説明

心筋灌流を表示するための画像分割

造影剤で心筋組織に関する灌流調査を行う方法及びデバイスが提供される。本方法によれば、超音波パルスが患者に送信され(111)、患者内の心筋組織血液と心室血液との両方に対応する、そのパルスの超音波エコーが受信される(113)。受信された超音波エコーは、本質的に心筋灌流のみに対応する画像データへ変換される(115)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、超音波診断画像化技術に関し、より詳細には、心筋内の血流を心室内の血流と区別する超音波診断画像化のための画像操作技術に関する。
【背景技術】
【0002】
診断超音波装置は、音響エネルギーを人体に送信し、心臓、肝臓及び腎臓といった組織及び臓器から反響する信号を受信する。赤血球の運動が原因で、ドップラーシフト又は時間領域相互相関関数における変化(shift:ずれ)に基づく血流パターンが得られる。これらは、反響された音波を生成し、一般にカラーの流体画像化(flow imaging)又はカラーの流速画像化(velocity imaging)として知られる2次元フォーマットで表示されることができる。一般には、心臓又は血管壁といった構造に対する反響成分の大きさは、一層遅い絶対的な速度を持ち、血球が原因で反響成分より20 dBから40 dB(10 - 100倍)大きくなる。
【0003】
一般に、超音波システムは、複数の経路に対してパルスを放出し、複数の経路上の対象から受信されるエコーを、超音波画像が表示されることを可能にする超音波データを生成するのに使用される電気信号に変換する。超音波データが生成されるための生の(raw)データを得るプロセスは、通常は、「スキャンニング」「スイーピング」又は「ビームのステアリング」と呼ばれる。
【0004】
リアルタイムの超音波診断は、スキャニングが行われるとき、高速な連続フォーマットにおける超音波画像の表現を参照する。スキャニングは、機械的に(1つ又は複数のトランスデューサ素子を物理的に振動させることにより)又は電気的にのいずれかで行われる。明らかに、近年の超音波システムのスキャニングにおいて最も共通するタイプは電気式であり、そこでは、一列に配置されるトランスデューサ素子の群(「アレイ」と呼ばれる)が電気的なパルスのセットにより励起され、1素子につき1つのパルスが、スイーピング動作を構築するのにタイミングが取られる。
【0005】
超音波システムに関して最も要求される機能の1つは、3次元オブジェクトの外観を持つ画像を提供する能力である。斯かる画像は、3次元データ行列から生産される。データに関するこのボリュームは、3次元である外観を持ち、2次元表面上へ表示するための画像を生成するために加工される。斯かる加工は、通常は、レンダリングと呼ばれる。
【0006】
いくつかの3次元最適化された超音波システムが利用可能であるけれども、ほとんどの商業的な超音波システムは、今日、2次元アレイプローブからスキャンデータを得て、平面的な2次元画像のみを表示する。Philips Medical Systems、Andover、MA(以前の社名はAGILENT TECHNOLOGIES,Inc.として知られる) により販売されるSONOS 5500が、斯かるシステムの一例である。SONOS 5500を含むいくつかの商業システムは、「オフライン」の事後処理の助けを借りて、3次元超音波画像を生成することができる。このために、スキャンフレーム間で、プローブの位置がある方向に翻訳され、又は回転されると、規則的に間隔を空けられた平面的な2次元スイープの系列が集められる。事後処理操作は、各2次元スキャン平面に対して、得られた位置情報を用いて、3次元データセットを再構築する。結果として生じる3次元データセットが、様々な良く知られた計算機過負荷(computation-intensive)なレンダリング技術のいずれかを用いて、通常は、別のワークステーションにレンダリングされた画像として表示される。更に、リアルタイムのレンダリング及び表示ワークステーションが、超音波スキャナと共に1つのシステムに組み込まれることができる。1つの斯かるシステムは、Philips Medical Systemsにより販売されるSonos 7500である。
【0007】
様々な画像化技術が、超音波検査において使用されるべく開発されてきた。カラードップラ速度画像化と呼ばれる、ある一般的なタイプは、サンプルボリュームと呼ばれる、超音波画像の画像平面に対する異なる位置でのドップラデータの取得を含む。ドップラデータは、時間に対して取得され、各離散的なサンプルボリュームにおいて、連続する送信イベントに対する位相シフトを推定するのに使用される。位相シフトは、トランスデューサに向かう及びそこから離れる流れの方向を示すシフトの両極性を伴い、体内の血管を流れる流体の速度に関連する。この情報は、シフトの大きさ(すなわち、その速度)及びその両極性に基づきコード化される色であり、そして、画像平面の構造的な画像上にオーバーレイ表示される。画像における色は、血流の速度及びその方向の指示を与える。
【0008】
カラーパワードップラと呼ばれる別のタイプの画像化技術は、ドップラシフトを示す受信信号の強度に焦点をあてる。この種の技術は、例えば、米国特許番号5,471,990号(Thirsk)に記載される。ドップラ信号強度は、各サンプルボリュームに対して、画像平面にて計算され、カラーマップから得られる色を用いて表示される。カラードップラ速度画像化とは異なり、カラーパワードップラ画像化は、(速度画像化の特徴である)方向決定、エイリアシング及び低感度の問題を示さない。カラーパワードップラは、単に、サンプルボリュームでのドップラ信号強度をコード化された色で表示する。
【0009】
2Dグレースケール及びカラーパワードップラ表示は、灌流調査において、つまり、体内における臓器又は構造における血流灌流を評価することが望ましい状況において、用途を見出す。かかる灌流調査は、良好な超音波エコー信号を与える微少な気泡を含むことができる造影剤の注入により容易にされる。こうした造影剤は、心室及び心臓壁の両方において、血流の画像を明るくすることを可能にする。理論的には、斯かる造影剤は、心筋梗塞の場合には、減少された心筋血流が健康な心筋血流とは直ちに識別可能であるべきであるよう、心臓壁の血流の卓越した差分画像化を可能にすべきである。しかしながら実際には、梗塞の場合であっても心臓壁における血流が区別できないほど、心室血流からの明るさレベルは十分に高い。この状況は図6に示され、それは、心筋(MC)203及び左心室(LV)205の両方において見られる気泡を伴う典型的な画像201の概略的な図である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術においても、心室血流と心筋組織における血流とを区別するための方法を開発しようとするいくつかの試みがなされた。例えば、米国特許番号5,800,357号(Wittその他)は、組織血流と心室血流とを区別するための超音波ドップラパワー画像化システムを開示する。そこに述べられる手法においては、心室血流を閾値により除外する(threshold out)のにフィルタが用いられる。しかしながら、Wittその他は、造影剤を考慮していない。Wittその他により開示される技術は、灌流調査に適用されることもできない。なぜなら、造影剤なしの従来のドップラシステムは、微小循環(microcirculation)における血流を検出する事ができないからである。更に、灌流に関連付けられる速度が、心室壁に関連付けられる速度よりも遅いことも留意されたい。しかしながら、Wittその他において開示される手法は、異なる速度で動く散乱(scatter)に対して異なる壁フィルタを適用することにより、微少循環における血流速度を区別することにもっぱら依存し、従って、特定の直径以上であり、かつ、従来のドップラ技術で検出可能な速度を持つ血管のみを表示する。更に、画像分割はWittその他においては考えられていない。また一方、他の広く使用される画像化技術と同様の画像を生成する技術、例えば、単一ポジトロン放出断層撮影法(SPECT)が好ましいことになる。なぜなら、臨床医学者は、その画像を処理するためのトレーニングをほとんど又は全く必要としないことになるからである。
【0011】
こうして、従来技術においては、こうした問題を克服する灌流調査を行うための方法及びデバイスに対する必要性が存在する。特に、従来技術において、心筋組織のような組織に対して灌流調査を行うための方法及びデバイスであって、周辺環境における気泡の画像化から生じるコントラスト問題を克服し、SPECTのような他の画像化技術により生成されるのと同様の画像及びレンダリングを生成する方法及びデバイスに対する必要性が存在する。これら及び他の必要性は、本書において開示される手順及びデバイスにより満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの側面において、心筋組織に関する灌流調査を行う方法が与えられる。本方法によれば、マイクロバブル(microbubble:微少気泡)造影剤の静脈への注入の後、超音波パルスが患者に送信され、患者内の心筋組織血流と心室血流との両方に対応する血液からのエコーが受信される。受信された超音波エコーは、本質的に心筋灌流のみに対応する画像データへ変換される。この変換は、例えば、(a) 受信した超音波エコーを、心室内の血液が検出可能である第1のセットのエコーパターンデータ信号へ変換し、(b) 受信した超音波エコーを、心室内と心筋組織内との両方の血液が検出可能である第2のセットのエコーパターンデータ信号へ変換し、(c)第2のデータセットから、第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を削除することにより達成される。
【0013】
別の側面において、心室及び心筋における血液速度の情報を含む画像が生成される。その画像は、血液速度が事実上ゼロである(移動していない)とても小さな血管(毛細血管)も含む。毛細血管において非常にゆっくりと動く血液の検出は、パルスインバージョン又はパワーモジュレーションのような非線形の画像化技術を用いて行われる。すると、閾値速度より早く動く対象を削除することにより、最終画像は、ゆっくりと動く(又は動きのない)血液のみを表示する。それは、結果として、心室の血液ではなく心筋の血液のみを示す表示を生じる。
【0014】
別の側面において、心筋組織に対して灌流調査を行うデバイスが与えられる。そのデバイスは、患者に超音波パルスを送信するよう適合される送信機と、患者内にある心筋組織血液と心室組織血液との両方に対応する超音波パルスのエコーを受信するよう適合される受信機と、受信された超音波エコーを本質的に心筋血液のみに対応する画像データへと変換するよう適合されるプロセッサとを有する。プロセッサは、好ましくは、受信された超音波エコーを、心室内の血液が検出可能である第1のセットのエコーパターンデータ信号へ変換するよう適合され、更に好ましくは、受信された超音波エコーを心室内及び心筋組織内の両方における血液が検出可能である第2のセットのエコーパターンデータ信号へと変換するよう適合される。プロセッサは、また、好ましくは、第2のデータセットから、第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を削除するよう適合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本書における教示のこれら及び他の側面が、以下更に詳細に説明される。
【0016】
心筋組織及び他の斯かる対象に関する灌流調査を行うための方法及びデバイスが本書において与えられる。これらの方法及びデバイスは、画像化される組織の周囲の環境における気泡の画像化から生じるタイプのコントラスト問題を克服する。これは、その環境に関連付けられた画像化情報、特に、心室からの画像化情報を持っていない画像を生み出す、新規な画像データ分割スキーム(速度分割スキームを含む)と、画像データ減算スキームとにより達せされる。結果として生じる画像は、核単光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)において得られる画像に類似する。結果として、こうした技術により生成される画像は、SPECTの経験がある臨床医学者により容易に理解される。従って、斯かる臨床医学者がその画像で作業するにあたり、追加的なトレーニングは、ほとんど又は全く必要ない。
【0017】
本書において開示される手順及びデバイスの好ましい実施形態並びにこうした手順及びデバイスの利点は、図面である図1−8を参照することにより最適に理解される。様々な図面において同様な及び対応する部分に対しては、同様の番号が使用される。
【0018】
図1は、本書において開示される手順の実現において使用されることができる超音波画像化システム10の簡略化されたブロック図を示す。関連する分野における通常の知識を有する者であれは、図1に示される超音波画像化システム10及び本書において説明されるその処理は、斯かるシステムを一般的に代表するものとして意図され、いずれかの特定のシステムが、図1に示されるのとは、特に、構造の詳細において、及び斯かるシステムの処理において明らかに異なる場合があることは理解されるであろう。そのようなものとして、超音波画像化システム10は、本書において説明される手順及びデバイス又は本書に添付される特許請求の範囲に対してと同様、説明目的であり例示的であり、限定するものではないものとしてみなされるべきである。
【0019】
超音波画像化システム10は、一般的に、超音波ユニット12と、接続されたトランスデューサ14とを含む。トランスデューサ14は、空間的なロケータ受信機(又は単に「受信機」)16を含む。超音波ユニット12は、そこに一体化された空間的なロケータ送信機(又は単に「送信機」)18と、関連付けられるコントローラ20とを持つ。コントローラ20は、タイミング及び制御機能を与えることにより、システムの全体の制御を与える。以下において詳細に説明されることになるが、その制御ルーチンは、ボリュメトリック超音波画像を、生の(live)リアル画像、以前に記録された画像、又は視聴及び分析のため中断された若しくは圧縮された(frozen)画像として生み出すために受信機16の処理を修正する様々なルーチンを含む。
【0020】
超音波ユニット12は、また、超音波の送信及び受信を制御する画像化ユニット22と、モニタ(図2参照)上への表示を生み出す画像処理ユニット24と共に与えられる。画像処理ユニット24は、3次元画像をレンダリングするルーチンを含む。送信機18は、受信機16へのクリアな送信を得るために、好ましくは、超音波ユニット12の上部に配置される。特に図示されないけれども、本書に説明される超音波ユニットは、カート(cart)形式で構成されることもできる。
【0021】
フリーハンド画像化の間、ユーザは、制御された動きの中で対象25に対してトランスデューサ14を動かす。超音波ユニット12は、画像化ユニット22により生成される画像データと、モニタ(図2参照)上にレンダリングするのに適したデータの行列を生成するためコントローラ20により生成される位置データとを結合する。超音波画像化システム10は、画像レンダリング処理と、汎用のプロセッサ及びPC同様のアーキテクチャを用いる画像処理機能とを一体化する。他方、スティッチング及びレンダリングを行うASICを使用することは可能である。
【0022】
図2は、本書において開示される手順の実行において使用されることができる超音波システムのブロック図30である。図2に示される超音波画像化システムは、パルス生成器回路の使用のために構成されるが、任意の波形処理に対して同様に構成されることができる。超音波画像化システム10は、標準的なパーソナルコンピュータ(PC)タイプの部品の組み込みに適した中央化された構造を使用し、かつ、角度を介し(through an angle)、知られた態様で、送信機28からの信号に基づき超音波ビームをスキャンするトランスデューサ14を含む。後方散乱された信号、例えば、エコーは、トランスデューサ14により感知され、受信/送信スイッチ32を介して、信号コンディショナ34に、そして次にビーム形成器36に与えられる。トランスデューサ14は、好ましくは角度可変の(steerable)2次元アレイとして構成される素子(element)を含む。信号コンディショナ34は、後方散乱された超音波信号を受信し、それらがビーム形成器36に与えられる前に増幅及び形成回路によりそうした信号を調整する。ビーム形成器36内において、超音波信号は、デジタル値に変換され、超音波ビームの方位角に沿うポイントから後方散乱された信号の大きさに基づき、デジタルデータ値の「ライン」へと構成される。
【0023】
ビーム形成器36は、デジタル値をモニタ40へ与えるビデオ表示にとってより導電性のある形式へと変換するのに必要な主要な処理モジュールを組み込む特定用途向け集積回路(ASIC)38にデジタル値を与える。フロントエンド・データコントローラ42は、ビーム形成器36からデジタルデータ値のラインを受信し、受信された状態のまま各ラインをバッファ44の領域にバッファする。デジタルデータ値のラインを蓄積した後、フロントエンド・データコントローラ42は、共有された中央処理ユニット(CPU)48へバス46を介して割り込み信号を送信する。CPU48は、ASIC38内にある処理モジュールのそれぞれについての個別の非同期処理を可能にするよう動作可能である手段を含む制御手段50を実行する。より詳細には、割り込み信号を受信すると、CPU48は、バッファ42内にあるデジタルデータ値のラインを、統一された(unified)共有メモリからなるランダムアクセスメモリ(RAM)54内への格納のためのランダムアクセスメモリ(RAM)コントローラ52へ与える。RAM54は、すべてRAMコントローラ52の制御の下で、デジタルデータ値のラインとASIC38における個別のモジュール間で送信されるデータとを含む、CPU48に対する指示及びデータも格納する。
【0024】
上述されたようにトランスデューサ14は、位置情報を生成するための送信機28と共に動作する受信機16を組み込む。位置情報は、位置データを知られた態様で出力するコントローラ20へ与えられ(又は、によって生成され)る。位置データは、(CPU48の制御の下で)デジタルデータ値の格納と共にRAM54に格納される。
【0025】
制御手段50は、ASIC38内のモジュールの動作と、それらの動作を同期化するために、送信機28、信号コンディショナ34、ビーム形成器36及びコントローラ20へタイミング信号を出力するフロントエンド・タイミングコントローラ45を制御する。フロントエンド・タイミングコントローラ45は、更に、バス46の動作及びASIC38内の様々な他の機能を制御するタイミング信号を発行する。
【0026】
以前に述べたように、制御手段50は、フロントエンド・データコントローラ44が、RAMコントローラ52へと、デジタルデータ値のライン及び位置情報を動かすことを可能にするCPU48を構成する。そこでは、それらはRAM54に格納される。CPU48は、デジタルデータ値のラインの転送を制御するので、全体の画像フレームがRAM54に格納されたことを感知する。この時点で、CPU48は、制御手段50により構成され、スキャンコンバータ58による処理に対してデータが利用可能であることを認識する。従ってこの時点で、CPU48は、処理のためRAM54からデータのフレームにCPUがアクセスできることをスキャンコンバータ58に通知する。
【0027】
RAM54におけるデータを(RAMコントローラ52を介して)アクセスするために、スキャンコンバータ58は、RAM54からデータフレームのラインを要求するためにCPU48に割り込みを入れる。斯かるデータは、それから、スキャンコンバータ58のバッファ60に転送され、X-Y座標系に基づきデータへと変換される。このデータが、コントローラ20からの位置データと結合されるとき、X-Y-Z座標系におけるデータの行列が生じる。4次元行列が4-D(X-Y-Z-時間)データに対して使用されることができる。この処理は、RAM54からの画像フレームの連続的なデジタルデータ値に対して繰り返される。結果として生じる処理済データは、RAMコントローラ52を介してRAM54へと表示データとして戻される。この表示データは、通常は、ビーム形成器36により生成されるデータとは別に格納される。CPU48と制御手段50とは、上述された割り込み手続を介して、スキャンコンバータ58の処理の完了を感知する。例えば、MITSUBISHI VOLUMEPROシリーズのカードのようなビデオプロセッサ62は、RAM54からのビデオデータのラインを、ビデオプロセッサ64に関連付けられるバッファ62に与えることにより応答するCPU48に割り込みを入れる。ビデオプロセッサ64は、モニタ40上に2次元画像として3次元ボリュメトリック超音波画像をレンダリングするためにビデオデータを用いる。
【0028】
図3は、超音波伝播から始まり、コンピュータモニタ40上へのボリュメトリック超音波画像の表示へと続く、本書において説明される画像を得るのに使用される処理を概念的に示す。図3に示される例において、単一の頂点68において結合されるが、そうでない箇所では分離されるスライス66が存在する。スライス66におけるスキャンライン70はそれぞれ、別のスライスにおいて、マッチする(又は「インデックス化された」)スキャンラインを持つ。好ましくは、横方向に同じ位置であるスキャンライン70が、スライスのセットを横切るようにマッチされる。これを達成する1つの方法は、それらを順番に番号付けすることによりスライスにおけるスキャンラインのそれぞれをインデックス化することである。その場合、同じインデックス値を持つスキャンライン70が容易にマッチされることができる。
【0029】
ボリュメトリックな3次元画像をレンダリングするため、マッチされたスキャンライン68のセットのそれぞれにおけるデータポイントが、追加的なルーチンを用いて線形結合される。言い換えると、スライスのセットにおける各スライスは、連続的な表示のための集合スライスを生成するために評価方向に沿って累積される。好ましくは、しかし必ず必要というわけではないが、各スライスにおけるデータポイントは、乗算及び累積ルーチン(「MACルーチン」としても知られる)を用いることにより、例えば、各ライン毎に重み付けされる。
【0030】
図3は、更に、本書において開示される手順が特定の有益な用途を持つボリュメトリック超音波処理を用いて、例えば、人間の心臓72についての超音波データを処理することを説明する。斯かる処理において、データについてのボクセル行列74を生み出すために、トランスデューサ14の使用から生じるスライス66からのデータを即時に処理する生体の(live)3次元超音波構造が、採用されることができる。ボクセル行列72は、Philips Medical Systemsにより製造されるSONOS 7500システムなどの強力なスーパーコンピュータ構造の使用を介して、わずかな時間量、名目上50ミリ秒程度で、3次元超音波データをストリーミングすることを処理する。この処理された超音波データは、それから、周期的に振動する超音波対象76をリアルタイムに表示するモニタ40上に現れることができる。
【0031】
本書において開示される手順が利用されることができるSONOS 7500といった3次元システムは、トランスデューサ14を用いて動作する。それは、3000の素子アレイ、並びに、対話的な画像操作及び使いやすい操作者インタフェースを可能にする特別なソフトウェアと、進化した、未だにPCベースの計算プラットフォームとを用いてデータを事前処理する、関連するマイクロプロセッサを含む。3000の素子アレイは、例えば心臓のような超音波対象に関するデータをボリュームとして捉える。必要な数の水晶を持つようエッチングされるトランスデューサ水晶を、効率的にトランスデューサ素子を始動するマイクロプロセッサ回路と結合することにより、本書において開示される手順が利用されることができる超音波画像化システムは、150以上のコンピュータ基板における計算能力を活用する。
【0032】
その処理構造は、ボリュームデータのリアルタイムな生成を可能にするハードウェアとソフトウェアとの両方を含む。このPCベースの技術は、3次元画像の即時的な表示をサポートする。この技術を用いて、超音波画像化システムは、3000チャネルを、リアルタイムにスキャンを行うSONOS 7500のメインフレームビーム形成器に適用する。3次元スキャンコンバータ58は、周期的に振動する超音波74の画像76を生成するため、毎秒0.3ギガボクセルを超えるレートで処理を行う。
【0033】
本書において開示される手順は、従って、知られた心エコー検査法の分析及び診断を強化するための、3次元の生体超音波画像化と表示プロセスとにおいて採用されることができる。本書において開示される手順で動作することができるシステムは、データが得られたすぐ後に、脈動する心臓の3次元画像を生成し、表示する能力を持つ。しかしながら、好ましくないことであるが、本書において開示される手順は、データを取得するのに数秒を要し、それを3次元超音波表示として再構築するのに追加的な時間を要する場合がある、他のいわゆるリアルタイム3次元システムにも用いられることができる。斯かるシステムにおいて、心臓の3次元超音波画像をもたらすデータ取得は、心電図と、呼吸分析及び診断とに対してゲート化(gated)されることができる。
【0034】
様々な画像化技術が、本書において開示される手順で画像データを作成するために利用されることができる。これらは、パルスインバージョン(PI)、パワーパルスインバージョン(PPI)及びパワーモジュレーション(PM)を含む。従来のハーモニック画像化において、帯域幅は、送信された信号と受信されたハーモニクスの帯域幅との間のオーバーラップを削減するよう制限される。上述された技術は、基礎となる信号をフィルタリングで排除するのではなく、減算することで、こうした帯域幅制限を回避する。結果的に、より大きな大域幅が、高分解能かつ造影剤に対する増加された感度と共に用いられることができる。PIは例えば180度位相シフトされた2つのパルスを用いる。正及び負の圧力に対して均等に反応するいずれかの定常的な線形対象がキャンセルされることになり、一方、非対称の泡振動が強調されることになる。エコーの線形成分は、フィルタリングされることなく減算され、一方で非線形の成分は加算される。
【0035】
図5は、本書において説明される画像化プロセスの1つの一般化された実施形態を示す。その手順によれば、超音波パルスがマイクロバブル造影剤が注入される患者に送信される111。患者内の心筋組織血液及び心室血液の両方に対応して系列状のエコーが受信される113。そして、エコーは、本質的に心筋灌流のみに対応する画像データへ変換される115。結果的に、心筋組織の特徴は、心室により不明瞭にされることなく調査されることができる。結果として生じる画像は、核画像化により得られるものに類似する。
【0036】
図5に表されるタイプの画像化処理は、様々な方法で実現されることができる。この処理を実現する1つの一般的な方法は、速度分割を含む画像データ分割を介するものである。この処理を実現する他の一般的な方法は、画像データ減算を介するものである。こうした手法が、以下より詳細に説明される。
【0037】
画像データ分割手法において、心室(例えば、左心室)の位置が決定され、その領域からの血流に対応するエコーがないことが表示される。この手法を実現する2つの特有の方法が説明されるが、当業者であれば、こうした手法に対する特定の変化及び修正が同様に可能であることを理解されるであろう。
【0038】
本手法による第1の方法において、画像データ分割は、2Dエコーモードにおいて心筋(しかし心室ではない)における血液を表示することにより実現される。斯かる手法において、左心室造影(LVO)に対するデータが処理される。そのデータを処理するために用いられることができる技術は、ドップラースキーム又はパルスインバージョン(PI)といった非線形のスキームを含むが、これらに限定されない。そして、LVOデータは、心室の位置を決定するのに使用される。灌流及びLVOの両方に対するデータがそれから処理される。これは、例えば、パルスインバージョン(PI)のような非線形のスキームの使用を介して達成されることができるが、本方法は、斯かるスキームの使用に限定されるものではない。最終的に、心室について決定された位置に対応する物理的な位置から派生しないデータのみに基づき、画像が表示される。
【0039】
本手法による第2の方法において、画像データ分割は、オーバーレイモードにおいて(つまり、背景及び前景を伴い、パワードップラのようなモードを介してと同様に)、心筋(しかし心室ではない)における血液を表示することにより実現される。これは、画像平面の位置を決定するため及び正確な平面を選ぶ際に臨床医学者を誘導するため、(基礎的な又はハーモニックな)グレースケール画像を生成することにより実現されることができる。そして、上述された第1の方法からのステップは、カラー化されたオーバーレイ画像を生成するのに用いられることができる。
【0040】
画像データ減算手法において、式 Iのアルゴリズムによるスケーリング係数wを用いて、心室(LV)データが、総合データ(LV + MC)から減算される:
(LV + MV) - w * LV (式 I)
【0041】
本手法を実現するための2つの特有の方法が説明されるが、当業者であれば、こうした手法に対する変化及び修正が同様に可能であることを理解されるであろう。
【0042】
本手法による第1の方法において、画像データ減算は、2Dエコーモードにおいて心筋(しかし心室ではない)における血流を表示することにより実現される。斯かる手法において、左心室造影(LVO)に対するデータが処理される。そのデータを処理するために用いられることができる技術は、ドップラースキーム又はパルスインバージョン(PI)といった非線形のスキームを含むが、これらに限定されない。そして、LVOに対する及び灌流に対するデータが処理される。これは、例えば、パルスインバージョン(PI)のような非線形のスキームの使用を介して達成されることができるが、本方法は、斯かるスキームの使用に限定されるものではない。処理されたLVOデータは、「w」によりスケール化され、式 I に基づき、結合され処理されたLVO/灌流データから減算される。
【0043】
第1の方法の例として、パルスの系列が使用される場合を考慮する。そして、パルスインバージョンシーケンスは、送信値 -1、1、-1を持ち、送信される。LVOに対するパルスシーケンスAが受信され、それは1、0、-1(これはドップラースキームである)である。(MC + LVO)に対するパルスシーケンスBが受信され、それは1、2、1(これは非線形画像化スキームである)である。最終的な結果はシーケンスCであり、ここでCは式 I により、C = B - wAで与えられる。なお、wはユーザ制御された重みである。
【0044】
本手法による第2の方法において、画像データ減算は、オーバーレイモードにおいて(つまり、背景及び前景を伴い、パワードップラのようなモードを介してと同様に)、心筋(しかし心室ではない)における血液を表示することにより実現される。これは、画像平面の位置を決定するため及び正確な平面を選ぶ際に臨床医学者を誘導するため、(基礎的な又はハーモニックな)グレースケール画像を生成することにより実現されることができる。そして、上述された第1の方法からのステップは、カラー化されたオーバーレイ画像を生成するのに用いられることができる。
【0045】
上述のオーバーレイスキームの変形において、第1のセットの画像データが2-3-パルスドップラにより生成されることができる。その画像データは、非常に低いダイナミックレンジを持ち、心室が、画像分割目的に使用するための非常に一様な画像を持つよう、とても滑らかな外観が達成される。それからカラー画像分割が、そのグレースケール画像データに基づき行われることができる。ある実施形態において、この手法は、一致画像化において使用されることができる。つまり、同じ送信シーケンスが、エコー(グレースケール)画像データとカラー画像振幅との両方に対して使用される。斯かるスキームにおいて、1つの可能性のある5つのパルスシーケンスの例は、次のようなものである:
送信重み:1、-1、1、-1、1
エコー受信重み:0.25、0、-0.5、0、0.25
カラー受信重み:0.0625、0.25、0.375、0.25、0.0625
【0046】
エコー処理は、結果として、心室だけが見える画像を生じさせることになり、カラー処理は、結果として、心室と心筋とが両方見える画像を生じさせることになる。心室の位置は、エコー画像から分かり、心室を除去するために、カラー画像を分割する又はカラー画像から減算するのに使用される。
【0047】
画像分割は、本書における教示に基づき、単一の画像モードを介して達成されることもできる。このモードにおいて、RFデータセットのような単一の画像データセットが、画像分割を達成するために使用される。これは、画像データを一度以上処理することにより達成される。上述された5パルススキームがこの目的のために使用されることができる。しかしながら、説明された方法が、固定数のパルスに限定されないことを示すために、3パルスシーケンスが説明される:
送信重み:1、-1、1
セットAの受信重み:1、0、-1 (パワードップラ信号)
セットBの受信重み:0.25、0.5、0.25 (2番目のハーモニック信号)
【0048】
受信されたエコーは、毎回異なる情報を抽出するために異なる重みで2度処理される。この例においては、セットAは、心室気泡情報のみを示し、従って、画像211がLV窪みデータ205のみを含む図7において説明される状況に対応する。セットBは、心室気泡情報と心筋組織情報との両方を示し、従って、図6に示される状況に対応する。心室における信号を均一化するために、重みwが帯域Aに適用されることができる。従って、式 I に基づき、演算子Φ(A、B) = B - wAで画像データを処理することにより、心室気泡情報に対応する信号が、除去されることができる。この状況は、画像221がMCデータ203のみを含む図8に示される。
【0049】
本書において、心筋組織と他の斯かるオブジェクトに対する灌流調査を行うための方法及びデバイスが与えられてきた。こうした方法及びデバイスは、画像化される組織の周囲の環境における気泡の画像化から生じるタイプのコントラスト問題を、その環境に関連付けられる画像化情報、特に、心室からの画像化情報を除去する新規な画像分割スキームを介して克服する。結果として生じる画像は、本質的に心筋灌流のみを示すものであり、核単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)において得られる画像と類似する。
【0050】
本発明についての上記記述は説明目的であり、限定を意図するものではない。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、上述された実施形態に対して、様々な追加、置換及び修正がなされることができることは理解されるであろう。それ故に、本発明の範囲は、もっぱら添付された請求項を参照して解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本書において開示される手順を実現するのに使用されることができる超音波デバイスを説明する図である。
【図2】図1に表されるタイプのデバイスにおける機能的な要素を説明する概略図である。
【図3】超音波画像化プロセスを説明する図である。
【図4】図3に示されるボクセルを説明する図である。
【図5】本書において開示されるタイプの画像分割スキームの論理プロセスを表すフローチャートである。
【図6】心筋と左心室との両方における微少気泡が画像化された、心筋灌流調査を説明する図である。
【図7】左心室における微少気泡のみが画像化された、心筋灌流調査を説明する図である。
【図8】心筋における微少気泡のみが画像化された、心筋灌流調査を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤で心筋組織に関する灌流調査を行う方法において、
超音波パルスを患者に送信し、心筋組織と心室との両方における血液に対応する前記パルスの超音波エコーを受信するステップと、
前記超音波エコーのうちどれが前記心室における血液に対応するかを決定するステップと、
前記心室における血液に対応しない前記超音波エコーだけに基づき、画像を作成するステップとを有する方法。
【請求項2】
前記心室における血液に対応しない前記超音波エコーだけに基づき、画像を作成する前記ステップが、
前記受信された超音波エコーを、前記心室内の血液であることが決定可能である第1のセットのエコーパターンデータ信号へ変換するステップと、
前記受信された超音波エコーを、前記心室内及び前記心筋組織内の両方における血液であることが決定可能である第2のセットのエコーパターンデータ信号へ変換するステップとを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信された超音波エコーを、前記心筋組織内の血液のみに対応する画像データへ変換する前記ステップが、
前記第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を前記第2のデータセットから削除するステップを更に有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び前記第2のセットのデータ信号に基づき、画像を作成するステップを更に有し、前記第1のセットのデータ信号が、前記第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を前記画像から削除するのに使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセットのエコーパターンデータ信号が、基礎的なグレースケール画像データ信号とハーモニックなグレースケール画像データ信号とからなるグループから選択され、前記第2のセットのエコーパターンデータは、PPIとPMとからなる前記グループから選択される方法を介して得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のセットのエコーパターンデータがカラーモードで表示される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を前記画像から削除するのに、カラー記載優先度が使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のセットのエコーパターンデータ信号が、2-3-パルスドップラ信号である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
RFデータが、パワードップラ信号に対応する第1のセットのデータポイントと、前記パワードップラ信号の第2のハーモニックに対応する第2のセットのデータポイントとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のセットのデータポイントが、本質的に心室血液のみに対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のセットのデータポイントが、本質的に心室血液と心筋組織血液との両方に対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法を実現するソフトウェアプログラムであって、該プログラムが有体の媒体に配置される、ソフトウェアプログラム。
【請求項13】
心筋組織に関する灌流調査を行うためのデバイスであって、
超音波パルスを患者に送信する送信機と、
前記患者内の心筋組織血液と心室血液との両方に対応する前記超音波パルスのエコーを受信する受信機と、
前記受信された超音波エコーを、本質的に前記心筋血液のみに対応する画像データへ変換するプロセッサとを有するデバイス。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記第1のセットにおけるエコーパターンデータ信号を生成した特徴に位置的に対応するエコーパターンデータ信号を前記第2のデータセットから削除する請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
造影剤で心筋組織に関する灌流調査を行う方法において、
超音波パルスを患者に送信するステップと、
前記患者の心筋組織と心室との両方における血液に対応する前記パルスの超音波エコーを受信するステップと、
前記受信された超音波エコーを、本質的に心筋灌流のみに対応する画像データへ変換するステップとを有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−518512(P2007−518512A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550431(P2006−550431)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050251
【国際公開番号】WO2005/072617
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】