説明

心臓血管、心肺、肺又は腎疾患の予防又は治療のための医薬併用剤

本発明は、適応症により血圧と脂質レベルの検査が必要である場合に、特に、2型糖尿病と診断された患者において又は糖尿病前期が疑われる場合には、内皮機能の改善並びに器官、組織及び血管の保護によって達成される、心臓血管疾患、心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の予防又は治療方法に関する。前記方法は、また、糖尿病や糖尿病前期を予防するために、また、正常血圧患者において代謝性症候群やインスリン抵抗性を治療するために用いられる。前記方法は、一般的には、テルミサルタン又はその多形体又は塩とシンバスタチンの有効量を投与することを含んでいる。本発明は、また、前記疾患の予防又は治療において同時、個別又は連続使用のための併用製剤としてテルミサルタン又はその多形体又は塩とシンバスタチンを含有する適切な医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に糖尿病と診断されたか又は糖尿病前期が疑われる人々において、糖尿病や糖尿病前期を予防する、又は正常血圧患者の代謝性症候群やインスリン抵抗性を治療する、心臓血管疾患、心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の予防又は治療方法に関する。前記方法は、一般的にはアンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその多形体又は塩とシンバスタチンの有効量を治療を必要とする人に投与することを含んでいる。本発明は、更に、これらの疾患の予防又は治療における同時、個別又は連続使用のための併用製剤としてテルミサルタン又はその多形体又は塩とシンバスタチンを含有する適切な医薬組成物、及びこれらの疾患の予防又は治療用医薬組成物を調製するためのテルミサルタン又はその多形体又は塩とシンバスタチンの併用に関する。
特に、ヒトにおいて血圧を上げるのに最も効力のある物質として、アンギオテンシンII(ANG II)が病態生理学に重要な役割を果たしている。血圧を上げるその効果に加えてANG IIは、左心室肥大、血管肥厚、アテローム性動脈硬化症、腎不全及び脳卒中に関与する増殖促進作用を有することが知られている。一方、ブラジキニンは、血管を拡張させ組織を保護する作用を有する。それ故、ANG II拮抗剤は、哺乳動物において血圧上昇やうっ血性心不全の治療に適している。ANG II拮抗剤の例は、欧州特許出願第0 502 314号、同第0 253 310号、同第0 323 841号、同第0 324 377号、米国特許出願第355 040号、同第4 880 804号に記載されている。ANG II拮抗剤の例は、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、バルサルタン又はテルミサルタンである。
ANG II拮抗剤の抗高血圧性作用と腎保護作用は、例えば、次の文献において記載されている。
・W. Wienen et al.: Antihypertensive and renoprotective effects of telmisartan after long term treatment in hypertensive diabetic (D) rats, 2nd Int. Symposium on Angiotensin II Antagonism, February 15-18, 1999, The Queen Elizabeth II Conference Centre, London, UK, Book of Abstracts, Abstract No. 50;
・J. Wagner et al.: Effects of AT1 receptor blockade on blood pressure and the renin angiotensin system in spontaneously hypertensive rats of the stroke prone strain, Clin. Exp. Hypertens., vol. 20 (1998), p. 205-221;
・M. Boehm et al.: Angiotensin II receptor blockade in TGR(mREN2)27: Effects of renin-angiotensin-system gene expression and cardiovascular functions, J. Hypertens., vol. 13 (8) (1995), p. 891-899。
【0002】
最初の臨床試験において見出されたANG II拮抗剤の他の腎保護効果は、次の文献に記載されている。例えば:
・S. Andersen et al.: Renoprotective effects of angiotensin II receptor blockade in type 1 diabetic patients with diabetic nephropathy, Kidney Int., vol. 57 (2) (2000), p. 601-606;
・L.M. Ruilope: Renoprotection and renin-angiotensin system blockade in diabetes mellitus, Am. J. Hypertens., vol. 10(12 PT 2) Suppl. (1997), p. 325-331;
・J.F.E. Mann: Valsartan and the kidney: Present and future, J. Cardiovasc. Pharmacol., vol. 33, Suppl. 1 (1999), p. 37-40。
更に、内皮の機能不全に対するANG II拮抗剤の作用も次の文献に記載されている。例えば:
・E.L. Schiffrin et al.: Correction of arterial structure and endothelial dysfunction in human essential hypertension by the angiotensin receptor antagonist losartan, Circulation, vol. 101(14) (2000), p. 1653-1659;
・R.M. Touyz et al.: Angiotensin II stimulates DNA and protein synthesis in vascular smooth muscle cells from human arteries: role of extracellular signal-regulated kinases, J. Hypertens., vol. 17(7) (1999), p. 907-916;
・E.L. Schiffrin: Vascular remodelling and endothelial function in hypertensive patients: Effects of antihypertensive therapy, Scand. Cardiovasc. J., vol. 32,Suppl. 47 (1998) p. 15-21;
・Prasad: Acute and chronic angiotensin-1 receptor antagonism reverses endothelial dysfunction in atherosclerosis, Circulation, vol. 101 (2000), p. 2349 ff..
また、ANG II拮抗剤は、AT1受容体を選択的に遮断し、抗増殖作用と組織再生作用に役割を果たすAT2受容体は影響を受けないままであることも知られる。
欧州特許第1 013 273号には、また、上皮下領域におけるAT1-受容体の増加又は上皮におけるAT2-受容体の増加と関連がある疾患の治療のための使用、特に種々の肺疾患の治療のためのAT1-受容体アンタゴニスト又はAT2-受容体モジュレータの使用が記載されている。
【0003】
他の態様においては、高血圧は、しばしば高脂血症と同時に現れることがわかった。いずれの症状も心臓血管疾患の発症における深刻な危険因子とみなされ、それはしばしば有害心血管イベントに至る。高血液コレステロール値及び高血液脂質レベルは、例えば、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈、頸動脈、末梢動脈を含む動脈内部で不規則に分布された脂質付着物を特徴とする症状の始まりに関係している。従って、この不規則な脂質分布は冠状動脈心臓の損傷、心臓血管疾患の特徴を示し、その危険と罹患率はまた、糖尿病の存在、人の性別、タバコ喫煙及び高血圧の副作用として生じる左心室肥大に影響を受ける。(Wilson et al., Am. J. Cardiol., vol. 59(14) (1987), p. 91G-94G)。
2型糖尿病は、2つの病態生理学的現象の徴候、即ち、膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌低下と肝臓、骨格の筋肉組織及び脂肪組織の標的器官におけるインスリン抵抗性がある。一般に、双方の成分が複雑に破壊される。その疾患は、空腹時高血糖症と診断される。即ち、10-12時間の絶食後の血糖濃度は、血漿1dlにつきグルコース125mgの閾値より高い。顕在的2型糖尿病の制御治療は、チアゾリジンジオン(グリタゾン)の種類の化合物を用いて達成することができる。これらの化合物は、インスリンを循環させる利用を改善するので、結果として血糖値(インスリン感作物質)を下げることになる。同時に、高インシュリンレベルは、フィードバック機序によって低下し、このようにして膵臓上の負荷が軽減される。インスリン感作物質(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン又はピオグリタゾン)は、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)として知られる特定の核内受容体に結合することによってこの活性を生じる。
国際出願第95/06410号には、全身系自己免疫疾患を含む慢性炎症性疾患を治療するためのアンギオテンシンII受容体拮抗剤の使用が開示されている。糖尿病は、全身系自己免疫疾患の多くの例の1つとして述べられている。自己免疫疾患は、遺伝子の素因を有する30歳未満の主に若い人たちに生じる1型糖尿病を含み、インスリン炎はB細胞のその後の破壊を有する種々の要因の影響によって生じるので膵臓はインスリンを少しだけしか或いは全く生産することができない。2型糖尿病は、自己免疫疾患とみなされない。
【0004】
2型糖尿病患者はいつも診断時に冠動脈性心疾患の徴候を示すので、例えば、糖尿病の原因は、ますます、異常な糖耐性、空腹時高血糖、インスリン抵抗性、高血圧症、異脂質血症又は求心性肥満のような多くの危険因子によって示すことができる複合代謝異常にあると思われる。インスリン抵抗性の優勢は、特に高トリグリセリド血症及び低HDL-コレステロールをもつ患者に顕著である。前2型糖尿病、代謝性症候群、エックス症候群又はインスリン抵抗性症候群が言及される。第一段階においては、標的器官によるインスリン応答低下が膵臓インスリン分泌の増加を生じ、血糖値を正常範囲に保つ。長年の過剰な又は増加するインスリン産生後、膵臓のβ細胞によるインスリン分泌がそれ以上増加することができないときが来る。次に、異常な糖耐性段階が開始する。身体は、十分に速いグルコースピーク値をもはや吸収することができない。最後に、空腹時血糖値が持続的に高いままの場合には、糖尿病は顕在的である。
狭心症、胸部における激しく締めつける痛みを特徴とし、しばしば心臓領域から左肩や左腕まで広がる症状は、β遮断薬、硝酸塩又はカルシウムチャンネル遮断薬が脂質低下薬と共に併用療法でしばしば治療される。狭心症は、しばしば心臓虚血状態の結果であり、通常は冠状動脈疾患に起因する。外科的に治療した場合、狭心症患者は、合併症、例えば、血管形成術によって生じる外傷に対する短期増殖性反応か又は移植された血管や血管形成術セグメントにおける動脈硬化過程の長期進行として経験する再狭窄をしばしば受ける。
脂質とコレステロールを下げるためのある可能な治療は、生合成コレステロール代謝経路における初期段階の、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素Aのメバロネートへの変換を触媒する、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)の活性を阻害することに基づくものである。HMG-CoA還元酵素の既知の阻害剤は、例えば、菌類代謝産物から得られる化合物、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン又はアトルバスタチンのような“スタチン"が終わりにつく名前である。
シンバスタチンは、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)の強力阻害剤として、また、その作用が低比重リポタンパクコレステロール(LDL-C)を下げることを含むコレステロール生合成阻害剤として知られる。これらの活性は、双方の高脂血症の治療、医療での通常のアテローム発生障害の治療において、従って、アテロームの進行を予防する際のこの分子の魅力の理由である。
【0005】
研究から、また、LDL-Cレベルが低下すると冠動脈性心疾患に対して保護されることが示された(例えば、The Lancet, vol. 344 (1994), p. 1383-1389に発表された“Scandinavian Simvastatin Survival Study"又は4S研究、又はShepherd et al.,The New England Journal of Medicine, vol. 333 (1995), p. 1301-1307)に発表された研究“Prevention of coronary heart disease with privastatin in men with hypercholesterolemia"を参照のこと)。
他の研究は、非インスリン依存性糖尿病患者における心臓発作、脳卒中、冠動脈性心疾患の存在に対してスタチンの保護効果を決定するために行われている;“Collaborative Atorvastatin Diabetes Study"又はCARDS研究“Atorvastatin Versus Revascularisation Treatment"、AVERT研究、“Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes trial"又はASCOT研究。
既に述べたように高脂血症又は2型糖尿病の徴候と共に高血圧がしばしば生じるので、また、これらの徴候がしばしば好適でない心血管イベントに至る心臓血管疾患の発症の主な危険因子であるので、患者がこれらの症状を予防又は治療する単一の治療に到達することは有益である。また、ANG II拮抗剤が有効であることがわかった心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の予防又は治療に併用療法が改善をもたらす場合には有利である。
本発明の目的は、高血圧の治療と高脂血症の治療双方に適切であり、代謝性症候群とインスリン抵抗性を治療することを可能にし、顕在的2型糖尿病の治療と糖尿病前期の複合代謝異常の第一適応症の治療に同時に用いることができる医薬組成物を提供することであるので、2型糖尿病を予防するために用いることができる。
【0006】
HMG-CoA還元酵素阻害剤とANG II拮抗剤を含有する併用治療と対応する組成物は、既に提案されている。
・国際出願第95/26188号には、HMG-CoA還元酵素阻害剤とANG II拮抗剤を用いてアテローム性動脈硬化症を治療するとともにコレステロールを低下させる方法が記載されている。用いることができる可能なHMG-CoA還元酵素阻害剤としてプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチンが述べられている。おそらく用いることができるANG II拮抗剤としてロサルタンが述べられている。
・国際出願第97/37688号には、高血圧症とアテローム性動脈硬化症を含む、多くの症状を治療するためのHMG-CoA還元酵素阻害剤とANG II拮抗剤の併用が記載されている。用いることができる可能なHMG-CoA還元酵素阻害剤としてプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチンが述べられている。
・国際出願第99/11260号には、哺乳動物において血圧と脂質レベルを下げるとともに狭心症とアテローム性動脈硬化症を治療するための特別なHMG-CoA還元酵素阻害剤とANG II拮抗剤の併用が記載されている。具体的なHMG-CoA還元酵素阻害剤は、アトルバスタチンである。好ましく用いられる可能なANG II拮抗剤としてロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンが述べられている。他のANG II拮抗剤は、カンデサルタン及びエプロサルタンが述べられている。
・国際出願第00/45818号には、糖尿病に罹っている患者において糖尿病性ニューロパシーを軽減するための、特に神経の伝導速度と神経への血流を改善するためのHMG-CoA還元酵素阻害剤とANG II拮抗剤の併用が記載されている。可能な併用剤の上記例は、スタチンプラバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、スタチン(E)をANG II拮抗剤ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、カンデサルタンと共に含む併用剤であり、カンデサルタンが好ましい。
・国際出願第01/15674号には、心血管イベント、例えば、脳卒中、うっ血性心不全、心臓血管の死、心筋梗塞、狭心症の悪化、心臓の停止、血管再生突起、糖尿病、糖尿病合併症を予防するためにレニン-アンギオテンシン-システム阻害剤が他の抗高血圧剤、コレステロール低下剤、利尿剤又はアスピリンと共に併用することが記載されている。可能な併用剤の例は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、即ち、名前が“-プリル"で終わる化合物、例えば、カプトプリル、イミダプリル、ラミプリル等とコレステロール値低下剤ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン又はフルバスタチンとの併用剤である。
【0007】
本発明の範囲内で、ここで驚くべきことに、アンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその塩が、既知の方法で、血圧を下げるように作用するだけでなく、その転写がPPARγ受容体によって調節されることが知られる細胞系において遺伝子の発現を増強することもできることがわかった。比較できる条件を確実にするために、この作用は安定に形質転換した細胞系によって本発明の範囲内で観察し定量化される(実施例2を参照のこと)。用いられる細胞は、2つの遺伝子構築物による形質転換の結果であるCHO細胞である。これらの構築物で第一は、5回反復の酵母Gal4結合部位(GeneBank Sequence AF058756を参照のこと)による合成促進剤の制御によってフォチヌス・ピラリス(Photinus pyralis)(de Wet JR, Mol Cell Biol (1987) 7:725)由来のルシフェラーゼ遺伝子をコードしている。第二構築物は、ヒトPPARγ2転写制御因子(GeneBank Sequence U79012を参照のこと)のリガンド結合ドメインと酵母GAL4 DNA結合ドメイン(Amino acids 1-147; Sadowski I, Nucleic Acids Res (1989) 17:7539)からなる融合タンパク質をコードしている。
PPARγ調節遺伝子の転写の誘導は、抗糖尿病薬(例えばロシグリタゾン)として用いられるチアゾリジンジオンより知られ、それらのPPARγ受容体への結合とその活性化によってもたらされる。ここで用いられる試験系の範囲内で、この作用は形質転換細胞系の誘導ルシフェラーゼ活性として定量化することができる。テルミサルタンの場合、予想に反して、ルシフェラーゼ活性の同じ誘導が活性物質のPPARγ受容体への結合によって起こらない。テルミサルタンのPPARγ受容体への結合は、種々の試験系で検出することができない。それ故、アンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタンによって生じるPPARγ補因子タンパク質の親和性の増加は、高親和性合成PPARγリガンドが存在しない場合には補因子タンパク質が補充されることになると推定される。このことにより、次に、PPARγ受容体によって調節される遺伝子の転写の活性化がもたらされ、この活性化はこれらの補因子によって仲介されている。これらの遺伝子の誘導がチアゾリジンジオンの抗糖尿病活性の原因となるので、テルミサルタンによる同じ遺伝子の誘導が匹敵する抗糖尿病活性を生じると考えることができる。従って、テルミサルタンは、高血圧の治療だけでなく、2型糖尿病の治療や予防に適切である。このことは、代謝性症候群、エックス症候群又はインスリン抵抗性症候群の治療や予防を含んでいる。
【0008】
テルミサルタン又はその塩のこの新規な治療作用の発見は、特に2型糖尿病が診断された場合又は糖尿病前期の疑いがある場合には、又は血圧が正常であるにもかかわらずその他のデータが代謝性症候群又はインスリン抵抗性の存在を示す場合には、心臓血管疾患、心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々又は哺乳動物の治療のための医薬組成物を製造するために使用し得ることを意味する。従って、2型糖尿病や前2型糖尿病の治療や予防に適している。このことは、代謝性症候群、エックス症候群、又はインスリン抵抗性症候群の治療や予防を含んでいる。高脂血症又はアテローム性動脈硬化症と組み合わせた高血圧症の予防又は治療が必要とされる人々の治療、又は喘息、気管支炎又は間質性肺疾患の治療が特に重要である。
2型糖尿病は、血漿1dlにつきグルコース125mgを超える空腹時血糖値でそれ自体発症し、血糖値の測定は通常の医療分析における標準作業である。グルコース負荷試験が行われる場合には、糖尿病患者の血糖値は、75gのグルコースを空腹時にとった2時間後に血漿1dlにつきグルコース200mgを超える。グルコース負荷試験においては、75gのグルコースが10-12時間の絶食後に試験される患者に経口投与され、グルコースをとる直前とそれをとった1時間と2時間後に血糖値が記録される。健康者においては、グルコースをとる前の血糖値は血漿1dlにつき60〜110mgであり、グルコースをとった1時間後は1dlにつき200mg未満であり、2時間後は1dlにつき140mg未満である。2時間後の値が140〜200mgである場合には、異常なグルコース耐性とみなされる。
インスリン抵抗性が検出され得る場合には、糖尿病前期の存在を特に強く示している。従って、グルコース恒常性を維持するために1人の人は他の人の2-3倍多くのインスリンを必要とし、このことはいかなる直接的な病理学的意味をもたないことである。インスリン抵抗性を求める最も確かな方法は、正常血糖-高インスリン血症クランプ試験である。インスリンとグルコースとの比は、インスリン-グルコース複合注入法の範囲内で求められる。グルコース吸収が調査した背景人口の25百分位数より少ない場合にはインスリン抵抗性であるとわかる(WHOの定義)。クランプ試験よりむしろ面倒でない試験は、いわゆる最小モデルであり、静脈内グルコース耐性検査の間、血液中のインスリンとグルコース濃度が一定間隔で測定され、これらからインスリン抵抗性が算出される。測定の他の方法は、数学的HOMAモデルである。インスリン抵抗性は、絶食の血漿グルコースと絶食のインシュリン濃度によって算出される。この方法では、肝臓と末梢間のインスリン抵抗性を区別することは可能でない。これらの方法は、毎日の実施でインスリン抵抗性を評価することには実際には適していない。一般に、インスリン抵抗性を評価する日常的な医療においては他のパラメータが用いられる。好ましくは、トリグリセリドレベルの増加がインスリン抵抗性の存在と有意に相関するので患者のトリグリセリド濃度が用いられる。
【0009】
従って、空腹時血糖値が血漿1dlにつきグルコース110mgの正常最大レベルより高いが、糖尿病を示す血漿1dlにつきグルコース125mgの閾値を超えない場合には糖尿病前期の疑いがある。糖尿病前期の他の指標は、異常なグルコース耐性である。即ち、グルコース負荷試験の範囲内で断食後に75gのグルコースをとった2時間後の血漿の1dlにつきグルコース140-200mgの血糖値である。
150mg/dlを超えるトリグリセリド血中濃度も、糖尿病前期の存在を示す。この疑いは、HDLコレステロールの低血中濃度によって確認される。女性において血漿の1dlにつき40mg以下のレベルはあまりに低いとみなされ、男性において血漿の1dlにつき50mgより低いレベルはあまりに低いとみなされる。血液中のトリグリセリドとHDLコレステロールは、また、医療分析における標準法で求めることができ、例えば、Thomas L(Editor):“Labor und Diagnose", TH-Books Verlagsgesellschaft mbH, Frankfurt/Main, 2000に記載されている。空腹時血糖値も血漿1dlにつき110mgのグルコースを超える場合には糖尿病前期の疑いが更に確認される。測定される血中濃度がこれらの閾値の領域にある場合には、ウエスト測定とヒップ測定との比は、決定をする追加援助として用いることができる。この比が女性で0.8又は男性で1の値を超える場合には、治療を意味する。
高血圧症も治療しなければならない場合には、糖尿病又は疑わしい糖尿病前期を治療するためにテルミサルタンが特に必要である。このことは、収縮期血圧が140mm Hg値を超え、拡張期血圧が90mm Hg値を超える場合である。患者が顕在的な糖尿病を罹患している場合には、収縮期血圧を130mm Hgより低いレベルに下げ、拡張期血圧を80mm Hgより低いレベルに下げることが現在推奨されている。これらのレベルを達成するために、ある場合にはアンギオテンシンII受容体拮抗剤を利尿薬又はカルシウム拮抗薬と組み合わせることが必要とされてもよい。“利尿薬"という用語には、チアジド又はチアジド類似体、例えば、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)、クロパミド、キシパミド又はクロルタリドン、アルドステロン拮抗薬、例えば、スピロノラクトン又はエプレレノン、また、高血圧を治療するのに適した他の利尿薬、例えば、フロセミドやピレタニド、アミロリド及びトリアムテレンによるその組合わせが含まれる。
本発明は、高血圧が治療される患者の場合、糖尿病前期の発症が予防され顕在的糖尿病が治療されるときはいつでもアンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタンが必要とされることを意味する。
【0010】
高血圧(続発性高血圧)の全症例のわずか10%においては、同一とみなし得る原因、例えば、腎疾患を決定することが可能である。一般に、この続発性高血圧は、原因を治療して、取り除くことによって治療することができる。しかしながら、全症例のほぼ90%では、原発性高血圧症であり、その正確な原因は不明であり、それ故、直接治療することができない。高血圧の負の作用は、生活様式の変更と正しい治療によって減少させることができる。異なる危険因子の相互作用又は個々の危険因子の合わせた存在が高血圧を生じると思われる。特に、高血圧と、脂肪と糖代謝の障害との組み合わせは増加している程度まで見られる。これらの障害は、最初はしばしば気づかれないが、トリグリセリドとグルコースの高血中濃度やHDLコレステロールの低い血中濃度より認識され得る。かなり進行した段階で、徐々に増加する肥満において検出され得る。これらの障害は、増加するインスリン抵抗性によって説明することができる。インスリンが有効でなくなるほど、脂肪と糖代謝が崩壊される。結局全てのこれらの障害の組み合わせは、糖疾患糖尿病にかかるとともに心臓又は血管疾患で早期に死ぬ確率を増大させる。
原発性又は本態性高血圧症が多因子性疾患であるので、インスリン抵抗性又は高インスリン血症が高血圧の唯一の原因であることはないようである。しかしながら、多くの所見は、インスリン代謝における欠陥が血圧上昇効果を有するので、高血圧の傾向を与えることを示している。このことと関連して、高血圧性インスリン抵抗性を言及することができる。従って、インスリン抵抗性の存在は、約50%の正常体重高血圧患者や正常血圧性近親に認められることができる。肥満患者においては、高いレベルのインスリン抵抗性があるだけでなく、細い高血圧患者より高血圧症と高インスリン血症間に強い相関がある。
評価は、食品の供給が過剰な世界の部分において成人の約1/3が高血圧と、脂肪と糖代謝の障害の組み合わせに影響されること及びこの数が増加し続けるという仮定に基づいている。その結果として、最も初期の可能な段階で上述の代謝異常の進行を遅くするか又は止めると同時に健康時の高血圧の有害作用を取り除くことを援助することができる薬剤が求められている。
【0011】
本発明は、ここで、高血圧症と高脂血症を同時に治療するためと顕在的な2型糖尿病又は糖尿病前期の複合代謝異常の最初の徴候を治療するための双方に使用し得る医薬組成物を開示する。新規な活性物質の併用は、血流において循環するインスリンの不十分な利用が生じた血圧上昇と組み合わせて示される、上述の高血圧性インスリン抵抗性の治療や予防に特に適する。従って、本発明は、また、高血圧と高脂血症を治療している患者における糖尿病予防を含んでいる。テルミサルタンとシンバスタチンの組み合わせが血圧、高脂血症又は高血圧性インスリン抵抗性を制御するために糖尿病前期の上述の徴候の1つが存在するとすぐに用いられる場合には、顕在的2型糖尿病の開始は、遅れるか又は予防することができる。
従って、テルミサルタン又はその適切な塩は
・ヒトPPARγ受容体のリガンド結合ドメインにいかなる試験管内結合も示さず、
・ルシフェラーゼ活性の誘導が
a) ヒトPPARγ転写因子のリガンド結合ドメインと酵母GAL4 DNA結合ドメインからなる融合タンパク質と
b) 5回反復の酵母Gal4結合部位の制御下でルシフェラーゼ遺伝子を発現させる
安定に形質転換されたPPARγリポーター細胞系の培養液に加えたときにもたらされる。この種類のPPARγリポーター細胞系の調製は、実施例2に記載されている。
アルファスクリーン(Ullmann EF et al, Proc Natl Acad Sci USA (1994) 91:5426-5430)において検出することができない場合には、ヒトPPARγ2受容体のリガンド結合ドメインに試験管内結合しない。アルファスクリーンの代わりに、SPA分析(Mukherjee R et al., J Steroid Biochem Mol Biol (2002) 81:217-225)又はNMR研究(Johnson BA et al., J Mol Biol (2000) 298:187-194)を行うことができる。一般に、受容体に結合することは、これらの方法のいずれによっても検出することができない。
アンギオテンシンII受容体遮断剤を1種以上の他の治療の活性物質と共に用いることが有効又は必要と考えられる場合には、単一の活性物質において血圧低下と抗糖尿病活性を組み合わせるとともに糖尿病の予防を援助するので、テルミタルサンは、好ましいアンギオテンシンII受容体遮断剤である。この理由から、テルミタルサンとHMG-Co Aレダクターゼ阻害剤シンバスタチンとの前配合活性物質併用は、心臓血管疾患、心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の治療において、特に、高血圧症、高脂血症、糖尿病前期又は顕在的2型糖尿病、骨粗鬆症又はアルツハイマー病を同時に治療すること、また、糖尿病を予防することを必要とする場合に更に大幅な進展を構成する。
【0012】
テルミサルタン又はその多形体又は塩の有効量と、シンバスタチンの有効な量との結合投与によって、驚くべき利点は、単独でのANG II拮抗剤又はHMG-CoA還元酵素阻害剤の投与と比較して、活性物質テルミサルタンの既知の低血圧作用と独立して活性物質シンバスタチンの抗高脂血症活性にかかわりなく、高度な効力で治療を必要としている患者において心臓血管疾患、心肺疾患、肺疾患又は腎疾患の予防又は治療に達成し得ることが認められる。従って、例えば、呼吸器の慢性炎症又は2型糖尿病において更に非常に大きく発現する、マトリックス金属プロテイナーゼMMP-9の発現を制御することが可能である。高血漿レベルの炎症促進サイトカインCD40Lを妨げることもできる。高血漿レベルのCD40Lは、心臓血管疾患の既知の危険因子である。
また、予防又は治療が、血圧と脂質レベルの双方を制御することを必要としている疾患において内皮機能を改善するとともに器官、組織、血管の保護を与えることが認められる。従って、動脈の弾性を改善することができ、皮膚においては、NOの高生産、内皮機能の指標を達成することができる。
また、予防又は治療が次の状況:
AT1-受容体によって仲介される活性の阻止とAT2-受容体によって仲介されるアンギオテンシンII(ANG II)の活性の維持によって、また、HMG-CoA還元酵素活性の阻止によって、従って、ブラジキニンによって仲介される活性を強化することができるとともに抗高脂血症の活性を達成することができることによって正に影響され得る適応症(A); 又は上皮下領域におけるAT1受容体の増加又は上皮におけるAT2受容体の増加と同一歩調をとる適応症(B)において特に有効であることが認められる。
適切な適応症(A)は、次の適応症:
高血圧症と高脂血症双方の治療;
特に有害心血管イベント又は脳卒中の高いリスクをもつ人々において脳卒中、急性心筋梗塞又は心臓血管の死の発生減少;
例えば、腎不全又は糖尿病性ネフロパシーにおける腎保護効果の供与;
左心室肥大、血管肥厚の予防、例えば、血管手術の後の血管壁の肥厚の予防、心臓移植後の生存の可能性の改善、血管形成術後の動脈内再狭窄の予防、アテローム発生障害、例えば、アテローム性動脈硬化症の予防又は治療、冠状動脈疾患からの保護、アテローム進行の予防、糖尿病性血管症の予防;
コレステロールの低下、血漿-フィブリノーゲンや血漿粘度の低下、平滑筋細胞の増殖の阻止、LDLを酸化させるマクロファージの能力の低下、酸素圧低下損傷から心筋細胞の保護、プラスミノーゲンアクチベータ阻害剤1(PAl-1)の低下;
虚血性末梢循環障害や心筋虚血状態(狭心症)の予防又は治療;
心筋梗塞後の心不全の進行の予防
より選ばれる。
【0013】
適切な適応症(B)は、次の適応症:
閉塞性呼吸器疾患、慢性閉塞性肺疾患、例えば、気管支炎又は慢性気管支炎、例えば、喘息によって生じる気腫、嚢胞性線維症、間質性肺疾患、肺癌、肺血管疾患、強制換気における空気流に対する抵抗の増加;
成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺や胸部のがんにおける上皮の増殖能の低下、敗血症症候群、肺損傷、例えば、肺の炎症、胃内容物の吸引、胸郭に対する外傷、ショック、熱傷、脂肪塞栓症、心肺バイパス手術、O2毒性、出血性膵臓炎、特に、マトリックス金属プロテアーゼ、例えば、MMP-9の発現増強に付随する場合の間質や気管支肺胞の炎症、上皮細胞や間質細胞の増殖、コラーゲン蓄積、線維症の治療
より選ばれる。
従って、本発明は、特に糖尿病が診断されたか又は糖尿病前期の疑いがある哺乳動物において、高血圧症と高脂血症を予防又は治療するための方法であって、HMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンの有効量をANG II拮抗剤テルミサルタン又はその多形体又は塩の有効量と共に併用投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明は、更に、特に糖尿病が診断されたか又は糖尿病前期の疑いがある場合には、高脂血症に伴う高血圧症を予防又は治療するための医薬組成物の製造におけるシンバスタチンとテルミサルタン又はその多形体又は塩の併用に関する。
従って、本発明の方法の有利な活性は、主に、器官、組織、血管の併用治療の保護的有効性、また、糖尿病に相対する予防的作用に基づく。
上述の予想外の利点は、AT1受容体によって仲介されるANG IIの活性の更に有効な遮断に、ブラジキニンによって仲介される活性の増加と共に、この特定のANG II拮抗剤に影響を受けないままであるAT2受容体によって仲介されるANG IIの活性に、PPARγのような転写活性化に、且つシンバスタチンによる抗高脂血症活性の達成に起因するものである。
例えば、特定のANG II拮抗剤テルミサルタン又はその多形体又は塩と特定のHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンとの併用投与は、単独でのこれらの活性物質のうちの1つの投与と比較して、特に脳卒中や急性心筋梗塞の発生に関して、心臓血管の死や全体の死亡率の有意な予防をもたらすことが認められる。
【0014】
それ故、本発明の好ましい方法は、治療を必要としている人々又は非ヒト哺乳動物において、特に、顕在的2型糖尿病又は疑わしい糖尿病前期をもつ個体又は有害心臓血管イベント又は脳卒中のリスクの高い個体において、テルミサルタン又はその多形体又は塩をシンバスタチンと共に投与することによって脳卒中や急性心筋梗塞の発生を減少させることを含んでいる。
更に、その併用治療及び特にHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンの量をANG II拮抗剤テルミサルタン又はその多形体又は塩の量と共に含有する対応する組成物により、哺乳動物において血圧の調節と脂質調節の活性が高くなることが認められる。この特別な組み合わせを用いて達成される相乗的活性は、驚くべきことに対応する従来の併用剤の活性より優れていることが予想される。
血圧と脂質を調整するための相乗的組合わせとは、シンバスタチンの量とテルミサルタン又はこの活性物質の多形体又は塩の量を含有し、個々の活性物質の量が治療作用を達成するのに単独では十分でなく、治療剤の量の併用効果が個々の治療剤の量によって達成することができる治療活性の合計より多いことを意味する。
本発明は、テルミサルタン又はその塩の1種をシンバスタチンと組合わせて含有する医薬組成物及びその調製に関する。上述の疾患又は適応症の予防又は治療にヒト又は非ヒト哺乳動物を治療するために用いられ、テルミサルタンとシンバスタチンを任意により薬学的に許容しうる希釈剤及び/又は担体と共にこれらの疾患又は適応症の予防又は治療における同時、個別又は連続使用のための併用製剤の形で含有する。
活性物質のこれらの併用剤は、通常は、1種以上の配合補助剤、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、サッカロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、クロスカルメロースナトリウム塩(セルロールカルボキシメチルエーテルナトリウム塩、架橋)、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体(コポビドン)とのコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ミクロクリスタリンセルロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピルエングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は脂肪物質、例えば、硬質脂肪又はその適切な混合物と共に従来のガレヌス製剤、例えば、素錠又はコーティング錠、カプセル剤、散剤、懸濁液剤又は坐薬に組込まれる。
【0015】
錠剤は、例えば、1種又は複数の活性物質と1種以上の賦形剤とを混合し、続いてそれらを圧縮することによって得ることができる。錠剤は、また、いくつかの層からなることができる。賦形剤の例は、
・不活性希釈剤、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、サッカロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース;
・崩壊剤、例えば、クロスカルメロースナトリウム塩(セルロールカルボキシメチルエーテルナトリウム塩、架橋)、クロスポビドン、グリコール酸デンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、トウモロコシデンプン;
・結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体(コポビドン)とのコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ミクロクリスタリンセルロース又はデンプン;
・滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、タルク;
・徐放を達成させる物質、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース又はポリ酢酸ビニル;
・薬学的に可能な着色剤、例えば、着色酸化鉄
である。
本発明の全ての態様においては、ANG II拮抗剤テルミサルタンは、{4'-[2-n-プロピル4-メチル6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イルメチル]ビフェニル-2-カルボン酸}又はその多形体又は塩、好ましくはナトリウム塩である。テルミサルタンは、例えば、商品名Micardis(登録商標)として既に市場に出ている。
テルミサルタンは、例えば、欧州特許第0 502 314号及び米国特許第5 591 762号に記載されている。テルミサルタンの多形体は、例えば、国際出願第00/43370号、米国特許第6 358 986号及び米国特許第6 410 742号に記載されている。テルミサルタンの塩は、例えば、国際特許第03/037876号に記載されている。
例えば、国際特許第03/037876号には下記式のテルミサルタンナトリウム塩


【0016】
【化1】

【0017】
が製造条件の適切な選択によって結晶性多形体の形で選択的に得ることができると述べられている。
テルミサルタンナトリウム塩のこの結晶形は、融点T = 245±5℃(Mettler-Toledo DSC82装置を用いて示差走査熱量測定法で求めた; 加熱速度: 10oK/min)を特徴とする。
テルミサルタンナトリウム塩は、次の2つの製造プロセスの1つを用いて調製することができる。
本発明の全ての態様によればHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンは{2,2-ジメチルブタン酸、1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロ-3,7-ジメチル-8-[2-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル)エチル-1-ナフタレニルエステル}であり、例えば、ブランド名Zocor(登録商標)として市場に出されている。シンバスタチンは、例えば、欧州特許第0 033 538号及び米国特許第4 444 784号に記載されている。
2つの活性物質の併用投与とは、連続又は同時投与を意味し、同時投与が好ましい。連続投与の場合、シンバスタチンの投与前か投与後にテルミサルタンを投与することができる。
活性物質は、経口、バッカル又は非経口経路で、吸入で、又は直腸的又は局所的に投与することができ、経口投与が好ましい。非経口投与は皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、注入法を含むことができる。活性物質は、種々の異なる剤形で経口的に投与することができる。即ち、錠剤、カプセル剤、香錠、菓子、散剤、スプレー剤、水性懸濁液剤、エリキシル剤、シロップ剤等を形成するために種々の薬学的に許容しうる不活性担体と調製することができる。このような担体としては、固体の希釈剤又は充填剤、滅菌水性媒体、種々の非毒性有機溶媒が含まれる。更に、この種類の経口医薬製剤は、従来このために用いられる種々の物質を用いて適切な甘味剤及び/又は香味剤を備えることができる。一般に、本発明の化合物は、この種類の経口製剤に所望の用量単位を製造するような量での全組成物に基づいて約0.5〜約90 wt.%にある濃度で存在する。本発明の化合物の他の適切な剤形としては、当業者によく知られる放出制御された製剤や装置が含まれる。
【0018】
経口投与の場合、種々の担体、例えば、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムを種々の崩壊剤、例えば、デンプン、好ましくはジャガイモ又はタピオカデンプンアルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩と共に結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、サッカロース、ゼラチン、アラビアゴムと共に含有する錠剤を用いることが可能である。更に、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク又は類似したタイプの組成物が充填した軟ゼラチンカプセルや硬ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いることができる。これらは、また、ラクトース又は乳糖や高分子ポリエチレングリコールを含んでいる。水性懸濁液剤及び/又はエリキシル剤が経口投与に所望される場合には、活性物質は、種々の甘味剤又は香味剤、着色剤又は色素、任意に乳化剤及び/又は水、エタノール、プロピルエングリコール、グリセロール又はその種々の組合わせと合わせることができる。
非経口投与の場合、ゴマ油又は落花生油中又は水性プロピレングリコール中の化合物の溶液や対応する薬学的に許容しうる塩の滅菌水溶液を用いることができる。この種類の水溶液は、任意に適切に緩衝化されてもよく、液体希釈剤は、食塩又はグルコースの十分な量で任意に等張にしてもよい。これらの特別な水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下注射に適している。滅菌水性媒体は、当業者に知られる従来法によって容易に得ることができる。例えば、液体希釈剤として蒸留水が通常用いられる。仕上げ製剤は、適切な細菌フィルタ、例えば、焼結ガラスでできたフィルタ、珪藻土又は素焼きの磁器を通過させる。このタイプの好ましいフィルタとしては、ベルケフェルド、シャンベラン、アスベストディスク金属ザイツフィルタが含まれ、吸引ポンプを用いて滅菌容器に液体が吸い込まれる。これらの注射用溶液の全調製方法全体に滅菌状態で最終製品を得るような方法で必要な工程を行わなければならない。
【0019】
経皮投与の場合、特別な化合物又は組合わせの製剤としては、例えば、液剤、ローション剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、坐薬、徐放性製剤及びその装置が含まれる。これらの製剤は、特に化合物を含み、エタノール、水、浸透促進剤及び不活性担体、例えば、ゲル形成材料、鉱油、乳化剤、ベンジルアルコール等を含有することができる。
調製した製剤は、例えば、2.5-40mg、好ましくは5、10、15、20、25、30、35又は40mgのシンバスタチンの等価物を含有する。シンバスタチンは、経口経路で約0.625mg(又は0.009mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)〜約450mg(6.43mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)、非経口経路で約20mg(0.286mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)の1日量で、好ましくは経口経路で約1.25mg(0.018mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)〜約80mg(1.428mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)の用量で投与することができる。約2.5mg(0.036mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)、約5mg(0.071mg/kg体重、、体重70kgの人に基づく)、約10mg(0.143mg/kg体重、、体重70kgの人に基づく)、約20mg(0.286mg/kg体重、、体重70kgの人に基づく)又は約40mg(0.571mg/kg体重、、体重70kgの人に基づく)の経口1日量又は、特にはじめは、経口経路による約10mgの経口1日量が特に好ましい。
調製した製剤は、例えば、20-200mg、好ましくは20、40、80、120、160又は200mgのテルミサルタンの遊離酸の等価物を含有する。活性物質がHCTZ又はクロルタリドンと組合わせる場合には、製剤は、例えば、10-50mg、好ましくは50、25又は12.5mgの利尿薬を含有する。テルミサルタン又はその多形体又は塩は、経口経路による10mg(又は0.143mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)〜500mg(7.143mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)、非経口経路による約20mg(0.286mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)、好ましくは、経口経路による20mg(0.286mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)〜100mg(1.429mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)1日量で投与することができる。40mg(0.571mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)〜80mg(1.143mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)の経口1日量又は、特に約80mg(1.143mg/kg体重、体重70kgの人に基づく)の用量が特に好ましい。
【0020】
好ましくは、医薬併用においてシンバスタチンとテルミサルタン又はその多形体又は塩との比は1:100〜100:1(重量に基づく)である。
特に好ましい実施態様においてはシンバスタチンはテルミサルタン又はその多形体又は塩と共に以下の1日量で経口経路により投与される。
5mgのシンバスタチンと40mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩;
5mgのシンバスタチンと80mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩;
10mgのシンバスタチンと40mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩;
10mgのシンバスタチンと80mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩;
20mgのシンバスタチンと40mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩;
20mgのシンバスタチンと80mgのテルミサルタン又はその多形体又は塩。
好ましい実施態様によれば、本発明の医薬組成物は、個々の用量単位において0.625mg〜450mgの量のシンバスタチンと10mg〜500mgの量のテルミサルタンを任意により1種以上の薬学的に許容しうる希釈剤及び/又は担体と共に含有する。他の好ましい実施態様によれば、本発明の医薬組成物は、個々の用量単位において1.25mg〜80mgの量のシンバスタチンと20mg〜100mgの量のテルミサルタンを任意により1種以上の薬学的に許容しうる希釈剤及び/又は担体と共に含有する。
本発明の医薬組成物の他の好ましいサブグループは、個々の用量単位において2.5mg〜20mgの量のシンバスタチンと40mg〜80mgの量のテルミサルタンを、任意により1種以上の薬学的に許容しうる希釈剤及び/又は担体と共に含有する。
本発明の医薬組成物の他の好ましいサブグループは、個々の用量単位において5mg、10mg又は20mgの量のシンバスタチンと40mg又は80mgの量のテルミサルタンを、任意により1種以上の薬学的に許容しうる希釈剤及び/又は担体と共に含有する。
既に述べたように、本発明は、また、シンバスタチンと組合わせて用いた場合に上述の適応症の予防又は治療のためにヒト又は非ヒト哺乳動物の体を治療する医薬組成物を調製するためのテルミサルタンの使用に関する。この使用とは、本発明の全ての上述の医薬組成物の製剤を意味する。
【実施例】
【0021】
実施例1: テルミサルタン、ロサルタン及びイルベサルタンは、生体外でPPARγリガンド結合ドメインに結合しない
ヒトPPARγ-リガンド結合ドメイン(LBD)を含有するタンパク質をE.coli中のGST融合タンパク質として調製し、アフィニティークロマトグラフィで精製する。
このことを行うために、ヒトPPARγ2転写制御因子のアミノ酸205-505 をコードしているDNA部分(GenbankエントリU79012を参照のこと)を更に挿入された制限切断部位BamH IとXho によって発現ベクターpGEX-4T-1(Amersham)へサブクローン化し、配列の部分をモニタする。0.2mM IPTGによる25℃で4時間の誘導後にpGEXベクターに推奨されるE.coli株BL21(DE3)において融合タンパク質を発現する。誘導後に細菌が沈降し、PBS、pH 7.4のバッチ中で凍結する。フレンチプレスにおいて開放した後、溶解したGST-PPARγ-LBD-融合タンパク質をGSTrapカラム(Pharmacia)を用いて精製する。20mMの還元グルタチオンの添加によって溶離が行われる。
GST-PPARγ-LBD-タンパク質画分をHiTrap脱塩カラム(Pharmacia)を用いて脱塩し、タンパク質濃度を標準分析を用いて求める。
ヒトRXRαリガンド結合ドメイン(LBD)を含有するタンパク質をE.coli中でHis標識融合タンパク質として調製し、アフィニティークロマトグラフィで精製する。
このことを行うために、ヒトRXRα転写制御因子のアミノ酸220-461をコードしているDNA部分(GenbankエントリNM_002957、nt 729-1457を参照のこと)を、更に導入した制限切断部位BamH IとNot Iによって発現ベクターpET28c(Novagen)へサブクローン化し、配列の部分をモニタする。0.2mM IPTGで25℃で4時間誘導した後に、pETベクターに推奨されたE.coli株BL21(DE3)において融合タンパク質が発現する。発現後に細菌を沈降させ、PBS、pH 7.4のバッチで凍結する。フレンチプレスにおいて開放した後に、溶解したHis-RXRα-LBD-融合タンパク質をHiTrapキレート化カラム(Pharmacia)を用いて精製する。500mMイミダゾール工程を用いて溶離が行われる。His-RXRα-LBDタンパク質画分をHiTrap脱塩カラム(Pharmacia)を用いて脱塩し、タンパク質濃度を標準分析を用いて求める。
a) アルファスクリーン
アルファスクリーン分析は、最初にUllmann EF et al, Proc Natl Acad Sci USA (1994) 91:5426-5430に記載された。本実施例の範囲内で行われた測定は、Glickman JF et al., J Biomol Screen (2002) 7:3-10に記載されたように行った。分析緩衝液は、25mM Hepes pH7.4、100mM NaCl、1mM DTT、0.1% Tween-20、0.1% BSA、3nM GST-PPARγ-LBD融合タンパク質、補因子CBPの15nMビオチニル化LXXLLペプチド(Mukherjee R et al., J Steroid Biochem Mol Biol (2002) 81:217-225の218ページに開示されたペプチドと追加のN末端基システインに対応する)からなり、各場合において10μg/mlの抗GST受容体ビーズ又はストレプトアビジン供与体ビーズ(Applied Biosystems)を試験物質(DMSO中)の異なる濃度の存在下に総容積の12.5μl中でインキューベートする。分析における最終DMSO濃度は、1%(v/v)である。バックグラウンド対照(NSB)として1% DMSO溶液が用いられる。測定は、パッカード融合測定装置を用いて行われる。
【0022】

【0023】
ロシグリタゾン、LBDに結合することに関して文献より既知のPPARγ作動薬と異なり、増加濃度のテルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタン(最高50μMの濃度)の使用は、PPARγ-LBDのいかなる直接的な活性化ももたらさず、従って、LXXLLペプチドのいかなる有意な補充ももたらさない。
b) SPA分析
SPAアッセイフォーマットの説明は、Mukherjee R et al., J Steroid Biochem Mol Biol (2002) 81:217-225に見つけることができる。分析緩衝液は、20mMトリスpH 7.5、25mM KCl、10mM DTT、0.2%トリトンX-100からなる。30nM GST-PPARγ-LBD融合タンパク質、30nM His-RXRα-LBD、抗GST抗体(1:600, Amersham Pharmacia)、0.25mgのプロテインA SPA PVT抗体結合ビーズ(Amersham Pharmacia)、30nM 3H標識ロシグリタゾンを試験物質の希釈液と室温で5時間100μlの総容積でインキューベートする。
放射性ロシグリタゾンの代わりに10μMの非標識ロシグリタゾンをバックグラウンド対照(NSB)として加え、試験物質の代わりに最高値(Bmax)として使用した溶媒、例えば、DMSOを加える。
インキュベーション後、試験製剤をHettich Universal 30Rf遠心分離機において2000 rpmで5分間遠心分離し、パッカードTopCount NXTを用いて測定する。
【0024】

【0025】
PPARγ-LBDに結合する直接的なPPARγ作動薬とは対照的に、結合ポケットより放射性ロシグリタゾンの濃度依存性置換はテルミサルタン、ロサルタン又はイルベサルタンの非常に多量の過剰量でさえ起こらない。
c) NMR研究
直接的なPPARγリガンド、例えば、ロシグリタゾンとは対照的に、結合ポケットにおける試験物質とアミノ酸との相互作用は試験物質テルミサルタンの存在下のPPARγ-LBDの15N TROSYスペクトルの測定中に起こらない。結合ポケットのアミノ酸は試験物質の存在下にリガンドの非存在下と同じ位置を有する。
【0026】
実施例2: 安定に形質転換したPPARγリポータ細胞系の調製
ヒトPPARγ2転写因子のアミノ酸205-505をコードしているDNA部分(Genbank配列U79012のヌクレオチド703-1605に対応する)が更に挿入されたBamH IとHind III制限切断部位によってベクターpFA-CMV (Stratagene)の多重クローニング部位に取り込まれ、配列が証明される。得られたプラスミドpFA-CMV/hPPARγ2-LBDは、Gal4 DNA結合ドメインの同じ読み枠においてN末端にPPARγ-LBDをコードしている。更に、プラスミドはネオマイシン耐性をコードしている。
細胞系CHO-K1(ATCC CCL-61)をプラスミドpFA-CMV/hPPARγ2-LBDとpFR-Luc (Stratagene)でコトランスフェクトする。pFR-Lucは、5回反復の酵母Gal4結合部位の制御下でルシフェラーゼ遺伝子をコードしている。製造業者の説明書に従ってリポフェクタミン2000でトランスフェクションが行われる。
トランスフェクション後、細胞は0.5mg/mlのG-418の存在下に培養液(10%ウシ胎仔血清を含むHamのF12)で培養される。6日間培養後、細胞を継代し、更に10日間の培養内で保たれる。得られたネオマイシン耐性のコロニーを顕微鏡によって選び出し、96ウェル皿へ移され、培養する。その中にプラスミドが含有した種々の形質転換細胞系(例えば、クローンno. 10、11、13等)が得られ、培養液中に保たれている。
細胞系について、PPARγ作動薬、例えば、ロシグリタゾンを用いてルシフェラーゼ遺伝子の誘導性を調べ、PPARγ作動薬によって刺激に対して強化されたルシフェラーゼシグナルと反応する。
【0027】
実施例3: テルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタンは細胞レベルでPPARγを活性化する
実施例2の形質転換クローン11から得られるCHO-K1細胞系を3×104細胞/200μl/ウェルの密度で96ウェル平底皿に播種し、10%のウシ胎仔血清と0.5mg/ml G 418を含むHamのF-12培養液で一晩培養する。24時間後、培養液をあらゆるG-418が加えられていないものに替える。
試験物質を、100倍まで適切な溶媒、例えば、DMSOで所望の濃度にし、細胞培養プレートに入れた培養液で1:100に希釈する。用いた溶媒、例えば、DMSOをバックグラウンド対照として同じ濃度で用いる。
物質を添加した24時間後に上清を捨て、細胞を150μlの洗浄緩衝液(25mMトリシン、16.3mM MgSO4、pH7.8)で2回洗浄する。洗浄工程後、150μlのルシフェラーゼ分析緩衝液(25mMトリシン、0.5mM EDTA、0.54mM NaTPP、16.3mM MgSO4、1.2mM ATP、0.05mMルシフェリン、56.8mM 2-メルカプトエタノール、0.1% Trition X 100、pH7.8)を含む50μlの洗浄緩衝液を各試験製剤に加える。5分間待った後、パッカードTopCount NXTを用いてルミネセンスを測定する。測定開始の最初の10秒後の相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を集積することによってルシフェラーゼ活性が得られる。









【0028】

【0029】
アンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタンは、PPARγリポータ細胞系においてPPARγ経路の特に強力な活性化をもたらす。他のアンギオテンシンII受容体拮抗剤、例えば、ロサルタンやイルベサルタンによる活性化は、高い試験濃度で小さい範囲に起こるだけである。
【0030】
実施例4: 製剤の例
錠剤1
テルミサルタンナトリウム塩と、賦形剤とステアリン酸マグネシウムとを直接圧縮することにより以下の組成を有する錠剤が得られる。
成分: mg
テルミサルタンナトリウム塩 41.708
マンニトール 49.542
ミクロクリスタリンセルロース 50.000
クロスカルメロースナトリウム塩 5.000
ステアリン酸マグネシウム 3.750
全量 250.000
錠剤2
テルミサルタンナトリウム塩と、賦形剤とステアリン酸マグネシウムとを直接圧縮することにより以下の組成を有する錠剤が得られる。
成分: mg
テルミサルタンナトリウム塩 83.417
ソルビトール 384.083
ポリビドンK25 25.000
ステアリン酸マグネシウム 7.500
全量 500.000
錠剤3
ヒドロクロロチアジド、テルミサルタンナトリウム塩、ソルビトール、赤色酸化鉄を自由落下ブレンダで混合し、0.8mmスクリーンを通過させ、ステアリン酸マグネシウムを添加した後、自由落下ブレンダで処理して粉末混合物を得る。
次に、活性物質と賦形剤のこの組合わせを適切な打錠機(例えば、Korsch EK0又はFette P1200)によって圧縮して錠剤を形成する。
以下の組成を有する錠剤が得られ、80mgのテルミサルタンの遊離酸の量に対応するテルミサルタンナトリウム塩の量が各錠剤中に含有する。

【0031】

【0032】
3つのバッチの錠剤のテルミサルタンナトリウム塩は、30分間撹拌した(75 rpm)後、それぞれ92±1.5 %、96±1.8 % 、100±1.0 %の速度で900mlの0.1Mリン酸緩衝液、pH 7.5に溶解する。ヒドロクロロチアジドは、30分後にそれぞれ69 6.3 %、72 2.1 %及び78 1.8 %の速度で、900mlの0.1M HCl(100 rpm)に溶解する。
【0033】
実施例5: テルミサルタンから出発する結晶性テルミサルタンナトリウム塩の調製
結晶性テルミサルタンナトリウム塩を調製するための出発物質は、テルミサルタンの遊離酸であってもよく、これは従来法(例えば、欧州特許第0 502 314号)によって得ることができる。
154.4gのテルミサルタンを、適切な反応器内の308.8mlのトルエンに入れ、その懸濁液を27.8gの44.68%の水酸化ナトリウム溶液と84.9mlのエタノールと合わせ、78℃に約30分間加熱する。次に、その混合液をろ過する。所望により、多量の固体がフィルタに残った場合には、61.8mlのトルエンと15.3mlのエタノールの混合液でフィルタを洗浄することができる。
463.2mlのトルエンを他の反応器に入れ、還流する。上記方法に従って得られたろ液を沸騰温度で徐々に加え、同時に共沸蒸留する。全て添加した後、フィルタを洗浄することによって得られたあらゆる溶液も添加し、更にまた、共沸蒸留が行われる。103℃の温度が得られるまで混合物を蒸留する。次に、懸濁液を周囲温度に冷却する。結晶を吸引ろ過し、154.4mlのトルエンで洗浄し、循環空気乾燥器で60℃で乾燥する。
収率: 154.6g(96%)
無色の結晶
C33H29N4O2Na×0.5H2O 計算値: C 72.51 H 5.72 N 10.25
実測値: C 72.57 H 5.69 N 10.21
【0034】
実施例6: テルミサルタン塩酸塩から結晶性テルミサルタンナトリウム塩の調製
テルミサルタン塩酸塩の調製:
411gのtert-ブチル-4'-[[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)ベンズイミダゾール-1-イル]メチル]ビフェニル-2-カルボキシレートを822mlの氷酢酸に懸濁し、213gの濃塩酸水溶液(37%)と合わせる。その混合液を還流する。約640mlの溶媒を留去する。残っている残留物を約620mlの水と50-60℃で徐々に合わせる。この混合液を、20gの活性炭(例えば、Norit SX 2 Ultra)と合わせる。得られた混合液を、一定温度で約10分間撹拌する。ろ過後、残留物を25mlの氷酢酸と約620mlの水で3回洗浄する。得られたろ液を、更にまた約50-60℃に加熱し、約2リットルの水と合わせる。約23℃で約12時間撹拌した後、形成された結晶を吸引ろ過し、約500mlの水で2回、約900mlのアセトンで1回洗浄し、次に、約60℃で乾燥する。
収率: 367g(92.5%)
無色の結晶
融点: 278℃
テルミサルタン塩酸塩から結晶性テルミサルタンナトリウム塩の調製: 55.1gのテルミサルタン塩酸塩を110.2mlのトルエン、5.5mlの水及び55.1mlのイソプロパノールに溶解する。この混合液を36.9gのナトリウムメトキシド(メタノール中30%)と2.75gの活性炭(例えば、Norit SX 2 Ultra)と合わせる。次に、その混合液を約75℃に加熱する。約50mlの溶媒混合液を、一定温度で約30分以内に留去する。得られた懸濁液をろ過する。残留物を、約20mlのトルエンで洗浄する。ろ液を約5mlの水と約150mlのトルエンと合わせる。得られた混合液を還流する。約150mlの溶媒混合液を、共沸的に留去する(102℃まで)。混合液を100℃で1時間結晶化する。結晶を吸引ろ過し、約50mlのトルエンで洗浄し、約60℃で乾燥する。
収率: 53.6g(99%)
無色の結晶
C33H29N4O2Na・0.5H2O 計算値: C 72.51 H 5.72 N 10.25
実測値: C 72.44 H 5.68 N 10.20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々又は哺乳動物の治療用医薬組成物を調製するためのアンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその塩の1種とHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンの使用。
【請求項2】
高脂血症又はアテローム性動脈硬化症に伴う高血圧症の予防又は治療を必要としている患者を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項3】
喘息、気管支炎又は間質性肺疾患の治療を必要としている患者を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項4】
2型糖尿病が診断されたか又は糖尿病前期が疑われる患者を治療するための、糖尿病や糖尿病前期を予防するための、又は正常血圧患者において代謝性症候群やインスリン抵抗性を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項5】
高血圧性インスリン抵抗性を治療又は予防するための請求項1記載の使用。
【請求項6】
治療される患者においては空腹時血糖値が血漿1dlにつきグルコース110mgを超えることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項7】
治療される患者においてはトリグリセリドの血中濃度が150mg/dlを超えることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項8】
治療される患者においてはHDLの血中濃度が女性において血漿1dlにつき40mg未満、男性において血漿1dlにつき50mg未満であることを特徴とする、請求項7記載の使用。
【請求項9】
治療される患者においては収縮期血圧が130mm Hgの値を超え、拡張期血圧が80mm Hgの値を超えることを特徴とする、請求項4記載の使用。
【請求項10】
シンバスタチンが約0.009 mg/kg体重〜6.43 mg/kg体重の1日量で経口経路によって投与され、テルミサルタン又はその多形体又は塩が約0.143 mg/kg〜7.143 mg/kg体重の1日量で経口経路によって投与されることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項11】
シンバスタチンが約0.286mg/kg体重の1日量で非経口経路によって投与され、テルミサルタン又はその多形体又は塩が約0.286mg/kg体重の1日量で非経口経路によって投与されることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項12】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々を治療する方法であって、アンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその塩の1種とHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンを含有する医薬組成物が投与されることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々又は哺乳動物を治療するための医薬組成物であって、テルミサルタンをシンバスタチンと任意により1種以上の賦形剤と組合わせて含む、前記組成物。
【請求項14】
医薬組成物の製剤が20-200mgのテルミサルタンと2.5-40mgのシンバスタチンを含有することを特徴とする、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
シンバスタチンとテルミサルタン又はその多形体又は塩との比が1:2〜1:16(質量に基づく)であることを特徴とする、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
2つの活性物質が、更に利尿剤と組合わされることを特徴とする、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物の製剤が、10-50mgのHCTZ又はクロルタリドンを含有することを特徴とする、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
活性物質で同時、別個又は、連続治療するための請求項13記載の医薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々又は哺乳動物の治療用医薬組成物を調製するためのアンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその塩の1種とHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンの使用。
【請求項2】
高脂血症又はアテローム性動脈硬化症に伴う高血圧症の予防又は治療を必要としている患者を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項3】
喘息、気管支炎又は間質性肺疾患の治療を必要としている患者を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項4】
2型糖尿病が診断されたか又は糖尿病前期が疑われる患者を治療するための、糖尿病や糖尿病前期を予防するための、又は正常血圧患者において代謝性症候群やインスリン抵抗性を治療するための請求項1記載の使用。
【請求項5】
高血圧性インスリン抵抗性を治療又は予防するための請求項1記載の使用。
【請求項6】
治療される患者においては空腹時血糖値が血漿1dlにつきグルコース110mgを超えることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項7】
治療される患者においてはトリグリセリドの血中濃度が150mg/dlを超えることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項8】
治療される患者においてはHDLの血中濃度が女性において血漿1dlにつき40mg未満、男性において血漿1dlにつき50mg未満であることを特徴とする、請求項7記載の使用。
【請求項9】
治療される患者においては収縮期血圧が130mm Hgの値を超え、拡張期血圧が80mm Hgの値を超えることを特徴とする、請求項4記載の使用。
【請求項10】
シンバスタチンが約0.009 mg/kg体重〜6.43 mg/kg体重の1日量で経口経路によって投与され、テルミサルタン又はその多形体又は塩が約0.143 mg/kg〜7.143 mg/kg体重の1日量で経口経路によって投与されることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項11】
シンバスタチンが約0.286mg/kg体重の1日量で非経口経路によって投与され、テルミサルタン又はその多形体又は塩が約0.286mg/kg体重の1日量で非経口経路によって投与されることを特徴とする、請求項8記載の使用。
【請求項12】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療のための医薬組成物であって、アンギオテンシンII受容体拮抗剤テルミサルタン又はその塩の1種とHMG-CoA還元酵素阻害剤シンバスタチンを含有することを特徴とする、前記組成物
【請求項13】
心臓血管疾患、心肺疾患又は腎疾患の予防又は治療を必要としている人々又は哺乳動物を治療するための医薬組成物であって、テルミサルタン又はその塩の1種をシンバスタチンと任意により1種以上の賦形剤と組合わせて含む、前記組成物。
【請求項14】
医薬組成物の製剤が20-200mgのテルミサルタンと2.5-40mgのシンバスタチンを含有することを特徴とする、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
シンバスタチンとテルミサルタン又はその多形体又は塩との比が1:2〜1:16(質量に基づく)であることを特徴とする、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
2つの活性物質が、更に利尿剤と組合わされることを特徴とする、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物の製剤が、10-50mgのHCTZ又はクロルタリドンを含有することを特徴とする、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
活性物質で同時、別個又は、連続治療するための請求項13記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2006−515877(P2006−515877A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500558(P2006−500558)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000175
【国際公開番号】WO2004/062729
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】