説明

後硬化テープ

【課題】貯蔵安定性に優れ、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる後硬化テープを提供する。また、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供する。
【解決手段】架橋性化合物、ケトプロフェン系塩基発生剤及び粘着性付与成分を含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と下記式(1)で表されるアミンとの塩であることを特徴とする後硬化テープ。
N−[(CH−N−]−(CH−NH (1)
式(1)中、mは0又は1を表し、nは4〜8の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる後硬化テープに関する。また、本発明は、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂接着剤は、エポキシ化合物と硬化剤とが加熱により反応して硬化する接着剤であり、例えば、一液型又は二液型の液状や、フィルム状の形態をとる。エポキシ樹脂接着剤は、その硬化物が優れた接着性、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等を有することから、各分野で広く用いられている。
【0003】
近年、フィルム状のエポキシ樹脂接着剤として、エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤が提案されている。
エポキシ−アクリル系樹脂組成物は、例えば、主成分として、エポキシ化合物、硬化剤、活性エネルギー線照射により重合することのできるアクリレート化合物及び光重合開始剤を含有する組成物であり、基材上に塗工された後、活性エネルギー線照射により、粘着性を有するフィルムに成形される。エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤は、粘着性を有するフィルムに、エポキシ化合物や硬化剤等の硬化性成分が取り込まれた構造をしており、その粘着性を利用して被接合部材表面に仮止めした後、加熱によって硬化性成分を硬化させることにより、強固な接着力を発揮することができる。
【0004】
エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤として、例えば、特許文献1には、a.エポキシ化合物、b.所定の粒子状のエポキシの硬化剤、c.所定のガラス転移点を有し、紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基を分子内に少なくとも1つ有する化合物、d.紫外線重合可能なアクロイル基又はメタアクロイル基と、エポキシ化合物又はエポキシの硬化剤と反応可能な官能基とをそれぞれ分子内に少なくとも1つ有する化合物、e.光開始剤を含有するエポキシ−アクリル系樹脂組成物を紫外線重合して得られた、所定の厚みを有するフィルム状接着剤が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1のフィルム状接着剤は、エポキシの硬化剤が粒子状であるため、エポキシ化合物と硬化剤とを効率的に反応させ、硬化するためには、加熱温度を粒子状硬化剤の融点以上とする必要がある。そのため、特許文献1のフィルム状接着剤を熱に弱い被接合部材に適用することは難しく、硬化時のエネルギー効率も低い。一方、エポキシ化合物と硬化剤とを反応させるための加熱温度を下げた場合には、硬化に長時間を要することが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−165459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、硬化後のせん断接着力が高く、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる後硬化テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、架橋性化合物、ケトプロフェン系塩基発生剤及び粘着性付与成分を含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、前記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と下記式(1)で表されるアミンとの塩である後硬化テープである。
N−[(CH−N−]−(CH−NH (1)
式(1)中、mは0又は1を表し、nは4〜8の整数を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、架橋性化合物、ケトプロフェン系塩基発生剤及び粘着性付与成分を含有する粘着剤層を有する後硬化テープは、被接合部材へ貼り合わせられた後、低温かつ短期間の加熱により硬化することができること、更に、ケトプロフェン系塩基発生剤としてα−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と上記式(1)で表されるアミンとの塩を用いることにより、後硬化テープの貯蔵安定性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の後硬化テープは、粘着剤層を有する。
【0011】
上記粘着剤層は、架橋性化合物を含有する。
上記架橋性化合物は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基、加水分解性シリル基、ハロゲン化メチル基、カルボニル基等の架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。なかでも、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際の硬化性を高め、硬化物の凝集力及び接着力を高めることができることから、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及び加水分解性シリル基からなる群より選択される少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、酸無水物基及び加水分解性シリル基からなる群より選択される少なくとも1つの架橋性官能基を1分子中に2個以上有する化合物がより好ましい。更に、得られる後硬化テープの硬化物の接着力及び耐久性を高めることができることから、エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物が特に好ましい。
【0012】
上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物は特に限定されないが、市販品として、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシオリゴマー等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂(以上、いずれも東都化成社製)、エピコート基本固形タイプ、エピコートビスF固形タイプ(以上、いずれも油化シェルエポキシ社製)、EHPE脂環式固形エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートのコポリマー(以上、いずれもダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0013】
更に、上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物の市販品として、例えば、EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−721、EX−221、EM−150、EM−101、EM−103(以上、いずれもナガセケムテックス社製、デナコールシリーズ)、YD−115、YD−115G、YD−115CA、YD−118T、YD−127(以上、いずれも東都化成社製)、40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002、1500(以上、いずれも共栄社化学社製、エポライトシリーズ)等の液状エポキシ樹脂が挙げられる。
【0014】
更に、上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物の市販品として、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、エポリードGT400、エポリードD−100ET、エポリードD−100OT、エポリードD−100DT、エポリードD−100ST、エポリードD−200HD、エポリードD−200E、エポリードD−204P、エポリードD−210P、エポリードPB3600、エポリードPB4700(以上、いずれもダイセル化学工業社製、脂環式エポキシ化合物)等の液状エポキシ樹脂が挙げられる。
【0015】
上記(メタ)アクリル基を有する化合物は特に限定されず、例えば、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、オキサイド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、オキサイド変性ビスフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
更に、上記(メタ)アクリル基を有する化合物として、例えば、特開2005−76005号公報、特開2005−47979号公報、特開2005−76005号公報等に記載のエチレン性不飽和基含有ポリエステルデンドリマーが挙げられる。
【0017】
上記イソシアネート基を有する化合物は特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はジイソシアネートとポリオールとから得られる2つ以上のイソシアネート基を有する従来公知の化合物等が挙げられる。
【0018】
上記酸無水物基を有する化合物は特に限定されず、例えば、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミンテトラ酢酸二無水物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸等のテトラカルボン酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の重合性不飽和基含有化合物と無水マレイン酸との共重合体等が挙げられる。
【0019】
上記加水分解性シリル基を有する化合物は特に限定されず、例えば、アルコキシシラン、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリプロピレングリコール、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリイソブチレン、アルコキシシリル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アルコキシシランは特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
上記粘着剤層は、ケトプロフェン系塩基発生剤を含有する。
上記ケトプロフェン系塩基発生剤は、加熱により分解して、塩基を発生する。発生した塩基は、上記架橋性化合物に対して硬化剤として働く。そのため、本発明の後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱により塩基を発生させることにより、発生した塩基と上記架橋性化合物とを反応させて硬化し、強固な接着を行うことができる。
【0021】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤は、従来公知の硬化剤に比べて上記架橋性化合物や後述する粘着性付与成分との親和性に優れることから、本発明の後硬化テープの粘着剤層において、より均一に細かく分散することができる。そのため、加熱により上記ケトプロフェン系塩基発生剤から塩基を発生させると、発生した塩基と上記架橋性化合物との硬化反応が容易に進行することから、本発明の後硬化テープは、被接合部材へ貼り合わせられた後、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる。
【0022】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と下記式(1)で表されるアミンとの塩である。
N−[(CH−N−]−(CH−NH (1)
上記式(1)中、mは0又は1を表し、nは4〜8の整数を表す。
【0023】
上記式(1)で表されるアミンは、アミノ基の間に適当な長さの炭素鎖を有することから、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸がすべてのアミノ基に接近しやすく、効率的にアミノ基がマスキングされる。従って、上記ケトプロフェン系塩基発生剤が上記式(1)で表されるアミンとの塩であることにより、本発明の後硬化テープの貯蔵安定性が向上する。
なお、上記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と上記式(1)で表されるアミンとの塩であることから、加熱により分解して、上記式(1)で表されるアミンを発生する。
【0024】
上記式(1)中、mが1を超えると、得られる後硬化テープは貯蔵安定性が低下する。上記式(1)中、nが4未満であると、アミノ基の間の炭素鎖が短くなり、アミノ基の効果的なマスキングが行われず、得られる後硬化テープは貯蔵安定性が低下する。上記式(1)中、nが8を超えると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱により硬化する際、硬化が遅くなったり、ブリードしたりする。
【0025】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤として、具体例には、例えば、1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩、1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩、ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩等が挙げられる。
【0026】
上記ケトプロフェン系塩基発生剤の配合量は特に限定されないが、上記架橋性化合物100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が200重量部である。上記ケトプロフェン系塩基発生剤の配合量が10重量部未満であると、発生する上記式(1)で表されるアミンの量が少なく、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、硬化に時間がかかったり、低温硬化ができなかったりすることがある。上記ケトプロフェン系塩基発生剤の配合量が200重量部を超えると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、硬化不良が生じたり、上記ケトプロフェン系塩基発生剤が析出したりすることがある。
上記ケトプロフェン系塩基発生剤の配合量は、上記架橋性化合物100重量部に対するより好ましい下限が20重量部、より好ましい上限が150重量部である。
【0027】
上記粘着剤層は、粘着性付与成分を含有する。
上記粘着剤層が上記粘着性付与成分を含有することにより、本発明の後硬化テープは、粘着性を有する。そのため、粘着性を利用して本発明の後硬化テープを被接合部材に貼り合わせることができ、その後、加熱して硬化することにより強固な接着を行うことができる。
【0028】
上記粘着性付与成分は、本発明の後硬化テープに粘着性を付与することができれば特に限定されないが、粘着性を発現する樹脂又は塩基性添加剤であることが好ましい。
【0029】
上記粘着性を発現する樹脂は特に限定されないが、粘着性を発現する高分子であることが好ましい。
上記粘着性を発現する高分子は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、シリコーンポリマー、及び、これらの高分子を含有する共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性、耐久性、上記架橋性化合物との相溶性に優れることから、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。
【0030】
上記(メタ)アクリル系ポリマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより得られるポリマーが挙げられる。
上記重合させる方法は特に限定されず、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等の方法が挙げられる。上記重合反応は特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合反応、リビングラジカル重合反応、リビングアニオン重合反応が挙げられる。上記重合反応は、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを与えることにより開始させることができ、また、重合させる際に反応開始剤を用いてもよい。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、上記架橋性化合物として上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物を用いる場合、上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物との相溶性に優れ、得られる後硬化テープの硬化物の接着力が向上することから、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
上記粘着性付与成分の配合量は特に限定されないが、上記架橋性化合物100重量部に対する好ましい下限が60重量部、好ましい上限が400重量部である。上記粘着性付与成分の配合量が60重量部未満であると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、硬化物の初期接着力が低下することがある。上記粘着性付与成分の配合量が400重量部を超えると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、上記架橋性化合物に由来する硬化性が不充分となり、硬化物が充分な接着性を有することができないことがある。
【0033】
上記粘着剤層は、本発明の後硬化テープに所望の特性を付与するために、フィラーを含有してもよい。
上記フィラーは特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機物や、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機物が挙げられる。
【0034】
上記フィラーは、5μm以上の平均粒子径を有し、かつ、上記エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物と反応する部分を有しないことが好ましい。
このようなフィラーを含有することにより、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせ、加熱して硬化した後、接合部に応力が加わったときに応力分散し、接着力を向上させることができる。上記フィラーの平均粒子径が5μm未満であると、接着力を向上させる効果が得られないことがある。
【0035】
上記フィラーの配合量は特に限定されないが、上記架橋性化合物、上記ケトプロフェン系塩基発生剤及び上記粘着性付与成分の合計100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記フィラーの配合量が1重量部未満であると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせ、加熱して硬化した後、接合部に応力が加わったときに硬化物における応力分散が不足し、接着力が充分に向上しないことがある。上記フィラーの配合量が30重量部を超えると、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、接合界面での有効接着成分が不足して、硬化物の接着力が低下することがある。上記フィラーの配合量は、上記架橋性化合物、上記ケトプロフェン系塩基発生剤及び上記粘着性付与成分の合計100重量部に対するより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0036】
上記粘着剤層は、更に、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、C5系又はC9系の石油系樹脂、クマロン樹脂等を含有してもよい。特に、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、被接合部材がポリオレフィンからなる場合に硬化物の接着力を高めることができるため、ロジン系樹脂又は石油系樹脂が好ましい。
上記粘着剤層は、更に、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤を含有することにより、得られる後硬化テープを被接合部材に貼り合わせた後、加熱して硬化する際、硬化物の界面接着力を向上させることができる。
【0037】
本発明の後硬化テープは、基材の両面に上記粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよく、基材の片面に上記粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材を有さない両面粘着テープであってもよい。また、本発明の後硬化テープは、基材の一部の領域に上記粘着剤層が積層されている粘着テープであってもよい。
【0038】
上記基材は特に限定されず、例えば、不織布、合成樹脂からなるフィルム又はシート、発泡体、金属からなるシート又は箔、紙、布等が挙げられる。
【0039】
上記不織布は特に限定されず、例えば、レーヨン系不織布、セルロース系不織布等が挙げられる。上記合成樹脂からなるフィル又はシートは特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、セロハン、ポリプロピレン、ポリイミド等の合成樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。上記発泡体は特に限定されず、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン、発泡塩化ビニル等が挙げられる。上記金属からなるシート又は箔は特に限定されず、例えば、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅等の金属からなるシート又は箔が挙げられる。
【0040】
本発明の後硬化テープの製造方法は特に限定されず、例えば、上記架橋性化合物、上記ケトプロフェン系塩基発生剤、上記粘着性付与成分、及び、必要に応じて他の成分を、溶剤を用いて溶解混合した後、塗工し、乾燥させる方法や、上記架橋性化合物、上記ケトプロフェン系塩基発生剤、上記粘着性付与成分を構成するモノマー、及び、必要に応じて他の成分を、溶剤を用いることなく混合した後、シート状にキャストし、紫外線を照射することにより上記粘着性付与成分を構成するモノマーを重合させてテープ化する方法等が挙げられる。なかでも、溶剤を用いる必要がないことから乾燥等の加熱を伴う工程において硬化反応が進行してしまう可能性が低く、また、厚膜の後硬化テープを製造することができることから、後者の方法が好ましい。
【0041】
本発明の後硬化テープを用いて接合部材同士を接合する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の後硬化テープと接合部材とを貼り合わせて集成体を得た後、得られた集成体を60℃〜120℃にて1分〜6時間加熱養生する方法が好ましい。
上記加熱養生する温度が60℃未満であったり、上記加熱養生する時間が1分未満であったりすると、硬化が不充分となり、硬化物の接着力が不充分となることがある。上記加熱養生する温度が120℃を超えたり、上記加熱養生する時間が6時間を超えたりすると、後硬化テープを耐熱性の低い接合部材に適用することが困難となることがある。また、上記加熱養生する時間が6時間を超えると、接合作業の生産性が低下するため、好ましくない。
上記加熱養生する方法は特に限定されず、例えば、通常の加熱炉又はオーブン、高周波誘導加熱、超音波加熱等を用いる方法が挙げられる。
【0042】
本発明の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、本発明の後硬化テープと上記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程、及び、上記集成体を60℃〜120℃にて1分〜6時間加熱養生する工程を有する接合部材の接合方法もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる後硬化テープを提供することができる。また、本発明によれば、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0045】
(合成例1)
(1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,4−ジアミノブタン12.6gとを、エタノール中で混合し、室温で24時間攪拌して反応させた。その後、エバポレータを用いてエタノールを除去した後、得られた粗生成物をエタノール/ヘキサンを用いて再沈殿させ、1,4−ジアミノブタン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0046】
(合成例2)
(1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,6−ジアミノヘキサン16.6gとを用いた以外は合成例1と同様にして、1,6−ジアミノヘキサン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0047】
(合成例3)
(ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、ビス(6−アミノヘキシル)アミン20.5gとを用いた以外は合成例1と同様にして、ビス(6−アミノヘキシル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0048】
(合成例4)
(エチレンジアミン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、エチレンジアミン8.6gとを用いた以外は合成例1と同様にして、エチレンジアミン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0049】
(合成例5)
(ビス(2−アミノエチル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、ビス(2−アミノエチル)アミン9.8gとを用いた以外は合成例1と同様にして、ビス(2−アミノエチル)アミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0050】
(合成例6)
(1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン32.8gとを用いた以外は合成例1と同様にして、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0051】
(合成例7)
(m−キシリレンジアミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、m−キシリレンジアミン19.5gとを用いた以外は合成例1と同様にして、m−キシリレンジアミン三α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0052】
(合成例8)
(1,12−ジアミノドデカン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩の合成)
α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸80gと、1,12−ジアミノドデカン28.6gとを用いた以外は合成例1と同様にして、1,12−ジアミノドデカン二α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸塩を得た。
【0053】
(実施例1〜29、比較例1〜11)
表1、2、3に従って、架橋性化合物(ジャパンエポキシレジン社製「JER828」)、ケトプロフェン系塩基発生剤、光重合により粘着付与成分となるアクリルモノマー、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア819」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚みが0.5mmとなるように、38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚に塗液を挟んで、主波長420nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を3分間照射してアクリルモノマーを重合し、厚さ0.5mmの基材を有さない後硬化テープを得た。
得られた後硬化テープを室温で1日養生し、これを「貯蔵前」とした。また、得られた後硬化テープを40℃で7日養生し、これを「貯蔵後」とした。
【0054】
(評価)
得られた後硬化テープについて、下記のように評価した。結果を表1、2、3に示す。
【0055】
(1)初期せん断接着力の評価
後硬化テープを10mm×10mmのサイズの正方形の平面形状を有するようにカットした。表面の埃や油脂をアルコール洗浄により除去したステンレス板(15mm×50mm×2mm)上に、カットした後硬化テープを貼り合わせ、更に反対面にもステンレス板を貼り合わせて試験片を得た。得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
【0056】
(2)硬化後せん断接着力の評価
後硬化テープを10mm×10mmのサイズの正方形の平面形状を有するようにカットした。表面の埃や油脂をアルコール洗浄により除去したステンレス板(15mm×50mm×2mm)上に、カットした後硬化テープを貼り合わせ、更に反対面にもステンレス板を貼り合わせて試験片を得た。得られた試験片をオーブン中で表1、2、3記載の温度及び時間で養生した後、23℃で1時間状態調整し、(1)と同様にしてせん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、貯蔵安定性に優れ、加熱により低温かつ短時間で硬化することができる後硬化テープを提供することができる。また、本発明によれば、該後硬化テープを用いた接合部材の接合方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性化合物、ケトプロフェン系塩基発生剤及び粘着性付与成分を含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、
前記ケトプロフェン系塩基発生剤は、α−(2−ベンゾイル)フェニルプロピオン酸と下記式(1)で表されるアミンとの塩である
ことを特徴とする後硬化テープ。
N−[(CH−N−]−(CH−NH (1)
式(1)中、mは0又は1を表し、nは4〜8の整数を表す。
【請求項2】
架橋性化合物は、エポキシ基を1分子中に2個以上有する化合物であり、粘着性付与成分は、(メタ)アクリル系ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の後硬化テープ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、
前記後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程、及び、
前記集成体を60℃〜120℃にて1分〜6時間加熱養生する工程を有する
ことを特徴とする接合部材の接合方法。

【公開番号】特開2010−215862(P2010−215862A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67024(P2009−67024)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】