説明

従来の固形燃料の外周を廃プラスチックで含浸コーティングする事により、初期火力の安定と、燃焼特性の安定、製造時または保管時の性状の安定が可能となる固形燃料の製造技術

【課題】固形燃料の性能および品質の向上と、地域の廃棄物を最大限利活用した固形燃料を提供する。
【解決手段】従来の固形燃料の形状のもろさと、火力燃焼効率の不安定さを解消するため、成形機または造粒機10のダイス30出口孔を覆うように設置する「廃プラスチック溶解槽」40により、固形燃料の外周を金太郎飴の断面ように含浸コーティングする事により、初期火力の安定および燃焼維持と、性状および取扱い時の安定が可能となり、更に、地域から排出される廃棄物を利活用し製造された固形燃料は、また地域の熱源需要者で使用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の廃棄物を由来とする固形燃料の初期火力の安定と、使用時の燃焼カロリーの維持、更に、製造時または保管時の性状の安定のために、固形燃料の形状断面は金太郎飴のように加工する技術にあり、従来の固形燃料の外周を廃プラスチックで含浸コーティングする技術に関する。
【0002】
更に詳しくは、通常の成形機または造粒機に設置されるダイスの出口孔に、本発明機能を装着する事であり、その廃プラスチックを溶解する溶解槽は、遠赤外線ヒーターを内蔵したセラミックス製または、鋼質合金製を部材である事を特徴とする。
【背景技術】
【0003】
近年、大量生産型・大量消費型の社会から脱却し、持続可能な循環型社会への移行を実現するにあたり、日々発生する廃棄物の再利用は不可欠となってきた。我が国では、廃棄物問題が顕在化した高度経済成長期以降、廃棄物の最終処分量を減らすため、資源循環システムの構築をはじめとする技術的、または制度的改善に取り組まれてきた。
【0004】
更に自然環境保護に対する意識の向上や、地球温暖化防止策に対する化石燃料資源から次世代エネルギーの研究開発、加えて容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進に関する法律)が施行される等、使用済み廃棄物である廃プラスチック類を再資源化する傾向が益々強くなりつつある。
【0005】
使用済みの廃プラスチックを再資源化する方法の代表例として、下記の方法が挙げられる。
(1)回収した廃プラスチックを高炉において原料成分として用いる方法(高炉原料化)
(2)廃プラスチックをコークス炉において原料成分として用いる方法(コークス炉化学原料化)
(3)廃プラスチックをモノマー状態まで分解して得られたモノマーを用いて、再びプラスチック化する方法(原料、モノマー化)
(4)廃プラスチックから水素、メタノール等のガスを取り出し有効利用する方法(ガス化)
(5)廃プラスチックを油化し、ナフサとして再利用する方法(油化等のケミカルリサイクル)
(6)廃プラスチックを用いて固形燃料を調製する方法、または廃プラスチックをそのまま燃料とする熱利用焼却方法等(サーマルリサイクル)
(7)廃ラスチックを回収して、リサイクル工場において洗浄工程および選別工程を経た後、同一材質のプラスチック毎に再資源化され、再び加工して 再生プラスチック製品として再利用される方法(マテリアルリサイクル)
本発明では、(6)のサーマルリサイクル技術の応用に関する。
【0006】
本発明に関わる廃プラスチックを利活用した固形燃料には、一般的に2種類に分類される。
1つ目は、家庭から排出される一般廃棄物から製造されるRDF(Refuse Derived Fuel)であり、
2つ目は、業務上により排出される産業廃棄物から製造されるRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)である。
【0007】
これら廃棄物由来の固形燃料は、ボイラー等の専用の燃焼装置等で燃やされ、乾燥や暖房、発電等の用途に供される。 RDFは可燃性の一般廃棄物を主原料とする固形燃料で、家庭などから排出される厨芥類(台所で発生する生ごみ等)を含んでいる事から、乾燥して水分を除去する必要がある。また、低位発熱量は異物が混入しているためRPFよりは低いものの、一般的な石炭火力の概ね2分の1から3分の2程度である。
【0008】
一方RPFは、産業廃棄物として収集選別された古紙や廃プラスチックを主原料とする固形燃料であるため、原料性質が一般廃棄物と比較して安定しており、製造工程はRDFより単純、かつ、製造コストも低く、低位発熱量はRDFより高い。
【0009】
更にRPFには、C−RPFと呼ばれるものがあり、従来のRPF同様、プラスチック混合燃料であるが、RPFが古紙または木屑等と廃プラスチックの混合燃料であるのに対し、C−RPFは炭化物とプラスチックを混合成形した固形燃料となる。ここで利用される炭化物とは一般廃棄物中の生ごみ等のバイオマス成分を含む可燃物や、下水汚泥等を炭化したもの等があり、この炭化物から異物を除去、水洗、脱塩して改質した後、プラスチックと混合成形して固形燃料となる。
【0010】
特許文献1は、可燃ごみを再利用する固形燃料の製造方法および固形燃料製品(C−RPF)に関するものであり、可燃ごみを炭化装置で蒸し焼きにしてごみ炭にする工程と、このごみ炭を30重量%、廃プラスチックを20重量%および古紙を50重量%で混合する工程と、混合したごみ炭、廃プラスチックおよび古紙を破砕装置で破砕して燃料ペレットとする工程と、この燃料ペレットを圧縮装置で圧縮することで、摩擦熱を発生させ、廃プラスチックを軟化させて粘性を発生させ、廃プラスチックに接着作用を発生させ固形燃料のバインダの役目をさせると共に、古紙にその繊維質で固形燃料の腰を強める作用をさせる工程と、圧縮した燃料ペレットを整粒して固形燃料にする整粒工程と、からなり、固形燃料の熱量を、4,500〜7,500kcal/kgの石炭並みの熱量に設定することを特徴としているが、
本発明では、従来の固形燃料(RPFまたはRDF)の外周に溶解した廃プラスチックを含浸コーティングする製造方法であり、製造作業工程を簡素化しているにも係わらず、製品の発熱量では、既に石炭・コークス並の6,500〜8,500kcal/kgの熱量設定が原料調整により可能である。
【0011】
特許文献2は、RPFおよびその製造方法に関するものであり、RPF製造の際に、廃棄物を原料とした炭化物を配合することにより、安定した燃焼性はもとより、製造時に廃プラスチック類に摩擦力を与えると共に、加熱・圧縮することにより軟化した廃プラスチック類から発生する臭気を低下させ、取り扱いの容易なRPFとその製造方法を提供しており、基本的には廃プラスチック類と紙類を主原料とするRPFであって、破砕された廃プラスチック類と紙類に炭化物を配合して成形したことを特徴として、製品の発熱量4,000〜5,000kcal/kgとしているが、
本発明では、従来のRPFの外周に廃プラスチックで含浸コーティングしているため、物理的な曲げ強度にも強く、初期火力や燃焼維持、または製造時・保管時においては性状等が安定しており、その熱エネルギーへの平均発熱量は、6,500〜8,500kcal/kg以上と、RPFの配合ながら、C−RPF(炭化物とプラスチックを固形化したもの)に匹敵する性能を発揮している。
【0012】
特許文献3は、熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、従来の技術では樹脂成形体の機械的強度を高めるため、ガラス繊維等の無機繊維を配合したものが汎用されていたが、無機繊維が配合された樹脂成形体は、焼却時に無機繊維に由来する残渣が発生して、この残渣を埋め立て処理等する必要があるため、無機繊維を使用しない樹脂成形体が求められていた。これに対し特許文献3は、その課題の解決手段として、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)セルロース繊維3〜300質量部と、(C)ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維から選ばれる1種以上の有機繊維1〜300質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物、およびその成形体を提供することにより、機械的強度が良好であり、特に曲げ弾性率とシャルピー衝撃強さの両方が優れている熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体とあるが、
本発明では、特許文献2と同様、従来のRPFの外周に廃プラスチックを含浸コーティングする技術により物理的な強度を高め、かつ、特許文献3では成形体に至るまでにはバージン材を使用せず、含浸コーティングの原材料は使用済み農業用マルチシート等を利活用する等、すべて廃棄物由来による再生資源を活用し、当然ながら残渣の発生はせず、新たな廃棄物は生まない製造方法である。
【0013】
特許文献4は、2種類以上の組成物を複合成形する技術に関するものであり、従来、樹脂成形体の接合方法として汎用されている、超音波溶着法、熱板工法、接着工法、ネジ止め工法等が有する問題点を解消する方法として、レーザー溶着法が注目されている。特許文献4では、このレーザー溶着法における問題点、即ち第一樹脂部材には無機および有機充填剤等を配合できないという問題点を解消すると共に、レーザー溶着法を含む複数の溶着法を適用して得ることができる複合成形体を提供することを課題とし、その解決手段として、ポリオレフィン、セルロース繊維および、必要に応じて着色料を含む第1樹脂成形体と、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミドから選ばれる少なくとも1種の樹脂及び必要に応じて着色料を含む第2樹脂成形体とが接合された複合成形体を提供するとあるが、
本発明では、特殊な波長を用いたレーザー溶着法による、高い接合強度で一体化するまでの物理的評価は必要が無く、それであっても物理的な曲げ強度は、特許文献4に類似する超音波溶着法、熱板工法、接着工法、ネジ止め工法等の各種接着コーティング方法に引けを取らない物理的強度を実現している。
【0014】
特許文献5は、造粒機、およびそれを用いた固化成型物の製造方法に関するものであるが、熱可塑性樹脂フイルム粉砕物を円筒状固形物に固化成型する造粒機において、ダイス温度の上昇により、フイルム粉砕物が部分的に融点以上となり、溶融、融着し、連続的に造粒機運転を行うことが不可能となるのを防ぎ、熱可塑性樹脂フイルムから高品位かつ、所定の大きさの円筒状固化成型物を効率良く得る事ができる造粒機を提供している。また、可塑性樹脂フイルムの円筒状固化成型物を成型するための造粒機において、造粒機カバーの外部から内部への給気手段と、造粒機カバーの内部から外部への排気手段とを有し、さらに冷却媒体を供給する供給手段を有し、造粒機運転時に給気、排気と冷却媒体の供給を実施することにより、ダイスの温度上昇を融点未満の温度に低減させ、熱可塑性樹脂フイルムの温度が部分的に融点以上となるのを防ぐとあるが、
本発明では、特許文献5におけるダイスの温度上昇を融点未満の温度に低減させる手段として、含浸コーティングを行う廃プラスチック溶解槽において、その構造素材を遠赤外線ヒーター内臓(IH)セラミック製、または鋼質合金製とする事により、被対象廃棄物が溶解する適切な温度管理を検知・計測するシーケンサーを組み込むことにより、溶解した廃プラスチックの粘度を制御する事ができる。
【0015】
更に、ダイスが垂直方向でも水平方向であっても、本発明技術は応用する事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001−240882(固形燃料の製造方法及び固形燃料)
【特許文献2】特開2006−291025(RPF及びその製造方法)
【特許文献3】特開2007−056202(熱可塑性樹脂組成物)
【特許文献4】特開2007−168163(複合成形体)
【特許文献5】特開2010−194916(造粒機、およびそれを用いた固化成型物の製造方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明におけるRPFまたはRDFの固形燃料は、従来、製品の大きさや形状の需要形態により押出し成形機や造粒機により生産されていた。その多くは木質系ペレットに代表されように、単一素材からなる間伐材の端材や、おが屑を燃料用に固形状に圧縮成形されたもの、紙屑類と廃プラスチックを配合して圧縮成形されたものが現在でも広く利用されてきた。
【0018】
しかしながら近年では、廃棄物の多様化により、天然繊維や合成繊維を含む複合繊維ごみや、雑誌や広告ちらしを含む古紙・紙製容器類のごみと、多様化した廃プラスチック類、または下水汚泥や一般廃棄物の炭化物類を配合した固形燃料も開発され、大企業工場での補助燃料や、家庭の暖房器具用の燃料としても流通し始めているが、特に紙屑類と廃プラスチック類を配合した典型的なRPF製品は、指でも崩れ折れるほどとてももろく製品残渣が発生し、保管場所でのRPF残渣は発火の原因の1つにも挙げられたり、形状のもろさから原材料となる廃プラスチックが含水したり、汚染された場合等は、保管中の製品自体から当該有害物質の溶出も懸念される。また、複合素材を利用しているがゆえに燃焼時の温度設定も計算数値通りにはいかない場合も多々発生する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下、本発明において、上記目的を達成するために採用した構成について説明する。
本発明の固形燃料製造方法は、従来の成形機や造粒機のダイス部分以降に、追加機能として取り付ける事が可能な、遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解装置および冷却放射機能を備える事を特徴とする。
【0020】
また、一般的な成形方式には、フラットダイス方式、リングダイス(リングダイ)方式、スクリュー方式などがあるが、本発明の追加装置は個々の機種に応じた対応となるが、特にフラットダイス方式とスクリュー方式のダイス構造の装置に取り付けやすい。
【0021】
本発明により製造された固形燃料は、従来のRPFの外周に廃プラスチックが含浸コーティングされるため、その製品断面は、図1−Cの図に示すとおり、まるで金太郎飴のような構造となっている事を特徴とする。
【0022】
本発明の固形燃料の原材料となる廃棄物には、下記の記載された廃棄物類が適用される。
(1)紙屑類
古紙、新聞紙・雑誌類、紙管、乾燥したペーパースラッジ、その他容器包装リサイクル法における分別基準適応物
(2)廃プラスチック類
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンレテフタレート、ポリカーボネート、アクリルブタジエンスチレン、ポリウレタン 、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、ポリスチレンペーパー、FRP樹脂、フェノール樹脂、可塑性樹脂、生分解性プラスチック樹脂、混合 合成樹脂、その他容器包装リサイクル法における分別基準適応物
但し、ポリ塩化ビニール(PVC)、不飽和ポリエステル(FRP)樹脂、フェノール樹脂は原則として使用しない。
【0023】
(3)木屑類
建設廃材に伴う木片、ベニア・合板・化粧版、集成材・ボード類、おが屑・おが粉、雑草・枝木、い草・稲穂、他
(4)繊維屑類
ナイロン布、アクリル布、ビニロン布、ポリエステル布、木綿、羊毛、他
(5)ゴム屑類
タイヤ、合成ゴム、他
(6)その他
廃油、皮革類、雑芥一般廃棄物、焼成炭化物、塩素・特定有害物質が溶出しない廃棄物、他
他にも、従来の農業用マルチシートはポリ塩化ビニールを採用されていたが、近年では生分解性プラスチック樹脂製のものや、ポリエチレン製(PE)、ポリプロピレン製(PP)、ポリスチレン製(PS)等の原料から製造されているものがあるため、ポリ塩化ビニール製以外の使用済み農業用マルチシートの有効利活用方法として再資源化が可能である事を特徴とする。
【0024】
ところで、本発明で原材料として採用する再資源化原料の生態系への安全性については、加工する生産過程において、自社排出または、持ち込まれた安定型産業廃棄物を利活用する際には、変状・劣化等または不純物・有害物質の付着していないものを優先して利用するが、土壌汚染または水質汚染により特定有害物質や、試薬を含む毒物・危険物または残留農薬、病原菌等の細菌類が含有または、それらの物質が付着している可能性は目視だけでは判断が出来ないため、高加圧蒸気による滅菌処理(オートクレーブ滅菌処理)でのミスト洗浄処理を行う場合もある。更に、その後の酸化チタンコーティングを施した再資源化原材料専用の乾燥機で被対象物が通過中には、追加の最終処理工程として紫外線での滅菌・消毒処理を実施してもよい。
【0025】
この作業工程を加えることにより、確実に再資源化された原材料を無害化することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
このような状況の下、廃棄物から固形燃料をつくる技術が、環境保全とエネルギー資源確保を同時に実現する技術として注目される。
技術的な効果としては、
廃棄物の減容化、臭気の抑制
製造工程で、水分除去・圧縮・成形が行われるため、容量が大幅に削減され、運搬・保管等が容易になる。更に、もとの廃棄物と比較して腐敗性が少なくなるため、臭気が抑えられる。
【0027】
効率的な熱エネルギーの回収
製造工程において含水量の高い廃棄物は乾燥により水分を減少させるため、焼却時の熱効率が高くなる。このため、廃棄物をそのまま焼却し熱回収するよりも、効率的な熱エネルギーの回収が可能となる。
【0028】
特に本発明の固形燃料の場合は、原料として廃プラスチックを外周に含浸コーティングしているため初期熱量が一定で高く、石炭およびコークス並みの化石燃料代替として使用可能である。
【0029】
熱量コントロールが可能
ボイラー等のスペックまたは、必要火力に応じ、古紙や木屑、廃プラスチック類の配合比率を変えるだけで容易に熱量変更が可能となる。
【0030】
ダイオキシン対策、温室効果ガスの抑制
高温による完全燃焼を行いやすいため、適正な設備で燃焼管理を行えば、ダイオキシン類の排出抑制対策にも資すると考えられ、かつ、地球温暖化防止に繋がる温室効果ガスを抑制する。
【0031】
本発明で採用する固形燃料の原材料は、従来であれば廃棄処分または、埋立処分をされていた廃棄物を、余す所なく再資源化原料として再利用することが可能である。
本発明により追加装置として改良される場合が多いため、成形機または造粒機は、設備の初期投資額を抑えられ、長期間にわたりメンテナンスも軽減し、かつ、熱効率の優れた固形燃料として販売が可能なため、如いてはランニングコストも抑えられる。
【0032】
次に、社会的な効果としては、
新しく製造する固形燃料は、可能な限り廃棄物を再利用することで、現在の廃棄物最終処分場での埋立率の削減を図ると共に、本発明の取組みにより、地域社会の循環型社会の形成に貢献することが出来る。
【0033】
例えば、地域で通年発生する材木加工屑類や、稲作後の藁・い草加工時の端材、使用済み農業用マルチシート等の廃棄物を利活用して固形燃料は製造され、それはまた、地域の製紙工場、火力発電所等で使用される補助燃料として利活用されるので、地域社会の循環型社会の形成に貢献する事が出来る。
【0034】
また、重油に替わる化石燃料の代替燃料として、廃棄物由来の固形燃料は製造されるため、原油からわざわざ固形燃料用にプラスチックを製造する事もなく、従来なら埋立される廃棄物を再資源化原料として再利用することから、地球温暖化防止に関わる温室効果ガス(CO2)の排出削減にも貢献することが出来る。
【0035】
更に、自社の独占特許とはせず本発明を広く世界に公表し、同業他社或いは異業種からの事業参入であったとすれば、新産業または新事業の創出となり、本発明の技術をより簡単により解かりやすく技術指導を行うことにより、世界各地のゴミ問題の解決に寄与することが出来る。
【0036】
加えて、特に東南アジア沿岸部または太平洋のいずれかから排出されたものであろう、日本の沿岸部に漂着する膨大な漂着ゴミについても、漂着ゴミを排出しているであろう諸国に対して、本発明の製造技術指導を実施することにより、日本の沿岸部に到達している漂着ゴミの減少に繋げられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1−A】は、実施例1で説明する固形燃料を製造する成形機または造粒機本体および、本発明による追加設備並びに、廃棄物の投入から製品の出来上がるまでを示す断面図である。
【0038】
加えて
【図1−B】は、本発明で重要となる固形燃料が従来の成形機のダイスから通過し、本発明の廃プラスチック溶解槽で含浸コーティングされ、冷却装置に入る様子を示した断面図であり、
【図1−C】は、本発明により製品化された固形燃料の側面および断面を示した図となる。
【図2】は、実施例2で説明する従来の成形機のダイス出口孔を正面から示した図であり、
【図3】は、実施例3で説明する本発明による遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽の断面図である。
【図4】は、実施例4で説明する本発明により生産された固形燃料が出てくる第二ダイス正面図である。
【図5】は、実施例5で説明する本発明の遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽の部分詳細図であり、従来のダイスから出てくる固形燃料が押出される際にガイドで補助する機構と、同溶解槽に溜まった廃プラスチックを洗浄する際に溶解槽の下から液状化した廃プラスチックを抜くためのドレインコックを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の実施形態について、いくつかの具体的な例を挙げて説明する。
「実施例1」
実施例1では、本発明により固形燃料を製造する成形機または造粒機本体および、本発明による追加設備並びに、廃棄物の投入から製品の出来上がるまでの製品製造事例について説明する。
【0040】
実施例1では、図1−Aに示すとおり、通常よく利用されている水平方向に加圧されるスクリュー方式の成形機または造粒機を本体モデルとして説明しているが、応用される成形機のタイプは上部から垂直加圧されるフラットダイス方式であっても発明原理の応用は同様である事が特徴である。
【0041】
本発明では、通常の成形機または造粒機で製造されているペレットを含む固形燃料の性能を向上させるため、通常の固形燃料の外周に、溶解した廃プラスチックを含浸コーティングする事により、固形燃料の初期火力の安定と燃焼性能維持、加えて製造・保管時の性状の安定が可能となる廃プラスチック含浸コーティング機能を追加しており、かつ、連続して冷却させるための冷却装置を備えている事が特徴である。
【0042】
「実施例2」
実施例2では、従来の成形機のダイス出口孔を正面から示した図であるが、その機能事例について説明する。
【0043】
実施例2では、図2に示すとおり、本発明で利用される成形機または造粒機のダイス部分は、各種機械メーカーによっても形状は異なるが、固形燃料が出てくる出口孔が1箇所であっても複数箇所であっても、円周方向から出てくるリングダイス(リングダイ)方式以外であれば、垂直方向であれ水平方向の加圧であれ、本発明の廃プラスチック溶解槽と接合が可能であり、従来の成形機または造粒機に簡易に取り付ける事が可能である構造が特徴である。
【0044】
「実施例3」
実施例3では、本発明による遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽について説明する。
【0045】
実施例3では、図3で示すとおり、本発明の核心部分となる遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽である。ここで投入される廃プラスチックは、廃プラスチックの破砕物の原型ではなく、ペレットあるいは固形化した粒状の廃プラスチックを投入する事を前提としている。
【0046】
投入口より投入された廃プラスチックのペレットは、圧縮加圧され、廃プラスチックの溶解粘度を検知・計測が可能なシーケンサーと、温度設定が自由に可変できるサーモスタット付き遠赤外線ヒーター内臓の溶解槽であり、遠赤外線ヒーターおよび温度センサーは、40〜200℃までの温度設定が可能であり、かつ、投入口付近だけではなく、溶解槽の下部にまでヒーター配置設定する事ができる事が特徴である。
【0047】
また、廃プラスチックを遠赤外線ヒーターにより軟化させて、粘性を発生させて溶解する溶解槽は、セラミックス製または鋼質合金製で構成されている事が望ましい。
加えて、図3は、図2において複数孔のダイス出口孔のある場合、その全体の出口孔を覆うような構造を想定しているが、例えばダイスの出口孔が1箇所のみの場合には、当然含浸コーティングする量が少なくなるため、廃プラスチックの溶解槽は、いわゆる通常の成形機または造粒機ダイスから固形燃料が出てくる出口孔の大きさに相当したソケット程度の大きさとなり、含浸コーティングが可能な隙間があれば良い事となる。この金太郎飴のように含浸コーティングされた形状が、より固形燃料の強度と性能を安定向上させると共に、製造時または保管時においては残渣の発生を抑えて安定した性状を確保する事となる。
【0048】
「実施例4」
実施例4では、本発明により生産された固形燃料が出てくる正面から見た様子について説明する。
【0049】
実施例4では、図4で示すとおり、図3の廃プラスチック溶解槽から通過した固形燃料が、冷却放射板付きの冷却装置を通過し、その出口孔ではナイフカッターで切断される様子を正面から見たものである。この冷却装置は特に水冷装置や触媒等は組み込まれてはおらず、環境内の気温により自然な放射冷却(空気冷却)により整粒する事が特徴である。
【0050】
また、水冷装置や触媒等による冷却は出来ない事はないが、この空気冷却方式により余計な電力や負荷を軽減すると共に、被対象物の固形燃料にゆっくりと含浸コーティングする事により、より深層部にまで含浸させる狙いがある。
【0051】
更に、図4でのナイフカッターは、装置の中心に駆動装置があり、プロペラが回りながら製品を切断している様子を表しているが、出口孔が1箇所または少数孔である場合には、出口孔および成形機または造粒機の外側から製品を切断する機構であっても良い。
【0052】
「実施例5」
実施例5では、本発明による遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽の部分詳細について、より詳しく説明する。
【0053】
実施例5では、図5で示すとおり、本発明の遠赤外線ヒーター内臓の廃プラスチック溶解槽の部分詳細図であるが、上図は、従来のダイスから出てくる固形燃料が押出される際に、加工中の固形燃料が途中で折れ曲がらないようにガイドで補助し、溶解槽を通過し、冷却装置に送り込む機構が採用されている事を示す図である。
【0054】
また、図5の下図については、同溶解槽に溜まった廃プラスチックを簡易に洗浄する際に溶解槽の下から液状化した廃プラスチックを抜くためのドレインコックを示した断面図である。
【0055】
本発明の、固形燃料の発熱量(低位発熱量)を算出するにあたり、原材料の種類毎に、JIS(日本工業規格)を基準に設計し、自社の試験室内でデーター収集をした平均値を参考として[表1]にまとめた。
【0056】
【表1】

【0057】
更に、[表2]では、本発明による固形燃料と、固形化する前の状態、または市販のRPF、C−RPF、加えて化石燃料である石炭とを性能評価し比較した一覧表である。
【0058】
【表2】

【0059】
「その他の実施例」
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限らず、この他にも種々の形態で実施することが出来る。
【0060】
本発明における、いわゆる中心部分があるものに加え、まるで金太郎飴のように外周にコーティングを供した製品等には、本発明の分野に留まらず、幅広く利用されてもよい。
例えば、食品分野での利用の場合では、例えばあんこを包む餅(ゼリー)等の製造装置に応用できる。
【0061】
また、建設業界での利用の場合では、例えば流し込みのコンクリート製化粧ブロックの表面処理等に応用が可能である。
更に、陶磁器製品の製造過程での釉薬の塗り付け等にも応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、広域では廃棄物処理業界または燃料業界となるが、固形燃料製品に限定すると、主に燃料または熱源を必要とする公共施設や、廃棄物発電や乾溜ガス化燃焼、またはボイラーを使用する製造工場、または家庭の暖房用燃料などが挙げられる。また、石灰や土砂、セメント、軽量骨材等の焼成・焼結の熱源として有効活用が可能である。
【0063】
また、個人の家庭ではバーベキュー等の木炭に替わる屋内外燃料や、暖炉の暖房用燃料として、従来の木炭に替わる活用も可能である。
日本国内の今後の需要量については、以下のとおりと予測される。
【0064】
化石資源由来の固体燃料に対して、本発明分野の固形燃料が全体に占める割合については、2007年の0.4%(金額ベース)から2012年には0.8%に増加すると予測されている。
【0065】
伸長率は5年間で176.6%、金額では136億円規模の市場規模と緩やかな試算がされている。
しかし、昨今の原油の高騰や、石炭排出の抑制等を考慮すると、太陽光発電、風力発電等に並び、循環型社会環境の整備が進むにつれて、本発明の固形燃料需要は拡大の一途にあり、その技術提供が可能な利用範囲は急速な利用普及が見込まれる製品である。
【0066】
加えて、現状で最終処分場に埋立処分をなされている混合廃プラスチック類の3割程度は、まだまだ本発明の応用により有効活用が可能な原材料が処分されており、産業上の利用範囲も、個人の家庭での利用範囲も、本技術の応用で利用普及は拡大する。
【符号の説明】
【0067】
10・・・既存の成形機または造粒機
11・・・廃棄物投入口
12・・・被対象廃棄物
20・・・スクリュー
30・・・ダイス
40・・・遠赤外線ヒーター内臓、廃プラスチック溶解槽
41・・・含浸コーティング用ペレット投入口
42・・・可熱センサー機能付き遠赤外線ヒーター
43・・・溶解槽RPFガイド
44・・・ドレインコック
50・・・冷却放射板付き冷却装置
51・・・第二ダイス
60・・・ナイフカッター
70・・・本発明により生産された製品
80・・・ベルトコンベアー
90・・・製品ストックヤード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明の固形燃料製造方法は、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えているため、
量産製品は、従来の形状および質量には変わりはないが、製品の初期燃焼カロリーが安定しており、燃焼維持特性にも優れ、かつ、物理的強度に優れている
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項2】
本発明の固形燃料製造方法は、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えているため、
量産製品は、製品の製造時または保管時の管理環境中に含水する事も抑えられ性状が安定しており、製品残渣が発生しない方式である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の固形燃料の原材料には、
(1)紙屑類
古紙、新聞紙・雑誌類、紙管、乾燥したペーパースラッジ、その他容器包装リサイクル法における分別基準適応物
(2)廃プラスチック類
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンレテフタレート、ポリカーボネート、アクリルブタジエンスチレン、ポリウレタン 、発泡スチロール、発泡ポリプロピレン、ポリスチレンペーパー、FRP樹脂、フェノール樹脂、可塑性樹脂、生分解性プラスチック樹脂、混合 合成樹脂、その他容器包装リサイクル法における分別基準適応物
但し、ポリ塩化ビニール(PVC)、不飽和ポリエステル(FRP)樹脂、フェノール樹脂は原則として使用しない。
(3)木屑類
建設廃材に伴う木片、ベニア・合板・化粧版、集成材・ボード類、おが屑・おが粉、雑草・枝木、い草・稲穂、他
(4)繊維屑類
ナイロン布、アクリル布、ビニロン布、ポリエステル布、木綿、羊毛、他
(5)ゴム屑類
タイヤ、合成ゴム、他
(6)その他
廃油、皮革類、雑芥一般廃棄物、焼成炭化物、塩素・特定有害物質が溶出しない廃棄物、他
を含むことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2の固形燃料を製造するための原材料の配合には、
ボイラー等の使用状況、スペック、必要火力、耐用時間等に応じて配合比率を変える場合があるが、固形燃料の外周(表面)に含浸コーティングされた廃プラスチックの火力見込み性能には変わりがないため、中心部の原材料となる古紙や複合紙屑、または包装容器類の種別が変わっても、初期火力には影響を及ぼさない構造になる
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項5】
更に、請求項1または請求項2の固形燃料を製造するための、含浸コーティング用の廃プラスチックには、
例えば地域の農家等で通年発生する、使用済み農業用マルチシートやビニールハウス用シート等の廃材の再資源化および、利活用方法として特に有効である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項6】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えるため、
従来の成形機または造粒機のダイス出口孔を包み込むようにして、廃プラスチックを外周に流し込みながら、固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングさせる機構を備えた溶解槽である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項7】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えた溶解槽は、
水平方向または垂直方向に駆動する成形機または造粒機のダイスに応用が可能であり、より詳しくはフラットダイス方式または、スクリュー方式のダイスに対応して装着が可能である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項8】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えた溶解槽は、
従来の成形機または造粒機のダイスの出口孔が1箇所であっても、複数箇所であっても対応する事が可能な
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項9】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えた溶解槽は、
遠赤外線ヒーターを内蔵しており、外周コーティング用の廃プラスチック投入口から溶解槽全体を覆うようにヒーターおよび温度感知・制御センサーが、サーモスタットまたはシーケンサーで仕込まれており、これにより固形燃料の外周を含浸コーティングする際に、適切な温度管理と流動状況の把握が可能である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項10】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えた溶解槽を構成する装置の素材は、
遠赤外線ヒーターを内蔵しており、セラミックス製、または鋼質合金製である
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項11】
本発明の固形燃料製造方法において、従来の固形燃料の外周に廃プラスチックを含浸コーティングする機能を備えた溶解槽は、
従来の成形機または造粒機のダイスから出てくる加工途中の固形燃料の変形を防止するため、溶解槽内にはガイドが設置され、また、廃プラスチック洗浄時用のために、溶解槽の下部にドレインコックを備えている
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項12】
本発明の固形燃料製造方法においての、製品の冷却方法では、
廃プラスチック溶解槽から通過した固形燃料が、冷却放射板付きの冷却装置を通過し、その出口孔ではナイフカッターで切断される構造であり、この冷却装置は特に水冷装置や触媒等は組み込まれてはおらず、環境内の気温により自然な放射冷却(空気冷却)により整粒する
ことを特徴とする固形燃料の製造方法。

【図1−B】
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【図1−C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1−A】
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【公開番号】特開2012−219239(P2012−219239A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89395(P2011−89395)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(511093487)有限会社サガン (1)
【Fターム(参考)】