微細成分を分類および計数する電気光学的測定装置および電気光学的測定法
本発明は、計量タンク(111)中の流体のフォトルミネッセンスの測定による生物学的解析用の装置(100)に関する。かかる装置(100)は、吸収と蛍光の測定にそれぞれ適した異なるスペクトル範囲の光を発するように適合された少なくとも2つの光源(121と131)と、センサ(141)、光学システム(142)、およびフィルタ手段(144)を備えたセンサデバイス(140)とを備え、吸収および/または蛍光の測定を可能にすべく、本発明によればセンサ(141)、光学システム(142)、およびフィルタ手段(144)の3つの要素が相互に関係する。本発明によれば、センサ(141)の内部利得は、蛍光と吸収の測定が連続して実行されるよう設定可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の属する技術分野は生物学的解析、詳細には血液分析の技術分野である。本発明は一般に、計量タンク中に存在する流体の電気光学的測定のための装置および方法に関する。かかる装置および方法は、流体(例えば生体液)中の微細物体の分類および計数を目的とする。
【0002】
より正確には、本発明は、分析されるサンプル中に存在する細胞の数を計算および区別するための、電気的および光学的測定の使用に基づく分析法を使用した装置に関する。本発明に関連し、サンプルは好ましくは血液サンプルである。
【背景技術】
【0003】
造血細胞に関し、当業者は、消光または吸収の現象を含む細胞の容積計または回折計による形態分析により、主な細胞系列(赤血球、血小板および白血球を含む)の区別が可能になることを知っている。白血球集団はそれ自体、リンパ球、単球、好中球、好酸球、および好塩基球のような複数のカテゴリに分類される。
【0004】
これらの細胞の成熟度は、本願出願人により出願された特許文献1に記載されているように、その体積と白色光の見かけの吸収を同時に決定することによりある程度まで決定できる。準単色光を使用した装置が特許文献2に記載されている。
【0005】
細胞の成熟度の評価は、それが早期診断を可能にするため非常に重要である。一般的に言うと、循環する血液に存在する細胞の大部分は成熟細胞である。
上述の種類の細胞の各々に関して、様々なレベルの成熟が知られている。したがって、赤血球は、前赤芽球の形でまず生産され、その後、好塩基性赤芽球となり、その後、多染性赤芽球となり、これが好酸赤芽球となり、それから網状赤血球へと発達する。これらの網状赤血球が、一旦循環する血液中に入ると、最後には赤血球に分化する。
【0006】
白血球も、前骨髄芽球の形で骨髄でまず生産される。この骨髄芽球が、その後、骨髄球を生成し、次にこれが好塩基性、好酸性、または好中性顆粒球に変換され、最初は非分割型、次に年が経つにつれますます分割する核を有するようになる。
【0007】
骨髄芽球は、単芽球、前単核、そして次に末梢循環に入る単球細胞を産出する単球系列の源である。
骨髄芽球の元となっている幹細胞は、リンパ球系列の幹細胞の形の分化によりリンパ細胞系列を生じさせかかる細胞系列の一部は胸腺および神経節(T系列)でて成熟し続け、残りは骨髄に残ってBリンパ球系列を産出する。一旦形質細胞の形で活性化されたBリンパ球は、病原性抗原と格闘するために抗体を生産する。
【0008】
血小板は、巨核芽球に由来し、巨核芽球は骨髄芽球の元である骨髄始原細胞に由来し、骨髄芽球の成熟の最終段階に達すると(血小板減少症 巨核芽球)、骨髄芽球はその細胞質の分割により血小板を生産する。最近の血小板(網状血小板)は、原細胞の残留物であるRNAを含んでいる。
【0009】
いくつかの病理の診断には、造血細胞のますます精密な計数が必要とされている。詳細には、赤血球の未熟版である網状赤血球および赤芽球のような新しい集団が出現できることが必要とされている。同様に、未熟細胞、すなわち未熟リンパ球、単球または顆粒細胞
と呼ばれる白血球の前駆体の出現も、非常に重要である。同様に、活性化リンパ球または網状血小板の分類および計数により、患者の診断における有意義な改善を得ることが可能となるだろう。
【0010】
赤血球の平均寿命は120日であるため、正常な再生率は0.83%でなければならない。一般に許容される正常平均率は0.5%から1.5%であり、これらの値は3週齢未満の新生児ではより高い(2%から6%まで)。網状赤血球の観察および計数は、赤血球造血活性の指標となっており、したがって、特に化学療法後の骨髄再生のモニタにおける、組換えエリトロポイエチン(rHuEpo)によるフォローアップ治療における、貧血診査バランスにおける、または溶血または代償性出血における、特に有用なパラメータである。
【0011】
このような細胞の区別および計数が有用な病理のいくつかの例を以下に挙げる。
例えば、赤芽球を数える臨床上の利点は、特定の形式の貧血の検出にとって重要であると分かる場合がある。溶血性貧血の一般的特性は、赤血球の構造または機能の赤血球外要因または内因性奇形に起因し得る、成体型赤血球の過剰な破壊である。
【0012】
赤白血病は、赤血球系列の細胞および顆粒球系列の前駆体の悪性の増殖を特徴とする、種々の急性骨髄芽球性白血病である。細胞学的視点から見て、末梢白血球過多症は、初期段階に血液中を循環する芽細胞が存在する(59%)ことが留意される。骨髄球増加症は、未熟成分、顆粒球系列、または赤血球系列の循環する血液への通路に相当する。
【0013】
識別に関しては、網状赤血球が、最も興味深い細胞ファミリーの一つを構成し、多数の方法が存在し、また自動血液分析で開発中である。これらの細胞系列は蛍光性の着色剤(例えば非対称シアニン染料、特にチアゾールオレンジ)により核酸をマーキングすることにより数えることが可能である。
【0014】
上記チアゾールオレンジ分子は、核酸(RNAまたはDNA)の細胞質内検出用の固有な物理化学的特性を有する。溶液中で遊離している場合、かかる分子は光励起により引き起こされる蛍光をほとんど示さない。チアゾールオレンジの立体化学的形状は、この分子が核酸塩基の間に挟まれる形状である。この状態で、チアゾールオレンジ分子は蛍光を発する。したがって、蛍光のレベルの検出および測定により、細胞質内の核酸を定量することが可能となる。細胞の性質は、細胞質内核酸のこの定量化を、第2の光学的または電気的測定と組み合わせたものから導き出され、それにより、細胞の絶対的または相対的計数が可能となる。
【0015】
この蛍光を測定するための既存の電気光学素子は比較的複雑である。特に高い分析率が期待される場合、かかる装置はかなりのハードウェア資源を使用する。この状況で、略語FSC(前方散乱)およびSSC(側方散乱)により一般に識別される回折を測定するか、または略語ALL(軸方向の光の損失)により一般に識別される消光を測定するための1セットのセンサを備えたレーザ光源を使用することが比較的標準的な方法である。
【0016】
かかるレーザは、レーザビームと交差する瞬間に細胞上または細胞内に存在する1つまたは複数のマーカまたは1つまたは複数の着色剤の蛍光を引き起こすことが可能にする。標準方法では、蛍光光および回折光がそれらの分光特性に基づいて分離される。このため、多誘電性の干渉光学フィルタ、つまり異なる屈折率を有する2つ以上の透明材料の交互配置によって得られるフィルタが一般に使用される。蛍光を測定するために、光電子増倍管またはフォトダイオードが使用され、大部分の時間、アバランシェ(電子雪崩)モードで動作する。これらのシステムは、光学的および機械的な視点から見て比較的複雑である。
【0017】
特許文献3は、AGC(自動利得制御)アバランシェフォトダイオードの使用を示す。この装置は、フォトダイオードの利得が印加電圧の関数として自動的に調節されるフローサイトメータ内で使用される。
【0018】
出願人名Sysmexの特許文献4は、各光源からデータを回収する複数のセンサについて開示している。この装置もSSC(側方散乱)の測定だけを達成している。
特許文献5は、流動中は細胞が分析されないオンライン読取り装置について開示している。ここでも、たとえデータが得られても(吸収、蛍光、反射率データ)、かかるデータは単一のセンサでは得られない。
【0019】
特許文献6は、吸収読取りのない落射蛍光装置を示す。
特許文献7は、複数の異なる出所からデータを得ることが必要な場合に、複数のセンサを使用している。
【0020】
特許文献8は、複数の蛍光色素でマーキングされた粒子の数を計算可能な装置について開示している。この装置は、単波長光源と、各蛍光のデータを回収可能な複数のセンサとを有する。
【0021】
特許文献9は、複数の異なるセンサを使用したFSC、SSCおよび蛍光測定を達成可能な装置を開示している。
特許文献10(Becton Dickinson and Co)は、流動中の細胞を数えるための複数の光
検出器に関連付けられた複数の蛍光の使用について記載している。各光検出器の利得は、検出された蛍光にそれを適合させるために調整され得る。
【0022】
公知の装置はいずれも、(特に循環する血液中の)生物細胞を識別し数えるために必要な電気光学および光学流体測定システムを組み込んでいる。既存の装置のサイズおよび複雑さは高価となり、その作動が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5,138,181号
【特許文献2】国際公開第2006/053960号
【特許文献3】米国特許出願出願公開第2006/0219873号
【特許文献4】欧州特許出願出願公開第1 710 558号
【特許文献5】欧州特許出願出願公開第0 533 333号
【特許文献6】国際公開第2008/019448号
【特許文献7】欧州特許出願出願公開第0 806 664号
【特許文献8】米国特許第4,745,285号
【特許文献9】米国特許第5,408,307号
【特許文献10】米国特許第6,897,954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の主な目的は、計量タンク中の流体の電気光学的測定による生物学的分析用の装置を提案することにより、そのような欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かかる装置は、吸収および蛍光の測定にそれぞれ適した異なるスペクトルの領域で光を発するよう適合された少なくとも2つの光源と、各吸収および蛍光の測定に関連するイン
ピーダンスを測定する装置と、センサ、光学システム、およびフィルタ手段を備えた共有センサ装置とを備え、センサ、光学システム、およびフィルタ手段の3つの要素が吸収および蛍光のうちの少なくとも一つを測定可能とするために相互に関係し、蛍光および吸収の測定が連続して行われるようにセンサの内部利得が構成可能である。
【0026】
蛍光が光学システムによって測定され、センサが吸収を測定するために使用されるように、セットアップが構成される。このアプローチにより本発明の特徴である最適レベルの統合につながる。本発明の利点は、製造コストの低減および実施の容易さを含む。
【0027】
このような装置を用いて、各細胞を「二重測定」モードで、すなわち抵抗率の測定と、吸光度および/または蛍光の測定との2つを測定可能となる。抵抗率測定を、吸光度または蛍光の測定と関連付けることで、容積測定の情報を得ることが可能となる。
【0028】
見かけの吸光度は細胞の屈折/回折現象と大いに関連している。上記の測定により、細胞集団のセットに特異的な高感度な結果を得るのに十分な信頼できるデータが得られる。
本発明は、特定の機能を有する試薬を使用して予め化学的に調製された細胞懸濁液の読取りを可能にする、独創的で簡単な光学装置を提案する。これらの細胞懸濁液は、容積−吸収の読取り値および容積−蛍光の読取り値(すなわち同じセンサデバイスによって行なわれた2つのパラメータの電気光学的測定)を使用して連続して分析される。
【0029】
この二重測定はハードウェア資源を非常に簡素化する。本発明の装置は、例えば以下のものの分類および計数を可能にする:血小板、赤血球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、網状赤血球、赤芽球、網状血小板、未熟リンパ球、未熟単球、未熟顆粒球、活性化リンパ球および非分割好中球。
【0030】
本発明の1実施形態では、センサは、内部アバランシェ利得を抑制するよう適合されたバイアス回路に接続された、アバランシェフォトダイオードである。
本発明に新規な特定のバイアスに関する単純なアバランシェフォトダイオードの使用は、比較的低価格での本発明の単純かつ効率的な実施を可能にする。
【0031】
本発明の有利な実施形態では、抑制された内部利得は1であり、アバランシェフォトダイオードは単純なフォトダイオードとして作用する。
この実施形態は、アバランシェフォトダイオードの挙動を、吸収測定に対して従来使用されていた標準フォトダイオードの挙動に低減させる。本発明によって提供される利得抑制がない状態では、高い光強度での吸収測定に使用されれば、アバランシェフォトダイオードは直ちに飽和するだろう。
【0032】
本発明の1実施形態では、バイアス回路は、2つの異なる電圧(すなわち高圧と低圧)を提供し、かつフォトダイオードにバイアスをかけるために高圧または低圧を提供すべくデジタル制御される、2つの位置をとるスイッチ(以下、2位置スイッチと称する)、を備える。
【0033】
単純な切り替え制御により、本発明の上記実施形態は非常に丈夫な動作を提供する。ダイオードは、スイッチの位置の関数として、高圧と低圧で連続的にバイアスされる。これは内部利得およびしたがって受信機の感度を変更する。
【0034】
本発明の別の実施形態では、バイアス回路は、プログラム可能な電圧発生器、またはこの発生器によりアバランシェフォトダイオードに加えられるバイアス電圧を制御するデジタルまたはアナログ手段によって制御される電圧発生器を備える。
【0035】
この別の実施形態は単一の電圧発生器を使用することが可能である。
本発明の1つの特定の特徴によれば、2つの光源は、光センサの光軸と同一平面上の放射光軸を有する。
【0036】
吸収モードにおいて、光学的装置は3つの平面、つまり入射瞳の平面、細胞を通過する平面、および受け入れ瞳の平面を結合させる。したがって照明はニュートンの光である。ここで、光学装置は、平面、水およびガラス、測定チャンバの屈折表面により導入される幾何および色収差を補正すべく、三次収差で補正される。よって測定にとって重要なすべての光学経路は同一平面である。
【0037】
本発明の有利な特徴によれば、吸収波長の光を発生する光源の光軸は光センサの光軸と一直線上に並べられ、蛍光を励起させる光源の光軸はセンサの光軸および別の光源の光軸と垂直である。
【0038】
この特徴はセンサデバイスに優れた吸収および蛍光挙動を与える。吸収測定のためには、センサデバイスを光源に対面して位置させる。蛍光測定のためには、光源はセンサデバイスに垂直に配置し、放射光がより低い強度の蛍光の測定に干渉するのを防止する。
【0039】
本発明の別の特定の特徴によれば、蛍光に使用されるマーカはチアゾールオレンジであり、蛍光励起源は約470ナノメートル(nm)で放射しなければならず、センサデバイスのフィルタ手段は495nmでカットオフする色フィルタを備えなければならない。
【0040】
チアゾールオレンジの使用は、複数の細胞集団の識別に有利であることが知られている。本発明の文脈では、チアゾールオレンジの使用により、比較的低コストな色ガラスフィルタの使用が可能となる。そのような安価なフィルタは、特定の種類の帯域幅にのみ利用可能である。チアゾールオレンジは、488nmに次位(第2)に位置する最大励起以下で励起された時でも、いくらかの効果を有する。よって発明者は、チアゾールオレンジの470nm周囲の波長の励起と、比較的低価格で利用可能な色ガラスフィルタの使用とを組み合わせると、アバランシェフォトダイオードまたは高い内部利得のセンサを用いて、完全に適切な定量的蛍光測定(つまり高感度かつ特異的な測定)を行なうことが可能となることを見出した。この発見は、アバランシェダイオードを用いた吸収測定の実施をさらに可能にする本発明により、特定の方法で使用される。
【0041】
センサは、もたらされる測定の関数として可変な電子利得で、電子増幅ステージと有利に接続される。
電子増幅ステージの使用は、データを続いて処理するために利用可能なダイナミックレンジの使用を最大限にすることにより、光度の量化を改善する可能性を増大させる。
【0042】
本発明の1つの応用特徴によれば、センサの内部利得および電子利得は、好塩基球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、赤血球、血小板、赤芽球、赤血球前駆物質、網状赤血球、および網状血小板から選択された複数の細胞集団の吸収および蛍光測定の区別を可能にすべく設定可能である。
【0043】
この特徴は、計数される種々のタイプの細胞を測定するようデバイスを適合させるある程度の許容範囲を提供する。この許容範囲により、細胞の種類の関数としてセンサデバイスの感度およびデータ処理ダイナミックレンジの使用を変更することが可能となる。
【0044】
特に、センサの内部利得および電子利得は、センサデバイスを用いて、各分析サイクルの吸収および蛍光測定の区別を可能にすべく有利に設定可能である。
ここで、分析サイクルとは、サンプル中に存在する細胞のファミリーの分類および絶対
的計数のためのデバイスの各使用サイクルを意味する。
【0045】
これは、特定の試薬および他のパラメータ(例えば細胞が計量タンクに入る速度)で分析されるサンプルのインキュベーションに関するプロセスに相当する。したがって、ここでの文脈では、例えば5つの異なる分析サイクルを行なうことが可能である。LMNEサイクルは、リンパ球、単球、好中球および好酸球の正確な分類および計数を可能にする分析サイクルに相当する。GR/PLTサイクルは、赤血球と血小板の絶対計数を可能にする。BASOサイクルは、好塩基球の識別および計数を可能にする。RETICサイクルは、赤血球の前駆物質である網状赤血球の識別および計数を可能にする。ERBサイクルは、かかる網状赤血球の前駆物質、すなわち赤芽球の計数を可能にする。
【0046】
センサの内部利得および電子利得は、センサデバイスを用いた、少なくとも好塩基球および網状赤血球の吸収および蛍光測定の区別を可能すべく有利に設定可能である。
この特徴は、上記に言及した細胞のタイプの各々で観察される平均光度スペクトルを包含することが可能である。蛍光光度はRETICサイクル中に最小となる。したがって、センサの感度が最大感度でなければならない。対照的に、好塩基球は、吸収測定により、光度が最も高い構成であることが明らかになっている。したがって、BASOサイクル中はセンサの感度が最小感度でなければならない。これらの2つのタイプの極端な細胞の計数を保証することにより、センサの内部利得および電子利得の変更によるデバイスの他の細胞タイプ向けの調節が可能である。
【0047】
本発明のさらなる追加の特徴によれば、生化学的および形態学的データを得るために、2つの光源が同時にオンにされてもよい。
本発明の他の特徴および利点は、本発明の1つの非限定的な実施形態を示す、添付図面に関連して与えられた以下の説明から理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の装置の斜視図。
【図2】図1の装置の(XZ)における断面図。
【図3】図1の装置の(YZ)における断面図。
【図4】図1の装置の略平面図。
【図5】チアゾールオレンジの励起および蛍光スペクトル。
【図6】本発明の1実施形態におけるセンサに接続された電子制御回路の線図。
【図7】本発明の好ましい実施形態で使用される色ガラス光学フィルタの高域伝送。
【図8】装置を使用して得られ得る種々の結果。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の装置100の好ましい実施形態の斜視図である。この装置100は、4つの機能的アセンブリ:計量タンクをサポートするアセンブリ110、光源をサポートする2つのアセンブリ120および130、ならびに光センサをサポートするアセンブリ140から成る。図示した本発明の実施形態では、光源をサポートする2つのアセンブリ120および130は相互に垂直であり、2つのアセンブリのうちの1つが、センサを備えたアセンブリ140に対面している。
【0050】
図2は、測定平面と交差するXZ平面における装置100の断面図である。アセンブリ110は、計量タンク111と、フローサイトメトリーの法則に従って、分析される流体の流れ(フロー)を計量タンク111に生成すべく計量タンク111に流体を吐出するノズル112とを備えている。アセンブリ130は、計量タンクの適切な照明を提供する光源131および光学素子132を備えている。
【0051】
アセンブリ140は、センサ141と、センサ141による光の適切な受け取りのための光学素子142とを備えている。アセンブリ130および140の光軸はフローの方向に垂直である。
【0052】
図3は、測定平面と交差するYZ平面における装置100の断面図である。アセンブリ120は、光源121と、計量タンクの適切な照明のための光学素子122とを備えている。
【0053】
アセンブリ120の光軸も流体のフローの方向に垂直であることをここで再び指摘する。したがって、アセンブリ120、130および140の3つの光軸は同一平面内にあり、計量タンク111中の流体の流れはこの共通の平面に垂直である。
【0054】
図4は、計量タンク111が光源121,131およびセンサ141と共に表された装置100の略平面図である。
2つの光源121および131は異なる波長の光を放射し、2つのタイプの測定、すなわち吸収測定および蛍光測定に使用される。吸収測定は、細胞の存在(特に細胞の天然または人工シトクロムの存在)により引き起こされる回折、屈折/反射、および真の吸収効果の合計である見かけの吸収の測定である。
【0055】
見かけの吸収の大部分は細胞の屈折性/回折現象に関与する。大部分の細胞(特に顆粒細胞系列の細胞)の場合、高品質な形態測定分析に寄与するのは顆粒とそのサイズおよび数の正確な評価である。
【0056】
チアゾールオレンジの蛍光測定および吸収測定の本発明の非限定的な例を以下に説明する。
図5は、チアゾールオレンジの分光特性を表わす。最大吸収波長が約510nmであることに注意する。この波長は、約530nmに位置する再放射波長に近いが、それにもかかわらず主として約480nmの第2の最大値で主に光を放射する光源を使用することが好ましい。
【0057】
本発明の1実施形態では、光源121は、フローサイトメータの計量タンク111内を循環するチアゾールオレンジで標識された細胞を励起するのに使用される、20ミリワット(mW)の473nmレーザダイオードである。細胞の各々により放射された蛍光は、該細胞を構成する核酸の量に比例しているが、センサ141の光軸上に90°で収集される。波長を安定させるために、レーザダイオード121は、経時的な温度変化および発光出力変化を防ぐべく、電流調節される。
【0058】
レーザダイオード121により放射された光は、一方の軸に対して40゜および該第1の軸に垂直なもう一方の軸に対して10゜の中間高さ幅の角度で、非常に顕著に発散することがさらに知られている。
【0059】
また、レーザダイオード121により放射されるビームの上記の非常に顕著な発散を改善するには、特定の視準(コリメーション)光学素子が必要である。かかる目的には、成型された非球面レンズが低価格であるため、従来多く使用されている。放射されたレーザビームのすべてを集めるため、かかるレンズの開口数は通常少なくとも0.5である。この種のレンズの使用により、発散が低いコリメートビームを形成することが可能となる。一対のアナモルフィックプリズムにより、楕円のコリメートビームを円形にすることが可能である。この動作は、円形ビームを得るために長軸を圧縮し、短軸を伸張することからなる。レーザダイオード121の楕円形は問題とならないため、本発明の装置では長軸の圧縮は必ずしも必要ないことに留意する。これとは逆に、レーザダイオード121は、噴
射ノズル112の出口から200マイクロメートル(μm)のサイズが約20×60平方メートル(μm2)である楕円の捕獲ウィンドウ117にビームを適合させるのに好都合
である(図4参照)。
【0060】
第2の光源131は、約650nmで有利に光を放射する。本発明の1実施形態では、この光源は共振空洞発光ダイオード(RCLED)である。
本発明によれば、蛍光と吸収とを測定するためにセンサ141が使用される。センサ141は、蛍光と吸収に使用される光学素子142に結合されている。
【0061】
センサ141は、自身の利得を変更するよう適合された電子制御回路143に接続される。
ここで説明する本発明の実施形態では、センサ141は、フォトダイオード141が本発明の原理に従って作動するようにバイアスが制御回路143により変更される、アバランシェフォトダイオードである。
【0062】
本発明は、簡単なフォトダイオードとしてアバランシェフォトダイオードを構成すべく、アバランシェ利得を抑制する制御回路143を使用している。したがって、アバランシェフォトダイオードは切り替え可能な利得を有する。これはアバランシェダイオードの新規かつ以前には公表されていない使用態様である。
【0063】
本発明の利点は、血液成分を特徴付けし、かつ数えるために1つのセンサデバイスのみを使用することである。測定ごとに二つの検出チャネル(吸光度と蛍光)が使用されないため、コスト削減が得られる。
【0064】
図6は、フォトダイオード141を制御するための制御回路143の構造の機能ブロック図である。この回路143は、低圧と高圧を生成可能なプログラム可能な電圧源を備えている。
【0065】
フォトダイオード141(例えばHamamatsu S5343)の検出感度および利得パラメータを設定するために、回路143内の2つのデジタル制御が使用される。
機能ブロック201により表わされるように、アバランシェ利得Mは、2位置スイッチに適合するTTLS 1桁デジタル制御により制御される。内部利得とも呼ばれるこの利得は、受信機の感度、すなわち受信機が検出できる最小量の光子を決定する。
【0066】
TTLS=1の場合、例えば150ボルト(v)に等しいいわゆる高圧は、アバランシェモードにおける接合にバイアスをかけ、1よりも大きい内部利得M(例えばM=60)をセンサに与え、センサの感度はその場合最大感度であり、通常10ピコワット(pW)である。
【0067】
アバランシェモードでは、検出される1つまたは複数の蛍光のレベルに匹敵する利得を得るために、逆電圧が調節される。本発明の好ましい実施形態では、センサ141が作動するエンクロージャの温度変化を考慮するために、電圧はその公称値付近で調整される。この電圧調整は、25℃から40℃までの動作温度の所与の範囲にわたり、利得をその公称値、通常約60で安定させることを可能にする。
【0068】
TTLS=0の場合、例えば15ボルトのいわゆる低圧は、利得なし(M=1)でフォトダイオードモードにおける接合にバイアスをかけ、受信機の感度は約1ナノワットである。
【0069】
使用されるバイアス電圧は、使用されるダイオードの関数としてもちろん変更してもよ
い。現在の実施形態で使用されるダイオードのタイプの場合、電子雪崩効果が始まる30V以下の0でない電圧が、単一利得を提供するために選択され得る。これに対して、15V以下では接合キャパシタンスが迅速に増加するため、関係する周波数範囲での動作を得るために、この15Vという値より大幅に低くない電圧が選択されることが望ましい。
【0070】
通常約10−20Vの低圧として、空間電荷領域はPN接合内でさえ小さい。したがって、電子雪崩(アバランシェ)効果による増幅は実質的に抑制され、センサ141は簡単なフォトダイオードとして機能する。
【0071】
フォトダイオード接合のピコファラド(pF)の静電容量を十分な値に減少させる目的で0でない値にバイアス電圧を設定することは、センサ141に、その持続期間が通常10マイクロ秒(μs)である短い光のパルスの検出に適合する帯域幅を与える。しかしながら、この電圧はフォトダイオードでの内部増幅を防止するのに十分に低いままでなければならない。
【0072】
接合キャパシタンスの減少は、センサに、解析システムからの信号の分析に適合する最適帯域幅を与えるために必要である。これらの信号はランダムパルス列である。
受信機回路による時間的分離能の要求およびほとんど歪みのない分析信号の必要は、帯域幅FP>Fcoを課し、Fcoはパルスが有意に変形されない最小カットオフ周波数である
。実際、Fcoは例えば350キロヘルツ(kHz)に等しい。
【0073】
電子雪崩効果が抑制されるこの動作モードでは、センサ141は細胞の見かけ吸収を測定するために使用される。例えば、ヘモグロビンは赤血球の天然シトクロムである。エオシンは、例えば欧州特許第EP 0 430 750号に記載されている方法により白血球により固定され得る人工シトクロムである。
【0074】
本発明の異なる実施形態は、プログラム可能な電圧発生器か、またはそれ以外の制御可能な電圧発生器を使用することが可能である。アバランシェフォトダイオード141に加えられる逆電圧を、その内部利得およびしたがって受信機の感度を制御するデジタルまたはアナログ手段により制御することが可能である。
【0075】
そのバイアスモードがいかなるものであっても、フォトダイオードは光電流を電圧に変換するためにトランスインピーダンスアンプブロック202に結合される。
発明の有利な実施形態では、トランスインピーダンス利得は300キロオーム(kΩ)に等しい。十分な出力ダイナミックレンジを達成するため、出力電圧は±15Vである。特に、正確な吸収測定には広いダイナミックレンジが必要である。
【0076】
吸収測定は、連続成分Iからの光損失δIの観察にある。分析信号δI=σIであり、σは分析された粒子による吸収によって失われた光の分画である。受信機が光電気ノイズにより制限されると、平均平方ノイズ値はb=√2qIBに等しく、qは電子の電荷であり、Bは受信機回路の帯域幅である。
【0077】
信号対雑音比は以下の通りである。
【0078】
【数1】
【0079】
この式は、信号対雑音比が√Iと共に増加し、最も高い光束値を使用する必要があることを示している。それにもかかわらず、この光束は、方程式
【0080】
【数2】
【0081】
により定義された特定値
【0082】
【数3】
【0083】
以下であり、Rはトランスインピーダンス利得、ηは照明波長におけるセンサの量子収量であり、Vsは第1増幅器(アンプ)の飽和電圧である。例としてここで与える一般的な値は、Vs=12V、R=300キロオーム、η=650nmで0.6amps/ワット(A/W)であり、これにより
【0084】
【数4】
【0085】
=67マイクロワット(μW)が計算可能となる。基準δI/b=1により定義された検出限界により、検出できる光の分画σを決定することが可能となる:
【0086】
【数5】
【0087】
検出可能な最小有効吸収部分はこの場合、
【0088】
【数6】
【0089】
に等しい。
ここでaおよびbはそれぞれ測定窓の高さおよび幅であり、これは血小板等の小さな要素の検出に適合する。
【0090】
アバランシェモードにおいて、感度は最適感度であり、受信機回路の感度は、フォトダイオードの特性、特にM=60のアバランシェモードで得られる約10pWのフォトダイオードのノイズ等価電力(NEP)により与えられる。
【0091】
ブロック203は、第1ステージ202からの信号を下流回路の範囲内に条件付ける。ブロック203により電圧を、AD変換器またはプロセッサ回路の入力ダイナミックレンジに適合させることが可能となる。信号はアンプの利得の最適調節により条件付けられる。ここで、アンプは、閉ループ利得がG=(1+r/R)により与えられる非反転演算増幅器であり、rはフィードバック抵抗、Rは非反転入力と接地との間の分岐の等価抵抗である。利得Gは有利には比1:5で可変であり、光検出感度をさらに増加させることを可能にする。
【0092】
抵抗器Rはデジタル制御され、マイクロコントローラ(例えば図5に示された本発明の実施形態では既製のAD5290デジタルポテンシオメーターを備えたブロック205)による遠隔制御に好都合であることにここで注意する。この配置が回路の帯域幅を保存するため、この抵抗器Rの位置は重要である。
【0093】
ブロック204は制御回路143のためのフィルタかつ調整された電圧供給を有する。
ブロック206は制御線により送られる不要な信号のフィルタリングのためのデカップリングコンデンサを備える。
【0094】
ブロック207はI/Oライン電気インターフェースコネクタである。
利得値の以下の表は、血液に含まれる異なるタイプのアリコートの分析に使用される利得MおよびGの調整値を要約している:
【0095】
【表1】
【0096】
本発明の装置を用いて、および上記の集団をすべて得るべく特定の条件下で行なわれた分析サイクルおよび動作のシーケンスを下記に説明する。
一般的に言うと、蛍光測定の場合、レーザダイオード121がオンになった(点けられた)後、APD利得が「M=60」に変更される。光源131はオフにされる(消される)。吸収測定の場合、APD利得が「M=1」に切り換えられ、その後RCLEDがオフにされる(消される)。レーザダイオードがオフにされる(消される)。受信機に向かう蛍光を反射するようRCLEDの放射ファイバに二色フィルタの配置を想定することが有利である。
【0097】
患者の血液はETDAチューブにサンプリングされる。その後、この血液サンプルは予測される結果を得るために使用される試薬に従って様々に、複数のアリコートに分割される。
【0098】
アリコートLMNEは、本願出願人の欧州特許第1 239 283号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、赤血球の溶解を生じさせるように適合され、吸収とインピーダンス測定によるリンパ球、単球、好中球および好酸球の区別および計数を可能にする。ここで、15マイクロリットル(mL)の血液を、1.8ミリリットル(mL)の試薬と混合させる。フォトダイオードの利得Mはこの場合1である。これは、吸収のためのフォトダイオードの定量的性質を取っている。演算増幅器の電子利得は、有利には、好塩基球に使用される電子利得よりわずかに高く、例えば3である。図8aにおけるように、種々の細胞集団が示され、図8aには任意の未熟顆粒の位置も示されている。
【0099】
GR/PLTアリコートは、本願出願人の欧州特許第0 856 735号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、吸収とインピーダンスの測定による赤血球と血小板のサインに適合している。8μLの血液を2.8mLの試薬と混合させる。その後、フォトダイオードの利得Mは1に設定され、再びその吸収測定の定量的性質を取る準備ができる。演算増幅器の電子利得Gは、有利には、白血球に使用される電子利得より高く、例えば5である。図8bにおけるように、赤血球と血小板の数が表わされてもよい。
【0100】
BASOアリコートは、欧州特許第1 039 297号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、好塩基球以外の白血球の容積測定のサイズを縮小するため、好塩基球を区別および数えることが可能となっており、吸収とインピーダンスを測定することによる好塩基性細胞のサインに適合している。15μLの血液を1.8mLの試薬と混合させる。フォトダイオードの利得Mは再び1である。これは、吸収測定のためのフォトダイオードの定量的性質を取る。例えば、演算増幅器の電子利得Gは、有利には、1よりも大きい低い値、例えば2である。図8cにおけるように、好塩基球が表わされてもよい。
【0101】
RETアリコートは、欧州特許第0 856 735号に記載された試薬が、蛍光測定により網状赤血球をサインするために導入されたアリコートである。2.4mLの血液が2.5mLの試薬と混合される。その後、フォトダイオードの利得Mは、フォトダイオードのアバランシェ利得に合わせて最大限にされ、ここでは60に等しい。再び、これによってフォトダイオードは蛍光測定にとって十分な感度となる。予測される光量が低いため、演算増幅器の電子利得Gは、有利にはここで最大限にされ、例えばここでは5に等しくされる。例えば図8dにおけるように、網状赤血球が表わされる。この測定が血液分析のために実際に加味される価値を有するため、網状赤血球を測定するこの可能性は本発明の1つの利点である。この測定は、本発明により、より低コストで高い信頼性でアクセス可能である。さらに、網状赤血球が若いほど、RNAの量はよりより大きくなる。チアゾー
ルオレンジは核酸塩基と化学量的に統計学的様式で反応するため、網状赤血球が若いほど、蛍光強度は高くなる。したがって、ここで述べた本発明の装置および関連する方法は、比較的低価格で網状赤血球を分類および定量し、かつこれらの細胞の成熟に関する指標を与える、簡単な方法を提供する。
【0102】
ERBアリコートは、蛍光の測定により赤芽球(網状赤血球前駆物質)をサインするために、欧州特許第1 239 283号に記載された試薬が導入されたアリコートである。分析されるサンプルは、30mLの血液を2mLの試薬と混合することにより調製される。その後、フォトダイオードの利得Mは、フォトダイオードのアバランシェ利得に合わせて最大限にされ、ここでは60に等しい。これによってフォトダイオードは蛍光測定にとって十分な感度となる。例えば、演算増幅器の電子利得Gは1である。この値は、データの後の処理で提示されるダイナミックレンジでの蛍光の正確な定量化を可能にする。図8eにおけるように、赤芽球が表わされてもよい。
【0103】
適切な試薬を用いて得られたアリコートの各々に対し、本発明が可能にする二重測定(蛍光とインピーダンス、または吸光度とインピーダンス)が達成される。これは、特異的かつ高感度な様式で、上述した細胞集団を分類および数えることを可能にする。上述した細胞集団とは、すなわち赤血球、網状赤血球、赤芽球、血小板、網状血小板、および白血球であり、白血球に関しては、本発明により識別可能な複数のカテゴリ、例えばリンパ球、単球、好中球、好酸球および好塩基球がある。したがって、本発明によれば、10個の細胞集団が容易に識別可能であり、上述の5つのアリコートを使用して定量可能である。上記の調製した混合物の各々に対するインピーダンス測定による蛍光と吸収の測定により、これらの集団を識別することが可能となる。本発明では、白血球の前駆物質である単芽球およびリンパ芽球や、未熟顆粒を含む、他の細胞タイプを数えることが可能である。
【0104】
フォトダイオードから成る適切なセンサを越えて、受光システムは、色消しダブレットから成る。この開口は、網状赤血球に含まれていたもののような核酸に結合したチアゾールオレンジ由来の蛍光を検出可能にするのに十分である。
【0105】
色消し波長は、対象波長に集中している。1つの特定の実施形態では、細胞の吸収は650nmで測定される。チアゾールオレンジを使用する場合、最大蛍光は530nmの波長で放射される。530nmおよび650nmの波長のために最適化されたダブレットは、これらの2つの波長での細胞のフローの最適な視覚的焦点合わせを可能にする。
【0106】
蛍光波長と吸収波長での光量を正確に検出できるようにするため、光学システム142は、530nm(蛍光波長)および650nm(吸収波長)で色収差のために補正される。
【0107】
吸収フィルタ144(例えばSchott GG495フィルタ)は、その厚さが約3mmであるが、光ビームが平行となるセットアップの部分で受光チューブに設置される。このフィルタ144は、レーザビームから直角に回折されたレーザ光線を吸収する。
【0108】
図7は、フィルタ144の高域通過の伝送特性を表わす。488nmの代わりに470nm付近でチアゾールオレンジの第2の吸収極大の波長を放射することにより、480nm付近の光の通過を許容し始めるこの種の簡単で比較的安価なフィルタ144を使用することが可能であることは明らかである。フィルタ144は実際、簡単な色ガラスであり、有効な色ガラスは光スペクトルにおいて稀である。488nmで本発明を実施することはもちろん可能であるが、(少なくとも現在)これは費用の増大につながる。
【0109】
したがって、488nm付近での放射のためには、センサデバイスの方向への大きな回
折角を回避するため、別のタイプのガラス(例、GG510またはOG515ガラス)の使用が望ましい。本発明の装置における470nm付近でのチアゾールオレンジの励起によって、たとえそれが比較的安価な色ガラスを使用しても488nmにおけるよりも低いがより有効な発光効率が得られることが分かり、このことは非常に有利である。
【0110】
この特徴は、本発明の装置に蛍光測定を設置するコストの低減をさらに可能にする。このフィルタ144は、フレネル反射を縮小するために、広帯域(400nmと700nmの間の)反射防止処理を有している。
【0111】
レーザダイオード121からの473nm光線は、フィルタにすべて吸収される。500nmと600nmの間の発光帯の蛍光と、光源131からの650nm光線だけが送られる。
【0112】
ここで、光学装置は、特に測定チャンバ111の平面(水およびグラス)の屈折表面に導入される幾何学的および色収差を修正するために、三次収差に関して有利に補正される。
【0113】
最終分析では、示された装置は、センサ141の瞳孔上への細胞のフローのイメージングを可能にする。この平面における光学解像度は以下の式により与えられる。
R=λ/(NAe+NAr)
式中、λは照明波長、NAeおよびNArはそれぞれ照明ビームと受信ビームの開口数である。
【0114】
画像面で達成される測定は、純粋に光度測定であるが、センサ141の感度(その異種性により区別される2個の細胞を識別するその能力)は、パラメータR、特に信号対雑音比の計測に強く関連付けられる。
【0115】
0.65の波長での最適な白血球の区別のためには、パラメータRは1μm以下である必要がある。これはNAe+NAr>0.65の開口数拘束を課す。本発明の1つの実施形態では、放射と受信の開口は等しく、有利にはNAe=NAr>0.325である。有利な実施形態では、この開口は0.35に固定される。
【0116】
最後に、650nmで光を吸収する好酸球中に存在する酵素であるペルオキシダーゼの吸収スペクトルは、好中球との分離の改善に寄与する。この意味で、本発明は、過去に開発された装置に対して、好中球/好酸球の分離を大いに改善する。
【0117】
明らかに、装置は、同様の結果を得るために、他の試薬および比較的異なるプロセスを用いて使用されてもよい。Tリンパ球、Bリンパ球またはNKリンパ球以外の細胞タイプを識別および数えるために、他の試薬が開発されていてもよい。その場合、かかる試薬は、抗体に結合された化学蛍光分子または粒子から成る免疫プローブを含み得る。試薬の調製は、上述したように識別をする2つのパラメータを可能にするものでなければならないことに注意する。
【0118】
最後に、本発明の原理に従えば、種々の実施形態が達成され得る。詳細には、生化学的および形態学的特性を同時に決定するのと同時に、2つの光源が同時にオンにされてもよい。本発明により達成される測定の連続的性質にもかかわらず、それは確かに経済的かつ医学的利点を有するが、これまでは吸収装置のみで可能であり、よってかかる測定を介してアクセス可能な集団の決定のみが可能であった、比較的低コストの装置における蛍光測定を許容する。
【技術分野】
【0001】
本発明の属する技術分野は生物学的解析、詳細には血液分析の技術分野である。本発明は一般に、計量タンク中に存在する流体の電気光学的測定のための装置および方法に関する。かかる装置および方法は、流体(例えば生体液)中の微細物体の分類および計数を目的とする。
【0002】
より正確には、本発明は、分析されるサンプル中に存在する細胞の数を計算および区別するための、電気的および光学的測定の使用に基づく分析法を使用した装置に関する。本発明に関連し、サンプルは好ましくは血液サンプルである。
【背景技術】
【0003】
造血細胞に関し、当業者は、消光または吸収の現象を含む細胞の容積計または回折計による形態分析により、主な細胞系列(赤血球、血小板および白血球を含む)の区別が可能になることを知っている。白血球集団はそれ自体、リンパ球、単球、好中球、好酸球、および好塩基球のような複数のカテゴリに分類される。
【0004】
これらの細胞の成熟度は、本願出願人により出願された特許文献1に記載されているように、その体積と白色光の見かけの吸収を同時に決定することによりある程度まで決定できる。準単色光を使用した装置が特許文献2に記載されている。
【0005】
細胞の成熟度の評価は、それが早期診断を可能にするため非常に重要である。一般的に言うと、循環する血液に存在する細胞の大部分は成熟細胞である。
上述の種類の細胞の各々に関して、様々なレベルの成熟が知られている。したがって、赤血球は、前赤芽球の形でまず生産され、その後、好塩基性赤芽球となり、その後、多染性赤芽球となり、これが好酸赤芽球となり、それから網状赤血球へと発達する。これらの網状赤血球が、一旦循環する血液中に入ると、最後には赤血球に分化する。
【0006】
白血球も、前骨髄芽球の形で骨髄でまず生産される。この骨髄芽球が、その後、骨髄球を生成し、次にこれが好塩基性、好酸性、または好中性顆粒球に変換され、最初は非分割型、次に年が経つにつれますます分割する核を有するようになる。
【0007】
骨髄芽球は、単芽球、前単核、そして次に末梢循環に入る単球細胞を産出する単球系列の源である。
骨髄芽球の元となっている幹細胞は、リンパ球系列の幹細胞の形の分化によりリンパ細胞系列を生じさせかかる細胞系列の一部は胸腺および神経節(T系列)でて成熟し続け、残りは骨髄に残ってBリンパ球系列を産出する。一旦形質細胞の形で活性化されたBリンパ球は、病原性抗原と格闘するために抗体を生産する。
【0008】
血小板は、巨核芽球に由来し、巨核芽球は骨髄芽球の元である骨髄始原細胞に由来し、骨髄芽球の成熟の最終段階に達すると(血小板減少症 巨核芽球)、骨髄芽球はその細胞質の分割により血小板を生産する。最近の血小板(網状血小板)は、原細胞の残留物であるRNAを含んでいる。
【0009】
いくつかの病理の診断には、造血細胞のますます精密な計数が必要とされている。詳細には、赤血球の未熟版である網状赤血球および赤芽球のような新しい集団が出現できることが必要とされている。同様に、未熟細胞、すなわち未熟リンパ球、単球または顆粒細胞
と呼ばれる白血球の前駆体の出現も、非常に重要である。同様に、活性化リンパ球または網状血小板の分類および計数により、患者の診断における有意義な改善を得ることが可能となるだろう。
【0010】
赤血球の平均寿命は120日であるため、正常な再生率は0.83%でなければならない。一般に許容される正常平均率は0.5%から1.5%であり、これらの値は3週齢未満の新生児ではより高い(2%から6%まで)。網状赤血球の観察および計数は、赤血球造血活性の指標となっており、したがって、特に化学療法後の骨髄再生のモニタにおける、組換えエリトロポイエチン(rHuEpo)によるフォローアップ治療における、貧血診査バランスにおける、または溶血または代償性出血における、特に有用なパラメータである。
【0011】
このような細胞の区別および計数が有用な病理のいくつかの例を以下に挙げる。
例えば、赤芽球を数える臨床上の利点は、特定の形式の貧血の検出にとって重要であると分かる場合がある。溶血性貧血の一般的特性は、赤血球の構造または機能の赤血球外要因または内因性奇形に起因し得る、成体型赤血球の過剰な破壊である。
【0012】
赤白血病は、赤血球系列の細胞および顆粒球系列の前駆体の悪性の増殖を特徴とする、種々の急性骨髄芽球性白血病である。細胞学的視点から見て、末梢白血球過多症は、初期段階に血液中を循環する芽細胞が存在する(59%)ことが留意される。骨髄球増加症は、未熟成分、顆粒球系列、または赤血球系列の循環する血液への通路に相当する。
【0013】
識別に関しては、網状赤血球が、最も興味深い細胞ファミリーの一つを構成し、多数の方法が存在し、また自動血液分析で開発中である。これらの細胞系列は蛍光性の着色剤(例えば非対称シアニン染料、特にチアゾールオレンジ)により核酸をマーキングすることにより数えることが可能である。
【0014】
上記チアゾールオレンジ分子は、核酸(RNAまたはDNA)の細胞質内検出用の固有な物理化学的特性を有する。溶液中で遊離している場合、かかる分子は光励起により引き起こされる蛍光をほとんど示さない。チアゾールオレンジの立体化学的形状は、この分子が核酸塩基の間に挟まれる形状である。この状態で、チアゾールオレンジ分子は蛍光を発する。したがって、蛍光のレベルの検出および測定により、細胞質内の核酸を定量することが可能となる。細胞の性質は、細胞質内核酸のこの定量化を、第2の光学的または電気的測定と組み合わせたものから導き出され、それにより、細胞の絶対的または相対的計数が可能となる。
【0015】
この蛍光を測定するための既存の電気光学素子は比較的複雑である。特に高い分析率が期待される場合、かかる装置はかなりのハードウェア資源を使用する。この状況で、略語FSC(前方散乱)およびSSC(側方散乱)により一般に識別される回折を測定するか、または略語ALL(軸方向の光の損失)により一般に識別される消光を測定するための1セットのセンサを備えたレーザ光源を使用することが比較的標準的な方法である。
【0016】
かかるレーザは、レーザビームと交差する瞬間に細胞上または細胞内に存在する1つまたは複数のマーカまたは1つまたは複数の着色剤の蛍光を引き起こすことが可能にする。標準方法では、蛍光光および回折光がそれらの分光特性に基づいて分離される。このため、多誘電性の干渉光学フィルタ、つまり異なる屈折率を有する2つ以上の透明材料の交互配置によって得られるフィルタが一般に使用される。蛍光を測定するために、光電子増倍管またはフォトダイオードが使用され、大部分の時間、アバランシェ(電子雪崩)モードで動作する。これらのシステムは、光学的および機械的な視点から見て比較的複雑である。
【0017】
特許文献3は、AGC(自動利得制御)アバランシェフォトダイオードの使用を示す。この装置は、フォトダイオードの利得が印加電圧の関数として自動的に調節されるフローサイトメータ内で使用される。
【0018】
出願人名Sysmexの特許文献4は、各光源からデータを回収する複数のセンサについて開示している。この装置もSSC(側方散乱)の測定だけを達成している。
特許文献5は、流動中は細胞が分析されないオンライン読取り装置について開示している。ここでも、たとえデータが得られても(吸収、蛍光、反射率データ)、かかるデータは単一のセンサでは得られない。
【0019】
特許文献6は、吸収読取りのない落射蛍光装置を示す。
特許文献7は、複数の異なる出所からデータを得ることが必要な場合に、複数のセンサを使用している。
【0020】
特許文献8は、複数の蛍光色素でマーキングされた粒子の数を計算可能な装置について開示している。この装置は、単波長光源と、各蛍光のデータを回収可能な複数のセンサとを有する。
【0021】
特許文献9は、複数の異なるセンサを使用したFSC、SSCおよび蛍光測定を達成可能な装置を開示している。
特許文献10(Becton Dickinson and Co)は、流動中の細胞を数えるための複数の光
検出器に関連付けられた複数の蛍光の使用について記載している。各光検出器の利得は、検出された蛍光にそれを適合させるために調整され得る。
【0022】
公知の装置はいずれも、(特に循環する血液中の)生物細胞を識別し数えるために必要な電気光学および光学流体測定システムを組み込んでいる。既存の装置のサイズおよび複雑さは高価となり、その作動が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5,138,181号
【特許文献2】国際公開第2006/053960号
【特許文献3】米国特許出願出願公開第2006/0219873号
【特許文献4】欧州特許出願出願公開第1 710 558号
【特許文献5】欧州特許出願出願公開第0 533 333号
【特許文献6】国際公開第2008/019448号
【特許文献7】欧州特許出願出願公開第0 806 664号
【特許文献8】米国特許第4,745,285号
【特許文献9】米国特許第5,408,307号
【特許文献10】米国特許第6,897,954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の主な目的は、計量タンク中の流体の電気光学的測定による生物学的分析用の装置を提案することにより、そのような欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
かかる装置は、吸収および蛍光の測定にそれぞれ適した異なるスペクトルの領域で光を発するよう適合された少なくとも2つの光源と、各吸収および蛍光の測定に関連するイン
ピーダンスを測定する装置と、センサ、光学システム、およびフィルタ手段を備えた共有センサ装置とを備え、センサ、光学システム、およびフィルタ手段の3つの要素が吸収および蛍光のうちの少なくとも一つを測定可能とするために相互に関係し、蛍光および吸収の測定が連続して行われるようにセンサの内部利得が構成可能である。
【0026】
蛍光が光学システムによって測定され、センサが吸収を測定するために使用されるように、セットアップが構成される。このアプローチにより本発明の特徴である最適レベルの統合につながる。本発明の利点は、製造コストの低減および実施の容易さを含む。
【0027】
このような装置を用いて、各細胞を「二重測定」モードで、すなわち抵抗率の測定と、吸光度および/または蛍光の測定との2つを測定可能となる。抵抗率測定を、吸光度または蛍光の測定と関連付けることで、容積測定の情報を得ることが可能となる。
【0028】
見かけの吸光度は細胞の屈折/回折現象と大いに関連している。上記の測定により、細胞集団のセットに特異的な高感度な結果を得るのに十分な信頼できるデータが得られる。
本発明は、特定の機能を有する試薬を使用して予め化学的に調製された細胞懸濁液の読取りを可能にする、独創的で簡単な光学装置を提案する。これらの細胞懸濁液は、容積−吸収の読取り値および容積−蛍光の読取り値(すなわち同じセンサデバイスによって行なわれた2つのパラメータの電気光学的測定)を使用して連続して分析される。
【0029】
この二重測定はハードウェア資源を非常に簡素化する。本発明の装置は、例えば以下のものの分類および計数を可能にする:血小板、赤血球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、好塩基球、網状赤血球、赤芽球、網状血小板、未熟リンパ球、未熟単球、未熟顆粒球、活性化リンパ球および非分割好中球。
【0030】
本発明の1実施形態では、センサは、内部アバランシェ利得を抑制するよう適合されたバイアス回路に接続された、アバランシェフォトダイオードである。
本発明に新規な特定のバイアスに関する単純なアバランシェフォトダイオードの使用は、比較的低価格での本発明の単純かつ効率的な実施を可能にする。
【0031】
本発明の有利な実施形態では、抑制された内部利得は1であり、アバランシェフォトダイオードは単純なフォトダイオードとして作用する。
この実施形態は、アバランシェフォトダイオードの挙動を、吸収測定に対して従来使用されていた標準フォトダイオードの挙動に低減させる。本発明によって提供される利得抑制がない状態では、高い光強度での吸収測定に使用されれば、アバランシェフォトダイオードは直ちに飽和するだろう。
【0032】
本発明の1実施形態では、バイアス回路は、2つの異なる電圧(すなわち高圧と低圧)を提供し、かつフォトダイオードにバイアスをかけるために高圧または低圧を提供すべくデジタル制御される、2つの位置をとるスイッチ(以下、2位置スイッチと称する)、を備える。
【0033】
単純な切り替え制御により、本発明の上記実施形態は非常に丈夫な動作を提供する。ダイオードは、スイッチの位置の関数として、高圧と低圧で連続的にバイアスされる。これは内部利得およびしたがって受信機の感度を変更する。
【0034】
本発明の別の実施形態では、バイアス回路は、プログラム可能な電圧発生器、またはこの発生器によりアバランシェフォトダイオードに加えられるバイアス電圧を制御するデジタルまたはアナログ手段によって制御される電圧発生器を備える。
【0035】
この別の実施形態は単一の電圧発生器を使用することが可能である。
本発明の1つの特定の特徴によれば、2つの光源は、光センサの光軸と同一平面上の放射光軸を有する。
【0036】
吸収モードにおいて、光学的装置は3つの平面、つまり入射瞳の平面、細胞を通過する平面、および受け入れ瞳の平面を結合させる。したがって照明はニュートンの光である。ここで、光学装置は、平面、水およびガラス、測定チャンバの屈折表面により導入される幾何および色収差を補正すべく、三次収差で補正される。よって測定にとって重要なすべての光学経路は同一平面である。
【0037】
本発明の有利な特徴によれば、吸収波長の光を発生する光源の光軸は光センサの光軸と一直線上に並べられ、蛍光を励起させる光源の光軸はセンサの光軸および別の光源の光軸と垂直である。
【0038】
この特徴はセンサデバイスに優れた吸収および蛍光挙動を与える。吸収測定のためには、センサデバイスを光源に対面して位置させる。蛍光測定のためには、光源はセンサデバイスに垂直に配置し、放射光がより低い強度の蛍光の測定に干渉するのを防止する。
【0039】
本発明の別の特定の特徴によれば、蛍光に使用されるマーカはチアゾールオレンジであり、蛍光励起源は約470ナノメートル(nm)で放射しなければならず、センサデバイスのフィルタ手段は495nmでカットオフする色フィルタを備えなければならない。
【0040】
チアゾールオレンジの使用は、複数の細胞集団の識別に有利であることが知られている。本発明の文脈では、チアゾールオレンジの使用により、比較的低コストな色ガラスフィルタの使用が可能となる。そのような安価なフィルタは、特定の種類の帯域幅にのみ利用可能である。チアゾールオレンジは、488nmに次位(第2)に位置する最大励起以下で励起された時でも、いくらかの効果を有する。よって発明者は、チアゾールオレンジの470nm周囲の波長の励起と、比較的低価格で利用可能な色ガラスフィルタの使用とを組み合わせると、アバランシェフォトダイオードまたは高い内部利得のセンサを用いて、完全に適切な定量的蛍光測定(つまり高感度かつ特異的な測定)を行なうことが可能となることを見出した。この発見は、アバランシェダイオードを用いた吸収測定の実施をさらに可能にする本発明により、特定の方法で使用される。
【0041】
センサは、もたらされる測定の関数として可変な電子利得で、電子増幅ステージと有利に接続される。
電子増幅ステージの使用は、データを続いて処理するために利用可能なダイナミックレンジの使用を最大限にすることにより、光度の量化を改善する可能性を増大させる。
【0042】
本発明の1つの応用特徴によれば、センサの内部利得および電子利得は、好塩基球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、赤血球、血小板、赤芽球、赤血球前駆物質、網状赤血球、および網状血小板から選択された複数の細胞集団の吸収および蛍光測定の区別を可能にすべく設定可能である。
【0043】
この特徴は、計数される種々のタイプの細胞を測定するようデバイスを適合させるある程度の許容範囲を提供する。この許容範囲により、細胞の種類の関数としてセンサデバイスの感度およびデータ処理ダイナミックレンジの使用を変更することが可能となる。
【0044】
特に、センサの内部利得および電子利得は、センサデバイスを用いて、各分析サイクルの吸収および蛍光測定の区別を可能にすべく有利に設定可能である。
ここで、分析サイクルとは、サンプル中に存在する細胞のファミリーの分類および絶対
的計数のためのデバイスの各使用サイクルを意味する。
【0045】
これは、特定の試薬および他のパラメータ(例えば細胞が計量タンクに入る速度)で分析されるサンプルのインキュベーションに関するプロセスに相当する。したがって、ここでの文脈では、例えば5つの異なる分析サイクルを行なうことが可能である。LMNEサイクルは、リンパ球、単球、好中球および好酸球の正確な分類および計数を可能にする分析サイクルに相当する。GR/PLTサイクルは、赤血球と血小板の絶対計数を可能にする。BASOサイクルは、好塩基球の識別および計数を可能にする。RETICサイクルは、赤血球の前駆物質である網状赤血球の識別および計数を可能にする。ERBサイクルは、かかる網状赤血球の前駆物質、すなわち赤芽球の計数を可能にする。
【0046】
センサの内部利得および電子利得は、センサデバイスを用いた、少なくとも好塩基球および網状赤血球の吸収および蛍光測定の区別を可能すべく有利に設定可能である。
この特徴は、上記に言及した細胞のタイプの各々で観察される平均光度スペクトルを包含することが可能である。蛍光光度はRETICサイクル中に最小となる。したがって、センサの感度が最大感度でなければならない。対照的に、好塩基球は、吸収測定により、光度が最も高い構成であることが明らかになっている。したがって、BASOサイクル中はセンサの感度が最小感度でなければならない。これらの2つのタイプの極端な細胞の計数を保証することにより、センサの内部利得および電子利得の変更によるデバイスの他の細胞タイプ向けの調節が可能である。
【0047】
本発明のさらなる追加の特徴によれば、生化学的および形態学的データを得るために、2つの光源が同時にオンにされてもよい。
本発明の他の特徴および利点は、本発明の1つの非限定的な実施形態を示す、添付図面に関連して与えられた以下の説明から理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の装置の斜視図。
【図2】図1の装置の(XZ)における断面図。
【図3】図1の装置の(YZ)における断面図。
【図4】図1の装置の略平面図。
【図5】チアゾールオレンジの励起および蛍光スペクトル。
【図6】本発明の1実施形態におけるセンサに接続された電子制御回路の線図。
【図7】本発明の好ましい実施形態で使用される色ガラス光学フィルタの高域伝送。
【図8】装置を使用して得られ得る種々の結果。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の装置100の好ましい実施形態の斜視図である。この装置100は、4つの機能的アセンブリ:計量タンクをサポートするアセンブリ110、光源をサポートする2つのアセンブリ120および130、ならびに光センサをサポートするアセンブリ140から成る。図示した本発明の実施形態では、光源をサポートする2つのアセンブリ120および130は相互に垂直であり、2つのアセンブリのうちの1つが、センサを備えたアセンブリ140に対面している。
【0050】
図2は、測定平面と交差するXZ平面における装置100の断面図である。アセンブリ110は、計量タンク111と、フローサイトメトリーの法則に従って、分析される流体の流れ(フロー)を計量タンク111に生成すべく計量タンク111に流体を吐出するノズル112とを備えている。アセンブリ130は、計量タンクの適切な照明を提供する光源131および光学素子132を備えている。
【0051】
アセンブリ140は、センサ141と、センサ141による光の適切な受け取りのための光学素子142とを備えている。アセンブリ130および140の光軸はフローの方向に垂直である。
【0052】
図3は、測定平面と交差するYZ平面における装置100の断面図である。アセンブリ120は、光源121と、計量タンクの適切な照明のための光学素子122とを備えている。
【0053】
アセンブリ120の光軸も流体のフローの方向に垂直であることをここで再び指摘する。したがって、アセンブリ120、130および140の3つの光軸は同一平面内にあり、計量タンク111中の流体の流れはこの共通の平面に垂直である。
【0054】
図4は、計量タンク111が光源121,131およびセンサ141と共に表された装置100の略平面図である。
2つの光源121および131は異なる波長の光を放射し、2つのタイプの測定、すなわち吸収測定および蛍光測定に使用される。吸収測定は、細胞の存在(特に細胞の天然または人工シトクロムの存在)により引き起こされる回折、屈折/反射、および真の吸収効果の合計である見かけの吸収の測定である。
【0055】
見かけの吸収の大部分は細胞の屈折性/回折現象に関与する。大部分の細胞(特に顆粒細胞系列の細胞)の場合、高品質な形態測定分析に寄与するのは顆粒とそのサイズおよび数の正確な評価である。
【0056】
チアゾールオレンジの蛍光測定および吸収測定の本発明の非限定的な例を以下に説明する。
図5は、チアゾールオレンジの分光特性を表わす。最大吸収波長が約510nmであることに注意する。この波長は、約530nmに位置する再放射波長に近いが、それにもかかわらず主として約480nmの第2の最大値で主に光を放射する光源を使用することが好ましい。
【0057】
本発明の1実施形態では、光源121は、フローサイトメータの計量タンク111内を循環するチアゾールオレンジで標識された細胞を励起するのに使用される、20ミリワット(mW)の473nmレーザダイオードである。細胞の各々により放射された蛍光は、該細胞を構成する核酸の量に比例しているが、センサ141の光軸上に90°で収集される。波長を安定させるために、レーザダイオード121は、経時的な温度変化および発光出力変化を防ぐべく、電流調節される。
【0058】
レーザダイオード121により放射された光は、一方の軸に対して40゜および該第1の軸に垂直なもう一方の軸に対して10゜の中間高さ幅の角度で、非常に顕著に発散することがさらに知られている。
【0059】
また、レーザダイオード121により放射されるビームの上記の非常に顕著な発散を改善するには、特定の視準(コリメーション)光学素子が必要である。かかる目的には、成型された非球面レンズが低価格であるため、従来多く使用されている。放射されたレーザビームのすべてを集めるため、かかるレンズの開口数は通常少なくとも0.5である。この種のレンズの使用により、発散が低いコリメートビームを形成することが可能となる。一対のアナモルフィックプリズムにより、楕円のコリメートビームを円形にすることが可能である。この動作は、円形ビームを得るために長軸を圧縮し、短軸を伸張することからなる。レーザダイオード121の楕円形は問題とならないため、本発明の装置では長軸の圧縮は必ずしも必要ないことに留意する。これとは逆に、レーザダイオード121は、噴
射ノズル112の出口から200マイクロメートル(μm)のサイズが約20×60平方メートル(μm2)である楕円の捕獲ウィンドウ117にビームを適合させるのに好都合
である(図4参照)。
【0060】
第2の光源131は、約650nmで有利に光を放射する。本発明の1実施形態では、この光源は共振空洞発光ダイオード(RCLED)である。
本発明によれば、蛍光と吸収とを測定するためにセンサ141が使用される。センサ141は、蛍光と吸収に使用される光学素子142に結合されている。
【0061】
センサ141は、自身の利得を変更するよう適合された電子制御回路143に接続される。
ここで説明する本発明の実施形態では、センサ141は、フォトダイオード141が本発明の原理に従って作動するようにバイアスが制御回路143により変更される、アバランシェフォトダイオードである。
【0062】
本発明は、簡単なフォトダイオードとしてアバランシェフォトダイオードを構成すべく、アバランシェ利得を抑制する制御回路143を使用している。したがって、アバランシェフォトダイオードは切り替え可能な利得を有する。これはアバランシェダイオードの新規かつ以前には公表されていない使用態様である。
【0063】
本発明の利点は、血液成分を特徴付けし、かつ数えるために1つのセンサデバイスのみを使用することである。測定ごとに二つの検出チャネル(吸光度と蛍光)が使用されないため、コスト削減が得られる。
【0064】
図6は、フォトダイオード141を制御するための制御回路143の構造の機能ブロック図である。この回路143は、低圧と高圧を生成可能なプログラム可能な電圧源を備えている。
【0065】
フォトダイオード141(例えばHamamatsu S5343)の検出感度および利得パラメータを設定するために、回路143内の2つのデジタル制御が使用される。
機能ブロック201により表わされるように、アバランシェ利得Mは、2位置スイッチに適合するTTLS 1桁デジタル制御により制御される。内部利得とも呼ばれるこの利得は、受信機の感度、すなわち受信機が検出できる最小量の光子を決定する。
【0066】
TTLS=1の場合、例えば150ボルト(v)に等しいいわゆる高圧は、アバランシェモードにおける接合にバイアスをかけ、1よりも大きい内部利得M(例えばM=60)をセンサに与え、センサの感度はその場合最大感度であり、通常10ピコワット(pW)である。
【0067】
アバランシェモードでは、検出される1つまたは複数の蛍光のレベルに匹敵する利得を得るために、逆電圧が調節される。本発明の好ましい実施形態では、センサ141が作動するエンクロージャの温度変化を考慮するために、電圧はその公称値付近で調整される。この電圧調整は、25℃から40℃までの動作温度の所与の範囲にわたり、利得をその公称値、通常約60で安定させることを可能にする。
【0068】
TTLS=0の場合、例えば15ボルトのいわゆる低圧は、利得なし(M=1)でフォトダイオードモードにおける接合にバイアスをかけ、受信機の感度は約1ナノワットである。
【0069】
使用されるバイアス電圧は、使用されるダイオードの関数としてもちろん変更してもよ
い。現在の実施形態で使用されるダイオードのタイプの場合、電子雪崩効果が始まる30V以下の0でない電圧が、単一利得を提供するために選択され得る。これに対して、15V以下では接合キャパシタンスが迅速に増加するため、関係する周波数範囲での動作を得るために、この15Vという値より大幅に低くない電圧が選択されることが望ましい。
【0070】
通常約10−20Vの低圧として、空間電荷領域はPN接合内でさえ小さい。したがって、電子雪崩(アバランシェ)効果による増幅は実質的に抑制され、センサ141は簡単なフォトダイオードとして機能する。
【0071】
フォトダイオード接合のピコファラド(pF)の静電容量を十分な値に減少させる目的で0でない値にバイアス電圧を設定することは、センサ141に、その持続期間が通常10マイクロ秒(μs)である短い光のパルスの検出に適合する帯域幅を与える。しかしながら、この電圧はフォトダイオードでの内部増幅を防止するのに十分に低いままでなければならない。
【0072】
接合キャパシタンスの減少は、センサに、解析システムからの信号の分析に適合する最適帯域幅を与えるために必要である。これらの信号はランダムパルス列である。
受信機回路による時間的分離能の要求およびほとんど歪みのない分析信号の必要は、帯域幅FP>Fcoを課し、Fcoはパルスが有意に変形されない最小カットオフ周波数である
。実際、Fcoは例えば350キロヘルツ(kHz)に等しい。
【0073】
電子雪崩効果が抑制されるこの動作モードでは、センサ141は細胞の見かけ吸収を測定するために使用される。例えば、ヘモグロビンは赤血球の天然シトクロムである。エオシンは、例えば欧州特許第EP 0 430 750号に記載されている方法により白血球により固定され得る人工シトクロムである。
【0074】
本発明の異なる実施形態は、プログラム可能な電圧発生器か、またはそれ以外の制御可能な電圧発生器を使用することが可能である。アバランシェフォトダイオード141に加えられる逆電圧を、その内部利得およびしたがって受信機の感度を制御するデジタルまたはアナログ手段により制御することが可能である。
【0075】
そのバイアスモードがいかなるものであっても、フォトダイオードは光電流を電圧に変換するためにトランスインピーダンスアンプブロック202に結合される。
発明の有利な実施形態では、トランスインピーダンス利得は300キロオーム(kΩ)に等しい。十分な出力ダイナミックレンジを達成するため、出力電圧は±15Vである。特に、正確な吸収測定には広いダイナミックレンジが必要である。
【0076】
吸収測定は、連続成分Iからの光損失δIの観察にある。分析信号δI=σIであり、σは分析された粒子による吸収によって失われた光の分画である。受信機が光電気ノイズにより制限されると、平均平方ノイズ値はb=√2qIBに等しく、qは電子の電荷であり、Bは受信機回路の帯域幅である。
【0077】
信号対雑音比は以下の通りである。
【0078】
【数1】
【0079】
この式は、信号対雑音比が√Iと共に増加し、最も高い光束値を使用する必要があることを示している。それにもかかわらず、この光束は、方程式
【0080】
【数2】
【0081】
により定義された特定値
【0082】
【数3】
【0083】
以下であり、Rはトランスインピーダンス利得、ηは照明波長におけるセンサの量子収量であり、Vsは第1増幅器(アンプ)の飽和電圧である。例としてここで与える一般的な値は、Vs=12V、R=300キロオーム、η=650nmで0.6amps/ワット(A/W)であり、これにより
【0084】
【数4】
【0085】
=67マイクロワット(μW)が計算可能となる。基準δI/b=1により定義された検出限界により、検出できる光の分画σを決定することが可能となる:
【0086】
【数5】
【0087】
検出可能な最小有効吸収部分はこの場合、
【0088】
【数6】
【0089】
に等しい。
ここでaおよびbはそれぞれ測定窓の高さおよび幅であり、これは血小板等の小さな要素の検出に適合する。
【0090】
アバランシェモードにおいて、感度は最適感度であり、受信機回路の感度は、フォトダイオードの特性、特にM=60のアバランシェモードで得られる約10pWのフォトダイオードのノイズ等価電力(NEP)により与えられる。
【0091】
ブロック203は、第1ステージ202からの信号を下流回路の範囲内に条件付ける。ブロック203により電圧を、AD変換器またはプロセッサ回路の入力ダイナミックレンジに適合させることが可能となる。信号はアンプの利得の最適調節により条件付けられる。ここで、アンプは、閉ループ利得がG=(1+r/R)により与えられる非反転演算増幅器であり、rはフィードバック抵抗、Rは非反転入力と接地との間の分岐の等価抵抗である。利得Gは有利には比1:5で可変であり、光検出感度をさらに増加させることを可能にする。
【0092】
抵抗器Rはデジタル制御され、マイクロコントローラ(例えば図5に示された本発明の実施形態では既製のAD5290デジタルポテンシオメーターを備えたブロック205)による遠隔制御に好都合であることにここで注意する。この配置が回路の帯域幅を保存するため、この抵抗器Rの位置は重要である。
【0093】
ブロック204は制御回路143のためのフィルタかつ調整された電圧供給を有する。
ブロック206は制御線により送られる不要な信号のフィルタリングのためのデカップリングコンデンサを備える。
【0094】
ブロック207はI/Oライン電気インターフェースコネクタである。
利得値の以下の表は、血液に含まれる異なるタイプのアリコートの分析に使用される利得MおよびGの調整値を要約している:
【0095】
【表1】
【0096】
本発明の装置を用いて、および上記の集団をすべて得るべく特定の条件下で行なわれた分析サイクルおよび動作のシーケンスを下記に説明する。
一般的に言うと、蛍光測定の場合、レーザダイオード121がオンになった(点けられた)後、APD利得が「M=60」に変更される。光源131はオフにされる(消される)。吸収測定の場合、APD利得が「M=1」に切り換えられ、その後RCLEDがオフにされる(消される)。レーザダイオードがオフにされる(消される)。受信機に向かう蛍光を反射するようRCLEDの放射ファイバに二色フィルタの配置を想定することが有利である。
【0097】
患者の血液はETDAチューブにサンプリングされる。その後、この血液サンプルは予測される結果を得るために使用される試薬に従って様々に、複数のアリコートに分割される。
【0098】
アリコートLMNEは、本願出願人の欧州特許第1 239 283号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、赤血球の溶解を生じさせるように適合され、吸収とインピーダンス測定によるリンパ球、単球、好中球および好酸球の区別および計数を可能にする。ここで、15マイクロリットル(mL)の血液を、1.8ミリリットル(mL)の試薬と混合させる。フォトダイオードの利得Mはこの場合1である。これは、吸収のためのフォトダイオードの定量的性質を取っている。演算増幅器の電子利得は、有利には、好塩基球に使用される電子利得よりわずかに高く、例えば3である。図8aにおけるように、種々の細胞集団が示され、図8aには任意の未熟顆粒の位置も示されている。
【0099】
GR/PLTアリコートは、本願出願人の欧州特許第0 856 735号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、吸収とインピーダンスの測定による赤血球と血小板のサインに適合している。8μLの血液を2.8mLの試薬と混合させる。その後、フォトダイオードの利得Mは1に設定され、再びその吸収測定の定量的性質を取る準備ができる。演算増幅器の電子利得Gは、有利には、白血球に使用される電子利得より高く、例えば5である。図8bにおけるように、赤血球と血小板の数が表わされてもよい。
【0100】
BASOアリコートは、欧州特許第1 039 297号に記載された試薬が導入されたアリコートである。この試薬は、好塩基球以外の白血球の容積測定のサイズを縮小するため、好塩基球を区別および数えることが可能となっており、吸収とインピーダンスを測定することによる好塩基性細胞のサインに適合している。15μLの血液を1.8mLの試薬と混合させる。フォトダイオードの利得Mは再び1である。これは、吸収測定のためのフォトダイオードの定量的性質を取る。例えば、演算増幅器の電子利得Gは、有利には、1よりも大きい低い値、例えば2である。図8cにおけるように、好塩基球が表わされてもよい。
【0101】
RETアリコートは、欧州特許第0 856 735号に記載された試薬が、蛍光測定により網状赤血球をサインするために導入されたアリコートである。2.4mLの血液が2.5mLの試薬と混合される。その後、フォトダイオードの利得Mは、フォトダイオードのアバランシェ利得に合わせて最大限にされ、ここでは60に等しい。再び、これによってフォトダイオードは蛍光測定にとって十分な感度となる。予測される光量が低いため、演算増幅器の電子利得Gは、有利にはここで最大限にされ、例えばここでは5に等しくされる。例えば図8dにおけるように、網状赤血球が表わされる。この測定が血液分析のために実際に加味される価値を有するため、網状赤血球を測定するこの可能性は本発明の1つの利点である。この測定は、本発明により、より低コストで高い信頼性でアクセス可能である。さらに、網状赤血球が若いほど、RNAの量はよりより大きくなる。チアゾー
ルオレンジは核酸塩基と化学量的に統計学的様式で反応するため、網状赤血球が若いほど、蛍光強度は高くなる。したがって、ここで述べた本発明の装置および関連する方法は、比較的低価格で網状赤血球を分類および定量し、かつこれらの細胞の成熟に関する指標を与える、簡単な方法を提供する。
【0102】
ERBアリコートは、蛍光の測定により赤芽球(網状赤血球前駆物質)をサインするために、欧州特許第1 239 283号に記載された試薬が導入されたアリコートである。分析されるサンプルは、30mLの血液を2mLの試薬と混合することにより調製される。その後、フォトダイオードの利得Mは、フォトダイオードのアバランシェ利得に合わせて最大限にされ、ここでは60に等しい。これによってフォトダイオードは蛍光測定にとって十分な感度となる。例えば、演算増幅器の電子利得Gは1である。この値は、データの後の処理で提示されるダイナミックレンジでの蛍光の正確な定量化を可能にする。図8eにおけるように、赤芽球が表わされてもよい。
【0103】
適切な試薬を用いて得られたアリコートの各々に対し、本発明が可能にする二重測定(蛍光とインピーダンス、または吸光度とインピーダンス)が達成される。これは、特異的かつ高感度な様式で、上述した細胞集団を分類および数えることを可能にする。上述した細胞集団とは、すなわち赤血球、網状赤血球、赤芽球、血小板、網状血小板、および白血球であり、白血球に関しては、本発明により識別可能な複数のカテゴリ、例えばリンパ球、単球、好中球、好酸球および好塩基球がある。したがって、本発明によれば、10個の細胞集団が容易に識別可能であり、上述の5つのアリコートを使用して定量可能である。上記の調製した混合物の各々に対するインピーダンス測定による蛍光と吸収の測定により、これらの集団を識別することが可能となる。本発明では、白血球の前駆物質である単芽球およびリンパ芽球や、未熟顆粒を含む、他の細胞タイプを数えることが可能である。
【0104】
フォトダイオードから成る適切なセンサを越えて、受光システムは、色消しダブレットから成る。この開口は、網状赤血球に含まれていたもののような核酸に結合したチアゾールオレンジ由来の蛍光を検出可能にするのに十分である。
【0105】
色消し波長は、対象波長に集中している。1つの特定の実施形態では、細胞の吸収は650nmで測定される。チアゾールオレンジを使用する場合、最大蛍光は530nmの波長で放射される。530nmおよび650nmの波長のために最適化されたダブレットは、これらの2つの波長での細胞のフローの最適な視覚的焦点合わせを可能にする。
【0106】
蛍光波長と吸収波長での光量を正確に検出できるようにするため、光学システム142は、530nm(蛍光波長)および650nm(吸収波長)で色収差のために補正される。
【0107】
吸収フィルタ144(例えばSchott GG495フィルタ)は、その厚さが約3mmであるが、光ビームが平行となるセットアップの部分で受光チューブに設置される。このフィルタ144は、レーザビームから直角に回折されたレーザ光線を吸収する。
【0108】
図7は、フィルタ144の高域通過の伝送特性を表わす。488nmの代わりに470nm付近でチアゾールオレンジの第2の吸収極大の波長を放射することにより、480nm付近の光の通過を許容し始めるこの種の簡単で比較的安価なフィルタ144を使用することが可能であることは明らかである。フィルタ144は実際、簡単な色ガラスであり、有効な色ガラスは光スペクトルにおいて稀である。488nmで本発明を実施することはもちろん可能であるが、(少なくとも現在)これは費用の増大につながる。
【0109】
したがって、488nm付近での放射のためには、センサデバイスの方向への大きな回
折角を回避するため、別のタイプのガラス(例、GG510またはOG515ガラス)の使用が望ましい。本発明の装置における470nm付近でのチアゾールオレンジの励起によって、たとえそれが比較的安価な色ガラスを使用しても488nmにおけるよりも低いがより有効な発光効率が得られることが分かり、このことは非常に有利である。
【0110】
この特徴は、本発明の装置に蛍光測定を設置するコストの低減をさらに可能にする。このフィルタ144は、フレネル反射を縮小するために、広帯域(400nmと700nmの間の)反射防止処理を有している。
【0111】
レーザダイオード121からの473nm光線は、フィルタにすべて吸収される。500nmと600nmの間の発光帯の蛍光と、光源131からの650nm光線だけが送られる。
【0112】
ここで、光学装置は、特に測定チャンバ111の平面(水およびグラス)の屈折表面に導入される幾何学的および色収差を修正するために、三次収差に関して有利に補正される。
【0113】
最終分析では、示された装置は、センサ141の瞳孔上への細胞のフローのイメージングを可能にする。この平面における光学解像度は以下の式により与えられる。
R=λ/(NAe+NAr)
式中、λは照明波長、NAeおよびNArはそれぞれ照明ビームと受信ビームの開口数である。
【0114】
画像面で達成される測定は、純粋に光度測定であるが、センサ141の感度(その異種性により区別される2個の細胞を識別するその能力)は、パラメータR、特に信号対雑音比の計測に強く関連付けられる。
【0115】
0.65の波長での最適な白血球の区別のためには、パラメータRは1μm以下である必要がある。これはNAe+NAr>0.65の開口数拘束を課す。本発明の1つの実施形態では、放射と受信の開口は等しく、有利にはNAe=NAr>0.325である。有利な実施形態では、この開口は0.35に固定される。
【0116】
最後に、650nmで光を吸収する好酸球中に存在する酵素であるペルオキシダーゼの吸収スペクトルは、好中球との分離の改善に寄与する。この意味で、本発明は、過去に開発された装置に対して、好中球/好酸球の分離を大いに改善する。
【0117】
明らかに、装置は、同様の結果を得るために、他の試薬および比較的異なるプロセスを用いて使用されてもよい。Tリンパ球、Bリンパ球またはNKリンパ球以外の細胞タイプを識別および数えるために、他の試薬が開発されていてもよい。その場合、かかる試薬は、抗体に結合された化学蛍光分子または粒子から成る免疫プローブを含み得る。試薬の調製は、上述したように識別をする2つのパラメータを可能にするものでなければならないことに注意する。
【0118】
最後に、本発明の原理に従えば、種々の実施形態が達成され得る。詳細には、生化学的および形態学的特性を同時に決定するのと同時に、2つの光源が同時にオンにされてもよい。本発明により達成される測定の連続的性質にもかかわらず、それは確かに経済的かつ医学的利点を有するが、これまでは吸収装置のみで可能であり、よってかかる測定を介してアクセス可能な集団の決定のみが可能であった、比較的低コストの装置における蛍光測定を許容する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量タンク(111)中の流体の電気光学的測定による生物学的解析用の装置(100)であって、該装置(100)は、吸収および蛍光の測定にそれぞれに適した異なるスペクトル領域の光を発するよう適合された少なくとも2つの光源(121,131)と、吸収および蛍光の各々の測定に関連するインピーダンスを測定する装置と、センサ(141)、光学システム(142)およびフィルタ手段(144)を備えた共有センサデバイス(140)とを備え、吸収および蛍光のうちの少なくとも一方の測定が可能となるようセンサ(141)、光学システム(142)およびフィルタ手段(144)の3つの要素が相互に関係し、蛍光および吸収の測定が連続して実行可能となるようセンサ(141)の内部利得が設定可能である、装置(100)。
【請求項2】
前記センサ(141)が、内部アバランシェ利得を抑制するよう適合されたバイアス回路(143)に接続されたアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
抑制された内部利得が1であり、アバランシェフォトダイオード(141)が簡単なフォトダイオードとして作用することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
バイアス回路(143)は、2つの異なる電圧である高圧と低圧を提供し、かつフォトダイオード(141)にバイアスをかけるべく高圧または低圧を提供するよう電気的に制御された2位置スイッチを備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バイアス回路(143)は、電圧発生器によってアバランシェフォトダイオードに加えられるバイアス電圧を制御するデジタルまたはアナログ手段によって制御されるプログラム可能な電圧発生器を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項6】
2つの光源(121,131)が光センサ(141)の光軸と同一平面内にある放射光軸を有することを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
吸収波長の光を放射する光源(131)の光軸が、光センサ(141)の光軸と一直線上に並び、蛍光(121)を励起する光源の光軸はセンサ(141)および別の光源(131)の光軸に垂直であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
もたらされる測定の関数として可変な電子利得で、電子増幅ステージ(203)にセンサ(141)が接続されることを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、少なくとも好塩基球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、赤血球、血小板、赤芽球、網状赤血球、および網状血小板から選択された複数の細胞集団の吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、センサデバイスを用いた、サンプル中に存在する細胞のファミリーの分類および絶対計数を可能にする各分析サイクルの吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、センサデバイスを用いた、少なくとも好塩基球と網状赤血球の分析サイクルの吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能
であることを特徴とすることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
使用される蛍光マーカがチアゾールオレンジであり、蛍光励起光源が約470nmで光を放射し、センサデバイスのフィルタ手段は495nm付近に位置するカットオフ波長の色ガラスタイプのフィルタを有することを特徴とする請求項1−11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
生化学的および形態測定データを得るべく2つの光源が同時にオンにされ得ることを特徴とする請求項1−12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
生体サンプル中に存在する細胞集団を分類および数えるための、請求項1−13のいずれか一項に記載の装置の使用方法。
【請求項1】
計量タンク(111)中の流体の電気光学的測定による生物学的解析用の装置(100)であって、該装置(100)は、吸収および蛍光の測定にそれぞれに適した異なるスペクトル領域の光を発するよう適合された少なくとも2つの光源(121,131)と、吸収および蛍光の各々の測定に関連するインピーダンスを測定する装置と、センサ(141)、光学システム(142)およびフィルタ手段(144)を備えた共有センサデバイス(140)とを備え、吸収および蛍光のうちの少なくとも一方の測定が可能となるようセンサ(141)、光学システム(142)およびフィルタ手段(144)の3つの要素が相互に関係し、蛍光および吸収の測定が連続して実行可能となるようセンサ(141)の内部利得が設定可能である、装置(100)。
【請求項2】
前記センサ(141)が、内部アバランシェ利得を抑制するよう適合されたバイアス回路(143)に接続されたアバランシェフォトダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
抑制された内部利得が1であり、アバランシェフォトダイオード(141)が簡単なフォトダイオードとして作用することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
バイアス回路(143)は、2つの異なる電圧である高圧と低圧を提供し、かつフォトダイオード(141)にバイアスをかけるべく高圧または低圧を提供するよう電気的に制御された2位置スイッチを備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バイアス回路(143)は、電圧発生器によってアバランシェフォトダイオードに加えられるバイアス電圧を制御するデジタルまたはアナログ手段によって制御されるプログラム可能な電圧発生器を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項6】
2つの光源(121,131)が光センサ(141)の光軸と同一平面内にある放射光軸を有することを特徴とする請求項1−5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
吸収波長の光を放射する光源(131)の光軸が、光センサ(141)の光軸と一直線上に並び、蛍光(121)を励起する光源の光軸はセンサ(141)および別の光源(131)の光軸に垂直であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
もたらされる測定の関数として可変な電子利得で、電子増幅ステージ(203)にセンサ(141)が接続されることを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、少なくとも好塩基球、リンパ球、単球、好中球、好酸球、赤血球、血小板、赤芽球、網状赤血球、および網状血小板から選択された複数の細胞集団の吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、センサデバイスを用いた、サンプル中に存在する細胞のファミリーの分類および絶対計数を可能にする各分析サイクルの吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
センサ(141)の内部利得および電子利得が、センサデバイスを用いた、少なくとも好塩基球と網状赤血球の分析サイクルの吸収および蛍光測定を区別可能にすべく設定可能
であることを特徴とすることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
使用される蛍光マーカがチアゾールオレンジであり、蛍光励起光源が約470nmで光を放射し、センサデバイスのフィルタ手段は495nm付近に位置するカットオフ波長の色ガラスタイプのフィルタを有することを特徴とする請求項1−11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
生化学的および形態測定データを得るべく2つの光源が同時にオンにされ得ることを特徴とする請求項1−12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
生体サンプル中に存在する細胞集団を分類および数えるための、請求項1−13のいずれか一項に記載の装置の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−525981(P2011−525981A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515561(P2011−515561)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051216
【国際公開番号】WO2010/004173
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508000537)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051216
【国際公開番号】WO2010/004173
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508000537)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【Fターム(参考)】
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