説明

微細構造を有する成形体を製造するための装置および方法

【課題】欠陥を回避しつつ、最高品質の微細構造面を形成できる、すなわち、最小のガス封入で、比較的低い技術的努力によって微細構造面を形成できる方法および装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの微細構造モールド12が内部に設けられる成形キャビティ14を備える容器10内へ成形材料を流入させることによって行なわれる。更に、成形材料がモールド12の構造中に完全に入り込むまで容器10の遠心分離が行なわれる。その後、成形材料の硬化が行なわれて、微細構造を有する成形体が形成された後、モールド12および容器10から成形体が除去される。容器10が設けられ、該容器内にモールド12が挿入され、容器10を遠心分離機に接続できる。容器10が成形材料を受けるための成形キャビティを備え、成形キャビティ14が少なくとも1つの微細構造モールド12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造を有する成形体を製造するための方法、および、微細構造を有する成形体を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細構造は様々な用途で見出すことができる。
1つの適用分野はマイクロ流体工学である。この分野では、特にチップラボラトリおよびいわゆるバイオディスクに関してこの微細構造が使用される。マイクロチャネルを形成するため、例えば、キャビティを備える微細構造面が使用される。
チャネルを最終的に閉じるため、この微細構造面は、必ずしも構造化される必要がない更なる表面に接合される。
【0003】
微細構造を形成するため、様々な方法が公知である。
製造の1つの可能性は成形技術によって与えられる。
この場合、ネガ形状の所望の構造を備えるモールドによって成形材料が構造化される。
モールド内またはモールド上に液体材料が供給されて、該液体材料が硬化された後、該液体材料が再び除去される。
高い表面品質の構造体を製造する際には困難に直面する。
これは、微細構造のサイズを考慮すると、ガス封入に関して非常に不安があるためである。
ガス封入は、主に、構造体のキャビティ内および成形材料自体において発生する。
【0004】
所望の構造に関連するネガ形状は、例えば、マイクロ技術構造化の更なる方法によって形成される。
この場合、ウエハがフォトレジストでコーティングされ、フォトレジストが露光されて現像され、最終的に、ウエハがエッチングによって構造化される。
この方法に特に適する基体はシリコンである。
このようにして形成されるネガモールドを用いると、更なる微細構造体を成形することができる。
【0005】
スパチュラによって微細構造モールドに対して成形塊を加えることは公知である。
材料は、硬化された後にモールドから除去される。
この方法は、印加される圧力が比較的小さく、困難を伴わなければ封入ガスを追い出すことができないという欠陥を有する。
この方法は、あまり複雑ではなく、比較的少数の部品も考慮され得る。ガス封入の問題を更に扱うため、その後、真空中で脱気が行なわれる。
この方法ステップにもかかわらず、構造体の表面品質および成形は改善される傾向がある。
また、微細構造面を備えるキャビティ内へ成形材料が本質的にスクリューによって供給される射出成形方法が公知である。
スクリューの圧力により、低い粘度を有する溶融塊がキャビティ内へ圧入される。
この場合、微視的配置を成す空気封入に定期的に出くわす。
これは、形成される構造体に対して有害な影響を与える。
したがって、複雑な脱気が必要とされる。
これにもかかわらず、表面の品質は、とにかく、ガス封入によって低下される。
【0006】
微細構造を形成するための更なる方法は、いわゆるホットスタンピングである。
ホットスタンピングでは、高分子ブランクがスタンプモールド内へ挿入される。
モールドが加熱され、また、適切な温度に達した際に、スタンプによって微細構造がスタンピングされる。
高アスペクト比の場合には、この方法を用いても、真空中で方法を実行することが不可欠である。
この方法でも、成形材料中の空気封入が未解決のままである。
【0007】
また、遠心分離によって高分子を脱気することがDE3444996A1から基本的に公知である。
この文献には、遠心トレイから成る成形トレイ内でプラスチック部品を製造することが開示されている。
モールドがトレイ底部に挿入される。
トレイに遠心力が作用された後にトレイ内に高分子プラスチック材料が供給される。
【0008】
この手順は、専らトレイの底部に対して垂直な容器底部の中央にだけ遠心力が加えられるため、出現する層が均一ではないという欠陥を有する。
したがって、材料がエッジ領域へと移動され、それにより、モールドの表面全体にわたって均一な層厚が得られない。
そのため、この方法は、一方では、気泡が無い成形体を形成することができるが、他方で、微細構造を形成するには許容範囲が大きすぎるため、適さない。
【0009】
また、この文献からは、プレートを高分子上に位置決めして高分子に作用する力を大きくすることが公知である。
これは、プレートが排除方向と対向して位置され、それにより、材料から追い出される封入ガスが最終的に高分子から出る際に妨げられるという欠陥を有する。
【0010】
更に、1つの方法が、微細構造の形成について記載するEP1512993A1から公知である。
この方法によれば、高分子は、回転ディスクに対して加えられ、微細構造を備えるウエハで浮き蓋されて覆われる。
この方法は、均一な層厚の形成を確保する。高分子を分配するために遠心力がエッジ領域の方向に作用するため、材料分離の原理にしたがって、ガスが外側へ運ばれない。この方法は、気泡が無い成形体を製造できないという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上を考慮して、前述した欠陥を回避しつつ、最高品質の微細構造面を形成できる、すなわち、最小のガス封入で、比較的低い技術的努力によって微細構造面を形成できる方法および装置が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、成形材料から微細構造を有する成形体を製造するための方法は、少なくとも1つの微細構造モールドが内部に設けられる成形キャビティを備える容器内へ成形材料を流入させ、成形材料がモールドの構造中に完全に入り込むまで容器に遠心力を作用させ、微細構造を有する成形体へと成形材料を硬化させ、モールドおよび容器から成形体を除去することを含む。
【0013】
本発明は、一方で材料の加圧を可能にし、他方で材料の脱気を可能にする大きな力を遠心分離機によって加えることができるという所見に基づいている。
【0014】
本発明の方法は、以下に述べられるステップを備える。
方法は、微細構造モールドを備える容器内へ成形材料を充填することを含む。
また、容器の遠心分離が行なわれる。
成形材料は、容器の底部から始まり、容器の開口へと向かう方向に少しずつ圧縮される。
このようにして、所定のモールドが比較的高い密度の成形材料で満たされる。
成形体の輪郭は、マイクロメートルの範囲でも一定の厚さを確保する容器の形状によって与えられる。
十分大きい力によって成形材料が成形キャビティ内へ圧入されるため、力の明確な作用を無視することができる。
また、成形体を得るために成形材料が硬化される。
更に、本発明の方法は、微細構造を有する製造された成形体をモールドおよび容器から除去することを含む。
【0015】
この方法は、遠心分離によって成形材料が高圧でモールドの微細構造中へ押し込まれるという利点を有する。
また、成形材料は、高圧によってキャビティのエッジへと完全に圧入される。
これは、材料分離の密度依存性に起因して、キャビティ内に存在するガスが追い出されるからである。
これは、高い表面品質を有する最適に成形された微細構造を与える。
【0016】
したがって、成形材料の脱気が遠心分離中に行なわれる。
ガスは、密度に依存する材料分離という意味で押し出される。
ガスは、構造体のキャビティから追い出されるだけでなく、更に、材料自体からも追い出される。
ガスは、最初は、遠心分離機の近傍の容器壁へと移動され、その後、この容器壁に沿って成形領域全体の外へと移動される。
成形材料が容器内すなわち成形キャビティ内へ供給されることは不可欠である。
これは、この方法によってのみ一定の層厚の正確な成形が保証されるからである。
【0017】
この方法は、所望の微細構造の明らかにより高速な製造を行なう。
これは、今まで、一般的な真空製造およびそれに関連する脱気が非常に時間のかかるものだったからである。
更に、本発明の方法では、真空装置を省くことができるため、技術的努力が著しく小さい。
【0018】
本発明の更なる態様によれば、遠心分離中に成形材料が容器内へ供給される。
これは、成形材料自体の脱気および微細構造のキャビティの脱気を改善する。
遠心分離中に、ガスは完全に容器から抜け出し、容器は成形材料で完全に満たされる。
【0019】
硬化のために、成形材料に熱を供給することもまた有益である。
これは、一般に、硬化時間を短くする。成形材料の材料特性に応じて、熱の供給が特別な意味を有する。
材料が所定の温度基準値でのみ硬化する場合、材料は、低粘度状態で供給されて、時間とは無関係に処理された後、所望の時点で容器を加熱することによって硬化される。
容器は、基準温度を僅かに下回るまで遠心分離中に加熱される。
この場合、硬化を開始させるためには、高速で行なうことができるほんの僅かな温度ステップだけで済む。
【0020】
これに加えてあるいはこれに代えて、放射線、特にUV放射線を印加することによっても材料を硬化させることができる。
この場合、放射線は、放射線透過容器壁を介して成形材料中へ導入される。
この手順は、成形材料が所望の時点で硬化されるという利点を有する。
【0021】
更に、遠心分離中に硬化が行なわれることが有益である。
これにより、成形材料は、ガスの再封入を回避する圧縮下で硬化するとともに、コンパクトな構造を確保する。
したがって、これは、成形材料から形成される成形体上の微細構造の高品質に寄与する。
【0022】
成形キャビティ内では、特に、その外面に第1および第2の表面を備える成形体が製造される。
2つの表面は互いに離間して配置される。第1の表面は、遠心力によって成形材料がモールド中に圧入されるように構造化される。第2の表面に対しては遠心力によってスタンプ要素が押し付けられる。
それにより、スタンプ要素の表面は、成形キャビティの側面の表面の一部を形成する。
スタンプを成形材料に対して押し付けることにより、第2の表面の成形を行なうことができる。
また、スタンプ要素の質量に起因して、更なる圧力が成形材料に対して及ぼされる。
【0023】
更なる有利な態様によれば、成形体に圧入される構造化された表面をスタンプ要素が備えているため、第2の表面の微細構造化がスタンプ要素によってもたらされる。
これにより、成形体の複合表面微細構造化が1つのプロセスステップで達成される。
【0024】
微細構造を備える硬化された成形体は、モールドまたは容器のそれぞれから除去された後、仕上げ手順あるいは更なる処理へとそれぞれ移行されうる。
これにより、要件に応じて成形体を適合させることができる。
【0025】
本発明の一態様によれば、成形材料によって微細構造を有する成形体を製造するための装置であって、微細構造面が成形材料のためのモールドとしての役割を果たす装置は、モールドが挿入される容器を備え、容器が遠心分離機に接続されるように適合されており、遠心分離機内で容器が回転軸を中心に回転でき、容器は成形材料を受けるための成形キャビティを備え、成形キャビティは少なくとも1つの微細構造モールドを備える。
【0026】
微細構造を有する成形体を製造するための装置は、成形材料を構造化する役目を果たす微細構造面を備えるモールドを備えている。
本発明によれば、成形キャビティを有する容器が設けられ、容器は遠心分離機に接続されるように適合されている。
成形キャビティ内には少なくとも1つの微細構造モールドが設けられる。
【0027】
本発明の更なる態様によれば、容器は上側部品と下側部品とを備える。
これは、上側部品と下側部品を別個に製造した後に互いに組み付けることができるため、製造方法を容易にする。
上側部品と下側部品は、組み付け時にそれらがキャビティを形成するように成形される。
また、上側部品と下側部品との間にはシールが設けられ、該シールは、成形材料の望ましくない漏れを回避する。
【0028】
本発明の更なる態様によれば、上側部品および下側部品を備える容器は、下側部品が遠心分離機の中心から上側部品よりも更に離間されるように、遠心分離機に固定される。
【0029】
特に、回転軸に至るまでの微細構造モールドの垂直方向の距離が底部から上端へ向けて次第に減少されるように、モールドが動作中に配置されることが有益である。
【0030】
これは、下側から、したがって、回転軸から最も離れたエッジから上端へ向かって、成形材料がそれぞれ成形キャビティ内で充填されあるいは圧縮されるという利点を有する。
これにより、モールドのキャビティが完全に満たされ、封入されているガスが底部から上端へと追い出される。
この実施例において、微細構造モールドは、排気開口が印加力の方向とほぼ反対に向けられるように方向付けられる。
これにより、高分子の特に効率的な脱気が可能になる。
これは、特に微細構造の製造において非常に重要である。
【0031】
モールドが上側部品および下側部品に対して平行に配置されることが特に有益である。
【0032】
下側部品には、微細構造モールドのためのモールド受け入れ手段が設けられることが好ましく、このモールド受け入れ手段は凹部として形成される。
モールドは微細構造面を備える。
このように、モールドは、成形キャビティの側面の一部を形成する。
遠心分離機の回転時、モールドは、遠心力によって下側部品に対して押し付けられ、それにより、ロックされる。
したがって、モールドの更なる機械的なロックは不要である。
モールド受け入れ手段は、異なるモールドを容器内に挿入することができ、それにより、柔軟性の度合いが高くなるという利点を有する。
製造されるべき成形体の体積に対する影響は、モールドの厚さおよび凹部の深さによってもたらされ得る。
成形体の体積に関しては、より詳細には、容器の上側部品の形状も役割を果たす。
平坦な上側部品の場合には、モールドの厚さ及び所定サイズのモールドのみを伴う凹部の深さのパラメータによって体積を制御することができる。
【0033】
特に、下側部品自体に微細構造面が設けられる。
これは、成形キャビティの側面である下側部品の一部に形成される。
これは、硬化された成形材料を容易に分離できるという利点を有する。
【0034】
また、上側部品をスタンプ要素として形成することもでき、また、上側部品がスタンプ要素のための受け入れ手段を備えることもできる。
この場合、スタンプ要素は、遠心力によって下側部品へ向かう方向に移動できるように支持される。
これは、流入される成形材料の形成を可能にする。
また、更なる移動可能なスタンプ塊は、成形材料に対して加えられる圧力を増幅する。
【0035】
スタンプ要素は、成形材料に対するその接触面に微細構造を更に備えることができる。
スタンプ要素が成形材料に対して加える圧力によって、成形体への微細構造の刻設が行なわれる。
下側部品での第1のモールド中への成形材料の圧入とスタンプ要素による微細構造のスタンピングとの組み合わせによって、成形体の複合表面構造化が1つの処理ステップで可能になることが有益である。
【0036】
スタンプ要素のための受け入れ手段には解放可能なロック手段が設けられることが好ましい。
このロック手段により、スタンプ要素は、成形キャビティが未だ完全に成形材料で満たされなければ成形キャビティを塞がないことが確実になる。
ロック手段は、所定の時点で遠心分離中に解放することができる。
【0037】
特に、上側部品は、成形キャビティの充填および成形キャビティからのガスの排出を可能にする材料受け入れ手段を備える。
これは、遠心分離中に成形材料を成形キャビティ内へと流入させることができるという利点を有する。
回転軸の方向に配置される開口、容器の斜めの方向に起因して、成形材料は、しばらくして、遠心力により成形キャビティ内へと押し込まれる。
【0038】
実施例の更なる利点によれば、成形キャビティの容積は変えられるように適合されている。
更なる受け入れ手段が下側部品の凹部内へ挿入される。
これは、ネジによって下側部品と協働接続する。
ネジを回すことによって受け入れ手段が持ち上げられ、そのようにして、受け入れ手段は、凹部によって形成される成形キャビティの容積を変える。
【0039】
容器は加熱されるように適合されていてもよい。
容器の加熱は、硬化処理が加速されるという利点を有する。これにより、特定の硬化温度を有するそれぞれの成形材料を使用すると、温度が硬化のための閾値を超えて上昇されるまで問題なく処理を進めることができる。
【0040】
また、処理中は高温も可能である。
これは、成形材料が、加熱状態で成形されて冷却により硬化される溶融塊である場合に有益である。
【0041】
更なる有利な実施例では、容器は放射線透過材料から形成される。
これは、放射線によって、特にUV放射線によって硬化され得る成形材料を使用できるという利点を有する。
このため、装置は、放射体、特にUV放射体も含む。
【0042】
また、モールドは、加熱されるように構成されるのが好ましい。
これは、例えば、熱可塑性材料COC−シクロ−オレフィン−コポリマーまたはPS−ポリスチレンの成形を可能にする。
この場合、特定の利点は、優れた生体適合性および血液同調性によって特徴付けられる熱可塑性材料COC−シクロ−オレフィン−コポリマーの使用である。
【0043】
モールドを微細構造シリコンウエハとして形成することが特に有益である。
シリコンには、標準的な方法によって、高い表面品質を有する微細構造を形成することができる。
処理の標準化によって、これは比較的費用効率が高くなる。
無論、モールドの品質が成形体の品質にも影響を与える。
【0044】
本発明の更なる有利な実施例において、成形材料は、高分子として形成され、特に2成分PDMSとして形成される。
高分子は、光学または流体工学などの多くの分野で用途を見出し、良好に処理されるべく適合される。
PDMSの特定の利点は広範囲に及ぶ生体適合性である。また、PDMSは、不活性であり、シール特性を処理する。
【0045】
更に、容器は、容器支持体によって遠心分離機のロータに接続されてもよい。
これは、容器支持体を用途の要件に適合させることができ、また、容器支持体が容器と遠心分離機との取り外し可能な接続を可能にするという利点を有する。
任意の適合する容器を容器支持体内へ挿入してそこから取り出すことができる。
【0046】
また、容器が容器支持体に対して取り外し可能に接続されることが有益である。
これにより、例えばモールドを交換するためあるいは製造された構造体を遠心分離機から除去するために、容器を分離することができる。
これは、取り扱いをかなり容易にする。
【0047】
特に、容器支持体を予めテンションをかけて固定し、それにより、遠心力が容器支持体の形状に影響を及ぼさないようにすることが有益である。
プレテンションにより、とにかく、低重量および安定性を有する解決法が得られる。
【0048】
有利な方法において、容器受け入れ手段は、容器をその下側で重力に対して本質的に受け入れ及び/又は取り囲んでもよい。
これは、一方では、カップと容器支持体とを取り外し可能に接続し、他方では、材料を節約し、それにより、不必要な場所で重量を節約するという利点を有する。
【0049】
更に、容器は、遠心分離機の回転軸に対して斜めに配置されてもよい。
これは、一方では、成形キャビティ内での成形塊の分配が傾斜によって最適化されるため、他方では、脱気のための最適な支持位置を設定できるため、有益である。
【0050】
本発明の更なる有利な特徴および適用可能性は、図面に示される実施例に関連する以下の説明から理解できる。
【0051】
以下、図面に示される実施例を参照して本発明について説明する。
明細書、特許請求の範囲、要約書、および、図面では、以下の符号の説明で用いられる用語および関連する参照符号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る容器および容器支持体を有する遠心分離機の断面図を示している。
【図2】図1の容器の断面図を示している。
【図3】容器の分解図を示している。
【図4】容器を伴う容器支持体の3D図を示している。
【図5】支持プレートの断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は遠心分離機20の断面図を示しており、該遠心分離機のロータには容器支持体30が固定される。
容器支持体30は2つのU形状受け入れポケット38を備えており、受け入れポケット38内にはそれぞれ容器10が挿入される。
【0054】
図2にも拡大スケールで示される容器10は、上側部品16と下側部品18とを備える。
容器10は、成形キャビティ14と、上側部品16と下側部品18との間に位置されるロープシール22とを更に備える。
下側部品18の凹部内には微細構造モールド12が挿入される。
上側部品16および下側部品18はネジによって共に保持される。
上側部品16は成形材料のための受け入れ手段24を備える。
【0055】
図1から更に分かるように、容器10の下側部品18は、遠心分離機20の回転軸から上側部品16よりも更に離間される。
また、容器の開口に隣接する微細構造モールド12の上側領域は、垂直下方に位置され且つ容器の底部に隣接して配置される領域よりも回転軸(D)に近い。
【0056】
容器支持体30が図4に更に詳しく描かれている。テンションバー36が強調されており、それにより、2つの圧力ピース34を接続している。
圧力ピースは容器支持体38の外面と係合する。テンションバー36はキャリアプレート32を押し付けるのに役立つ。
この構造により、遠心分離中に容器支持体30が変形しないことが確実になる。
【0057】
遠心分離機20がその回転軸を中心に回転すると、遠心力により、モールド12としての役目を果たす微細構造ウエハが下側部品18に対して押し付けられる。
これにより、更なる機械的なロック手段を排除できる。
また、材料受け入れ手段24へ供給されるPDMSは、成形キャビティ14内に流れ込み、そこで遠心力によりウエハ12の微細構造中へと圧入される。
PDMSの全てが少しずつ成形キャビティ14へと押し込まれる。
PDMSは、密度に依存する材料分離によって脱気され、また、空気も成形キャビティ14の全てから放出される。
ガスが無い完全充填成形キャビティ14が得られるため、PDMSが硬化する。
このため、容器10は、遠心分離中に約80℃を超えるまで加熱される。
硬化後、約1.5mmの厚さを有するポリマーディスクおよび微細構造面を得ることができる。
【0058】
図2Aは容器10の断面図を示している。
この図では、成形材料が流入する成形キャビティ14が特に良好に見える。
微細構造モールド14は下側部品18のモールド受け入れ手段28へ挿入され、その場合、モールド受け入れ手段28は凹部として形成される。
この目的のために設けられる溝26内にロープシール22が圧入される。
それにより、成形材料は容器10から抜け出すことができない。
保持材料のための受け入れ手段24は上側部品16の凹部によって形成される。
容器10の2つの部品16、17はネジによって互いに接続される。
形成されるべき層の厚さは、凹部の深さと、微細構造モールド12の高さとによって決まる。
それにより、成形材料は、材料受け入れ手段24から成形キャビティ14内へと流れ込むことができる。
これは、遠心分離中における成形材料の供給を可能にする。
【0059】
図2Bは改良された容器11の断面図を示しており、この容器では、材料受け入れ手段25を有する上側部品17がスタンプ要素13を備える。
スタンプ要素13は、スタンプ要素13のためのスタンプ受け入れ手段29内に受けられる。
スタンプ要素13は、遠心力によって下側部品18の方向へ移動されるように支持される。
これは、供給される成形材料の形成を可能にする。
スタンプ要素13は、成形材料に対するその接触面に微細構造を有する。
スタンプ要素13が成形材料に対して加える圧力により、成形体への微細構造の成形がなされる。
スタンプ要素13のための受け入れ手段には解放可能なロック手段(図示せず)が設けられる。
該ロック手段により、スタンプ要素13は、成形キャビティ14が未だ完全に保持材料で満たされなければ成形キャビティを塞がないことが確実になる。
ロック手段は、決定された時点で遠心分離中に解放されてもよい。
【0060】
図3には、容器10の分解図が示されている。
微細構造モールド12の受け入れ手段は円形凹部によって形成される。
この場合、モールド12は4インチシリコンウエハとして形成される。
ロープシール22は、モールド受け入れ手段28をかなりの程度まで取り囲む。
ロープシール22は、材料受け入れ手段24の位置に類似して、この場所で材料受け入れ手段のためのシールを形成する。
それにより、成形材料は、材料受け入れ手段から成形キャビティ14へと入り込むことができる。
モールド受け入れ手段28は下側部品18の円形凹部として形成される。
【0061】
図3に更に示されるように、容器10の2つの部品は、全部で6個のネジによって互いに接続される。
これらのネジは、上側部品16に挿通されて、下側部品18に挿入されたブラインドリベットナットと共にねじ込まれる。
その後、固定されたネジは、その頭部が上側部品16および下側部品18の皿穴に埋められる。
この接続により、上側部品16と下側部品18との間の相対的な動きがなくなるとともに、ロープシール22が効率良く圧縮される。
【0062】
製造されたディスクは、約100mmの直径を有しており、PDMSから成る。
構造体は、例えば、バイオディスクとしてあるいはチップラボラトリの部品としての適用を見出してもよい。
微細構造の標準的な4インチシリコンウエハはネガモールドとしての機能を果たす。
【0063】
構造体を取り去るため、ネジが再び外される。
その結果、上側部品16および下側部品18を分離することができるとともに、形成された微細構造を有するディスクをウエハから解放することができる。
【0064】
図4は、2つの挿入された容器10を伴う容器支持体30を3次元図で示している。
図3から分かるように、容器支持体30は、中央領域40を備えるとともに、エッジ領域42を両端にそれぞれ備える。
この場合、中央領域40は回転軸に対して垂直に位置される。
エッジ領域42は中央領域40に対して45°の角度で配置される。
また、エッジ領域42は、容器10のための受け入れ手段として形成される。
容器支持体30は支持プレート32を備えており、支持プレート32からU形状受け入れポケット38が形成される。
【0065】
更に、圧力ピース34およびテンションバー36を備える補強構造を図4から見てとることができる。
この図では、主に、受け入れポケット38に隣接して配置される対を成す対向する圧力ピース34が見える。
両端に雌ネジを備えるテンションバー36がそれぞれネジによって圧力ピース34に接続される。
これらはエッジ領域42の安定化をもたらす。
この構造がなければ、その両端が斜めに形成されるキャリアプレート42は、容器10の比較的大きな質量に起因して生じる力によって曲がる。
【0066】
図5はキャリアプレート32を断面で示している。
U形状受け入れポケット38を特に良好に認識できる。
また、受け入れポケット38の斜めの方向も良く見える。
【0067】
遠心分離により微細構造を有する成形ポリマー体の保護は、技術的に簡単であり、効果的であり、高品質なこの構造体の保護のゆるぎない可能性である。
【符号の説明】
【0068】
10 容器
11 容器
12 微細構造モールド
13 スタンプ
14 成形キャビティ
16 上側部品
17 上側部品
18 下側部品
20 遠心分離機
22 シール/ロープシール
24 材料受け入れ手段
25 材料受け入れ手段
26 シール用の溝
28 モールド受け入れ手段
29 スタンプ受け入れ手段
30 容器支持体
32 支持プレート
34 圧力ピース
36 テンションバー
38 容器受け入れ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料から微細構造を有する成形体を製造するための方法であって、
少なくとも1つの微細構造モールド(12)が内部に設けられる成形キャビティ(14)を備える容器(10、11)内へ成形材料を流入させ、
成形材料がモールド12の構造中に完全に入り込むまで容器(10、11)に遠心力を作用させ、
微細構造を有する成形体へと成形材料を硬化させ、
モールド(12)および容器(10、11)から成形体を除去する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
遠心分離中に成形材料が流入されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
遠心分離中に成形材料の脱気が行なわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
熱を加えることによって硬化が達成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
放射線、特にUV放射線を入力することによって硬化が達成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
遠心分離中に硬化が行なわれることを特徴とする請求項4または請求項5記載の方法。
【請求項7】
互いに離間して配置される第1および第2の表面を備え且つ少なくとも1つの微細構造面が形成される成形体を製造し、第1の表面では、遠心力によって成形材料が第1のモールドに圧入され、第2の表面では、遠心力によってスタンプ要素(13)が成形材料の層に対して押し付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第2の表面側では、微細構造面を備えるスタンプ要素(13)によって表面がスタンピングされて、表面の微細構造化が達成されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
製造された成形体が仕上げ手順あるいは更なる処理手順へと進められることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
成形材料によって微細構造を有する成形体を製造するための装置であって、微細構造面が成形材料のためのモールド(12)としての役割を果たす装置において、モールド(12)が挿入される容器(10、11)が設けられ、容器(10、11)が遠心分離機に接続されるように適合されており、遠心分離機内で容器10が回転軸(D)を中心に回転でき、容器(10、11)が成形材料を受けるための成形キャビティ(14)を備え、成形キャビティ(14)が少なくとも1つの微細構造モールド(12)を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
回転軸(D)に至るまでの微細構造モールド(12)の距離が垂直上方へ向かって次第に減少されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
容器(10、11)は、成形キャビティ(14)を備えるキャビティを形成するように互いに接続される上側部品(16、17)および下側部品(18)を備えることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】
上側部品(16、17)と下側部品(18)との間には、成形材料の望ましくない漏れを回避するシール(22)が設けられることを特徴とする請求項10または請求項11記載の装置。
【請求項14】
下側部品(18)は、遠心分離機(20)の回転軸から上側部品(16)よりも更に離間して位置されることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
容器(10)の下側部品(18)は、成形キャビティ(14)の表面を形成する微細構造モールド(12)のためのモールド受け入れ手段(28)を含むことを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
成形キャビティ(14)自体の表面を形成する下側部品(18)の部分は微細構造面を備えることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
上側部品(16)は、スタンプ要素(13)と、該スタンプ要素のための受け入れ手段(29)とを備え、スタンプ要素(13)は、遠心力によって基本的に下側部品(18)の方向に移動できるように埋め込まれることを特徴とする請求項10乃至請求項15のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
スタンプ要素(13)が微細構造面を備えることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項19】
スタンプ要素(13)の受け入れ手段(29)は、スタンプ要素(13)の所定の解放可能なロック手段を備えることを特徴とする請求項16または請求項17記載の装置。
【請求項20】
上側部品(16、17)が材料受け入れ手段(24)を備えることを特徴とする請求項10乃至請求項18のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
容器(10、11)がその受け入れ容積を変えることができることを特徴とする請求項10乃至請求項19のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
モールド(12)が加熱されるように適合されていることを特徴とする請求項10乃至請求項21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
モールド(12)が微細構造シリコンウエハとして形成されることを特徴とする請求項10乃至請求項21のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
容器(10、11)が加熱されるように適合されていることを特徴とする請求項10乃至請求項22のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
容器(10、11)は、放射線透過材料、特にUV透過材料から形成されることを特徴とする請求項10乃至請求項23のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
放射体、特にUV放射体を備えることを特徴とする請求項10乃至請求項24のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
成形材料が高分子、特に2成分PDMSであることを特徴とする請求項10乃至請求項25のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
容器(10、11)は、キャリア支持体(30)を介して遠心分離機(20)のロータに接続されることを特徴とする請求項10乃至請求項26のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
容器(10、11)が容器支持体(30)に対して取り外し可能に接続されることを特徴とする請求項26および請求項27のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
支持体(30)は、支持プレート(32)から形成されるとともに、そのねじれが防止されるように予めテンションがかけられることを特徴とする請求項27記載の装置。
【請求項31】
支持体(30)が容器受け入れ手段(38)を備え、それにより、容器受け入れ手段(38)が容器(10、11)を受け入れることを特徴とする請求項27乃至請求項29のいずれかに記載の装置。
【請求項32】
容器受け入れ手段(36)が回転軸に対して斜めに配置されることを特徴とする請求項27乃至請求項30のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−158889(P2010−158889A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−284116(P2009−284116)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(508291836)アンドレアス ヘティック ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (9)
【Fターム(参考)】