説明

後区組織に選択的に浸透するグルココルチコイド誘導体を用いた眼治療

液体含有組成物およびポリマー薬物送達系などの眼科的治療物質としては、哺乳動物の眼の後区に送達してその眼の前区に有意に拡散しないグルココルチコイド誘導体を含む治療成分が挙げられる。本発明物質の製造方法および使用方法もまた記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
哺乳動物の眼は、強膜(眼の外側の上部な白色部分)、および瞳孔および虹彩を覆う透明な外側部分である角膜などの外層を含む複雑な器官である。眼は、前部から後部までの内側断面にて、角膜、前房(房水と称される水様性透明液体で満たされ、前部を角膜で後部を水晶体で挟まれる、空洞的特徴)、虹彩(周辺光に反応して開いたり閉じたりすることができるカーテンのような特徴)、水晶体、後房(硝子体液と称される粘性液体で満たされる)、網膜(光感受性ニューロンを含む眼底の最深部のコーティング)、脈絡膜(および血管を眼の細胞に提供する中間層)および強膜などの特徴を含むが、これらに限定されない。後房は眼の内部容積の約2/3を含むが、前房およびその関連する特徴(水晶体、虹彩など)は眼の容積の約1/3を含む。
【背景技術】
【0002】
眼の前面への治療剤の送達は、点眼剤などの局所的手段により比較的定期的に達成される。しかし、眼内または眼底さらには角膜の内部へのそのような治療剤の送達は、独特の課題を与える。後部強膜、眼球血管膜、硝子体、脈絡膜、網膜および視神経頭(ONH)の病変などの眼の後区の疾患の治療に役立つことができる薬物が利用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、そのような薬剤の有効な使用における主要な限定的因子は実際に、罹患した組織に薬剤を到達させる。そのような方法を発展させる緊急性は、視力障害および失明の主原因が後区連結疾患(posterior segment-linked disease)であるという事実から推測することができる。これらの疾患としては、加齢性黄斑変性症(ARMD)、増殖性硝子体(vitreal)網膜症(PVR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)および眼内炎が挙げられるが、これらに限定されない。房水の流出に影響を及ぼす前房の病態(したがって、眼圧(IOP))と考えられることが多い緑内障はまた、後区成分も有し;実に、緑内障のいくつかの形態は、高いIOPにより特徴付けられるものではないが、主に網膜変性のみにより特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、眼の後区の組織に向けられる能力を有するか、または眼の後区に投与されたときに、取り込まれることにより優先的に浸透し、眼の前区と比較して眼の後区内に残存する能力を有するように選択的に設計される、グルココルチコイド誘導体(GD)の使用に関する。具体的には本発明は、薬剤が投与される眼の後区(または後区内の組織)へのグルココルチコイド誘導体の拡張された放出を提供する眼用組成物および薬物送達系、および例えば眼症状の1以上の兆候を治療または軽減して患者の視力を改善または維持するために、そのような組成物および系を製造および使用する方法に関する。
【0005】
グルココルチコイドはステロイドホルモンの三つの主なクラスの一つであり、他の二つは性ホルモンおよび鉱質コルチコイドである。天然に存在するグルココルチコイドとしては、生命の維持に不可欠なコルチゾール(ヒドロコルチゾン)が挙げられる。コルチゾールは、グルココルチコイド核内レセプター、核内レセプターのステロイドスーパーファミリーのメンバー、レチノイドレセプターRARおよびRXRも含むレセプターの非常に大きなファミリー、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)、甲状腺レセプターおよびアンドロゲンレセプターへの天然リガンドである。コルチゾールは、他の活動中に、アミノ酸および脂質からのグルコース新生を刺激し、脂肪分解を刺激し、筋肉組織および脂肪組織からのグルコース摂取を阻害する。
【0006】
それゆえグルココルチコイドは、グルコース代謝と関連するそれらの活性により、およびそれらの構造により区別することができる。すべてのステロイドホルモンはその核構造がコレステロールに由来し、これは以下の構造および番号付けした式:
【化1】

で示される。
【0007】
グルココルチコイドはコレステロールの大多重環状誘導体であり;C11におけるヒドロキシル基および/またはC4とC5の間の二重結合を含むという特徴を有する。炭素5と6の間の二重結合は、グルココルチコイドの不可欠な部分ではなく、C17におけるいずれの特定のR基に独自のものでもない。
【0008】
コルチコステロイドは副腎皮質により放出されるステロイドホルモンであり;これらは鉱質コルチコイド(天然にのみ存在する鉱質コルチコイドはアルドステロンである)およびグルココルチコイドを含む。用語「コルチコステロイド」は、グルココルチコイドを意味するために用いることが多く、特に明記されなければ、これは本特許出願における意味であろう。典型的なグルココルチコイドとしては、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロン・アセトニド、トリアムシノロン・ジアセテート、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、ベクロメタゾン・ジプロピオネート、ベクロメタゾン・ジプロピオネート一水和物、ピバル酸フルメタゾン、酢酸ジフロラゾン、フルオシノロン・アセトニド、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、クロベタゾール・プロピオネート、デソキシメタゾン、フルオキシメステロン、フルプレドニゾロン(fluprednisolone)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾン・シピオネート、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、ピバル酸クロコルトロン、フルシノロン(flucinolone)、デキサメタゾン・21-酢酸塩、ベタメタゾン・17-吉草酸塩、イソフルプレドン(isoflupredone)、9-フルオロコルチゾン、6-ヒドロキシデキサメタゾン、ジクロリゾン、メクロリソン(meclorisone)、フルプレジデン(flupredidene)、ドキシベタソール、ハロプレドン、ハロメタゾン(halometasone)、クロベタゾン、ジフルコルトロン、酢酸イソフルプレドン(isoflupredone)、フルオロヒドロキシアンドロステンジオン、ベクロメタゾン、フルメタゾン、ジフロラゾン、クロベタゾール、コルチゾン、パラメタゾン、クロコルトロン、プレドニゾロン・21-ヘミコハク酸塩遊離酸、メタスルホ安息香酸プレドニゾロン、プレドニゾロン・テルブテート、トリアムシノロン・アセトニド・21-パルミチン酸塩、プレドニゾロン、フルオロメトロン、メドリゾン、ロテプレドノル、フルアザコート、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン・ヘキサアセトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロンおよびフルオシノニド、その誘導体、その塩およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物のいくつかは、本特許出願に定義されているように、GDであり、他のものはそのようなGDの将来の親化合物である。
【0009】
1950年に、副腎(天然)および合成グルココルチコイドに関する仕事について、ノーベル医学賞がHench、KendallおよびRichensteinに授与された。その時以来、ヒドロコルチゾンおよび合成グルココルチコイドデキサメタゾンおよびプレドニゾロンなどを含むが、これらに限定されないこれらの化合物は、炎症、炎症性疾患および急性喘息などの病態と闘う医師の武器の貴重な一部である。
【0010】
グルココルチコイドレセプター(GR)は哺乳動物の体内のほとんどすべての組織に見られる。グルココルチコイドレセプターなどの核内レセプターは、活性化されたときに、染色体DNAに結合し、特定の遺伝子の転写を開始または阻害する、リガンド依存転写因子である。結果として、ステロイドは体の種々の系に多彩な影響を及ぼす。
【0011】
歴史的に、グルココルチコイドの短期間の全身性または局所的使用は概して、重篤な副作用もなく、そのような使用の治療効果はときどき、特に関節炎などの炎症と関連する疾患の治療にかなり驚異的である。しかし、これらの化合物が有する多様性およびいくらか不十分に特徴付けられた効果のために、グルココルチコイドの持続使用、特にこれらの薬剤への持続的全身性曝露はときどき、耐糖能異常、糖尿病、体重増加、骨粗鬆症および脂肪再分配ならびに脆弱性および皮膚菲薄化などの種々の重篤な副作用を引き起こしうる。
【0012】
眼部病態(特に眼炎症)の治療におけるステロイドの局所使用もまた、よく知られている。臨床医は、眼の前房の病態の治療における短期使用に安全かつ有効であるステロイドの局所投与を見つけている。重篤な炎症を和らげるために、エタボン酸ロテプレドノル0.5%(Lotemax(登録商標))、酢酸プレドニゾロン(Pred Forte(登録商標))、リン酸プレドニゾロンナトリウム(Inflamase Forte(登録商標))およびリメキソロン(Vexol(登録商標))をうまく用いているが、フルオロメトロンは軽度〜中程度の炎症に処方され−さらにデキサメタゾンおよびヒドロコルトソン(hydrocortosone)はまた局所眼使用にも用いられる。トリアムシノロン(Kenalog 50(登録商標)−皮膚使用について承認)は、黄斑浮腫の治療のための認可外の硝子体内注射用医薬としてうまく用いられている。
【0013】
上記すべての局所ステロイド製剤は、主に表在性炎症または前区炎症のために設計され、および/または使用される。しかし、ステロイド薬の局所適用は後区に入る薬物の有意な濃度をもたらさない。実に、眼の表面に局所的に適用される薬物の分フラクションのみが眼内に行き着き、薬物の大半は前区内を含む眼の残りの部分に入る。Retisert(登録商標)は後区への送達のための非生分解性インプラントである。それはフルオシノロン・アセトニドを含み、慢性非感染性後部ブドウ膜炎の治療に認可されている。Retisert(登録商標)はまた、外科的除去を必要とする白内障を発症する眼の研究の90.3%とも関連している。本明細書にそのまま引用されるHudson, Henry L., Retinal Physician July 2005(www.retinalphysician.com/ article.aspx?article=100098)を参照のこと。近年、眼科医により、嚢胞性黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫および滲出型黄斑変性症などであるが、これらに限定されない病態に苦しむ患者の硝子体に注射することによるトリアムシノロン・アセトニド懸濁剤Kenalog(登録商標)40の使用がなされている。硝子体内における使用が報告されているデキサメタゾンおよびトリアムシノロン・アセトニドなどのわずかなステロイドは、拡散により前区組織に移動する傾向があり、これは重篤な所望でない副作用を引き起こしうる。
【0014】
さらに、2003年5月にOculex Pharmaceuticals社は、コルチコステロイドデキサメタゾン700μgを含む生分解性硝子体内インプラントの臨床的試行錯誤からの予備調査結果は、商標名Posurdex(登録商標)を有するインプラントが持続性黄斑浮腫に苦しむ患者の視力を改善するのに非常に有効であったことを示したことを公表した。
【0015】
後区の病態をステロイドにより治療するとき、ステロイドに対する前区組織の曝露を軽減することが特に好ましい−ステロイドの長期使用は水晶体白内障、眼性高血圧症およびステロイド誘発性緑内障の極めて高い偶発性を引き起こしうる。
【0016】
一部において、本発明は、嚢胞性黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎および滲出型黄斑変性症など(これらに限定されない)の後区の種々の病態のC17-および/またはC21-置換GDなどのGDの投与により治療して、具体的に眼の後区組織を標的化し、前区への移動に耐える方法に関する。他の具体的態様において、本発明はそのようなグルココルチコイド成分を含む組成物およびそのようなグルココルチコイドの投与方法に関する。
【0017】
特に好ましい具体的態様において、1以上のGDを含む組成物は、例えば注射または外科的切断により後区に直接投与される。さらなる具体的態様において、組成物は、GD化合物を含む結晶または非晶質粒子の流動液または懸濁液にて硝子体液内に直接注射される。別の具体的態様において、組成物は硝子体内インプラント内に含まれる。GDは限定されないで、そのようなインプラントの容器に含まれてもよいか、マトリックスが分解するように放出されるように生分解性インプラントマトリックスに連結されてもよいか、または生分解性ポリマーマトリックスと物理的に混合されてもよい。
【0018】
さらに、若干好ましくは、本発明のGDは局所眼投与、結膜下または強膜下注射など(これらに限定されない)により間接的に後区に投与することができる。
【0019】
本発明のGDはすべて、本発明と一致したいくつかの特性を有する。まず、GDは比較的低い溶出速度を有するべきである。「比較的低い溶出速度」は、固体から硝子体液相への溶出速度を意味し、トリアムシノロン・アセトニドよりも低く、好ましくはトリアムシノロン・アセトニドの50%以下の溶出速度、さらにより好ましくはトリアムシノロン・アセトニドの25%以下の溶出速度、トリアムシノロン・アセトニドの10%以下の溶出速度である。
【0020】
次に、GDは硝子体液への比較的低い溶解度を有するべきである。「比較的低い溶解度」は、トリアムシノロン・アセトニドよりも低い溶解度を意味し、好ましくはトリアムシノロン・アセトニドの50%以下の溶出速度、さらにより好ましくはトリアムシノロン・アセトニドの25%以下の溶出速度、またはトリアムシノロン・アセトニドの10%以下の溶出速度である。
【0021】
溶解度の別の測定において、本発明に用いられるGDは、室温、常圧(海面)にて約21 mg/ml未満、好ましくは約10 mg/ml未満、さらにより好ましくは約5 mg/ml未満、または約2 mg/ml未満、または約1 mg/ml未満、または約0.5 mg/ml未満または約0.2 mg/ml未満または約0.14 mg/ml未満の水溶解度を有する。
【0022】
最後に、GDは網膜組織の細胞膜によく分配され、網膜組織内でGDの高い局所濃度を素早く達成するために非常に脂溶性であるべきである。これは、GDが室温、常圧(海面)にて、2.53よりも高いか、または3.00よりも高いか、または約3.5よりも高いか、または約4.00よりも高いか、または約4.20よりも高い親油性(log P、ここに、Pはオクタノール/水分配係数である)を有することを意味する。
【0023】
最も好ましいGDはこれらすべての特性を有するが、GDは、硝子体内送達されたときに、後房に残存する治療的に活性な特性を有する限り、そのようなすべての特性より低い特性を有することができるが、前房中に治療的有効な濃度にて存在しない。
【0024】
硝子体腔は水晶体の後部表面を浸し、水晶体を取り囲み、瞳孔を通して延びる流路により前房につながる。硝子体中の溶質(可溶化グルココルチコイドなど)は水晶体、または水晶体の回りでは前房流出器官(小柱網、シュレム管)の前方に拡散することができ、それにより、ステロイド誘発性白内障、眼球高血圧症または緑内障を引き起こしうる。
【0025】
本発明者らは、硝子体液に難溶性であり、固体から可溶形態への遅い溶解速度を有するステロイドは、前区によく移動しないことを見出した。理論によりおよび説明のみとして本発明の範囲を限定するものではないが、出願人は本発明のGDは、硝子体中のその溶解性の欠乏のために、示された経路を通って可溶性ステロイドを前房に移動させるために十分な拡散力に乏しいと考える。本発明のGDの親油性は、同時に水性硝子体液からの網膜細胞膜の脂質二層への分割を促進する。これは、網膜組織への治療的利益を提供するのに十分な濃度であるが、水晶体および前区組織への実質的に減少された曝露を克服するのに十分に低いレベルにて、硝子体から網膜へのGDの低レベル硝子体内流動を作成すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明物質のGDは、グルココルチコイドレセプターと結合または相互作用し、これを活性化する薬剤を意味する。好ましくは、該薬剤は鉱質コルチコイドレセプターにより非常に、さらにより好ましくは鉱質コルチコイドレセプターの少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍、または少なくとも50倍、または少なくとも100倍または少なくとも1000倍の程度にてGRと結合または相互作用する。治療成分のGDは、デキサメタゾンおよびトリアムシノロン・アセトニドなどの同様に投与される他のステロイドよりも大きな硝子体液/房水濃度比および硝子体(vitreal)半減期を有する。
【0027】
後方に向けられたGDは、例えば潜在的GDをウサギ硝子体に注射することによりスクリーニングすることができる。硝子体液および房水は時間の関数としてサンプリングすることができ、潜在的GDの硝子体および房水中の量を測定することができる。潜在的GDの硝子体濃度は時間の関数としてプロットすることができ、標準的な薬物動態学的技術を用いて、GDについての硝子体半減期および潜在的GDのクリアランスを計算することができる。
【0028】
同様に、GDの水性濃度は時間の関数としてプロットすることができ、標準的薬物動態学的技術は潜在的GDの前部クリアランスを決定するために用いることができる。所望の硝子体半減期を有し、および/または房水よりも硝子体液に選択的に存在する薬剤は、本発明物質にて用いられる。例えば約3時間より長い硝子体半減期を有する薬剤は、本発明の眼科的治療物質のために選択することができる。
【0029】
後区の病態
一部において、本発明は一般に、眼の後区を治療する方法に関する。好ましくは眼の後区は、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜、視神経および網膜色素上皮(RPE)を含むが、これらに限定されるものではない。本発明と関連する疾患または病態は、眼の後部におけるグルココルチコイド、特にGDの作用により予防されるかまたは治療することができる任意の疾患または病態を含むことができる。本発明の範囲を何ら限定するものではないが、本発明に従って、眼の後部における活性薬物の作用により予防または治療することができる疾患または病態のいくつかの例としては、黄斑浮腫、前部ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞症、非滲出性加齢性黄斑変性症、滲出性加齢性黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、急性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫などの黄斑変性/網膜変性;
【0030】
急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾(birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多発性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(mewds)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、蛇行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群(Vogt-Koyanagi-and Harada syndrome)などのブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎;網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、虚血性眼症候群、網膜動脈毛細血管瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、片網膜静脈閉塞症(hemiretinal vein occlusion)、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、糖衣状分枝血管炎(frosted branch angiitis)、鎌状赤血球網膜症および他の異常血色素症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症、およびイールズ(Eales)病などの血管疾患/滲出性疾患;交感性眼炎、ブドウ膜(uvetic)網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザーにより引き起こされる病態、光線力学療法により引き起こされる病態、光凝固術、術中の潅流低下、放射線網膜症および骨髄移植網膜症などの外傷性/外科的病態;増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、および増殖性糖尿病性網膜症などの増殖性障害;
【0031】
眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染と関連する網膜疾患、HIV感染と関連する脈絡膜疾患、HIV感染と関連するブドウ膜の疾患(uveitic disease)、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外側部網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広範型片側性亜急性神経網膜炎およびハエウジ症などの感染症;網膜色素変性症、網膜ジストロフィーを伴う全身性障害、先天性停在性夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病および黄色班眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、ソルスビー(Sorsby's)眼底ジストロフィー、良性集中的黄斑変性、ビエッティ(Bietti's)結晶ジストロフィー、および弾性線維性仮性黄色腫などの遺伝性障害;網膜剥離、黄斑円孔および巨大網膜裂孔などの網膜裂傷/網膜裂孔;腫瘍を伴う網膜疾患、網膜色素上皮の先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の混合型(combined)過誤腫、網膜芽腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、および眼内リンパ系腫瘍などの腫瘍;および点状脈絡膜内層症、急性後部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変性、および急性網膜色素上皮炎などの眼の後部に影響する他の混合型疾患を挙げることができる。
【0032】
好ましくは該疾患または病態は、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、加齢性黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜剥離、網膜裂傷、ブドウ膜炎(uveitus)またはサイトメガロウイルス性網膜炎である。治療目標が損傷による視力の欠乏または網膜細胞もしくは視神経細胞の欠乏を予防するか、またはその発生を軽減すること(すなわち神経防護作用)であるため、緑内障もまた、後部眼症状とみなすことができる。
【0033】
特許請求の範囲およびその方法に用いられる本発明の物質としては、限定されるものではないが、液体含有組成物(製剤など)およびポリマー薬物送達系が挙げられる。本発明の組成物は、眼科系療法に用いられる他の液体含有組成物などの溶液剤、懸濁剤、乳剤などを含むと理解することができる。ポリマー薬物送達系はポリマー成分を含み、生分解性インプラント、非生分解性インプラント、生分解性ミクロスフェアなどの生分解性微粒子を含むと理解することができる。本発明の薬物送達系はまた、錠剤、ウエハー、ロッド、シートなどの形態にて成分を包含すると理解することもできる。ポリマー薬物送達系は固体、半固体または粘弾性物であることができる。
【0034】
本明細書において、「眼周囲」投与は、眼球後方領域、結膜下領域、テノン嚢下領域、脈絡膜上領域もしくは腔、および/または強膜内領域もしくは腔への治療成分の送達を意味する。例えば、後部に向けられたGDは水、食塩水、ポリマー液体もしくは半固体担体、リン酸緩衝液または他の眼科的に許容される液体担体と関連しうる。本発明の液体含有組成物は好ましくは、注射用形態である。すなわち、該組成物は本明細書にそのまま引用されるシリンジおよび針または他の同様の器具(例えば米国特許公報番号2003/0060763を参照のこと)を用いた硝子体内注射などにより眼内投与することができるか、または該組成物は注射器具を用いて眼周囲投与することができる。
【0035】
本明細書において、用語「治療的有効」な量または濃度は、未治療の眼と比較して、眼の後区に適用するときに、後区に影響する疾患、病態または障害の少なくとも1の症状を改善するのに十分なGDまたはGD含有組成物の量または濃度を意味する。
【0036】
「生物学的に有意な量」は、未治療の眼と比較して、a)眼圧またはb)白内障のいずれかまたは両方の形成に統計的に有意な増大をもたらすのに十分な眼の前区に存在するGDまたは他のステロイドの量を意味する。
【0037】
本発明の方法および組成物のGDは、約0.05%以下、または約0.1%または約0.2%または約0.5%〜約5%または約10%または約20%または約30%以上(w/v)の範囲の量の組成物にて与えることができる。好ましい具体的態様において、GDは溶液(過飽和溶液を含むが、これらに限定されない)に含まれうるが、GDは少なくとも一部において、懸濁液中の結晶または粒子として存在する。
【0038】
硝子体内投与組成物について、比較的高濃度のGD(例えば結晶の形態で)の提供は、他の組成物と比較して、眼の後区にて同量以上の治療成分を提供するために、軽減された量の組成物が眼の後区に置くかまたは注射するために必要であることができるという点において有益であることができる。
【0039】
いくつかの具体的態様において、物質はさらに、GDおよび賦形剤成分を含む。賦形剤成分は、可溶化剤、粘性誘発剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤などを含むと理解することができる。
【0040】
本発明の組成物のいくつかの具体的態様において、可溶化剤はシクロデキストリンであることができる。すなわち、本発明の物質は組成物の約0.1% (w/v)〜約5% (w/v)の量にて提供されるシクロデキストリン成分を含むことができる。さらなる具体的態様において、シクロデキストリンは〜約10% (w/v)の本明細書記載のいくつかのシクロデキストリンを含む。さらなる具体的態様において、シクロデキストリンは〜約60% (w/v)の本明細書記載のいくつかのシクロデキストリンを含む。本発明の組成物の賦形剤成分は、アルファ-シクロデキストリン、ベータ-シクロデキストリン、ガンマ-シクロデキストリンおよびその誘導体などの1以上のタイプのシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体を含むことができる。当業者に理解されるように、シクロデキストリン誘導体は、例えば治療剤の溶解度および/または安定性を増強し、および/または治療剤の所望でない副作用を軽減し、および/または治療剤と包括的な錯体を形成するために、シクロデキストリンとして十分に機能するためのシクロデキストリンの特徴的な化学構造を有する任意の置換された、そうでなければ修飾された化合物を意味する。
【0041】
本発明の物質の粘性誘発薬剤は、これらに限定されるものではないが、組成物内の治療成分を安定化するのに有効なポリマーを含む。粘性誘発成分は組成物の粘性の増大、有利には実質的な増大に有効な量にて存在する。本発明の組成物の粘性の増大は、再懸濁処理を必要とせずに、長期間、例えば少なくとも約1週間組成物中にて実質的に一様な懸濁液にてGD含有粒子などのGDを維持する本発明の組成物の能力を増強することができる。いくつかの本発明の組成物の比較的高い粘性はまた、本明細書記載のように、例えばそのようなGDを実質的に一様な懸濁液にて長期間維持しながら、少なくとも組成物が増大した量または濃度のGDを有する能力を有することを支援するさらなる利益も有することができる。
【0042】
直接眼内投与
好ましくは、本発明のGDは、溶液、懸濁液の投与などの手段またはGDの結晶もしくは粒子の他の運搬手段により、または硝子体内インプラントの一部として、例えば切断もしくは注射により、眼の硝子体腔に直接投与する。
【0043】
眼の後房に含まれる硝子体液は粘性水性物質である。それゆえ実質的に低粘性の流動体または懸濁液の後区への注射は、眼内に異なる密度の二相または層の存在をもたらすことができ、次いで低密度溶液のGD粒子または浮遊物の「プール」をもたらしうる。注射または挿入された物質が固体の形態にて(例えば結晶、粒子または縫合されたインプラントもしくは容器として)薬物を含む場合には、固体物質は眼底に落ち、溶解するまでそこにとどまるだろう。さらに、硝子体と注射または挿入されたGD含有組成物の間の実質的に異なる屈折率により、視力を損なうことがある。
【0044】
本発明の一部として記載されるGDなどの治療的組成物は、硝子体液のものと近似のような比較的高粘性を有する粘性製剤にて懸濁することができる。そのような粘性製剤は粘性誘発成分を含む。本発明の治療剤は、限定されるものではないが、水性注射剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、ゲルとして硝子体内投与するか、または生分解性もしくは非生分解性の持続放出もしくは拡張放出インプラントにて挿入することができる。
【0045】
粘性誘発成分は、好ましくはポリマー成分および/または少なくとも1つの粘弾性剤、例えば眼科用外科手順に有用な物質を含む。
【0046】
有用な粘性誘発成分の例としては、ヒアルロン酸、カルボマー、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、その誘導体および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
粘性誘発成分の分子量は、約2百万ダルトンまで、例えば約10,000ダルトン以下〜約2百万ダルトン以上の範囲であることができる。特に有用なある具体的態様にて、粘性誘発成分の分子量は、約100,000ダルトンまたは約200,000ダルトン〜約1百万ダルトンまたは約1.5百万ダルトンの範囲である。
【0048】
非常に有用なある具体的態様において、粘性誘発成分はポリマー性ヒアルロン酸成分、例えば金属ヒアルロン酸成分であり、好ましくはアルカリ金属ヒアルロン酸、アルカリ土類金属ヒアルロン酸およびその混合物から選択され、さらにより好ましくはヒアルロン酸ナトリウムおよびその混合物から選択される。そのようなヒアルロン酸成分の分子量は、好ましくは約50,000ダルトンまたは約100,000ダルトン〜約1.3百万ダルトンまたは約2百万ダルトンの範囲である。
【0049】
ある具体的態様において、本発明のGDは約0.01%〜約0.5%(w/v)以上の範囲の量のポリマー性ヒアルロン酸成分を含むことができる。さらに有用な具体的態様において、ヒアルロン酸成分は組成物の約1%〜約4%(w/v)の範囲の量にて存在する。後者の場合には、非常に高いポリマー粘性は、いずれの懸濁された薬物の堆積速度も遅め、注射されたGDのプールを予防する、ゲルを形成する。
【0050】
特許請求の範囲における発明の態様のGDは、本明細書において具体的に同定されている任意のまたはすべてのそのような治療的に有用なGDの塩、プロドラッグ、コンジュゲートまたは前駆体を含むことができる。
【0051】
いくつかの具体的態様において、少なくとも一つの治療剤がGDの前区への移動および/またはGDの後区の組織への浸透を予防するのに重要であるとして本明細書に記載される1以上の特性を有するGDである限り、本発明の組成物はそのような2以上の治療剤を含むことができ、該組織としては、網膜組織を挙げることができるが、これに限定されない。言い換えると、本発明の治療的組成物は投与されるが、そのような少なくとも一つの治療剤がGDである限り、第一治療剤および1以上のさらなる治療剤または治療剤の組合せを含むことができる。そのような組成物における1以上の治療剤は粒子または結晶として形成されるか、またはそのような形態で存在することができる。
【0052】
本発明のこれらの態様において、粘性誘発成分は組成物の粘性を増大し、有利には実質的に増大する有効量にて存在する。本発明を任意の特定の操作の理論に限定するものではないが、水の粘性をよく超える値、例えば0.1/秒のずり速度にて少なくとも約100 cpsまでの組成物の粘性を増大し、ヒトまたは動物の眼の後区への置き換え、例えば注射のために非常に有効な組成物が得られることが考えられる。これらのGD含有組成物の後区への有利な置き換えまたは注射能力に加えて、本発明の組成物の比較的高い粘性によりそのような組成物の治療成分(例えばGD含有粒子を含む)を組成物において実質的に均一の懸濁物にて長期間維持する能力が増強されると考えられており、組成物の保存安定性が支援されうる。
【0053】
有利なことに、この態様の本発明の組成物は、0.1/秒のずり速度にて少なくとも約10 cpsまたは少なくとも約100 cpsまたは少なくとも約1000 cps、より好ましくは少なくとも約10,000 cps、さらにより好ましくは少なくとも約70,000 cps以上、例えば約200,000 cpsまたは約250,000 cpsまたは約300,000以上までの粘性を有することができる。特定の具体的態様において、本発明の組成物は上記の比較的高い粘性を有するだけでなく、好ましくは27ゲージ針によりまたは30ゲージ針により有効にヒトまたは動物の眼の後区に入れ、例えば注射することができるための能力を有するかまたはそのために構築もしくは構成される。
【0054】
粘性誘発成分は好ましくは、粘性製剤が例えば27ゲージ針などの狭い開口部を通して、高いせん断条件下、眼の後区を通過するかまたは注射されるので、組成物の粘性がそのような通過中に実質的に軽減されるようなせん断薄成分である。そのような通過後に、組成物は、眼内の懸濁液中の任意のGD含有粒子を維持するために、実質的にその注射前粘性を回復する。
【0055】
いずれの眼科的に許容される粘性誘発成分も本発明のGDに一致して用いることができる。そのような多くの粘性誘発成分は用いられる眼用組成物内または眼内にて提示されおよび/または用いられている。粘性誘発成分は組成物に所望の粘性を提供するのに有効な量にて存在する。粘性誘発成分は有利に、約0.5%または約1.0%〜約5%または約10%または約20% (w/v)の範囲の量の組成物にて存在する。用いられる粘性誘発成分の具体的な量は、限定されないが、例えば用いられる具体的な粘性誘発成分、用いられる粘性誘発成分の分子量、製造されおよび/または用いられるGD含有組成物について所望な粘性、および同様の因子などの多くの因子に依存する。
【0056】
生体適合性ポリマー
本発明の別の具体的態様において、治療剤(少なくとも一のGDを含む)は、GDと眼の後区への投与に適切な生体適合性ポリマーを含む治療剤を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる組成物にて眼球内に送達することができる。例えば、組成物は、限定されないで、眼内インプラントまたは液体もしくは半固体ポリマーを含むことができる。いくつかの眼内インプラントは米国特許番号6,726,918;6,699,493;6,369,116;6,331,313;5,869,079;5,824,072;5,766,242;5,632,984および5,443,505などの刊行物に記載されており、本明細書に引用されまたは言及されるこれらおよびすべての他の刊行物は、特に明記されなければ、本明細書にそのまま引用される。これらは特に好ましいインプラントの例示のみであり、他のものが当業者に入手可能であろう。
【0057】
GD含有治療剤と組み合わされるポリマーは、ポリマー成分であると理解することができる。いくつかの具体的態様において、粒子はD,L-ポリラクチド(PLA)またはラテックス(カルボキシレート修飾ポリスチレン樹脂)を含むことができる。他の具体的態様において、粒子はD,L-ポリラクチド(PLA)またはラテックス(カルボキシレート修飾ポリスチレン樹脂)以外の物質を含むことができる。いくつかの具体的態様において、ポリマー成分は多糖を含むことができる。例えばポリマー成分はムコ多糖を含むことができる。少なくとも一つの具体的態様において、ポリマー成分はヒアルロン酸である。
【0058】
しかし、さらなる具体的態様にて、GDの投与方法にかかわらず、ポリマー成分は、天然源または人工由来であるか否かにかかわらず、哺乳動物の体内に有用ないずれのポリマー物質も含むことができる。本発明の目的のための有用なポリマー物質のいくつかのさらなる例としては、炭水化物ベースポリマー(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、デキストリン、シクロデキストリン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸およびキトサンなど)、タンパク質ベースポリマー(ゼラチン、コラーゲンおよびグリコールタンパク質など)およびヒドロキシ酸ポリエステル(生体内分解性(bioerodable)ポリラクチド-coグリコリド(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリホスファゼンおよびポリオルトエステルなど)が挙げられる。ポリマーはまた、架橋され、混合され、または本発明におけるコポリマーとして用いることもできる。他のポリマー担体としては、アルブミン、ポリアンヒドリド、ポリエチレングリコール、ポリビニルポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ピロリドンおよびポリビニルアルコールが挙げられる。
【0059】
非侵食ポリマーのいくつかの例としては、シリコン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリビニルアセテート、ポリウレタン、エチルビニルアセテート誘導体、アクリル樹脂、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋ポリビニルピロリドン、ポリスチレンおよびセルロースアセテート誘導体が挙げられる。
【0060】
これらのさらなるポリマー物質は、本明細書に開示されるか、または硝子体内投与を含む任意の方法における使用のための治療的に有用なGD剤を含む組成物に有用であることができる。例えば、限定されないで、PLAまたはPLGAは、懸濁液中の粒子としてまたはインプラントの一部として本発明における使用のためにGDに連結することができる。この不溶なコンジュゲートはゆっくりと時間をかけて侵食され、それにより連続的にGDを放出するだろう。
【0061】
用語「生分解性ポリマー」はインビボにて分解するポリマーであり、そのポリマーの侵食は時間をかけて治療的なGD剤の放出と同時にまたはそれに次いで起こる。用語「生分解性」および「生体内分解性」は均等であり、本明細書において同じ意味で用いられる。生分解性ポリマーは2より多い異なるポリマー単位を含むホモポリマー、コポリマーまたはポリマーであることができる。
【0062】
本明細書において用語「治療的有効量」は、後区の病態を治療するために、または眼の前区への有意な消極的もしくは有害な副作用をもたらさないで眼外傷もしくは眼損傷を軽減もしくは予防するために必要なGD剤のレベルもしくは量である。
【0063】
製剤ビヒクル
投与形態または形態(例えば溶液、懸濁液にて、局所として、注射用薬剤またはインプラント用薬剤)にかかわらず、本発明のGD含有治療用組成物は、医薬的に許容されるビヒクル成分にて投与されよう。治療剤はまた、組成物の製造における医薬的に許容されるビヒクル成分と組み合わせることもできる。言い換えると、本明細書に開示されている組成物は、治療成分および有効量の医薬的に許容されるビヒクル成分を含むことができる。少なくとも一つの具体的態様において、ビヒクル成分は水性ベースである。例えば、組成物は水を含むことができる。
【0064】
いくつかの具体的態様において、GD含有治療剤はビヒクル成分にて投与され、有効量の少なくとも一つの粘性誘発成分、再懸濁成分、保存成分、等張化成分および緩衝成分も含むことができる。いくつかの具体的態様において、本明細書に開示される組成物は、別の保存成分を含まない。他の具体的態様において、組成物は適宜別の保存成分を含んでいてもよい。さらに、組成物は再懸濁成分を含まなくてよい。
【0065】
GD含有治療剤の局所または眼内投与のための製剤(そのような薬剤を含むインプラントまたは粒子が挙げられるが、これらに限定されない)は、好ましくは多量の液体水を含むだろう。そのような組成物は、例えば眼に用いられる前に、好ましくは滅菌形態にて製剤化される。上記緩衝成分は、眼内製剤にて存在する場合に、組成物のpHを制御するのに有効な量にて存在する。製剤は、緩衝成分に加えてまたはその代わりに、組成物の等張性または浸透圧を制御するのに有効な量にて少なくとも一つの等張成分を含むことができる。実に、同じ成分は、緩衝成分および等張成分の両方として供することができる。より好ましくは、本発明の組成物は緩衝成分および等張成分の両方を含む。
【0066】
緩衝成分および/または等張成分は、いずれかが存在する場合に、眼科分野にて慣習的であり、よく知られているものから選択することができる。そのような緩衝成分の例としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などおよびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸緩衝液は特に有用である。有用な等張成分としては、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、任意の他の適切な眼科的に許容される等張成分およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性等張成分は、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセロールなどの糖に由来するポリオールを含むことができる。
【0067】
用いられる緩衝成分の量は、好ましくは約6〜約8、より好ましくは約7〜約7.5の範囲の組成物のpHを維持するのに十分な量である。用いられる等張成分の量は、好ましくはそれぞれ約200〜約400、より好ましくは約250〜約350, mOsmol/kgの範囲にて本発明の組成物への浸透圧を提供するのに十分である。有利に、本発明の組成物は実質的に等張である。
【0068】
本発明の組成物または本発明に用いられる組成物は、本発明の組成物に1以上の有用な特性および/または利益を提供するのに有効な量にて1以上の他の成分を含むことができる。例えば、本発明の組成物が実質的に別の保存成分を含まないことがあるにもかかわらず、他の具体的態様において、本発明の組成物は、有効量の保存成分、好ましくは組成物が置かれる眼の後区における組織とベンジルアルコールよりも両立可能であるか、または扱いやすい成分を含む。そのような保存成分の例としては、限定されないで、塩化ベンザルコニウム(「BAC」または「BAK」)およびポリオキサマーなどの第四級アンモニウム保存剤;ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などのビグアニド(bigunanide)保存剤;メチルおよびエチルパラベン;ヘキセチジン;安定化二酸化塩素、金属クロライトなどのクロライト成分;他の眼科的に許容される保存剤などおよびその混合物が挙げられる。本発明の組成物における保存成分の濃度は、もしあれば、組成物を保存するのに有効な濃度であり、(用いられる特定の保存剤の性質に応じて)組成物の約0.00001%〜約0.05% (w/v)または約0.1% (w/v)の範囲にて一般に用いられることが多い。
【0069】
治療剤の硝子体内送達は、液体含有組成物を硝子体に注射することにより、またはインプラントおよびミクロスフェアなどの微粒子などのポリマー薬物送達系を硝子体に置くことにより、達成することができる。眼内の配置のための生体適合性インプラントの例は、米国特許番号4,521,210;4,853,224;4,997,652;5,164,188;5,443,505;5,501,856;5,766,242;5,824,072;5,869,079;6,074,661;6,331,313;6,369,116および6,699,493などの多くの特許に開示されている。
【0070】
本発明のGD含有治療剤の眼の内部への投与の他の経路は、患者への薬物の眼周囲送達を含むことができる。眼の後区への薬物の直接的な浸透は、血液網膜関門により制限される。血液網膜関門は内部および外部血液関門に解剖学的に分離される。溶質または薬物の眼周囲空間からの内部眼球構造への移動は、網膜色素上皮(RPE)、外側部血液網膜関門により制限される。この構造の細胞は、閉鎖帯(zonulae oclludentae)細胞間結合部により連結する。RPEは、RPEを横切る溶質の傍細胞輸送を制限する堅固なイオン輸送障壁である。血液網膜関門を横切るたいていの化合物の透過性は非常に低い。しかし、クロラムフェニコールおよびベンジルペニシリンなどの脂溶性化合物は、血液網膜関門を浸透し、全身投与後に硝子体液内にかなりの濃度を達成することができる。化合物の親油性はその浸透速度と関連し、受動的細胞拡散と一致する。しかし、血液網膜関門は、輸送機序の非存在下、極性または荷電した化合物に不浸透性である。
【0071】
典型的なGDの構造
本発明のGDは、1)グルココルチコイドレセプター(グルココルチコイド)と選択的に結合し活性化し、2)トリアムシノロン・アセトニド(21μg/ml)より低い水溶解度および/またはトリアムシノロン・アセトニド(2.53)より大きい親油性(log P)を有する化合物である。Log Pは親油性係数(ここに、Pはオクタノール/水分配係数である)である。
【0072】
本特許出願に従い、基本的ステロイド環構造は以下の式:
【化2】

で示されるとおりである。
【0073】
例えば、グルココルチコイドデキサメタゾンのリン酸塩は、以下の式:
【化3】

で示される構造を有する。
【0074】
同様に、グルココルチコイドトリアムシノロン・アセトニドは以下の式:
【化4】

で示される構造を有する。
【0075】
本発明の組成物および方法にて用いられるグルココルチコイド誘導体(GD)はまた、グルココルチコイドレセプターと選択的に結合し、活性化し、トリアムシノロン・アセトニド(21μg/ml)より低い水溶解度および/またはトリアムシノロン・アセトニド(2.53)より高い親油性(log P)も有する。
【0076】
有用な具体的態様において、本発明のGDは、C17位および/またはC21位(後者の炭素原子が存在する場合)にてグルココルチコイドへのエステル結合により連結するアシル基を含む。好ましくは、エステルはモノエステル結合である。しかし、別の具体的態様において、エステルはジエステル結合である。有用なアシル基としては、限定されないで、アセチル、ブチリル、バレリル、プロピオニルまたはフロイル基が挙げられる。別の潜在的に有用な基は、ベンゾイル基および/または他の置換もしくは非置換の環状もしくは芳香族アシル基を含むだろう。理想的には、アシル基は高い疎水性を有するべきであり;従ってアルキルまたは芳香族アシル基は本出願に特に好ましいが、極性置換基を含むものはあまり好ましくなく、本発明のいくつかの具体的態様において存在しない。本発明のいくつかの具体的態様において、アシル基は、チオールエステルによりステロイドに連結する。
【0077】
いくつかのC17および/またはC21アシルエステル置換グルココルチコイドは、限定されないが、局所皮膚または全身投与などの経路により炎症および他の病態の治療のために用いられる。例えば、ベクロメタゾンジプロピオネートは、気管支喘息の治療に用いられ、鼻腔ポリープを縮小させるために用いられる。それは粉末形態に製剤化され、吸入により投与される。以下の式:
【化5】

で示される構造を有する。
【0078】
ベクロメタゾン・ジプロピオネートはときどき単に「ベクロメタゾン」と称されるが、これは化学命名法の不正確な使用である。非置換ベクロメタゾンは以下の式:
【化6】

で示される構造を有する。
【0079】
別の化合物は以下の式:
【化7】

で示される構造を有するフルチカゾンプロピオネートを含む。
【0080】
疎水性置換基を欠く「親」グルココルチコイド(例えばC17および/またはC21位における疎水性(好ましくはアシルエステル)基の指定された置換を欠く同一の化合物)に対して、本発明に一致してそのような置換の付加は、水性媒体における溶解度の減少および親油性係数(log P、ここに、Pはオクタノール/水分配係数である)の増大を引き起こし、結晶から可溶化相への化合物の溶解速度を遅くする傾向がある。これらの生理化学的属性は実験的に、後区から前区に移動する化合物の量を軽減し、それにより前区関連副作用の軽減をもたらす。同時に、これらの化合物は、網膜、RPEなどの後区の組織によりよく移動することができ、それによりそのような組織に選択的に向けられる。GDが結晶または微粒子型にて硝子体に投与されるとき、GDは親グルココルチコイドと比較して、硝子体内送達による拡張された作用期間を有する。
【0081】
現在好ましいGDの非排他的なリストとしては、デキサメタゾン 17-アセテート、デキサメタゾン 17,21-アセテート、デキサメタゾン 21-アセテート、クロベタゾン 17-ブチレート、ベクロメタゾン 17,21-ジプロピオネート、フルチカゾン 17-プロピオネート、クロベタゾール 17-プロピオネート、ベタメタゾン 17,21-ジプロピオネート、アルクロメタゾン 17,21-ジプロピオネート、デキサメタゾン 17,21-ジプロピオネート、デキサメタゾン 17-プロピオネート、ハロベタソール 17-プロピオネートおよびベタメタゾン 17-吉草酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物の眼の後区の病態の治療のための使用、特に硝子体内、結膜下、強膜下または局所眼投与などの眼投与による使用は、上記の後部眼疾患の治療に存在する療法に対して有意な治療的改善を与え、これは限定されないで、萎縮型および滲出型(dry and wet)ARMD、糖尿病性黄斑浮腫、増殖性糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎および眼腫瘍を含むだろう。
【0082】
所望ならば、緩衝剤は、組成物のpHを制御するのに有効な量にて提供することができる。等張化剤は、組成物の等張性または浸透圧を制御するのに有効な量にて提供することができる。本発明のいくつかの組成物は、緩衝成分および等張成分の両方を含み、これは本明細書記載の1以上のマンニトールなどの糖アルコールまたは塩化ナトリウムなどの塩を含むことができる。緩衝成分および等張成分は、眼科分野にて通常のものおよびよく知られているものから選択することができる。そのような緩衝成分の例としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液などおよびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸緩衝液は特に有用である。有用な等張化成分としては、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、いずれの他の適切な眼科的に許容される等張成分およびその混合物も挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
用いられる緩衝成分の量は、好ましくは約6〜約8、より好ましくは約7〜約7.5の範囲にて組成物のpHを維持するのに十分である。用いられる等張成分の量は、好ましくはそれぞれ約200〜約400、より好ましくは約250〜約350, mOsmol/kgの範囲にて本発明の組成物に浸透圧を提供するのに十分である。有利なことに、本発明の組成物は実質的に等張である。
【0084】
本発明の物質に用いることができる保存剤としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メチルおよびエチルパラベン、ヘキセチジン、安定化二酸化塩素、金属クロライトなどのクロライト成分、他の眼科的に許容される保存剤などおよびその混合物が挙げられる。本発明の組成物における保存成分の濃度は、もしあれば、組成物を保存するのに有効な濃度であり、約0.00001%〜約0.05%または約0.1% (w/v)の組成物の範囲であることが多い。
【0085】
本発明の組成物は、当業者により通常知られている従来技術を用いて産生することができる。例えば、GD含有治療成分は液体担体と組み合わせることができる。組成物は滅菌することができる。保存剤不含の具体的態様などのいくつかの具体的態様において、組成物は滅菌され、単回用量にてパッケージ化することができる。組成物は、組成物の単位用量の単一投与後に、廃棄することができる眼内ディスペンサーにて予めパッケージ化することができる。
【0086】
本発明の組成物は、適切な混合/処理技術、例えば1以上の従来の混合技術を用いて製造することができる。製造処理は、硝子体内もしくは眼周囲への配置またはヒトもしくは動物の眼への注射に有用な形態にて本発明の組成物を提供するために選択すべきである。有用な一つの具体的態様において、濃縮治療成分ディスパージョンは、GD含有治療成分を水と組み合わせ、賦形剤(粘性誘発成分以外)を最終組成物に包含させることにより製造される。成分を混合し、治療成分を分散させた後、オートクレーブで処理した。粘性誘発成分は滅菌されたものを購入するか、または従来の処理、例えば希釈溶液をろ過した後、凍結乾燥して滅菌粉末を得ることにより滅菌することができる。滅菌粘性誘発成分は水と組み合わせて水性濃縮物を製造する。濃縮治療成分ディスパージョンを混合し、スラリーとして粘性誘発成分濃縮物に加える。所望の組成物を提供するのに十分な量(q.s.)にて水を加え、組成物を均一になるまで混合する。
【0087】
ある具体的態様において、投与に適切な滅菌、粘性懸濁液はGDを用いて製造する。そのような組成物を製造する方法は、滅菌懸濁バルク配合(bulk compounding)および無菌充填を含むことができる。
【0088】
本発明の物質の他の具体的態様は、単一投与後の拡張された時間、持続した薬物送達を提供することができるポリマー薬物送達系の形態である。例えば、本発明の薬物送達系は、少なくとも約1月または約3月または約6月または約1年または約5年以上の間GDを放出することができる。従って、本発明の物質のそのような具体的態様は、少なくとも一つの硝子体内投与および眼周囲投与により患者に投与するのに適切なポリマー薬物送達系の形態にて治療成分と関連するポリマー成分を含むことができる。
【0089】
ポリマー薬物送達系は生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、生分解性ポリマー微粒子およびその組合せの形態であることができる。インプラントはロッド、ウエハー、シート、フィラメント、球などの形態であることができる。粒子は一般に、本明細書に開示されるインプラントよりも小さく、形状が変化しうる。例えば、本発明のいくつかの具体的態様は実質的に球状粒子を利用する。これらの粒子はミクロスフェアであると理解することができる。他の具体的態様は、無作為に構成された粒子、例えば1以上の平らまたは平面の表面を有する粒子を利用することができる。薬物送達系は予め測定されたサイズ分布を有するそのような粒子の集合を含むことができる。例えば、その集合の大部分は所望の長さの直径を有する粒子を含むことができる。
【0090】
本明細書において、本発明の薬物送達系のポリマー成分は、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー、生分解性コポリマー、非生分解性コポリマーおよびその組合せからなる群から選択されるポリマーを含むことができる。いくつかの具体的態様において、ポリマー成分はポリ(ラクチド-co-グリコリド)ポリマー(PLGA)を含む。他の具体的態様において、ポリマー成分は、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ-ラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)(poly(phosphazine))、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチン、コラーゲン、その誘導体およびその組合せからなる群から選択されるポリマーを含む。ポリマー成分は、治療成分とともに、固体インプラント、半固体インプラントおよび粘弾性インプラントからなる群から選択されるインプラントを形成することができる。
【0091】
GDは粒子または粉末の形態であり、生分解性ポリマーマトリックスにより取り込むことができる。通常、眼内インプラント中のGD粒子は、約3000ナノメートル未満で測定される有効平均サイズを有するだろう。しかし、他の具体的態様において、粒子は約3000ナノメートルより大きい平均最大サイズを有することができる。いくつかのインプラントにおいて、粒子は、3000ナノメートルより小さいオーダーのサイズについての有効な平均粒径を有することができる。例えば、粒子は約500ナノメートル未満の有効な平均粒径を有することができる。さらなるインプラントにおいて、粒子は約400ナノメートル未満の有効な平均粒径を有することができ、さらなる具体的態様において、約200ナノメートル未満のサイズである。さらに、そのような粒子がポリマー成分と組み合わされるとき、得られたポリマー眼内粒子は所望の治療効果を提供するために用いることができる。
【0092】
インプラントまたは他の薬物送達系の一部として製剤化される場合、本発明の系のGDは好ましくは薬物送達系の約1重量%〜90重量%である。より好ましくは、GDは系の約20重量%〜約80重量%である。好ましい具体的態様において、GDは系の約40重量%(例えば30%〜50%)を含む。別の具体的態様において、GDは系の約60重量%を含む。
【0093】
薬物送達系における使用のための適切なポリマー物質または組成物としては、眼の機能または生理学と実質的な干渉を引き起こさないような、眼と両立でき生体適合性である物質が挙げられる。そのような物質としては、好ましくは少なくとも一部、より好ましくは実質的に完全に生分解性または生体内分解性であるポリマーが挙げられる。
【0094】
上記に加えて、有用なポリマー物質の例としては、分解したときにモノマーなどの生理学的に許容される分解生成物をもたらす有機エステルおよび有機エーテルに由来するか、および/またはこれを含む物質が挙げられるが、これらに限定されない。また、それ自体でまたは他のモノマーと組み合わせて、無水物、アミド、オルトエステルなどに由来するか、および/またはこれを含むポリマー物質もまた、使用を見つけることができる。ポリマー物質は添加または縮合ポリマー、有利に縮合されたポリマーであることができる。ポリマー物質は架橋されているか、または架橋されていないか、例えば約5%未満または約1%未満の架橋ポリマー物質など、ただ軽度に架橋されていてよい。たいていの場合、炭素および水素に加えて、ポリマーは少なくとも一つの酸素および窒素、有利には酸素を含むだろう。酸素はオキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えばカルボン酸エステルなどの非-オキソ-カルボニルなどとして存在することができる。窒素はアミド、シアノおよびアミノとして存在することができる。文献(Heller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, Vol. 1, CRC Press, Boca Raton, FL 1987, pp 39-90、これは制御された薬物送達のためのカプセル化を記載する)に記載のポリマーは本発明の薬物送達系における使用を発見することができる。
【0095】
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー、ホモポリマーまたはコポリマー、および多糖類は別の問題のものである。問題のポリエステルとしては、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ体乳酸、グリコール酸のポリマー、ポリカプロラクトンおよびその組合せが挙げられる。一般に、L-ラクテートまたはD-ラクテートを用いることにより、ゆっくりと侵食したポリマーまたはポリマー物質が達成されるが、侵食はラセミ体ラクテートで実質的に増強される。
【0096】
有用な多糖類のうち、限定されないが、アルギン酸カルシウムおよび官能基化セルロース、特に水不溶性により特徴付けられるカルボキシメチルセルロースエステル(例えば約5 kD〜500 kDの分子量)が挙げられる。
【0097】
問題の他のポリマーとしては、生体適合性であり、生分解性および/または生体内分解性であることができるポリエステル、ポリエーテルおよびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の系における使用のためのポリマーまたはポリマー物質のいくつかの好ましい特徴は、生体適合性、治療成分との両立可能性、本発明の薬物送達系の製造におけるポリマーの使用の容易性、少なくとも約6時間、好ましくは約1日より長い生理学的環境における半減期を含むことができるが、硝子体の粘性および水不溶性を有意に増大しない。
【0099】
マトリックスを形成するために含まれる生分解性ポリマー物質は望ましくは、酵素学的不安定性または加水分解不安定性にさらされる。水可溶性ポリマーは、加水分解または生分解不安定架橋で架橋されて、有用な水不溶性ポリマーを提供することができる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーを用いるかどうか、ポリマー混合物の使用、およびポリマーが末端酸基を含むかどうかに応じて、広く変化しうる。
【0100】
ポリマーの生分解を制御し、従って薬物送達系の放出プロファイルを拡張するために重要なものはまた、本発明の系にて用いられるポリマー組成物の相対平均分子量である。同一または異なるポリマー組成物の異なる分子量がその系に含まれ、放出プロファイルを調節することができる。いくつかの系において、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64 kD、通常には約10〜約54 kD、より通常には約12〜約45 kDの範囲であろう。
【0101】
いくつかの薬物送達系において、グリコール酸および乳酸のコポリマーが用いられ、ここに、生分解速度はグリコール酸の乳酸に対する割合により制御される。最も急速に分解されるコポリマーは、ほぼ等量のグリコール酸および乳酸を有する。等量以外の割合を有するホモポリマーまたはコポリマーは分解により耐性である。グリコール酸の乳酸に対する割合はまた、系の脆弱性にも影響し、ここに、より柔軟な系またはインプラントはより大きな幾何学が所望である。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーにおけるポリ乳酸の百分率は、0-100%、好ましくは約15-85%、より好ましくは約35-65%であることができる。いくつかの系において、50/50 PLGAコポリマーが用いられる。
【0102】
本発明の系の生分解性ポリマーマトリックスは、2以上の生分解性ポリマーの混合物を含むことができる。例えば、系は第一生分解性ポリマーおよび異なる第二生分解性ポリマーの混合物を含むことができる。1以上の生分解性ポリマーは末端酸基を有することができる。
【0103】
侵食ポリマーからの薬物の放出は、いくつかの機序または機序の組合せの結果である。いくつかのこれらの機序としては、インプラント表面からの脱着、溶解、ポリマー水和物の多孔性チャネルを通した拡散、および侵食が挙げられる。侵食は大半または表面またはその両者の組合せであることができる。眼への治療成分の放出が1以上の拡散、侵食、溶解および浸透によるものであるように、本発明の系のポリマー成分が治療成分と関連することを理解することができる。本明細書に開示されるように、眼内薬物送達系のマトリックスは、眼へのインプラント化後1週間より長い間、持続的な量のGDの放出に有効な速度にて薬物を放出することができる。いくつかの系において、GDの治療的量は約1月より長い間、約12月以上の間でさえ放出される。例えば、治療成分は系が眼の内部に置かれた後約90日間〜約1年間、眼に放出することができる。
【0104】
生分解性ポリマーマトリックスを含む薬物送達系からのGDの放出は、放出の初期バースト、次いでGDの放出量の段階的な増大を含むか、または該放出はGDの放出における初期遅発、次いで放出における増大を含むことができる。系が実質的に完全に分解するときには、放出されたGDの百分率は約100である。
【0105】
系の寿命にわたる薬物送達系からの治療剤の比較的一定速度の放出を提供することが所望であることができる。例えば、GDが系の寿命の間、約0.01μg〜約2μg/日の量にて放出されることが所望であることができる。しかし、放出速度は変化し、生分解性ポリマーマトリックスの形成に応じて増加または減少することができる。さらに、GDの放出プロファイルは、1以上の線形部分および/または1以上の非線形部分を含むことができる。好ましくは、系が分解または侵食し始めるとすぐに、放出速度は0より大きい。
【0106】
眼内インプラントなどの薬物送達系はモノリシック(monolithic)、すなわち、ポリマーマトリックスに通して均一に分配されているか、またはカプセル化されている活性物質を有することができ、ここに、活性物質の容器はポリマーマトリックスによりカプセル化されている。製造の容易性により、モノリシックインプラントは通常、カプセル化された形態にわたり好ましい。しかし、カプセル化された容器型インプラントにより与えられるより大きな制御は、いくつかの場合には有益であることができ、ここに、GDの治療レベルは狭い範囲内である。さらに、本明細書に記載の治療剤を含む治療成分はマトリックス内の非均一なパターンにて分配することができる。例えば薬物送達系は、系の第二部分に対してGDのより高い濃度を有する部分を含むことができる。
【0107】
本明細書に開示されるポリマーインプラントは、外科的インプラント化による投与について1 mmまたは2 mmより大、例えば3 mmまたは10 mmまでの針による投与について約5μm〜約2 mmまたは約10μm〜約1 mmのサイズを有することができる。ヒトにおける硝子体腔は、例えば1〜10 mmの長さを有する変化する幾何学の比較的大きなインプラントに適合することができる。インプラントは、約2 mm x 0.75 mm直径の次元を有するシリンダー形ペレット(例えばロッド)であることができる。あるいは、インプラントは、約7 mm〜約10 mmの長さおよび約0.75 mm〜約1.5 mmの直径を有するシリンダー形ペレットであることができる。
【0108】
インプラントはまた、眼、例えば硝子体へのインプラントの挿入およびインプラントの適応の両方を容易にするために、少なくともいくらか柔軟であることもできる。インプラントの総重量は通常、約250〜5000μg、より好ましくは約500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μgまたは約1000μgであることができる。しかし、より大きなインプラントもまた形成され、さらに眼への投与の前に処理することができる。さらに、比較的より大量のGDをインプラントに提供するより大きなインプラントが、所望であることができる。非ヒト個体について、インプラントの次元および総重量は、個体の型に応じてより大きいか、または小さくてよい。例えば、ウマではおよそ30 mlでありゾウではおよそ60〜100 mlであるのに対して、ヒトはおよそ3.8 mlの硝子体容積を有する。ヒトにおける使用のためのサイズのインプラントは、他の動物のためにそれに応じてスケールを大きくするかまたは小さくすることができ、例えばウマのためのインプラントについて約8倍大きく、または例えばゾウのためのインプラントについて約26倍大きい。
【0109】
薬物送達系を製造することができ、ここに、中心は一つの物質であることができ、表面は同一または異なる組成物の1以上の層を有し、層は架橋または異なる分子量、異なる密度もしくは多孔率などであることができる。例えば、GDの初期ボーラスを素早く放出することが所望であるとき、中心は、初期分解速度を増強するためにポリ乳酸-ポリグリコーレートコポリマーでコーティングされたポリ乳酸であることができる。あるいは、ポリ乳酸外部の分解時に中心が溶解して眼の外に迅速に洗い出されるように、中心はポリ乳酸でコーティングされたポリビニルアルコールであることができる。
【0110】
薬物送達系はファイバー、シート、フィルム、ミクロスフェア、球、円盤、プラークなどのいずれの幾何学であることもできる。系サイズの上限は、系に対する寛容性、挿入におけるサイズ制限、扱いやすさなどの因子により測定されよう。シートまたはフィルムが用いられる場合、シートまたはフィルムは、少なくとも約0.5 mm x 0.5 mm、通常約3〜10 mm x 5〜10 mmの範囲内にて、扱いやすさのために約0.1〜1.0 mmの厚みであろう。ファイバーが用いられる場合には、ファイバー直径は一般に、約0.05〜3 mmの範囲内であり、ファイバー長は一般に、約0.5〜10 mmの範囲内であろう。球は直径約0.5μm〜4 mmの範囲内であり、他の形状の粒子について匹敵する容積であることができる。
【0111】
系のサイズおよび形態はまた、放出速度、治療期間およびインプラント化部位の薬物濃度を制御するためにも用いることができる。例えば、より大きなインプラントは比例してより大きな用量を送達するであろうが、質量に対する表面の比に応じて、より遅い放出速度を有することができる。系の具体的なサイズおよび幾何学は、インプラント化部位に合わせて選択される。
【0112】
GD含有治療剤、ポリマーおよび他の任意の修飾剤の割合は、例えばそのような成分の割合を変化させたいくつかのインプラントを製剤化することにより経験的に決定することができる。溶解または放出試験のためのUSPに認可された方法を用いて、放出速度を測定することができる(USP 23; NF 18 (1995) pp. 1790-1798)。例えば、無限シンク法(infinite sink method)を用いて、インプラントの重量を測定したサンプルを測定した容積の0.9% NaClを含む水溶液に加え、ここに、溶液容積は放出後の薬物濃度が飽和の5%未満であるようなものであろう。混合物を37℃にて維持し、ゆっくりと撹拌し、インプラントを懸濁液中にて維持した。溶解した薬物の時間の関数としての見掛けは、吸光度が一定になるまで、または90%より大きい薬物が放出されるまで、当分野で知られている種々の方法、例えば分光光度法、HPLC、質量分析などを行うことができる。
【0113】
GD含有治療成分および本明細書に記載の組成物に加えて、本明細書に開示されるポリマー薬物送達系は、賦形剤成分を含むことができる。賦形剤成分は、可溶化剤、粘性誘発剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤などを含むと理解することができる。
【0114】
さらに、米国特許番号5,869,079に記載のものなどの放出調節剤が薬物送達系に含まれうる。用いられる放出調節剤の量は、所望の放出プロファイル、調節剤の活性、および調節剤非存在下の治療剤の放出プロファイルに依存するだろう。塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの電解質もまた、系に含まれうる。緩衝剤またはエンハンサーが親水性であるとき、放出加速剤として作用することもできる。親水性添加剤が作用して、薬物粒子のまわりの物質のより速い溶解を通して放出速度を増大し、これは曝露される薬物の表面積を増大し、それにより薬物の生侵食(bioerosion)速度を増大する。同様に、疎水性緩衝剤またはエンハンサーはよりゆっくりと溶解して薬物粒子の曝露を遅くし、それにより薬物の生侵食速度を遅くする。
【0115】
種々の技術を用いて、そのような薬物送達系を産生することができる。有用な技術としては、溶媒留去法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、共押出法、カーバー・プレス法(carver press method)、打抜法、熱圧縮、その組合せなどが挙げられるが、これらに必ずしも限定されない。
【0116】
具体的な方法は、米国特許番号4,997,652に記載されている。押出法を用いて、製造における溶媒の必要性を回避することができる。押出法を用いるとき、ポリマーおよび薬物は、製造に必要な温度、通常少なくとも約85セルシウス度にて安定であるように選択される。押出法は約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を用いる。インプラントは、約0〜1時間、0〜30分間または5〜15分間の間、薬物/ポリマー混合のための温度約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることにより製造することができる。例えば、時間は約10分間、好ましくは約0〜5分間であることができる。次いで、インプラントは約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度にて押し出される。
【0117】
さらに、インプラントは、コーティングがインプラントの製造中にコア領域にわたって形成されるように共押出することができる。
【0118】
圧縮法を用いて、薬物送達系を製造し、典型的に押出法より速い放出速度で成分を得ることができる。圧縮法は、約50〜150 psi、より好ましくは約70〜80 psi、さらにより好ましくは約76 psiの圧力および約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を用いることができる。
【0119】
本発明のいくつかの具体的態様において、持続放出性眼内薬物送達系の製造方法は、GDおよびポリマー物質を混合し、個体の眼に置くのに適した薬物送達系を形成することを含む。得られた薬物送達系は、拡張された時間、眼にGDを放出するのに有効である。その方法は、GDおよびポリマー物質の粒子混合物を押し出し、フィラメント、シートなどの押出組成物を形成する工程を含むことができる。
【0120】
ポリマー粒子が所望であるとき、方法は、本明細書に記載のポリマー粒子またはインプラントの集団中に押出組成物を形成させることを含むことができる。そのような方法は押出組成物を切り出し、押出組成物を製粉することなどの1以上の工程を含むことができる。
【0121】
本明細書において、ポリマー物質は生分解性ポリマー、非生分解性ポリマーまたはその組合せを含むことができる。ポリマーの例としては、上記いずれかおよびすべてのポリマーおよび薬剤が挙げられる。
【0122】
本発明の具体的態様はまた、本発明の薬物送達系を含む組成物にも関する。例えば、ある具体的態様において、組成物は本発明の薬物送達系および眼科的に許容される担体成分を含むことができる。そのような担体成分は水性成分、例えば食塩水またはリン酸緩衝液体であることができる。
【0123】
別の具体的態様は、GDを含む眼科的な治療物質を製造する方法に関する。広範な態様において、方法はGDを選択し、選択されたGDを液体担体成分またはポリマー成分と組み合わせて眼への投与に適した物質を形成する工程を含む。あるいは、言い換えれば、本発明の物質を製造する方法は、低い房水/硝子体液濃度比および長い硝子体内半減期を有するGDを選択する工程を含むことができる。
【0124】
方法はさらに、典型的にGDを選択するために用いられる1以上の以下の工程を含む:GDを対象の眼に投与し、少なくとも一つの硝子体液および房水中のGDの濃度を時間関数として測定すること;およびGDを対象の眼に投与し、少なくとも一つの硝子体半減期を測定し、眼の後区からGDを除去すること。
【0125】
その方法にて形成される物質は、液体含有組成物、生分解性ポリマーインプラント、非生分解性ポリマーインプラント、ポリマー微粒子またはその組合せであることができる。本明細書において、物質は固体インプラント、半固体インプラントおよび粘弾性インプラントの形態であることができる。いくつかの具体的態様において、GDはポリマー成分と組み合わせて混合物を形成し、その方法はさらに、混合物を押し出すことを含む。
【0126】
本発明のさらなる具体的態様は、患者の眼の視力を改善するかまたは維持する方法に関する。一般に、その方法は本発明の眼科的治療物質をそれを必要とする個体の眼に投与する工程を含む。本発明物質の硝子体内または眼周囲(またはあまり好ましくないが局所)投与などの投与は、前房に有意に影響しないで後部眼症状を治療するのに有効であることができる。本発明の物質は特に、炎症および網膜の浮腫を治療するのに有用であることができる。本発明の物質の投与は、眼球血管膜、硝子体、網膜、脈絡膜、網膜色素上皮などの眼の1以上の後部構造にGDを送達するのに有効である。
【0127】
シリンジ器具を用いて本発明物質を投与するとき、器具は適当なサイズの針、例えば27ゲージ針または30ゲージ針を含むことができる。そのような器具を有効に用いて、ヒトまたは動物の眼の後区または眼周囲領域に物質を注射することができる。針は、針の除去後にセルフシールする開放を提供するのに十分に小さくてよい。
【0128】
本発明の方法は、眼の後区への単一の注射を含むか、または例えば約1週間もしくは約1月もしくは約3月〜約6月もしくは約1年以上の範囲の期間にわたる繰り返し注射を含むことができる。
【0129】
本発明の物質は、好ましくは滅菌形態にて患者に投与される。例えば本発明の物質は貯蔵するときに滅菌することができる。任意の規定の適切な滅菌化の方法を用いて、物質を滅菌することができる。例えば、本発明物質は放射線を用いて滅菌することができる。好ましくは、滅菌化法は本発明の系の治療剤の活性または生物学的活性または治療活性を軽減しない。
【0130】
物質はガンマ照射により滅菌することができる。例えば薬物送達系は、2.5〜4.0 mradのガンマ照射により滅菌することができる。薬物送達系は投与器具、例えばシリンジ・アプリケーターなどのそれらの最終一次パッケージ系にて最終的に滅菌することができる。あるいは、薬物送達系はそれのみで滅菌した後、無菌でアプリケーター系に詰めることができる。この場合には、アプリケーター系はガンマ照射、酸化エチレン(ETO)、熱または他の手段により滅菌することができる。薬物送達系は、低温におけるガンマ照射により滅菌し安定性を改善するか、またはアルゴン、窒素または他の手段で覆って酸素を除去することができる。ベータ照射またはe-ビームならびにUV照射もまた用いて、インプラントを滅菌することができる。いずれの照射源からの照射の用量も2.5〜4.0 mradよりはるかに小さくなるように、薬物送達系の初期の生物負荷量(bioburden)に応じて低下させることができる。薬物送達系は、滅菌出発成分から無菌条件下、製造することができる。出発成分は熱、照射(ガンマ、ベータ、UV)、ETOまたは滅菌ろ過により滅菌することができる。半固体ポリマーまたは液体ポリマーは、熱の滅菌ろ過により、薬物送達系製造およびGD組み込み前に滅菌することができる。次いで滅菌ポリマーを用いて、無菌で滅菌薬物送達系を製造することができる。
【0131】
本発明の別の態様において、眼症状を治療するためのキットが提供され、これはa)本明細書に記載のGDを含む容器、例えばシリンジまたは他のアプリケーター;およびb)使用説明書を含む。使用説明書は物質の取扱い方法、眼内領域への物質の挿入方法および物質の使用への期待を含むことができる。容器はGDの単回用量を含むことができる。
【実施例】
【0132】
実施例1:
組換え血管内皮増殖因子(VEGF)を納入業者(R&D Systems)から得た。雌ダッチ・ベルト(Dutch Belt)ウサギをイソフルラン吸入および局所0.5%塩酸プロパラカインにより麻酔し、0.1%ウシ血清アルブミン含有滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS)中の500 ng VEGFで片眼の硝子体内注射を28ゲージ1/2インチ針を用いて行った。他方の眼にVEGFなしの同量のビヒクルを与える。
【0133】
血液網膜関門および血液房水関門のVEGF誘発BRBおよびBABの分解の程度は、硝子体内注射に続き、種々の時間にて、眼内フルオロフォトメトリーをスキャンすることにより測定した(フルオロトロンマスター, Ocumetrics Inc.)。このモデルにおいて、蛍光標識を静脈内投与した後、それぞれ前区および後区におけるフルオレセインの量および虹彩および網膜の漏出の兆候を測定する。
【0134】
正常な条件下、血液網膜および血液房水関門は、血液中の溶質が硝子体に浸透するのを防ぐ(そしていくらかより低いが非常に有意な程度まで、水性)。これに対して、黄斑変性症、網膜症、黄斑浮腫、網膜血管新生などの網膜疾患の存在下、網膜組織内の血液の漏出があり、蛍光トレーサーが眼の硝子体および水性部に見られよう。VEGF注射はこの病変を模倣する。
【0135】
Figure 2は、硝子体内VEGF注射の2日(48時間)後に単一の眼からのウサギ網膜および虹彩からの典型的な微量のフルオレセイン漏出(任意の蛍光ユニット)を示す。食塩水1 ml中のフルオレセインナトリウムを50 mg/kgの濃度にて辺縁耳静脈に注射し、硝子体網膜房および前房における眼内フルオレセインレベルを50分後に測定した。
【0136】
正常な未処置ウサギ眼に対して、VEGFは硝子体に含まれるフルオレセインの約18倍の増大および水性部に含まれるフルオレセインの約6倍の増大をもたらし、これはそれぞれ、網膜漏出を引き起こす血液網膜関門(BRB)および虹彩漏出を引き起こす血液房水関門(BAB)における分解に反映される。
【0137】
これらの反応の両方は、コルチコステロイド(デキサメタゾン、トリアムシノロンおよびベクロメタゾン)が全身または硝子体内投与されたときに、これらのコルチコステロイドにより完全に遮断された。本明細書に引用される文献(infra and Edelman et al., EXP. EYE RES. 80:249-258 (2005))を参照のこと。従って、ステロイド処置後、前房および後房の両方にフルオレセイン漏出、次いでVEGFチャレンジがなされないときに、これはステロイドが有効に両方の房に浸透しうることを示す。
【0138】
5つのコルチコステロイド(デキサメタゾン、トリアムシノロン、フルチカゾン・プロピオネート、ベクロメタゾン・ジプロピオネートおよびベクロメタゾン)はSigma-Aldrich Co.から購入し、このモデル系にて評価した。組合せにおいて、これらの化合物は、最大水溶性〜最小水溶性の溶解度範囲のほぼ3つの対数単位(1000倍)および1.95〜4.4のlog Pの範囲の親油性係数を定義する。
【0139】
各化合物10ミリグラムを滅菌リン酸緩衝食塩水(PBS; ph 7.4)1 mlに加える。0日目に、各ステロイドの10 mg/ml懸濁液100 mlをウサギ眼の硝子体に注射する。PBSビヒクルを他方の眼に注射する。次いでVEGFをその後予め定めた時間(1月)にて注射し、BRBおよびBAB分解は、本明細書にそのまま引用される文献(Edelman et al., EXP. EYE RES. 80:249-258 (2005))に記載のように、48時間後に眼内フルオロフォトメトリーをスキャンすることにより測定した。
【表1】

【0140】
試験化合物について見られるように、デキサメタゾン(DEX)は試験された5つの化合物のうち最高水溶解度(100 mg/ml)および最低親油性(log P = 1.95)を有した。PBS 100μLに懸濁された結晶デキサメタゾン1 mgの硝子体内注射の後、デキサメタゾンは静脈内フルオレセインの後区および前区の両方へのVEGF誘発漏出を完全に阻害し、硝子体内投与されたデキサメタゾンが後区および前区の両方に存在し、それぞれBRBおよびBAB分解を阻害することを示す(Figure 3)。BABがBRBに対して通常比較的漏れやすいので(Fig 1参照)、デキサメタゾンで処置されたウサギ眼の前房にてある程度の残留蛍光が観察される。
【0141】
この結果により、硝子体内投与されたデキサメタゾンが、硝子体内の結晶貯蔵物から網膜血管系に向けられる後部および虹彩に向けられる前部の両方向に、容易に拡散することが示された。これらの特性は両方の組織内で薬理学的に活性なレベルをもたらす。
【0142】
デキサメタゾンによる結果と同様に、水性懸濁液100μLに含まれ硝子体に注射されるトリアムシノロン・アセトニド1 mgもまた、完全にVEGF刺激BRBおよびBAB分解を阻害した(Figure 4)。
【0143】
非置換グルココルチコイドの効果の最終的な例として、水性ベクロメタゾンの10mg/ml懸濁液100μlをウサギ眼の硝子体に注射した後、上記のようにVEGFを行った。デキサメタゾンおよびトリアムシノロンと同様に、ベクロメタゾンはBRBおよびBABのVEGF誘発分解を阻害した(Figure 5)。
【0144】
これに対して、ウサギ眼に10mg/mlフルチカゾン・プロピオネート懸濁液100μl(水溶解度0.14 mg/ml;log P = 4.2)を硝子体内注射し、次いでVEGFを硝子体内投与し、BRB分解を完全に遮断したが、BAB分解には影響はなかった(Figure 6)。この結果は、硝子体内に置かれた薬物が治療的有効な濃度にて硝子体から後部に網膜へと拡散することができるが、そのような濃度にて後房から前房に拡散することはできないことを示す。
【0145】
同様に、さらなる水難溶性化合物ベクロメタゾン17,21-ジプロピオネート(0.13 mg/ml;log P = 4.4)は完全にVEGF誘発BRB分解を遮断するようであるが、BAB分解に影響しない(Figure 7)。さらに、10mg/ml 硝子体内ベクロメタゾン17,21-ジプロピオネート100μlにより3月より長い期間、VEGF媒介反応は完全に阻害された。
【0146】
これらの結果は、1以上の疎水性C17および/またはC21置換基(この場合においてプロピオネートなどのアシルモノエステル官能基)を有するGDは水溶解度が減少し、親油性が増大し、後区に大きくまたはそれにのみ関与するかまたは前房成分をほとんどもしくは全く有しない眼疾患を治療するための硝子体内送達についての優れたファーマコフォアであることを示す。それゆえ、これらの化合物の硝子体内投与は白内障、高IOPおよびステロイド誘発緑内障などの前区副作用をほとんどなくすか、軽減するかまたは無効にすることを示す。これらの化合物の具体例としては、デキサメタゾン 17-アセテート、デキサメタゾン 17,21-アセテート、デキサメタゾン 21-アセテート、クロベタゾン 17-ブチレート、ベクロメタゾン 17,21-ジプロピオネート、フルチカゾン 17-プロピオネート、クロベタゾール 17-プロピオネート、ベタメタゾン 17,21-ジプロピオネート、アルクロメタゾン 17,21-ジプロピオネート、デキサメタゾン 17,21-ジプロピオネート、デキサメタゾン 17-プロピオネート、ハロベタソール 17-プロピオネート、ベタメタゾン 17-吉草酸塩が挙げられる。これらの化合物は、限定されるものではないが、萎縮型および滲出型ARMD、糖尿病性黄斑浮腫、増殖性糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、および眼腫瘍などの後部眼疾患の治療における存在する療法に対して有意に改善的であろう。
【0147】
実施例2:GDインプラント
生分解性薬物送達系は、ステンレス鋼モルタル中にてGDを生分解性ポリマー組成物と混合することにより製造することができる。混合は、Turbulaシェーカーセットにより96 RPMにて15分間混合する。粉末混合はモルタルの壁を削り落とした後、さらに15分間再混合する。混合された粉末混合物を半溶融状態に計30分間、特定温度にて加熱してポリマー/薬物溶解物を形成する。
【0148】
ロッドは、9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブを用いてポリマー/薬物溶解物をペレット化し、ペレットをバレルに充填し、特定のコア押出温度にて物質をフィラメントに押し出すことにより製造する。次いでフィラメントを約1 mgサイズのインプラントまたは薬物送達系に切断する。ロッドは約2 mm長×0.72 mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは約900μg〜1100μgの重量である。
【0149】
ウエハーは、ポリマー溶解物を特定温度にてCarverプレスで平らにし、平らにされた物質をそれぞれ約1 mgの重量のウエハーに切断することにより形成する。ウエハーは約2.5 mmの直径および約0.13 mmの厚みを有する。ウエハーインプラントは約900μg〜1100μgの重量である。
【0150】
インビトロ放出試験は各ロットのインプラント(ロッドまたはウエハー)にて行うことができる。各インプラントはリン酸緩衝生理食塩水10 mLとともに37℃にて24 mLねじ蓋式容器に入れてよく、アリコート1 mLを取り出し、1、4、7、14、28日目およびその後は2週間ごとに新鮮な等量の培地で置き換える。
【0151】
薬物アッセイをHPLCにより行うことができ、これはWaters 2690分離モジュール(または2696)およびWaters 2996フォトダイオードアレイ検出器からなる。30℃にて加熱されたUltrasphere, C-18 (2), 5 m; 4.6 x 150 mmカラムは分離のために用いることができ、検出器は264 nmにて設定することができる。移動相はサンプルあたり流速1 mL/分および全実行時間12分の(10:90)MeOH−緩衝移動相であることができる。緩衝移動相は(68:0.75:0.25:31)13 mM 1-ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含むことができる。放出速度は、与えられた容積の培地中に放出される薬物の量を時間とともに g/日にて計算することにより測定することができる。
【0152】
インプラントのために選択されるポリマーは例えば、Boehringer IngelheimまたはPurac Americaから得ることができる。ポリマーの例としては:RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLG(50/50)が挙げられる。RG502は(50:50)ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)であり、RG752は(75:25)ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)であり、R202Hは酸末端基または末端酸基を有する100%ポリ(D,L-ラクチド)であり、R203およびR206はともに100%ポリ(D,L-ラクチド)である。Purac PDLG(50/50)は(50:50)ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの固有の粘度はそれぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0および0.2 dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203、R206およびPurac PDLGの平均分子量はそれぞれ、11700、11200、6500、14000、63300および9700ダルトンである。
【0153】
実施例3:二重押出GDインプラントの製造
二重押出法はまた、GDインプラントの製造について用いることもできる。そのようなインプラントは以下のように、および本明細書に引用される米国特許出願番号10/918597に記載のとおりに製造することができる。
【0154】
RG502 30グラムは、押し込みノズル、粉砕ノズルおよび粉砕ノズルについてそれぞれ60 psi、80 psiおよび80 psiの製粉圧力にてJet-Mill(振動フィーダー)を用いて製粉した。次に、RG502H 60グラムは、押し込みノズル、粉砕ノズルおよび粉砕ノズルについてそれぞれ20 psi、40 psiおよび40 psiの製粉圧力にてJet-Millを用いて製粉した。RG502およびRG502Hの両方の平均粒径は、TSI 3225 Aerosizer DSP粒径分析器を用いて測定する。両方の製粉されたポリマーは20 um以下の平均粒径を有する。
【0155】
(b) GDおよびPLGAの混合
ベクロメタゾン・ジプロピオネート(「DP」)48グラム、製粉されたRG502H 24グラムおよび製粉されたRG502 8グラムは96 RPMにて60分間Turbulaシェーカーセットを用いて混合する。第一押出について、混合したDP/RG502H/RG502混合物の全80グラムをHaake Twin Screw Extruderのホッパーに加える。次いでHaake extruderを付け、以下のパラメータを設定する:
バレル温度:105℃
ノズル温度:102℃
スクリュー速度:120 RPM
供給量設定:250
ガイドプレート温度:50〜55℃
循環水浴:10℃
【0156】
押出フィラメントを集める。第一フィラメントは、粉末混合物の添加後約15〜25分に押出しを開始する。これらの設定における最初の5分に押し出されたフィラメントは廃棄する。残存するフィラメントを押出物の消耗まで集め;これは通常3〜5時間かかる。
【0157】
得られたフィラメントは96 RPMにて5分間のTurbula Shakerおよび19 mmステンレス鋼ボールセット一つを用いてペレット化する。
【0158】
第二押出において、最終工程からのすべてのペレットを同じホッパーに加え、Haake押出器を付ける。
押出器は以下のように設定する:
バレル温度:107℃
ノズル温度:90℃
スクリュー速度:100 RPM
ガイドプレート温度:60〜65℃
循環水浴:10℃
【0159】
押出物が消耗するまで、すべての押し出されたフィラメントを集める。これは通常約3時間かかる。バルクフィラメントを適当な長さに切り出し、所望の投与強度、例えば350μgおよび700μgを得る。単一および二重の押し出されたインプラントはそれぞれ、以下の第1表および第2表により示される特徴を有する。
【0160】
【表2】

(1) 標的重量の百分率
【0161】
【表3】

【0162】
実施例4:GDインプラントによる黄斑浮腫の治療
嚢胞性黄斑浮腫と診断された58歳男性を生分解性薬物送達系の投与によりそれぞれの患者の眼に投与して治療した。PLGA約1000μgおよびベクロメタゾン・ジプロピオネート約1000μgを含む硝子体内インプラント2 mgを男性の左目の視力を妨げない場所に置く。同様のインプラントを患者の右眼に結膜下投与する。右眼の網膜厚みのより急速な減少は、インプラントの場所およびステロイドの活性に依存するようだ。手術の約3月後に、男性の網膜は正常になり、視神経の変性が減少するようだ。投与の一週間後にて眼圧の増大は全く見られない。
【0163】
実施例5:GD組成物によるARMDの治療
滲出型加齢性黄斑変性症の62歳女性をフルチカゾン・プロピオネート結晶約1000μgを含むヒアルロン酸懸濁溶液100μlの硝子体内注射で治療する。投与後一ヶ月以内に、患者は血管新生および関連する炎症の速度が許容される軽減を示す。患者は生活の質における全体的な改善を記録する。
【0164】
本明細書に記載のすべての参照、記事、開示および特許および特許出願はそのまま引用される。
【0165】
本発明は種々の具体例および具体的態様に関して記載されているが、本発明がそれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内でさまざまに実践することができるものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】Figure 1は、前区および後区を示すヒト眼の図面である。
【0167】
【図2】Figure 2は、硝子体内VEGF注射の2日後および静脈内フルオレセイン注射の50分後における(12 mg/kg)ウサギの片眼の網膜および虹彩からのフルオレセイン漏出(任意の蛍光単位)のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示す。
【0168】
【図3】Figure 3は、硝子体内VEGF注射の2日後および静脈内フルオレセイン注射(12 mg/kg)の50分後における、PBS中で懸濁した結晶デキサメタゾン1 mg(100μL)で処置したウサギの片眼の網膜および虹彩からのフルオレセイン漏出(任意の蛍光単位)のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示す。結果は、硝子体内投与されたデキサメタゾンが後区および前区の両方に存在し、それぞれBRBおよびBAB分解を阻害することを示す。
【0169】
【図4】Figure 4は、水性懸濁液100μL中に含まれるトリアムシノロン・アセトニド1 mgで処置され、Figure 3と同一の条件下で硝子体に注射された、ウサギの片眼の網膜および虹彩からのフルオレセイン漏出(任意の蛍光単位)のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示す。これもまた、完全にVEGF刺激BRBおよびBAB分解を阻害した。
【0170】
【図5】Figure 5は、ベクロメタゾンの水性懸濁液100μl(1 mg)でウサギ眼の硝子体に注射した後、上記のようにVEGFで処置した、ウサギの片眼の網膜および虹彩からのフルオレセイン漏出(任意の蛍光単位)のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示す。デキサメタゾンおよびトリアムシノロンと同様に、ベクロメタゾンはVEGF誘発BRBおよびBAB分解を阻害した。
【0171】
【図6】Figure 6は、VEGFで注射したウサギ眼におけるフルオレセイン漏出のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示し、フルチカゾンプロピオネート1 mg(100μl)、次いでVEGFの硝子体内投与が完全にBRB分解を遮断するが、BAB分解には全く影響しないことを示す。
【0172】
【図7】Figure 7は、VEGFで注射したウサギ眼におけるフルオレセイン漏出のスキャニング眼内フルオロフォトメトリー追跡を示し、ベクロメタゾン 17,21-ジプロピオネート1 mg(100μl)、次いでVEGFの硝子体内投与が完全にBRB分解を遮断するが、BAB分解には全く影響しないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルココルチコイド誘導体(GD)が眼の後房に投与されるときに、生物学的に有意な量のGDの前房への拡散を防ぐのに有効な構造を有する治療的有効量のGDを含有する、眼用組成物。
【請求項2】
GDが2.53より大きい親油性を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
GDが約3.5より大きい親油性を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
GDが約4.0より大きい親油性を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
GDが約4.2より大きい親油性を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
GDが10 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
GDが約5 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
GDが約2 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
GDが約1 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
GDが約0.5 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
GDが約0.2 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
GDが約0.14 mg/ml未満の水溶解度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
GDがエステル結合によりC17に結合しているアシル基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
アシル基がアセチル、ブチリル、バレリル、プロピオニル、フロイルおよびベンゾイル基からなる群から選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
GDがエステル結合によりC21に結合しているアシル基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
アシル基がアセチル、ブチリル、バレリル、プロピオニル、フロイルおよびベンゾイル基からなる群から選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
GDがエステル結合によりC17およびC21の両方に結合しているアシル基を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
組成物が硝子体内投与および眼周囲投与の少なくとも一つによる患者への投与に適している、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
組成物が硝子体内投与および眼周囲投与の少なくとも一つによる患者への投与に適している形態であり、ポリマー成分をさらに含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
ポリマー成分が粘性誘発成分を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリマー成分がヒアルロン酸を含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
治療成分が固体形態のGDを含有する粒子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
治療成分が固体形態のGDを含有する粒子を含む、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
ポリマー成分が治療成分を含むインプラントに含まれる、請求項19記載の組成物。
【請求項25】
ポリマー成分が生分解性ポリマーを含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
ポリマー成分がポリ(ラクチド-co-グリコリド)ポリマー(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチンおよびコラーゲン、およびその誘導体および組合せからなる群から選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
黄斑浮腫、萎縮型および滲出型黄斑変性症、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、急性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性網脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ブドウ膜炎、網膜炎、脈絡膜炎、急性多発性小板状色素上皮症、ベーチェット病、散弾網膜脈絡膜症、梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多発性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(mewds)、眼サルコイドーシス、後部強膜炎、蛇行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト・小柳・原田症候群;網膜動脈閉塞性疾患、前部ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、虚血性眼症候群、網膜動脈毛細血管瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、片網膜静脈閉塞症、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞症、頸動脈疾患(CAD)、糖衣状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症およびイールズ病;交感性眼炎、ブドウ膜網膜疾患、網膜剥離、外傷、光凝固術、術中の潅流低下、放射線網膜症および骨髄移植網膜症などの外傷性/外科的病態;増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、および増殖性糖尿病性網膜症;眼ヒストプラスマ症、眼内トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染と関連する網膜疾患、HIV感染と関連する脈絡膜疾患、HIV感染と関連するブドウ膜の疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外側部網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広範型片側性亜急性神経網膜炎、およびハエウジ症などの感染症;網膜色素変性症、網膜ジストロフィーを伴う全身性障害、先天性停在性夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病および黄色班眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、ソルスビー眼底ジストロフィー、良性集中的黄斑変性、ビエッティ結晶ジストロフィー、および弾性線維性仮性黄色腫などの遺伝性障害;網膜剥離、黄斑円孔、および巨大網膜裂孔などの網膜裂傷/網膜裂孔;腫瘍を伴う網膜疾患、網膜色素上皮の先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の混合型過誤腫、網膜芽腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、および眼内リンパ系腫瘍などの腫瘍;点状脈絡膜内層症、急性後部多発性小板状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、加齢性黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜剥離、網膜裂傷、ブドウ膜炎、サイトメガロウイルス性網膜炎および緑内障からなる群から選択される哺乳動物の眼の後区の病態を治療する方法であって、GDを眼科的に有効なビヒクル中にて含む組成物をその眼の後区に投与することを含む、方法。
【請求項28】
組成物が硝子体内投与される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
組成物がGD粒子の懸濁物を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
組成物がポリマー成分を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ポリマー成分がヒアルロン酸を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
病態が黄斑浮腫を含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
病態が黄斑変性症を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
組成物がGDおよび生体適合性ポリマーを含む硝子体内インプラントを含む、請求項28記載の方法。
【請求項35】
ポリマーが生分解性ポリマーである、請求項32記載の方法。
【請求項36】
生分解性ポリマーがポリ(ラクチド-co-グリコリド)ポリマー(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチンおよびコラーゲンならびにその誘導体および組合せからなる群から選択される、請求項35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−511632(P2009−511632A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536724(P2008−536724)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040429
【国際公開番号】WO2007/047607
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】