説明

微小針状構造物と微小針状構造物を有する装置

【課題】シリコンの針状構造物を得る。
【解決手段】金属基板上にLPCVD法により結晶性シリコン領域を形成すると、{111}面を双晶面とし、<110>方向、もしくは<211>方向に成長する多結晶体よりなるウィスカ状結晶性シリコンが得られる。ウィスカ状結晶性シリコンは、双晶を形成しながら(積層欠陥を導入しながら)成長し、ウィスカ状結晶性シリコン成長方向と垂直な面内(輪切り面内)に双晶面の法線方向<111>が必ず含まれるように初期核が配置される。このような材料をリチウムイオン二次電池の負極活物質や太陽電池等の光電変換装置として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な針状構造物、中でも、針状半導体に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な針状の構造物は、その外形的な特徴から、電子線放出源(エミッタ)、微細プローブ(STM、AFM、電極アレイ等)、光デバイス(色素増感型太陽電池、光閉じ込め構造等)、イオン移動型二次電池(リチウムイオン電池等)を含む蓄電装置等への応用が期待されている。
【0003】
シリコンの微小針状構造物としては、VLS(Vapor−Liquid−Solid)成長法を用いたシリコンナノニードルが知られている。シリコンナノニードルは単結晶の針状構造物であり、一例として、先端部の直径は〜300nm、長さは〜90μm、成長方向は<111>である。シリコンナノニードルについては、特許文献1あるいは非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−246700号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. I. Kamins et al., ”Ti−catalyzed Si nanowires by chemical vapor deposition: Microscopy and growth mechanisms”, J. Appl. Phys. Vol. 89, p. 1008−1016, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は新規なシリコンを主体とする針状構造物を得ることを課題とする。また、そのような針状構造物を用いた装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
{111}面を双晶面とし、<110>方向に成長する針状多結晶シリコン構造物と<211>方向に成長する針状多結晶シリコン構造物を得ることができる。なお、針状多結晶シリコン構造物におけるシリコン以外の元素の濃度は5原子%以下、好ましくは1原子%以下である。
【0008】
チタン等の金属基板にLPCVD法(約600℃、約2時間)によって結晶性シリコンを形成することで、上述のシリコンナノニードルとは異なった特異な形質を持つ針状構造物を得ることができる。この結晶性シリコンの針状構造物をウィスカ状結晶性シリコン(あるいは、単にウィスカ)という。ウィスカ状結晶性シリコンの直径は1〜2μm程度と比較的大きく、長さは典型的には10μm程度である。
【0009】
ウィスカ状結晶性シリコンの特異な点は、第1に、明らかに外形が異なる2種類のものが存在することである。一方は比較的太く、根元から先端まであまり直径が変化しない形(柱型)であり、他方は比較的細く、根元から先端にかけて徐々に細くなり先端が尖っている形(錐型)である(図1(A)参照)。
【0010】
第2に、ウィスカ状結晶性シリコンはVLS成長によるシリコンナノニードルとは異なり、微小な結晶が集まって出来ている多結晶体であり、かつ優先的な方位を有していることである。優先的な方位はウィスカ状結晶性シリコンの形状によって異なり、柱型ウィスカは成長方向に平行に<211>の優先方位(伸張方向)を持つ。一方、錐型ウィスカは成長方向に平行に<110>の優先方位を持つことが、TEM観察および電子回折法を用いたこれまでの研究により明らかになった。
【0011】
柱型ウィスカの断面TEM像では、回折条件の違いによるコントラストが中心線から放射状に現れている(図2(A))。さらに、試料傾斜角度を変えるとこのコントラストの見え方も変化していくことから、ウィスカ状結晶性シリコンは多結晶体であることが分かる。そして、この傾斜角度において、暗く見えている部分からの回折パターン(図2(B))から、この部分は、約35°の角度で2つのシリコンΣ3双晶が重ね合わさった結晶構造をとっていることが分かった。
【0012】
図2(B)の回折パターンにおいて、2つのシリコンΣ3双晶(これらを双晶a、双晶bという)の双晶面は、それぞれストリークが伸びている方向<111>(a1)と<111>(b1)を法線方向とする面であるが、双晶a、双晶bは、同時にそれぞれのもう一方の<111>方向<111>(a2)と<111>(b2)が一致し、新たな双晶cを作り出している関係であることが分かる。この新たな双晶cの双晶面は、図2(A)における柱型ウィスカの成長方向(伸張方向)と垂直な方向<111>(c)を法線方向とする面である。したがって、柱型ウィスカの成長方向は<211>(c)と概ね一致していることが分かる。
【0013】
一方、錐型ウィスカの断面TEM像においても、柱型ウィスカと同様なコントラストが現れており、多結晶体であることが分かる(図3(A))。ただし、優先方位は異なっている。錐型ウィスカ断面からの回折パターン(図3(B))は、シリコン単結晶における<100>入射回折パターンと同様なパターンを呈しており、ウィスカ成長方向が<110>方向とほぼ一致している。さらに、試料傾斜角度を変えた場合の回折パターンを調べると、ほぼ同様な試料内位置からの回折にも関わらず、複数の晶帯軸パターン(<110>および<111>)が得られた(図4(A)、図4(B)参照)。そして、それらの回折パターンにおいても、ウィスカ成長方向が<110>方向とほぼ一致していることから、錐型ウィスカの優先方位は成長方向と平行に<110>となっているといえる。
【0014】
上記の観察に使用したTEM(日立製H−9500)は、試料傾斜角度範囲が±15°である。単結晶のシリコンを考えた場合、このような小さい試料傾斜角度範囲で複数の晶帯軸パターンが得られることはない。この点からも、ウィスカ状結晶性シリコンは多結晶体であるといえる。ただし、単結晶に準ずる回折パターンが得られていることから、ランダムな多結晶ではなく、優先方位(錐型:<110>、柱型:<211>)を持つ多結晶であるといえる。さらに、ほぼ同様な試料内位置において様々な晶帯軸の回折パターンが得られていることから、多結晶はごく微小な結晶粒で構成されており、これらがごく近い範囲で混じり合うように存在していると考えることが出来る。
【0015】
上記において、柱型ウィスカは双晶と関わりがあることを述べた。錐型ウィスカについては、薄片加工する方向を変えて作製した別の輪切り断面においても、双晶からの回折パターンを得た。ストリークの有無や向きは異なるが、図2(B)の回折パターンと同じパターンとなった。これは、錐型ウィスカでも、2つのシリコンΣ3双晶が新たな双晶を形成する関係となっている結晶構造を有していることを示唆している。錐型ウィスカと柱型ウィスカの違いは、複数の双晶構造のそれぞれの双晶面({111}面)によって形成される<110>晶帯軸が、ウィスカ状結晶性シリコンの成長方向に対して垂直になっている(柱型)か、平行になっている(錐型)かの違いであると考えられる。
【0016】
このように、錐型ウィスカと柱型ウィスカは、ほぼ同じ双晶構造を有していると考えられるため、本発明者は、結晶成長様式についても類似点があると考えた。そして、ウィスカ状結晶性シリコンの特異な結晶構造を説明できる結晶成長モデルとして、<111>双晶成長モデルを提案する。
【0017】
このモデルは、(1)成長方向は<111>方向に限定され、双晶を形成しながら(積層欠陥を導入しながら)成長することと、(2)ウィスカ状結晶性シリコン成長方向と垂直な面内(輪切り面内)に双晶面の法線方向<111>が必ず含まれるように初期核が配置されること、を前提とする。
【0018】
これらの前提は必ずしも自明なことではないが、(1)については、シリコンの結晶成長速度の異方性に関して、<111>方向が最も遅いことを考えれば、妥当な前提であると思われる。
【0019】
(2)については、これまでに述べたように、柱型ウィスカにおいても錐型ウィスカにおいても、「新たな双晶構造」における双晶面の法線方向<111>は、常に輪切り面内に存在することに基づいた前提である。
【0020】
また、前提(2)による初期核には、少なくとも一つの<111>が輪切り面内に存在することが要求される。この要求を満たしつつ、ウィスカ状結晶性シリコン成長方向からみて対称性が高くなる結晶方位は、<110>または<211>しかない。これは実際のウィスカ状結晶性シリコンの結晶方位が<110>および<211>に限定されていることと一致するということからも、前提(2)の妥当性が示唆される。
【0021】
そして、ウィスカ状結晶性シリコン成長方向からみて<211>方向となるものを柱型ウィスカの初期核(図5(A))とし、<110>方向となるものを錐型ウィスカの初期核(図6(A))と考える。
【0022】
次に、初期核からの成長を考える。前提(1)により、成長方向は<111>に限定される。すなわち、柱型ウィスカにおいては、水平面内方向への成長は1方向しかない(図5(A)では上下方向)。そして、水平面内の成長と同様に、水平面内にない残りの3方向についても、<111>方向に双晶成長を行なうと考える。錐型ウィスカにおいては、水平面内での成長は2方向存在する。水平面内にない成長は残りの2方向で起こる。
【0023】
柱型ウィスカおよび錐型ウィスカそれぞれにおいて、全ての<111>(4方向)に双晶成長を行なった後の結晶方位は、それぞれ図5(B)、図6(B)に示すようなものになる。
【0024】
図5(B)のように、柱型ウィスカが1段階成長を行なった場合、4方向の<111>のうち、3方向において紙面奥行き方向の成分を持つ成長を行い、1方向において水平面内方向の成長を行なう。紙面奥行き方向の成分を持つ成長によって、ウィスカ状結晶性シリコン成長方向から見てほぼ<721>方向を持つ部分が2つ、ほぼ<377>方向を持つ部分が1つ現れる。水平面内方向の成長では、初期核と同じ<211>方向を持つことになる。なお、これらは全て、初期核と双晶関係にある。
【0025】
また、図6(B)のように、錐型ウィスカが1段階成長を行なった場合、4方向の<111>のうち、2方向において紙面奥行き方向の成分を持つ成長を行い、2方向において水平面内方向の成長を行なう。紙面奥行き方向の成分を持つ成長によって、ウィスカ状結晶性シリコン成長方向から見てほぼ<411>方向を持つ部分が2つ現れる。水平面内方向の成長では、初期核と同じ<110>方向を持つことになる。
【0026】
なお、本モデルの説明で用いている、単位格子を1ユニットとした段階的成長は、便宜上のものである。実際の成長は単位格子には関係なく、連続的に行なわれているものだと考えられる。
【0027】
次に、柱型ウィスカが2段階目の成長を行なった場合の結晶方位(一部)について図7に示す。柱型ウィスカが2段階目の成長を行う場合は、第2層へ上がった<377>方向の部分および<721>方向の部分で、さらに<111>方向への双晶成長が起こると考える。<377>方向の部分では、正確には異なるが<111>方向の一部(2方向)がほぼ水平面内に入る。この、ほぼ水平面内に入った<111>方向へ2段階目の成長が行われると、結晶方位は再びほぼ<211>方向を向くことになる。
【0028】
このとき、再び現れた<211>方向の結晶方位部分は、元の初期核と比較して、<211>を軸として約57°回転した関係にある。この約57°回転した関係にある部分は、同じ<377>方向の部分から反対方向の回転によっても現れるのはもちろんのこと、1段階目の成長において第1層で<211>方向に双晶成長した部分からも、<377>方向の部分を通じて現れることになる。この後は、約57°回転した<111>方向に沿って水平面内を双晶成長できるため、全体的には、{111}面を側面とした、大体六角形の外形を呈することとなる。
【0029】
これが、柱型ウィスカが大体六角形の外形を持つ直接的な原因となる。ただし、柱型ウィスカの断面形状は、完全な六角形というよりは、少し丸みを帯びている(図1(B)参照)。
【0030】
これは、柱型ウィスカの形状を決める<111>成長方向が、約57°回転した方向以外にも存在することを示唆している。再び図7を参照して、今度は<721>方向の部分を考える。<721>方向の部分では、水平面内に<111>方向が存在しないが、第2層から第1層へ下向きに成長する場合を考える(または反対向きに第3層への成長でもよい)と、2段階目の成長において、第1層にほぼ<211>方向の部分が再び現れることになる。この部分は、元の初期核と比較して、<211>を軸として約30°回転した関係にある。この、約30°回転した<211>方向の部分が、柱型ウィスカの輪切り断面を多角形に近くし、その結果、少し丸みを帯びた六角形の断面形状となると考えられる。
【0031】
さらに、回転した部分がそれぞれ新たな初期核のように振舞って成長が継続することも、外形を等方的にして丸みを帯びさせる一因となっていると考えられる。
【0032】
なお、約57°と約30°のどちらの回転が支配的なのかは、注目している部分の相対的な量で決まると考えられる。図7に示すモデルでは、<377>方向の部分から57°回転の<211>方向部分が2方向得られるが、<721>方向の部分からは30°回転の<211>方向部分は1方向しか得られない。したがって、約57°の回転が支配的と考えられるので、どちらかといえば六角形の外形となると考えられる。
【0033】
次に、錐型ウィスカが2段階目の成長を行なった場合の結晶方位(の一部)について、図8に示す。これまでに述べたように、柱型ウィスカの成長は、水平方向の双晶成長と奥行き方向の双晶成長が密接に絡み合って成長していくと考えられる。しかし、錐型ウィスカの成長は、水平面内と奥行き方向で、相互作用が少ないと考えられる。これは、初期核で<111>方向が2方向含まれることに起因する。
【0034】
錐型ウィスカは、1段階目の成長の後、水平面内に含まれる<111>方向は4方向に増える。2段階目の成長の後は、その数はさらに増え、6方向となる。このとき、図8に示した成長方向AとA´は、ほとんど同じ方向(正確には約7.35°ずれている)となる。このAとA´を成長方向として持つ2つの部分が、前述した「新たな双晶」に対応する。この新たな双晶の成長方向であるAおよびA´に対して、左方向にそれぞれ70.53°、141.06°傾いているB、C方向、および右方向に同じく70.53°、141.06°傾いているB´、C´方向があり、それぞれが六角形の各辺を形成していると考えられる。
【0035】
なお、上記において、柱型ウィスカで見られた2つのシリコンΣ3双晶は、約35°の角度で傾いて重ね合わさっていることを述べた。これは、錐型ウィスカでも同様である。しかし、新たな双晶を形成するには、理想的には約38.94°傾いているはずである。
【0036】
この数度の違いは、AとA´の角度の違いに起因している可能性を指摘しておく。つまり、双晶成長時にAとA´の角度の違いを緩和する方向に力が働き、内部に歪みが導入され、その結果、理想的な角度とは数度ずれた約35°の角度関係で落ち着いた、と考えることができる。
【0037】
つまり、成長時にそれぞれの成長方向が影響し合うような面内では、理想的な成長方向からずれて歪みが導入される可能性が高いと考えられる。このような面は、錐型ウィスカでは輪切り面、柱型ウィスカでは縦切り面である。
【0038】
柱型ウィスカおよび錐型ウィスカ双方で観察された双晶の回折パターンは、ウィスカ状結晶性シリコンが微小な3つの双晶の組み合わせで構成されていることを表している。そして、これらの観察結果を良く説明できるモデルとして、<111>双晶成長モデルを提案した。<111>双晶成長モデルによれば、ウィスカ状結晶性シリコンから得られる各種の回折パターンを良く説明できるだけでなく、ウィスカ状結晶性シリコンの外形や、内部に導入されていると思われる歪みの考察までも可能になる。
【発明の効果】
【0039】
本発明で記載されたウィスカ状結晶性シリコンは太陽電池等の光電変換装置やイオン移動性二次電池等の蓄電装置に用いることができる。そのほか、微小針状構造物を必要とするさまざまな用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ウィスカの例を示す図である。
【図2】柱型ウィスカの断面TEM像と回折パターンである。
【図3】錐型ウィスカの断面TEM像と回折パターンである。
【図4】錐型ウィスカの回折パターンである。
【図5】柱型ウィスカの成長モデルである。
【図6】錐型ウィスカの成長モデルである。
【図7】柱型ウィスカの成長モデルである。
【図8】錐型ウィスカの成長モデルである。
【図9】光電変換装置の作製工程を示す図である。
【図10】光電変換装置の断面の例を示す図である。
【図11】二次電池の例を示す図である。
【図12】二次電池の利用形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である光電変換装置の構造について、図9および図10を用いて説明する。
【0043】
本実施の形態に示す光電変換装置は、導電層上に設けられた第1導電型結晶性シリコン領域と、当該第1導電型結晶性シリコン領域上に設けられ、結晶性シリコンで形成された複数のウィスカ(ウィスカ状結晶性シリコン)が密集することにより凹凸表面を有する結晶性シリコン領域と、凹凸表面を有する結晶性シリコン領域の該凹凸面を被覆するように設けられ、第1導電型結晶性シリコン領域の導電型とは逆の導電型を有する第2導電型結晶性シリコン領域とを有する。そして、ウィスカは{111}面を双晶面とする多結晶シリコンよりなり、<110>方向に成長する構造物あるいは<211>方向に成長する構造物である。
【0044】
図9(C)は、基板101、電極103、第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、第1導電型結晶性シリコン領域107の導電型とは逆の導電型である第2導電型結晶性シリコン領域111、及び透明導電層113を有する光電変換装置である。第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111は光電変換層として機能する。
【0045】
なお、本明細書において、真性半導体とは、フェルミ準位がバンドギャップの中央に位置する狭い意味での真性半導体の他、半導体に含まれるp型若しくはn型を付与する不純物が1×1020cm−3以下の濃度であり、暗伝導度に対して光伝導度が100倍以上である半導体を指す。この真性半導体には、周期表第13族または第15族の不純物元素が含まれるものを含む。このような半導体も、本明細書では真性半導体に含まれる。
【0046】
結晶性シリコンで形成された複数のウィスカが密集することにより凹凸表面を有する結晶性シリコン領域は、真性結晶性シリコン領域に形成される。また、第2導電型結晶性シリコン領域111上に電極として機能する透明導電層113が形成される。
【0047】
本実施の形態においては、電極103と第1導電型結晶性シリコン領域107との界面が平坦である。また、真性結晶性シリコン領域109は、平坦部と複数のウィスカ(ウィスカ群)を有する。即ち、電極103及び第1導電型結晶性シリコン領域107の界面は平坦であり、第2導電型結晶性シリコン領域111の表面が凹凸状である。さらに、真性結晶性シリコン領域109及び第2導電型結晶性シリコン領域111の界面が凹凸状である。
【0048】
本実施の形態では、第1導電型結晶性シリコン領域107にp型の結晶性シリコン層を用い、第2導電型結晶性シリコン領域111にn型の結晶性シリコン層を用いるが、それぞれ逆の導電型を用いてもよい。それぞれの導電型を付与する不純物元素としては、n型を付与するにはリンまたはヒ素、p型を付与するにはホウ素が採用される。
【0049】
また、本実施の形態に示す光電変換装置では、光は透明導電層113から入射するので、第2導電型結晶性シリコン領域111は、シリコンに炭素等を添加してバンドギャップを拡げた材料で形成してもよい。
【0050】
基板101は、アルミノシリケートガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、サファイア、石英等に代表されるガラス基板を用いることができる。また、ステンレス等の金属基板等に絶縁膜を形成した基板を用いてもよい。本実施の形態では基板101として、ガラス基板を用いる。
【0051】
図9(C)では、電極103は、導電層104と、導電層の表面に形成される混合層105を有する。なお、電極103は、導電層104のみで構成される場合がある。または、電極103は、混合層105のみで構成される場合もある。
【0052】
導電層104は、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成する。または、基板101側に、白金、アルミニウム、銅、チタン、またはシリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、若しくはモリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金等に代表される導電性の高い金属元素で形成される層を有し、第1導電型結晶性シリコン領域107側にシリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成される層を有する積層構造としてもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル等がある。
【0053】
混合層105は、導電層104を形成する金属元素及びシリコンで形成されてもよい。なお、混合層105が導電層104を形成する金属元素及びシリコンで形成される場合、LPCVD法で第1導電型結晶性シリコン領域を形成する際の加熱の条件により、原料ガスの活性種が堆積部に供給されるため、導電層104にシリコンが拡散し、混合層105が形成される。
【0054】
導電層104をシリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成する場合、混合層105には、その金属元素のシリサイド、代表的には、ジルコニウムシリサイド、チタンシリサイド、ハフニウムシリサイド、バナジウムシリサイド、ニオブシリサイド、タンタルシリサイド、クロムシリサイド、モリブデンシリサイド、コバルトシリサイド、及びニッケルシリサイドの一以上が形成される。
【0055】
真性結晶性シリコン領域109は、膜状結晶性シリコン領域109aと、膜状結晶性シリコン領域109a上に結晶性シリコンで形成されるウィスカ109bを複数有するウィスカ群とを有する。なお、膜状結晶性シリコン領域109a及びウィスカ109bは、界面が明確ではない。このため、ウィスカ109bの間に形成される谷のうち最も深い谷の底を通り、かつ電極103の表面と平行な平面を、膜状結晶性シリコン領域109aとウィスカ109bとの界面とする。
【0056】
膜状結晶性シリコン領域109aは、第1導電型結晶性シリコン領域107を覆う。なお、ウィスカ109bは、円柱状、角柱状等の柱型、円錐状または角錐状の錐型でもよい。ウィスカ109bは、頂部が湾曲していてもよい。ウィスカ109bの径は、100nm以上10μm以下、好ましくは500nm以上3μm以下である。また、ウィスカ109bの長さは、300nm以上20μm以下、好ましくは500nm以上15μm以下である。本実施の形態に示す光電変換装置は、上記ウィスカを2つ以上有する。
【0057】
本実施の形態では、真性結晶性シリコン領域109及び第2導電型結晶性シリコン領域111の界面、並びに第2導電型結晶性シリコン領域111の表面が凹凸状である。このため、透明導電層113から入射する光の反射率を低減することができる。さらに、光電変換層に入射した光は、光閉じ込め効果により光電変換層で効率よく吸収されるため、光電変換装置の特性を高めることができる。
【0058】
なお、図9(C)においては、第1導電型結晶性シリコン領域107及び真性結晶性シリコン領域109の界面は平坦であるが、図10(A)に示すように、第1導電型結晶性シリコン領域108及び真性結晶性シリコン領域109の界面が凹凸状であってもよい。第1導電型結晶性シリコン領域108は、第1の導電型である不純物元素を有する結晶性シリコンで形成された複数のウィスカが密集することにより凹凸表面を有する。
【0059】
図10(A)に示す第1導電型結晶性シリコン領域108は、膜状結晶性シリコン領域108a、及び膜状結晶性シリコン領域108aに設けられ、第1の導電型を付与する不純物元素を有する結晶性シリコンで形成されるウィスカ108bを複数有するウィスカ群を有する。
【0060】
なお、膜状結晶性シリコン領域108a及びウィスカ108bは、界面が明確ではない。このため、ウィスカ108bの間に形成される谷のうち最も深い谷の底を通り、かつ電極103の表面と平行な平面を、膜状結晶性シリコン領域108aとウィスカ108bとの界面とする。ウィスカ108bは、円柱状、角柱状等の柱型、円錐状または角錐状の錐型でもよい。ウィスカ108bは、頂部が湾曲していてもよい。
【0061】
図10(A)に示す光電変換装置において、第1導電型結晶性シリコン領域108及び真性結晶性シリコン領域109の界面、真性結晶性シリコン領域109及び第2導電型結晶性シリコン領域111の界面、並びに第2導電型結晶性シリコン領域111の表面が凹凸状である。このため、透明導電層113から入射する光の反射率を低減することができる。さらに、光電変換層に入射した光は、光閉じ込め効果により光電変換層で効率よく吸収されるため、光電変換装置の特性を高めることができる。
【0062】
なお、図10(B)に示すように、第2導電型結晶性シリコン領域111上に、第2導電型結晶性シリコン領域111の抵抗を低減するためのグリッド電極115を有してもよい。
【0063】
グリッド電極115は、銀、銅、アルミニウム、パラジウム等の金属元素で形成される層で形成する。グリッド電極115を第2導電型結晶性シリコン領域111に接して設けることで、第2導電型結晶性シリコン領域111の抵抗損失を低減でき、特に高照度下での電気特性を向上させることができる。
【0064】
次に、図9(C)に示す光電変換装置の作製方法について、図9を用いて説明する。図9(A)に示すように、基板101上に電極103を形成する。電極103は、印刷法、ゾルゲル法、塗布法、インクジェット法、CVD法、スパッタリング法、蒸着法等を適宜用いて形成することができる。なお、電極103を幅1乃至100μmのパターンとして形成すると、後のウィスカの発生密度が向上する。
【0065】
次に、図9(B)に示すように、LPCVD法により第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111を形成する。LPCVD法は、550℃より高い温度、且つLPCVD装置及び電極103が耐えうる温度以下での加熱、好ましくは580℃以上650℃未満の加熱をしつつ、原料ガスとして少なくともシリコンを含む堆積性ガスを用いる。シリコンを含む堆積性ガスとしては、水素化シリコン、フッ化シリコン、または塩化シリコンがあり、代表的には、SiH、Si、SiF、SiCl、SiCl等がある。なお、原料ガスに、水素を導入してもよい。
【0066】
LPCVD法により第1導電型結晶性シリコン領域107を形成する際に、加熱条件によっては、導電層104及び第1導電型結晶性シリコン領域107の間に、混合層105が形成される。混合層105の存在により、導電層104及び第1導電型結晶性シリコン領域107の界面特性(密着性等)が良好となり、直列抵抗を低減することができる。
【0067】
第1導電型結晶性シリコン領域107は、原料ガスとして、シリコンを含む堆積性ガス及びジボランをLPCVD装置の反応室に導入するLPCVD法により形成する。第1導電型結晶性シリコン領域107の厚さは5nm以上500nm以下とする。この結果、第1導電型結晶性シリコン領域107として、ボロンが添加された結晶性シリコン層が得られる。
【0068】
次に、LPCVD装置の反応室へのジボランの導入を停止し、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性ガスをLPCVD装置の反応室に導入するLPCVD法により、真性結晶性シリコン領域109を形成する。真性結晶性シリコン領域109の厚さは500nm以上20μm以下とする。この結果、真性結晶性シリコン領域109として、ウィスカを含む結晶性シリコン層が得られる。
【0069】
次に、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性ガス及びホスフィンまたはアルシンをLPCVD装置の反応室に導入するLPCVD法により、第2導電型結晶性シリコン領域111を形成する。第2導電型結晶性シリコン領域111の厚さは5nm以上500nm以下とする。ここでは、第2導電型結晶性シリコン領域111として、リンまたはヒ素が添加された結晶性シリコン層を形成する。
【0070】
以上の工程により、第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111で構成される光電変換層を形成することができる。
【0071】
なお、図9(C)に示す光電変換装置の作製工程において、第1導電型結晶性シリコン領域107にウィスカが形成される前に、LPCVD装置の反応室へジボランの導入を停止することで、図9(C)に示すように、第1導電型結晶性シリコン領域107及び真性結晶性シリコン領域109の界面が平坦となる。一方、第1導電型結晶性シリコン領域107においてウィスカが形成された後、LPCVD装置の反応室へジボランの導入を停止した場合は、図10(A)に示すように、第1導電型結晶性シリコン領域108及び真性結晶性シリコン領域109の界面が凹凸状となる。
【0072】
また、第1導電型結晶性シリコン領域107を形成する前に、電極103の表面をフッ酸で洗浄してもよい。当該工程により、電極103及び第1導電型結晶性シリコン領域107の密着性を高めることができる。
【0073】
また、第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111の原料ガスに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス、または窒素を混合してもよい。第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111の原料ガスに希ガスまたは窒素を混合することで、ウィスカの密度を高めることができる。
【0074】
また、第1導電型結晶性シリコン領域107、真性結晶性シリコン領域109、及び第2導電型結晶性シリコン領域111の一以上を形成した後、LPCVD法装置の反応室への原料ガスの導入を停止し、真空状態で温度を保持(即ち、真空状態加熱)することで、真性結晶性シリコン領域109に含まれるウィスカの密度を増加させることができる。
【0075】
次に、図9(C)に示すように、第2導電型結晶性シリコン領域111上に透明導電層113を形成する。透明導電層113は、CVD法、スパッタリング法、蒸着法等で形成することができる。
【0076】
以上の工程により、変換効率の高い光電変換装置を作製することができる。
【0077】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池の作製方法について説明する。まず、金属基板の上に、熱CVD法、好ましくはLPCVD法により、結晶性シリコン領域を形成する。その際、金属基板の表面は十分に粗にしておくことが好ましい。また、金属基板の代わりに他の基板上に金属薄膜を堆積したものを用いてもよい。その際には、幅1μm以下のパターンを形成するとよい。
【0078】
金属基板に用いる金属は、特に限定されないが、白金、アルミニウム、銅、チタン等に代表される導電性の高い金属元素を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いてもよい。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
【0079】
上記金属基板上に結晶性シリコン領域をLPCVD法により形成するに際しては、550℃より高い温度で、且つ、LPCVD装置及び金属基板が耐えうる温度以下、好ましくは580℃以上650℃未満の加熱をしつつ、原料ガスとしてシリコンを含む堆積性ガスを用いる。シリコンを含む堆積性ガスとしては、水素化シリコン、フッ化シリコン、または塩化シリコンがあり、代表的には、SiH、Si、SiF、SiCl、SiCl等がある。なお、原料ガスに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス、及び水素の一以上を混合させてもよい。
【0080】
なお、結晶性シリコン領域に不純物として酸素が含まれている場合がある。これは、LPCVD法で結晶性シリコン領域を形成する際の加熱により、LPCVD装置の石英製のチャンバーから酸素が脱離し、結晶性シリコン領域に拡散するためである。
【0081】
なお、結晶性シリコン領域に、リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されていてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加された結晶性シリコン領域は、導電性が高くなるため、結晶性シリコン領域を活物質として用いた際の導電率を高めることができる。
【0082】
金属基板上には、結晶性シリコン領域との間に混合層が形成される。混合層は金属元素及びシリコンで形成される。金属基板がシリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素を含有する場合、混合層には、該金属元素のシリサイド、代表的には、ジルコニウムシリサイド、チタンシリサイド、ハフニウムシリサイド、バナジウムシリサイド、ニオブシリサイド、タンタルシリサイド、クロムシリサイド、モリブデンシリサイド、タングステンシリサイド、コバルトシリサイド、及びニッケルシリサイドの一以上が形成される。
【0083】
結晶性シリコン領域には複数のウィスカを有する。なお、ウィスカの形状は、柱型(円柱状、角柱状等の柱型)、錐型(円錐状または角錐状の錐型)でもよい。
【0084】
ウィスカは、頂部が湾曲していてもよい。ウィスカの径は、100nm以上10μm以下、好ましくは500nm以上3μm以下である。また、ウィスカの長さは、2.5μm以上1000μm以下、好ましくは2.5μm以上100μm以下である。
【0085】
また、このようにして得られるウィスカには、{111}面を双晶面とする双晶が含まれており、<110>方向に成長する構造物あるいは<211>方向に成長する構造物である。また、成長の過程で、多くの積層欠陥、歪み等が発生し、また、結晶体内には多くの微細な空孔が残されている。そのため、ウィスカ状の結晶性シリコンは柔軟性があり、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いても、シリコンの膨張が抑制され、また、歪みが緩和される等の理由によりシリコンの破壊を抑制できる。
【0086】
金属基板上にウィスカが形成されたら、表面のウィスカあるいはウィスカを含む結晶性シリコン領域を剥離する。例えば、混合層とシリコンとの酸に対する溶解度の差を利用すると容易に剥離できる。あるいは、機械的に剥離してもよい。この工程で重要なのは、ウィスカの形状を大きく損なわずに剥離することである。結果として、ウィスカを有する膜状の結晶性シリコン領域を得てもよいし、多数の粉末状ウィスカを得てもよい。以下、このような材料をウィスカ含有結晶性シリコンと呼ぶ。
【0087】
次に集電体上に活物質層を形成する。集電体の材料としては、銅を用いるとよい。活物質層としては、上記で得られるウィスカ含有結晶性シリコンを用いる。これにアセチレンブラック等の導電助剤とバインダーとを混合させて、スラリーを形成し、図11に示すように、負極集電体200上に塗布した後、乾燥させ、負極活物質層202を得る。これをコイン型の二次電池の負極204に用いる。
【0088】
なお、図11に示すように、コイン型の二次電池は、負極204、正極232、セパレータ210、電解液(図示せず)、筐体206及び筐体244を有する。このほかにはリング状絶縁体220、スペーサー240及びワッシャー242を有する。負極204は、上記工程により得られた負極集電体200上に負極活物質層202が設けられたものを用いる。
【0089】
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒にLiPFを溶解させたものを用いるとよいが、これに限られない。
【0090】
正極232は、正極集電体228上に正極活物質層230を有する。正極集電体としては、例えばアルミニウムを用いるとよい。正極活物質としては、公知のコバルト酸リチウムや燐酸鉄リチウム等を用い、これと導電助剤とバインダーで混合したものを正極活物質層230として用いるとよい。正極活物質の導電性が十分でない場合は焼成時にグルコース等の炭水化物を混合して、正極活物質粒子にカーボンがコーティングされるようにしてもよい。
【0091】
セパレータ210には、空孔が設けられた絶縁体(例えば、ポリプロピレン)を用いてもよいが、リチウムイオンを透過させる固体電解質を用いてもよい。セパレータに空孔があると、負極であるシリコンが微粉化した場合に、正極に混入する恐れがあるが、空孔がなく、かつ、リチウムイオンを透過させる材料であれば、その恐れは低下する。
【0092】
筐体206、筐体244、スペーサー240及びワッシャー242は、金属(例えば、ステンレス)製のものを用いるとよい。筐体206及び筐体244は、負極204及び正極232を外部と電気的に接続する機能を有している。
【0093】
これら負極204、正極232及びセパレータ210を電解液に含浸させ、図11に示すように、筐体206の中に負極204、セパレータ210、リング状絶縁体220、正極232、スペーサー240、ワッシャー242、筐体244をこの順で積層し、筐体206と筐体244とを圧着してコイン型の二次電池を作製する。
【0094】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係るウィスカ状結晶性シリコンあるいは実施の形態2で説明した蓄電装置は、電力により駆動する様々な電子機器・電気機器の電源として用いることができる。
【0095】
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電子機器・電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。
【0096】
また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電子機器・電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0097】
なお、上記電子機器・電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電子機器・電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電子機器・電気機器への電力の供給をおこなうことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電子機器・電気機器は、上記主電源や商用電源からの電子機器・電気機器への電力の供給と並行して、電子機器・電気機器への電力の供給をおこなうための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
【0098】
図12に、上記電子機器・電気機器の具体的な構成を示す。図12において、表示装置300は、本発明の一態様に係る蓄電装置304を用いた電子機器・電気機器の一例である。具体的に、表示装置300は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体301、表示部302、スピーカー部303、蓄電装置304等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置304は、筐体301の内部に設けられている。
【0099】
表示装置300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置304を無停電電源として用いることで、表示装置300の利用が可能となる。
【0100】
表示部302には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0101】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0102】
図12において、据え付け型の照明装置310は、本発明の一態様に係る蓄電装置313を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置310は、筐体311、光源312、蓄電装置313等を有する。図12では、蓄電装置313が、筐体311及び光源312が据え付けられた天井314の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置313は、筐体311の内部に設けられていても良い。
【0103】
照明装置310は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置313に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置313を無停電電源として用いることで、照明装置310の利用が可能となる。
【0104】
なお、図12では天井314に設けられた据え付け型の照明装置310を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井314以外、例えば側壁315、床316、窓317等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0105】
また、光源312には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0106】
図12において、室内機320及び室外機324を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置323を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機320は、筐体321、送風口322、蓄電装置323等を有する。図12では、蓄電装置323が、室内機320に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置323は室外機324に設けられていても良い。或いは、室内機320と室外機324の両方に、蓄電装置323が設けられていても良い。
【0107】
エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置323に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機320と室外機324の両方に蓄電装置323が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置323を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0108】
なお、図12では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0109】
図12において、電気冷凍冷蔵庫330は、本発明の一態様に係る蓄電装置334を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫330は、筐体331、冷蔵室用扉332、冷凍室用扉333、蓄電装置334等を有する。図12では、蓄電装置334が、筐体331の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫330は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置334に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置334を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫330の利用が可能となる。
【0110】
なお、上述した電子機器・電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0111】
また、電子機器・電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫330の場合、気温が低く、冷蔵室用扉332、冷凍室用扉333の開閉がおこなわれない夜間において、蓄電装置334に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉332、冷凍室用扉333の開閉がおこなわれる昼間において、蓄電装置334を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0112】
101 基板
103 電極
104 導電層
105 混合層
107 第1導電型結晶性シリコン領域
108 第1導電型結晶性シリコン領域
108a 膜状結晶性シリコン領域
108b ウィスカ
109 真性結晶性シリコン領域
109a 膜状結晶性シリコン領域
109b ウィスカ
111 第2導電型結晶性シリコン領域
113 透明導電層
115 グリッド電極
200 負極集電体
202 負極活物質層
204 負極
206 筐体
210 セパレータ
220 リング状絶縁体
228 正極集電体
230 正極活物質層
232 正極
240 スペーサー
242 ワッシャー
244 筐体
300 表示装置
301 筐体
302 表示部
303 スピーカー部
304 蓄電装置
310 照明装置
311 筐体
312 光源
313 蓄電装置
314 天井
315 側壁
316 床
317 窓
320 室内機
321 筐体
322 送風口
323 蓄電装置
324 室外機
330 電気冷凍冷蔵庫
331 筐体
332 冷蔵室用扉
333 冷凍室用扉
334 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の結晶を含む多結晶シリコン構造物であって、
前記多結晶シリコン構造物は一の伸張方向を有し、
前記多結晶シリコン構造物は{111}面を双晶面とする双晶を有することを特徴とする微小針状構造物。
【請求項2】
請求項1において、
前記一の伸張方向は、<110>方向であることを特徴とする微小針状構造物。
【請求項3】
請求項1において、
前記一の伸張方向は、<211>方向であることを特徴とする微小針状構造物。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の微小針状構造物を有する光電変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至3記載の微小針状構造物を有する蓄電装置。
【請求項6】
請求項1乃至3記載の微小針状構造物を有する装置。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87043(P2012−87043A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205443(P2011−205443)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】