説明

微細流路構造体およびその製造方法

【課題】3次元の微細流路の形成が容易で、流路の必要な箇所に触媒を担持させることができる微細流路構造体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】この微細流路構造体1は、ターゲット基板2に、第1および第2のパターン層3A,3Bを積層状態で接合し、各パターン層3A,3Bに形成された開口が連通して3次元の流路を構成し、各パターン層3A,3Bの上面に触媒担持層4を形成し、流路に露出した触媒担持層4の部分に触媒5を担持させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細流路構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロチャンネル装置として、マイクロチャンネルに触媒を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このマイクロチャンネル装置は、シート、条片またはブロックの構成部材を積層し、各構成部材は、拡散接合、貼着、ろう付け、溶接によって接合される。マイクロチャンネル装置に形成されたマイクロチャンネルの反応室の壁に多孔質触媒を被覆法により固着しており、その多孔質触媒は、例えば、第1多孔質層を被覆し、その上に活性金属又は金属酸化物触媒を被覆して形成される。
【0004】
マイクロチャンネルの高さ及び幅は、好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下とされている。シートは、好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、ある場合には50〜500μmの厚さをのものを用い、条片は、5mm未満、好ましくは2mm未満、更に好ましくは1mm未満の厚さのものを用いている。
【0005】
【特許文献1】特表2006−511345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、3次元の微細流路の形成が容易で、流路の必要な箇所に触媒を担持させることができる微細流路構造体の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、3次元の微細流路を有し、流路の必要な箇所に触媒を担持させた微細流路構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の微細流路構造体の製造方法、および微細流路構造体を提供する。
【0009】
[1]開口を有し、表面に触媒担持層が形成された複数の薄板部材を準備する準備工程と、準備された前記複数の薄板部材の面を清浄化し、前記複数の薄板部材の前記面同士を直接接触させることにより、前記複数の薄板部材を接合して積層し、前記複数の薄板部材の積層により前記開口が連通して流路を形成する接合工程と、前記流路に露出する前記触媒担持層に触媒を担持させる触媒担持工程とを含むことを特徴とする微細流路構造体の製造方法。
【0010】
[2]前記準備工程は、表面に触媒担持層が形成された前記複数の薄板部材をドナー基板上に形成し、前記接合工程は、前記ドナー基板とターゲット基板との接離動作を繰り返すことにより、前記複数の薄板部材を前記ドナー基板から前記ターゲット基板上に順次転写し、前記ターゲット基板上に前記複数の薄板部材を積層状態で接合させることを特徴とする前記[1]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0011】
[3]前記準備工程は、前記ドナー基板上に薄板部材用素材を形成する薄板部材用素材形成工程と、前記薄板部材用素材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程と、前記薄板部材用素材をパターニングし、前記開口および前記薄板部材の輪郭に対応したパターンを有する前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程とを含むことを特徴とする前記[2]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0012】
[4]前記準備工程は、前記ドナー基板上に薄板部材用素材を形成する薄板部材用素材形成工程と、前記薄板部材用素材をパターニングし、前記開口および前記薄板部材の輪郭に対応したパターンを有する前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程と、前記複数の薄板部材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程とを含むことを特徴とする前記[2]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0013】
[5]前記準備工程は、導電性を有する前記ドナー基板上に電鋳法により金属からなる前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程と、前記複数の薄板部材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程とを含むことを特徴とする前記[2]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0014】
[6]前記触媒担持層形成工程は、前記流路の途中に設けられた反応部の側面を有する前記薄板部材の表面、および前記反応部の底面を有する前記薄板部材の表面に前記触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程を含むことを特徴とする前記[4]又は[5]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0015】
[7]前記触媒担持層形成工程は、前記流路の途中に設けられた反応部の側面を有する前記薄板部材の前記側面およびその周辺、および前記反応部の底面を有する前記薄板部材の前記底面およびその周辺に前記触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程を含むことを特徴とする前記[4]又は[5]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0016】
[8]前記薄膜部材形成工程は、前記複数の薄板部材を電鋳法で第1の金属により形成し、
前記触媒担持層形成工程は、前記第1の金属の表面に第2の金属による金属膜を形成し、陽極酸化法により前記金属膜に前記触媒担持層を形成することを備えたことを特徴とする前記[6]又は[7]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0017】
[9]前記第1の金属は、ニッケルまたはニッケル合金であり、前記第2の金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする前記[8]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0018】
[10]前記触媒担持層形成工程は、陽極酸化法により複数の細孔を有する前記触媒担持層を形成することを特徴とする前記[1]に記載の微細流路構造体の製造方法。
【0019】
[11]積層状態で接合された複数の薄板部材であって、前記複数の薄板部材の全部または2以上の薄板部材に開口が形成され、前記薄板部材間の前記開口が連通して3次元の流路を構成する複数の薄板部材と、前記流路の途中に設けられた反応部の壁面に形成された触媒担持層と、前記流路に露出する前記触媒担持層に担持された触媒とを備えたことを特徴とする微細流路構造体。
【0020】
[12]さらに、前記複数の薄板部材に接合され、前記薄板部材よりも厚さの厚い厚板部材を備えたことを特徴とする前記[11]に記載の微細流路構造体。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る微細流路構造体の製造方法によれば、3次元の微細流路の形成が容易となる。
【0022】
請求項2に係る微細流路構造体の製造方法によれば、接合工程が容易となる。
【0023】
請求項3に係る微細流路構造体の製造方法によれば、薄板部材の形成が容易となる。
【0024】
請求項4に係る微細流路構造体の製造方法によれば、パターニング前に触媒担持層を形成した場合と比較して流路に露出する触媒担持層の面積を増やすことができる。
【0025】
請求項5に係る微細流路構造体の製造方法によれば、陽極酸化法により触媒担持層を容易に形成することができる。
【0026】
請求項6に係る微細流路構造体の製造方法によれば、流路の必要な箇所に触媒を担持させることができる。
【0027】
請求項7に係る微細流路構造体の製造方法によれば、流路の必要な箇所に触媒を担持させることができる。
【0028】
請求項8に係る微細流路構造体の製造方法によれば、触媒担持層に適した第2の金属を選択することができる。
【0029】
請求項9に係る微細流路構造体の製造方法によれば、一方の接合面であるニッケルまたはニッケル合金と他方の接合面であるアルミニウムあるいはアルミニウム合金とを強固に接合することができる。
【0030】
請求項10に係る微細流路構造体の製造方法によれば、簡易に触媒担持層を形成することができる。
【0031】
請求項11に係る微細流路構造体によれば、3次元の微細流路を有し、流路の必要な箇所に触媒を担持させることができる。
【0032】
請求項12に係る微細流路構造体によれば、ターゲット基板を構造体の構成材料に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は分解斜視図である。なお、図1(b)のA−A線、A−A線は、図1(a)のA−A線に対応する断面位置を示す。
【0034】
この微細流路構造体1は、ターゲット基板(厚板部材)2と、ターゲット基板2に接合された第1のパターン層(薄板部材)3Aと、第1のパターン層3Aに接合された第2のパターン層(薄板部材)3Bとを有し、各パターン層3A,3Bに形成された開口が連通して3次元の流路を構成している。ここで、「3次元の流路」とは、入口から出口に至る個個々の流路が3次元であることを意味する。
【0035】
第1および第2のパターン層3A,3Bは、ターゲット基板2よりも薄い厚さを有する。第1および第2のパターン層3A,3Bは、例えば、5〜100μmの厚さを有する。ターゲット基板2は、例えば、1〜5mmの厚さを有する。
【0036】
なお、微細流路構造体1を構成するパターン層の数は、2つに限定されず、3つ以上でもよい。また、第1および第2のパターン層3A,3Bは、それぞれ同一パターンを有する複数層から構成してもよい。さらに、パターン層のみから微細流路構造体1を構成してもよい。この場合、第1のパターン層3Aとターゲット基板2との間に、開口を有していないパターン層を配置する。
【0037】
(第2のパターン層)
第2のパターン層3Bは、第1の原料液Lを導入する第1の入口30aと、第2の原料液Lを導入する第2の入口30bと、第1の原料液Lと第2の原料液Lとの反応により得られた反応液Mを排出する出口31とを有する。第1および第2の入口30a,30b、および出口31は、円形の貫通孔によって形成されている。なお、その貫通孔の形状は、円形に限定されず、矩形等でもよい。
【0038】
(第1のパターン層)
第1のパターン層3Aは、第2のパターン層3Bの第1および第2の入口30a,30b、および出口31にそれぞれ連通する貫通孔32a,32b,32cと、入口30a,30bから貫通孔32a,32bを介してそれぞれ導入された第1および第2の原料液L,Lを更に前方へ導入する第1および第2の導入路33a,33bと、第1および第2の導入路33a,33bを経て導入された第1および第2の原料液L,Lを反応させる反応部34とを有する。貫通孔32a〜32c、導入路33a,33b、および反応部34は、略Y字状の開口パターンによって形成されている。なお、反応部34の開口パターンの形状は、S字状等でもよい。
【0039】
(流路)
第1および第2の入口30a,30b、貫通孔32a〜32c、第1および第2の導入路33a,33b、反応部34、および出口31の開口は、3次元の流路を構成している。流路の高さは、第1および第2のパターン層3A,3Bと同一である。流路の幅は、10〜500μm、望ましくは50〜200μmである。
【0040】
図2(a)は、図1(a)におけるA−A線断面図、図2(b)は、図2(a)のB部拡大図、図2(c)は、図2(a)のC部拡大図である。
【0041】
第1および第2のパターン層3A,3Bの材料として、Al,Ni、Cu等の金属や、セラミックス、シリコン、誘電体等の非金属等を用いることができる。本実施の形態では、Al膜13を用い、そのAl膜13の上面には、図2に示すように、例えば陽極酸化法により触媒担持層4を形成している。触媒担持層4は、図2(b)に示すように、接合面に垂直な方向に複数の細孔4aが形成されており、その細孔4aには、図2(c)に示すように、触媒5が担持されている。触媒5が担持される領域は、流路(ここでは反応部34)の底面に露出する触媒担持層4の部分のみである。パターン層3A,3Bの材料として、陽極酸化が可能な材料が好ましい。このような材料として、アルミニウム、シリコン、チタン等を挙げることができる。
【0042】
触媒担持層4の細孔4aは、例えば、10〜100nmの径を有する。触媒5には、例えば、細孔4aよりも細径の直径10〜100nmの白金微粒子、パラジウム微粒子等を用いることができる。
【0043】
(第1の実施の形態の製造方法)
次に、第1の実施の形態に係る微細流路構造体の製造方法の一例を図3〜図5を参照して説明する。図3(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図、図4は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。図5(a)〜(f)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【0044】
(1)パターン層の形成
まず、図3(a)に示すように、ドナー基板11上に離型層12を形成し、離型層12の上に薄板部材用素材としてAl膜13を着膜する。
【0045】
ドナー基板11には、Siウェハ、石英基板、ガラス基板等を用いることができる。本実施の形態では、Siウェハを用いる。
【0046】
離型層12は、例えば、ポリイミド、フッ化ポリイミド、酸化シリコン等の公知の材料を用いることができる。本実施の形態では、ポリイミドを用いる。なお、ドナー基板の熱酸化処理を行って形成される熱酸化膜を用いてもよい。離型層12のドナー基板11上への形成は、スパッタリング法、分子線ビームエピタキシャル法、化学気相堆積法、真空蒸着法、スピン塗布法等の一般的な薄膜形成方法を用いることができる。
【0047】
Al膜13の着膜方法としては、例えば、電子ビーム加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の真空蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。本実施の形態では、スパッタリング法によりAl膜13を5μm着膜する。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、陽極酸化法によりAl膜13を0.5μm酸化させる。すなわち、電解液中においてAl膜13を陽極で電解して酸化させる。陽極酸化によって得られたアルミナ(Al)からなる触媒担持層(陽極酸化膜)4は、厚さ方向に多数の細孔4aが形成され、この細孔4aによって触媒5を担持することができる。なお、給電点は、パターン層3A,3Bの端のどこでも良い。電解液は、硫酸、リン酸、シュウ酸等を用いることができる。
【0049】
次に、図3(c)に示すように、Al膜13および触媒担持層4をパターニングし、図4に示すように、輪郭と開口がパターニングされた第1および第2のパターン層3A,3Bが形成される。パターニングとしては、例えば、リソグラフィー法、集束イオンビーム(FIB)法、電子ビーム直接描画法等を用いることができるが、高い平面形状精度が得られ、量産性が高い点で、リソグラフィー法が好ましい。本実施の形態では、リソグラフィー法によりアルミナによる触媒担持層4およびAl膜13をエッチング除去する。エッチングには、化学薬品を用いて被加工物を溶かし込むウエットエッチングや、イオンを利用して被加工物を気化して取り除くドライエッチング等を用いることができる。本実施の形態では、ドライエッチングを用いる。
【0050】
パターン層3A,3Bに形成された流路のうち、導入路33a,33b、反応部34の幅は、例えば、100μmであり、入口30a,30b、出口31、貫通孔32a〜32cの径は、例えば、150μmである。
【0051】
(2)接合工程
第1および第2のパターン層3A,3Bが形成されたドナー基板11を図示しない真空槽内の下部ステージ(図示せず)上に配置し、ターゲット基板2を上部ステージ(図示せず)上に配置する。また、下部ステージは、x方向、y方向、θ(z軸周り)方向に移動可能となっており、上部ステージは、z方向に移動可能となっている。次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。
【0052】
次に、図5(a)に示すように、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板11の第1のパターン層3A上に位置決めし、ドナー基板11の表面、およびターゲット基板2の表面をFAB(Fast Atom Beam)処理により清浄化する。FAB処理とは、例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスを高電圧で加速して接合面に照射し、接合面の酸化膜、不純物等を除去する処理をいう。本実施の形態では、不活性ガスとしてアルゴンを用いる。
【0053】
次に、図5(b)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2と第1のパターン層3Aとを荷重を加えて圧接して常温接合する。次に、図5(c)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第1のパターン層3Aをターゲット基板2に転写させる。常温接合とは、良好な表面粗さを有し、かつ上記FABによって清浄化された接合面同士を常温雰囲気で接触させ、原子同士を直接結合させる接合方法をいい、表面活性化接合とも言う。常温接合(表面活性化接合)の他に、清浄化された接合面同士をパターン層に拡散を生じさせない程度の温度(例えば、100℃程度)で加熱して接合してもよい。
【0054】
次に、図5(d)に示すように、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板11上の第2のパターン層3B上に位置決めし、ターゲット基板2の表面、すなわち第1のパターン層3Aの裏面(ドナー基板11側に接触していた面)、およびドナー基板11の表面、すなわち第2のパターン層3Bの表面にArビームを照射して清浄化する。
【0055】
次に、図5(e)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2上の第1のパターン層3Aを第2のパターン層3Bに圧接して常温接合する。
【0056】
次に、図5(f)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第2のパターン層3Bをターゲット基板2に転写させる。同図に示すように、上部ステージ上に、ターゲット基板2、第1のパターン層3Aおよび第2のパターン層3Bからなる微細流路構造体1が製造される。
【0057】
(3)触媒の充填
第1および第2の入口30a,30bから第1および第2の導入路33a,33b、および反応部34に触媒5を含む溶液を流す。触媒担持層4の細孔4aに触媒5が充填される。本実施の形態では、第1および第2の導入路33a,33b、および反応部34の底面に触媒5が担持される。
【0058】
(第1の実施の形態の動作)
次に、第1の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、第1および第2の導入路33a,33bを層流で流れて合流し、反応部34を層流で移動する。第1および第2の原料液L,Lが反応部34を流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。この反応は、例えば、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、出口31から排出される。
【0059】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図6(a)は斜視図、図6(b)は分解斜視図である。なお、図6(b)のD−D線、D−D線、D−D線、D−D線は、図6(a)のD−D線に対応する断面位置を示す。
【0060】
第1の実施の形態では、全てのパターン層の表面に触媒担持層4を形成したが、本実施の形態は、一部のパターン層に触媒担持層4を形成したものである。
【0061】
本実施の形態の微細流路構造体1は、ターゲット基板(厚肉部材)2と、ターゲット基板2に接合された第1のパターン層(薄板部材)3Aと、第1のパターン層3Aに接合された第2のパターン層(薄板部材)3Bと、第2のパターン層3Bに接合された第3のパターン層(薄板部材)3Cと、第3のパターン層3Cに接合された第4のパターン層(薄板部材)3Dとを有し、各パターン層3A〜3Dに形成された開口が連通して3次元の流路を構成している。
【0062】
(第4のパターン層)
第4のパターン層3Dは、第1の実施の形態の第2のパターン層3Bと同様に、第1の原料液Lを導入する第1の入口30aと、第2の原料液Lを導入する第2の入口30bと、第1の原料液Lと第2の原料液Lとの反応により得られた反応液Mを排出する出口31とを有する。但し、出口31は、第1の実施の形態とは異なる位置に形成されている。
【0063】
(第3のパターン層)
第3のパターン層3Cは、第4のパターン層3Dの第1および第2の入口30a,30b、および出口31にそれぞれ連通する貫通孔32a,32b,32dと、入口30a,30bから貫通孔32a,32bを介してそれぞれ導入された第1および第2の原料液L,Lを更に前方へ導入する第1および第2の導入路33a,33bと、第1および第2の導入路33a,33bを経て導入された第1および第2の原料液L,Lを混合させる混合部35と、混合部35の排出側の端部に形成された貫通孔32cとを有する。貫通孔32a,32b,32d、導入路33a,33b、および混合部35は、略Y字状の開口パターンによって形成されている。なお、混合部35の開口パターンの形状は、S字状等でもよい。
【0064】
(第2のパターン層)
第2のパターン層3Bは、第3のパターン層3Cの貫通孔32c、32dにそれぞれ連通する貫通孔32e,32fを有する。
【0065】
(第1のパターン層)
第1のパターン層3Aは、第2のパターン層3Bの貫通孔32e,32fにそれぞれ連通する32g,32hと、第2のパターン層3Bの貫通孔32eを介して流入する混合液を反応させ、得られた反応液Mを貫通孔32hから下方へ排出する反応部34とを有する。
【0066】
図7(a)は、図6(a)におけるD−D線断面図、図7(b)は、図7(a)のE部拡大図、図7(c)は、図7(a)のF部拡大図である。
【0067】
第1乃至第4のパターン層3A〜3Dは、Al膜13からなり、第1および第2のパターン層3A,3BのAl膜13の上面に触媒担持層4を形成している。触媒5は、流路(ここでは反応部34)の底面および側面に露出する触媒担持層4の部分のみに担持されている。
【0068】
(第2の実施の形態の製造方法)
次に、第2の実施の形態に係る微細流路構造体1の製造方法の一例を図8〜図11を参照して説明する。図8(a)、(b)、図10は、パターン層の製造工程を示す断面図、図9は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。図11(a)〜(d)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【0069】
(1)パターン層の形成
まず、図8(a)に示すように、Siウェハからなるドナー基板11上に、ポリイミドからなる離型層12を形成し、離型層12の上にAl膜13を着膜する。
【0070】
次に、図8(b)に示すように、リソグラフィー法によりAl膜13をパターニングして図9に示す第1乃至第4のパターン層3A〜3Dを形成する。
【0071】
図9に示すように、第1のパターン層3Aと第2のパターン層3Bとの間は、給電線36Aによって電気的に接続され、第1のパターン層3Aから給電線36Bがドナー基板11の端部に延在している。パターン層3A〜3Dに形成された流路のうち、導入路33a,33b、反応部34、混合部35の幅は、例えば、100μmであり、入口30a,30b、出口31、貫通孔32a〜32hの径は、例えば、150μmである。
【0072】
次に、図10に示すように、陽極酸化法によりAl膜13を0.5μm酸化させて細孔4aを有する触媒担持層4を形成する。このとき、給電線36A,36Bを介して第1および第2のパターン層3A,3Bに電圧が印加され、第1および第2のパターン層3A,3Bの表面のみが酸化される。
【0073】
(2)接合工程
次に、第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが形成されたドナー基板11を図示しない真空槽内の下部ステージ上に配置し、ターゲット基板2を上部ステージ上に配置する。次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。
【0074】
次に、図11(a)に示すように、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板11の第1のパターン層3A上に位置決めし、ドナー基板11の表面、およびターゲット基板2の表面をArガスを照射して清浄化する。
【0075】
次に、図11(b)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2と第1のパターン層3Aとを圧接して常温接合する。次に、図11(c)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第1のパターン層3Aをターゲット基板2に転写させる。
【0076】
以後、前述したのと同様に、ドナー基板11とターゲット基板2との接離動作を繰り返すことにより、図11(d)に示すように、ターゲット基板2上に第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが積層状態で接合されて微細流路構造体1が製造される。
【0077】
第1のパターン層3Aがターゲット基板2側に転写する際、給電線36A,36Bは第1のパターン層3Aから分離してドナー基板11上に残る。また、第2のパターン層3Bをターゲット基板2側に転写する際、給電線36Aは第2のパターン層3Bから分離してドナー基板11上に残る。なお、触媒担持層4を形成した後、給電線36A,36Bをフォトリソ法,レーザカッターなどにより除去してもよい。
【0078】
(3)触媒の充填
第1および第2の入口30a,30bから第1および第2の導入路33a,33b、混合部35、および反応部34に触媒5を含む溶液を流す。触媒担持層4の細孔4aに触媒5が充填される。本実施の形態では、反応部34の側面および底面に触媒5が担持される。
【0079】
(第2の実施の形態の動作)
次に、第2の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、第1および第2の導入路33a,33bを層流で流れて合流し、混合部35を層流で移動し、貫通孔32c、32e、32gを経由して反応部34を層流で移動する。第1および第2の原料液L,Lが反応部34を流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。この反応は、例えば、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、貫通孔32h、32f、32dを経由して出口31から排出される。
【0080】
[第3の実施の形態]
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図12(a)は、図6(a)のD−D線に対応する断面図、図12(b)は、図12(a)のG部拡大図、図12(c)は、図12(a)のH部拡大図である。
【0081】
本実施の形態は、電鋳法によって第1乃至第4のパターン層3A〜3Dを形成したものであり、第1乃至第4のパターン層3A〜3Dは、ニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16からなり、全てのパターン層3A〜3DのNi膜16の表面にAl層17で形成した後、Al層17に触媒担持層4を形成している。触媒5は、流路(ここでは反応部34および混合部35)の底面に露出する触媒担持層4の部分のみに担持されている。触媒担持層4の材料として、陽極酸化が可能な材料が好ましく、このような材料として、アルミニウムの他に、シリコン、チタン等を挙げることができる。
【0082】
(第3の実施の形態の製造方法)
次に、第3の実施の形態に係る微細流路構造体1の製造方法の一例を図13〜図15を参照して説明する。図13(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図、図14は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。図15(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【0083】
(1)パターン層の形成
まず、図13(a)に示すように、導電性を有する材料からなるドナー基板14を準備する。ドナー基板14として、例えば、ステンレス鋼等の鉄系の金属や、銅等の非鉄系の金属を用いることができる。本実施の形態では、ステンレス鋼を用いる。ドナー基板14の表面は、離型性を高めるため、鏡面研磨した方が好ましい。ドナー基板14の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。表面粗さの計測は、原子間力顕微鏡、白色干渉計、触針式表面プロファイラ等を用いることができる。
【0084】
次に、ドナー基板14の上にドライフィルムからなるレジスト15を貼付する。次に、所定のパターンを有するフォトマスクをレジスト15の上に設置し、図示しない露光手段によりフォトマスクの開口を通してレジスト15を露光する。これにより、目的のパターン層の形状に対応したポジネガ反転によるレジストパターンが形成される。
【0085】
次に、レジスト15がパターニングされたドナー基板14をめっき浴に浸し、電解メッキにより、レジスト15の開口にニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16を厚さ25μm着膜する。なお、Ni膜16の厚さは5〜100μmでも可能である。
【0086】
次に、図13(b)に示すように、レジスト15を有機溶剤による剥離液で除去した後、Ni膜16の表面にスパッタリング法によりAl膜17を0.5μm着膜する。
【0087】
次に、図13(c)に示すように、陽極酸化法により全てのAl膜17に多数の細孔4aを有する触媒担持層4を形成する。これにより、図14に示すパターン層3A〜3Dが形成される。給電はステンレス鋼製のドナー基板14をそのまま使う。
【0088】
パターン層3A〜3Dに形成された流路のうち、導入路33a,33b、反応部34、混合部35の幅は、例えば、100μmであり、入口30a,30b、出口31、貫通孔32a〜32hの径は、例えば、150μmである。
【0089】
(2)接合工程
次に、第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが形成されたドナー基板14を図示しない真空槽内の下部ステージ上に配置し、ターゲット基板2を上部ステージ上に配置する。次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。
【0090】
次に、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板14の第1のパターン層3A上に位置決めし、ドナー基板14の表面、およびターゲット基板2の表面をArガスを照射して清浄化する。
【0091】
次に、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2と第1のパターン層3Aとを圧接して常温接合する。次に、図15(a)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第1のパターン層3Aをターゲット基板2に転写させる。このとき、ドナー基板14に触媒担持層4の一部が残る。
【0092】
以後、前述したのと同様に、ドナー基板14とターゲット基板2との接離動作を繰り返すことにより、図15(b)に示すように、ターゲット基板2上に第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが積層状態で接合されて微細流路構造体1が製造される。アルミナの触媒担持層4とNi膜16とは異種金属であるが、常温接合が可能である。
【0093】
(3)触媒の充填
第1および第2の入口30a,30bから第1および第2の導入路33a,33b、混合部35、および反応部34に触媒5を含む溶液を流す。触媒担持層4の細孔4aに触媒5が充填される。本実施の形態では、反応部34および混合部35の底面と側面に触媒5が担持される。
【0094】
(第3の実施の形態の動作)
次に、第3の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、第1および第2の導入路33a,33bを層流で流れて合流し、混合部35を層流で移動し、貫通孔32c、32e、32gを経由して反応部34を層流で移動する。第1および第2の原料液L,Lが混合部35を流れるとき、原料液L,Lの界面で混合される。この混合は、例えば、触媒5によって促進される。また、第1および第2の原料液L,Lが反応部34を流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。この反応は、例えば、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、貫通孔32h、32f、32dを経由して出口31から排出される。
【0095】
[第4の実施の形態]
図16は、本発明の第4の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図16(a)は、図6(a)のD−D線に対応する断面図、図16(b)は、図16(a)のI部拡大図、図16(c)は、図16(a)のJ部拡大図である。
【0096】
本実施の形態は、電鋳法によって第1乃至第4のパターン層3A〜3Dを形成したものであり、第1乃至第4のパターン層3A〜3Dは、ニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16からなり、第1および第2のパターン層3A,3BのNi膜16の表面に触媒担持層4を形成している。触媒5は、流路(ここでは反応部34)の底面および側面に露出する触媒担持層4の部分のみに担持されている。
【0097】
(第4の実施の形態の製造方法)
次に、第4の実施の形態に係る微細流路構造体1の製造方法の一例を図17〜図19を参照して説明する。図17(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図、図18は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。図19(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【0098】
(1)パターン層の形成
まず、図17(a)に示すように、ステンレス鋼からなるドナー基板14を準備する。次に、ドナー基板14の上にドライフィルムからなるレジスト15を貼付する。次に、レジスト15を図示しない露光手段により所定のパターンで露光する。次に、レジスト15がパターニングされたドナー基板14をめっき浴に浸し、電解メッキにより、レジスト15の開口にニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16を厚さ25μm着膜する。
【0099】
次に、図17(b)に示すように、レジスト15を有機溶剤による剥離液で除去した後、Ni膜16の表面にスパッタリング法によりAl膜17を0.5μm着膜する。
【0100】
次に、図17(c)に示すように、第3および第4のパターン層3C,3Dの表面をレジスト、マスキングテープ等によるマスク18により覆う。陽極酸化法により第1および第2のパターン層3A,3BのAl膜17に多数の細孔4aを有する触媒担持層4を形成する。これにより、図18に示すパターン層3A〜3Dが形成される。給電はステンレス鋼製のドナー基板14をそのまま使う。
【0101】
パターン層3A〜3Dに形成された流路のうち、導入路33a,33b、反応部34、混合部35の幅は、例えば、100μmであり、入口30a,30b、出口31、貫通孔32a〜32hの径は、例えば、150μmである。
【0102】
(2)接合工程
次に、第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが形成されたドナー基板14を図示しない真空槽内の下部ステージ上に配置し、ターゲット基板2を上部ステージ上に配置する。次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。
【0103】
次に、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板14の第1のパターン層3A上に位置決めし、ドナー基板14の表面、およびターゲット基板2の表面をArガスを照射して清浄化する。
【0104】
次に、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2と第1のパターン層3Aとを圧接して常温接合する。次に、図19(a)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第1のパターン層3Aをターゲット基板2に転写させる。このとき、ドナー基板14に触媒担持層4の一部が残る。
【0105】
以後、前述したのと同様に、ドナー基板14とターゲット基板2との接離動作を繰り返すことにより、図19(b)に示すように、ターゲット基板2上に第1乃至第4のパターン層3A〜3Dが積層状態で接合されて微細流路構造体1が製造される。アルミナの触媒担持層4とNi膜16とは異種金属であるが、常温接合が可能である。
【0106】
(3)触媒の充填
第1および第2の入口30a,30bから第1および第2の導入路33a,33b、混合部35、および反応部34に触媒5を含む溶液を流す。触媒担持層4の細孔4aに触媒5が充填される。本実施の形態では、反応部34の底面と側面に触媒5が担持される。
【0107】
(第4の実施の形態の動作)
次に、第4の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、第1および第2の導入路33a,33bを層流で流れて合流し、混合部35を層流で移動し、貫通孔32c、32e、32gを経由して反応部34を層流で移動する。第1および第2の原料液L,Lが反応部34を流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。この反応は、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、貫通孔32h、32f、32dを経由して出口31から排出される。
【0108】
[第5の実施の形態]
図20は、本発明の第5の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図20(a)は斜視図、図20(b)は分解斜視図である。なお、図20(b)のK−K線、K−K線は、図20(a)のK−K線に対応する断面位置を示す。
【0109】
第4の実施の形態は、一部のパターン層に触媒担持層を形成したが、本実施の形態は、パターン層の一部に触媒担持層を形成したものである。
【0110】
この微細流路構造体1は、ターゲット基板(厚板部材)2と、ターゲット基板2に接合された第1のパターン層(薄板部材)3Aと、第1のパターン層3Aに接合された第2のパターン層(薄板部材)3Bとを有し、各パターン層3A,3Bに形成された開口が連通して3次元の流路を構成している。
【0111】
図21(a)は、図20(a)のK−K線断面図、図21(b)は、図21(a)のL部拡大図、図21(c)は、図21(a)のM部拡大図である。
【0112】
本実施の形態は、電鋳法によってニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16からなる第1および第2のパターン層3A,3Bを形成し、第1および第2のパターン層3A,3BのNi層16の一部に触媒担持層4を形成している。すなわち、第1のパターン層3Aの反応部34の側面およびその周辺に触媒担持層4を形成し、第2のパターン層3Bの反応部34の底面およびその周辺に触媒担持層4を形成している。
【0113】
(第5の実施の形態の製造方法)
次に、第5の実施の形態に係る微細流路構造体1の製造方法の一例を図22〜図24を参照して説明する。図22(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図、図23は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。図24(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【0114】
(1)パターン層の形成
まず、図22(a)に示すように、ステンレス鋼からなるドナー基板14を準備する。次に、ドナー基板14の上にドライフィルムからなるレジスト15を貼付する。次に、レジスト15を図示しない露光手段により所定のパターンで露光する。次に、レジスト15がパターニングされたドナー基板14をめっき浴に浸し、電解メッキにより、レジスト15の開口にニッケルまたはニッケル合金製のNi膜16を厚さ25μm着膜する。
【0115】
次に、図22(b)に示すように、レジスト15を有機溶剤による剥離液で除去した後、Ni膜16の表面にスパッタリング法によりAl膜17を0.5μm着膜する。
【0116】
次に、図22(c)に示すように、ペン鍍金装置により第1および第2のパターン層3A,3Bの表面の一部に触媒担持層4を形成する。すなわち、ペンを用いてAl膜17を部分的に電解液に触れさせて陽極酸化させる。陽極酸化する領域は、第1のパターン層3Aの反応部34の側面およびその周面のAl膜17と、第2のパターン層3Bの反応部34の底面に対応する面およびその周辺のAl膜17である。これにより、図23に示すパターン層3A,3Bが形成される。なお、第4の実施の形態のように陽極酸化させない領域をマスクで覆ってもよい。
【0117】
(2)接合工程
次に、第1および第2のパターン層3A,3Bが形成されたドナー基板14を図示しない真空槽内の下部ステージ上に配置し、ターゲット基板2を上部ステージ上に配置する。次に、真空槽内を排気し、高真空状態あるいは超真空状態にする。
【0118】
次に、下部ステージを移動させてターゲット基板2をドナー基板14の第1のパターン層3A上に位置決めし、ドナー基板14の表面、およびターゲット基板2の表面をArガスを照射して清浄化する。
【0119】
次に、上部ステージを移動させてターゲット基板2を降下させ、ターゲット基板2と第1のパターン層3Aとを圧接して常温接合する。次に、図24(a)に示すように、上部ステージを移動させてターゲット基板2を上昇させて第1のパターン層3Aをターゲット基板2に転写させる。このとき、ドナー基板14に触媒担持層4の一部が残る。
【0120】
以後、前述したのと同様に、ドナー基板14とターゲット基板2との接離動作を繰り返すことにより、図24(b)に示すように、ターゲット基板2上に第1および第2のパターン層3A,3Bが積層状態で接合されて微細流路構造体1が製造される。アルミナの触媒担持層4とNi膜16とは異種金属であるが、常温接合が可能である。
【0121】
(3)触媒の充填
第1および第2の入口30a,30bから第1および第2の導入路33a,33b、混合部35、および反応部34に触媒5を含む溶液を流す。触媒担持層4の細孔4aに触媒5が充填される。本実施の形態では、反応部34の底面と側面に触媒5が担持される。
【0122】
(第5の実施の形態の動作)
次に、第5の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、第1の実施の形態と同様に、第1および第2の原料液L,Lが反応部34を流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。この反応は、例えば、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、出口31から排出される。
【0123】
[第6の実施の形態]
図25は、本発明の第6の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図25(a)は斜視図、図25(b)は分解斜視図である。なお、図25(b)のN−N線、N−N線は、図25(a)のN−N線に対応する断面位置を示す。図26(a)は、図25(a)のN−N線断面図、図26(b)は、図26(a)のO部拡大図、図26(c)は、図26(a)のP部拡大図である。
【0124】
本実施の形態は、第5の実施の形態に対して第1のパターン層3Aの反応部34を高温側反応部34Aと低温側反応部34Bから構成し、高温側反応部34Aと低温側反応部34Bとの間に断熱部36を設けたものであり、他は第5の実施の形態と同様に構成されている。
【0125】
高温側反応部34Aは、第1および第2の原料液L,Lが高温域(例えば60℃〜80℃)で反応する流路であり、低温側反応部34Bは、第1および第2の原料液L,Lが低温域(例えば30℃〜50℃)で反応する流路である。
【0126】
断熱部36は、高温側反応部34Aと低温側反応部34Bとの間の熱伝導を遮断する密閉空間、例えば、真空となっている。
【0127】
触媒担持層4は、第1のパターン層3Aの低温側反応部34Bの側面およびその周辺と、第2のパターン層3Bの低温側反応部34Bの底面に相当する面およびその周辺とに形成され、低温側反応部34Bの底面および側面に露出する触媒担持層4の部分にのみ触媒5が担持されている。
【0128】
(第6の実施の形態の動作)
次に、第6の実施の形態に係る微細流路構造体1の動作を説明する。第1の入口30aから第1の原料液Lを導入し、第2の入口30bから第2の原料液Lを導入すると、第1および第2の原料液L,Lは、高温側反応部34Aおよび低温側反応部34Bを流れるとき、原料液L,Lの界面で反応する。また、原料液L,Lが低温側反応部34Bを流れるとき、原料液L,Lの界面での反応は、例えば、触媒5によって促進される。反応によって得られた反応液Mは、出口31から排出される。
【0129】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0130】
例えば、上記各実施の形態では、触媒は反応を促進する場合に使用したが、触媒と原料液との反応に使用してもよい。また、上記各実施の形態では、対象流体を液体としたが、気体でもよい。触媒担持層を形成するための陽極酸化法は、一例に過ぎず、他の公知の細孔形成技術を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は分解斜視図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)におけるA−A線断面図、図2(b)は、図2(a)のB部拡大図、図2(c)は、図2(a)のC部拡大図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図4】図4は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。
【図5A】図5A(a)〜(c)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図5B】図5B(d)〜(f)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図6(a)は斜視図、図6(b)は分解斜視図である。
【図7】図7(a)は、図6(a)におけるD−D線断面図、図7(b)は、図7(a)のE部拡大図、図7(c)は、図7(a)のF部拡大図である。
【図8】図8(a)、(b)は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図9】図9は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。
【図10】図10は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図12(a)は、図6(a)のD−D線に対応する断面図、図12(b)は、図12(a)のG部拡大図、図12(c)は、図12(a)のH部拡大図である。
【図13】図13(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図14】図14は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。
【図15】図15(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明の第4の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図16(a)は、図6(a)のD−D線に対応する断面図、図16(b)は、図16(a)のI部拡大図、図16(c)は、図16(a)のJ部拡大図である。
【図17】図17(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図18】図18は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。
【図19】図19(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図20】図20は、本発明の第5の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図20(a)は斜視図、図20(b)は分解斜視図である。
【図21】図21(a)は、図20(a)のK−K線断面図、図21(b)は、図21(a)のL部拡大図、図21(c)は、図21(a)のM部拡大図である。
【図22】図22(a)〜(c)は、パターン層の製造工程を示す断面図である。
【図23】図23は、ドナー基板上に形成されたパターン層の平面図である。
【図24】図24(a)、(b)は、パターン層の接合工程を示す断面図である。
【図25】図25は、本発明の第6の実施の形態に係る微細流路構造体の模式図であり、図25(a)は斜視図、図25(b)は分解斜視図である。
【図26】図26(a)は、図25(a)のN−N線断面図、図26(b)は、図26(a)のO部拡大図、図26(c)は、図26(a)のP部拡大図である。
【符号の説明】
【0132】
1 微細流路構造体
2 ターゲット基板
3A,3B,3C,3D パターン層
4 触媒担持層
4a 細孔
5 触媒
11,14 ドナー基板
12 離型層
13,17 Al膜
15 レジスト
16 Ni膜
30a 第1の入口
30b 第2の入口
31 出口
32a〜32h 貫通孔
33a 第1の導入路
33b 第2の導入路
34 反応部
34A 高温側反応部
34B 低温側反応部
35 混合部
第1の原料液
第2の原料液
M 反応液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、表面に触媒担持層が形成された複数の薄板部材を準備する準備工程と、
準備された前記複数の薄板部材の面を清浄化し、前記複数の薄板部材の前記面同士を直接接触させることにより、前記複数の薄板部材を接合して積層し、前記複数の薄板部材の積層により前記開口が連通して流路を形成する接合工程と、
前記流路に露出する前記触媒担持層に触媒を担持させる触媒担持工程とを含むことを特徴とする微細流路構造体の製造方法。
【請求項2】
前記準備工程は、表面に触媒担持層が形成された前記複数の薄板部材をドナー基板上に形成し、
前記接合工程は、前記ドナー基板とターゲット基板との接離動作を繰り返すことにより、前記複数の薄板部材を前記ドナー基板から前記ターゲット基板上に順次転写し、前記ターゲット基板上に前記複数の薄板部材を積層状態で接合させることを特徴とする請求項1に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項3】
前記準備工程は、
前記ドナー基板上に薄板部材用素材を形成する薄板部材用素材形成工程と、
前記薄板部材用素材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程と、
前記薄板部材用素材をパターニングし、前記開口および前記薄板部材の輪郭に対応したパターンを有する前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項4】
前記準備工程は、
前記ドナー基板上に薄板部材用素材を形成する薄板部材用素材形成工程と、
前記薄板部材用素材をパターニングし、前記開口および前記薄板部材の輪郭に対応したパターンを有する前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程と、
前記複数の薄板部材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程は、
導電性を有する前記ドナー基板上に電鋳法により金属からなる前記複数の薄板部材を形成する薄板部材形成工程と、
前記複数の薄板部材の表面に触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程とを含むことを特徴とする請求項2に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒担持層形成工程は、前記流路の途中に設けられた反応部の側面を有する前記薄板部材の表面、および前記反応部の底面を有する前記薄板部材の表面に前記触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項7】
前記触媒担持層形成工程は、前記流路の途中に設けられた反応部の側面を有する前記薄板部材の前記側面およびその周辺、および前記反応部の底面を有する前記薄板部材の前記底面およびその周辺に前記触媒担持層を形成する触媒担持層形成工程を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項8】
前記薄膜部材形成工程は、前記複数の薄板部材を電鋳法で第1の金属により形成し、
前記触媒担持層形成工程は、前記第1の金属の表面に第2の金属による金属膜を形成し、陽極酸化法により前記金属膜に前記触媒担持層を形成することを備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第1の金属は、ニッケルまたはニッケル合金であり、
前記第2の金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項8に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項10】
前記触媒担持層形成工程は、陽極酸化法により複数の細孔を有する前記触媒担持層を形成することを特徴とする請求項1に記載の微細流路構造体の製造方法。
【請求項11】
積層状態で接合された複数の薄板部材であって、前記複数の薄板部材の全部または2以上の薄板部材に開口が形成され、前記薄板部材間の前記開口が連通して3次元の流路を構成する複数の薄板部材と、
前記流路の途中に設けられた反応部の壁面に形成された触媒担持層と、
前記流路に露出する前記触媒担持層に担持された触媒とを備えたことを特徴とする微細流路構造体。
【請求項12】
さらに、前記複数の薄板部材に接合され、前記薄板部材よりも厚さの厚い厚板部材を備えたことを特徴とする請求項11に記載の微細流路構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−212811(P2008−212811A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53080(P2007−53080)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】