後部車体構造
【課題】後面衝突時における入力荷重を分散して負担させることができるとともに、左右後輪のサスペンション取付部の剛性を向上させる。
【解決手段】車体前後方向に延びる左右のリアフレーム2,2間に接続されたクロスメンバ10を有し、クロスメンバ10は、サスペンション取付部を備えており、クロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体後方に向けて延設されてスペアパン5を保持するスペアパンフレーム20A,20Bと、クロスメンバ10の車体左右方向中央部近傍に接続され、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右のリアフレーム2,2またはサイドシルS,Sへ接続された左右一対のタンクフレーム30,30と、を具備したことを特徴とする。
【解決手段】車体前後方向に延びる左右のリアフレーム2,2間に接続されたクロスメンバ10を有し、クロスメンバ10は、サスペンション取付部を備えており、クロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体後方に向けて延設されてスペアパン5を保持するスペアパンフレーム20A,20Bと、クロスメンバ10の車体左右方向中央部近傍に接続され、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右のリアフレーム2,2またはサイドシルS,Sへ接続された左右一対のタンクフレーム30,30と、を具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部車体構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。この後部車体構造では、車体後端に設けられたクロスサポートに、車体前後方向に設けられたサポートの後端が接続され、このサポートの前端がその前方の車体左右方向に設けられたレシービングブラケットに接続されており、さらに、このレシービングブラケットに、車体前方へ向けて平面視V字状に拡がる一対のコンプレッションバーが接続されている。この一対のコンプレッションバーは、それぞれの先端部が、車体前後方向に設けられた左右のサイドシルに接続されている。
【0003】
このような後部車体構造によれば、車体後端に設けられたクロスサポートから左右のサイドシルまでが、サポート、レシービングブラケット、コンプレッションバーを介して接続され、後部車体が補強された構造となっている。
【特許文献1】米国特許第6834910号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたような後部車体構造では、クロスサポートとレシービングブラケットとの間に接続されたサポートが、クロスサポートからレシービングブラケットへ向けて下り傾斜状に接続された構造となっていた。
このため、後面衝突時にクロスサポートに対して荷重が入力されると、その入力荷重は、クロスサポートからサポートを介してレシービングブラケットにうまく伝達されず、レシービングブラケットからコンプレッションバーを介して左右のサイドシルまで分散させることが難しいという問題を有していた。
【0005】
ところで、一般的な後部車体構造では、サスペンションを取り付けるためのサスペンション取付部を有しており、このサスペンション取付部には、サスペンションを介して車輪にかかる荷重等が作用する。このため、このサスペンション取付部の強度を高めて剛性向上を図ることが望まれている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたような後部車体構造では、レシービングブラケットと、左右後輪のサスペンション取付部とが、車体後部のフロアに相互に独立して設けられていた。このため、レシービングブラケットが左右後輪のサスペンション取付部の剛性向上に寄与しないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、後面衝突時における入力荷重を分散して負担させることができるとともに、左右後輪のサスペンション取付部の剛性を向上させることができる後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明のうち請求項1に記載の発明は、車体前後方向に延びる左右のリアフレーム間に接続されたクロスメンバを有する後部車体構造であって、前記クロスメンバは、左右後輪のサスペンションを支持するためのサスペンション取付部を備えており、前記クロスメンバに接続され、当該クロスメンバから車体後方に向けて延設されてスペアパンを保持するスペアパンフレームと、前記クロスメンバの車体左右方向中央部近傍に接続され、当該クロスメンバから車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右の前記リアフレームまたはサイドシルへ接続された左右一対のタンクフレームと、を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、後面衝突時に、例えば、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーが形成するリアエンド部に荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレームを通じてクロスメンバに伝達され、クロスメンバから車体前方に向けて車体前方左右方向に拡がる状態に延設された左右一対のタンクフレームを通じて左右のリアフレームまたはサイドシルに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0010】
また、クロスメンバの車体後方側には、スペアパンフレームが延設されており、また、クロスメンバの車体前方側には、左右一対のタンクフレームが延設されているので、クロスメンバは、これらのスペアパンフレームおよび左右一対のタンクフレームによって補強されることとなり、その剛性が向上されたものとなっている。これによって、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性も向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームと左右一対の前記タンクフレームとが前記クロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されていることを特徴とする。
ここで、直線状には、スペアパンフレームからクロスメンバを介して左右一対のタンクフレームへ、後面衝突時の入力荷重が伝達され得る段差を有してスペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとが配置されている構成が含まれる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、スペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとがクロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、車体前後方向の変形が好適に抑えられて、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性を向上させることができる。また、スペアパンの容積を大きく確保することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームは前記スペアパンの左右両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、スペアパンの左右両側に設けられたスペアパンフレームによって、後面衝突時に、例えば、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーが形成するリアエンド部を介して入力される荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてより効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、車体前後方向の変形がより好適に抑えられて、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性をより向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームは前記スペアパンの外側または内側から当該スペアパンを支持することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、スペアパンフレームがスペアパンの外側からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの容積が犠牲にされることなく前記したような後面衝突時の荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われる後部車体構造が得られる。
この場合、スペアパンフレームが外側側方からスペアパンを支持する構成では、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成に比べて最低地上高を確保しつつスペアパンの容積を増加させることができ、また、車体の低重心化も可能となる。
さらに、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの側方等のスペースを有効に利用することができる。また、スペアパンの外側底面にスペースがある場合に、これを有効に利用することができる。
そして、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成では、前記請求項2の構成と組み合わせた場合に、スペアパンフレームが外側側面の下部や外側底面に配置されることで、スペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとにおける上下方向のオフセット量を小さくすることができ、これによって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズかつ効率よく行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができるようになる。
【0017】
また、スペアパンフレームが内側からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの外側にスペアパンフレームが存在しないので、空力性能の向上を図ることができる。さらに、最低地上高を容易に確保することができ、車体の低重心化も可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記クロスメンバにおける前記スペアパンフレームの前方の接続位置は、前記サスペンション取付部としてのロアアームの支持位置であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ロアアームは、クロスメンバやリアフレームなどのメインの骨格から離れているが、スペアパンフレームの前方が接続されることによって支持剛性が高まるようになり、これによって、操縦安定性がより向上されるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の後部車体構造において、左右一対の前記タンクフレームは、それぞれの前端部が、左右の前記リアフレームまたはサイドシル間に接続されたフロアクロスメンバに接続されており、このフロアクロスメンバを介して左右一対の前記タンクフレームが、左右の前記リアフレームまたはサイドシルに接続されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、後面衝突時に、例えば、前記したようなリアエンド部を介して、スペアパンフレームに荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレームを通じてクロスメンバに伝達され、クロスメンバから左右一対のタンクフレームを通じてフロアクロスメンバに伝達され、フロアクロスメンバから左右のリアフレームまたはサイドシルに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
また、左右一対のタンクフレームがフロアクロスメンバに接続される構成であるので、その接続位置を車体中央側へ偏倚させることも可能となり、その分、車体後部に配置される部材におけるレイアウトの自由度が高まる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の後部車体構造において、前記フロアクロスメンバにおける左右一対の前記タンクフレームの接続位置に対応させて、フロアフレームが接続されていることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、後面衝突時に、左右一対のタンクフレームを通じてフロアクロスメンバに伝達された入力荷重が、フロアクロスメンバからフロアフレームにも伝達されるようになり、後面衝突時における荷重の分散伝達が、より効率的に行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームの後方の接続位置は、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーとを一体に接合するリアエンド部であることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、リアエンド部は車体の後方へ向く面を形成するので、後面衝突時には、オフセット後面衝突も含めて、その入力荷重を、スペアパンフレームへ伝達される系統と、リアフレームへ伝達される系統との2つの系統に分散することができる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、後面衝突時における入力荷重を分散して負担させることができるとともに、左右後輪のサスペンション取付部の剛性を向上させることができる後部車体構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る後部車体構造の詳細について説明する。なお、説明において、「前後」,「左右」,「上下」は、後部車体構造を構成するクロスメンバを、車体に取り付けた状態を基準とする。
【0028】
参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る後部車体構造を示す底面図、図2は同じく後部車体構造を備えた車体の後部を示す側面図、図3は同じく後部車体構造を底面側から示した斜視図である。
【0029】
はじめに、図1,図2を参照して、本実施形態の後部車体構造が適用される自動車の後部の概略構造について説明する。
自動車1の後部車体には、車体の前後方向に延びる左右のリアフレーム2,2と、このリアフレーム2,2間に接続されたクロスメンバ10と、このクロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体後方に向けて延設されたスペアパンフレーム20A,20Bと、クロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に延設された左右一対のタンクフレーム30,30とを備えて構成されている。また、リアフレーム2,2の前方のサイドシルS,S間には、ミドルクロスメンバ(フロアクロスメンバ)3が接続されており、このミドルクロスメンバ3から車体後方に向かってリアフロアパネル4が延設されている。リアフロアパネル4(図1参照)の後部には、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアパン5が凹設されている。
【0030】
以下各部を詳細に説明する。
図1を参照して、リアフレーム2,2は、上面が開放したチャンネル状の部材であり、その上端のフランジ部(不図示)にリアフロアパネル4の下面が溶接接合されている。そして、リアフレーム2,2の後端部には、エンドアウトリガー6A,6Aを介してエンドクロスメンバ6Bが溶接接合されてリアエンド部6が構成されている。エンドアウトリガー6A,6Aおよびエンドクロスメンバ6Bは、いずれも上面が開放したチャンネル状の部材であり、それぞれの上端のフランジ部6a,6b(図3参照)にリアフロアパネル4の後端下面が溶接接合されている。
【0031】
図3に示すように、これらのエンドアウトリガー6A,6Aおよびエンドクロスメンバ6Bのさらに後方には、リアフロアパネル4の後端に溶接接合されてリアパネル7が配置されている。このリアパネル7は、トランクルーム(不図示)の後壁を形成している。また、リアパネル7の左右後面には、車体左右方向に延びるバンパービーム8がバンパービームエクステンション8a(図5(c)参照)を介してボルト固定されている。
なお、リアフロアパネル4およびリアパネル7の左右両側縁(不図示)にはリアサイドパネル9が溶接接合されている。また、エンドクロスメンバ6Bの略中央下部には、補強部材6Cが接合されている。
【0032】
図1〜図3に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bは、リアフレーム2,2と平行もしくは水平に配置されており、前記のように、クロスメンバ10とエンドクロスメンバ6Bとの間に溶接接合されている。スペアパンフレーム20A,20Bは、上面が開放したチャンネル状の部材(図5(a)参照)であり、その上端のフランジ部21a,21b(図1,図3参照、図3においては片側のみ図示)がスペアパン5の底面部5bに対してそれぞれ溶接接合されている。
本実施形態では、図4(a)に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bがスペアパン5の底面部5bの左右角部近傍に配置されており、スペアパン5をその外側から支持するように構成されている。これにより、スペアパン5の容積が犠牲にされずに、高い支持剛性が得られる。
また、スペアパン5の底面側のスペースを有効に利用することができる。
【0033】
ここで、このようなスペアパンフレーム20A,20Bは、図4(b)〜(d)に示すように、スペアパン5に対して支持位置を変更して固定してもよい。
図4(b)に示す例では、スペアパンフレーム20A,20Bをスペアパン5の側部5aに固定して側部5aからスペアパン5を支持するように構成したものである。このように構成することで、図中二点鎖線で示すように、スペアパンフレーム20A,20Bが底面部5bにあったときの厚み分が空間として利用できるようになり、底面部5bを下方へ膨出させることができる。これにより、スペアパン5の容積を増加させることができる。つまり、この構成では、最低地上高hを変更することなく、スペアパン5の容積を増加させることができる。また、スペアパン5の側方のスペースを有効に利用することができる。
【0034】
また、図4(c)に示すように、スペアパン5の容積を増加させない場合には、前記厚み分だけスペアパン5の全体を最低地上高hまで下降させることができるようになる。これによって、低重心化を図ることができる。また、このことは走行性能の向上に寄与する。
なお、前記した図4(a)〜(c)に示した例では、スペアパンフレーム20A,20Bのフランジ部21a,21bの溶接方向がそれぞれ同一であるので、溶接時の作業性が向上する。
【0035】
また、図4(d)に示すように、フランジ部21a,21bの溶接方向を異ならせて、スペアパンフレーム20A,20Bの一方のフランジ部21aを底面部5b側に溶接して固定するように構成してもよい。このように構成することによって、フランジ部21aが車体下方に露出するので、溶接時の作業が行い易くなる。
【0036】
次に、図5(a)を参照して、車体後端左側の接合構造を説明する。図中一点鎖線で示した各部は溶接接合部を表している。スペアパン5の底面部5bには、スペアパンフレーム20Aが接合されて閉断面を構成している。そして、さらにその下にエンドクロスメンバ6Bおよびエンドアウトリガー6Aが重ねられて接合され、エンドアウトリガー6Aは端部がリアフレーム2に延設されて接合されている。また、エンドアウトリガー6Aに接合されるプレート部6A’(図5(b)参照)は、スペアパン5の側部5aとリアフレーム2とに架け渡されて接合されている。なお、同図に示すように、車体後端においては、リアフレーム2の上にフロアサイドスチフナ9’が載置されて接合され、その上面に、リアフロアパネル4の端部が載置されて接合されている。なお、エンドクロスメンバ6Bとスペアパン5の底面部5bとの間に、支持材6dが接合され、これに対応する位置に、補強部材6cが接合されている。
【0037】
なお、図5(b)に示すように、リアフロアパネル4の後端部には、リアパネル7が接合されている。
また、図5(c)に示すように、リアパネル7には、リアパネルサイドスチフナ7aが接合され、このリアパネルサイドスチフナ7aとフロアサイドスチフナ9’との間にガセット7bが接合されている。そして、リアフレーム2の後端部には、スチフナ8b,8bを介してバンパービームエクステンション8aがボルト接合され、さらにこのバンパービームエクステンション8aを介してバンパービーム8がボルト接合されている。
【0038】
次に、リアフロアの車体前後方向略中央に配置されたクロスメンバ10について説明する。図1〜3に示すように、クロスメンバ10は、上面が開放したチャンネル状の部材(図6(a)参照)であり、前記のように、リアフレーム2,2に架け渡されて溶接接合されるとともに、その上端のフランジ部10a,10b(図6(a)参照)がリアフロアパネル4の底面に対してそれぞれ溶接接合されている。本実施形態では、スペアパン5の底面部5b(図2参照)の前端部にクロスメンバ10がかかるように配置されており、これによって、スペアパン5がクロスメンバ10によっても支持されるように構成されている。
【0039】
クロスメンバ10の左右両端部には、左右後輪のサスペンション(不図示、以下同じ)を支持するためのスプリング支持部11,11(図3参照)が一体的に設けられている。また、クロスメンバ10の左右方向中央部近傍(下部中央部近傍)には、タンクフレーム30,30が接続されるようになっている。図3に示すように、このタンクフレーム30,30が接続される部位には、左右後輪のロアアーム(不図示)がそれぞれ連結されるサスペンション取付部としてのロアアーム支持部12,12が設けられている。本実施形態では、このロアアーム支持部12,12の近傍に前記したスペアパンフレーム20A,20Bの前端部が接続されている。別言すれば、底面視でスペアパンフレーム20A,20Bの長手方向の軸線の延長線上に、ロアアーム支持部12,12が位置するように構成されている。
【0040】
ここで、図6(a)を参照して、クロスメンバ10のロアアーム支持部12,12の周りの接合構造を説明する。図6(a)に示すように、スペアパン5の底面部5bには、クロスメンバ10が接合されて閉断面を構成している。そして、ブラケットスチフナ12b,12bを介してロアアームブラケット32A,32Bが接合され、さらに前部ブラケット12cが前側のロアアームブラケット32Bに接合されている。
【0041】
左右一対のタンクフレーム30,30は、板状あるいは扁平な中空状の部材からなり、図1に示すように、後端部30a,30aがクロスメンバ10の車体左右方向中央部近傍に接続され、前端部30b,30bがリアフレーム2,2の湾曲部端の前方のサイドシルS,Sに接続されて、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に配置されている。本実施形態では、サイドシルS,S間に、ミドルクロスメンバ3が接続されており、左右一対のタンクフレーム30,30とこのミドルクロスメンバ3とで、ミドルクロスメンバ3を底辺とする一つの三角形要素が構成されるようになっている。したがって、クロスメンバ10とミドルクロスメンバ3との間の剛性が高められている。
【0042】
左右一対のタンクフレーム30,30は、図6(b)(c)に示すように、その後端部30a,30aがボルト34とナット35による締結で、クロスメンバ10に取り付けられている。具体的には、クロスメンバ10の下方にロアアームブラケット32A,32Bを接合し、このロアアームブラケット32A,32Bの下方から、左右一対のタンクフレーム30,30をボルト34とナット35で取り付ける。ボルト34は、これらのクロスメンバ10、ロアアームブラケット32A,32B、およびタンクフレーム30を貫通する長さを備えており、カラー31a,32a,33aを介在させて貫通される。
【0043】
また、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bは、図7に示すように、長手方向に並べられた2本のボルト34,34をナット35,35でそれぞれ締結して、サイドシルSに接続される。なお、各ボルト34には、カラー2b,33aが介在されている。また、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bは、リアフレーム2,2に接続してもよい。
【0044】
このようにして接続される左右一対のタンクフレーム30,30には、燃料タンクT(図11参照)が載置され、図示しないベルト部材やボルト等によって支持固定される。
そして、図2に示すように、スペアパンフレーム20A(20B)と左右一対のタンクフレーム30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されるようになっている。
【0045】
ここで、図8を参照して、クロスメンバ10に対するスペアパンフレーム20A,20Bと、左右一対のタンクフレーム30,30との底面側から見た好適な位置関係を説明する。図中符号L1は、自動車1の車幅寸法を示し、符号L2は、自動車1の左側面からスペアパンフレーム20Bの右側部までの寸法を示し、符号L3は、自動車1の右側面からスペアパンフレーム20Aの左側部までの寸法を示している。
図8に示した例では、比率L1:L2およびL1:L3が、いずれも、100:50〜100:70の範囲となるように設定されている。
このように比率L1:L2およびL1:L3を設定することによって、クロスメンバ10におけるスペアパンフレーム20A,20Bの接続位置を、クロスメンバ10のスプリング支持部11,11に、近づけることができる。
【0046】
また、クロスメンバ10に対するスペアパンフレーム20A,20Bと、左右一対のタンクフレーム30,30との底面側から見た好適な位置関係を別の観点から説明すると、クロスメンバ10におけるスペアパンフレーム20A,20Bの接続位置(イ)(イ)は、ともに、ロアアーム支持部12,12の近傍位置となる(図3参照)。
このように構成することによって、ロアアームの支持剛性を向上させることができる。
【0047】
次に、後面衝突時に、車体に荷重が入力されたときの作用について図9、図10を参照して説明する。
図9および図10に示すように、後面衝突時にバンパービーム8、リアエンド部6を通じてスペアパンフレーム20A,20Bに図中矢印で示すような荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達される一方、リアエンド部6を通じて、リアフレーム2,2にも伝達される。そして、クロスメンバ10に伝達された入力荷重は、クロスメンバ10の車体左右方中央部近傍から、車体前方に向けて車体前方左右方向に拡がる左右一対のタンクフレーム30,30に伝達され、これら左右一対のタンクフレーム30,30を通じて左右のサイドシルS,Sに伝達される。
【0048】
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
なお、クロスメンバ10は、左右両端部が左右のリアフレーム2,2に接続されているので、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達された入力荷重は、クロスメンバ10を通じて左右のリアフレーム2,2にも分散されて伝達される。したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達がより効率的に行われるようになる。
【0049】
また、クロスメンバ10の車体後方側には、スペアパンフレーム20A,20Bが延設されており、また、クロスメンバ10の車体前方側には、左右一対のタンクフレーム30,30が延設されているので、クロスメンバ10は、これらのスペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30によって補強されることとなり、その剛性が向上されたものとなっている。これによって、クロスメンバ10に設けられたロアアーム支持部12,12の剛性も向上させることができる。
【0050】
また、図10に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われるようになる。
【0051】
ここで、仮にこのようなスペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30を備えていない場合には、図10中太い破線で示すように、後面衝突時における入力荷重の伝達経路は、リアフレーム2,2(一方のみ図示)を通じたものとなる。つまり、入力荷重は、湾曲部を有するリアフレーム2,2を通じて車体後部から前部へ向けて伝達されることとなるので、直線的に荷重が伝達され難く、分散伝達の効率が低下する。
【0052】
これに対して、本実施形態では、前記のようにスペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、分散伝達がスムーズであり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果が高い。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、後面衝突時の入力荷重が、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達され、クロスメンバ10から左右一対のタンクフレーム30,30を通じて左右のサイドシルS,Sに伝達されるので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0054】
また、クロスメンバ10は、スペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30によって補強され、その剛性が向上されたものとなっているので、クロスメンバ10のロアアーム支持部12,12の剛性も向上させることができる。
【0055】
また、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われ、後面衝突時のエネルギーの吸収効果がより一層高まる。
さらに、車体前後方向の変形が好適に抑えられて、クロスメンバ10に設けられたロアアーム支持部12,12の剛性を向上させることができる。
【0056】
スペアパンフレーム20A,20Bは、スペアパン5の左右両側にそれぞれ設けられているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてより効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、このことによって、車体前後方向の変形がより好適に抑えられて、ロアアーム支持部12,12の剛性をより向上させることができる。
【0057】
また、スペアパンフレーム20A,20Bが外側底面からスペアパン5を支持する構成や、側部5aの下部に配置されることで、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とにおける上下方向のオフセット量を小さくすることができ、これによって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズかつ効率よく行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができるようになる。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、発明の主旨に応じた適宜の変更実施が可能であることはいうまでもない。例えば、図11は、前記実施形態の後部車体構造が採用された自動車1の概略底面図であり、排気系の部材として触媒コンバータ40、チャンバー41、マフラー42が配置され、吸気系の部材としてキャニスタ43が配置されている。これらの各部材は、左右一対のタンクフレーム30,30の接続位置変更により、レイアウトや形状等を変更することができる。
【0059】
その一例を図12を参照して説明すると、この例では、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bが、左右のサイドシルS,S間に接続されたフロアクロスメンバとしてのミドルクロスメンバ3に接続されており、このミドルクロスメンバ3を介して左右一対のタンクフレーム30,30が、左右のサイドシルS,Sに接続された構成となっている。
【0060】
このような構成によれば、後面衝突時にリアエンド部6からスペアパンフレーム20A,20Bに荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達され、クロスメンバ10から左右一対のタンクフレーム30,30を通じてミドルクロスメンバ3に伝達され、このミドルクロスメンバ3から左右のサイドシルS,Sに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
また、左右一対のタンクフレーム30,30が、ミドルクロスメンバ3に接続される構成であるので、その接続位置を車体中央側へ偏倚させることが可能となり、その分、車体後部に配置される前記各部材のレイアウトの自由度が高まる。この例では、左右一対のタンクフレーム30,30が偏倚することによって側方の空いたスペースにチャンバー41を配置することができ、チャンバー41の容量を増やすことが可能である。
【0061】
また、図13(a)〜(c)に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bは、スペアパン5の内面側に配置して固定するようにしてもよい。
図13(a)に示した例では、スペアパン5の内面側の隅部に跨る状態にスペアパンフレーム20A,20Bを配置したものであり、図13(b)に示した例では、スペアパン5の側部5aの下部にスペアパンフレーム20A,20Bが固定されたものである。また、図13(c)に示した例では、スペアパン5の底面部5bにスペアパンフレーム20A,20Bが固定されたものである。
【0062】
いずれの例においても、スペアパンフレーム20A,20Bがスペアパン5の内面側に配置されているので、その分、車体下方への突出が減じられ、空力性能が向上する。また、最低地上高を容易に確保することができる。また、図13(b)(c)に示した例では、フランジ部21a,21bの溶接方向が同一方向となるので、溶接時の作業性が向上する。
【0063】
また、スペアパンフレーム20A,20B、クロスメンバ10、左右一対のタンクフレーム30,30等の形状は、任意であり種々の形状を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る後部車体構造を示す底面図である。
【図2】同じく後部車体構造を備えた車体の後部を示す側面図である。
【図3】同じく後部車体構造を底面側から示した斜視図である。
【図4】(a)〜(d)はスペアパンフレームの固定位置の態様を示す模式断面図である。
【図5】(a)は図1におけるB−B矢視断面図、(b)は図5(a)におけるB1−B1矢視断面図、(c)は図1におけるC−C矢視断面図である。
【図6】(a)は図1におけるD−D矢視断面図、(b)は図1におけるE−E矢視断面図、(c)は図1におけるF−F矢視断面図である。
【図7】図1におけるG−G矢視断面図である。
【図8】クロスメンバに対するスペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとの底面側から見た好適な位置関係を示した説明図である。
【図9】後面衝突時における入力荷重の伝達を示した説明図である。
【図10】後面衝突時における入力荷重の伝達を示した説明図である。
【図11】車体底面のレイアウトを示した説明図である。
【図12】車体底面のレイアウトの変形例を示した説明図である。
【図13】(a)〜(c)はスペアパンフレームの固定位置の態様を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動車
2 リアフレーム
2a 湾曲部端
3 ミドルクロスメンバ
4 リアフロアパネル
5 スペアパン
5a 側部
5b 底面部
10 クロスメンバ
11 スプリング支持部
12 ロアアーム支持部
30 タンクフレーム
T 燃料タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部車体構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。この後部車体構造では、車体後端に設けられたクロスサポートに、車体前後方向に設けられたサポートの後端が接続され、このサポートの前端がその前方の車体左右方向に設けられたレシービングブラケットに接続されており、さらに、このレシービングブラケットに、車体前方へ向けて平面視V字状に拡がる一対のコンプレッションバーが接続されている。この一対のコンプレッションバーは、それぞれの先端部が、車体前後方向に設けられた左右のサイドシルに接続されている。
【0003】
このような後部車体構造によれば、車体後端に設けられたクロスサポートから左右のサイドシルまでが、サポート、レシービングブラケット、コンプレッションバーを介して接続され、後部車体が補強された構造となっている。
【特許文献1】米国特許第6834910号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたような後部車体構造では、クロスサポートとレシービングブラケットとの間に接続されたサポートが、クロスサポートからレシービングブラケットへ向けて下り傾斜状に接続された構造となっていた。
このため、後面衝突時にクロスサポートに対して荷重が入力されると、その入力荷重は、クロスサポートからサポートを介してレシービングブラケットにうまく伝達されず、レシービングブラケットからコンプレッションバーを介して左右のサイドシルまで分散させることが難しいという問題を有していた。
【0005】
ところで、一般的な後部車体構造では、サスペンションを取り付けるためのサスペンション取付部を有しており、このサスペンション取付部には、サスペンションを介して車輪にかかる荷重等が作用する。このため、このサスペンション取付部の強度を高めて剛性向上を図ることが望まれている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されたような後部車体構造では、レシービングブラケットと、左右後輪のサスペンション取付部とが、車体後部のフロアに相互に独立して設けられていた。このため、レシービングブラケットが左右後輪のサスペンション取付部の剛性向上に寄与しないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、後面衝突時における入力荷重を分散して負担させることができるとともに、左右後輪のサスペンション取付部の剛性を向上させることができる後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明のうち請求項1に記載の発明は、車体前後方向に延びる左右のリアフレーム間に接続されたクロスメンバを有する後部車体構造であって、前記クロスメンバは、左右後輪のサスペンションを支持するためのサスペンション取付部を備えており、前記クロスメンバに接続され、当該クロスメンバから車体後方に向けて延設されてスペアパンを保持するスペアパンフレームと、前記クロスメンバの車体左右方向中央部近傍に接続され、当該クロスメンバから車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右の前記リアフレームまたはサイドシルへ接続された左右一対のタンクフレームと、を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、後面衝突時に、例えば、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーが形成するリアエンド部に荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレームを通じてクロスメンバに伝達され、クロスメンバから車体前方に向けて車体前方左右方向に拡がる状態に延設された左右一対のタンクフレームを通じて左右のリアフレームまたはサイドシルに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0010】
また、クロスメンバの車体後方側には、スペアパンフレームが延設されており、また、クロスメンバの車体前方側には、左右一対のタンクフレームが延設されているので、クロスメンバは、これらのスペアパンフレームおよび左右一対のタンクフレームによって補強されることとなり、その剛性が向上されたものとなっている。これによって、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性も向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームと左右一対の前記タンクフレームとが前記クロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されていることを特徴とする。
ここで、直線状には、スペアパンフレームからクロスメンバを介して左右一対のタンクフレームへ、後面衝突時の入力荷重が伝達され得る段差を有してスペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとが配置されている構成が含まれる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、スペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとがクロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、車体前後方向の変形が好適に抑えられて、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性を向上させることができる。また、スペアパンの容積を大きく確保することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームは前記スペアパンの左右両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、スペアパンの左右両側に設けられたスペアパンフレームによって、後面衝突時に、例えば、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーが形成するリアエンド部を介して入力される荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてより効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、車体前後方向の変形がより好適に抑えられて、クロスメンバに設けられたサスペンション取付部の剛性をより向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームは前記スペアパンの外側または内側から当該スペアパンを支持することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、スペアパンフレームがスペアパンの外側からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの容積が犠牲にされることなく前記したような後面衝突時の荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われる後部車体構造が得られる。
この場合、スペアパンフレームが外側側方からスペアパンを支持する構成では、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成に比べて最低地上高を確保しつつスペアパンの容積を増加させることができ、また、車体の低重心化も可能となる。
さらに、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの側方等のスペースを有効に利用することができる。また、スペアパンの外側底面にスペースがある場合に、これを有効に利用することができる。
そして、スペアパンフレームが外側底面からスペアパンを支持する構成では、前記請求項2の構成と組み合わせた場合に、スペアパンフレームが外側側面の下部や外側底面に配置されることで、スペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとにおける上下方向のオフセット量を小さくすることができ、これによって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズかつ効率よく行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができるようになる。
【0017】
また、スペアパンフレームが内側からスペアパンを支持する構成では、スペアパンの外側にスペアパンフレームが存在しないので、空力性能の向上を図ることができる。さらに、最低地上高を容易に確保することができ、車体の低重心化も可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記クロスメンバにおける前記スペアパンフレームの前方の接続位置は、前記サスペンション取付部としてのロアアームの支持位置であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ロアアームは、クロスメンバやリアフレームなどのメインの骨格から離れているが、スペアパンフレームの前方が接続されることによって支持剛性が高まるようになり、これによって、操縦安定性がより向上されるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の後部車体構造において、左右一対の前記タンクフレームは、それぞれの前端部が、左右の前記リアフレームまたはサイドシル間に接続されたフロアクロスメンバに接続されており、このフロアクロスメンバを介して左右一対の前記タンクフレームが、左右の前記リアフレームまたはサイドシルに接続されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、後面衝突時に、例えば、前記したようなリアエンド部を介して、スペアパンフレームに荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレームを通じてクロスメンバに伝達され、クロスメンバから左右一対のタンクフレームを通じてフロアクロスメンバに伝達され、フロアクロスメンバから左右のリアフレームまたはサイドシルに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
また、左右一対のタンクフレームがフロアクロスメンバに接続される構成であるので、その接続位置を車体中央側へ偏倚させることも可能となり、その分、車体後部に配置される部材におけるレイアウトの自由度が高まる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の後部車体構造において、前記フロアクロスメンバにおける左右一対の前記タンクフレームの接続位置に対応させて、フロアフレームが接続されていることを特徴とする。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、後面衝突時に、左右一対のタンクフレームを通じてフロアクロスメンバに伝達された入力荷重が、フロアクロスメンバからフロアフレームにも伝達されるようになり、後面衝突時における荷重の分散伝達が、より効率的に行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の後部車体構造において、前記スペアパンフレームの後方の接続位置は、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーとを一体に接合するリアエンド部であることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、リアエンド部は車体の後方へ向く面を形成するので、後面衝突時には、オフセット後面衝突も含めて、その入力荷重を、スペアパンフレームへ伝達される系統と、リアフレームへ伝達される系統との2つの系統に分散することができる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、後面衝突時における入力荷重を分散して負担させることができるとともに、左右後輪のサスペンション取付部の剛性を向上させることができる後部車体構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る後部車体構造の詳細について説明する。なお、説明において、「前後」,「左右」,「上下」は、後部車体構造を構成するクロスメンバを、車体に取り付けた状態を基準とする。
【0028】
参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る後部車体構造を示す底面図、図2は同じく後部車体構造を備えた車体の後部を示す側面図、図3は同じく後部車体構造を底面側から示した斜視図である。
【0029】
はじめに、図1,図2を参照して、本実施形態の後部車体構造が適用される自動車の後部の概略構造について説明する。
自動車1の後部車体には、車体の前後方向に延びる左右のリアフレーム2,2と、このリアフレーム2,2間に接続されたクロスメンバ10と、このクロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体後方に向けて延設されたスペアパンフレーム20A,20Bと、クロスメンバ10に接続され、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に延設された左右一対のタンクフレーム30,30とを備えて構成されている。また、リアフレーム2,2の前方のサイドシルS,S間には、ミドルクロスメンバ(フロアクロスメンバ)3が接続されており、このミドルクロスメンバ3から車体後方に向かってリアフロアパネル4が延設されている。リアフロアパネル4(図1参照)の後部には、スペアタイヤ(不図示)を収納するスペアパン5が凹設されている。
【0030】
以下各部を詳細に説明する。
図1を参照して、リアフレーム2,2は、上面が開放したチャンネル状の部材であり、その上端のフランジ部(不図示)にリアフロアパネル4の下面が溶接接合されている。そして、リアフレーム2,2の後端部には、エンドアウトリガー6A,6Aを介してエンドクロスメンバ6Bが溶接接合されてリアエンド部6が構成されている。エンドアウトリガー6A,6Aおよびエンドクロスメンバ6Bは、いずれも上面が開放したチャンネル状の部材であり、それぞれの上端のフランジ部6a,6b(図3参照)にリアフロアパネル4の後端下面が溶接接合されている。
【0031】
図3に示すように、これらのエンドアウトリガー6A,6Aおよびエンドクロスメンバ6Bのさらに後方には、リアフロアパネル4の後端に溶接接合されてリアパネル7が配置されている。このリアパネル7は、トランクルーム(不図示)の後壁を形成している。また、リアパネル7の左右後面には、車体左右方向に延びるバンパービーム8がバンパービームエクステンション8a(図5(c)参照)を介してボルト固定されている。
なお、リアフロアパネル4およびリアパネル7の左右両側縁(不図示)にはリアサイドパネル9が溶接接合されている。また、エンドクロスメンバ6Bの略中央下部には、補強部材6Cが接合されている。
【0032】
図1〜図3に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bは、リアフレーム2,2と平行もしくは水平に配置されており、前記のように、クロスメンバ10とエンドクロスメンバ6Bとの間に溶接接合されている。スペアパンフレーム20A,20Bは、上面が開放したチャンネル状の部材(図5(a)参照)であり、その上端のフランジ部21a,21b(図1,図3参照、図3においては片側のみ図示)がスペアパン5の底面部5bに対してそれぞれ溶接接合されている。
本実施形態では、図4(a)に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bがスペアパン5の底面部5bの左右角部近傍に配置されており、スペアパン5をその外側から支持するように構成されている。これにより、スペアパン5の容積が犠牲にされずに、高い支持剛性が得られる。
また、スペアパン5の底面側のスペースを有効に利用することができる。
【0033】
ここで、このようなスペアパンフレーム20A,20Bは、図4(b)〜(d)に示すように、スペアパン5に対して支持位置を変更して固定してもよい。
図4(b)に示す例では、スペアパンフレーム20A,20Bをスペアパン5の側部5aに固定して側部5aからスペアパン5を支持するように構成したものである。このように構成することで、図中二点鎖線で示すように、スペアパンフレーム20A,20Bが底面部5bにあったときの厚み分が空間として利用できるようになり、底面部5bを下方へ膨出させることができる。これにより、スペアパン5の容積を増加させることができる。つまり、この構成では、最低地上高hを変更することなく、スペアパン5の容積を増加させることができる。また、スペアパン5の側方のスペースを有効に利用することができる。
【0034】
また、図4(c)に示すように、スペアパン5の容積を増加させない場合には、前記厚み分だけスペアパン5の全体を最低地上高hまで下降させることができるようになる。これによって、低重心化を図ることができる。また、このことは走行性能の向上に寄与する。
なお、前記した図4(a)〜(c)に示した例では、スペアパンフレーム20A,20Bのフランジ部21a,21bの溶接方向がそれぞれ同一であるので、溶接時の作業性が向上する。
【0035】
また、図4(d)に示すように、フランジ部21a,21bの溶接方向を異ならせて、スペアパンフレーム20A,20Bの一方のフランジ部21aを底面部5b側に溶接して固定するように構成してもよい。このように構成することによって、フランジ部21aが車体下方に露出するので、溶接時の作業が行い易くなる。
【0036】
次に、図5(a)を参照して、車体後端左側の接合構造を説明する。図中一点鎖線で示した各部は溶接接合部を表している。スペアパン5の底面部5bには、スペアパンフレーム20Aが接合されて閉断面を構成している。そして、さらにその下にエンドクロスメンバ6Bおよびエンドアウトリガー6Aが重ねられて接合され、エンドアウトリガー6Aは端部がリアフレーム2に延設されて接合されている。また、エンドアウトリガー6Aに接合されるプレート部6A’(図5(b)参照)は、スペアパン5の側部5aとリアフレーム2とに架け渡されて接合されている。なお、同図に示すように、車体後端においては、リアフレーム2の上にフロアサイドスチフナ9’が載置されて接合され、その上面に、リアフロアパネル4の端部が載置されて接合されている。なお、エンドクロスメンバ6Bとスペアパン5の底面部5bとの間に、支持材6dが接合され、これに対応する位置に、補強部材6cが接合されている。
【0037】
なお、図5(b)に示すように、リアフロアパネル4の後端部には、リアパネル7が接合されている。
また、図5(c)に示すように、リアパネル7には、リアパネルサイドスチフナ7aが接合され、このリアパネルサイドスチフナ7aとフロアサイドスチフナ9’との間にガセット7bが接合されている。そして、リアフレーム2の後端部には、スチフナ8b,8bを介してバンパービームエクステンション8aがボルト接合され、さらにこのバンパービームエクステンション8aを介してバンパービーム8がボルト接合されている。
【0038】
次に、リアフロアの車体前後方向略中央に配置されたクロスメンバ10について説明する。図1〜3に示すように、クロスメンバ10は、上面が開放したチャンネル状の部材(図6(a)参照)であり、前記のように、リアフレーム2,2に架け渡されて溶接接合されるとともに、その上端のフランジ部10a,10b(図6(a)参照)がリアフロアパネル4の底面に対してそれぞれ溶接接合されている。本実施形態では、スペアパン5の底面部5b(図2参照)の前端部にクロスメンバ10がかかるように配置されており、これによって、スペアパン5がクロスメンバ10によっても支持されるように構成されている。
【0039】
クロスメンバ10の左右両端部には、左右後輪のサスペンション(不図示、以下同じ)を支持するためのスプリング支持部11,11(図3参照)が一体的に設けられている。また、クロスメンバ10の左右方向中央部近傍(下部中央部近傍)には、タンクフレーム30,30が接続されるようになっている。図3に示すように、このタンクフレーム30,30が接続される部位には、左右後輪のロアアーム(不図示)がそれぞれ連結されるサスペンション取付部としてのロアアーム支持部12,12が設けられている。本実施形態では、このロアアーム支持部12,12の近傍に前記したスペアパンフレーム20A,20Bの前端部が接続されている。別言すれば、底面視でスペアパンフレーム20A,20Bの長手方向の軸線の延長線上に、ロアアーム支持部12,12が位置するように構成されている。
【0040】
ここで、図6(a)を参照して、クロスメンバ10のロアアーム支持部12,12の周りの接合構造を説明する。図6(a)に示すように、スペアパン5の底面部5bには、クロスメンバ10が接合されて閉断面を構成している。そして、ブラケットスチフナ12b,12bを介してロアアームブラケット32A,32Bが接合され、さらに前部ブラケット12cが前側のロアアームブラケット32Bに接合されている。
【0041】
左右一対のタンクフレーム30,30は、板状あるいは扁平な中空状の部材からなり、図1に示すように、後端部30a,30aがクロスメンバ10の車体左右方向中央部近傍に接続され、前端部30b,30bがリアフレーム2,2の湾曲部端の前方のサイドシルS,Sに接続されて、クロスメンバ10から車体前方左右方向に拡がる状態に配置されている。本実施形態では、サイドシルS,S間に、ミドルクロスメンバ3が接続されており、左右一対のタンクフレーム30,30とこのミドルクロスメンバ3とで、ミドルクロスメンバ3を底辺とする一つの三角形要素が構成されるようになっている。したがって、クロスメンバ10とミドルクロスメンバ3との間の剛性が高められている。
【0042】
左右一対のタンクフレーム30,30は、図6(b)(c)に示すように、その後端部30a,30aがボルト34とナット35による締結で、クロスメンバ10に取り付けられている。具体的には、クロスメンバ10の下方にロアアームブラケット32A,32Bを接合し、このロアアームブラケット32A,32Bの下方から、左右一対のタンクフレーム30,30をボルト34とナット35で取り付ける。ボルト34は、これらのクロスメンバ10、ロアアームブラケット32A,32B、およびタンクフレーム30を貫通する長さを備えており、カラー31a,32a,33aを介在させて貫通される。
【0043】
また、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bは、図7に示すように、長手方向に並べられた2本のボルト34,34をナット35,35でそれぞれ締結して、サイドシルSに接続される。なお、各ボルト34には、カラー2b,33aが介在されている。また、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bは、リアフレーム2,2に接続してもよい。
【0044】
このようにして接続される左右一対のタンクフレーム30,30には、燃料タンクT(図11参照)が載置され、図示しないベルト部材やボルト等によって支持固定される。
そして、図2に示すように、スペアパンフレーム20A(20B)と左右一対のタンクフレーム30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されるようになっている。
【0045】
ここで、図8を参照して、クロスメンバ10に対するスペアパンフレーム20A,20Bと、左右一対のタンクフレーム30,30との底面側から見た好適な位置関係を説明する。図中符号L1は、自動車1の車幅寸法を示し、符号L2は、自動車1の左側面からスペアパンフレーム20Bの右側部までの寸法を示し、符号L3は、自動車1の右側面からスペアパンフレーム20Aの左側部までの寸法を示している。
図8に示した例では、比率L1:L2およびL1:L3が、いずれも、100:50〜100:70の範囲となるように設定されている。
このように比率L1:L2およびL1:L3を設定することによって、クロスメンバ10におけるスペアパンフレーム20A,20Bの接続位置を、クロスメンバ10のスプリング支持部11,11に、近づけることができる。
【0046】
また、クロスメンバ10に対するスペアパンフレーム20A,20Bと、左右一対のタンクフレーム30,30との底面側から見た好適な位置関係を別の観点から説明すると、クロスメンバ10におけるスペアパンフレーム20A,20Bの接続位置(イ)(イ)は、ともに、ロアアーム支持部12,12の近傍位置となる(図3参照)。
このように構成することによって、ロアアームの支持剛性を向上させることができる。
【0047】
次に、後面衝突時に、車体に荷重が入力されたときの作用について図9、図10を参照して説明する。
図9および図10に示すように、後面衝突時にバンパービーム8、リアエンド部6を通じてスペアパンフレーム20A,20Bに図中矢印で示すような荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達される一方、リアエンド部6を通じて、リアフレーム2,2にも伝達される。そして、クロスメンバ10に伝達された入力荷重は、クロスメンバ10の車体左右方中央部近傍から、車体前方に向けて車体前方左右方向に拡がる左右一対のタンクフレーム30,30に伝達され、これら左右一対のタンクフレーム30,30を通じて左右のサイドシルS,Sに伝達される。
【0048】
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
なお、クロスメンバ10は、左右両端部が左右のリアフレーム2,2に接続されているので、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達された入力荷重は、クロスメンバ10を通じて左右のリアフレーム2,2にも分散されて伝達される。したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達がより効率的に行われるようになる。
【0049】
また、クロスメンバ10の車体後方側には、スペアパンフレーム20A,20Bが延設されており、また、クロスメンバ10の車体前方側には、左右一対のタンクフレーム30,30が延設されているので、クロスメンバ10は、これらのスペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30によって補強されることとなり、その剛性が向上されたものとなっている。これによって、クロスメンバ10に設けられたロアアーム支持部12,12の剛性も向上させることができる。
【0050】
また、図10に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われるようになる。
【0051】
ここで、仮にこのようなスペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30を備えていない場合には、図10中太い破線で示すように、後面衝突時における入力荷重の伝達経路は、リアフレーム2,2(一方のみ図示)を通じたものとなる。つまり、入力荷重は、湾曲部を有するリアフレーム2,2を通じて車体後部から前部へ向けて伝達されることとなるので、直線的に荷重が伝達され難く、分散伝達の効率が低下する。
【0052】
これに対して、本実施形態では、前記のようにスペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、分散伝達がスムーズであり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果が高い。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、後面衝突時の入力荷重が、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達され、クロスメンバ10から左右一対のタンクフレーム30,30を通じて左右のサイドシルS,Sに伝達されるので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0054】
また、クロスメンバ10は、スペアパンフレーム20A,20Bおよび左右一対のタンクフレーム30,30によって補強され、その剛性が向上されたものとなっているので、クロスメンバ10のロアアーム支持部12,12の剛性も向上させることができる。
【0055】
また、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とがクロスメンバ10を介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズに行われ、後面衝突時のエネルギーの吸収効果がより一層高まる。
さらに、車体前後方向の変形が好適に抑えられて、クロスメンバ10に設けられたロアアーム支持部12,12の剛性を向上させることができる。
【0056】
スペアパンフレーム20A,20Bは、スペアパン5の左右両側にそれぞれ設けられているので、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてより効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができる。
また、このことによって、車体前後方向の変形がより好適に抑えられて、ロアアーム支持部12,12の剛性をより向上させることができる。
【0057】
また、スペアパンフレーム20A,20Bが外側底面からスペアパン5を支持する構成や、側部5aの下部に配置されることで、スペアパンフレーム20A,20Bと左右一対のタンクフレーム30,30とにおける上下方向のオフセット量を小さくすることができ、これによって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けてスムーズかつ効率よく行われるようになる。したがって、後面衝突時のエネルギーの吸収効果をより一層高めることができるようになる。
【0058】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、発明の主旨に応じた適宜の変更実施が可能であることはいうまでもない。例えば、図11は、前記実施形態の後部車体構造が採用された自動車1の概略底面図であり、排気系の部材として触媒コンバータ40、チャンバー41、マフラー42が配置され、吸気系の部材としてキャニスタ43が配置されている。これらの各部材は、左右一対のタンクフレーム30,30の接続位置変更により、レイアウトや形状等を変更することができる。
【0059】
その一例を図12を参照して説明すると、この例では、左右一対のタンクフレーム30,30の前端部30b,30bが、左右のサイドシルS,S間に接続されたフロアクロスメンバとしてのミドルクロスメンバ3に接続されており、このミドルクロスメンバ3を介して左右一対のタンクフレーム30,30が、左右のサイドシルS,Sに接続された構成となっている。
【0060】
このような構成によれば、後面衝突時にリアエンド部6からスペアパンフレーム20A,20Bに荷重が入力されると、その入力荷重は、スペアパンフレーム20A,20Bを通じてクロスメンバ10に伝達され、クロスメンバ10から左右一対のタンクフレーム30,30を通じてミドルクロスメンバ3に伝達され、このミドルクロスメンバ3から左右のサイドシルS,Sに伝達される。
したがって、後面衝突時における荷重の分散伝達が、車体の後部から前方へ向けて効率よく行われるようになり、後面衝突時のエネルギーの吸収効果を高めることができる。
また、左右一対のタンクフレーム30,30が、ミドルクロスメンバ3に接続される構成であるので、その接続位置を車体中央側へ偏倚させることが可能となり、その分、車体後部に配置される前記各部材のレイアウトの自由度が高まる。この例では、左右一対のタンクフレーム30,30が偏倚することによって側方の空いたスペースにチャンバー41を配置することができ、チャンバー41の容量を増やすことが可能である。
【0061】
また、図13(a)〜(c)に示すように、スペアパンフレーム20A,20Bは、スペアパン5の内面側に配置して固定するようにしてもよい。
図13(a)に示した例では、スペアパン5の内面側の隅部に跨る状態にスペアパンフレーム20A,20Bを配置したものであり、図13(b)に示した例では、スペアパン5の側部5aの下部にスペアパンフレーム20A,20Bが固定されたものである。また、図13(c)に示した例では、スペアパン5の底面部5bにスペアパンフレーム20A,20Bが固定されたものである。
【0062】
いずれの例においても、スペアパンフレーム20A,20Bがスペアパン5の内面側に配置されているので、その分、車体下方への突出が減じられ、空力性能が向上する。また、最低地上高を容易に確保することができる。また、図13(b)(c)に示した例では、フランジ部21a,21bの溶接方向が同一方向となるので、溶接時の作業性が向上する。
【0063】
また、スペアパンフレーム20A,20B、クロスメンバ10、左右一対のタンクフレーム30,30等の形状は、任意であり種々の形状を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る後部車体構造を示す底面図である。
【図2】同じく後部車体構造を備えた車体の後部を示す側面図である。
【図3】同じく後部車体構造を底面側から示した斜視図である。
【図4】(a)〜(d)はスペアパンフレームの固定位置の態様を示す模式断面図である。
【図5】(a)は図1におけるB−B矢視断面図、(b)は図5(a)におけるB1−B1矢視断面図、(c)は図1におけるC−C矢視断面図である。
【図6】(a)は図1におけるD−D矢視断面図、(b)は図1におけるE−E矢視断面図、(c)は図1におけるF−F矢視断面図である。
【図7】図1におけるG−G矢視断面図である。
【図8】クロスメンバに対するスペアパンフレームと左右一対のタンクフレームとの底面側から見た好適な位置関係を示した説明図である。
【図9】後面衝突時における入力荷重の伝達を示した説明図である。
【図10】後面衝突時における入力荷重の伝達を示した説明図である。
【図11】車体底面のレイアウトを示した説明図である。
【図12】車体底面のレイアウトの変形例を示した説明図である。
【図13】(a)〜(c)はスペアパンフレームの固定位置の態様を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動車
2 リアフレーム
2a 湾曲部端
3 ミドルクロスメンバ
4 リアフロアパネル
5 スペアパン
5a 側部
5b 底面部
10 クロスメンバ
11 スプリング支持部
12 ロアアーム支持部
30 タンクフレーム
T 燃料タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右のリアフレーム間に接続されたクロスメンバを有する後部車体構造であって、
前記クロスメンバは、左右後輪のサスペンションを支持するためのサスペンション取付部を備えており、
前記クロスメンバに接続され、当該クロスメンバから車体後方に向けて延設されてスペアパンを保持するスペアパンフレームと、
前記クロスメンバの車体左右方向中央部近傍に接続され、当該クロスメンバから車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右の前記リアフレームまたはサイドシルへ接続された左右一対のタンクフレームと、を具備したことを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
前記スペアパンフレームと左右一対の前記タンクフレームとが前記クロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の後部車体構造。
【請求項3】
前記スペアパンフレームは前記スペアパンの左右両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後部車体構造。
【請求項4】
前記スペアパンフレームは前記スペアパンの外側または内側から当該スペアパンを支持することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項5】
前記クロスメンバにおける前記スペアパンフレームの前方の接続位置は、前記サスペンション取付部としてのロアアームの支持位置であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項6】
左右一対の前記タンクフレームは、それぞれの前端部が、左右の前記リアフレームまたはサイドシル間に接続されたフロアクロスメンバに接続されており、このフロアクロスメンバを介して左右一対の前記タンクフレームが、左右の前記リアフレームまたはサイドシルに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項7】
前記フロアクロスメンバにおける左右一対の前記タンクフレームの接続位置に対応させて、フロアフレームが接続されていることを特徴とする請求項6に記載の後部車体構造。
【請求項8】
前記スペアパンフレームの後方の接続位置は、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーとを一体に接合するリアエンド部であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右のリアフレーム間に接続されたクロスメンバを有する後部車体構造であって、
前記クロスメンバは、左右後輪のサスペンションを支持するためのサスペンション取付部を備えており、
前記クロスメンバに接続され、当該クロスメンバから車体後方に向けて延設されてスペアパンを保持するスペアパンフレームと、
前記クロスメンバの車体左右方向中央部近傍に接続され、当該クロスメンバから車体前方左右方向に拡がる状態に延設されて、左右の前記リアフレームまたはサイドシルへ接続された左右一対のタンクフレームと、を具備したことを特徴とする後部車体構造。
【請求項2】
前記スペアパンフレームと左右一対の前記タンクフレームとが前記クロスメンバを介して車体前後方向に側面視で略直線状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の後部車体構造。
【請求項3】
前記スペアパンフレームは前記スペアパンの左右両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後部車体構造。
【請求項4】
前記スペアパンフレームは前記スペアパンの外側または内側から当該スペアパンを支持することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項5】
前記クロスメンバにおける前記スペアパンフレームの前方の接続位置は、前記サスペンション取付部としてのロアアームの支持位置であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項6】
左右一対の前記タンクフレームは、それぞれの前端部が、左右の前記リアフレームまたはサイドシル間に接続されたフロアクロスメンバに接続されており、このフロアクロスメンバを介して左右一対の前記タンクフレームが、左右の前記リアフレームまたはサイドシルに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【請求項7】
前記フロアクロスメンバにおける左右一対の前記タンクフレームの接続位置に対応させて、フロアフレームが接続されていることを特徴とする請求項6に記載の後部車体構造。
【請求項8】
前記スペアパンフレームの後方の接続位置は、リアエンドクロスメンバとリアエンドアウトリガーとを一体に接合するリアエンド部であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の後部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−56189(P2008−56189A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238422(P2006−238422)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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