説明

徘徊者位置表示システム

【課題】 徘徊者の軌跡を表示する際に、捜索すべき徘徊者を明確にしつつ、徘徊者の軌跡を見易くすることを目的とする。
【解決手段】 病院内の所定の位置に配置した複数の受信機1〜NによりICタグ10の現在位置を受信し、現在位置を受信した受信機1〜Nの位置情報によりICタグ10の移動の軌跡を取得する。このとき、同じ受信機でICタグ10の現在位置を再び受信した場合には、制御部12は、再び受信したところまでの軌跡を除いて移動の軌跡を表示部15に表示するようにしている。これにより、徘徊者が同じ場所を通ったときには、それまでの移動の軌跡が表示されないので、簡潔な表示を行うことができる。従って、医療従事者は表示画面が見易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院などで徘徊者の位置を表示する徘徊者位置表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院や介護施設などで、患者や被介護者(以下、単に患者と記載する)は特定の居室に居るが、稀に病室を離れて徘徊してしまうことがあった。これに対して、看護師や介護者(以下、単に医療従事者と記載する)は、徘徊者に危険が生じないように徘徊者を探す必要があった。
【0003】
ところで、患者にRFID(Radio Frequency
IDentification)タグを持たせ、RFIDタグが発信するタグIDを特定の区域で受信する無線受信機により受信した場合に、患者が監視エリアに近付いたとして警報を通知する技術が知られている(例えば、特許文献1など)。
【特許文献1】特開2005−215961号公報
【0004】
また、利用者が所持する移動端末の現在位置および移動の軌跡を地図データ上に合成してディスプレイ上に表示する技術が知られている(例えば、特許文献2など)。
【特許文献2】特開平8−248115号公報
【0005】
しかしながら、前述した特許文献2に記載の技術では、病院等の建物内で軌跡を表示するような場合に、徘徊者が同じ場所を何度も通ったときでも全ての軌跡を表示してしまうので、医療従事者にとって表示画面が見難くなってしまうという問題があった。また、徘徊者が自分の居室に戻ったときでも軌跡を表示してしまうので、捜索すべき徘徊者であるか否かの判断を医療従事者がし難くなってしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、徘徊者の軌跡を表示する際に、捜索すべき徘徊者を明確にしつつ、徘徊者の軌跡を見易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明では、所定の位置に配置した複数の受信機によりICタグの現在位置を受信し、現在位置を受信した受信機の位置情報により徘徊者(ICタグ)の移動の軌跡を取得する。このとき、同じ受信機でICタグの現在位置を再び受信した場合には、再び受信したところまでの軌跡を除いて表示するようにしている。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、同じ受信機が徘徊者の居室近傍に設置されているものとするようにしている。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、所定の位置に配置した複数の受信機によりICタグの現在位置を受信し、受信した時間情報と各受信機の位置情報とにより徘徊者(ICタグ)の移動の軌跡を取得する。このとき、所定時間前から現在時刻までの移動の軌跡のみを表示するようにしている。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、徘徊者が同じ場所を通ったときには、それまでの移動の軌跡が表示されないので、簡潔な表示を行うことができる。従って、医療従事者は表示画面が見易くなる。また、本発明の他の態様によれば、徘徊者が自分の居室に戻ったときには、それまでの軌跡が表示されないので、簡潔な表示を行うことができるとともに病室に戻った徘徊者については移動の軌跡が表示されなくなる。従って、医療従事者は表示画面が見易くなるとともに、捜索すべき徘徊者であるか否かの判断をし易くなる。また、本発明の他の態様によれば、所定時間内の移動の軌跡のみが表示されるので、簡潔な表示を行うことができる。従って、医療従事者は表示画面が見易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による徘徊者位置表示システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態による徘徊者位置表示システムは、第1の受信機、第2の受信機、第3の受信機、…、第Nの受信機(Nは1以上の自然数である)のN個の受信機、ICタグ10、管理装置11を備えて構成されている。また、管理装置11は、制御部12、インターフェース13、記憶部14、表示部15を備えて構成されている。
【0012】
図1において、N個の受信機1〜Nは、病院内の所定の位置(例えば、各病室の出入口近傍など)に設置されており、伝送線を介して管理装置11に接続されている。本実施形態では、図2に示すように、第1の受信機1は1号室の出入口近傍に設置されている。また、第2の受信機2は2号室の出入口近傍に設置されている。また、第3の受信機3は3号室の出入口近傍に設置されている。また、図1において図示されていない第4の受信機4は4号室の出入口近傍に設置されている。また、図1において図示されていない第5の受信機5は5号室の出入口近傍に設置されている。
【0013】
また、N個の受信機1〜Nは、ICタグが接近することによりICタグの識別情報を受信して、ICタグの識別情報とともに受信機の識別情報を管理装置11に送信する。
【0014】
ICタグ10は、非接触式のRFIDタグなどにより構成されており、患者によって携帯される。ICタグ10には、患者毎に異なる個別の識別情報が記憶されており、接近した受信機により読み取られる。
【0015】
管理装置11は、徘徊者の管理を行う機器であり、医療従事者が常駐しているナースセンターなどに設置される。制御部12は、管理装置11の各構成要素を制御する。インターフェース13は、N個の受信機1〜Nが受信したICタグの識別情報および受信機の識別情報を受信する。記憶部14は、ICタグの識別情報と患者の識別情報(例えば、患者の氏名など)とを関連付けて記憶する。また、記憶部14は、受信機の識別情報と位置情報とを関連付けて記憶する。また、記憶部14は、病院内のレイアウトを記憶する。
【0016】
表示部15は、記憶部14に記憶されたレイアウト上に徘徊者の移動の軌跡を重ねた画面を表示する。
【0017】
次に、具体的な徘徊者の移動の軌跡の表示例を説明する。第1の受信機1〜第5の受信機5が図2のように配置された場合に、Aさんが自分の病室である2号室から出て、1号室方面に向かった後、2号室方面、3号室方面に徘徊したとする。Aさんが所持するICタグ10の識別情報は、第2の受信機2にて読み取られ、その後、第1の受信機1、第2の受信機2、第3の受信機3で読み取られる。制御部12は、ICタグ10の識別情報に関連付けられた患者の識別情報を記憶部14より読み出し、徘徊者がAさんであることを特定する。
【0018】
また、制御部12は、Aさんの移動の軌跡が2号室→1号室→2号室→3号室であることから、2号室近傍に配置された第2の受信機2が二度目にICタグ10の識別情報を受信したところまでの軌跡を除いて、2号室から3号室に向かう軌跡を病院のレイアウト画面に重ねて図3に示すような表示画面を表示部15に表示する。
【0019】
なお、本実施形態では、同じ受信機が再びICタグ10の識別情報を受信した場合に、そこまでの軌跡を除いて表示するようにしているが、これに限定されない。例えば、患者の居室の近傍に配置された受信機が再びICタグ10の識別情報を受信した場合に、そこまでの軌跡を除いて表示するようにしても良い。このとき、徘徊者が自分の居室に戻った場合には、移動の軌跡が表示されないことになる。
【0020】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、病院内の所定の位置に配置した複数の受信機1〜NによりICタグ10の現在位置を受信し、現在位置を受信した受信機1〜Nの位置情報によりICタグ10の移動の軌跡を取得する。このとき、同じ受信機でICタグ10の現在位置を再び受信した場合には、制御部12は、再び受信したところまでの軌跡を除いて移動の軌跡を表示部15に表示するようにしている。これにより、徘徊者が同じ場所を通ったときには、それまでの移動の軌跡が表示されないので、簡潔な表示を行うことができる。従って、医療従事者は表示画面が見易くなる。
【0021】
なお、前述した実施形態では、同じ受信機でICタグ10の現在位置を再び受信した場合に、再び受信したところまでの軌跡を除いて表示するようにしているが、これに限定されない。例えば、所定時間(例えば10分など)前から現在時刻までの軌跡のみを表示するようにしても良い。
【0022】
具体的には、図4に示すように、管理装置11に現在時刻を計測する計時部16を設ける。制御部12は、複数の受信機1〜Nが受信したICタグ10の現在位置のうち、現在時刻から所定時間前までのもののみを選択して表示部15に表示する。例えば、Aさんが2号室→1号室→2号室→3号室と移動し、現在時刻から所定時間である10分前までの時間に該当する移動の軌跡が2号室→3号室である場合には、図5に示すように、制御部12は、2号室から3号室に向かう軌跡のみを表示部15に表示する。
【0023】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、病院や介護施設などで患者や被介護者が徘徊した場合に、その捜索を行うための表示装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態による徘徊者位置表示システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による徘徊者位置表示システムの配置例を示す図である。
【図3】本実施形態の徘徊者位置表示システムによる表示画面の例を示す図である。
【図4】本実施形態による徘徊者位置表示システムの変形例を示すブロック図である。
【図5】本実施形態の徘徊者位置表示システムの変形例による表示画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 第1の受信機
2 第2の受信機
3 第3の受信機
4 第4の受信機
N 第Nの受信機
5 第5の受信機
10 ICタグ
11 管理装置
12 制御部
13 インターフェース
14 記憶部
15 表示部
16 計時部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
徘徊者により携帯され、個別の識別情報を持つICタグと、
施設内の所定の位置に配置され、前記ICタグの接近により前記ICタグの識別情報を読み取り、個別の識別情報を持つ複数の受信機と、
前記ICタグの識別情報と前記ICタグの識別情報を受信した受信機の識別情報とを入力するインターフェースと、前記ICタグの識別情報に関連付けて徘徊者の識別情報を記憶するとともに前記受信機の識別情報に関連付けて前記受信機の位置情報を記憶する記憶部と、前記徘徊者の移動の軌跡を表示する表示部と、前記インターフェース部に入力した前記ICタグの識別情報により徘徊者を特定し、前記インターフェース部に入力した前記受信機の位置情報により前記徘徊者の現在位置を特定して、現在位置の移動の軌跡を前記表示部に表示させる制御部とを有する管理装置と、
を備えた徘徊者位置表示システムであって、
同じ受信機で前記ICタグの識別情報を再び受信した場合には、前記制御部は、再び受信したところまでの軌跡を除いて移動の軌跡を表示させることを特徴とする徘徊者位置表示システム。
【請求項2】
徘徊者の居室近傍に設置されている受信機のみを前記同じ受信機とすることを特徴とする請求項1に記載の徘徊者位置表示システム。
【請求項3】
徘徊者により携帯され、個別の識別情報を持つICタグと、
施設内の所定の位置に配置され、前記ICタグの接近により前記ICタグの識別情報を読み取り、個別の識別情報を持つ複数の受信機と、
前記ICタグの識別情報と前記ICタグの識別情報を受信した受信機の識別情報とを入力するインターフェースと、前記ICタグの識別情報に関連付けて徘徊者の識別情報を記憶するとともに前記受信機の識別情報に関連付けて前記受信機の位置情報を記憶する記憶部と、前記徘徊者の移動の軌跡を表示する表示部と、前記インターフェース部に入力した前記ICタグの識別情報により徘徊者を特定し、前記インターフェース部に入力した前記受信機の位置情報により前記徘徊者の現在位置を特定して、現在位置の移動の軌跡を前記表示部に表示させる制御部とを有する管理装置と、
を備えた徘徊者位置表示システムであって、
前記管理装置は、現在時刻を計測する計時部を備え、前記制御部は、前記計時部により計測した現在時刻情報により前記現在位置を特定し、前記現在時刻の所定時間前までの移動の軌跡のみを表示させることを特徴とする徘徊者位置表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−59174(P2008−59174A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234116(P2006−234116)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】