説明

微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物およびこれを用いた微細パターン形成方法

【課題】レジストパターン上に水溶性樹脂組成物を用いて被覆層を形成し、ミキシングによりレジストパターンに隣接する該被覆層を変性させることによって、レジストパターン表面に水洗で除去出来ない変性層を形成し、これによりレジストパターンを太らせ、レジストパターンの分離サイズまたはホール開口サイズを実効的に露光波長の限界解像以下に微細化することのできる微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、架橋剤を用いなくてもパターン縮小量が大きく、かつ不溶物による現像欠陥やマイクロブリッジなどの発生が低減された微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物は、水溶性ビニル樹脂、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物、溶剤および必要に応じ界面活性剤などの添加剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の製造プロセスなどのレジストパターン形成時に、レジストパターン上に水溶性樹脂組成物を用いて被覆層を形成し、ミキシングによりレジストパターンに隣接する該被覆層を変性させることによって、レジストパターン表面に水洗で除去出来ない変性層を形成し、これによりレジストパターンを太らせ、レジストパターンの分離サイズまたはホール開口サイズを実効的に露光波長の解像限界以下に微細化することのできる微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物、および該微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いた微細化パターン形成方法に関する。ここで、ミキシングとは、レジストと被覆層が混ざり合うことを指し、化学反応を伴うものを含む。
【背景技術】
【0002】
LSIなどの半導体デバイスの製造や、液晶表示装置など表示装置の表示面の作成等を初めとする幅広い分野において、微細素子を形成するあるいは微細加工を施すために、従来から光リソグラフィー技術が用いられている。光リソグラフィー技術を用いてレジストパターンを形成するために、従来から種々のポジ型またはネガ型感放射線性樹脂組成物が用いられている。半導体デバイスなどの高集積化に伴い、製造プロセスに要求される配線および分離幅はますます微細化されており、これに対応するため、より短波長の光を用いてレジストパターンの微細化を図ることや露光装置の改良が行われている。特に近年、通常の光リソグラフィー工程において、60nm以下のパターンを形成する際、液浸光リソグラフィーが必要とされているが、この液浸光リソグラフィーに対応するには莫大な装置投資が必要である。このような状況において、新しい装置を導入することなく、従来の装置を用いてより微細なレジストパターンを形成するための様々な技術が登場している。その中で現在最も実用に近づいているのは、露光波長に関係なく、光リソグラフィーの限界を超える微細パターンの形成が可能な、レジストパターンの分離サイズやホール開口サイズなどを実効的に露光波長の解像限界以下に微細化、縮小(シュリンク)する技術である。このような技術は長い歴史を持ってはおらず、約10年前から行われている研究の成果によるものである。
【0003】
前記露光波長に関係なく光リソグラフィーの限界を超える微細パターンの形成が可能な、レジストパターン縮小技術を具体的にいくつか例示すると、レジストパターンを形成した後、ミキシング生成用レジストを塗布し、ベークを行ってミキシング層を形成し、微細パターン寸法に現像を行い、パターン形成する方法(特許文献1参照)、ポジ型フォトレジストのパターンを基板上に形成し、次いで電磁放射線を一様に照射した後に、水性塗料を均一に塗布すること、およびポジ型フォトレジストをアルカリ性の水溶液によって溶解剥離(リフトオフ)することによって水性塗料の微細なパターンを形成する方法(特許文献2参照)、露光により酸を発生する材料を含むレジストパターンの上を、酸の存在で架橋する材料を含むレジストで覆い、加熱または露光によりレジストパターン中に酸を発生させ、界面に生じた架橋層をレジストパターンの被覆層として形成し、レジストパターンを太らせ、これによりレジストのホール径の縮小、分離幅の縮小ができる方法(特許文献3参照)、レジストパターンの表層部に酸の存在により架橋する架橋剤と膨潤促進剤とを含む薬液を浸透させて表層部を膨潤させ、レジストパターンの膨潤した表層部に架橋膜を形成して、第2のレジストパターンを形成する方法(特許文献4参照)、界面活性剤含有液を塗布した後、樹脂および界面活性剤を含有するレジストパターン厚肉化材料を塗布するレジストパターンの形成方法(特許文献5参照)などがある。
【0004】
【特許文献1】特開平5−166717号公報
【特許文献2】特開平7−191214号公報
【特許文献3】特開平10−73927号公報
【特許文献4】特開2001−100428号公報
【特許文献5】特開2004−191465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの方法は、水溶性組成物を塗布するなどの方法で、光リソグラフィーの波長分解限界を超えた超微細パターンを簡単に形成することが出来るが、様々な問題点も有している。その一つは、架橋剤を用いる従来のパターンシュリンク材においては、架橋剤を添加することで寸法縮小量が大幅に増加されるが、架橋の発生によって純水への溶解性が低くなることから、未溶解物が残りやすく、欠陥となり、致命的な問題となる。例えば、従来の微細化加工用水溶性樹脂材料の代表的な材料である架橋剤を含有する水溶性樹脂組成物は、添加剤である架橋剤による化学反応によって、寸法縮小量を大幅に増加させられるものである。しかし架橋反応は、レジスト内に残存する酸の拡散によってその触媒作用がなされるので、酸の拡散プロファイルに強く依存する。酸がレジストから水溶性樹脂材料へ拡散する際の酸のプロファイルは、露光時の酸の分布に依存するが、酸の拡散の仕方は非常に複雑で、特に異なる媒質への拡散はよく知られてない。最近の研究からは、異なる媒質への拡散の際には、拡散のプロファイルが乱れることが分かっている。そして、この酸の拡散プロファイルの乱れにより、結果的に架橋部分と未架橋部分の水に対する溶解度コントラストが低下することになり、これが現像時の欠陥を起こす要因となっている。
【0006】
また、架橋コントラストの低下による影響は、パターンサイズが小さくなるほど深刻で、特に100nm以下の超微細パターンでは、未溶解部でパターン同士がつながってしまうマイクロブリッジが発生することが多い。
【0007】
このように、従来のパターンシュリンク材は種々の問題を有し、また100nm以下の超微細分離パターンの形成には適していないことから、パターンシュリンク量、シュリンク後の欠陥、および非対称パターンのシュリンクについて改善され、100nm以下の超微細分離パターンの形成に適し、かつ水現像可能なシュリンク材が要求されている。
【0008】
したがって、本発明は架橋剤を用いることなく、且つ架橋剤を用いなくとも、架橋剤を用いて寸法縮小を行った際に達成されるパターンの縮小量を減少させることなくパターンの微細化を行うことができ、また縮小量がパターン形状によらず一定であり、不溶物による現像欠陥やマイクロブリッジなどの発生が低減された微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
また本発明は、この微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いて、パターンの縮小量が大きく、その縮小量はパターン形状により変わらず、不溶物による現像欠陥やマイクロブリッジなどの現像欠陥の発生の低減された微細化されたパターンを形成する方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
また本発明は、100nm以下の超微細分離パターンの形成に適し、かつ水現像可能な微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物およびこの微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いて、微細化されたレジストパターンを形成する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討、研究した結果、特定の樹脂と特定のアミン化合物を含有する水溶性樹脂組成物を用いることにより、架橋剤を用いなくとも、レジストパターンの微細化が、架橋剤を用いる場合と同様以上に行え、レジストパターン形状によるシュリンク幅の不均一性の問題もなく、現像欠陥などの発生も低減され、また水現像も行えることを見出して、本発明を成したものである。
【0012】
すなわち、本発明は、(A)水溶性ビニル樹脂、(B)分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物および(C)溶剤からなる微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物、および、リソグラフィー工程で下地基板上に形成されたレジストパターンの上に、上記微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を塗布して水溶性樹脂組成物膜を形成した後、レジスト膜と水溶性樹脂組成物膜とをミキシングさせ、その後前記水溶性樹脂組成物膜を水洗して除去する工程からなる微細化されたパターンの形成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いることにより、100nm以下の微細パターンの形成を水現像により行うことができる。また、従来の架橋剤による水溶性樹脂の架橋によるレジストパターンの微細化においては、酸の拡散プロファイルの乱れで、架橋部分と未架橋部分の水に対する溶解度コントラストが低減することにより、現像欠陥やマイクロブリッジの発生が見られるが、本発明においては架橋剤により水溶性樹脂組成物膜を変性するものではないことから、従来のような酸の拡散プロファイルの乱れによる問題は起こらない。しかも、本発明においては、従来の酸架橋による膜変性の増幅と同程度以上の増幅効果により、レジストパターンの微細化を行うことができると共に、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物の量あるいはミキシングベークの際の加熱温度を制御することにより、変性膜の厚みを制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物およびこれを用いた微細化されたパターンの形成方法を、図を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いて、微細化されたパターンを形成する方法を説明する説明図である。図1(a)に示されるように、下地基板1上に設けられたレジストパターン2上に、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を塗布することにより、レジストパターン上に水溶性樹脂組成物膜3を形成する。これにより、図1(b)に示されるように水溶性樹脂組成物のレジスト膜への物理的吸着が起こる。次いで、図1(c)に示されるように、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物がレジスト膜に浸透し、レジスト膜と反応することによりレジスト膜が膨潤される。次いで、レジスト膜および水溶性樹脂組成物膜を担持する基板を、常温放置でミキシングするまたは加熱によるミキシング(ミキシングベーク)を行うことによって、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物の水溶性樹脂への浸透と反応およびレジスト膜と水溶性樹脂のミキシングおよび反応が促進される。そして、図1(d)に示されるように、レジストと水溶性樹脂組成物のインターミックスが起こり、その結果、図1(e)に示されるように、水溶性樹脂組成物が変性され、レジストとのインターミックス層は膨張して、従来の架橋剤による硬化による不溶化と同様、増幅された膜厚で水に対する不溶化層4が形成される。加熱によるミキシングを行った場合には、冷却後、水により水溶性樹脂組成物を洗い流すことにより、図1(f)に示されるように、微細化されたパターンが形成される。
【0016】
本発明により増幅された不溶化層が形成されるが、これは次のようなことによるものと考えられる。しかし、以下の説明は本発明を何ら限定するものではない。すなわち、ミキシングベークの際には、従来と同様、レジストから残存する酸が水溶性樹脂組成物層に拡散するが、その量は、水溶性樹脂組成物に含まれる、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(アミン化合物)に比べてかなり微量であり、このため、殆どの酸は、水溶性樹脂組成物からレジスト膜へ浸透してきた前記アミン化合物のアミノ基に捕獲される。したがって、本発明においては、従来の方法と異なり、レジストから水溶性樹脂組成物に実質的に酸が拡散しないので、酸の拡散のプロファイルの乱れによる溶解度コントラストの低減は発生しない。また本発明においては、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物がレジスト膜中へ浸透し、この化合物がレジスト樹脂の中のカルボン酸、アセタール等のエステル官能基や極性が高いフェノール基等と塩形成、分子間力による結合形成などの反応を起こし、膜を膨潤させることから、水溶性樹脂がレジスト膜に浸透しやすくなり、レジスト膜とのミキシングが促進される。ベーク時の熱エネルギーによりレジストおよび水溶性樹脂組成物の両方の自由体積が増加されることから、水溶性樹脂組成物がレジストへよりミキシングしやすくなり、前記アミン化合物による化学反応でその自由体積が更に増加してより円滑なミキシングが出来る。尚、ベーク温度がレジストと水溶性樹脂組成物のガラス転移温度を超えて高くなるほど自由体積は大幅に増加するので、ミキシングがより活発に起きる。本発明では、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物を加えることにより、従来の架橋剤を含む系より大幅な変性膜の増加を達成することができたものである。このため本発明では、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物の量を増減することにより、変性膜の膜厚を増減できることから、パターンの寸法縮小量の調整も行うことができる。また、本発明においては、ミキシングベークの際の加熱温度を制御することによっても変性膜の膜厚を増減でき、これによりパターンの寸法縮小量の調整を行うことができる。
【0017】
以下、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を構成する、水溶性ビニル樹脂(A)、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)および溶剤(C)、さらにはこれら以外の任意成分の添加剤について説明する。
【0018】
本発明の微細化パターン形成用組成物において用いられる水溶性ビニル樹脂(A)は、例えば、重合体を構成するモノマー成分として、窒素原子を含有するビニルモノマーが少なくとも1種用いられることが好ましい。このようなビニルモノマーとしては、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0019】
本発明において、好ましく用いることのできる水溶性ビニル樹脂(A)の例を挙げると、窒素原子を含有するビニルモノマーの単一重合体、窒素原子を含有するビニルモノマーの2種以上からなる共重合体、窒素原子を含有するビニルモノマーとこれら以外のビニルモノマーの共重合体が挙げられる。
【0020】
前記共重合体において窒素原子含有モノマー以外のモノマーが用いられる理由は、共重合体中のモノマー成分のブロック化を防ぐためであり、これによりビニルイミダゾールモノマーのブロック化による化学反応の局在化を防止して、親水性・疎水性のバランスの崩れを改善することができる。したがって、前記他のモノマーは、この目的を達成し得るものであればいずれのものであってもよいが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルキレート、ビニルヒドロキシアルキレートなどを好ましいモノマーとして挙げることができる。なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」とは、「アルリル」と「メタクリル」とを総称するために用いられている。
【0021】
また、本発明においては、共重合体モノマー成分の一つとしてビニルイミダゾールを用いることが好ましいが、その理由は、共重合体モノマー成分としてビニルイミダゾールが用いられていると、共重合体樹脂の中のビニルイミダゾールモノマー部分のN複素環が、レジストの中のカルボン酸、アセタール等のエステル化合物、およびフェノールなどの極性が高い官能基と塩形成や分子間結合の形成などの反応を起こし、不溶化層を形成し易いためである。また、ビニルイミダゾールモノマー部位は疎水性が高いため、ビニルイミダゾールモノマー部位以外のモノマー部位に親水性基を導入することによって、比較的容易に親水性、疎水性のバランス調整が可能であり、レジストとのミキシング性向上に有利であることによる。ビニルイミダゾールモノマーを用いた共重合体の好ましい例を挙げると、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)とビニルイミダゾール(a−2)との共重合体、例えば、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとビニルイミダゾールとの共重合体、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)とビニルイミダゾール(a−2)とこれら以外のその他のモノマー(b)とからなる3元共重合体、例えば、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドンまたはビニルカプロラクタムからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとビニルイミダゾールとこれら以外のモノマーとの3元共重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0022】
前記共重合体において、ビニルイミダゾール以外の窒素原子含有ビニルモノマー(a−1)、ビニルイミダゾール(a−2)およびその他のモノマー(b)の割合は、任意でよく、特に限定されるものではないが、通常、(a−1):(a−2)はモル比で0.1:99.9〜99.9:0.1であり、(a−1)+(a−2)の合計量:bはモル比で、70:30〜99.9:0.1であることが好ましい。
【0023】
上記好ましい重合体の中でも、特に好ましいものとして、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの共重合体、および下記一般式(1)で示されるビニルピロリドンと、ビニルイミダゾールと、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルキレートおよびビニルヒドロキシアルキレートの少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R1、R2およびR3は、各々独立して、水素原子またはメチル基を表し、R4は、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基またはヒドロキシアルキルカルボニルオキシ基(ここでアルキルは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキルを示す。)を表し、x、yおよびzは、5〜1,000の整数を表す。)
【0026】
前記アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基またはヒドロキシアルキルカルボニルオキシ基として好ましい基としては、−COOCH3、−COO−(CH2s−CH2−OH、−OCOCH3、−OCO−(CH2t−CH2−OH(式中、sおよびtは1〜5の整数を表す。)が挙げられる。
【0027】
本発明の水溶性樹脂の分子量については特に制限はないが、塗布性とろ過性などの点から、重量平均分子量で5,000乃至500,000が好ましく、10,000乃至50,000がより好ましい。分子量が、5,000以下では、塗布性が劣り均質な塗布膜が得られ難くなると共に塗布膜の経時安定性が低下し、一方分子量が500,000を越えると、塗布時に糸引き現象が起きたり、レジスト表面への広がりが悪く、少量の滴下量で均一な塗布膜を得ることができなくなる。更には、フィルターの透過性が劣悪な場合が多い。
【0028】
一方、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において用いられる、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)は、ミキシング、より好ましくはミキシングベークの際にレジスト側に浸透、反応してレジストを膨張させ、水溶性組成物の樹脂を浸透し易くさせ、インターミキシングをより円滑に行わせるものである。上記分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)として好ましく用いられる化合物としては、化合物中に一般式(2):
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、mは1〜8の整数を表す。)
で表される基を有する化合物が挙げられる。前記一般式(2)の2つのアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。
【0031】
分子中にこのような基を有する化合物としては、例えば下記一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、R5およびR7は、各々独立して、水素原子または1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状または環状アルキル基を表し、R6は、水素原子、−OH、−COOH、−CH2OH、−N(CH2p8、−N(CH2qOH、または1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルアルキル基を表し、R8は、水素原子、−OHまたは−COOHを表し、m、n、pおよびqは、1〜8の整数を表す。)
【0034】
上記一般式(3)中、R5、R6およびR7の1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状または環状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0035】
また、上記一般式(3)中、R6のアルケニル基、アリール基、アルアルキル基としては、例えば、ビニル基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(3)で表される化合物を具体的に示すと、例えば、2−(2―アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノプロピルアミノ)エタノール、2−(2−アミノブチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)プロパノール、2−(2−アミノプロピルアミノ)プロパノール、2−(2−アミノブチルアミノ)プロパノール、2−(2−アミノエチルアミノ)イソプロパノール、2−(2−アミノプロピルアミノ)イソプロパノール、2−(2−アミノブチルアミノ)イソプロパノール、2−(2―アミノエチルアミノ)ブタノール、2−(2−アミノプロピルアミノ)ブタノール、2−(2−アミノブチルアミノ)ブタノール、2−(2―メチルアミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−メチルアミノプロピルアミノ)エタノール、2−(2−メチルアミノブチルアミノ)エタノール、2−(2−メチルアミノエチルアミノ)プロパノール、2−(2−メチルアミノプロピルアミノ)プロパノール、2−(2−メチルアミノブチルアミノ)プロパノール、2−(2−メチルアミノエチルアミノ)イソプロパノール、2−(2−メチルアミノプロピルアミノ)イソプロパノール、2−(2−メチルアミノブチルアミノ)イソプロパノール、2−(2―メチルアミノエチルアミノ)ブタノール、2−(2−メチルアミノプロピルアミノ)ブタノール、2−(2−メチルアミノブチルアミノ)ブタノール、2−(2―エチルアミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−エチルアミノプロピルアミノ)エタノール、2−(2−エチルアミノブチルアミノ)エタノール、2−(2−エチルアミノエチルアミノ)プロパノール、2−(2−エチルアミノプロピルアミノ)プロパノール、2−(2−エチルアミノブチルアミノ)プロパノール、2−(2−エチルアミノエチルアミノ)イソプロパノール、2−(2−エチルアミノプロピルアミノ)イソプロパノール、2−(2−エチルアミノブチルアミノ)イソプロパノール、2−(2―エチルアミノエチルアミノ)ブタノール、2−(2−エチルアミノプロピルアミノ)ブタノール、2−(2−エチルアミノブチルアミノ)ブタノール、2−(2―アミノエチルメチルアミノ)エタノール、2−(2―メチルアミノメチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノメチルアミノ)プロパノール、2−(2−アミノメチルアミノ)イソプロパノール、2−(2―アミノメチルアミノ)ブタノール、2−(2―アミノ−1,1−ジメチルエチルアミノ)エタノール、2−(2―アミノ−1,1−ジメチルエチルアミノ)プロパノール、2−(2―アミノ−1,1−ジメチルエチルアミノ)ブタノールなどが代表的なものとして挙げられる。
【0037】
また、上記一般式(3)で表される以外の、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物としては、例えば、1−(ヒドロキシメチル)−イミダゾリジノン、1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリジノン、1−(2−ヒドロキシプロピル)−イミダゾリジノン、2−(1−ピペラジニル)エタノール、2−(4−アミノ−1−ピペラジニル)エタノールなどのような、上記一般式(3)において、R5とR7および2つのアミノ基とが共同して環を形成して、イミダゾリジン、ピペラジン、イミダゾリジノンなどの2個の窒素原子を含む複素環化合物を形成した化合物が挙げられる。
【0038】
分子内に少なくとも2個のアミノ基を有するその他の化合物としては、((アミノアセチル)アミノ)酢酸、((2−アミノプロパノイル)アミノ)酢酸、N−(アミノアセチル)アラニン、(アミノアセチルメチルアミノ)酢酸、2−(2−ジメチルアミノエチルメチルアミノ)エタノール、2−(2−(2−ヒドロキシエチル)アミノ)エチル)アミノエタノール、(2−(2−アミノ−2−メチルプロピル)アミノ)−2−メチル−1−プロパノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(4−モルホリニル)エタンアミンや、上記一般式(2)の2個のアミノ基が全て−(CH2n6基(R6およびnは上記一般式(3)で定義されたものを示す。)で置換された、例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなどが挙げられる
【0039】
これらの中では、一般式(3)で示される化合物が好ましく、さらには一般式(3)の中ではアミノアルコール類が好ましいものである。また、多価アミノアルコール類は、水溶性ポリマーのカルボン酸や水酸基との相互イオン結合を形成することで、水溶性ポリマーとのミキシングを増加することが出来ることから、このような化合物も本発明の化合物(B)として好ましいものである。なお、本発明の微細化パターン形成用組成物において、水溶性ビニル樹脂(A)と分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)の重量比(A):(B)は、好ましくは70:30〜99.9:0.1である。
【0040】
さらに、本発明の微細化パターン形成用組成物において用いられる溶剤(C)について説明する。溶剤(C)としては、水が好ましく用いられる。溶剤(C)として用いられる水は、水であれば特に制限はなく、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理等により有機不純物、金属イオンを除去したものが好ましい。
【0041】
また、溶剤(C)として、塗布性等の向上を目的として、水に可溶な有機溶剤を水と共に用いることも可能である。水に可溶な有機溶剤としては、水に対して0.1重量%以上溶解する溶剤であれば特に制限はなく、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等をあげることができ、好ましいものとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを挙げることができる。これら溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、レジスト膜とのミキシングや水での現像に支障がなければ、溶剤として水を含まない有機溶剤が用いられてもよい。
【0042】
本発明の水溶性樹脂組成物には、任意成分として、塗布性などを向上するために界面活性剤を添加できる。界面活性剤としては、例えばアセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどが挙げられ、アセチレンアルコール、アセチレングリコールとしては、例えば3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その配合量は、本発明の微細化パターン形成用組成物に対し、通常50〜2,000ppm、好ましくは100〜1,000ppmである。
【0043】
本発明の微細化されたパターンの形成方法においては、通常のリソグラフィー工程で下地基板上に形成されたレジストパターンの上に、上記本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物が塗布されて、レジストパターン上に水溶性樹脂組成物膜が形成される。下地基板としては、例えば半導体基板(例えば、シリコンウェハーなど)、LCD、PDPなどのガラス基板などが適宜用いられてよい。これら下地基板には、導電膜、配線、半導体などが形成されていてもよい。また、レジストパターンの形成は,例えば、下地基板上に、フォトレジストをスピンコートなど従来公知の方法により塗布し、プリベーク(例えば、ベーク温度:70〜140℃で1分程度)後、g線、i線などの紫外線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ光などの遠紫外線、X線、電子線などで露光し、必要に応じポストエクスポージャーベイク(PEB)(例えば、ベーク温度:50〜140℃)を行った後、現像し、必要であれば現像後ベークを行う(例えば、ベーク温度:60〜120℃)ことにより形成される。水溶性樹脂組成物の塗布は、従来知られた何れの方法、例えばスピンコート法、スプレー法、浸漬法、ローラーコート法など任意の方法によって行われればよい。このとき、水溶性樹脂組成物の塗布量は、任意の量でよいが、例えば0.08〜0.3μm(乾燥膜厚)程度が好ましい。塗布後、必要に応じプリベークし(例えば、60〜90℃、15〜90秒)、水溶性樹脂組成物膜を形成する。
【0044】
次いで、基板上に形成されたレジストパターンと水溶性樹脂組成物膜とをミキシングする。ミキシングは常温においても可能であるが、加熱処理(ミキシングベーク)することが好ましい。加熱により,レジスト膜中への化合物(B)の浸透、反応が促進され、これによりレジスト膜の膨潤が促進され、水溶性組成物の樹脂が浸透しやすくなり、インターミキシングがより円滑に作用できることとなって、微細パターンの縮小が促進される。また、加熱により,窒素原子含有水溶性ビニル樹脂とレジスト樹脂の中のカルボン酸、アセタール等のエステル官能基や極性が高いフェノール基等との反応も促進され、これによってレジストの中の自由体積が増加される。ミキシングベークの温度およびベーク時間は、使用されるレジスト、水溶性樹脂組成物で使用される材料、架橋膜厚などにより適宜決定されればよい。ミキシングベークの温度およびベーク時間は、通常100〜180℃程度の温度で、30〜90秒程度行えばよいが、本発明はこれに限定されない。ベーク温度がレジストと水溶性組成物のガラス転移温度を超えて高くなるほど自由体積は大幅に増加するのでミキシングがより活発に起きる。ベーク温度をコントロールすることによって、所望のパターンシュリンク量が得られる。
【0045】
さらに、ミキシングが加熱によって行われた場合には冷却し、変性された水溶性樹脂組成物膜を、水、水と水可溶性の有機溶剤との混合物、あるいはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリ水溶液等を用いて現像処理して、未変性の水溶性樹脂組成物膜を溶解除去する。以上の処理により、トレンチパターンやホールパターンが実効的に微細化される。
【実施例】
【0046】
以下に本発明を実施例をもって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
〔実施例1〕
AZ−EM社製のビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマーとの共重合体(質量比2:1)10gを純水90gに溶解した溶液に2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール5gを添加し、よく攪拌した後に、0.05ミクロンのフィルターを通してろ過して、微細化パターン形成用の水溶性樹脂組成物を調製した。
【0048】
一方、シリコンウェハー基板上にレジスト(AZ−エレクトロニックマテリアルズ(以下、AZ−EMと略記する)社製、商品名AZ AX1120P)を塗布し、120℃で90秒間ベーク処理することにより、膜厚175nmのレジスト膜を形成した。次にこの基板をArF露光装置(ニコン社製、商品名 Nikon ArF−Scanner NSR−S360D)を用いて露光した後、120℃で90秒間ベーク処理し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて60秒間現像処理をした後、30秒間水洗することにより、寸法75nmの分離パターンを形成させた。次に、前記水溶性樹脂組成物を前記レジストパターン上に塗布し、150℃で60秒間加熱処理を行った後、23℃で30秒間冷却してから純水で60秒間水洗処理をしたところ、未反応の水溶性樹脂組成物が完全に除去され、最終的に分離パターン寸法が50nmのレジストパターンが得られた。
【0049】
上記工程において、水溶性樹脂による変性工程前と変性工程後のウェハーのパターンの欠陥検査を行った。この欠陥検査は、KLAを用いて、欠陥数を測定することにより行われた。以後の実施例、比較例においても、同様の方法で欠陥検査は行われた。
【0050】
実施例1の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は200であるのに対し、変性工程後の欠陥数は230であった。このことから、水溶性樹脂組成物の塗布での欠陥数増加は極めて少ないことが分かる。
【0051】
〔実施例2〕
AZ−EM社製のビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマーとの共重合体(質量比1:1)10gを純水90gに溶解した溶液に2−(2−アミノエチルアミノ)プロパノール4gを添加し、ろ過することにより微細化パターン形成用の水溶性樹脂組成物を調製した。
【0052】
一方、実施例1と同様にして、寸法75nmのレジストの分離パターンを形成させた。次に、前記水溶性樹脂組成物を前記レジストパターン上に塗布し、実施例1と同様の処理をしたところ、未反応の水溶性樹脂組成物が完全に除去され、最終的に分離パターン寸法が45nmであるレジストパターンが得られた。
【0053】
実施例2の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は200であるのに対し、変性工程後の欠陥数は250であった。このことから、水溶性樹脂組成物の塗布での欠陥数増加は極めて少ないことが分かる。
【0054】
〔実施例3〕
AZ−EM社製のビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマーとの共重合体(質量比1:2)10gを純水90gに溶解した溶液に2−(2―アミノ−1,1−ジメチルエチルアミノ)エタノール3gを添加し、よく攪拌してからろ過することにより微細化パターン形成用の水溶性樹脂組成物を調製した。
【0055】
一方、実施例1と同様にして、シリコンウェハー基板上に、寸法80nmのレジスト分離パターンを形成させた。次に、前記水溶性樹脂組成物を前記レジストパターン上に塗布し、実施例1と同様の処理をしたところ、未反応の水溶性樹脂組成物が完全に除去され、最終的に分離パターン寸法が55nmであるレジストパターンが得られた。
【0056】
実施例3の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は270であるのに対し、変性工程後の欠陥数は300であった。このことから、水溶性樹脂組成物の塗布での欠陥数増加は極めて少ないことが分かる。
【0057】
〔実施例4〕
ビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマー並びにメタアクリレートモノマーのなかから10重量%の水酸化ナトリウム水溶液で重合禁止剤を抽出洗浄し、重合開始剤である0.9gのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を100gのイソプロパノールに溶解させた溶液が65℃になった後に、12gのビニルピロリドンモノマーと8gのビニルイミダゾールモノマー並びに2gのメタアクリレートモノマーをそれぞれビュレットで同時にゆっくり滴下する。5時間の重合反応の後、反応溶液を常温で冷却させ、減圧蒸留し、濃縮させた溶液をジエチルエーテルに沈殿させた。更に沈殿物をイソプロパノールに溶解させてからジエチルエーテルに沈殿させて精製した。このようにして得られたビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマー並びにメタアクリレートモノマーとの3元共重合体(質量比6:4:1)10gを純水90gに溶解してから、1−(2−ヒドロキシメチル)−イミダゾリジノン7gを添加し、よく攪拌してからろ過することにより微細化パターン形成用の水溶性樹脂組成物を調製した。
【0058】
次に、形成するレジスト膜の膜厚を200nmとする以外は、実施例1と同様にして、寸法80nmのレジスト分離パターンを形成させた。次に、前記水溶性樹脂組成物を前記レジストパターン上に塗布し、実施例1と同様の処理をしたところ、未反応の水溶性樹脂組成物が完全に除去され、最終的に分離パターン寸法が50nmであるレジストパターンが得られた。
【0059】
実施例4の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は100であるのに対し、変性工程後の欠陥数は157であった。このことから、水溶性樹脂組成物の塗布での欠陥数増加は極めて少ないことが分かる。
【0060】
〔実施例5〕
ラジカル重合により得られたビニルピロリドンモノマーとビニルイミダゾールモノマー並びにヒドロキシエチルアクリレートモノマーとの三元共重合体(質量比2:2:1)10gを純水80gに溶解した溶液に、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール5gを添加し、良く混合させたあと、ろ過することにより、微細化パターン形成用の水溶性樹脂組成物を調製した。
【0061】
一方、実施例4と同様にして、シリコンウェハー基板上に、寸法80nmのレジスト分離パターンを形成させた。次に、前記水溶性樹脂組成物を前記レジストパターン上に塗布し、実施例1と同様の処理をしたところ、未反応の水溶性樹脂組成物が完全に除去され、最終的に分離パターン寸法が50nmであるレジストパターンが得られた。
【0062】
実施例5の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は150であるのに対し、変性工程後の欠陥数は198であった。このことから、水溶性樹脂組成物の塗布での欠陥数増加は極めて少ないことが分かる。
【0063】
〔比較例1〕
実施例2において、レジストパターンが形成された基板上に2−(2−アミノエチルアミノ)プロパノールの代わりに架橋剤を含むAZ−EM社製の水溶性樹脂組成物を塗布処理して実施例1と全く同一の工程を行ったところ、パターン寸法は80nmから65nmに変化したが、微細化パターンにはミクロブリッジが発生した。
【0064】
比較例1の工程で得られた微細パターンの欠陥検査の結果、変性工程前の欠陥数は230であるのに対し、変性工程後の欠陥数は1500であり、このことから、水溶性樹脂組成物の塗布により、欠陥数が増加していることが分かる。
【0065】
上記実施例ならびに比較例から、本発明によれば、100nm以下の超微細パターンにおいて純水による現像が可能な微細パターン形成が出来ることが分かる。従来の微細加工用水溶性樹脂材料においては、架橋剤によるレジストポリマーと水溶性樹脂との架橋機構によって、100nm以下の超微細パターンではマイクロブリッジが発生する。本発明では、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物を用いて、レジストポリマーのカルボン酸や水酸基との相互イオン結合を形成することなどにより水溶性ポリマーとのミキシングを増加させて、大きい寸法縮小量を達成することができ、しかも水による現像が可能で、現像後のマイクロブリッジなどの現像欠陥も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を用いて、微細化されたパターンを形成する方法を説明する説明図である
【符号の説明】
【0067】
1 下地基板
2 レジストパターン
3 水溶性樹脂組成物膜
4 水不溶化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性ビニル樹脂、(B)分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物、および(C)溶剤からなる微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、水溶性ビニル樹脂(A)が、窒素原子を含有するビニルモノマーの単一重合体、窒素原子を含有するビニルモノマーの2種以上からなる共重合体、または窒素原子を含有するビニルモノマーの少なくとも1種と窒素原子を含有しないビニルモノマーの少なくとも1種からなる共重合体であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、窒素原子を含有するビニルモノマーが、アリルアミン、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタムまたはビニルイミダゾールであり、窒素原子を含有しないビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、水溶性ビニル樹脂(A)が、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールの共重合体であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、水溶性ビニル樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される水溶性3元共重合体であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
一般式(1):
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、各々独立して、水素原子またはメチル基を表し、R4は、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基またはヒドロキシアルキルカルボニルオキシ基(ここでアルキルは、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキルを示す。)を表し、x、yおよびzは、5〜1,000の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)が、下記一般式(2)で表される基を分子内に有する化合物であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
一般式(2):
【化2】

(式中、mは1〜8の整数を表す。)
【請求項7】
請求項6記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、一般式(2)で表される基を分子内に有する化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
一般式(3):
【化3】

(式中、R5およびR7は、各々独立して、水素原子または1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状または環状アルキル基を表し、R6は、水素原子、−OH、−COOH、−CH2OH、−N(CH2p8、−N(CH2qOH、または1〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアルアルキル基を表し、R8は、水素原子、−OHまたは−COOHを表し、m、n、pおよびqは、1〜8の整数を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の微細化パターン形成用組成物において、水溶性ビニル樹脂(A)と分子内に少なくとも2個のアミノ基を有する化合物(B)の重量比(A):(B)が、70:30〜99.9:0.1であることを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物において、該微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物がさらに界面活性剤を含有することを特徴とする微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物。
【請求項10】
リソグラフィー工程で下地基板上に形成されたレジストパターンの上に、請求項1〜9のいずれかに記載の微細化パターン形成用水溶性樹脂組成物を塗布して水溶性樹脂組成物膜を形成した後、レジスト膜と水溶性樹脂組成物膜とをミキシングさせ、次いで前記水溶性樹脂組成物膜を水洗して除去する工程からなる微細化されたパターンの形成方法。
【請求項11】
請求項10記載の微細化されたパターンの形成方法において、ミキシングが加熱により行われることを特徴とする微細化されたパターンの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−275995(P2008−275995A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120833(P2007−120833)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(504435829)AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】