説明

恒温槽付水晶発振器の温度制御回路

【課題】 熱分散を防止して、回路における熱伝導の効率を向上させ、良好な温度特性を有する恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供する。
【解決手段】 PNP型のパワートランジスタTr1のコレクタ側とサーミスタTH側を金属の共通パターン8を用いてグランドレベルに接続し、パワートランジスタTr1のエミッタに接続するヒーター抵抗HRを流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタTr2を設けて、熱源をパワートランジスタTr1の一つにして熱分散を防止し、パワートランジスタTr1のコレクタの熱を共通接続するサーミスタTH(センサー7)に伝導する恒温槽付水晶発振器の温度制御回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高安定の発振周波数を得ることができる恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)に係り、特に、良好な温度特性を実現できる恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
恒温槽付水晶発振器は、水晶振動子の動作温度を一定に維持することから、周波数温度特性に依存した周波数変化を引き起こすことなく、高安定の発振周波数が得られるものである。
水晶振動子は、恒温槽に収納され、恒温槽は、温度制御回路によってその槽内の温度を一定に保持するよう制御される。
【0003】
[従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路:図8]
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路について図8を参照しながら説明する。図8は、従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の回路図である。
従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、図8に示すように、基本的に、サーミスタTHと、差動増幅器(OPAMP)IC10と、パワートランジスタTr1と、ヒーター抵抗HRとを有している。
【0004】
[接続関係]
ヒーター抵抗HRの一端には、電源電圧DCが印加され、ヒーター抵抗HRの他端はパワートランジスタTr1のコレクタに接続され、パワートランジスタTr1のエミッタはグランド(GND)に接地されている。
【0005】
また、サーミスタTHの一端にも、電源電圧DCが印加され、サーミスタTHの他端が抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端が接地されている。
また、抵抗R2の一端にも、電源電圧DCが印加され、抵抗R2の他端が抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端が接地されている。
また、差動増幅器IC10には、図示はしていないが、駆動用として電源電圧DCが印加され、GNDにも接続している。
【0006】
そして、サーミスタTHの他端と抵抗R1の一端との間の点が、抵抗R4を介して差動増幅器IC10の一方の端子(−端子)に接続され、抵抗R2の他端と抵抗R3の一端との間の点が、差動増幅器IC10の他方の端子(+端子)に接続されている。
更に、差動増幅器IC10の出力端子と−端子とを、抵抗R5を介して接続している。
そして、差動増幅器IC10の出力端子は、パワートランジスタTr1のベースに接続されている。
【0007】
[各部]
サーミスタTHは、温度によって抵抗値が変化する感温素子であり、水晶振動子の動作温度を検出する。
差動増幅器IC10は、一方の入力端子(−端子)に、サーミスタTHと抵抗R1との間の電圧が抵抗R4を介して入力されると共に差動増幅器IC10の出力が抵抗R5を介して帰還して入力され、他方の入力端子(+端子)に、抵抗R2と抵抗R3との間の電圧が入力されて、2入力端子の電圧の差分を増幅し、出力する。
【0008】
パワートランジスタTr1は、NPN型のトランジスタで、ベースに差動増幅器IC10の出力が入力され、ベース電流に応じてコレクタとエミッタとの間に電流を流すことで、ヒーター抵抗HRにも電流を流すようになっている。
ヒーター抵抗HRは、流れる電流に応じて発熱する。
ここで、パワートランジスタTr1とヒーター抵抗HRが熱源となっている。
【0009】
OCXOにおいて、熱源、サーミスタTHのセンサー、水晶振動子を一体化させることができれば温度特性の性能は高くなるが、実際には、上記3つの部分は電気的に繋がっていないために物理的に接続できていないものである。
そのため、3つの部分を極力近くに配置して、樹脂等の絶縁物を介して設置していた。
但し、その絶縁物は、熱伝導率が一般に低く、シリコン樹脂を例に挙げると、性能の良いものでも約2W/m・k程度である。
【0010】
また、熱源において、パワートランジスタTr1のコレクタ端子部分が発熱するが、常に電位が生じている。ヒーター抵抗HRは、母材がセラミックで、その上面に発熱する抵抗膜が形成されており、その部分が発熱する。
しかしながら、パワートランジスタTr1とヒーター抵抗HRの熱源は、周囲温度の変化によって発熱量に差があることが知られている。
【0011】
[電流に対する発熱量:図9]
温度制御回路において流れる電流に対する発熱量について図9を参照しながら説明する。図9は、発熱量を示すグラフである。図9において、横軸が電流で縦軸が発熱量である。
図9に示すように、パワートランジスタTr1の発熱量とヒーター抵抗HRの発熱量とは異なっており、両者を合計した発熱量が熱源の発熱量となる。
従って、周囲の温度が変化すると、パワートランジスタTr1の発熱量とヒーター抵抗HRの発熱量で差が生じることになる。
【0012】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平11−317622号公報「水晶発振器用温度制御回路」(東洋通信機株式会社)[特許文献1]、特開2004−207870号公報「圧電振動子収納用パッケージおよびこれを用いた恒温型発振器」(京セラ株式会社)[特許文献2]、特開2005−117093号公報「温度制御回路とこれを用いた高安定水晶発振器」(東洋通信機株式会社)[特許文献3]、特許第4855087号公報「恒温型の水晶発振器」(日本電波工業株式会社)[特許文献4]がある。
【0013】
特許文献1には、水晶発振器における恒温槽の温度を制御する温度制御回路において、サーミスタの抵抗値を大きい値に選択することで、検出温度に対して発熱体の制御電流を大きく制御できることが示されている。
【0014】
特許文献2には、恒温型発振器において、圧電素子を搭載した第1のパッケージが、第2のパッケージにより気密封止して、第2のパッケージの収容部を真空状態としたことが示されている。
【0015】
特許文献3には、高安定水晶発振器の温度制御回路において、定電圧を第1サーミスタと抵抗で分圧する第1の分圧回路と、定電圧を第2サーミスタと可変抵抗で分圧する第2の分圧回路と、第1の分圧回路で分圧された電圧を+入力端子に、第2の分圧回路で分圧された電圧を−入力端子に入力する差動アンプを有することが示されている。
【0016】
特許文献4には、恒温型の水晶発振器において、水晶振動子のダミー端子と接続する回路基板の基板側ダミー端子と、温度感応抵抗が接続される基板側抵抗端子とは導電路によって接続されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平11−317622号公報
【特許文献2】特開2004−207870号公報
【特許文献3】特開2005−117093号公報
【特許文献4】特許第4855087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来の恒温槽付水晶発振器では、上述したように、熱源であるパワートランジスタTr1とヒーター抵抗HRは、周辺温度の変化によって発熱量に差があることが知られており、そのため、従来の恒温槽付水晶発振器では、周囲の温度が変化したときに温度差が生じ、発振器の温度特性が劣化するという問題点があった。
【0019】
また、センサーであるサーミスタTHも、図8に示したように、電源からの電圧が掛かっており、熱源に直接接触させることができないため、熱の伝導効率が悪く、最小限の熱で効率よく温度を一定に保つことができない構造となっていた。
【0020】
[電流制限回路の付加:図10]
そこで、図10に示すように、温度制御回路において、電流制限回路を追加した構成が考えられる。
電流制限回路を備えた温度制御回路について図10を参照しながら説明する。図10は、電流制限回路を備えた温度制御回路の回路図である。
図10の温度制御回路は、図8の回路において、電流制限用トランジスタTr2を設け、トランジスタTr2のコレクタが、差動増幅器IC10の出力が入力されるパワートランジスタTr1のベースに接続し、トランジスタTr2のベースが、パワートランジスタTr1のエミッタに接続されると共に、抵抗R6を介して接地されている。また、トランジスタTr2のエミッタは接地されている。
ここで、パワートランジスタTr1と電流制限用トランジスタTr2は、NPN型トランジスタとなっている。
【0021】
差動増幅器IC10からの出力電圧が大きくなると、パワートランジスタTr1のベースに流れる電流が大きくなり、コレクタとエミッタとの間を流れる電流が大きくなるが、電流検出抵抗R6と電流制限用トランジスタTr2によって、トランジスタTr2のコレクタとエミッタの間を流れる最大電流が制御される。それと同時にパワートランジスタTr1とヒーター抵抗HRの印加電圧を調整することができ、各素子の発熱量(電力)を制御することができる。
【0022】
図10の回路では、パワートランジスタTr1の電流を制限するための電流制限用トランジスタTr2のベースとエミッタ間の電圧VBEに約0.7V必要になるため、熱源であるヒーター抵抗HRとパワートランジスタTr1の総熱量(電力)を減少させてしまう欠点があった。
また、パワートランジスタTr1のコレクタに電位が掛かっている状態であるため、パワートランジスタTr1のコレクタ側とサーミスタTHを電気的に直接接続させることはできず、更なる熱伝達効率の向上が望まれている。
【0023】
また、特許文献1〜2では、熱分散を防止して、回路における熱伝導の効率を更に向上させることについて考慮されていないものである。
また、特許文献3では、温度センサの感度を大きくできるものではあるが、熱源をパワートランジスタとし、そのパワートランジスタとサーミスタとを直接接続する構成とはなっていないものである。
【0024】
また、図8の回路では、サーミスタTH(温度センサー)で検出した温度を一定に保つよう熱源を発熱させるよう制御が為されるが、水晶発振器として安定化させたいのは水晶振動子であり、熱抵抗の影響で温度センサー検出の温度を一定にしても、検出温度と水晶振動子との間では温度差が発生する。
そのため、温度センサーと水晶振動子とに温度差により、無駄な発熱や温度不安定の要因となっていた。
【0025】
温度センサーと水晶振動子との温度差を小さくするためには、水晶振動子、温度センサー、熱源を一体化する必要があり、そのためには、大きな熱筒が必要であった。
また、熱抵抗が大きくなると、出力が変動するハンチング現象が発生するため、制御の設計が難しくなっていた。
【0026】
[改善した恒温槽制御回路:図11]
以上の問題点を解決するために、図11の回路が提案されている。図11は、改善した恒温槽制御回路の回路図である。
図11に示すように、改善した恒温槽制御回路は、図8の回路と基本的に同様であり、相違するのは、水晶振動子のダミー端子がサーミスタTHと抵抗R20との間の点に金属カバーを介して接続している点である。
【0027】
図11の回路では、水晶振動子のパッケージと温度センサーを接続することで、水晶振動子と温度センサーとの間の熱抵抗を小さくすることができる。
しかしながら、水晶振動子と熱源との間の熱抵抗、温度センサーと熱源との間の熱抵抗に対しては、電気的に接続できないという理由から、熱抵抗が任意の値を持ち、上述した影響を完全に解消されないものである。
尚、特許文献4は、図11の回路に相当するもので、水晶振動子、温度センサー、熱源を電気的に接続できないことによる影響を解消できないものとなっている。
【0028】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、熱分散を防止して、回路における熱伝導の効率を向上させ、良好な温度特性を有する恒温槽付水晶発振器の温度制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するエミッタと、差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するコレクタとを備えるPNP型のパワートランジスタと、電源電圧が供給されるエミッタと、ヒーター抵抗の他端とパワートランジスタのエミッタとの間の電圧を入力するベースと、パワートランジスタのベースに接続するコレクタとを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有することを特徴とする。
【0030】
本発明は、上記温度制御回路において、サーミスタの他端とパワートランジスタのコレクタとを共通の金属パターンで接続したことを特徴とする。
【0031】
本発明は、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するソースと、差動増幅器の出力を入力するゲートと、接地するドレインとを備えるP型の電界効果型のパワートランジスタ(パワーMOSFET)と、電源電圧が供給されるエミッタと、ヒーター抵抗の他端とパワーMOSFETのソースとの間の電圧を入力するベースと、パワーMOSFETのゲートに接続するコレクタとを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有することを特徴とする。
【0032】
本発明は、上記温度制御回路において、サーミスタの他端とパワーMOSFETのドレインとを共通の金属パターンで接続したことを特徴とする。
【0033】
本発明は、恒温槽付水晶発振器において、上記温度制御回路と、水晶振動子とを備えたことを特徴とする。
【0034】
本発明は、恒温槽付水晶発振器において、上記温度制御回路と、水晶振動子とを備え、共通の金属パターンに前記水晶振動子のグランド端子を接続したことを特徴とする。
【0035】
本発明は、恒温槽付水晶発振器において、上記温度制御回路と、水晶振動子と、水晶振動子を覆う金属カバーとを備え、水晶振動子のグランド端子を金属カバーに接続し、共通の金属パターンに金属カバーを接続したことを特徴とする。
【0036】
本発明は、恒温槽付水晶発振器において、共通の金属パターンが水晶振動子の金属カバーを覆うように形成されていることを特徴とする。
【0037】
本発明は、上記恒温槽付水晶発振器において、温度制御回路と水晶振動子が形成された回路基板を金属カバーで封止する場合に、金属カバー内を真空にする真空封止を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するエミッタ、差動増幅器の出力を入力するベース、接地するコレクタを備えるPNP型のパワートランジスタと、電源電圧が供給されるエミッタ、ヒーター抵抗の他端とパワートランジスタのエミッタとの間の電圧を入力するベース、パワートランジスタのベースに接続するコレクタを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有する温度制御回路としているので、ヒーター抵抗に流れる電流を電流制限用トランジスタで制限して熱源をパワートランジスタにし、熱分散を防止して、パワートランジスタのコレクタとサーミスタの他端がグランドレベルで共通に接続することで、熱源の熱をサーミスタに効率的に伝達でき、制御感度を向上させ、良好な温度特性を実現できる効果がある。
【0039】
本発明によれば、恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、第1の抵抗の他端とサーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、第2の抵抗の他端と第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して一方の入力端子に帰還して、他方の入力端子に入力される電圧と一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、ヒーター抵抗の他端が接続するソースと、差動増幅器の出力を入力するゲートと、接地するドレインとを備えるP型の電界効果型のパワートランジスタ(パワーMOSFET)と、電源電圧が供給されるエミッタと、ヒーター抵抗の他端とパワーMOSFETのソースとの間の電圧を入力するベースと、パワーMOSFETのゲートに接続するコレクタとを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有する温度制御回路としているので、ヒーター抵抗に流れる電流を電流制限用トランジスタで制限して熱源をパワートランジスタにし、熱分散を防止して、パワーMOSFETのドレインとサーミスタの他端がグランドレベルで共通に接続することで、熱源の熱をサーミスタに効率的に伝達でき、制御感度を向上させ、良好な温度特性を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路の回路図である。
【図2】本実施の形態に係る第1のOCXOの断面説明図である。
【図3】本実施の形態に係る第1のOCXOの平面説明図である。
【図4】実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路の回路図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路の回路図である。
【図6】本実施の形態に係る第2のOCXOの平面説明図である。
【図7】表面実装型水晶振動子のパッケージの概略図である。
【図8】従来の恒温槽付水晶発振器の温度制御回路の回路図である。
【図9】発熱量を示すグラフである。
【図10】電流制限回路を備えた温度制御回路の回路図である。
【図11】改善した恒温槽制御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、PNP型のパワートランジスタのコレクタ側とサーミスタの一端を金属の共通パターンを用いてグランドレベルに接続し、パワートランジスタのエミッタに接続するヒーター抵抗を流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタを設けるようにしたものであり、熱源をパワートランジスタ一つにして熱分散を防止し、パワートランジスタのコレクタの熱を共通接続するサーミスタに効率的に伝導できるため、熱応答性を向上させ、温度特性の優れた発振器を実現できるものである。
【0042】
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の温度制御回路は、P型のパワーMOSFETのドレイン側とサーミスタの一端を金属の共通パターンを用いてグランドレベルに接続し、パワーMOSFETのソースに接続するヒーター抵抗を流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタを設けるようにしたものであり、熱源をパワーMOSFET一つにして熱分散を防止し、パワーMOSFETのドレインの熱を共通接続するサーミスタに効率的に伝導できるため、熱応答性を向上させ、温度特性の優れた発振器を実現できるものである。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器は、上記温度制御回路を組み込んだ構成である。
また、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器は、金属カバー内を真空封止することで、外部への放熱を防止して、最小限の熱で内部を一定の温度に保持できるものである。
【0044】
[恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路:図1]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路の回路図である。
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第1の温度制御回路(第1の回路)は、図1に示すように、基本的に、サーミスタTHと、差動増幅器(OPAMP)IC10と、パワートランジスタTr1と、ヒーター抵抗HRと、電流制限用トランジスタTr2とを有している。
そして、パワートランジスタTr1と電流制限用トランジスタTr2が、NPN型トランジスタではなく、PNP型トランジスタとなっている。
【0045】
[第1の回路の接続関係]
ヒーター抵抗HRの一端には、電源電圧DCが印加され、ヒーター抵抗HRの他端はパワートランジスタTr1のエミッタに接続され、パワートランジスタTr1のコレクタはグランド(GND)に接地されている。
【0046】
また、抵抗R1の一端には電源電圧DCが印加され、抵抗R1の他端がサーミスタTHの一端に接続され、サーミスタTHの他端がGNDに接地されている。
また、抵抗R2の一端には電源電圧DCが印加され、抵抗R2の他端が抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端がGNDに接地されている。
【0047】
そして、抵抗R1の他端とサーミスタTHの一端との間の点が、抵抗R4を介して差動増幅器IC10の一方の入力端子(−端子)に接続され、抵抗R2の他端と抵抗R3の一端との間の点が、差動増幅器IC10の他方の入力端子(+端子)に接続されている。
更に、差動増幅器IC10の出力端子と入力端子(−端子)とを、抵抗R5を介して帰還して接続している。
そして、差動増幅器IC10の出力端子は、パワートランジスタTr1のベースに接続されている。
尚、図示していないが、差動増幅器IC10には、動作のために電源電圧DCが印加され、またGNDに接続している。
【0048】
また、電流制限用トランジスタTr2のエミッタに電源電圧DCが印加され、ヒーター抵抗HRの他端とパワートランジスタTr1のエミッタとの間の点が電流制限用トランジスタTr2のベースに接続し、電流制限用トランジスタTr2のコレクタがパワートランジスタTr1のベースに接続されている。
【0049】
[第1の回路の各部]
[サーミスタTH]
サーミスタTHは、温度によって抵抗値が変化する感温素子であり、水晶振動子の動作温度を検出する。
本実施の形態では、サーミスタTHの他端がパワートランジスタTr1のコレクタとグランドレベルで共通のGND層に接続される点に特徴がある。
【0050】
つまり、サーミスタTHの他端とパワートランジスタTr1のコレクタを物理的電気的に接続可能となったことで、熱伝導を考えると、従来では絶縁性の熱伝導シリコンが約2W/m・kであったのに対して、本実施の形態では、GNDパターンを銅とすると、403W/m・kとなり、熱伝導が約200倍にもなる。
これにより、熱応答性の高い恒温槽付水晶発振器を構成できる。
【0051】
[差動増幅器IC10]
差動増幅器IC10は、一方の入力端子(−端子)に、抵抗R1とサーミスタTHとの間の電圧が抵抗R4を介して入力されると共に差動増幅器IC10の出力が抵抗R5を介して帰還して入力され、他方の入力端子(+端子)に、抵抗R2と抵抗R3との間の電圧が入力されて、2入力端子の電圧の差分を増幅して出力する。
【0052】
[パワートランジスタTr1]
パワートランジスタTr1は、PNP型トランジスタであり、ベースに差動増幅器IC10の出力が入力され、ベースへの印加電圧に応じてエミッタとコレクタとの間に電流を流すことで、ヒーター抵抗HRにも電流を流すようになっている。
パワートランジスタTr1は、電流制限用トランジスタTr2の動作によって、ヒーター抵抗HRに流れる電流を制限することで、ヒーター抵抗HRを熱源にせず、パワートランジスタTr1だけが熱源となる。特に、パワートランジスタTr1のコレクタ(GND側)が発熱する。
【0053】
[ヒーター抵抗HR]
ヒーター抵抗HRは、電源電圧DCが印加され、パワートランジスタTr1の動作によって、流れる電流に応じて発熱する。
但し、ヒーター抵抗HRは、電流制限用トランジスタTr2の動作によって流れる電流が制限されるので、電流制限回路を備えない従来の温度制御回路に比べて熱源にはならないものである。
従って、熱源をパワートランジスタTr1だけにすることができ、熱分散を防止できるものである。
【0054】
[電流制限用トランジスタTr2]
電流制限用トランジスタTr2は、ヒーター抵抗HRの他端とパワートランジスタTr1のエミッタとを接続するライン上の点の電圧がベースに印加され、印加される電圧に応じて、電源電圧DCに接続するエミッタとパワートランジスタTr1のベースに接続するコレクタを流れる電流が制御される。
【0055】
つまり、パワートランジスタTr1のエミッタに流れる電流に応じて、電流制限用トランジスタTr2のベースに印加される電圧が可変となり、電流制限用トランジスタTr2のエミッタとコレクタを流れる電流も可変となる。
【0056】
具体的には、パワートランジスタTr1のエミッタに流れる電流が大きくなると、電流制限用トランジスタTr2と電流検出抵抗により最大電流が決まり、ヒーター抵抗の発熱量が制限され、パワートランジスタTr1で主に消費される。
また、パワートランジスタTr1のエミッタに流れる電流が小さくなると、電流制限用トランジスタTr2のエミッタとコレクタを流れる電流も小さくなり、動作しなくなる。
【0057】
[第1のOCXOの構造:図2]
次に、本実施の形態に係る第1のOCXOの構造について図2を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係る第1のOCXOの断面説明図である。
本実施の形態に係るOCXO(第1のOCXO)は、図2に示すように、セラミック等の回路基板1上に水晶振動子2とパワートランジスタ3等が搭載され、回路基板1が金属ベース4に金属ピン5で固定されている。
水晶振動子2等の搭載面は、金属ベース4側に向くよう配置されている。
そして、金属ベース4を覆うように金属カバー6が取り付けられている。
【0058】
従来のOCXOでは、金属カバー内部を空気又はガスが充填されており、空気又はガスを通じて熱が伝わることで、温度特性に影響を及ぼし、性能の劣化に繋がっていた。
第1のOCXOでは、金属カバー4内を真空にする真空封止を行うものである。
真空封止を用いれば、熱伝導は理論上ゼロになるか、外気の影響を無視できるものとなる。すなわち、周囲温度の影響を受けない発振器を製造することができ、温度特性のよい発振器を実現できる。
【0059】
通常のOCXOは、内部にオーブンがあり、常に約90℃の温度で一定に保たれている。その温度を維持するために、常にヒーター抵抗又はパワートランジスタが発熱している。
その熱が、空気から金属カバーに伝えられ、放熱しており、無駄な電力を消費している。
更に、近年の小型化により槽内の空気層も小さくなり、発熱部とカバーとの距離が近くなって、空気から安易に熱が逃げやすくなる傾向がある。
【0060】
従って、第1のOCXOの構造のように、真空封止を用いれば、熱伝導は理論上ゼロになるため、内部から空間を伝わって熱が逃げることがない。そのため、最小限の熱で効率よく温度を一定に保つことができ、消費電力を下げることができる。
【0061】
また、従来、放熱を最小限に抑えるための構造上の工夫を必要としたが、真空封止を用いることで、第1のOCXOでは、構成を簡略にでき、回路基板に多くの部品を配置でき、基板のコストを抑えることができ、基板の厚みも容易に変更でき、シート基板での取り数を増やせて生産性を向上させることができる。
【0062】
[第1のOCXOの平面:図3]
次に、第1のOCXOの構造について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る第1のOCXOの平面説明図である。
第1のOCXOは、図3に示すように、回路基板1上にGNDに接続する共通パターン8が形成され、その共通パターン8の上に、水晶振動子2が形成され、パワートランジスタ3の一方の端子(コレクタ端子)とセンサー(サーミスタTH)7の一端が共通パターン8に接続している。
【0063】
共通パターン8は、銅等の金属パターンで形成されており、グランドレベルに接地されている。この共通パターン8によりパワートランジスタ3とセンサー7が物理的電気的に接続されるため、絶縁性の熱伝導シリコンに比べて熱伝導性がよく、熱応答性の高い発振器を実現できる。
また、水晶振動子2のグランド端子(GND端子)を共通パターン8に接続して、水晶振動子2に効率的に熱を伝達するようにした方がよい。
【0064】
[恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路:図4]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路について図4を参照しながら説明する。図4は、実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路の回路図である。
恒温槽付水晶発振器の第2の温度制御回路(第2の回路)は、図4に示すように、図1の回路と同様の構成となっているが、相違するのは、PNP型のパワートランジスタTr1の代わりに、パワートランジスタTr1′としてP型のパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOS電界効果型トランジスタ)を用いている点である。
【0065】
[パワートランジスタTr1′]
パワートランジスタTr1′は、P型のパワーMOSFETであり、ゲートに差動増幅器IC10の出力が入力され、ゲートへの印加電圧に応じてドレインとソースとの間に電流を制御することで、ヒーター抵抗HRにも電流を流すようになっている。
パワートランジスタTr1′は、電流制限用トランジスタTr2の動作によって、ヒーター抵抗HRに流れる電流を制限することで、ヒーター抵抗HRを熱源にせず、パワートランジスタTr1′だけが熱源となる。特に、パワートランジスタTr1′のドレイン(GND側)が発熱する。
【0066】
[電流制限用トランジスタTr2]
電流制限用トランジスタTr2は、ヒーター抵抗HRの他端とパワートランジスタTr1′のソースとを接続するライン上の点の電圧がベースに印加され、印加される電圧に応じて、電源電圧DCに接続するエミッタとパワートランジスタTr1′のゲートに接続するコレクタを流れる電流が制御される。
【0067】
つまり、パワートランジスタTr1′のソースに流れる電流に応じて、電流制限用トランジスタTr2のベースに印加される電圧が可変となり、電流制限用トランジスタTr2のエミッタとコレクタを流れる電流も可変となる。
【0068】
また、本発明の実施の形態に係る第1の恒温槽付水晶発振器(第1のOCXO)は、上記温度制御回路(第2の回路)を組み込んだ構成であり、金属カバー6内を真空封止することで、外部への放熱を防止して、最小限の熱で内部を一定の温度に保持できるものである。
【0069】
[恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路:図5]
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路について図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路の回路図である。
本発明の実施の形態に係る恒温槽付水晶発振器の第3の温度制御回路(第3の回路)は、図5に示すように、基本的に、サーミスタTHと、差動増幅器(OPAMP)IC10と、パワートランジスタTr1と、ヒーター抵抗HRと、電流制限用トランジスタTr2とを有している。
そして、パワートランジスタTr1と電流制限用トランジスタTr2が、NPN型トランジスタではなく、PNP型トランジスタとなっている。
尚、パワートランジスタTr1を図4に示したように、P型パワーMOSFETとしてもよい。
【0070】
図5では、第3の温度制御回路の他に、水晶振動子X3と発振回路11を記載しており、水晶振動子X3の入力側には制御電圧(VCONT)を入力する端子が設けられ、その端子に抵抗R1とコンデンサC2が直列接続され、水晶振動子X3の入力に接続されている。
また、抵抗R1とコンデンサC2との間にコンデンサC1の一端が接続され、他端が接地されている。
そして、水晶振動子X3の出力が発振回路11に入力され、発振回路11の出力が出力端子(OUT PUT)に接続されている。
【0071】
更に、第3の回路の特徴として、水晶振動子X3の接地端子(GND端子)が金属カバーを介してサーミスタTHのGND側及びパワートランジスタTr1のコレクタ(GND接地)に接続している。
つまり、水晶振動子X3と、温度センサーであるサーミスタTHと、熱源であるパワートランジスタTr1とがグランドレベル(GNDレベル)で電気的に接続している。
特に、GNDレベルの接続を、電気的に熱伝導の高い銅パターンで直接接続する。これにより、水晶振動子X3、温度センサー、熱源の間における熱抵抗を限りなくゼロにすることができる。
尚、銅の熱伝導率は、403W/m・kであり、それと比べて、アルミが236403W/m・kであり、高熱伝導タイプのシリコンが2.4W/m・kである。
【0072】
温度センサーとしてサーミスタTHを用いているが、白金抵抗、熱電対、リニア抵抗等の抵抗センサーであってもよい。
また、温度制御は、P(Proportional:比例)制御、PI(Proportional, Integral:比例・積分)制御、PID(Proportional, Integral, Derivative:比例・積分・微分)制御等を用いる。
温度制御回路は、ディスクリート部品及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のIC内に構成可能とする。
【0073】
[第2のOCXOの平面:図6]
次に、第2のOCXOの構造について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施の形態に係る第2のOCXOの平面説明図である。
第2のOCXOは、図6に示すように、回路基板1上に、水晶振動子2が形成され、その近傍にサーミスタ13、更にパワートランジスタ3が配置され、水晶振動子2から遠い所にヒータ抵抗12が配置されている。
【0074】
そして、パワートランジスタ3のGND端子(図6ではパワートランジスタ3の左側の端子)とサーミスタ13のGND端子(図6ではサーミスタ13の上側の端子)と水晶振動子2の金属カバーに接触するように共通パターン8′を形成する。
共通パターン8′は、銅等の金属パターンで形成されており、グランドレベルに接地されている。この共通パターン8′により水晶振動子2とパワートランジスタ3とサーミスタ13が物理的電気的に接続されるため、絶縁性の熱伝導シリコンに比べて熱伝導性がよく、熱応答性の高い発振器を実現できる。
【0075】
また、共通パターン8′を金属カバーの上に当該金属カバーを覆うように形成するようにしているが、回路基板1上にまず共通パターン8′を形成し、パワートランジスタ3のGND端子、サーミスタ13のGND端子、水晶振動子2のGND端子をその共通パターン8′に接続して、効率的に熱を伝達するようにしてもよい。
【0076】
[表面実装型水晶振動子のパッケージ:図7]
第3の回路で使用される水晶振動子のパッケージについて図7を参照しながら説明する。図7は、表面実装型水晶振動子のパッケージの概略図である。
水晶振動子は、図7に示すように、SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)のパッケージ品を使用し、端子には、水晶片に接続する端子イと端子ウと、金属カバー及び内部パッケージに接続する端子アと端子エで構成されている。
【0077】
端子アと端子エは、金属カバーケースを通じて接続しており、GNDへ接地する。
SMDパッケージ品で上記4端子があればよいが、それ以外の端子を備えていてもよい。また、端子アと端子エは、金属カバーケースを通じて接続しない構成でもよい。
金属カバーの材料としては、例えば、コバールを用いる。
【0078】
[実施の形態の効果]
第1の回路によれば、PNP型のパワートランジスタTr1のコレクタ側とサーミスタTH側を金属の共通パターン8を用いてグランドレベルに接続し、パワートランジスタTr1のエミッタに接続するヒーター抵抗HRを流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタTr2を設けて、熱源をパワートランジスタTr1の一つにして熱分散を防止し、パワートランジスタTr1のコレクタの熱を共通接続するサーミスタTH(センサー7)に効率的に伝導できるため、熱応答性を向上させ、温度特性の優れた発振器を実現できる効果がある。
【0079】
第2の回路によれば、P型のパワーMOSFETのパワートランジスタTr1′のドレイン側とサーミスタTH側を金属の共通パターン8を用いてグランドレベルに接続し、パワートランジスタTr1′のソースに接続するヒーター抵抗HRを流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタTr2を設けて、熱源をパワートランジスタTr1′の一つにして熱分散を防止し、パワートランジスタTr1′のドレインの熱を共通接続するサーミスタTH(センサー7)に効率的に伝導できるため、熱応答性を向上させ、温度特性の優れた発振器を実現できる効果がある。
【0080】
尚、第1の回路又は第2の回路を第1の恒温槽付水晶発振器に組み込んだ構成とすることで、高安定な発振器を実現できる効果がある。
【0081】
また、第1のOCXOによれば、金属カバー6内を真空封止することで、外部への放熱を防止して、最小限の熱で内部を一定の温度に保持できる効果がある。
【0082】
第3の回路によれば、PNP型のパワートランジスタTr1のコレクタ側とサーミスタTH側と水晶振動子のGND端子を銅等の金属の共通パターン8′を用いてグランドレベルに接続し、パワートランジスタTr1のエミッタに接続するヒーター抵抗HRを流れる電流を制限するPNP型の電流制限用トランジスタTr2を設けて、熱源をパワートランジスタTr1の一つにして熱分散を防止し、パワートランジスタTr1のコレクタの熱を共通接続するサーミスタTHと水晶振動子2に効率的に伝導できるため、熱応答性を向上させ、温度特性の優れた発振器を実現できる効果がある。
【0083】
従って、第3の回路では、温度センサーのサーミスタとパワートランジスタの熱源と温度制御対象の水晶振動子の熱抵抗を限りなくゼロにすることができ、それにより、均一な温度制御による優れた周波数温度特性を得ることができ、制御応答性が良くなるため立ち上がりの早い周波数特性となり、更に無駄な発熱がなくなるため省電力化でき、樹脂等を使わず直接接続できるため組み立てを簡素化でき、また熱抵抗極小による温度制御設計の簡素化を図ることができる効果がある。
【0084】
また、第3の回路では、パワートランジスタTr1の熱源の熱を共通パターン8′により水晶振動子2の金属カバーに伝達し、更に水晶振動子2のGND端子に伝達できるので、容易な構成とすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、熱分散を防止して、回路における熱伝導の効率を向上させ、良好な温度特性を有する恒温槽付水晶発振器の温度制御回路に好適である。
【符号の説明】
【0086】
1...回路基板、 2...水晶振動子、 3...パワートランジスタ、 4...金属ベース、 5...金属ピン、6...金属カバー、 7...センサー、 8...共通パターン、 10...差動増幅器IC、 11...発振回路、 12...ヒータ抵抗、 13...サーミスタ、 HR...ヒーター抵抗、 R1〜R5,R11,R30〜R36...抵抗、 TH...サーミスタ、 Tr1...パワートランジスタ、 Tr2...電流制限用トランジスタ、 DC...電源電圧、 C1,C2...コンデンサ、 X3...水晶振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、
電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、
電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、
電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端と前記サーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、前記第2の抵抗の他端と前記第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して前記一方の入力端子に帰還して、前記他方の入力端子に入力される電圧と前記一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、
前記ヒーター抵抗の他端が接続するエミッタと、前記差動増幅器の出力を入力するベースと、接地するコレクタとを備えるPNP型のパワートランジスタと、
電源電圧が供給されるエミッタと、前記ヒーター抵抗の他端と前記パワートランジスタのエミッタとの間の電圧を入力するベースと、前記パワートランジスタのベースに接続するコレクタとを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有することを特徴とする温度制御回路。
【請求項2】
サーミスタの他端とパワートランジスタのコレクタとを共通の金属パターンで接続したことを特徴とする請求項1記載の温度制御回路。
【請求項3】
恒温槽付水晶発振器における恒温槽の温度制御回路であって、
電源電圧が一端に供給されて発熱するヒーター抵抗と、
電源電圧が一端に供給される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端に一端が接続して他端が接地し、温度に応じて抵抗値を可変として、温度に応じた電圧を一端に出力するサーミスタと、
電源電圧が一端に供給される第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端に一端が接続し、他端が接地する第3の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端と前記サーミスタの一端との間の電圧が、一方の入力端子に入力されると共に、前記第2の抵抗の他端と前記第3の抵抗の一端との間の電圧が、他方の入力端子に入力され、出力が第4の抵抗を介して前記一方の入力端子に帰還して、前記他方の入力端子に入力される電圧と前記一方の入力端子に入力される電圧との差分を増幅して制御電圧として出力する差動増幅器と、
前記ヒーター抵抗の他端が接続するソースと、前記差動増幅器の出力を入力するゲートと、接地するドレインとを備えるP型の電界効果型のパワートランジスタと、
電源電圧が供給されるエミッタと、前記ヒーター抵抗の他端と前記パワートランジスタのソースとの間の電圧を入力するベースと、前記パワートランジスタのゲートに接続するコレクタとを備えるPNP型の電流制限用トランジスタとを有することを特徴とする温度制御回路。
【請求項4】
サーミスタの他端とパワートランジスタのドレインとを共通の金属パターンで接続したことを特徴とする請求項3記載の温度制御回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の温度制御回路と、水晶振動子とを備えたことを特徴とする恒温槽付水晶発振器。
【請求項6】
請求項2又は4記載の温度制御回路と、水晶振動子とを備え、共通の金属パターンに前記水晶振動子のグランド端子を接続したことを特徴とする恒温槽付水晶発振器。
【請求項7】
請求項2又は4記載の温度制御回路と、水晶振動子と、前記水晶振動子を覆う金属カバーとを備え、前記水晶振動子のグランド端子を前記金属カバーに接続し、共通の金属パターンに前記金属カバーを接続したことを特徴とする恒温槽付水晶発振器。
【請求項8】
共通の金属パターンが水晶振動子の金属カバーを覆うように形成されていることを特徴とする請求項7記載の恒温槽付水晶発振器。
【請求項9】
温度制御回路と水晶振動子が形成された回路基板を金属カバーで封止する場合に、前記金属カバー内を真空にする真空封止を用いたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか記載の恒温槽付水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−38765(P2013−38765A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92996(P2012−92996)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】