャフトが1回転する間に)、2回発生していた衝突音が、本実施の形態に係るスコッチ・ヨーク機構ではほとんど発生しないため、当該衝突音に起因する騒音を抑制することができる。
なお、第1〜第3外輪18C,20C,22Cを対応する当接面と常時接触させているが、これによる問題は、以下の理由によりほとんど生じない。
【0031】
ヨークの往動中、当該往動に寄与しない第2外輪20Cが第2当接面30と接触し続ける。上死点(図2(a))からクランクシャフト12が矢印Rの向きに90度回転する間、第2外輪20Cは、第2当接面30と接触しつつ左向きに移動するが、第2外輪20Cは、クランクピン16に対し、回転自在に設けられているため、クランクシャフト12の回転方向とは逆向きに回転して、第2当接面30上を転動することができる。このため、第2外輪20Cと第2当接面30との間の摩擦抵抗を可能な限り抑制できるため、スコッチ・ヨーク機構における機械損失の増大を可能な限り抑制することができる。
【0032】
ヨークの復動中も、同様、当該復動に寄与しない第1外輪18Cおよび第3外輪22Cが、それぞれ第1当接面28および第3当接面32と接触し続ける。下死点(図2(c))からクランクシャフト12が矢印Rの向きに90度回転する間、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cは、それぞれ、第1当接面28および第3当接面32と接触しつつ右向きに移動するが、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cは、クランクピン16に対し、回転自在に設けられているため、クランクシャフト12の回転方向とは逆向きに回転して、それぞれ第1当接面28および第3当接面32上を転動することができる。このため、第1外輪18Cおよび第3外輪22Cと第1当接面28および第3当接面32との間の摩擦抵抗を可能な限り抑制できるため、スコッチ・ヨーク機構における機械損失の増大を可能な限り抑制することができる。
【0033】
また、スコッチ・ヨーク機構10を後述する往復ポンプに用いる場合、クランクシャフト12は、例えば、回転数4500[rpm]の速さで回転される。この場合、スコッチ・ヨーク機構10を構成する各部材間等の摩擦熱等に起因して、スコッチ・ヨーク機構10全体が昇温する。ヨーク14を形成する合成樹脂は、第1〜第3軸受18,20,22を形成する金属よりも、一般に、熱膨張係数が大きい。このため、何ら手当てしない場合は、ヨーク14における長孔24の短径(第2当接面30と第1当接面28および第3当接面32との間の長孔24の長手方向と直交する方向の距離(図1(c)の「D」に相当)が、第1〜第3外輪18C,20C,22Cの外径よりも大きくなり、第1〜第3外輪18C,20C,22Cが対応する当接面28,30,32と常には接触しなくなるおそれが生じる。
【0034】
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、第1〜第3軸受18,20,22を、枠体26に圧入している。このときの上記距離D(図1(c))を、スコッチ・ヨーク機構10の動作中に生じる、ヨーク14と第1〜第3外輪18C,20C,22Cとの熱膨張差を考慮して設定しておくことで、第1〜第3外輪18C,20C,22Cが対応する当接面28,30,32と非接触状態となる事態を可能な限り防止することができる。
【0035】
次に、第1当接面28の第1外輪18Cとの接触幅および第3当接面32の第3外輪22Cとの接触幅の各々を、第2当接面30の第2外輪20Cとの接触幅の半分としている理由について説明する。
これは、ヨーク14を押動するために必要最小限の接触幅とし、ヨーク14全体の重量の増加を抑制するためである。
【0036】
すなわち、上記の構成とすることで、ヨーク14の往動中において第1および第3当接面28,32と第1および第3外輪18C,22Cとの間で生じる接触面圧と、復動中において第2当接面30と第2外輪20Cとの間で生じる接触面圧とが略等しくなる。これにより、第1および第3当接面28,32の幅が過剰に大きくなることを回避し、もって、ヨーク14全体の重量が無用に大きくなることを防止できるからである。
【0037】
なお、第1および第3軸受18,22は、第1および第3当接面28,32の幅に合致した幅の外輪を有するものを用いても構わない。すなわち、第1および第3軸受18,22を、第2軸受20の半分の幅のものとしても構わない。
<往復ポンプ>
図3は、スコッチ・ヨーク機構10(図1)が組み込こまれた往復ポンプ40の外観を示す斜視図である。
【0038】
往復ポンプ40は、スコッチ・ヨーク機構10や後述する第1および第2ピストン74,76等が収納されたアルミ製のシリンダブロック42と、シリンダブロック42を挟むように設けられた第1吸・排気ブロック44および第2吸・排気ブロック46(内部構造は、後で詳述する)を有し、第1および第2ピストン74,76の往復運動により、後述する吸気ポートに取り付けられた管継ぎ手48から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を後述する排気ポートに取り付けられたサイレンサ50から吐き出す真空ポンプである。当該真空ポンプは、例えば、管継ぎ手48に接続されたチューブ(不図示)を、小ねじその他の小型部品を吸着する真空チャック装置(不図示)に配管して用いられる。
【0039】
第1吸・排気ブロック44および第2吸・排気ブロック46は、それぞれシリンダブロック42に、ガスケット52、仕切板54、ガスケット56、およびガスケット58、仕切板60、ガスケット62を間に挟み、不図示のねじで取り付けられている。
また、シリンダブロック42の下側には、L字断面を有するアングルブラケット64を挟んでモータ66が取り付けられている。アングルブラケット64は、往復ポンプ40を、例えば、壁面その他の構造物に取り付けるためのものである。
【0040】
往復ポンプ40を正面から見た一部断面図を図4に、上面となる方向から見た一部断面図を図5に示す。なお、図4に示す断面は、図5におけるG・G線に沿って切断したものであり、図5に示す断面は、図4におけるE・E線に沿って切断したものである。また、図5では、スコッチ・ヨーク機構10、後述する第1および第2ピストン74,76、第1および第2パッキン78,80は切断していない。
【0041】
また、図6に、第1吸・排気ブロック44、ガスケット56、仕切板54、ガスケット52、シリンダブロック42、ガスケット58、仕切板60、ガスケット62、および第2吸・排気ブロック46の分解斜視図を示す。
なお、上述したスコッチ・ヨーク機構10の構成要素については、図1に用いたのと同じ符号を図4、図5、および図6でも使用し、必要に応じて言及するに止める。
【0042】
図4に示すように、本例では、モータ66の出力軸がクランクシャフト12となっている。クランクシャフト12の先端部は、シリンダブロック42の内壁凹所に取り付けられた玉軸受68に回転自在に軸支されている。
クランクピン16よりもモータ66本体寄りのクランクシャフト12部分には、バランスウエイト70が取り付けられている。バランスウエイト70は、金属製(例えば、ステンレス製)の円柱体からなり、当該円柱体の軸心と平行に当該軸心から偏心させて貫通孔を開設したものである。また、径方向において厚肉部分には、当該径方向に雌ねじが形成されている。バランスウエイト70は、前記貫通孔にクランクシャフト12を挿入した後、前記雌ねじに止めねじ72を螺合させてクランクシャフト12に固定されている。バランスウエイト70は、クランクシャフト12に対する偏心の向きがクランクピン16と反対になるように取り付けられている。これにより、バランスウエイト70は、クランクシャフト12の回転の際のクランクピン16に対するカウンターバランスとして機能する。
【0043】
ヨーク14には、長孔24(図5)の長手方向と直交する方向の両端部の各々に第1ピストン74および第2ピストン76が一体的に形成されている。第1および第2ピストン74,76は射出成型などによりヨーク14と一体的に形成されている。よって、第1および第2ピストン74,76は、ヨーク14と同じ6ナイロンその他の合成樹脂からなる。
【0044】
第1および第2ピストン74,76は、略同じ形状をしており、それぞれ、円板部74A,76A、円板部74,76中心から突出した円柱部74B,76B、および円柱部74A,76Aと同心円上に円柱部74,76を取り囲む円筒部74C,76Cを有している。また、円柱部74A,76Aには、その軸心方向に雌ねじ74D,76Dが形成されている。第1および第2ピストン74,76の中心(すなわち、円板部74A,76Aの中心軸)は同一軸心上に在って、当該軸心(以下、「ピストン軸」と言う。)は第2軸受20(第2外輪20C)を通っている。
【0045】
第1ピストン74および第2ピストン76には、それぞれ、横断面が略「L」字のリング状をした第1パッキン78および第2パッキン80が嵌め込まれている。第1および第2パッキン78,80はフッ素樹脂からなる。
第1パッキン78および第2パッキン80にはそれぞれ、円形の皿状をした第1パッキン押え82および第2パッキン押え84が被せられている。第1および第2パッキン押え82,84の各々の中心には、テーパー状をした貫通孔82A,84Aが開設されている。第1および第2パッキン押え82,84の各々は、貫通孔82A,84Aに挿入され、雌ねじ74D,76Dにそれぞれ螺合したさら小ねじ86,88で、第1ピストン74および第2ピストン76に固定されている。第1および第2パッキン押え82,84は、6ナイロンその他の合成樹脂からなる。
【0046】
図6に示すように、シリンダブロック42には、スコッチ・ヨーク機構10、第1および第2ピストン74,76、第1および第2パッキン78,80、第1および第2パッキン押え82,84などを収納する貫通孔42Aが開設されている。貫通孔42Aの両開口端部部分には、円筒形をした第1シリンダ90および第2シリンダ92が圧入されている(図6では、第2シリンダ92のみが現れている)。第1シリンダ90によって、第1ピストン74等の移動空間である第1シリンダ室90Aが創出され、第2シリンダ92によって、第2ピストン76等の移動空間である第2シリンダ室92Aが創出される。第1および第2シリンダ90,92は、焼入れ鋼からなる。
【0047】
第1および第2ピストン74,76(第1および第2パッキン78,80)は、それぞれ第1および第2シリンダ90.92内周面で、前記ピストン軸方向に直動案内されている。これにより、第1および第2ピストン74,76と一体的に形成されたヨーク14も同様に直動案内されている。
第1および第2吸・排気ブロック44,46は、アルミニウムからなる。
【0048】
第1吸・排気ブロック44は、直方体状に窪んだ第1排気室44Aおよび第1吸気室44Bを有する。第1排気室44Aと第1吸気室44Bとは、隔壁44Cで仕切られている。第1吸気室44Bの下部には、雌ねじの形成された吸気ポート44Dが開設されている。管継ぎ手48(図4)は、当該雌ねじにねじ込まれて取り付けられている。
第2吸・排気ブロック46も、第1吸・排気ブロック44と同様、直方体状に窪んだ第2排気室46Aおよび第2吸気室46Bを有する、第2排気室46Aと第2吸気室46Bとは隔壁46Cで仕切られている。第2排気室46Aの下部には、雌ねじの形成された排気ポート46Dが開設されている。サイレンサ50は、当該雌ねじにねじ込まれて取り付けられている。
【0049】
仕切板54,60は、アルミニウムからなる。
仕切板54は、第1排気室44Aおよび第1吸気室44Bと第1シリンダ室90Aとを仕切るものである。仕切板54は、その中央領域に開設された4個の貫通孔54A,54B,54C,54Dを有する。また、仕切板54は、上部コーナーに2個の貫通孔54E,54Fを有する。
【0050】
仕切板60は、第2排気室46Aおよび第2吸気室46Bと第2シリンダ室92Aとを仕切るものである。仕切板60は、その中央領域に開設された4個の貫通孔60A,60B,60C,60Dを有する。また、仕切板60は、上部コーナーに2個の貫通孔60E,60Fを有する。
ガスケット56,52,58,62は、ポリエチレンからなり、厚み0.3[mm]の可撓性を有するシート状をしている。
【0051】
第1吸・排気ブロック44と仕切板54との間に設けられたガスケット56は、第1排気室44Aと第1吸気室44Bの各々に対応した方形の窓56A,56Bを有する。第1排気室44Aに対応する窓56Aの中央に向って、両窓56A,56Bを区切る枠部56Cから、舌片状をした一対の排気弁56D,56Eが延出されている。
排気弁56D,56Eは、それぞれ、貫通孔54A,54Bに対応する。排気弁56D,56Eは、後述するように、貫通孔54A,54Bを閉塞し、または貫通孔54A,54Bを開放する。
【0052】
仕切板54とシリンダブロック42との間に設けられたガスケット52は、シリンダブロック42の貫通孔42Aに対応した円形の窓52Aを有する。窓52Aの周縁から、舌片状をした一対の吸気弁52B,52Cが延出されている。吸気弁52B,52Cは、それぞれ、貫通孔54C,54Dに対応する。吸気弁52B,52Cは、後述するように、貫通孔54C,54Dを閉塞し、または貫通孔54C,54Dを開放する。
【0053】
ガスケット52は、また、上部コーナーに2個の貫通孔52D,52Eを有する。
第2吸・排気ブロック46と仕切板60との間に設けられたガスケット62は、第2排気室46Aと第2吸気室46Bの各々に対応した方形の窓62A,62Bを有する。第2排気室46Aに対応する窓62Aの中央に向って、両窓62A,62Bを区切る枠部62Cから、舌片状をした一対の排気弁62D,62Eが延出されている。
【0054】
排気弁62D,62Eは、それぞれ、貫通孔60A,60Bに対応する。排気弁62D,62Eは、後述するように、貫通孔60A,60Bを閉塞し、または貫通孔60A,60Bを開放する。
仕切板60とシリンダブロック42との間に設けられたガスケット58は、シリンダブロック42の貫通孔42Aに対応した円形の窓58Aを有する。窓58Aの周縁から、舌片状をした一対の吸気弁58B,58Cが延出されている。吸気弁58B,58Cは、それぞれ、貫通孔60C,60Dに対応する。吸気弁58B,58Cは、後述するように、貫通孔60C,60Dを閉塞し、または貫通孔60C,60Dを開放する。
【0055】
ガスケット58は、また、上部コーナーに2個の貫通孔58D,58Eを有する。
シリンダブロック42は、上部コーナーに2個の貫通孔42B、42Cを有する。
第1吸・排気ブロック44、ガスケット56、仕切板54、ガスケット52、シリンダブロック42、ガスケット58、仕切板60、ガスケット62、および第2吸・排気ブロック46が組み立てられた状態(図3、図4、図5)で、第1排気室44Aと第2排気室46Aとは、窓56A、貫通孔54E、貫通孔52D、貫通孔42B、貫通孔58D、貫通孔60E、および窓62Aを介して連通されている。すなわち、第1排気室44Aから第2排気室46Aにいたる上記一連の開口部で排気室連絡路94が構成されている。
【0056】
また、第1吸気室44Bと第2吸気室46Bとが、窓56B、貫通孔54F、貫通孔52E、貫通孔42C、貫通孔58E、貫通孔60F、および窓62Bを介して連通されている。すなわち、第1吸気室44Bから第2吸気室46Bに至る上記一連の開口部で吸気室連絡路96が構成されている。
上記の構成からなる往復ポンプ40の動作について、図7を参照しながら説明する。
【0057】
図7(a)、図7(b)は、往復ポンプ40を上面となる方向から見た一部断面図であり、図5と同様に切断した図である。なお、排気室連絡路94と吸気室連絡路96とは、その全部は図7(a)、図7(b)における断面には現れないのであるが、説明上必要なため、便宜上、図7(a)、図7(b)において一点鎖線で表すこととする。また、煩雑さを避けるため、図7(a)、図7(b)では、第1および第2シリンダ90,92の図示を省略している。
【0058】
ここで、図7では、ヨーク14は水平方向に往復運動するのであるが、便宜上、クランクシャフト12の軸心に対し、クランクピン16の外周が最も左側に張り出し、ヨーク14が最も左側に位置する状態(図7(a))を上死点、この反対に、クランクピン16の外周が最も右側に張り出し、ヨーク14が最も右側に位置する状態(図7(b))を下死点として説明する。また、図6に記した吸気弁、排気弁、貫通孔の内、図7に現れないものについては、その符号に括弧をつけて説明に用いることとする。
【0059】
クランクシャフト12が矢印Rの向きに回転して、下死点(図7(b))から上死点(図7(a))に至る間、図7(a)に示すように、第1シリンダ室90A内の空気が第1ピストン74により押し出され、排気弁56D(56E)が開き、押し出される空気が、貫通孔54A(54B)から、第1排気室44Aに流入する。そして、排気室連絡路94内を空気が矢印の向きに移動して、第2排気室46Aに流入し、排気ポート46Dを通過して、サイレンサ50(図4)から往復ポンプ40外へ排出される。
【0060】
また、第2シリンダ室92A内には、ピストン76によって空気が導入される。すなわち、第2ピストン76の左方への移動によって第2シリンダ室92Aが負圧になるため、吸気弁58B(58C)が開く。そして、貫通孔60C(60D)、第2吸気室46B、吸気室連絡路96、第1吸気室44B、吸気ポート44Dを介して、外部の空気が第2シリンダ室92Aに導入される。
【0061】
一方、上死点(図7(a))から下死点(図7(b))に至る間は、図7(b)に示すように、第2シリンダ室92A内の空気が第2ピストン76により押し出され、排気弁62D(62E)が開く。押し出される空気は、貫通孔60A(60B)から第2排気室46Aに流入し、排気ポート46Dを通過して、サイレンサ50(図4)から往復ポンプ40外へ排出される。
【0062】
また、第1ピストン74の右方への移動によって第1シリンダ室90Aが負圧になるため、吸気弁52B(52C)が開く。そして、吸気ポート44D、第1吸気室44B、貫通孔54C(54D)を介して、外部の空気が第1シリンダ室90Aに導入される。
以上の動作を繰り返して、往復ポンプ40は、吸気ポート44Dから往復ポンプ40外部の空気を継続して吸引する。
【0063】
本実施の形態によれば、往復ポンプ40は、ヨーク14の下死点から上死点に至る往動中のみならず上死点から下死点に至る復動中も吸引する(負圧を発生させる)。
図8に示す従来のスコッチ・ヨーク機構200を用いた場合は、ヨーク204が下死点から往動に転じるまでと、上死点から復動に転じるまでの間は、上述した通り、クランクピン208がヨーク204の長孔206の内周面から離間する期間(図8(b))が生じるため、その間、ヨーク204の動きが止まり、ひいては、ピストンの動きが止まって、吸引動作が中断することとなる。
【0064】
したがって、従来のスコッチ・ヨーク機構200を用いた往復ポンプを、例えば、製品の組立工場などで用いられる、小ねじその他の小型部品を吸着する真空チャック用の真空ポンプに使用した場合、上記吸引動作の中断時に吸引力が低下して小型部品が真空チャックから脱落するおそれがある。
これに対し、本実施の形態に係る往復ポンプ40によれば、ヨーク14は、クランクピン16が、図7(a)と図7(b)に示す回転位置にある一瞬のみその動きが停止するだけであって、ほとんど間断なく吸引動作は続くこととなる。よって、往復ポンプ40を真空チャック用の真空ポンプに使用した場合、小型部品が真空チャックから脱落することを可能な限り抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、前記ピストン軸が、第1〜第3外輪18C,20C,22Cの内の真ん中の第2外輪20Cを通っているため、第1および第2ピストン74,76に、余分な力(モーメント)がほとんど作用することがない。すなわち、第2外輪20Cが第2当接面30を押圧してヨーク14を押動しているときは、第2外輪20Cがピストン軸上にあるため、第1および第2ピストン74,76にほとんどモーメントが作用することがない。一方、第1および第3外輪18C,22Cが、それぞれ第1および第3当接面28,32を押圧してヨーク14を押動しているときは、第1および第3外輪18C,22C間の真ん中にピストン軸が通っている関係上、第1および第3外輪18C,22Cの押圧力の合力ベクトルが当該ピストン軸に存するため、第1および第2ピストン74,76にほとんどモーメントが作用することがないのである。これにより、第1および第2ピストン74,76のスムーズな往復運動が確保される。
【0066】
なお、本実施の形態に係る往復ポンプ40の運転中において、スコッチ・ヨーク機構で発生する騒音が低減できるのは、上述した通りである。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記の実施の形態では、軸受を3個用いたが、軸受の個数は、これに限らず2個または4個以上でも構わない。要は、軸受を複数個用い、当該複数個の内、少なくとも1個をヨークの往動用とし、残余の軸受をヨークの復動用として、上記実施の形態のように構成すればよいのである。
【0067】
また、4個以上用いる場合は、上記実施の形態の場合(軸受を3個用いる場合)と同様、ピストンにモーメントが作用しないように構成することが好ましい。すなわち、ピストン軸を中心として、クランクピンの軸方向に、往動用の軸受の配列および復動用の軸受の配列が対称になる構成とするのが好ましい。
(2)上記実施の形態では、軸受として玉軸受けを用いたが、これに限らず、ころ軸受を用いても構わない。
【0068】
(3)上記実施の形態では、クランクピンの軸回りに回転自在な円環部材を、当該クランクピンに嵌合されたころがり軸受の外輪で構成したが、当該円環部材はこれに限らない。
例えば、クランクピンの外周面の周方向に沿った溝をクランクピンの軸方向に複数条形成し、当該溝の各々に、当該クランクピンの軸回りに回転自在に文字通りの円環部材をはめ込んだ構成としても構わない。
【0069】
この場合には、複数の溝の各々に、円環部材の回転を滑らかにするための潤滑剤を塗布するのが好ましい。
(4)上記実施の形態では、クランクシャフトとしてモータの出力軸を用いたがこれに限らず、クランクシャフトは、モータの出力軸とは別個のものとし、当該出力軸からの回転動力を周知の動力伝達機構を介して、当該クランクシャフトに伝達することとしても構わない。
【0070】
(5)上記実施の形態では、ヨークとピストンとを一体的に形成しているが、これに限らず、別個に作製したものを、バー材等の連結部材で連結する構成としても構わない。
(6)上記実施の形態では、ピストンを2個用いて往復ポンプを構成したが、ピストン1個で構成しても構わない。
(7)上記実施の形態では、ヨークを、開口部が長孔に形成されている枠体で構成し、当該長孔の長手方向に延びる内周面部分を、軸受の外輪が当接する当接面として構成した。
【0071】
しかし、上記当接面は、必ずしも長孔の内周面で構成する必要はない。例えば、平行に配された角材の対向する2面を外輪の当接面とすることもできる。この場合、両角材の両端部同士は、バー材等により連結することとする。なお、当接面を形成する部材は、角材に限らないことは言うまでもない。
(8)上記実施の形態に係る往復ポンプは、吸・排気の対象が空気であったが、吸・排気の対象は、空気に限らず他の気体でも構わない。
【0072】
また、本発明に係る往復ポンプは、気体の吸・排気用のみならず、液体の吸込み・吐出し用の往復ポンプにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る往復ポンプは、例えば、小ねじその他の小型部品を吸着する真空チャック用の真空ポンプとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 スコッチ・ヨーク機構
12 クランクシャフト
14 ヨーク
16 クランクピン
18C 第1外輪
20C 第2外輪
28 第1当接面
30 第2当接面
40 往復ポンプ
74 第1ピストン
76 第2ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの回転運動を、スコッチ・ヨーク機構を介して、ピストンの往復運動に変換する構成を有する往復ポンプであって、
前記スコッチ・ヨーク機構は、
クランクシャフトに偏心して取着されたクランクピンと、
前記クランクピンの軸方向に並設され、当該クランクピンの軸回りに回転自在な第1および第2の円環部材と、
前記クランクピンの軸と直交する方向に延び、かつ、当該クランクピンを挟んで互いに平行に形成された第1および第2の当接面を有するヨーク部材と、
を備え、
前記第1および第2の当接面の前記クランクピンの軸方向における位置が、それぞれ前記第1および第2の円環部材の位置に対応すると共に、
第1および第2の当接面が、対応する第1および第2の円環部材の周面に常時接触するように、前記第1と第2の当接面間の、前記ピストンの移動方向における距離が決定されていることを特徴とする往復ポンプ。
【請求項2】
前記スコッチ・ヨーク機構は、さらに、前記クランクピンの軸方向に、前記第2の円環部材を挟んで前記第1の円環部材と反対側に並設され、当該クランクピンの軸回りに回転自在な第3の円環部材を有し、
前記ヨーク部材は、さらに、前記クランクピンの軸と直交する方向に延び、かつ前記第1の当接面と同一平面上に在って、前記第3の円環部材の周面に常時接触する第3の当接面を有し、
前記第2の円環部材が前記ピストンの軸心を通る位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の往復ポンプ。
【請求項3】
前記ヨーク部材は、前記ピストンの移動方向と直交する方向に長手方向を有する長孔が開設された合成樹脂製の枠体を有し、
前記当接面の各々は、前記長孔の長手方向の内周面の一部からなり、
前記円環部材の各々は、金属製であって、
当該円環部材の各々が、対応する当接面から押圧力を受けるように、前記枠体に圧入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の往復ポンプ。
【請求項4】
前記円環部材の各々が、前記クランクピンに嵌合されたころがり軸受の外輪であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の往復ポンプ。
【請求項5】
前記ヨーク部材は、前記ピストンの移動方向と直交する方向に長手方向を有する長孔が開設された合成樹脂製の枠体を有し、
前記当接面の各々は、前記長孔の長手方向に伸びる一条の帯状をした内周面部分からなり、
前記円環部材の各々は、前記クランクピンに嵌合されたころがり軸受の外輪であって、
前記第1の当接面の前記第1の円環部材を構成する外輪との接触幅および第3の当接面の前記第3の円環部材を構成する外輪との接触幅の各々が、前記第2の当接面の前記第2の円環部材を構成する外輪との接触幅の半分であることを特徴とする請求項2に記載の往復ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11183(P2013−11183A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142866(P2011−142866)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】