説明

急速充電装置

【課題】充電待ち時間の短縮化を図り、通常の事業所等で利用可能な商用電源を用いることができる急速充電装置を提供する。
【解決手段】商用電源11から供給された電力を蓄えるバッファ用高速充電電池17と、バッファ用高速充電電池17に蓄えられた電力を供給して、車載二次電池37〜41を充電する充電電流制御部18〜22とが設けられた急速充電装置10であって、充電のために車載二次電池37〜41に供給される電力の電流値及び電圧値の変化を表す充電パターンを記憶した統合充放電制御部43を有し、統合充放電制御部43は、充電パターンを参照して充電電流制御部18〜22から充電中の車載二次電池37〜41に供給されている電力の電流値を基に、充電中の車載二次電池37〜41の充電率が予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、充電電流制御部18〜22に車載二次電池37〜41の充電を終了させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧電力用の交流電源設備を利用して複数台の電気自動車の二次電池に同時に充電する急速充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のため2酸化炭素の排出量の削減が求められ、その一環として自動車産業においては電気自動車の開発が進められている。電気自動車には、充電して繰り返し使用可能な二次電池が搭載されており、電気自動車の普及のためには、二次電池の性能向上、価格低下等に加え、充電インフラ整備が重要である。
そして、電気自動車向けの充電インフラの普及と標準化のために日本国内においてCHAdeMO(「CHAdeMO」は商標名)協議会が設立されている。CHAdeMO協議会で推奨される急速充電方式(以下、「CHAdeMOプロトコル」という)は、全ての電気自動車にとって最適な充電方法を実現したもので、合理的な充電インフラ整備の普及に貢献するためのものである。既に国内の複数の自動車会社及び充電器メーカーがこの急速充電方式を採用し、国際標準化機関への提案も行われている。
【0003】
CHAdeMOプロトコルの仕様は、CHAdeMO協議会のホームページ等で公開されている資料から、最大出力50kW、最大出力電圧500V、最大出力電流100Aであり、5分の充電で40kmの走行、10分の充電で60kmの走行ができるようにすることが目指されていることが考えられる。また、急速充電方式を採用した急速充電装置では30分間で約80%の充電が可能になるとされている。
【0004】
しかしながら、CHAdeMOプロトコルの要件を満たしたとしても、数分間で完了するガソリン給油に比較して充電時間が長い点が課題である。
ここで、充電に30分の時間を要する電気自動車が同時に2台来た場合について考えると、充電のための駐車スペースが1ヶ所しかなければ、一方の電気自動車は、他方の電気自動車の充電が終了した後に充電が開始されるので、充電が完了するまでには合計1時間も待つことになる。乗車して1時間も待つとなるとかなりの焦燥感が募る事態になることが想像される。
【0005】
そこで、充電の際の待ち時間を短縮するための技術が提案されている。
特許文献1においては、複数台の二次電池(電気自動車)に対して同時に電力を供給できる充電装置の具体例が開示されている。
直流電源部には、複数の直流安定化電源回路が備えられており、個々の直流安定化電源回路からそれぞれ要求される供給電力に応じた出力を別々の回路で供給できるため、二次電池からの情報と、設定入力された情報に基づいて、複数の直流安定化電源回路の中から1個又は複数の直流安定化電源回路を選択して、複数台の二次電池に対して個別の回線を構成し並行して充電を行えるようにしている。
【0006】
また、特許文献2においては、充電電流が定格容量の60倍(充電レート:60C)で急速充電することが可能な新電池の出現を受けて、この新電池をバッファとして用いる高速充電装置について記載されている。この高速充電装置では、家庭用の100V、1500Wの電源からバッファ用の新電池に対して0.125Cのレートで8時間の充電が行われ、この新電池から2Cのレートで電気自動車への充電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−199752号公報
【特許文献2】特開2009−77550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、複数台の二次電池に対して充電を行うための交流電源として、通常の事業所で利用可能な3相200V100A程度の電源容量では、対応不可能であり、新たに電源用の幹線を施工することが必要で多大な設備投資を要する。従って、充電装置の設置スペースを低減する効果を除くと、基本的には複数台の充電装置を設置するのと変わらないことになる。
【0009】
また、特許文献2では、バッファ用の新電池の状態によって電気自動車への充電をどのように制御するかについての記載がなく、バッファ用の新電池の状態に関わらず電気自動車への充電が行われる場合には、電気自動車への充電の途中でバッファ用の新電池が空状態になる等の問題が生じる。
また、電気自動車への充電によって、バッファ用の新電池が空状態になると、バッファ用の新電池の充電が完了するまでの間、電気自動車への充電が行えなくなるので充電待ちを解消するための対策にはならない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、充電待ち時間の短縮化を図り、通常の事業所等で利用可能な商用電源を用いることができる急速充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う第1の発明に係る急速充電装置は、商用電源(低電圧電力用の交流電源設備で、単相又は3相、100/200Vの交流電源)から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車に搭載された車載二次電池を充電するために蓄えるバッファ用高速充電電池と、前記電気自動車に接続可能で、前記バッファ用高速充電電池に蓄えられた電力を供給して、接続されている前記電気自動車に搭載された車載二次電池を充電する充電電流制御部とが設けられた急速充電装置であって、前記充電電流制御部は複数あって、前記各充電電流制御部に対して、前記電気自動車への充電を開始させるか否かの制御をし、しかも充電のために前記電気自動車に供給される電力の電流値及び電圧値の変化を表す充電パターンを、該車載二次電池の異なる容量ごとに記憶した統合充放電制御部を有し、前記統合充放電制御部は、前記充電パターンを参照して前記充電電流制御部から充電中の前記車載二次電池に供給されている電力の電流値を基に、充電中の該車載二次電池の充電率が70〜90%の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、前記充電電流制御部に前記車載二次電池への充電を終了させ、しかも、複数の前記充電電流制御部のいずれかに新たに前記電気自動車が接続されたときには、前記充電電流制御部を介して新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の容量を受けて、前記充電パターンを基に新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の充電率を0%から前記充電終了値にするのに必要な電力Pfを算出すると共に、他の前記各充電電流制御部が充電中の前記車載二次電池に供給している電力の電流値を基に、複数の前記充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでに前記バッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、1)前記バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から前記予測消費電力を差し引いた電力Puが、前記電力Pf以上の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせ、2)前記電力Puが前記電力Pf未満の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせない。
【0011】
第1の発明に係る急速充電装置において、前記充電電流制御部と前記電気自動車の間には、クロスバースイッチ接続回路が配置され、該クロスバースイッチ接続回路は、前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を行っていない前記充電電流制御部がある場合には、新たにやってきた前記電気自動車を、充電を行っていない前記充電電流制御部に接続し、全ての前記充電電流制御部が充電を行っている場合には、該充電電流制御部のいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した前記充電電流制御部に新たにやってきた前記電気自動車を接続するのが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る急速充電装置において、前記充電電流制御部は、前記商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を、前記バッファ用高速充電電池に蓄えることなく直接前記電気自動車の前記車載二次電池に供給して充電することができるのが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る急速充電装置は、商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車に搭載された車載二次電池を充電するために蓄えるバッファ用高速充電電池と、前記電気自動車に接続可能で、前記バッファ用高速充電電池に蓄えられた電力を供給して、接続されている前記電気自動車に搭載された車載二次電池を充電する充電電流制御部とが設けられた急速充電装置であって、前記充電電流制御部は複数あって、前記各充電電流制御部に対して、前記電気自動車への充電を開始させるか否かの制御をし、しかも該電気自動車の前記車載二次電池が充電される際の該車載二次電池の充電率の変化を表す充電率変化パターンと該車載二次電池の容量とを該車載二次電池の異なる容量ごとに記憶した統合充放電制御部を有し、前記統合充放電制御部は、前記充電電流制御部を介して、該充電電流制御部が充電中の前記電気自動車の前記車載二次電池の充電率を検知し、前記充電率変化パターンを参照して、充電中の該車載二次電池の充電率が70〜90%の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、前記充電電流制御部に前記車載二次電池の充電を終了させ、しかも、複数の前記充電電流制御部のいずれかに新たに前記電気自動車が接続されたときには、前記充電電流制御部を介して新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の容量及び現在の充電率を検出して、新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池を現在の充電率から前記充電終了値にするのに必要な電力Pf’を算出すると共に、他の前記各充電電流制御部が充電中の前記車載二次電池の容量及び現在の充電率を基に、複数の前記充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでに前記バッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、1)前記バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から前記予測消費電力を差し引いた電力Pu’が、前記電力Pf’以上の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせ、2)前記電力Pu’が前記電力Pf’未満の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせない。
【0014】
第2の発明に係る急速充電装置において、前記充電電流制御部と前記電気自動車の間には、クロスバースイッチ接続回路が配置され、該クロスバースイッチ接続回路は、前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を行っていない前記充電電流制御部がある場合には、新たにやってきた前記電気自動車を、充電を行っていない前記充電電流制御部に接続し、全ての前記充電電流制御部が充電を行っている場合には、該充電電流制御部のいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した前記充電電流制御部に新たにやってきた前記電気自動車を接続するのが好ましい。
【0015】
第2の発明に係る急速充電装置において、前記充電電流制御部は、前記商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を、前記バッファ用高速充電電池に蓄えることなく直接前記電気自動車の前記車載二次電池に供給して充電することができるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
第1、第2の発明に係る急速充電装置は、バッファ用高速充電電池が、商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車の車載二次電池を充電するために蓄えるので、通常の事業所で利用可能な電源を基に車載二次電池の充電を行うことができる。
また、統合充放電制御部が、充電パターンを参照して充電電流制御部から充電中の電気自動車の車載二次電池に供給されている電力の電流値を基に、充電中の車載二次電池の充電率が70〜90%の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、充電電流制御部に車載二次電池の充電を終了させるので、車載二次電池への充電が非効率になる充電率100%付近で充電を行わず、充電を効率的に行うことができる。これは、電気自動車に搭載される車載二次電池が一般的に充電率100%付近で充電効率が落ちるためである。
【0017】
第1の発明に係る急速充電装置は、複数の充電電流制御部のいずれかに新たに電気自動車が接続されたときには、統合充放電制御部が、充電電流制御部を介して新たに接続された電気自動車の車載二次電池の容量を受けて、充電パターンを基にその新たに接続された電気自動車の車載二次電池の充電率を0%から充電終了値にするのに必要な電力Pfを算出すると共に、他の各充電電流制御部が充電中の車載二次電池に供給している電力の電流値を基に、複数の充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでにバッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、1)バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から予測消費電力を差し引いた電力Puが、電力Pf以上の場合には、新たに接続された電気自動車の車載二次電池への充電を充電電流制御部に行わせ、2)電力Puが電力Pf未満の場合には、新たに接続された電気自動車の車載二次電池への充電を充電電流制御部に行わせないので、車載二次電池への充電中にバッファ用高速充電電池に蓄えられている電力がなくなり充電中の車載二次電池の充電を途中で停止、又は終了するのを回避することができる。
【0018】
第2の発明に係る急速充電装置は、複数の充電電流制御部のいずれかに新たに電気自動車が接続されたときには、充電電流制御部を介して新たに接続された電気自動車の車載二次電池の容量及び現在の充電率を検出して、その新たに接続された電気自動車の車載二次電池を現在の充電率から充電終了値にするのに必要な電力Pf’を算出すると共に、他の各充電電流制御部が充電中の車載二次電池の容量及び現在の充電率を基に、複数の充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでにバッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、1)バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から予測消費電力を差し引いた電力Pu’が、電力Pf’以上の場合には、新たに接続された電気自動車の車載二次電池への充電を充電電流制御部に行わせ、2)電力Pu’が電力Pf’未満の場合には、新たに接続された電気自動車の車載二次電池への充電を充電電流制御部に行わせないので、車載二次電池への充電中にバッファ用高速充電電池に蓄えられている電力がなくなり充電中の車載二次電池の充電を途中で停止、又は終了するのを回避することができる。
【0019】
第1、第2の発明に係る急速充電装置において、充電電流制御部と電気自動車の間には、クロスバースイッチ接続回路が配置され、クロスバースイッチ接続回路は、電気自動車の車載二次電池への充電を行っていない充電電流制御部がある場合には、新たにやってきた電気自動車を、充電を行っていない充電電流制御部に接続し、全ての充電電流制御部が充電を行っている場合には、充電電流制御部のいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した充電電流制御部に新たにやってきた電気自動車を接続する場合、既に充電を行っている車載二次電池の充電を確実に終了した上で、新たにやってきた電気自動車の車載二次電池への充電を開始することができる。
【0020】
第1、第2の発明に係る急速充電装置において、充電電流制御部が、商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を、バッファ用高速充電電池に蓄えることなく直接電気自動車の車載二次電池に供給して充電することができる場合、バッファ用高速充電電池に車載二次電池を充電するのに十分な電力が蓄えられていない状態でも、車載二次電池の充電を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る急速充電装置の構成図である。
【図2】(A)は、充電のために電気自動車に供給される電力の電流値及び電気自動車の充電率を示す説明図であり、(B)は電気自動車に供給される電力の電流値と電気自動車の充電率の関係を示す説明図である。
【図3】ワイブル分布により電気自動車の充電率をシミュレーションした説明図である。
【図4】ワイブル分布から発生させた乱数を用いて電気自動車の充電率をシミュレーションした説明図である。
【図5】バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力量の変化を示す説明図である。
【図6】バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力量の変化を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る急速充電装置の変形例の構成図である。
【図8】同急速充電装置の他の変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る急速充電装置10は、商用電源11から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車12〜16を充電するために蓄えるバッファ用高速充電電池17と、電気自動車12〜16にそれぞれ接続可能で、バッファ用高速充電電池17に蓄えられた電力を供給して、接続されている電気自動車12〜16の車載二次電池37〜41を充電する充電電流制御部18〜22とが設けられた急速充電装置10である。
【0023】
図1に示すように、商用電源11は、100/200Vの一般的な事業所で利用可能な電源容量である。商用電源11は、本実施の形態では3相200V100Aであり、商用電源11には、商用電源11から供給される交流電力を直流電力に変換する充電制御部24が電源線25を介して接続されている。なお、3相200Vは、CHAdeMO協議会でも推奨されている電源容量である。
充電制御部24には、最大で120Ahの電力を充電するバッファ用高速充電電池17が、電源線25a及び通信線26を介して接続されている。通信線26には、例えばLAN、RS232、RS485、RS422、GPIBなどが考えられる。
充電制御部24は、商用電源11から供給された交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッファ用高速充電電池17に供給してバッファ用高速充電電池17を充電する。バッファ用高速充電電池17は、例えば鉛二次電池、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池とマイクロプロセッサ等とを有し、充電制御部24はバッファ用高速充電電池17とのデータ通信によって、充電に最適な電圧値及び電流値によって電力を供給し、バッファ用高速充電電池17を充電する。
【0024】
バッファ用高速充電電池17には、複数(本実施の形態では5つ)の充電電流制御部18〜22が電源線25b及び通信線26aによって接続されている。充電電流制御部18(充電電流制御部19〜22についでも同じ)には、電気自動車12(電気自動車13〜16についても同じ)が有する車側コネクタ27に連結可能なコネクタ28が接続されている。
【0025】
電気自動車12〜16には、電気自動車12〜16の電気的な制御を行うECU(Engine Control Unit)32〜36と、リチウムイオン二次電池からなる容量50Ahの車載二次電池37〜41がそれぞれ搭載されている。
電気自動車12(電気自動車13〜16についても同じ)の車側コネクタ27がコネクタ28に連結されることによって、ECU32はCAN(Controller Area Network)42を介して充電電流制御部18との通信が可能になり、車載二次電池37は電源線25cを介して充電電流制御部18から供給される直流電力を受け入れ可能な状態になる。充電電流制御部18は、車載二次電池37に対して、バッファ用高速充電電池17に蓄えられた電力を供給することに加え、商用電源11から供給され、充電制御部24で交流から直流に変換された電力を直接供給することができる。なお、ECU32と車載二次電池37は信号接続されている。
【0026】
充電電流制御部18〜22には、通信線26aを介して統合充放電制御部43が接続され、統合充放電制御部43は、通信線26bを介して充電制御部24にも接続されている。統合充放電制御部43は、通信線26、充電制御部24及び通信線26bを介してバッファ用高速充電電池17に蓄えられている電力量を検知でき、その電力量等を参照して充電電流制御部18〜22に、電気自動車に搭載されている車載二次電池への充電(以下、「電気自動車への充電」ともいう)を開始させるか否かの制御を行う。この統合充放電制御部43による充電電流制御部18〜22の制御を行う目的の1つは、電気自動車に充電を行っている最中に、バッファ用高速充電電池17に蓄えられている電力がなくなるのを回避することである。
【0027】
統合充放電制御部43は、メモリ44を搭載しており、このメモリ44に車載二次電池の異なる容量ごとに相異する充電パターンを記憶している。充電パターンは、車載二次電池を充電する際の電流値と電圧値の変化を表したものであり、入力デバイス(例えばキーボード)からの操作によりメモリ44に予め設定することができる。
車載二次電池37(車載二次電池38〜41についても同じ)の充電は、図2(A)に示すように、車載二次電池として用いられる一般的なリチウムイオン二次電池と同様に、充電率が低い初期段階では定電流充電がなされ、車載二次電池37の電圧が一定値(例えば4.1V)になると定電圧充電に移行する。図2(A)では、100Aで維持されていた電流値が100A以下になる時点で定電流充電から定電圧充電に移行されている。
【0028】
車載二次電池37は、一般的なリチウムイオン二次電池と同様に、電流値が、初期段階の定電流充電で最大で、定電圧充電に移行した後に指数的に低下する。従って、充電率(SOC)が0%の状態の車載二次電池37を充電する場合、電流値は、充電開始後15分間で最大となる。車載二次電池37の充電率は、図2(B)に示すように、定電流充電のときに0〜50%である。電流値は、定電圧充電となる充電率が50〜100%の間で充電率の上昇に対して一定の割合で減少する。
なお、充電率を示すSOCは、State of Chargeを短縮したものであり、本実施の形態では、充電電流制御部18〜22が車載二次電池37〜41に供給可能な最大電流値は100Aである。
【0029】
図2(A)において充電中の時間経過に伴う充電率の上昇変化に着目すると、充電率は0%から約80%になるまで時間の経過と共に急激に上昇し、80%付近から上昇率が徐々に緩やかになっている。そのため、車載二次電池37(車載二次電池38〜41についても同じ)の充電においては、充電率が0%から80%になるまでに約30分かかるのに対し、80%から100%になるまでは約70分の時間を要している。
従って、充電率が80%を超えて充電時間に対する充電率の上昇率が低下する前に車載二次電池37への充電を終了すれば、充電の効率化が図れ、充電に要する時間を短縮できることが分かる。
【0030】
統合充放電制御部43は、充電の効率化のため、充電率が70〜90%(本実施の形態では80%)の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、充電電流制御部18〜22に信号を送り車載二次電池37〜41の充電を強制的に終了させるようにしている。
統合充放電制御部43は、充電電流制御部18(充電電流制御部19〜22についても同じ)に電気自動車12が接続されたとき、充電電流制御部18を介して電気自動車12の車載二次電池37の容量を受けて、記憶している充電パターンの中からその検知した車載二次電池37の容量に対応する充電パターンを特定する。
【0031】
そして、充電電流制御部18が車載二次電池37に充電を開始した後、統合充放電制御部43は、充電電流制御部18が車載二次電池37に供給している電力の電流値を充電電流制御部18を介して検出する。
電気自動車12の車載二次電池37の充電率が80%のとき、図2(B)に示すように、車載二次電池37に供給される電力の電流値は特定の値Q(本実施の形態ではQは約38A)である。充電電流制御部18は、電流値がQになったのを検知したとき、充電電流制御部18に充電を終了させることにより、車載二次電池37の充電を充電率が約80%になった状態で終了することができる。これにより、例えば充電率が0%の車載二次電池37を充電するにあたって、充電率を100%にする場合には約100分かかった充電時間が約30分になり、充電自体にかかる時間を短縮することができる。
【0032】
次に、充電にやってきた電気自動車に、充電開始までに待ち時間が生じるか否かを調べるために行ったシミュレーション結果について説明する。
本シミュレーションは、車載二次電池の充電率が80%に達したときに充電を終了する場合に、バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力(Ah)がどのように推移するかを示すものである。本シミュレーションでは、交流電源(商用電源)から供給される電力は、直接、電気自動車の充電に用いずに、全てをバッファ用高速充電電池の充電のために使用することとしている。そして、車載二次電池及びバッファ用高速充電電池には、それぞれ車載二次電池37及びバッファ用高速充電電池17をそれぞれ想定し、交流電源からバッファ用高速充電電池への充電レートを2Cとしてシミュレーションを行った。
また、本シミュレーションでは、以下の式1にα=1.5、β=20を代入して得られるワイブル分布(図3参照)を基に発生させた乱数を、充電に来る電気自動車に搭載された車載二次電池の充電率としている。
f(x、α、β)=(α/βα)(xα―1)exp{−(x/β)α} (式1)
【0033】
式1において、fは確率密度を示し、xは充電率の値を示す。
ここで、式1のα及びβをα=1.5、β=20としたのは、図3に示すように、充電に来る電気自動車は充電率が10%程度の状態が最も多く、充電率が60%を上回っていれば充電に来る電気自動車が極めて少なくなるという推定を基にしたためである。
図4に示された充電に来る電気自動車の充電率を表す模擬データは、図3に示すワイブル分布を基に乱数を発生させたものであり、この模擬データを用いて12時間の営業時間中に24台の電気自動車が充電に来る場合と、12時間で35台の電気自動車が充電に来る場合についてシミュレーションを行った結果を図5、図6にそれぞれ示す。
【0034】
12時間で24台の電気自動車が来る場合のシミュレーション結果は、図5に示すように、バッファ用高速充電電池の最小の電力残量は39Ahを少しきる程度であり、バッファ用高速充電電池に電気自動車を充電するための電力がなくなる状態にはならなかった。また、12時間で35台の電気自動車が来る場合についても、図6に示すように、バッファ用高速充電電池の最小の電力残量は16Ahを僅かにきる程度であり、バッファ用高速充電電池に電力がなくなる状態にはならなかった。
従って、このシミュレーションでは、バッファ用高速充電電池の電力残量が無くなることはなく、充電にきた電気自動車が充電開始まで待たされることはないという結果になった。
【0035】
しかし、仮に運悪く、車載二次電池の充電率が低い電気自動車が集中した場合には、バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力が電気自動車への充電中になくなるという事態が生じ得る。そして、充電中にバッファ用高速充電電池の電力がなくなった場合、バッファ用高速充電電池からその電気自動車への充電を再開するためには、バッファ用高速充電電池に電力が蓄えられるのを待つ必要がある。
【0036】
そこで急速充電装置10では、バッファ用高速充電電池17が車載二次電池への充電中に充電率0%になるのを回避するための制御を行っている。
統合充放電制御部43は、充電電流制御部18〜22のいずれかに新たに電気自動車が接続されたとき、電気自動車が接続された充電電流制御部18〜22を介して、その新たに接続された電気自動車の車載二次電池の容量を検知する。統合充放電制御部43は、この検知した車載二次電池の容量に対応する一の充電パターンを記憶している複数の充電パターンから特定し、その特定した充電パターンを基に、その新たに接続された電気自動車の車載二次電池を充電率0%から80%(充電終了値)にするのに必要な電力Pfを算出する。
【0037】
以下の説明では、便宜上、電気自動車12〜15が充電電流制御部18〜21にそれぞれ接続され、電気自動車16が充電電流制御部22に新たに接続される場合について記載する(図1参照)。そして、車載二次電池37には商用電源11で直流に変換された電力が直接、充電電流制御部18を介して供給され、車載二次電池38〜40にはそれぞれ充電電流制御部19〜21を介してバッファ用高速充電電池17に蓄えられている電力が供給されていることとする。
【0038】
統合充放電制御部43は、新たに電気自動車16が接続された充電電流制御部22以外の他の充電電流制御部18〜21が、バッファ用高速充電電池17から充電中の車載二次電池38〜40に供給している電力の電流値を基に、充電電流制御部18〜21が現在行っている充電を全て終了するまでにバッファ用高速充電電池17から出力される予測消費電力を算出する。
【0039】
次に、統合充放電制御部43は、バッファ用高速充電電池17に蓄えられている現在の電力から予測消費電力を差し引いた電力Puを算出し、電力Pfと電力Puの値の大小関係により、
1)電力Puが電力Pf以上(Pu≧Pf)の場合、新たに接続された電気自動車16の車載二次電池41への充電を充電電流制御部22に行わせ、
2)電力Puが電力Pf未満(Pu<Pf)の場合には、新たに接続された電気自動車16の車載二次電池41への充電を充電電流制御部22に行わせないという制御をする。
【0040】
ここで、図2(A)に示すように、車載二次電池38(車載二次電池39、40についても同じ)の充電率が低く定電流充電が行われているとき、充電電流制御部19から車載二次電池38に供給される電力の電流値を基にして、その車載二次電池38の充電を終了するまでに必要な電力を特定することはできない。従って、統合充放電制御部43は、充電電流制御部19〜21が定電流充電を行っているのを検知したとき、車載二次電池38〜40の充電率が0%である場合に充電に必要な電力値の合計を、予測消費電力の算出のために用いる。
一方、統合充放電制御部43は、定電圧充電が行われているのを検知したとき、車載二次電池38〜40に供給している電流値から、車載二次電池38〜40の充電を終了するまでに必要な電力をそれぞれ算出して、この算出した各電力を合計して予想消費電力を導出する。
【0041】
急速充電装置10では、統合充放電制御部43が車載二次電池の容量ごとの充電パターンを記憶していたが、車載二次電池を充電する際の車載二次電池の充電率の変化を表す充電率変化パターンを記憶した統合充放電制御部43aを設けることもできる。
統合充放電制御部43aを有する、図7に示す急速充電装置10aは、充電中の車載二次電池に供給している電力の電流値を基準にする代わりに、充電中の車載二次電池の充電率を基準に車載二次電池への充電終了のタイミングを検知する。また、急速充電装置10aは、新たに接続された電気自動車に搭載されている車載二次電池の容量と充電率を電気自動車から受けて、車載二次電池を現在の充電率から80%の充電率にするのに必要な電力を算出することができる。
以下、急速充電装置10aについて説明する。なお、急速充電装置10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0042】
統合充放電制御部43aに搭載されているメモリ44aには、車載二次電池の異なる容量ごとに相異する充電率変化パターンが記憶されている。充電率変化パターンは、車載二次電池を充電する際にその充電中の車載二次電池の充電率の変化を表したものであり、例えば入力デバイス(例えばキーボード)からの操作によりメモリ44aに予め設定することができる。
【0043】
急速充電装置10aに設けられた充電電流制御部18a〜22aは、それぞれ充電電流制御部18a〜22aに接続される電気自動車12〜16からCAN42を介して電気自動車12〜16にそれぞれ搭載されている車載二次電池37〜41の充電率を検知することができる。
統合充放電制御部43aは、充電電流制御部18a〜22aを介してそれぞれ電気自動車12〜16の充電率を検出し、電気自動車12〜16の充電率が80%(充電終了値)になったのを検知したとき、電気自動車12〜16への充電を終了する。
【0044】
また、車載二次電池37(車載二次電池38〜41についても同じ)の充電率は、図2(A)に示すように、電流値と異なり充電中は100%になるまで増加を続け、一定の値を維持することはないので、当然ながら一の充電率の値から充電率を80%にするまでに必要な電力を算出可能である。
そして、統合充放電制御部43aは、電気自動車12(電気自動車13〜16についても同じ)の最大蓄積電力を0.8倍することによって、充電率0%の電気自動車12を充電率80%にするのに必要な電力量を算出することが可能である。
【0045】
統合充放電制御部43aは、充電電流制御部18a〜22aのいずれかに新たに電気自動車が接続されたときには、その新たに接続された電気自動車の車載二次電池の容量及び現在の充電率を検出して、記憶している充電率変化パターン及びその検出した車載二次電池の容量を基にその新たに接続された電気自動車の車載二次電池の充電率を現在の充電率から80%(充電終了値)にするのに必要な電力Pf’を算出する。
以下に、電気自動車12〜15が充電電流制御部18a〜21aにそれぞれ接続され、電気自動車16が充電電流制御部22aに新たに接続される場合における統合充放電制御部43aが行う充電電流制御部22aの制御を説明する。ここで、電気自動車12には商用電源11で直流に変換された電力が直接、充電電流制御部18aを介して供給され、電気自動車13〜15にはそれぞれ充電電流制御部19a〜21aを介してバッファ用高速充電電池17に蓄えられている電力が供給されていることとする。
【0046】
統合充放電制御部43aは、新たに電気自動車16が接続された充電電流制御部22a以外でバッファ用高速充電電池17の電力を使用している他の充電電流制御部19a〜21aが現在行っている充電を全て終了するまでにバッファ用高速充電電池17から出力される予測消費電力を算出する。予測消費電力は、充電電流制御部19a〜21aによって充電されている車載二次電池38〜40のそれぞれについて、現在の充電率と容量を基にして充電率を80%にするのに必要な電力を算出し、これらを合算することで求めることができる。
【0047】
次に、統合充放電制御部43aは、バッファ用高速充電電池17に蓄えられている電力から予測消費電力を差し引いた電力Pu’を算出し、電力Pf’と電力Pu’の値の大小関係により、
1)電力Pu’が電力Pf’以上(Pu’≧Pf’)の場合、新たに接続された電気自動車16の車載二次電池41への充電を充電電流制御部22aに行わせ、
2)電力Pu’が電力Pf’未満(Pu’<Pf’)の場合には、新たに接続された電気自動車16の車載二次電池41への充電を充電電流制御部22aに行わせないという制御をする。
【0048】
また、急速充電装置10(急速充電装置10aについても同じ)では、充電電流制御部18〜22と同数のコネクタ28が設けられていたが、充電電流制御部の数を減少させるために充電電流制御部とコネクタの間、即ち充電電流制御部と電気自動車の間に、クロスバースイッチ接続回路46を配置することもできる。クロスバースイッチ接続回路46が設けられた急速充電装置10bについて以下に説明する。なお、急速充電装置10、10aと同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0049】
急速充電装置10bは、図8に示すようにクロスバースイッチ接続回路46の回路接続を制御する統合充放電制御部43bと複数の(本実施の形態では3つ)の充電電流制御部18b〜20bを備えている。
クロスバースイッチ接続回路46には、充電電流制御部18b〜20bの数より多い複数(本実施の形態では5つ)のコネクタ28が電源線25c及びCAN42を介して連結されており、統合充放電制御部43bは、必要に応じて充電電流制御部18b〜20bとコネクタ28を接続する。なお、ここでいう充電電流制御部18b〜20bとコネクタ28の接続とはCAN42と電源線25cの両方を接続することを意味する。
【0050】
クロスバースイッチ接続回路46は、統合充放電制御部43bから通信線26aを介して信号が送られると、車載二次電池への充電を行っていない充電電流制御部18b〜20bがある場合には、充電のために新たに急速充電装置10bの設置場所にやってきた電気自動車を、充電を行っていない充電電流制御部18b〜20bに接続(CAN42と電源線25の両方を接続)する。
一方、全ての充電電流制御部18b〜20bが車載二次電池に対して充電を行っている場合には、充電電流制御部18b〜20bのいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した充電電流制御部18b〜20bに新たにやってきた電気自動車を接続する。
【0051】
統合充放電制御部43bは、充電電流制御部18b〜20bがそれぞれ車載二次電池37〜39に充電中で、一のコネクタ28に連結された電気自動車15が充電待ち状態のときに、更に電気自動車16が充電のため他のコネクタ28に連結される場合には、電気自動車15、16のコネクタ28への連結順を記憶し、コネクタ28に連結された順番で電気自動車15の車載二次電池40と電気自動車16の車載二次電池41への充電が開始されるようにクロスバースイッチ接続回路46を作動する。
例えば、充電電流制御部18bが充電を終了した場合、統合充放電制御部43bは、クロスバースイッチ接続回路46を作動して、充電電流制御部18bを電気自動車15が連結されているコネクタ28に接続する。そして、統合充放電制御部43bは、次に充電を終了した充電電流制御部18b〜20bを、電気自動車16が連結されているコネクタ28に接続する。
【0052】
クロスバースイッチ接続回路46は、クロスバースイッチ接続回路46の充電電流制御部18b〜20bと複数のコネクタ28の接続状態に関係なく、いずれのコネクタ28に電気自動車が連結されたても、統合充放電制御部43bがその連結を検知できるような配線を有している。
なお、統合充放電制御部43bの充電電流制御部18b〜20bに対する電気自動車の充電制御は、前述した統合充放電制御部43、43aのいずれかを用いることが可能であり、統合充放電制御部43bは、1)充電パターン、あるいは、2)充電率変化パターンと車載二次電池の容量のいずれかが記憶されたメモリ44bが搭載されている。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、バッファ用高速充電電池に充電可能な最大の電力量は、120Ahに限定されず、急速充電装置の設置場所に充電に来ることが予想される電気自動車の数等に応じて最適な容量にすることができる。
また、急速充電装置に設けられる充電電流制御部の数は5つに限定されず、急速充電装置の設置場所に充電に来る電気自動車の数等に応じて適切な数にすることができる。
【符号の説明】
【0054】
10、10a、10b:急速充電装置、11:商用電源、12〜16:電気自動車、17:バッファ用高速充電電池、18、18a、18b、19、19a、19b、20、20a、20b、21、21a、22、22a:充電電流制御部、24:充電制御部、25、25a、25b、25c:電源線、26、26a、26b:通信線、27:車側コネクタ、28:コネクタ、32〜36:ECU、37〜41:車載二次電池、42:CAN、43、43a、43b:統合充放電制御部、44、44a、44b:メモリ、46:クロスバースイッチ接続回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車を充電するために蓄えるバッファ用高速充電電池と、前記電気自動車に接続可能で、前記バッファ用高速充電電池に蓄えられた電力を供給して、接続されている前記電気自動車に搭載された車載二次電池を充電する充電電流制御部とが設けられた急速充電装置であって、
前記充電電流制御部は複数あって、前記各充電電流制御部に対して、前記電気自動車への充電を開始させるか否かの制御をし、しかも充電のために前記電気自動車に供給される電力の電流値及び電圧値の変化を表す充電パターンを、該車載二次電池の異なる容量ごとに記憶した統合充放電制御部を有し、
前記統合充放電制御部は、前記充電パターンを参照して前記充電電流制御部から充電中の前記車載二次電池に供給されている電力の電流値を基に、充電中の該車載二次電池の充電率が70〜90%の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、前記充電電流制御部に前記車載二次電池の充電を終了させ、しかも、複数の前記充電電流制御部のいずれかに新たに前記電気自動車が接続されたときには、前記充電電流制御部を介して新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の容量を受けて、前記充電パターンを基に新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の充電率を0%から前記充電終了値にするのに必要な電力Pfを算出すると共に、他の前記各充電電流制御部が充電中の前記車載二次電池に供給している電力の電流値を基に、複数の前記充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでに前記バッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、
1)前記バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から前記予測消費電力を差し引いた電力Puが、前記電力Pf以上の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせ、
2)前記電力Puが前記電力Pf未満の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせないことを特徴とする急速充電装置。
【請求項2】
請求項1記載の急速充電装置において、前記充電電流制御部と前記電気自動車の間には、クロスバースイッチ接続回路が配置され、該クロスバースイッチ接続回路は、前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を行っていない前記充電電流制御部がある場合には、新たにやってきた前記電気自動車を、充電を行っていない前記充電電流制御部に接続し、全ての前記充電電流制御部が充電を行っている場合には、該充電電流制御部のいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した前記充電電流制御部に新たにやってきた前記電気自動車を接続することを特徴とする急速充電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の急速充電装置において、前記充電電流制御部は、前記商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を、前記バッファ用高速充電電池に蓄えることなく直接前記電気自動車の前記車載二次電池に供給して充電することができることを特徴とする急速充電装置。
【請求項4】
商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を電気自動車を充電するために蓄えるバッファ用高速充電電池と、前記電気自動車に接続可能で、前記バッファ用高速充電電池に蓄えられた電力を供給して、接続されている前記電気自動車に搭載された車載二次電池を充電する充電電流制御部とが設けられた急速充電装置であって、
前記充電電流制御部は複数あって、前記各充電電流制御部に対して、前記電気自動車への充電を開始させるか否かの制御をし、しかも該電気自動車の前記車載二次電池が充電される際の該車載二次電池の充電率の変化を表す充電率変化パターンと該車載二次電池の容量とを該車載二次電池の異なる容量ごとに記憶した統合充放電制御部を有し、
前記統合充放電制御部は、前記充電電流制御部を介して、該充電電流制御部が充電中の前記電気自動車の前記車載二次電池の充電率を検知し、前記充電率変化パターンを参照して、充電中の該車載二次電池の充電率が70〜90%の範囲で予め設定された充電終了値に達したのを検知したとき、前記充電電流制御部に前記車載二次電池の充電を終了させ、しかも、複数の前記充電電流制御部のいずれかに新たに前記電気自動車が接続されたときには、前記充電電流制御部を介して新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池の容量及び現在の充電率を検出して、新たに接続された該電気自動車の前記車載二次電池を現在の充電率から前記充電終了値にするのに必要な電力Pf’を算出すると共に、他の前記各充電電流制御部が充電中の前記車載二次電池の容量及び現在の充電率を基に、複数の前記充電電流制御部が現在行っている充電を全て終了するまでに前記バッファ用高速充電電池から出力される予測消費電力を算出し、
1)前記バッファ用高速充電電池に蓄えられている電力から前記予測消費電力を差し引いた電力Pu’が、前記電力Pf’以上の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせ、
2)前記電力Pu’が前記電力Pf’未満の場合には、新たに接続された前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を前記充電電流制御部に行わせないことを特徴とする急速充電装置。
【請求項5】
請求項4記載の急速充電装置において、前記充電電流制御部と前記電気自動車の間には、クロスバースイッチ接続回路が配置され、該クロスバースイッチ接続回路は、前記電気自動車の前記車載二次電池への充電を行っていない前記充電電流制御部がある場合には、新たにやってきた前記電気自動車を、充電を行っていない前記充電電流制御部に接続し、全ての前記充電電流制御部が充電を行っている場合には、該充電電流制御部のいずれかが充電を終了するのを待って、その充電が終了した前記充電電流制御部に新たにやってきた前記電気自動車を接続することを特徴とする急速充電装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の急速充電装置において、前記充電電流制御部は、前記商用電源から供給され、交流から直流に変換された電力を、前記バッファ用高速充電電池に蓄えることなく直接前記電気自動車の前記車載二次電池に供給して充電することができることを特徴とする急速充電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39822(P2012−39822A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179674(P2010−179674)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000233697)株式会社日鉄エレックス (51)
【Fターム(参考)】