微細転写方法および装置
【課題】 従来のホットエンボス法、射出成形法、圧縮成形法、ナノインプリント法に比べて格段に優れた製品を高い生産性で生産可能な微細転写方法および装置を提供すること。
【解決手段】 微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lの表面1La上にプラスチック基材2を装着し、加圧手段6により、上型12Uをプラスチック基材2に向けて加圧し、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧する。下型スタンパー支持体5Lには幅方向7に長いスリット状の開口部8を設け、そこを通して炭酸ガスレーザ13によりビーム状の赤外線3を照射し長手方向4に移動させ下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状をプラスチック基材2に形成し、冷却し、プラスチック基材2を離型する。
【解決手段】 微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lの表面1La上にプラスチック基材2を装着し、加圧手段6により、上型12Uをプラスチック基材2に向けて加圧し、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧する。下型スタンパー支持体5Lには幅方向7に長いスリット状の開口部8を設け、そこを通して炭酸ガスレーザ13によりビーム状の赤外線3を照射し長手方向4に移動させ下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状をプラスチック基材2に形成し、冷却し、プラスチック基材2を離型する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細転写方法および装置に関するものであり、詳しくは、従来のホットエンボス法、射出成形法、圧縮成形法、ナノインプリント法に比べて格段に優れた製品を高い生産性で生産可能な微細転写方法および装置に関するものである。本発明の方法および装置によれば、表面に微細な凹凸形状を有するとともに、辺長が数cm〜数十cmの大面積の製品を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、光硬化性プラスチックないしは低融点ガラスなどの材料からなり、表面に数nmから数百μmの微細な凹凸形状を形成した部材には、回折格子、マイクロレンズアレイ、CD、DVD、Blu−rayディスク用ピックアップレンスなどの光学部品、CD、DVD、Blu-ray Disk、大容量ハードディスクなどの光記憶媒体、光導波路、光スイッチ、光ファイバー接合用V溝、コネクターなどの光通信部品、液晶表示用導光板、高輝度フロントライト、波長板、表面無反射構造体、有機ELレセプター、有機TFT隔壁、光学位相板などの電子ディスプレィ部品、μ−TAS、化学合成チップ、DNAチップ、指紋センサーアレイ、タンパクチップ、微生物検出チップ、診断チップなどのライフサイエンス用部材などがある。これらの部材を製造する現在の方法として、射出成形法、ホットエンボス法、ナノインプリント法などが挙げられる。
【0003】
射出成形法は、数百nmからの微細凹凸形状を金型表面に形成し、加熱溶融した樹脂を閉じた金型に数十MPa〜200MPaの高圧で充填し、冷却・固化して離型し、取り出す方法である。この方法は極めて高い生産性が得られ、複雑三次元形状を自由に成形でき、自動化が容易であるという特徴があり、最も普及したプラスチック成形加工法となっている。射出成形法により、数百nm幅の微細ピットを有するDVDが3秒前後のサイクルタイムで生産されている。また、レンズ、回折格子、液晶表示バックライト用導光板など、表面に数百nmから数百μmの微細凹凸形状を有する部材の多くに適用されている。しかし、常温近くに冷却された金型に、200〜350℃の溶融樹脂を高圧で充填するため、成形品に高い残留応力、複屈折、歪、ソリ変形を生じ、光学特性が損なわれやすい。また、樹脂の充填を開始する金型スプルーから流動末端までの圧力勾配が大きく、流動末端に樹脂が十分に充填されにくく、さらには、樹脂が流動末端に向けて進むに従って、樹脂が金型に冷やされて温度が下がり、流動性が低下するので、流動末端における金型壁面の微細な凹凸形状を転写することが難しいという課題があった。また、冷却された金型表面に樹脂が接触しながら流動するので、金型壁面に接する樹脂の粘度が上昇し、さらには金型壁面近くに樹脂の固化層を形成するので、金型壁面に形成された微細な凹凸形状を充填できず、十分な転写性を得ることが難しかった。
【0004】
ホットエンボス法は、固体状の樹脂を金型に装填し、金型を樹脂のガラス転移温度近辺まで加熱し、金型で樹脂を加圧して樹脂を加熱・軟化させながら、金型の微細凹凸部に樹脂を加圧充填し、その後に樹脂を冷却、固化して離型する成形方法である。金型の微細凹凸部は、金型に直接機械加工をするか、あるいは、LIGAプロセスやフトリソグラフィ技術で表面に微細な凹凸形状を形成した板状のスタンパーを金型に装着すること等で付与される。この方法により、ナノメートル〜マイクロメートルの微細な凹凸を樹脂に形成できると言われている。この方法は、射出成形に比べて、樹脂の流動変形量と変形速度が小さいので、微小な凹凸形状を成形するのに有利と言われている。また、流動による樹脂の変形量が小さく、しかも加熱がゆっくりと定常状態を保ちながら進行するので、成形品内部の残留応力が小さいというメリットがある。さらには、流動を生じるのに必要な圧力勾配が小さく、樹脂の平面内に均一に圧力が加わるので、低圧での成形ができ、薄肉の成形品を得られやすい。しかし、1成形サイクル内で金型を加熱、冷却するのに数分の時間を要するので生産性が低く、成形サイクルは、冷却した金型に樹脂を充填する射出成形が数秒〜数十秒であるのに対し、1サイクル内での金型の加熱冷却を必要とするホットエンボス法では数分〜数十分が必要である。また、加熱軟化させると言えども固体に近い樹脂を加圧変形させるので、数十MPaの高圧を要する。さらに、固体状態に近い樹脂を変形させることにより、金型の微細凸部を樹脂に押し込む時に樹脂の角部に大きな弾性変形と丸みを生じ、この部分の歪が大きくなり光学特性を損なうという問題がある。成形品の品質は、単に形状精度だけできまるのではなく、光学部品、ディスプレィ素子等においては、特に成形品内部の性状(残留歪、複屈折分布)を向上させる必要があるのであり、前記の光学特性を損なうことは、基本的な欠点と言える。さらには、金型に微細凸部を押し込む時に、金型の微細凹部に空気が封じ込められ、これが金型の微細凹凸部の樹脂への転写を阻害することになる。このため、金型内を真空状態に維持して成形する必要があり、設備コストが上がり、真空引きと大気圧への開放のために時間を要し生産性を損なうという問題がある。また、得られる製品形状が平面形状に限定され、三次元形状どころか偏肉形状を作ることも難しいという制約がある。さらには、フィルム・シート状の固体プラスチックを供給する必要があるので、成形に先立って、プラスチックをフィルム・シート状に作製しておかなくてはならない。
【0005】
ナノインプリント法は、1995年Princeton大のChouにより提案された方法であり、ナノメートルスケールの微細な凹凸形状を持つモールド(型)を、ウエハー基板上に形成した樹脂レジストに押し付け、モールドの構造をレジストに転写することでレジストに微細な凹凸形状を形成する。この結果、幅が200nm以下で25nm程度までの微細な凹凸パターンが形成されたと記載されている(下記特許文献1)。しかし、この方法は、前述のホットエンボス法との比較において、基板上に形成した樹脂薄膜にモールドを押し付ける点と、200nm以下の微細パターンが形成できたとする発見を除いては、前述のホットエンボス法と同一であり、従って、ホットエンボス法と同じ問題点を有する。
【0006】
一方、下記特許文献2には、プラスチック射出成形加工における金型の一部を赤外線が透過する材料で構成し、成形工程中の樹脂に対して例えば炭酸ガスレーザを照射して溶融樹脂の冷却速度を制御する方法が提案されている。射出充填中の金型内の樹脂にφ4mmの範囲で炭酸ガスレーザを照射することにより、分子配向に起因する複屈折の除去、転写性の向上などが可能となることを示している。しかも、赤外線透過材料の温度は殆ど上昇しないので、転写性向上のために従来のように金型温度を高く設定する必要性が無く、したがって冷却時間を伸ばす必要がないので、高い生産性が得られることが示されている。炭酸ガスレーザ照射により、金型壁に接触している樹脂を直接赤外線ふく射加熱することで充填中の表面固化層の発生を抑制し、流動と固化に伴う残留複屈折が低減し、金型壁の幅100μm、200μm、深さ100μmの微細な凹凸形状に対する樹脂の転写性が向上することが示されている。赤外線光源としては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、赤外線ランプが例示されている他、高分子が吸収する範囲で適宜選択できる、とされている。また、赤外線透過材料としては、ZnSe、サファイア、赤外線用ガラスが示されている。実施例では、照射密度80W/cm2の炭酸ガスレーザを充填中の樹脂に照射することにより、金型壁面部の樹脂が高温となり、固化層が消滅し、分子配向層が形成されず、光学的特性に偏奇が無く、残留複屈折が消滅し、転写性が向上することが示されている。ただし、これらの結果はいずれも、成形品のごく小面積のΦ4mmの部分に赤外線を照射して得られた結果であり、大面積への照射による転写性向上の効果、照射した場合の表面状態、特に照射した部分としない部分とにおける照射ムラや外観不良、照射密度が高いことによる焼け、変色などの副作用の発生については何ら確認されていない。
また、赤外線透過材料であるZnSeは厚くするほど極めて高価となる。さらにZnSeは脆性材料で加工が難しく、射出成形のように金型内の樹脂圧力が数十MPa〜200MPaに達する高圧下では、樹脂圧力による曲げ応力を鋼に比べて極めて低く抑える必要があり、このため、ZnSeとして大面積かつ厚肉のものを使うことは、曲げ応力が大きくなるので難しい。また、たとえ赤外線透過材料として大面積で強度が十分なものがあっても、大面積に必要な赤外線を照射するためには、大出力の赤外線光源を要し、経済的に見合わなかった。微細な凹凸形状への加工も難しく、100〜200μmの凹凸形状が加工できる限界であった。これらの理由により、特許文献2の技術は実用上必要な中〜大面積の成形品に対して実用化されることはなかった。
【0007】
一方、特許文献3には、転写面を具えてかつプラスチック材料からなる基材を用意し、転写面を露出した状態で基材を固定し、少なくとも一部が赤外線透過材料からなるスタンパーの賦型面を基材の転写面と密着状態に保持し、スタンパーに対して基材を指向する方向に赤外線を照射することを特徴とするプラスチック成形加工方法が開示されている。これにより、射出成形のような高生産性を維持するとともに、プラスチック材料の転写性を向上させ、併せて均一な物理的特性(例えば光学的特性)を具えた成形品を提供する、とされている。実施例では、転写面を具えた基材としてCD−ROMなどの薄い円盤が示されている。これは、基材の転写面に対して赤外線透過材料を通して赤外線を照射して成形する方法であり、前記のホットエンボス法に対し赤外線照射による転写性向上を図ったものである。
しかし、この方法で、賦型面の一部に赤外線を照射した場合、照射した部分のみが転写され、他の部分は転写されないばかりか、照射された部分とされない部分との間での照射ムラにより賦型面表面の平滑性が損なわれる。本方法では、転写面全体に均一に赤外線を照射する方法は示されていない。また、本発明者らの実験によれば、赤外線を照射しても、少なくとも0.1〜1MPa程度の加圧力がなければ、スタンパー表面の微細な凹凸形状を十分な深さまで転写できないことがわかっている。従って、特許文献3で示されているように、加圧無しで賦型面の転写性を向上するというのは、困難である。
【0008】
また、下記非特許文献1には、二工程赤外線支援精密転写法が提案されている。この方法は、まず従来の射出成形法等でほぼ所要の寸法を満足する素成形品を成形しておく。次に、精密寸法を有し一部に赤外線透過材が設けられている金型内に素成形品を挿入し、外部より赤外線を照射して樹脂表面温度を上昇させて薄い層を溶融させる。その際、温度上昇により体積膨張して型内圧力も上昇するので精密転写が可能となる。CDディスクなども転写成形可能であることが、実験的に検証されている。実験の結果、幅2μm、深さ5.6μmの三角形溝が、加圧力1MPa、金型温度100℃、照射密度55W/cm2で100%近く転写できている。しかし、密閉した金型内に成形品を装填し、微細な凹凸形状を有するスタンパーに赤外線を照射した場合、微細凹凸内に残存する空気が転写を阻害する。この結果、本成形法では、1MPaで加圧し、金型温度を100℃まで上昇させているにも関わらず、転写のために60秒もの時間を要している。また、本成形法でも、金型内の赤外線透過材料の取り付け構成は、先の特許文献2の射出成形金型とほぼ同一であり、射出成形に比べて低圧で済むといえども、脆性材料である赤外線透過材料を大面積化するためには、赤外線透過材料を厚くしなければならず、結果的に高コスト、スタンパー冷却時間の増大による成形時間の増大が必要になる。また、転写できる面積もφ12mmが示されているに過ぎず、大面積での転写については、何等示されていない。さらに、微細形状に転写した後の離型については何ら考慮されていない。
【0009】
なお、特許文献4には、赤外線ふく射を用いた別の転写方法が開示されている。これは、金型に形成した微細パターンを基板表面に転写する方法であり、表面に微細パターンを有する金型を準備し、転写すべき基板表面に金型の表面を隣接させ、基板表面を軟化または液化するために基板表面をふく射し、軟化あるいは液化した基板表面に向けて金型の表面を加圧し、金型を移動して金型表面の微細形状パターンが転写された基板を剥離する方法である。ここで、ふく射としてレーザふく射、レーザふく射の波長は1nm〜100μm、ふく射はランプふく射でもよく、赤外線ふく射も含まれている。また、金型は赤外線透過材料でもよく、基板はポリマーでも良く、金型または全体の基板を実質的に加熱せずにふく射で加熱してもよい、とされている。これらは、実質的には、先の特許文献2、3、非特許文献1の技術と同じであるので、前記と同様の課題を有する。すなわち、照射ムラが無いように転写面全体に均一に照射して平滑な表面を得る点、単に金型を基板に押し当てるだけでは金型の微細な凹凸形状に残存する空気が該部分の転写を阻害する点、大面積の薄いスタンパーを用いる場合に、プレス加圧による曲げの作用により、脆性材料である赤外線透過材料が破損する点、離型を容易にする方法の欠如である。さらに、特許文献4に開示された技術のように、基板表面に形成された薄いポリマー層に金型を押し付けて微細な凹凸形状を形成した場合、ポリマー層と金型との剥離が困難になるが、その具体的な離型方法は規定されていない。また、本方法で微細凹凸面を形成できるのは、基板表面のポリマーへの片面のみであり、両面に微細な凹凸を形成することはできない。
【0010】
【非特許文献1】平成10年度新エネルギー・産業技術総合開発機構・新規産業創造型提案公募事業研究成果報告書、「赤外線照射支援による超精密構文氏射出成形:転写・形成性向上技術の開発」、2000年3月)
【特許文献1】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献2】特許第3169786号公報
【特許文献3】特開2001−158044号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2004/046288A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のような従来の技術の課題は、以下のようにまとめられる。
(1)微細な凹凸形状の高い転写性と光学特性
射出成形法では、低温の金型に溶融樹脂を充填するため、金型壁面に接する樹脂が急激に冷却されて温度降下するため、高粘度化および固化層を形成し、金型壁面の微細な凹凸に樹脂が充填されにくいので転写性が損なわれる。また、樹脂が金型壁面に冷やされて高粘度化および固化しながら流動するので、金型壁面近くに高い残留応力、複屈折、歪、ソリ変形を生じ、光学特性が損なわれる。
ホットエンボス法およびナノインプイリント法では、射出成形に比べると附形時の樹脂の流動変形量および変形速度が小さいので、微細な凹凸形状を形成するのに有利であり、しかも残留応力が小さいと言われる。しかし、固体状態に近い樹脂を加圧変形させるので、微細凸部を基板に押し込む時に樹脂の角部に大きな弾性変形を生じ、光学特性を損なうという問題がある。
特許文献2および3に開示されるように、金型壁面またはスタンパーを赤外線透過材料で形成し、外部から赤外線を照射することにより、型壁に接する樹脂を直接加熱溶融する方法では、金型またはスタンパーの表面に形成された微細な凹凸形状の高い転写性が得られ、残留応力や複屈折が低減される。しかし、微細な凹凸形状を赤外線透過材料に加工する上では、加工性の良い材料が必要である。光透過性が90%以上のZnSeやZnSは加工が難しい。また、高い転写性を高い生産性で得るためには、赤外線照射に加えて、0.1〜1MPa程度の加圧力を作用させる必要がある。しかし、一般に赤外線透過材料は脆性材料であり、加圧力が高くなると曲げにより破損する可能性が高い。また、赤外線透過率は赤外線透過材料の厚さに依存し、厚くなるほど透過率が低くなる。エッチング等による微細加工が容易なシリコンでは、波長10.6μmの炭酸ガスレーザに対して厚さ1mm以下では約43%の透過率を有するが、厚み5mmでは9%以下、厚さ10mmでは1.8%となる。このため、高い微細転写性を得るためには、極力薄い赤外線透過材料を用いることが必要である。また、金型またはスタンパーに形成された微細な凹凸形状をプラスチック基材に押し込む時に、微細凹部に封じ込められた空気が抵抗となり、微細凹凸への転写を阻害する。このため、赤外線ふく射加熱を用いる場合であっても、高い転写性を得るためには、加圧力を作用させながらも極力薄く加工性の良い赤外線透過材料を使用し、なおかつ空気の封じ込みによる転写性阻害を解決する新たな手段を講ずる必要がある。
【0012】
(2)加熱冷却時間と成形圧力
ホットエンボス法やナノインプリント法では、金型、スタンパーあるいはプラスチック基材を電熱ヒータや加熱媒体などの加熱手段によってプラスチックのガラス転移温度付近まで加熱し、金型あるいはスタンパーをプラスチック基材に押し付けてプラスチック表面に微細な凹凸形状を形成した後、プラスチック基材を常温付近まで冷却して離型するものである。この場合、加熱と冷却に少なくとも数分〜十分以上の時間を要し、生産性を損ない、製品のコストアップにつながる。また、固体状態のプラスチックを加圧し、スタンパーからの伝熱によりで軟化させるためには、10MPaを超える高圧を要し、スタンパーや金型に剛性を要する。さらに、プラスチックにスタンパーの凹凸を押し付ける際、軟化したプラスチックは粘弾性的変形を示し、スタンパーと接しない部分は固体として変形するので、この部位に歪が発生し、複屈折を生じて光学的特性を損なうことになる。したがって、できる限りスタンパーとプラスチック基材の加熱・冷却に要する時間を短くするとともに、成形に要する圧力を低減する手段を講ずる必要がある。
特許文献2および3に開示されるように、金型壁面またはスタンパーを赤外線透過材料で形成し、外部から赤外線を照射することにより、型壁に接する樹脂を直接加熱溶融する方法では、金型またはスタンパーを加熱せずに直接樹脂を瞬間的に加熱できるので、生産時間が短縮される。また、非特許文献1に開示された技術では、成形1MPa、金型温度100℃、加圧および赤外線照射時間60秒、照射密度55W/cm2の条件下でμm台の微細な凹凸形状が100%転写できている。しかし、金型を100℃まで上昇させる必要があり、60sもの時間を要している。したがって、射出成形に匹敵する高生産性を確保しながら高い転写性と1MPa以下の低圧での成形を実現するためには、高い転写性を確保するため必要な加熱冷却時間を低減し、なおかつ低圧化ができる新たな手段を講ずる必要がある。
【0013】
(3)赤外線透過材料の破損防止と低コスト化
特許文献2に開示された方法において、赤外線透過材料は通常の金型材料に比べて靭性や強度に劣る。このため、少なくとも10MPa以上の樹脂圧力が赤外線透過材料に作用する射出成形法では、赤外線透過材料が破損するため、実用に耐えることが難しかった。また、シリコンやゲルマニウムなどの赤外線透過材料では、厚さが厚くなるほど赤外線透過率が急速に低下するため、使用できる厚さはシリコンでは1mm、ゲルマニウムでは10mmが限界であり、射出成形に要求される高圧に耐えることは難しかった。さらに、ZnSe、ZnS、Si、Geをはじめとした赤外線透過材料は、面積が大きくなり厚さが厚くなるに従って急激に価格が上昇するため、この点からも実用性がなかった。一方、特許文献3に開示された技術では、微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料製スタンパーの表面にプラスチック基材を固定し、該スタンパーの裏から赤外線を照射することにより、プラスチック基材を加圧しなくても微細な凹凸形状をプラスチック基材に転写できるとされている。しかし、本発明者らの実験によれば、赤外線ふく射加熱を用いる場合であっても、十分な微細な凹凸形状転写を達成するためには、1MPa以下の加圧は必要である。また、転写に十分な加圧力をかけると、特に転写面の面積が大きくなるほど赤外線透過材料が破壊するという問題がある。このため、転写圧力を極力低くするとともに、微細な凹凸形状を中〜大面積(数cm〜数十cm)のプラスチック基材に形成するために必要な、最小限の加圧力を作用させても、赤外線透過材料が破損しない手段を講ずる必要がある。また、コスト低減と赤外線透過率を上げる目的から、できるだけ薄い赤外線透過材料を使用して、なおかつ加圧力を作用させることのできる新たな手段を講ずる必要がある。
【0014】
(4)大面積化
赤外線透過材料でできた金型またはスタンパーを通してプラスチック基材に赤外線をふく射して微細な凹凸形状をプラスチック基材の表面に形成する従来の方法は、いずれの場合においても、直径φ4〜12mm程度の小径ビームをプラスチックのごく一部に照射し、照射された部分の転写性や光学特性を評価したものばかりであり、辺長が数cm〜数十cmの中〜大面積の成形体全体に赤外線を照射する方法および装置については、何ら報告されていない。すなわち、大面積への照射による転写性向上の効果、照射した場合の表面状態については、報告されていない。特に、成形体の一部分のみに赤外線を照射した場合、照射した部分としない部分との境界に転写ムラが生じ、表面がデコボコになって外観を損なう。また、照射密度が高い場合には、特定部位に照射を続けるとプラスチック基材にヤケ、変色が生じる。このため、赤外線透過材料を通して大面積の成形体に均一に赤外線を照射して高い転写性と平滑な表面性状を得るためには、大面積の赤外線透過材料を準備し、これに均一に赤外線を照射する新たな手段を講ずる必要がある。しかし、特に赤外線レーザを用いる場合、単一のビームにより大面積に同時に照射するためには、極めて高出力のレーザが必要である。そこで、単一ビームを線状にして照射することが考えられるが、この場合には、線状の赤外線ビームを赤外線透過材料を通してプラスチック基材に照射しながら、なおかつ基材の全面に均一に赤外線が照射されるようにしながら、しかも前述のように微細な凹凸形状の転写性を確保するための加圧をかけながら、さらには照射ムラの無い平滑な転写面を得るための新規は方法を講ずる必要がある。しかし、大面積の赤外線透過材料に加圧力を加えると、プラスチックに作用する圧力が低くても、面積全体では大きな力が加わり、赤外線透過材料に作用する曲げ応力が大きくなるので、破壊の可能性が高くなる。そこで、赤外線透過材料を厚くすると、材質によっては赤外線透過率が減少し、微細な凹凸形状への転写性を損なう。また、厚くするほど、これを加熱冷却する場合に時間を要し、なおかつ経済性と生産性を損なう。そこで、大面積の赤外線透過材料に赤外線を均一に照射しながら加圧しても、赤外線透過材料に対して破壊に至るような曲げ応力が作用しない機構とし、できる限り大面積で薄い赤外線透過材料を使用して微細凹凸の高い転写性を実現し、しかも、加熱冷却する場合の時間を短くして高生産性を維持する新規な手段を講ずることが必要である。しかしながら、特許文献2〜4の技術では、このような目的を達することはできなかった。
【0015】
(5)急速加熱冷却による生産性の向上
加熱冷却を迅速にして高い生産性を得るためには、できる限り赤外線透過材料を薄膜にして、薄い赤外線透過材料からできたスタンパーを用いることで、加熱冷却を迅速に行うことが必要である。しかし、従来は、脆性材料である赤外線透過材料からできたスタンパーを加圧して破壊しないためには、面積を小さくせざるを得なかった。したがって、薄い大面積のスタンパーでも破損しないような加圧手段を講ずると共に、スタンパーが薄くなるほど加熱、冷却が急速にできる手段を講ずる必要がある。
【0016】
(6)ソリ変形
赤外線透過材料製のスタンパー裏面からプラスチック基材に向けて赤外線を照射した場合、赤外線を照射した面は温度が上昇するが、反対側の非照射面では温度が低いので、プラスチック基材の表面と裏側との間に温度差が生じ、高温側の面が冷却されることにより収縮し、プラスチック基材が照射された側にそるという問題があった。これを解決するためには、赤外線を照射しない面についても、適度の加熱を行い、ソリ変形が生じない新たな手段を講ずる必要があるが、このような問題について、従来は何ら対策が講じられることが無かった。
【0017】
(7)赤外線照射ムラの解消
赤外線透過材料を通してプラスチック基材に赤外線を照射すると、照射された部分には微細形状が転写されるが、照射されない部分では転写されない。また、照射された部分とされない部分との境界に紋様が現れ、成形品の外観を損ねることになる。このため、スタンパーの微細な凹凸が形成されている領域も、凹凸が形成されていない領域も、均一に赤外線を照射する手段を講ずることが不可欠であるが、このような機構について、従来は何ら検討されていなかった。
また、赤外線として10.6μmの波長を発生する炭酸ガスレーザを使用する場合、レーザビームの強度はビーム断面内で一様ではなく、図24に示すように場所によって変わるビームモードが存在する。このため、プラスチック基材に単純に照射するだけでは、ビームモードに従って、強度が高い部分はよく溶融し、強度が弱い部分は溶融しない部分が出てくる。このため、強度の強弱がプラスチック基材表面の凹凸となって現れたり(照射ムラ)、金型またはスタンパーの微細凹凸部が転写された部分とされない部分とが現れる(転写ムラ)。従来技術は、単純にレーザを照射する場合しか検討されておらず、照射ムラや転写ムラが避け難い。しかし、プラスチック基材の表面全体に均一にレーザビームを照射して照射ムラや転写ムラを解消する方法は従来検討されていなかった。
【0018】
(8)プラスチック基材表裏両面への微細形状転写
赤外線透過材料を金型またはスタンパーの一部として用い、これを通してプラスチック基材に赤外線を照射する方法では、従来は、射出成形を除いて、上型および下型の双方の表面に形成された微細な凹凸形状を、プラスチック基材の表裏両面に同時に形成することはできなかった。しかし、実用的な製品では、表裏両面に微細凹凸形状を同時に一括して形成することが必要となるものがあり、そのためには、新規な手段を講ずることが必要である。
【0019】
(9)成形サイクルの安定性
赤外線透過材料を金型またはスタンパーの一部として用い、これを通してプラスチック基材に赤外線を照射する方法では、赤外線透過材料の殆ど全ては赤外線の一部を吸収し、徐々に温度が上昇する。また、プラスチック基材の赤外線照射面が赤外線を吸収して温度上昇した場合、プラスチック基材の赤外線照射面と相接する赤外線透過材料にプラスチック基材からの熱が伝わり温度が上昇する。このため、安定した成形サイクルで繰り返し転写を行うためには、赤外線透過材料の温度を毎成形サイクル一定になるように、転写終了後に冷却しなければならない。しかし、従来の技術では、このような温度条件の管理については全く検討されず、実用性がなかった。
本発明は、上記のような従来の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記スタンパーの裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする微細転写方法である。
【0021】
請求項2の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体の幅方向に長く設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする請求項1に記載の微細転写方法である。
【0022】
請求項3の発明は、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写した後、冷却手段によって前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に剥離手段によって前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の微細転写方法である。
【0023】
請求項4の発明は、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写方法である。
【0024】
請求項5の発明は、前記微細な凹凸形状の幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0025】
請求項6の発明は、前記基材が固体状の熱可塑性樹脂または溶融状の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0026】
請求項7の発明は、前記基材が、−125〜290℃のガラス転移温度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0027】
請求項8の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーの裏面から赤外線を照射するための赤外線光源と、
前記スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記スタンパーおよび基材を加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記スタンパーの表面に前記基材を装着し、前記スタンパー裏面を前記支持体で支持し、前記加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体に設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記移動手段により前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして長手方向に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記冷却手段によって前記スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材とスタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0028】
請求項9の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する上型スタンパーおよび表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなる下型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーの裏面側に設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記下型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型、下型および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記加圧手段に固定し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記上型スタンパーで基材を加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型および加圧手段を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の下型スタンパーと接する面に下型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、前記基材の上型スタンパーと接する面に前記上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を前記加熱手段による加熱溶融と加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0029】
請求項10の発明は、各々が表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパーおよび上型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの裏面に各々設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと各々の赤外線光源との間に各々設けられ、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面と上型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型および下型を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型スタンパー支持体と上型スタンパー支持体を前記加圧手段に固定し、前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記上型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面と上型スタンパー表面との間隙に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記基材を上型スタンパーおよび下型スタンパーで加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型および下型を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面および上型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと接する面に前記下型スタンパー表面および上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0030】
請求項11の発明は、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成された支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記支持体上を移動させるための移動手段と、
前記スタンパーを加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0031】
請求項12の発明は、前記支持体または上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体が、前記スタンパーが移動する方向順で、加熱部位、断熱部位、冷却部位およびスタンパー真空吸着部位を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0032】
請求項13の発明は、前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの一部が、波長10.6μmの赤外線を40%以上透過するFZシリコンで形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0033】
請求項14の発明は、前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの少なくとも一部が、FZシリコン、ZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0034】
請求項15の発明は、前記上型スタンパーおよび下型スタンパーの少なくとも一部が、Ni電鋳で形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0035】
請求項16の発明は、前記赤外線光源が、赤外線ランプ、炭酸ガスレーザまたはYAGレーザであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0036】
請求項17の発明は、前記赤外線光源から照射される赤外線が、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構、または、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーにより線状ビームに変形され、該線状ビームが、前記支持体または前記上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体の幅方向に設けられたスリット状の開口部を通過することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0037】
請求項18の発明は、前記スタンパーまたは前記上型スタンパーまたは下型スタンパーの厚さが0.3mm〜30mmであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0038】
請求項19の発明は、前記加圧手段によって与えられる加圧力が0.1MPa〜10MPa、さらに好ましくは0.1〜1MPaであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0039】
請求項20の発明は、前記支持体および前記下型スタンパー裏面と接する下型スタンパー支持体および上型スタンパー裏面と接する上型スタンパー支持体の表面の少なくとも一部が、低摩擦すべり軸受、転動軸受またはコンベアーで形成されたことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0040】
請求項21の発明は、前記加熱手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に加熱用ヒータを設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0041】
請求項22の発明は、前記冷却手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に水冷配管を設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0042】
請求項23の発明は、前記剥離手段が、前記上型、下型、上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体に設けた真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子からなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、基材をスタンパーに押圧するとともに、線状の赤外線ビームをスタンパーに照射しながら、基材とスタンパーとを固定した状態で長手方向に移動させることにより、スタンパーと接する基材の表層を溶融、膨張させることで、スタンパーの微細な凹凸形状に残存する空気を逐次排除しながら加圧転写を行うことができるので、空気の残存による微細な凹凸形状の転写の阻害を解消でき、1MPa以下の極低圧でも十分な転写が可能となる。この結果、基材に残留応力や複屈折が残存せず、光学特性に優れた成形体を得ることができる。しかも、基材全面に均一に赤外線を照射し、照射ムラによる凹凸を解消することができるので、辺長が数cm〜数十cmの大面積にわたり良好な転写面を得ることができる。また、赤外線を照射するスタンパーとして、その殆どが脆性材料である赤外線透過材料、例えば厚さによって赤外線透過率が低下するFZシリコン(0.5mm厚さで50%、1mm厚さで43%、厚さ5mmで9%)やGe(厚さ1mmで47%、厚さ5mmで46%、厚さ10mmで45%)などの材料を用い、しかも0.3〜1mm程度の薄いスタンパーを用いても、スタンパーに殆ど曲げが作用せず、したがって曲げによる破壊が生ずることが無い。この結果、極めて薄く安価な赤外線透過材料を使用できる。また、スタンパーと基材を加熱冷却するための加熱部位、冷却部位を独立して設けた形態で、しかも熱容量の小さい薄いスタンパーを用いることができるので、スタンパーの加熱から冷却への移行を迅速にできるので、基材の加熱冷却が極短時間で可能となり、高い生産性が得られる。なお、上型スタンパーと下型スタンパーの温度を独立して制御する形態によれば、基材で赤外線を照射する面と照射しない面の冷却過程での熱収縮による熱応力を制御できるので、基材のソリ変形を解消することができる。さらには、基材の裏表両面に微細な凹凸形状を転写する形態では、基材の表裏両面に赤外線ふく射を同時に行って転写を行うので、従来は難しかった表裏両面への微細凹凸形状の付与が可能となり、高い生産性で大面積の表裏両面の微細凹凸形状製品を作製することが可能となる。また、加熱、冷却、離型の工程を繰り返し連続的に実施することにより、安定した成形サイクルでの生産が可能となる。さらにまた、スタンパーと基材の温度制御と急速冷却により、基材とスタンパーとの剥離を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながらさらに説明する。
図1は、本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。図1(a)は、該装置の正面図、(b)は側面図である。
本発明で使用される基材は、赤外線を吸収し、その表層が溶融可能な材料であればとくに制限されず、例えばプラスチックや低融点ガラスが挙げられるが、以下は、本発明に好適なプラスチックを基材として用いた形態について説明する。 図1において、微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lは、厚さが0.3〜1mmのFZシリコンであり、10.6μm波長の赤外線を40%以上透過する。微細な凹凸形状は、例えば幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲である。下型スタンパー1Lの表面1La上にプラスチック基材2を装着する。プラスチック基材2の厚さは50μm〜数mmである。プラスチック基材2は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリスチレン、PET樹脂など、赤外線を吸収する樹脂であればとくに制限されないが、−125〜290℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が好ましい。なお、下型スタンパー1Lに装着するプラスチック基材2は、固体状以外にも、溶融した状態の熱可塑性樹脂を下型スタンパー1Lに塗布等によって装着してもよい。下型スタンパー1Lを、下型スタンパー支持体5Lの上に載せている。上型12Uには、加熱手段9として電熱ヒータを設け、冷却手段10として水管を設け、離型手段11として機械式エジェクターを設けている。加圧手段6により、上型12Uをプラスチック基材2に向けて加圧し、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧している。下型スタンパー支持体5Lには幅方向7に長いスリット状の開口部8を設け、その下から炭酸ガスレーザ13によりビーム状の赤外線3を照射して揺動ミラー16を揺動させることにより線状のレーザビームを形成し、開口部8を通して下型スタンパー1Lに線状に照射する。以上の構成において、加熱した上型12Uを通して加圧手段6によりプラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧しながら、下型スタンパー1Lの裏面1Lbに線状の赤外線3を照射しながら、加圧手段6、上型12U、プラスチック基材2および下型スタンパー1Lを一体として、長手方向4に移動させる。これによって、プラスチック基材2で微細な凹凸形状を含めて製品となる転写面全体に均一に赤外線3が照射され、赤外線3が照射された面が溶融して下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状がプラスチック基材2に形成される。ここで、下型スタンパー1Lと下型スタンパー支持体5Lとは、互いに摺動または転動可能に形成されており、摺動の場合は、下型スタンパー支持体の摺動部はテフロン樹脂、テフロンコーティング製合金、その他低摩擦すべり軸受などで形成されている。転動の場合は、転動軸受またはコンベアー等で形成されている。所定の平面度が保たれたコンベアーを使用してもよい。下型スタンパー支持体5Lには、1cm前後のごく狭い幅の開口部8が線状に形成されており、ここの部位にスタンパーを押し付けても、スタンパーには殆ど曲げが作用しない。このため、その多くが脆性材料である赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lが薄いものであっても、曲げによる破壊を生じない。続いて下型スタンパー1Lは、図2(a)に示したように、下型スタンパー支持体5Lの加熱部位5LH、断熱部位5LI、冷却部位5LCを経て、図2(b)に示したように真空吸着部位5LVで下型スタンパー1Lを支持体に吸着し、この状態で図3(a)に示したように上型12Uを開くことで、表面に微細凹凸形状が転写されたプラスチック基材2を離型する(図3(b))。
【0045】
実際に、赤外線透過材料として直径3インチ、厚さ0.5mmのFZシリコンを使用し、本FZシリコンに50μm角の格子と、5〜50μmまで5μmピッチで形成したライン&スペースとを、深さ10μmに加工した下型スタンパー1Lの一部を図4に示す。この下型スタンパー1Lを用い、下型スタンパー支持体5Lは常温のままとし、冷却も自然放冷とし、炭酸ガスレーザ出力は55W、十分な強度を有するビーム径(ビーム強度がピークの1/e2となるビーム直径)をφ7mmとして下型スタンパー1Lの裏面1Lbに幅方向7で照射した。プラスチック基材2としては幅4cm×長さ5cm×厚さ3mmの固体状アクリル樹脂を使用した。線状ビームを形成するための揺動ミラー16の周波数は1Hzとし、照射する線状ビームの幅は5cmとした。プラスチック基材2、下型スタンパー1L、加圧手段6、上型12Uを一体として長手方向4に移動させる速度は5mm/sとし、長手方向4に6cm動かした後、逆方向に6cm移動させた。すなわち、プラスチック基材2を1往復させながら線状ビームを照射した。加圧力は0.1MPa〜10MPaが採用できるが、本形態では0.1MPaとした。照射時間は(60mm/5mm/s)×2=24秒である。55Wのレーザ出力の場合、FZシリコンを透過したエネルギーは28Wであった。このため、照射密度は28W/(0.72・π/4)=72W/cm2であった。この状態では、図5に示すように、5mm/sで長手方向4にスタンパーを7cm移動させながら、幅5cm(振幅)で1Hzの周波数で線状ビームを形成した場合、十分なビーム強度がφ7mmであるので、実線20で表される照射プロファイルによれば、プラスチック基材2には、レーザビームが照射されない領域は無く、4cm×5cmのアクリル樹脂全面に、均一にレーザビームが照射されることになる。すなわち、図5に示したように、ビームの揺動機構を用いる場合、レーザビームが往復動するために振幅の両端で極短時間でも停止するため、両端での照射時間が他の領域に比べて長くなり、両端とそれ以外では照射エネルギーが不均一となり、照射ムラによるプラスチック基材表面のデコボコを生じやすい。このため、図5に示したように、ビームが極短時間停止する両端を除く領域で、プラスチック基材2の製品領域全面に均一にレーザが照射されるようにすることが重要である。この結果、4cm×5cmのアクリル製プラスチック基材に形成された微細な凹凸形状を図6に示す。図4で示したFZシリコンの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状が、ほぼ100%の転写率(転写体の凹凸高さ/スタンパーの凹凸高さ)で得られた。また、微細な凹凸形状面以外はFZシリコンと同様の平滑な平面となった。以上より、上型12U、下型スタンパー1L、下型スタンパー支持体5Lを何ら加熱冷却することなく、0.1MPaという極低圧で加圧しながら、28秒間炭酸ガスレーザを照射するだけで、深さが10μmで5〜50μmのライン&スペース、同じ深さで50μm角の格子を十分に転写でき、しかも、極めて良好な表面性状を得ることができた。
【0046】
図7および8は、本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。図7は、該装置の正面図、図8は、側面図である。図7および8に示された装置は、前述の図1の装置とほぼ同じ構成を有するが、下型12Lに赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lを固定し、上型12UにはNi電鋳でできた、表面1Uaを有する上型スタンパー1Uを固定し、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1Uおよび下型スタンパー1Lを一体として長手方向に移動させる移動手段14を設けた点が異なっている。
まず、図8に示したように、上型12U、下型スタンパー支持体5Lが加熱された状態でプラスチック基材2を、下型スタンパー1Lの上に固定する。
【0047】
図18は、下型12Lに微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lを固定した状態を示す図である。図18において、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。φ3インチ、厚さ0.5〜1mmのFZシリコンを下型スタンパー1Lとして使用している。これを、プラスチック基材2を装填するための四角形の枠を有する下型で固定している。ここで、FZシリコン以外に、Ge、ZnSe、ZnS、NaCl、BaF2、KBr、CaF2などを下型スタンパー1Lとして使用してもよい。
【0048】
次に、図9に示したように、加圧手段6により上型12Uを閉じ、上型12Uでプラスチック基材2を加圧することにより、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押し付けることで、プラスチック基材2に予熱を与える。ここで予熱を与えるのは、プラスチック基材2の面積が大きい場合に、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2との密着性をよくするためと、上型スタンパー1Uを加熱してプラスチック基材2の上面に上型スタンパーの表面1Uaの微細な凹凸形状を転写するためである。上型12Uはプラスチック基材2のガラス転移温度前後に加熱する。下型スタンパー1Lについては、プラスチック基材2との密着性を高めるための最小限の加熱でよい。
【0049】
この状態で、図10に示したように、移動手段14により、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1U、下型スタンパー1L、プラスチック基材2とを一体として長手方向4に移動させながら、下型スタンパー支持体5Lに設けられた幅方向7に長いスリット状の開口部8を通して、赤外線3を下型スタンパー1Lの裏面に向けて線状に照射する。下型スタンパー1L全体に均一に赤外線3が照射されるとともに、図5に示したように、プラスチック基材2の全面に照射ムラが無いように、照射する。なお、図11に示したように、長手方向で左右に数回往復させることで、赤外線ふく射による微細な凹凸形状の転写率を確実なものにしてもよい。前述の通り、開口部8はごく幅が狭いスリット状であるので、この部位に下型スタンパー1Lを押し付けても、下型スタンパー1Lに曲げは殆ど作用せず、下型スタンパーが薄い脆性材料であっても、曲げによる破壊を生ずることが無い。
【0050】
これらを完了したら、図12に示したように、加圧手段6および加熱手段9により、加圧力を適度に調整しながら加熱を行い、プラスチック基材2表裏面での収縮差を無くしてそり変形を防止する。
【0051】
以上で賦型を完了すると、図13に示したように、移動手段14により、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lおよびプラスチック基材2を一体として、下型スタンパー支持体5Lの断熱部位5LIを通って隣接する冷却部位5LCに移動することにより、下型スタンパー1Lおよびこれと接するプラスチック基材2の微細な凹凸形状面を急速に冷却する。下型スタンパーを極めて薄くできるので、急速な冷却が可能となる。さらに、図14に示したように、真空吸着部位5LVより図示しない真空ポンプで下型スタンパー1L裏面を真空吸着することにより、離型の準備をする。そして、図15に示したように、加圧手段6により上型12Uを開くと、上型スタンパー1Uに付着したプラスチック基材2が上型スタンパー1Uと同時に上昇し、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2とが剥離する。これは、上型スタンパーの温度が下型スタンパー1Lよりも少し高温となるように制御することにより、上型スタンパー1Uとプラスチック2との付着力が、下型スタンパー2とプラスチック基材2との付着力よりも大きくすることで行う。下型スタンパーに線膨張率が2.6×10-6℃-1と小さくかつ赤外線透過材料であるFZシリコンを用いると、プラスチック基材2との線膨張率との差が非常に大きくなり(例えばアクリル樹脂の線膨張率は50〜90×10-6℃-1)、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2の温度が低くなるに従って、賦型時の温度から離型時の温度までの温度降下量に対応する熱収縮量の差異が大きくなり、この結果、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2との間でズリ変形に伴う剥離力が発生して剥離が容易になる。これに対して、上型スタンパー1UにNi電鋳を用いると、Niの線膨張率は13.4×10-6℃-1であることから、FZシリコンに比べてプラスチック基材2との線膨張率の差は小さいため、例え上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lとが同じ温度であったとしても、上型スタンパー1Uとプラスチック基材2との剥離力のほうが下型スタンパー1Lに対して小さくなる。このため、上型スタンパーに付着しやすくなる。なお、前記とは逆に、下型スタンパー1LをNi製とし、上型スタンパー1UをFZシリコンにし、赤外線を上型スタンパーの裏面を通して照射する形態でもよい。
【0052】
次に、図16に示したように、上型12Uに内蔵した離型手段11である機械式エジェクターによりプラスチック基材2を突き出して成形を完了し、図17に示したように、洗浄手段15で上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lを洗浄する。以上の成形サイクルを繰り返すことにより、表裏面に微細な凹凸形状を有するプラスチック基材2を連続的に生産することが可能となる。本微細転写装置を用いて、赤外線透過材料であるFZシリコンとして厚さ0.5〜1mm、直径8インチまでのものを使用して、直径180mmの成形品を製作できた。さらに大口径のFZシリコンを用いれば、より大きな成形品を作製することが可能となる。
【0053】
図19は、本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。図19は、該装置の正面図を示す。なお符号は、前記の図面と同じ意味である。図19は、上型スタンパー1Uおよび下型スタンパー1Lの双方に赤外線透過材料を用いて、プラスチック基材2の表裏両面に、赤外線3を照射して微細な凹凸形状を付与するための装置の実施例である。上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lはともに厚さ0.5〜1mmの赤外線透過材料であるFZシリコンを使用した。
上型12Uには、10mm以上の厚さでも赤外線透過率が90%以上であるZnSeを使用した。下型スタンパー支持体5L上に、下型スタンパー1L、プラスチック基材2、上型スタンパー1U、上型12Uを重ね、これらを下型12Lに装填した。揺動ミラー16を加圧手段6の下型スタンパー支持体5Lおよび上型スタンパー支持体5Uの背面に形成した。炭酸ガスレーザ13から出射されるレーザビームをビームスプリッター17を介して上下に分割し、固定ミラー18を経て、上型スタンパー1Uの裏面1Ubと下型スタンパー1Lの裏面1Lbに揺動ミラー16を介して線状に照射する構成とした。
【0054】
図20および21に示すように、加圧手段6により上型スタンパー支持体5Uを閉じて上型12Uを加圧し、プラスチック基材2を上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lで押圧する。これと同時に、揺動ミラー16を介して炭酸ガスレーザ13から出射されるレーザビーム3を上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lの各々の裏面からプラスチック基材2に向けて線状に照射しながら、移動手段14により長手方向4に上型スタンパー1U、下型スタンパー1L、上型12U、下型12L、プラスチック基材2を一体として移動させることにより、プラスチック基材の表裏両面に赤外線照射による微細凹凸形状の形成を行う。成形サイクルは図7〜17で示した形態と同様である。なお、符号5UH、5UI、5UC、5UVは、それぞれ加熱部位、断熱部位、冷却部位、真空吸着部位であり、先の符号5LH、5LI、5LC、5LVと同様に、上型スタンパーの急速な加熱、冷却、容易な離型を行うために設けられている。以上により、上下両面の全体に均一に赤外線を照射しながら、極めて短時間で、表裏両面に微細な凹凸形状を有し、なおかつ表裏両面に照射ムラの無い円滑な表面性状を有するプラスチック基材を得ることができた。
【0055】
図22は、四角形のプラスチック基材2を、下型12Lおよび表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパー1L上に固定し、下型スタンパー1Lの裏面から赤外線3を線状に照射しながら、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧しながら、プラスチック基材2、下型12Lおよび下型スタンパー1Lを一体として長手方向4に移動させた時の、下型スタンパー裏面から見た状態を示す。プラスチック基材2の微細な凹凸形状を有する表面を均一に加熱溶融し、微細な凹凸形状を転写するとともに照射ムラのない平滑な表面性状を得るためには、図22に示すように、線状ビームの幅と長手方向への照射距離が、プラスチック基材の幅と長さよりも大きくなるように照射する必要がある。これは、レーザビームの強度分布において、赤外線3のビーム強度が最大強度の1/e2倍となる直径をφBとし、プラスチック基材の幅W、長さLとおくと、
線状ビームの振れ幅WB>W+φB、線状ビームの照射長さLB>L+φB
を満たすことである。これは、図5において、プラスチック基材2の幅×長さ=4cm×5cm、ビーム径=7mmに対して、線状ビームの振れ幅×照射長さ=5cm×6cmでは満足されている。
【0056】
図23は、本発明の微細転写方法において、赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lの表面に形成された微細な凹凸形状をプラスチック基材2に加圧しながら、下型スタンパー1Lの裏面より線状に赤外線を照射することで、下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状に残存する空気が、溶融・転写される領域から未溶融で未転写の領域に向けて排出されていく様子を示す。図23(a)において、赤外線が照射されると、照射した部分の樹脂は溶融、膨張する(符号231)。これに加圧力が作用することで、図23(b)に示したように、溶融し膨張した樹脂231は、逐次、下型スタンパー1Lの微細な凹凸部に充填され、空気が未溶融の領域に向けて逐次排出され(矢印232)、全体として円滑に微細な凹凸がプラスチック基材2に転写されていく(図23(c)〜(d))。この結果、下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状に残存する空気がプラスチック基材2への微細な凹凸形状の転写を阻害することが無いので、表面性状が平滑で、なおかつ1MPa以下の超低圧で、なおかつ短時間に微細凹凸形状のプラスチック基材2への転写が可能となった。
【0057】
なお、前記では、スタンパーとしてFZシリコンを例にとり説明したが、本発明ではこれに限定されず、それ以外の赤外線透過材料、例えばZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていてもよい。
また、赤外線光源は、炭酸ガスレーザのほかに、赤外線ランプまたはYAGレーザ等であってもよい。
また、前記の揺動ミラー以外の揺動機構としては、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構等が、線状ビームの形成方法としては、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーを使用する方法が挙げられる。
また、前記加熱手段としては、下型、下型スタンパー支持体、上型、上型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、温度制御のために熱電対を設けてなるのが好ましい。同様に前記冷却手段としては、下型、下型スタンパー支持体、上型、上型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、温度制御のために熱電対を設けてなるのが好ましい。
さらに前記剥離手段としては、上型、下型、上型スタンパー支持体、下型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、例えば真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子等を利用することができる。
【0058】
なお、前記では赤外線照射を必須とする微細転写方法および装置について説明したが、微細加工後のプラスチック基材の容易な剥離が困難であるという、従来の課題の一つは、例えば図1〜3で説明した装置を用いて克服が可能である。すなわち、赤外線照射をとくに用いることなく、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面にプラスチック基材を装着し、スタンパー裏面を、スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記プラスチック基材をスタンパーに押圧しながら、支持体上で前記スタンパーおよびプラスチック基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、スタンパー表面と面するプラスチック基材表層全体を溶融および加圧することにより、スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、プラスチック基材表層に転写させ、その後、スタンパーおよびプラスチック基材を冷却手段に移動させ、スタンパーおよびプラスチック基材を冷却し、次にスタンパーおよびプラスチック基材を剥離手段に移動させ、スタンパーおよびプラスチック基材を剥離することにより、微細な凹凸形状の付与後、製品の容易な剥離が可能となる。これは、本発明ではスタンパーとプラスチック基材の温度制御と急速冷却が可能であることに基づいている。すなわち、加熱したプラスチック基材とスタンパーを、急速に冷却すると、プラスチック基材の線膨張率はシリコンやニッケルからできたスタンパーの線膨張率の10倍以上大きいので、冷却してプラスチック基材が収縮する過程で、プラスチック基材とスタンパーとの界面に大きなひずみ速度およびこれと対応したずり応力が生じ、プラスチックとスタンパーとの間に剥離力が生ずるためである。なお、図7〜17に示したような、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型、加圧手段、移動手段、加熱手段、冷却手段、剥離手段を備えた装置を用いても、同様な効果が奏されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、前記の従来の課題を解決することができ、従来のホットエンボス法、射出成形法、圧縮成形法、ナノインプリント法に比べて格段に優れた製品を高い生産性で生産可能な微細転写方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図2】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図3】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図4】実施の形態で使用したスタンパーのSEM写真である。
【図5】実施の形態で採用した赤外線照射プロファイルである。
【図6】実施の形態で製造された成形品の微細な凹凸形状のSEM写真である。
【図7】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図8】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図9】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図10】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図11】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図12】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図13】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図14】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図15】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図16】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図17】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図18】下型に微細な凹凸形状を有する下型スタンパー1Lを固定した状態を示す図である。
【図19】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図20】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図21】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図22】プラスチック基材を下型スタンパー上に固定した時の、下型および下型スタンパー裏面から見た状態を示す図である。
【図23】本発明の微細転写方法において、下型スタンパーの微細な凹凸形状に残存する空気が、溶融・転写される領域から未溶融で未転写の領域に向けて排出されていく様子を示す図である。
【図24】炭酸ガスレーザのビーム強度分布を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
1L:下型スタンパー、1La:下型スタンパー表面、1Lb:下型スタンパー裏面、1Lc:下型スタンパーの微細な凹凸形状、1U:上型スタンパー、1Ua:上型スタンパー表面、1Ub:上型スタンパー裏面、2:プラスチック基材、3:赤外線ビーム、4:長手方向、5L:下型スタンパー支持体、5LH:加熱部位、5LC:冷却部位、5LI:断熱部位、5LV:真空吸着部位、6:加圧手段、7:幅方向、8:開口部、9:加熱手段、10:冷却手段、11:離型手段、12L:下型、12U:上型、13:赤外線光源、14:移動手段、15:洗浄手段、16:揺動機構、17:ビームスプリッター、18:固定ミラー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細転写方法および装置に関するものであり、詳しくは、従来のホットエンボス法、射出成形法、圧縮成形法、ナノインプリント法に比べて格段に優れた製品を高い生産性で生産可能な微細転写方法および装置に関するものである。本発明の方法および装置によれば、表面に微細な凹凸形状を有するとともに、辺長が数cm〜数十cmの大面積の製品を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、光硬化性プラスチックないしは低融点ガラスなどの材料からなり、表面に数nmから数百μmの微細な凹凸形状を形成した部材には、回折格子、マイクロレンズアレイ、CD、DVD、Blu−rayディスク用ピックアップレンスなどの光学部品、CD、DVD、Blu-ray Disk、大容量ハードディスクなどの光記憶媒体、光導波路、光スイッチ、光ファイバー接合用V溝、コネクターなどの光通信部品、液晶表示用導光板、高輝度フロントライト、波長板、表面無反射構造体、有機ELレセプター、有機TFT隔壁、光学位相板などの電子ディスプレィ部品、μ−TAS、化学合成チップ、DNAチップ、指紋センサーアレイ、タンパクチップ、微生物検出チップ、診断チップなどのライフサイエンス用部材などがある。これらの部材を製造する現在の方法として、射出成形法、ホットエンボス法、ナノインプリント法などが挙げられる。
【0003】
射出成形法は、数百nmからの微細凹凸形状を金型表面に形成し、加熱溶融した樹脂を閉じた金型に数十MPa〜200MPaの高圧で充填し、冷却・固化して離型し、取り出す方法である。この方法は極めて高い生産性が得られ、複雑三次元形状を自由に成形でき、自動化が容易であるという特徴があり、最も普及したプラスチック成形加工法となっている。射出成形法により、数百nm幅の微細ピットを有するDVDが3秒前後のサイクルタイムで生産されている。また、レンズ、回折格子、液晶表示バックライト用導光板など、表面に数百nmから数百μmの微細凹凸形状を有する部材の多くに適用されている。しかし、常温近くに冷却された金型に、200〜350℃の溶融樹脂を高圧で充填するため、成形品に高い残留応力、複屈折、歪、ソリ変形を生じ、光学特性が損なわれやすい。また、樹脂の充填を開始する金型スプルーから流動末端までの圧力勾配が大きく、流動末端に樹脂が十分に充填されにくく、さらには、樹脂が流動末端に向けて進むに従って、樹脂が金型に冷やされて温度が下がり、流動性が低下するので、流動末端における金型壁面の微細な凹凸形状を転写することが難しいという課題があった。また、冷却された金型表面に樹脂が接触しながら流動するので、金型壁面に接する樹脂の粘度が上昇し、さらには金型壁面近くに樹脂の固化層を形成するので、金型壁面に形成された微細な凹凸形状を充填できず、十分な転写性を得ることが難しかった。
【0004】
ホットエンボス法は、固体状の樹脂を金型に装填し、金型を樹脂のガラス転移温度近辺まで加熱し、金型で樹脂を加圧して樹脂を加熱・軟化させながら、金型の微細凹凸部に樹脂を加圧充填し、その後に樹脂を冷却、固化して離型する成形方法である。金型の微細凹凸部は、金型に直接機械加工をするか、あるいは、LIGAプロセスやフトリソグラフィ技術で表面に微細な凹凸形状を形成した板状のスタンパーを金型に装着すること等で付与される。この方法により、ナノメートル〜マイクロメートルの微細な凹凸を樹脂に形成できると言われている。この方法は、射出成形に比べて、樹脂の流動変形量と変形速度が小さいので、微小な凹凸形状を成形するのに有利と言われている。また、流動による樹脂の変形量が小さく、しかも加熱がゆっくりと定常状態を保ちながら進行するので、成形品内部の残留応力が小さいというメリットがある。さらには、流動を生じるのに必要な圧力勾配が小さく、樹脂の平面内に均一に圧力が加わるので、低圧での成形ができ、薄肉の成形品を得られやすい。しかし、1成形サイクル内で金型を加熱、冷却するのに数分の時間を要するので生産性が低く、成形サイクルは、冷却した金型に樹脂を充填する射出成形が数秒〜数十秒であるのに対し、1サイクル内での金型の加熱冷却を必要とするホットエンボス法では数分〜数十分が必要である。また、加熱軟化させると言えども固体に近い樹脂を加圧変形させるので、数十MPaの高圧を要する。さらに、固体状態に近い樹脂を変形させることにより、金型の微細凸部を樹脂に押し込む時に樹脂の角部に大きな弾性変形と丸みを生じ、この部分の歪が大きくなり光学特性を損なうという問題がある。成形品の品質は、単に形状精度だけできまるのではなく、光学部品、ディスプレィ素子等においては、特に成形品内部の性状(残留歪、複屈折分布)を向上させる必要があるのであり、前記の光学特性を損なうことは、基本的な欠点と言える。さらには、金型に微細凸部を押し込む時に、金型の微細凹部に空気が封じ込められ、これが金型の微細凹凸部の樹脂への転写を阻害することになる。このため、金型内を真空状態に維持して成形する必要があり、設備コストが上がり、真空引きと大気圧への開放のために時間を要し生産性を損なうという問題がある。また、得られる製品形状が平面形状に限定され、三次元形状どころか偏肉形状を作ることも難しいという制約がある。さらには、フィルム・シート状の固体プラスチックを供給する必要があるので、成形に先立って、プラスチックをフィルム・シート状に作製しておかなくてはならない。
【0005】
ナノインプリント法は、1995年Princeton大のChouにより提案された方法であり、ナノメートルスケールの微細な凹凸形状を持つモールド(型)を、ウエハー基板上に形成した樹脂レジストに押し付け、モールドの構造をレジストに転写することでレジストに微細な凹凸形状を形成する。この結果、幅が200nm以下で25nm程度までの微細な凹凸パターンが形成されたと記載されている(下記特許文献1)。しかし、この方法は、前述のホットエンボス法との比較において、基板上に形成した樹脂薄膜にモールドを押し付ける点と、200nm以下の微細パターンが形成できたとする発見を除いては、前述のホットエンボス法と同一であり、従って、ホットエンボス法と同じ問題点を有する。
【0006】
一方、下記特許文献2には、プラスチック射出成形加工における金型の一部を赤外線が透過する材料で構成し、成形工程中の樹脂に対して例えば炭酸ガスレーザを照射して溶融樹脂の冷却速度を制御する方法が提案されている。射出充填中の金型内の樹脂にφ4mmの範囲で炭酸ガスレーザを照射することにより、分子配向に起因する複屈折の除去、転写性の向上などが可能となることを示している。しかも、赤外線透過材料の温度は殆ど上昇しないので、転写性向上のために従来のように金型温度を高く設定する必要性が無く、したがって冷却時間を伸ばす必要がないので、高い生産性が得られることが示されている。炭酸ガスレーザ照射により、金型壁に接触している樹脂を直接赤外線ふく射加熱することで充填中の表面固化層の発生を抑制し、流動と固化に伴う残留複屈折が低減し、金型壁の幅100μm、200μm、深さ100μmの微細な凹凸形状に対する樹脂の転写性が向上することが示されている。赤外線光源としては、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、赤外線ランプが例示されている他、高分子が吸収する範囲で適宜選択できる、とされている。また、赤外線透過材料としては、ZnSe、サファイア、赤外線用ガラスが示されている。実施例では、照射密度80W/cm2の炭酸ガスレーザを充填中の樹脂に照射することにより、金型壁面部の樹脂が高温となり、固化層が消滅し、分子配向層が形成されず、光学的特性に偏奇が無く、残留複屈折が消滅し、転写性が向上することが示されている。ただし、これらの結果はいずれも、成形品のごく小面積のΦ4mmの部分に赤外線を照射して得られた結果であり、大面積への照射による転写性向上の効果、照射した場合の表面状態、特に照射した部分としない部分とにおける照射ムラや外観不良、照射密度が高いことによる焼け、変色などの副作用の発生については何ら確認されていない。
また、赤外線透過材料であるZnSeは厚くするほど極めて高価となる。さらにZnSeは脆性材料で加工が難しく、射出成形のように金型内の樹脂圧力が数十MPa〜200MPaに達する高圧下では、樹脂圧力による曲げ応力を鋼に比べて極めて低く抑える必要があり、このため、ZnSeとして大面積かつ厚肉のものを使うことは、曲げ応力が大きくなるので難しい。また、たとえ赤外線透過材料として大面積で強度が十分なものがあっても、大面積に必要な赤外線を照射するためには、大出力の赤外線光源を要し、経済的に見合わなかった。微細な凹凸形状への加工も難しく、100〜200μmの凹凸形状が加工できる限界であった。これらの理由により、特許文献2の技術は実用上必要な中〜大面積の成形品に対して実用化されることはなかった。
【0007】
一方、特許文献3には、転写面を具えてかつプラスチック材料からなる基材を用意し、転写面を露出した状態で基材を固定し、少なくとも一部が赤外線透過材料からなるスタンパーの賦型面を基材の転写面と密着状態に保持し、スタンパーに対して基材を指向する方向に赤外線を照射することを特徴とするプラスチック成形加工方法が開示されている。これにより、射出成形のような高生産性を維持するとともに、プラスチック材料の転写性を向上させ、併せて均一な物理的特性(例えば光学的特性)を具えた成形品を提供する、とされている。実施例では、転写面を具えた基材としてCD−ROMなどの薄い円盤が示されている。これは、基材の転写面に対して赤外線透過材料を通して赤外線を照射して成形する方法であり、前記のホットエンボス法に対し赤外線照射による転写性向上を図ったものである。
しかし、この方法で、賦型面の一部に赤外線を照射した場合、照射した部分のみが転写され、他の部分は転写されないばかりか、照射された部分とされない部分との間での照射ムラにより賦型面表面の平滑性が損なわれる。本方法では、転写面全体に均一に赤外線を照射する方法は示されていない。また、本発明者らの実験によれば、赤外線を照射しても、少なくとも0.1〜1MPa程度の加圧力がなければ、スタンパー表面の微細な凹凸形状を十分な深さまで転写できないことがわかっている。従って、特許文献3で示されているように、加圧無しで賦型面の転写性を向上するというのは、困難である。
【0008】
また、下記非特許文献1には、二工程赤外線支援精密転写法が提案されている。この方法は、まず従来の射出成形法等でほぼ所要の寸法を満足する素成形品を成形しておく。次に、精密寸法を有し一部に赤外線透過材が設けられている金型内に素成形品を挿入し、外部より赤外線を照射して樹脂表面温度を上昇させて薄い層を溶融させる。その際、温度上昇により体積膨張して型内圧力も上昇するので精密転写が可能となる。CDディスクなども転写成形可能であることが、実験的に検証されている。実験の結果、幅2μm、深さ5.6μmの三角形溝が、加圧力1MPa、金型温度100℃、照射密度55W/cm2で100%近く転写できている。しかし、密閉した金型内に成形品を装填し、微細な凹凸形状を有するスタンパーに赤外線を照射した場合、微細凹凸内に残存する空気が転写を阻害する。この結果、本成形法では、1MPaで加圧し、金型温度を100℃まで上昇させているにも関わらず、転写のために60秒もの時間を要している。また、本成形法でも、金型内の赤外線透過材料の取り付け構成は、先の特許文献2の射出成形金型とほぼ同一であり、射出成形に比べて低圧で済むといえども、脆性材料である赤外線透過材料を大面積化するためには、赤外線透過材料を厚くしなければならず、結果的に高コスト、スタンパー冷却時間の増大による成形時間の増大が必要になる。また、転写できる面積もφ12mmが示されているに過ぎず、大面積での転写については、何等示されていない。さらに、微細形状に転写した後の離型については何ら考慮されていない。
【0009】
なお、特許文献4には、赤外線ふく射を用いた別の転写方法が開示されている。これは、金型に形成した微細パターンを基板表面に転写する方法であり、表面に微細パターンを有する金型を準備し、転写すべき基板表面に金型の表面を隣接させ、基板表面を軟化または液化するために基板表面をふく射し、軟化あるいは液化した基板表面に向けて金型の表面を加圧し、金型を移動して金型表面の微細形状パターンが転写された基板を剥離する方法である。ここで、ふく射としてレーザふく射、レーザふく射の波長は1nm〜100μm、ふく射はランプふく射でもよく、赤外線ふく射も含まれている。また、金型は赤外線透過材料でもよく、基板はポリマーでも良く、金型または全体の基板を実質的に加熱せずにふく射で加熱してもよい、とされている。これらは、実質的には、先の特許文献2、3、非特許文献1の技術と同じであるので、前記と同様の課題を有する。すなわち、照射ムラが無いように転写面全体に均一に照射して平滑な表面を得る点、単に金型を基板に押し当てるだけでは金型の微細な凹凸形状に残存する空気が該部分の転写を阻害する点、大面積の薄いスタンパーを用いる場合に、プレス加圧による曲げの作用により、脆性材料である赤外線透過材料が破損する点、離型を容易にする方法の欠如である。さらに、特許文献4に開示された技術のように、基板表面に形成された薄いポリマー層に金型を押し付けて微細な凹凸形状を形成した場合、ポリマー層と金型との剥離が困難になるが、その具体的な離型方法は規定されていない。また、本方法で微細凹凸面を形成できるのは、基板表面のポリマーへの片面のみであり、両面に微細な凹凸を形成することはできない。
【0010】
【非特許文献1】平成10年度新エネルギー・産業技術総合開発機構・新規産業創造型提案公募事業研究成果報告書、「赤外線照射支援による超精密構文氏射出成形:転写・形成性向上技術の開発」、2000年3月)
【特許文献1】米国特許第5,772,905号明細書
【特許文献2】特許第3169786号公報
【特許文献3】特開2001−158044号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2004/046288A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のような従来の技術の課題は、以下のようにまとめられる。
(1)微細な凹凸形状の高い転写性と光学特性
射出成形法では、低温の金型に溶融樹脂を充填するため、金型壁面に接する樹脂が急激に冷却されて温度降下するため、高粘度化および固化層を形成し、金型壁面の微細な凹凸に樹脂が充填されにくいので転写性が損なわれる。また、樹脂が金型壁面に冷やされて高粘度化および固化しながら流動するので、金型壁面近くに高い残留応力、複屈折、歪、ソリ変形を生じ、光学特性が損なわれる。
ホットエンボス法およびナノインプイリント法では、射出成形に比べると附形時の樹脂の流動変形量および変形速度が小さいので、微細な凹凸形状を形成するのに有利であり、しかも残留応力が小さいと言われる。しかし、固体状態に近い樹脂を加圧変形させるので、微細凸部を基板に押し込む時に樹脂の角部に大きな弾性変形を生じ、光学特性を損なうという問題がある。
特許文献2および3に開示されるように、金型壁面またはスタンパーを赤外線透過材料で形成し、外部から赤外線を照射することにより、型壁に接する樹脂を直接加熱溶融する方法では、金型またはスタンパーの表面に形成された微細な凹凸形状の高い転写性が得られ、残留応力や複屈折が低減される。しかし、微細な凹凸形状を赤外線透過材料に加工する上では、加工性の良い材料が必要である。光透過性が90%以上のZnSeやZnSは加工が難しい。また、高い転写性を高い生産性で得るためには、赤外線照射に加えて、0.1〜1MPa程度の加圧力を作用させる必要がある。しかし、一般に赤外線透過材料は脆性材料であり、加圧力が高くなると曲げにより破損する可能性が高い。また、赤外線透過率は赤外線透過材料の厚さに依存し、厚くなるほど透過率が低くなる。エッチング等による微細加工が容易なシリコンでは、波長10.6μmの炭酸ガスレーザに対して厚さ1mm以下では約43%の透過率を有するが、厚み5mmでは9%以下、厚さ10mmでは1.8%となる。このため、高い微細転写性を得るためには、極力薄い赤外線透過材料を用いることが必要である。また、金型またはスタンパーに形成された微細な凹凸形状をプラスチック基材に押し込む時に、微細凹部に封じ込められた空気が抵抗となり、微細凹凸への転写を阻害する。このため、赤外線ふく射加熱を用いる場合であっても、高い転写性を得るためには、加圧力を作用させながらも極力薄く加工性の良い赤外線透過材料を使用し、なおかつ空気の封じ込みによる転写性阻害を解決する新たな手段を講ずる必要がある。
【0012】
(2)加熱冷却時間と成形圧力
ホットエンボス法やナノインプリント法では、金型、スタンパーあるいはプラスチック基材を電熱ヒータや加熱媒体などの加熱手段によってプラスチックのガラス転移温度付近まで加熱し、金型あるいはスタンパーをプラスチック基材に押し付けてプラスチック表面に微細な凹凸形状を形成した後、プラスチック基材を常温付近まで冷却して離型するものである。この場合、加熱と冷却に少なくとも数分〜十分以上の時間を要し、生産性を損ない、製品のコストアップにつながる。また、固体状態のプラスチックを加圧し、スタンパーからの伝熱によりで軟化させるためには、10MPaを超える高圧を要し、スタンパーや金型に剛性を要する。さらに、プラスチックにスタンパーの凹凸を押し付ける際、軟化したプラスチックは粘弾性的変形を示し、スタンパーと接しない部分は固体として変形するので、この部位に歪が発生し、複屈折を生じて光学的特性を損なうことになる。したがって、できる限りスタンパーとプラスチック基材の加熱・冷却に要する時間を短くするとともに、成形に要する圧力を低減する手段を講ずる必要がある。
特許文献2および3に開示されるように、金型壁面またはスタンパーを赤外線透過材料で形成し、外部から赤外線を照射することにより、型壁に接する樹脂を直接加熱溶融する方法では、金型またはスタンパーを加熱せずに直接樹脂を瞬間的に加熱できるので、生産時間が短縮される。また、非特許文献1に開示された技術では、成形1MPa、金型温度100℃、加圧および赤外線照射時間60秒、照射密度55W/cm2の条件下でμm台の微細な凹凸形状が100%転写できている。しかし、金型を100℃まで上昇させる必要があり、60sもの時間を要している。したがって、射出成形に匹敵する高生産性を確保しながら高い転写性と1MPa以下の低圧での成形を実現するためには、高い転写性を確保するため必要な加熱冷却時間を低減し、なおかつ低圧化ができる新たな手段を講ずる必要がある。
【0013】
(3)赤外線透過材料の破損防止と低コスト化
特許文献2に開示された方法において、赤外線透過材料は通常の金型材料に比べて靭性や強度に劣る。このため、少なくとも10MPa以上の樹脂圧力が赤外線透過材料に作用する射出成形法では、赤外線透過材料が破損するため、実用に耐えることが難しかった。また、シリコンやゲルマニウムなどの赤外線透過材料では、厚さが厚くなるほど赤外線透過率が急速に低下するため、使用できる厚さはシリコンでは1mm、ゲルマニウムでは10mmが限界であり、射出成形に要求される高圧に耐えることは難しかった。さらに、ZnSe、ZnS、Si、Geをはじめとした赤外線透過材料は、面積が大きくなり厚さが厚くなるに従って急激に価格が上昇するため、この点からも実用性がなかった。一方、特許文献3に開示された技術では、微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料製スタンパーの表面にプラスチック基材を固定し、該スタンパーの裏から赤外線を照射することにより、プラスチック基材を加圧しなくても微細な凹凸形状をプラスチック基材に転写できるとされている。しかし、本発明者らの実験によれば、赤外線ふく射加熱を用いる場合であっても、十分な微細な凹凸形状転写を達成するためには、1MPa以下の加圧は必要である。また、転写に十分な加圧力をかけると、特に転写面の面積が大きくなるほど赤外線透過材料が破壊するという問題がある。このため、転写圧力を極力低くするとともに、微細な凹凸形状を中〜大面積(数cm〜数十cm)のプラスチック基材に形成するために必要な、最小限の加圧力を作用させても、赤外線透過材料が破損しない手段を講ずる必要がある。また、コスト低減と赤外線透過率を上げる目的から、できるだけ薄い赤外線透過材料を使用して、なおかつ加圧力を作用させることのできる新たな手段を講ずる必要がある。
【0014】
(4)大面積化
赤外線透過材料でできた金型またはスタンパーを通してプラスチック基材に赤外線をふく射して微細な凹凸形状をプラスチック基材の表面に形成する従来の方法は、いずれの場合においても、直径φ4〜12mm程度の小径ビームをプラスチックのごく一部に照射し、照射された部分の転写性や光学特性を評価したものばかりであり、辺長が数cm〜数十cmの中〜大面積の成形体全体に赤外線を照射する方法および装置については、何ら報告されていない。すなわち、大面積への照射による転写性向上の効果、照射した場合の表面状態については、報告されていない。特に、成形体の一部分のみに赤外線を照射した場合、照射した部分としない部分との境界に転写ムラが生じ、表面がデコボコになって外観を損なう。また、照射密度が高い場合には、特定部位に照射を続けるとプラスチック基材にヤケ、変色が生じる。このため、赤外線透過材料を通して大面積の成形体に均一に赤外線を照射して高い転写性と平滑な表面性状を得るためには、大面積の赤外線透過材料を準備し、これに均一に赤外線を照射する新たな手段を講ずる必要がある。しかし、特に赤外線レーザを用いる場合、単一のビームにより大面積に同時に照射するためには、極めて高出力のレーザが必要である。そこで、単一ビームを線状にして照射することが考えられるが、この場合には、線状の赤外線ビームを赤外線透過材料を通してプラスチック基材に照射しながら、なおかつ基材の全面に均一に赤外線が照射されるようにしながら、しかも前述のように微細な凹凸形状の転写性を確保するための加圧をかけながら、さらには照射ムラの無い平滑な転写面を得るための新規は方法を講ずる必要がある。しかし、大面積の赤外線透過材料に加圧力を加えると、プラスチックに作用する圧力が低くても、面積全体では大きな力が加わり、赤外線透過材料に作用する曲げ応力が大きくなるので、破壊の可能性が高くなる。そこで、赤外線透過材料を厚くすると、材質によっては赤外線透過率が減少し、微細な凹凸形状への転写性を損なう。また、厚くするほど、これを加熱冷却する場合に時間を要し、なおかつ経済性と生産性を損なう。そこで、大面積の赤外線透過材料に赤外線を均一に照射しながら加圧しても、赤外線透過材料に対して破壊に至るような曲げ応力が作用しない機構とし、できる限り大面積で薄い赤外線透過材料を使用して微細凹凸の高い転写性を実現し、しかも、加熱冷却する場合の時間を短くして高生産性を維持する新規な手段を講ずることが必要である。しかしながら、特許文献2〜4の技術では、このような目的を達することはできなかった。
【0015】
(5)急速加熱冷却による生産性の向上
加熱冷却を迅速にして高い生産性を得るためには、できる限り赤外線透過材料を薄膜にして、薄い赤外線透過材料からできたスタンパーを用いることで、加熱冷却を迅速に行うことが必要である。しかし、従来は、脆性材料である赤外線透過材料からできたスタンパーを加圧して破壊しないためには、面積を小さくせざるを得なかった。したがって、薄い大面積のスタンパーでも破損しないような加圧手段を講ずると共に、スタンパーが薄くなるほど加熱、冷却が急速にできる手段を講ずる必要がある。
【0016】
(6)ソリ変形
赤外線透過材料製のスタンパー裏面からプラスチック基材に向けて赤外線を照射した場合、赤外線を照射した面は温度が上昇するが、反対側の非照射面では温度が低いので、プラスチック基材の表面と裏側との間に温度差が生じ、高温側の面が冷却されることにより収縮し、プラスチック基材が照射された側にそるという問題があった。これを解決するためには、赤外線を照射しない面についても、適度の加熱を行い、ソリ変形が生じない新たな手段を講ずる必要があるが、このような問題について、従来は何ら対策が講じられることが無かった。
【0017】
(7)赤外線照射ムラの解消
赤外線透過材料を通してプラスチック基材に赤外線を照射すると、照射された部分には微細形状が転写されるが、照射されない部分では転写されない。また、照射された部分とされない部分との境界に紋様が現れ、成形品の外観を損ねることになる。このため、スタンパーの微細な凹凸が形成されている領域も、凹凸が形成されていない領域も、均一に赤外線を照射する手段を講ずることが不可欠であるが、このような機構について、従来は何ら検討されていなかった。
また、赤外線として10.6μmの波長を発生する炭酸ガスレーザを使用する場合、レーザビームの強度はビーム断面内で一様ではなく、図24に示すように場所によって変わるビームモードが存在する。このため、プラスチック基材に単純に照射するだけでは、ビームモードに従って、強度が高い部分はよく溶融し、強度が弱い部分は溶融しない部分が出てくる。このため、強度の強弱がプラスチック基材表面の凹凸となって現れたり(照射ムラ)、金型またはスタンパーの微細凹凸部が転写された部分とされない部分とが現れる(転写ムラ)。従来技術は、単純にレーザを照射する場合しか検討されておらず、照射ムラや転写ムラが避け難い。しかし、プラスチック基材の表面全体に均一にレーザビームを照射して照射ムラや転写ムラを解消する方法は従来検討されていなかった。
【0018】
(8)プラスチック基材表裏両面への微細形状転写
赤外線透過材料を金型またはスタンパーの一部として用い、これを通してプラスチック基材に赤外線を照射する方法では、従来は、射出成形を除いて、上型および下型の双方の表面に形成された微細な凹凸形状を、プラスチック基材の表裏両面に同時に形成することはできなかった。しかし、実用的な製品では、表裏両面に微細凹凸形状を同時に一括して形成することが必要となるものがあり、そのためには、新規な手段を講ずることが必要である。
【0019】
(9)成形サイクルの安定性
赤外線透過材料を金型またはスタンパーの一部として用い、これを通してプラスチック基材に赤外線を照射する方法では、赤外線透過材料の殆ど全ては赤外線の一部を吸収し、徐々に温度が上昇する。また、プラスチック基材の赤外線照射面が赤外線を吸収して温度上昇した場合、プラスチック基材の赤外線照射面と相接する赤外線透過材料にプラスチック基材からの熱が伝わり温度が上昇する。このため、安定した成形サイクルで繰り返し転写を行うためには、赤外線透過材料の温度を毎成形サイクル一定になるように、転写終了後に冷却しなければならない。しかし、従来の技術では、このような温度条件の管理については全く検討されず、実用性がなかった。
本発明は、上記のような従来の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記スタンパーの裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする微細転写方法である。
【0021】
請求項2の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体の幅方向に長く設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする請求項1に記載の微細転写方法である。
【0022】
請求項3の発明は、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写した後、冷却手段によって前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に剥離手段によって前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の微細転写方法である。
【0023】
請求項4の発明は、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写方法である。
【0024】
請求項5の発明は、前記微細な凹凸形状の幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0025】
請求項6の発明は、前記基材が固体状の熱可塑性樹脂または溶融状の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0026】
請求項7の発明は、前記基材が、−125〜290℃のガラス転移温度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法である。
【0027】
請求項8の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーの裏面から赤外線を照射するための赤外線光源と、
前記スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記スタンパーおよび基材を加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記スタンパーの表面に前記基材を装着し、前記スタンパー裏面を前記支持体で支持し、前記加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体に設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記移動手段により前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして長手方向に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記冷却手段によって前記スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材とスタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0028】
請求項9の発明は、表面に微細な凹凸形状を有する上型スタンパーおよび表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなる下型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーの裏面側に設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記下型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型、下型および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記加圧手段に固定し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記上型スタンパーで基材を加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型および加圧手段を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の下型スタンパーと接する面に下型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、前記基材の上型スタンパーと接する面に前記上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を前記加熱手段による加熱溶融と加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0029】
請求項10の発明は、各々が表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパーおよび上型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの裏面に各々設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと各々の赤外線光源との間に各々設けられ、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面と上型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型および下型を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型スタンパー支持体と上型スタンパー支持体を前記加圧手段に固定し、前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記上型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面と上型スタンパー表面との間隙に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記基材を上型スタンパーおよび下型スタンパーで加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型および下型を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面および上型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと接する面に前記下型スタンパー表面および上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0030】
請求項11の発明は、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成された支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記支持体上を移動させるための移動手段と、
前記スタンパーを加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写装置である。
【0031】
請求項12の発明は、前記支持体または上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体が、前記スタンパーが移動する方向順で、加熱部位、断熱部位、冷却部位およびスタンパー真空吸着部位を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0032】
請求項13の発明は、前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの一部が、波長10.6μmの赤外線を40%以上透過するFZシリコンで形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0033】
請求項14の発明は、前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの少なくとも一部が、FZシリコン、ZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0034】
請求項15の発明は、前記上型スタンパーおよび下型スタンパーの少なくとも一部が、Ni電鋳で形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0035】
請求項16の発明は、前記赤外線光源が、赤外線ランプ、炭酸ガスレーザまたはYAGレーザであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0036】
請求項17の発明は、前記赤外線光源から照射される赤外線が、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構、または、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーにより線状ビームに変形され、該線状ビームが、前記支持体または前記上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体の幅方向に設けられたスリット状の開口部を通過することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0037】
請求項18の発明は、前記スタンパーまたは前記上型スタンパーまたは下型スタンパーの厚さが0.3mm〜30mmであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0038】
請求項19の発明は、前記加圧手段によって与えられる加圧力が0.1MPa〜10MPa、さらに好ましくは0.1〜1MPaであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0039】
請求項20の発明は、前記支持体および前記下型スタンパー裏面と接する下型スタンパー支持体および上型スタンパー裏面と接する上型スタンパー支持体の表面の少なくとも一部が、低摩擦すべり軸受、転動軸受またはコンベアーで形成されたことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0040】
請求項21の発明は、前記加熱手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に加熱用ヒータを設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0041】
請求項22の発明は、前記冷却手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に水冷配管を設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【0042】
請求項23の発明は、前記剥離手段が、前記上型、下型、上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体に設けた真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子からなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、基材をスタンパーに押圧するとともに、線状の赤外線ビームをスタンパーに照射しながら、基材とスタンパーとを固定した状態で長手方向に移動させることにより、スタンパーと接する基材の表層を溶融、膨張させることで、スタンパーの微細な凹凸形状に残存する空気を逐次排除しながら加圧転写を行うことができるので、空気の残存による微細な凹凸形状の転写の阻害を解消でき、1MPa以下の極低圧でも十分な転写が可能となる。この結果、基材に残留応力や複屈折が残存せず、光学特性に優れた成形体を得ることができる。しかも、基材全面に均一に赤外線を照射し、照射ムラによる凹凸を解消することができるので、辺長が数cm〜数十cmの大面積にわたり良好な転写面を得ることができる。また、赤外線を照射するスタンパーとして、その殆どが脆性材料である赤外線透過材料、例えば厚さによって赤外線透過率が低下するFZシリコン(0.5mm厚さで50%、1mm厚さで43%、厚さ5mmで9%)やGe(厚さ1mmで47%、厚さ5mmで46%、厚さ10mmで45%)などの材料を用い、しかも0.3〜1mm程度の薄いスタンパーを用いても、スタンパーに殆ど曲げが作用せず、したがって曲げによる破壊が生ずることが無い。この結果、極めて薄く安価な赤外線透過材料を使用できる。また、スタンパーと基材を加熱冷却するための加熱部位、冷却部位を独立して設けた形態で、しかも熱容量の小さい薄いスタンパーを用いることができるので、スタンパーの加熱から冷却への移行を迅速にできるので、基材の加熱冷却が極短時間で可能となり、高い生産性が得られる。なお、上型スタンパーと下型スタンパーの温度を独立して制御する形態によれば、基材で赤外線を照射する面と照射しない面の冷却過程での熱収縮による熱応力を制御できるので、基材のソリ変形を解消することができる。さらには、基材の裏表両面に微細な凹凸形状を転写する形態では、基材の表裏両面に赤外線ふく射を同時に行って転写を行うので、従来は難しかった表裏両面への微細凹凸形状の付与が可能となり、高い生産性で大面積の表裏両面の微細凹凸形状製品を作製することが可能となる。また、加熱、冷却、離型の工程を繰り返し連続的に実施することにより、安定した成形サイクルでの生産が可能となる。さらにまた、スタンパーと基材の温度制御と急速冷却により、基材とスタンパーとの剥離を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながらさらに説明する。
図1は、本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。図1(a)は、該装置の正面図、(b)は側面図である。
本発明で使用される基材は、赤外線を吸収し、その表層が溶融可能な材料であればとくに制限されず、例えばプラスチックや低融点ガラスが挙げられるが、以下は、本発明に好適なプラスチックを基材として用いた形態について説明する。 図1において、微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lは、厚さが0.3〜1mmのFZシリコンであり、10.6μm波長の赤外線を40%以上透過する。微細な凹凸形状は、例えば幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲である。下型スタンパー1Lの表面1La上にプラスチック基材2を装着する。プラスチック基材2の厚さは50μm〜数mmである。プラスチック基材2は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリスチレン、PET樹脂など、赤外線を吸収する樹脂であればとくに制限されないが、−125〜290℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂が好ましい。なお、下型スタンパー1Lに装着するプラスチック基材2は、固体状以外にも、溶融した状態の熱可塑性樹脂を下型スタンパー1Lに塗布等によって装着してもよい。下型スタンパー1Lを、下型スタンパー支持体5Lの上に載せている。上型12Uには、加熱手段9として電熱ヒータを設け、冷却手段10として水管を設け、離型手段11として機械式エジェクターを設けている。加圧手段6により、上型12Uをプラスチック基材2に向けて加圧し、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧している。下型スタンパー支持体5Lには幅方向7に長いスリット状の開口部8を設け、その下から炭酸ガスレーザ13によりビーム状の赤外線3を照射して揺動ミラー16を揺動させることにより線状のレーザビームを形成し、開口部8を通して下型スタンパー1Lに線状に照射する。以上の構成において、加熱した上型12Uを通して加圧手段6によりプラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧しながら、下型スタンパー1Lの裏面1Lbに線状の赤外線3を照射しながら、加圧手段6、上型12U、プラスチック基材2および下型スタンパー1Lを一体として、長手方向4に移動させる。これによって、プラスチック基材2で微細な凹凸形状を含めて製品となる転写面全体に均一に赤外線3が照射され、赤外線3が照射された面が溶融して下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状がプラスチック基材2に形成される。ここで、下型スタンパー1Lと下型スタンパー支持体5Lとは、互いに摺動または転動可能に形成されており、摺動の場合は、下型スタンパー支持体の摺動部はテフロン樹脂、テフロンコーティング製合金、その他低摩擦すべり軸受などで形成されている。転動の場合は、転動軸受またはコンベアー等で形成されている。所定の平面度が保たれたコンベアーを使用してもよい。下型スタンパー支持体5Lには、1cm前後のごく狭い幅の開口部8が線状に形成されており、ここの部位にスタンパーを押し付けても、スタンパーには殆ど曲げが作用しない。このため、その多くが脆性材料である赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lが薄いものであっても、曲げによる破壊を生じない。続いて下型スタンパー1Lは、図2(a)に示したように、下型スタンパー支持体5Lの加熱部位5LH、断熱部位5LI、冷却部位5LCを経て、図2(b)に示したように真空吸着部位5LVで下型スタンパー1Lを支持体に吸着し、この状態で図3(a)に示したように上型12Uを開くことで、表面に微細凹凸形状が転写されたプラスチック基材2を離型する(図3(b))。
【0045】
実際に、赤外線透過材料として直径3インチ、厚さ0.5mmのFZシリコンを使用し、本FZシリコンに50μm角の格子と、5〜50μmまで5μmピッチで形成したライン&スペースとを、深さ10μmに加工した下型スタンパー1Lの一部を図4に示す。この下型スタンパー1Lを用い、下型スタンパー支持体5Lは常温のままとし、冷却も自然放冷とし、炭酸ガスレーザ出力は55W、十分な強度を有するビーム径(ビーム強度がピークの1/e2となるビーム直径)をφ7mmとして下型スタンパー1Lの裏面1Lbに幅方向7で照射した。プラスチック基材2としては幅4cm×長さ5cm×厚さ3mmの固体状アクリル樹脂を使用した。線状ビームを形成するための揺動ミラー16の周波数は1Hzとし、照射する線状ビームの幅は5cmとした。プラスチック基材2、下型スタンパー1L、加圧手段6、上型12Uを一体として長手方向4に移動させる速度は5mm/sとし、長手方向4に6cm動かした後、逆方向に6cm移動させた。すなわち、プラスチック基材2を1往復させながら線状ビームを照射した。加圧力は0.1MPa〜10MPaが採用できるが、本形態では0.1MPaとした。照射時間は(60mm/5mm/s)×2=24秒である。55Wのレーザ出力の場合、FZシリコンを透過したエネルギーは28Wであった。このため、照射密度は28W/(0.72・π/4)=72W/cm2であった。この状態では、図5に示すように、5mm/sで長手方向4にスタンパーを7cm移動させながら、幅5cm(振幅)で1Hzの周波数で線状ビームを形成した場合、十分なビーム強度がφ7mmであるので、実線20で表される照射プロファイルによれば、プラスチック基材2には、レーザビームが照射されない領域は無く、4cm×5cmのアクリル樹脂全面に、均一にレーザビームが照射されることになる。すなわち、図5に示したように、ビームの揺動機構を用いる場合、レーザビームが往復動するために振幅の両端で極短時間でも停止するため、両端での照射時間が他の領域に比べて長くなり、両端とそれ以外では照射エネルギーが不均一となり、照射ムラによるプラスチック基材表面のデコボコを生じやすい。このため、図5に示したように、ビームが極短時間停止する両端を除く領域で、プラスチック基材2の製品領域全面に均一にレーザが照射されるようにすることが重要である。この結果、4cm×5cmのアクリル製プラスチック基材に形成された微細な凹凸形状を図6に示す。図4で示したFZシリコンの微細な凹凸形状と反転する凹凸形状が、ほぼ100%の転写率(転写体の凹凸高さ/スタンパーの凹凸高さ)で得られた。また、微細な凹凸形状面以外はFZシリコンと同様の平滑な平面となった。以上より、上型12U、下型スタンパー1L、下型スタンパー支持体5Lを何ら加熱冷却することなく、0.1MPaという極低圧で加圧しながら、28秒間炭酸ガスレーザを照射するだけで、深さが10μmで5〜50μmのライン&スペース、同じ深さで50μm角の格子を十分に転写でき、しかも、極めて良好な表面性状を得ることができた。
【0046】
図7および8は、本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。図7は、該装置の正面図、図8は、側面図である。図7および8に示された装置は、前述の図1の装置とほぼ同じ構成を有するが、下型12Lに赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lを固定し、上型12UにはNi電鋳でできた、表面1Uaを有する上型スタンパー1Uを固定し、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1Uおよび下型スタンパー1Lを一体として長手方向に移動させる移動手段14を設けた点が異なっている。
まず、図8に示したように、上型12U、下型スタンパー支持体5Lが加熱された状態でプラスチック基材2を、下型スタンパー1Lの上に固定する。
【0047】
図18は、下型12Lに微細な凹凸形状1Lcを有する下型スタンパー1Lを固定した状態を示す図である。図18において、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は底面図である。φ3インチ、厚さ0.5〜1mmのFZシリコンを下型スタンパー1Lとして使用している。これを、プラスチック基材2を装填するための四角形の枠を有する下型で固定している。ここで、FZシリコン以外に、Ge、ZnSe、ZnS、NaCl、BaF2、KBr、CaF2などを下型スタンパー1Lとして使用してもよい。
【0048】
次に、図9に示したように、加圧手段6により上型12Uを閉じ、上型12Uでプラスチック基材2を加圧することにより、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押し付けることで、プラスチック基材2に予熱を与える。ここで予熱を与えるのは、プラスチック基材2の面積が大きい場合に、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2との密着性をよくするためと、上型スタンパー1Uを加熱してプラスチック基材2の上面に上型スタンパーの表面1Uaの微細な凹凸形状を転写するためである。上型12Uはプラスチック基材2のガラス転移温度前後に加熱する。下型スタンパー1Lについては、プラスチック基材2との密着性を高めるための最小限の加熱でよい。
【0049】
この状態で、図10に示したように、移動手段14により、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1U、下型スタンパー1L、プラスチック基材2とを一体として長手方向4に移動させながら、下型スタンパー支持体5Lに設けられた幅方向7に長いスリット状の開口部8を通して、赤外線3を下型スタンパー1Lの裏面に向けて線状に照射する。下型スタンパー1L全体に均一に赤外線3が照射されるとともに、図5に示したように、プラスチック基材2の全面に照射ムラが無いように、照射する。なお、図11に示したように、長手方向で左右に数回往復させることで、赤外線ふく射による微細な凹凸形状の転写率を確実なものにしてもよい。前述の通り、開口部8はごく幅が狭いスリット状であるので、この部位に下型スタンパー1Lを押し付けても、下型スタンパー1Lに曲げは殆ど作用せず、下型スタンパーが薄い脆性材料であっても、曲げによる破壊を生ずることが無い。
【0050】
これらを完了したら、図12に示したように、加圧手段6および加熱手段9により、加圧力を適度に調整しながら加熱を行い、プラスチック基材2表裏面での収縮差を無くしてそり変形を防止する。
【0051】
以上で賦型を完了すると、図13に示したように、移動手段14により、加圧手段6、上型12U、下型12L、上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lおよびプラスチック基材2を一体として、下型スタンパー支持体5Lの断熱部位5LIを通って隣接する冷却部位5LCに移動することにより、下型スタンパー1Lおよびこれと接するプラスチック基材2の微細な凹凸形状面を急速に冷却する。下型スタンパーを極めて薄くできるので、急速な冷却が可能となる。さらに、図14に示したように、真空吸着部位5LVより図示しない真空ポンプで下型スタンパー1L裏面を真空吸着することにより、離型の準備をする。そして、図15に示したように、加圧手段6により上型12Uを開くと、上型スタンパー1Uに付着したプラスチック基材2が上型スタンパー1Uと同時に上昇し、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2とが剥離する。これは、上型スタンパーの温度が下型スタンパー1Lよりも少し高温となるように制御することにより、上型スタンパー1Uとプラスチック2との付着力が、下型スタンパー2とプラスチック基材2との付着力よりも大きくすることで行う。下型スタンパーに線膨張率が2.6×10-6℃-1と小さくかつ赤外線透過材料であるFZシリコンを用いると、プラスチック基材2との線膨張率との差が非常に大きくなり(例えばアクリル樹脂の線膨張率は50〜90×10-6℃-1)、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2の温度が低くなるに従って、賦型時の温度から離型時の温度までの温度降下量に対応する熱収縮量の差異が大きくなり、この結果、下型スタンパー1Lとプラスチック基材2との間でズリ変形に伴う剥離力が発生して剥離が容易になる。これに対して、上型スタンパー1UにNi電鋳を用いると、Niの線膨張率は13.4×10-6℃-1であることから、FZシリコンに比べてプラスチック基材2との線膨張率の差は小さいため、例え上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lとが同じ温度であったとしても、上型スタンパー1Uとプラスチック基材2との剥離力のほうが下型スタンパー1Lに対して小さくなる。このため、上型スタンパーに付着しやすくなる。なお、前記とは逆に、下型スタンパー1LをNi製とし、上型スタンパー1UをFZシリコンにし、赤外線を上型スタンパーの裏面を通して照射する形態でもよい。
【0052】
次に、図16に示したように、上型12Uに内蔵した離型手段11である機械式エジェクターによりプラスチック基材2を突き出して成形を完了し、図17に示したように、洗浄手段15で上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lを洗浄する。以上の成形サイクルを繰り返すことにより、表裏面に微細な凹凸形状を有するプラスチック基材2を連続的に生産することが可能となる。本微細転写装置を用いて、赤外線透過材料であるFZシリコンとして厚さ0.5〜1mm、直径8インチまでのものを使用して、直径180mmの成形品を製作できた。さらに大口径のFZシリコンを用いれば、より大きな成形品を作製することが可能となる。
【0053】
図19は、本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。図19は、該装置の正面図を示す。なお符号は、前記の図面と同じ意味である。図19は、上型スタンパー1Uおよび下型スタンパー1Lの双方に赤外線透過材料を用いて、プラスチック基材2の表裏両面に、赤外線3を照射して微細な凹凸形状を付与するための装置の実施例である。上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lはともに厚さ0.5〜1mmの赤外線透過材料であるFZシリコンを使用した。
上型12Uには、10mm以上の厚さでも赤外線透過率が90%以上であるZnSeを使用した。下型スタンパー支持体5L上に、下型スタンパー1L、プラスチック基材2、上型スタンパー1U、上型12Uを重ね、これらを下型12Lに装填した。揺動ミラー16を加圧手段6の下型スタンパー支持体5Lおよび上型スタンパー支持体5Uの背面に形成した。炭酸ガスレーザ13から出射されるレーザビームをビームスプリッター17を介して上下に分割し、固定ミラー18を経て、上型スタンパー1Uの裏面1Ubと下型スタンパー1Lの裏面1Lbに揺動ミラー16を介して線状に照射する構成とした。
【0054】
図20および21に示すように、加圧手段6により上型スタンパー支持体5Uを閉じて上型12Uを加圧し、プラスチック基材2を上型スタンパー1U、下型スタンパー1Lで押圧する。これと同時に、揺動ミラー16を介して炭酸ガスレーザ13から出射されるレーザビーム3を上型スタンパー1Uと下型スタンパー1Lの各々の裏面からプラスチック基材2に向けて線状に照射しながら、移動手段14により長手方向4に上型スタンパー1U、下型スタンパー1L、上型12U、下型12L、プラスチック基材2を一体として移動させることにより、プラスチック基材の表裏両面に赤外線照射による微細凹凸形状の形成を行う。成形サイクルは図7〜17で示した形態と同様である。なお、符号5UH、5UI、5UC、5UVは、それぞれ加熱部位、断熱部位、冷却部位、真空吸着部位であり、先の符号5LH、5LI、5LC、5LVと同様に、上型スタンパーの急速な加熱、冷却、容易な離型を行うために設けられている。以上により、上下両面の全体に均一に赤外線を照射しながら、極めて短時間で、表裏両面に微細な凹凸形状を有し、なおかつ表裏両面に照射ムラの無い円滑な表面性状を有するプラスチック基材を得ることができた。
【0055】
図22は、四角形のプラスチック基材2を、下型12Lおよび表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパー1L上に固定し、下型スタンパー1Lの裏面から赤外線3を線状に照射しながら、プラスチック基材2を下型スタンパー1Lに押圧しながら、プラスチック基材2、下型12Lおよび下型スタンパー1Lを一体として長手方向4に移動させた時の、下型スタンパー裏面から見た状態を示す。プラスチック基材2の微細な凹凸形状を有する表面を均一に加熱溶融し、微細な凹凸形状を転写するとともに照射ムラのない平滑な表面性状を得るためには、図22に示すように、線状ビームの幅と長手方向への照射距離が、プラスチック基材の幅と長さよりも大きくなるように照射する必要がある。これは、レーザビームの強度分布において、赤外線3のビーム強度が最大強度の1/e2倍となる直径をφBとし、プラスチック基材の幅W、長さLとおくと、
線状ビームの振れ幅WB>W+φB、線状ビームの照射長さLB>L+φB
を満たすことである。これは、図5において、プラスチック基材2の幅×長さ=4cm×5cm、ビーム径=7mmに対して、線状ビームの振れ幅×照射長さ=5cm×6cmでは満足されている。
【0056】
図23は、本発明の微細転写方法において、赤外線透過材料でできた下型スタンパー1Lの表面に形成された微細な凹凸形状をプラスチック基材2に加圧しながら、下型スタンパー1Lの裏面より線状に赤外線を照射することで、下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状に残存する空気が、溶融・転写される領域から未溶融で未転写の領域に向けて排出されていく様子を示す。図23(a)において、赤外線が照射されると、照射した部分の樹脂は溶融、膨張する(符号231)。これに加圧力が作用することで、図23(b)に示したように、溶融し膨張した樹脂231は、逐次、下型スタンパー1Lの微細な凹凸部に充填され、空気が未溶融の領域に向けて逐次排出され(矢印232)、全体として円滑に微細な凹凸がプラスチック基材2に転写されていく(図23(c)〜(d))。この結果、下型スタンパー1Lの微細な凹凸形状に残存する空気がプラスチック基材2への微細な凹凸形状の転写を阻害することが無いので、表面性状が平滑で、なおかつ1MPa以下の超低圧で、なおかつ短時間に微細凹凸形状のプラスチック基材2への転写が可能となった。
【0057】
なお、前記では、スタンパーとしてFZシリコンを例にとり説明したが、本発明ではこれに限定されず、それ以外の赤外線透過材料、例えばZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていてもよい。
また、赤外線光源は、炭酸ガスレーザのほかに、赤外線ランプまたはYAGレーザ等であってもよい。
また、前記の揺動ミラー以外の揺動機構としては、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構等が、線状ビームの形成方法としては、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーを使用する方法が挙げられる。
また、前記加熱手段としては、下型、下型スタンパー支持体、上型、上型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、温度制御のために熱電対を設けてなるのが好ましい。同様に前記冷却手段としては、下型、下型スタンパー支持体、上型、上型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、温度制御のために熱電対を設けてなるのが好ましい。
さらに前記剥離手段としては、上型、下型、上型スタンパー支持体、下型スタンパー支持体のいずれに設けてもよく、例えば真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子等を利用することができる。
【0058】
なお、前記では赤外線照射を必須とする微細転写方法および装置について説明したが、微細加工後のプラスチック基材の容易な剥離が困難であるという、従来の課題の一つは、例えば図1〜3で説明した装置を用いて克服が可能である。すなわち、赤外線照射をとくに用いることなく、表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面にプラスチック基材を装着し、スタンパー裏面を、スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記プラスチック基材をスタンパーに押圧しながら、支持体上で前記スタンパーおよびプラスチック基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、スタンパー表面と面するプラスチック基材表層全体を溶融および加圧することにより、スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、プラスチック基材表層に転写させ、その後、スタンパーおよびプラスチック基材を冷却手段に移動させ、スタンパーおよびプラスチック基材を冷却し、次にスタンパーおよびプラスチック基材を剥離手段に移動させ、スタンパーおよびプラスチック基材を剥離することにより、微細な凹凸形状の付与後、製品の容易な剥離が可能となる。これは、本発明ではスタンパーとプラスチック基材の温度制御と急速冷却が可能であることに基づいている。すなわち、加熱したプラスチック基材とスタンパーを、急速に冷却すると、プラスチック基材の線膨張率はシリコンやニッケルからできたスタンパーの線膨張率の10倍以上大きいので、冷却してプラスチック基材が収縮する過程で、プラスチック基材とスタンパーとの界面に大きなひずみ速度およびこれと対応したずり応力が生じ、プラスチックとスタンパーとの間に剥離力が生ずるためである。なお、図7〜17に示したような、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型、加圧手段、移動手段、加熱手段、冷却手段、剥離手段を備えた装置を用いても、同様な効果が奏されることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、前記の従来の課題を解決することができ、従来のホットエンボス法、射出成形法、圧縮成形法、ナノインプリント法に比べて格段に優れた製品を高い生産性で生産可能な微細転写方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図2】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図3】本発明の微細転写方法を実施するための装置を説明するための図である。
【図4】実施の形態で使用したスタンパーのSEM写真である。
【図5】実施の形態で採用した赤外線照射プロファイルである。
【図6】実施の形態で製造された成形品の微細な凹凸形状のSEM写真である。
【図7】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図8】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図9】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図10】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図11】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図12】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図13】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図14】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図15】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図16】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図17】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図18】下型に微細な凹凸形状を有する下型スタンパー1Lを固定した状態を示す図である。
【図19】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図20】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図21】本発明の微細転写装置の別の形態を説明するための図である。
【図22】プラスチック基材を下型スタンパー上に固定した時の、下型および下型スタンパー裏面から見た状態を示す図である。
【図23】本発明の微細転写方法において、下型スタンパーの微細な凹凸形状に残存する空気が、溶融・転写される領域から未溶融で未転写の領域に向けて排出されていく様子を示す図である。
【図24】炭酸ガスレーザのビーム強度分布を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
1L:下型スタンパー、1La:下型スタンパー表面、1Lb:下型スタンパー裏面、1Lc:下型スタンパーの微細な凹凸形状、1U:上型スタンパー、1Ua:上型スタンパー表面、1Ub:上型スタンパー裏面、2:プラスチック基材、3:赤外線ビーム、4:長手方向、5L:下型スタンパー支持体、5LH:加熱部位、5LC:冷却部位、5LI:断熱部位、5LV:真空吸着部位、6:加圧手段、7:幅方向、8:開口部、9:加熱手段、10:冷却手段、11:離型手段、12L:下型、12U:上型、13:赤外線光源、14:移動手段、15:洗浄手段、16:揺動機構、17:ビームスプリッター、18:固定ミラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記スタンパーの裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする微細転写方法。
【請求項2】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体の幅方向に長く設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする請求項1に記載の微細転写方法。
【請求項3】
前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写した後、冷却手段によって前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に剥離手段によって前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の微細転写方法。
【請求項4】
表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写方法。
【請求項5】
前記微細な凹凸形状の幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項6】
前記基材が固体状の熱可塑性樹脂または溶融状の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項7】
前記基材が、−125〜290℃のガラス転移温度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項8】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーの裏面から赤外線を照射するための赤外線光源と、
前記スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記スタンパー及び基材を加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記スタンパーの表面に前記基材を装着し、前記スタンパー裏面を前記支持体で支持し、前記加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体に設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記移動手段により前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして長手方向に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記冷却手段によって前記スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材とスタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項9】
表面に微細な凹凸形状を有する上型スタンパーおよび表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなる下型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーの裏面側に設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記下型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型、下型および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記加圧手段に固定し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記上型スタンパーで基材を加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型および加圧手段を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の下型スタンパーと接する面に下型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、前記基材の上型スタンパーと接する面に前記上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を前記加熱手段による加熱溶融と加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項10】
各々が表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパーおよび上型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの裏面に各々設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと各々の赤外線光源との間に各々設けられ、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面と上型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型および下型を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型スタンパー支持体と上型スタンパー支持体を前記加圧手段に固定し、前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記上型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面と上型スタンパー表面との間隙に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記基材を上型スタンパーおよび下型スタンパーで加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型および下型を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面および上型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと接する面に前記下型スタンパー表面および上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項11】
表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成された支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記支持体上を移動させるための移動手段と、
前記スタンパーを加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項12】
前記支持体または上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体が、前記スタンパーが移動する方向順で、加熱部位、断熱部位、冷却部位およびスタンパー真空吸着部位を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項13】
前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの一部が、波長10.6μmの赤外線を40%以上透過するFZシリコンで形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項14】
前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの少なくとも一部が、FZシリコン、ZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項15】
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーの少なくとも一部が、Ni電鋳で形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項16】
前記赤外線光源が、赤外線ランプ、炭酸ガスレーザまたはYAGレーザであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項17】
前記赤外線光源から照射される赤外線が、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構、または、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーにより線状ビームに変形され、該線状ビームが、前記支持体または前記上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体の幅方向に設けられたスリット状の開口部を通過することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項18】
前記スタンパーまたは前記上型スタンパーまたは下型スタンパーの厚さが0.3mm〜30mmであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項19】
前記加圧手段によって与えられる加圧力が0.1MPa〜10MPaであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項20】
前記支持体および前記下型スタンパー裏面と接する下型スタンパー支持体および上型スタンパー裏面と接する上型スタンパー支持体の表面の少なくとも一部が、低摩擦すべり軸受、転動軸受またはコンベアーで形成されたことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項21】
前記加熱手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に加熱用ヒータを設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項22】
前記冷却手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に水冷配管を設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項23】
前記剥離手段が、前記上型、下型、上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体に設けた真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子からなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項1】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記スタンパーの裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする微細転写方法。
【請求項2】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体の幅方向に長く設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を、線状の赤外線に対して直交する長手方向に相対的に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写することを特徴とする請求項1に記載の微細転写方法。
【請求項3】
前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写した後、冷却手段によって前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に剥離手段によって前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする請求項1または2に記載の微細転写方法。
【請求項4】
表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成した支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を一体として移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写方法。
【請求項5】
前記微細な凹凸形状の幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項6】
前記基材が固体状の熱可塑性樹脂または溶融状の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項7】
前記基材が、−125〜290℃のガラス転移温度を有する請求項1〜4のいずれかに記載の微細転写方法。
【請求項8】
表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなるスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーの裏面から赤外線を照射するための赤外線光源と、
前記スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記スタンパー及び基材を加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記スタンパーの表面に前記基材を装着し、前記スタンパー裏面を前記支持体で支持し、前記加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体に設けられたスリット状の開口部から前記スタンパー裏面を通して前記基材の表面に赤外線を幅方向に線状に照射して前記スタンパー表面と面する基材表層を線状に溶融させ、これと同時に、前記移動手段により前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして長手方向に移動させ、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記冷却手段によって前記スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材とスタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項9】
表面に微細な凹凸形状を有する上型スタンパーおよび表面に微細な凹凸形状を有する赤外線透過材料からなる下型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーの裏面側に設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーと赤外線光源との間に設けられ、前記下型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型、下型および加圧手段を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型および/または下型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記加圧手段に固定し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記上型スタンパーで基材を加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型、下型および加圧手段を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の下型スタンパーと接する面に下型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、前記基材の上型スタンパーと接する面に前記上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を前記加熱手段による加熱溶融と加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項10】
各々が表面に微細な凹凸形状を有し赤外線透過材料からなる下型スタンパーおよび上型スタンパーと、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを固定するための下型および上型と、
前記上型スタンパー表面と下型スタンパー表面との間に挟み込んで装着する基材と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの裏面に各々設けた赤外線光源と、
前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと各々の赤外線光源との間に各々設けられ、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーを支持するとともに前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成され、前記赤外線光源から発せられる赤外線が前記下型スタンパー裏面と上型スタンパー裏面に線状に照射されるように、前記下型スタンパーおよび上型スタンパーの幅方向に長いスリット状の開口部を備えた下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体と、
前記上型スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記下型スタンパー、上型スタンパー、基材、上型および下型を一体にして前記幅方向と直交する長手方向に移動させるための移動手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを加熱するために前記上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた加熱手段と、
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた冷却手段と、
前記基材を前記下型スタンパーおよび上型スタンパーから剥離するために上型、下型、下型スタンパー支持体および/または上型スタンパー支持体に設けられた剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記下型スタンパー支持体と上型スタンパー支持体を前記加圧手段に固定し、前記下型に固定した前記下型スタンパーを前記下型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、前記上型スタンパーを固定した前記上型を前記上型スタンパー支持体上に互いに摺動または転動可能に支持し、この状態で前記上型スタンパーと下型スタンパーを加熱手段により加熱しながら、前記下型スタンパー表面と上型スタンパー表面との間隙に前記基材を装着して前記加圧手段によって前記基材を上型スタンパーおよび下型スタンパーで加圧すると同時に、前記移動手段によって前記基材、上型スタンパー、下型スタンパー、上型および下型を一体として長手方向に移動させながら、前記下型スタンパー支持体および上型スタンパー支持体に設けられた開口部を通して赤外線を前記下型スタンパー裏面および上型スタンパー裏面に線状に照射することにより、前記基材の前記下型スタンパーおよび上型スタンパーと接する面に前記下型スタンパー表面および上型スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する微細な凹凸形状を赤外線輻射による加熱溶融、前記加熱手段による加熱溶融および加圧によって形成し、その後、前記冷却手段によって前記上型スタンパーおよび下型スタンパーを冷却し、前記剥離手段により前記基材と上型スタンパーおよび下型スタンパーとを剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項11】
表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーと、
前記スタンパーに装着する基材と、
前記スタンパーを支持するとともに前記スタンパーと互いに摺動または転動可能に形成された支持体と、
前記スタンパーを前記基材に押圧するための加圧手段と、
前記スタンパー、基材および加圧手段を一体にして前記支持体上を移動させるための移動手段と、
前記スタンパーを加熱するための加熱手段と、
前記スタンパーおよび基材を冷却するための冷却手段と、
前記基材を前記スタンパーから剥離するための剥離手段と、を有する微細転写装置であって、
前記表面に微細な凹凸形状を有するスタンパーの表面に基材を装着し、前記スタンパー裏面を、前記支持体で支持し、加圧手段により前記基材を前記スタンパーに押圧しながら、前記支持体上で前記スタンパーおよび基材を移動させながら加熱手段により両者を加熱し、前記スタンパー表面と面する前記基材表層全体を溶融および加圧することにより、前記スタンパー表面の微細な凹凸形状と反転する凹凸形状を、前記基材表層に転写させ、その後、前記スタンパーおよび基材を冷却手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を冷却し、次に前記スタンパーおよび基材を剥離手段に移動させ、前記スタンパーおよび基材を剥離することを特徴とする微細転写装置。
【請求項12】
前記支持体または上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体が、前記スタンパーが移動する方向順で、加熱部位、断熱部位、冷却部位およびスタンパー真空吸着部位を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項13】
前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの一部が、波長10.6μmの赤外線を40%以上透過するFZシリコンで形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項14】
前記スタンパーまたは上型スタンパーまたは下型スタンパーの少なくとも一部が、FZシリコン、ZnSe、ZnS、Ge、NaCl、BaF2、KBrおよびCaF2から選択された赤外線透過材料またはこれらの組み合わせから形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項15】
前記上型スタンパーおよび下型スタンパーの少なくとも一部が、Ni電鋳で形成されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項16】
前記赤外線光源が、赤外線ランプ、炭酸ガスレーザまたはYAGレーザであることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項17】
前記赤外線光源から照射される赤外線が、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナー、ステッピングモータもしくはACサーボモータを用いた揺動機構、または、ビームエキスパンダー、シリンドリカルレンズもしくはホモジナイザーにより線状ビームに変形され、該線状ビームが、前記支持体または前記上型スタンパー支持体または下型スタンパー支持体の幅方向に設けられたスリット状の開口部を通過することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項18】
前記スタンパーまたは前記上型スタンパーまたは下型スタンパーの厚さが0.3mm〜30mmであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項19】
前記加圧手段によって与えられる加圧力が0.1MPa〜10MPaであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項20】
前記支持体および前記下型スタンパー裏面と接する下型スタンパー支持体および上型スタンパー裏面と接する上型スタンパー支持体の表面の少なくとも一部が、低摩擦すべり軸受、転動軸受またはコンベアーで形成されたことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項21】
前記加熱手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に加熱用ヒータを設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項22】
前記冷却手段が、前記下型、下型スタンパー支持体、上型および/または上型スタンパー支持体に水冷配管を設け、温度制御のために熱電対を設けてなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【請求項23】
前記剥離手段が、前記上型、下型、上型スタンパー支持体および/または下型スタンパー支持体に設けた真空吸着孔、空気吹出孔、突出ピン、急速冷却用水空気配管または急速冷却用ベルチェ素子からなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の微細転写装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−88517(P2006−88517A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276669(P2004−276669)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】
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