情報記録媒体
【課題】特殊な蛍光体、かつ特殊な光学装置を用いなくとも、情報提供と偽造防止効果を両立した情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とする情報記録媒体。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【解決手段】少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とする情報記録媒体。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体に関し、さらに詳しくは、別物品(代表的には、例えば、クレジットカード、IDカード等の各種カード類、商品券、ギフト券、シールなど)に組み込まれて、該別物品が第三者などにより偽造されることを防止するのに有効に機能する、あるいは、該別物品が真正品か偽造品であるかを簡単かつ正確に検査して判断することを可能にする光学上の情報が記録された情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、数字情報、文字によって表現された情報と等価な情報をバーコード化したものを同一紙面上等に印刷し、情報を電子メディアで使う必要が生じたら、該必要情報に対応するバーコード情報をバーコードリーダーを用いて、バーコードが印刷された部分の紙面等から反射される光の強度分布を、符号化された情報として捉えて読み込み、その情報を照合して電子メディアにより出力をする情報記録媒体、情報提供方法あるいはその装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、これらの情報提供に用いられる情報記録媒体は、暗号化されたバーコードが印刷された紙が代表的なものであったために、印刷などの複製・生産性に優れる反面、2次元平面内に情報が限定されていたために有価証券類に用いられたときには、セキュリティー面にまだ不十分な点があり、偽造防止性の点でまだ改善の余地があった。
【0004】
一方、偽造防止のための技術としては、従来から透かし技術、凹凸構造技術(特許文献3、特許文献4)、また、近年では、メタリズム技術などがある。メタリズムとは、分光分布特性が異なっているにもかかわらず、観察条件によって視覚的に同じ色に見えることをいう。例えば、太陽光などの光と所望のフィルターや分光分布をもった光源で見るのとでは、彩度、明度、色相が異なるメタリックインキを用いた偽造防止技術が提案されている(特許文献5)。
【0005】
その他、見る角度により色が異なる多層膜のカラーシフト効果を利用していて真偽判定が容易であるという偽造防止媒体なども提案されている(特許文献6、特許文献7)。
【0006】
このような偽造防止技術は、いずれも、複数の複雑な工程を必要とするためにコスト面で高く、また、作製上の問題から利用領域が限られており、基材上で部分(スレッド)的な利用のされ方が多く、特殊な用途のみに用いられており、汎用性に乏しかった。
【0007】
そのため、例えば、バーコード化情報レベルなどの識別情報を印刷するに止まり、偽造防止効果・偽造防止性のある情報自体を提供する意味合いのものは乏しかった。
【0008】
しかし、近年のますますの情報化された社会でのセキュリティー上の管理は厳しく、情報自体の偽造防止効果の需要が高まってきている。
【0009】
例えば、赤外波長域で発光する赤外蛍光体を用いた透明インク組成物を使用して、肉眼では見えない文字、図形、バ―コ―ドなどの赤外発光層を印刷し、このコ―ド情報を光学的読み取り装置によって得ることが知られている。(特許文献8、特許文献9)。
【0010】
しかしながら、赤外蛍光体は、特殊なインクであり、かつ特殊な光学装置でなければ読み取りが困難なため高コストとなるし汎用性に乏しい。また、基材が赤外光を反射するものに限定されるという不都合も有していた。
【特許文献1】特開平7−121673号公報
【特許文献2】特開2001−344588号公報
【特許文献3】特開2003−281596号公報
【特許文献4】特開2003−141594号公報
【特許文献5】特許第1331101号公報
【特許文献6】特開平11−224050号公報
【特許文献7】特開平8−118529号公報
【特許文献8】特公昭61−18231号公報
【特許文献9】特開昭53−9600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる事情下に鑑み、本発明の目的は、特殊な蛍光体を用いなくとも、かつ特殊な光学装置を使用しなくとも、偽造されることを防止するのに有効に機能する、あるいは真正品か偽造品であるかを簡単・正確に検査して判断することを可能にする光学上の情報が記録された情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【0013】
すなわち、本発明の情報記録媒体は、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とするものである。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出角度さらには入射光の偏光に依存した反射波長および/または反射率を有した積層構造体、代表的には積層フィルムを用いるものであるがため、エンコードされた情報などをその面状に印刷もしくは、そのフィルム厚みを周期的に変化させたりすることによって記録できる。
【0015】
そのため、特殊な蛍光体、かつ特殊な光学装置を用いなくとも、その面状の反射波長および/または反射率の分布が位置および検出角度に依存しているため、情報自体に偽造防止効果、真正品の判別機能を持たせた非常にセキュリティー性が強い情報記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の情報記録媒体について詳細に説明する。
【0017】
本発明の情報記録媒体は、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂が厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数で50層以上積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体である。該積層構造体は、代表的には、積層フィルムという形で具現化される。
【0018】
そして、該情報記録媒体には、光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されているものである。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【0019】
本発明の情報記録媒体は、該情報記録媒体からの光干渉によって生じる反射光の反射波長と反射率の関係が、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されているため、すなわち、λR (nm)が250以上、2000以下の範囲内において、その最大反射率が50%以上であるものが存在するために、その面状に印刷もしくは、その厚みを周期的に変化させたりすることによってエンコードされた情報を記録すると、位置、検出角度もしくは入射光の偏光に依存した反射波長および/または反射率の分布が面状に形成され、目視認識もしくは光学装置で検出可能であり、さらには既知の情報と照合できるものである。また、その面状の反射波長および反射率の分布が位置および検出角度に依存しているため、情報自体に偽造防止効果を持たせた非常にセキュリティー性が強い情報記録媒体となる。
【0020】
ここで、反射波長および反射率の分布とは、情報記録媒体上の面状に反射波長の分布と反射率の分布が同時に存在するものである。反射波長または反射率の分布とは、どちらか一方の分布が存在するものである。本発明において、「反射波長の分布が形成されている」とは、情報記録部となる装置を用いて情報記録媒体上に形成された異なる反射波長を有する2つ以上の領域が混在することである。さらに望ましくは、該領域毎の反射波長において、情報をより正確に検出する観点から、その最大値と最小値の差は30nm以上あることが好ましい。また、本発明において、「反射率の分布が形成されている」とは、情報記録部となる装置を用いて情報記録媒体上に形成された異なる反射率を有する2つ以上の領域が、混在することである。さらに望ましくは、該領域のうち少なくとも1つは存在する反射波長において、情報をより正確に検出する観点から、領域間の反射率の差(最大値と最小値の差)が30%以上あることが好ましい。反射波長の分布がある例としては、例えば、面状に反射光の色が異なる領域が存在する場合、また、反射率の分布がある例としては、例えば、面状に白黒の領域が存在する場合などである。これらは、領域毎に分光反射分布を測定することによって厳密に判断できる。このような分布としての記録情報は、特殊な蛍光体、かつ特殊な光学装置を用いなくとも、コピー印刷機などによる複写が不可能である偽造防止効果を奏するものである。
【0021】
たとえ、λR が(1)式を満足していても、R値が50%未満のときは、目視認識もしくは光学装置で検出が不可能であり、さらには、既知の情報と照合不可能であり、本発明の所期の効果を得ることは難しく、また、たとえR値が50%以上であるとしても、そのときの反射波長λR (nm)が250以上、2000以下の範囲にないときは、やはり本発明の所期の効果を得ることは難しい。
【0022】
かかる(1)式と(2)式を満足することができる光学上の情報は、各樹脂層の厚み方向の積層むらを300%以下にすることにより得ることができ、また、該情報を面状に記録するには、印刷機などでインクを塗布、もしくはロールによるエンボス加工やフィルム溶融製膜時のキャスティング時の静電印加の出力・電圧電流を制御し、厚みの凹凸を付与することにより行うことができる。
【0023】
積層むら(%)は、限られた積層フィルムの幅方向中央部からサンプルを切り出し、熱可塑性樹脂A、B、それぞれについて、倍率10000〜40000倍で幅方向−厚み方向の断面TEM観察結果から最大層厚みおよび最小層厚みを定規で測長し、その差を平均層厚みで除し、100を乗じることにより求められる。より好ましくは、200%以下である。
【0024】
本発明の情報記録媒体を用いた情報処理システムのフローチャートを図1に示し、該システムの各構成部を以下に説明する。
【0025】
図1において、情報記録部11は、文字、絵柄、バーコードのように数値データが符号化された情報などを記録する装置であり、具体的には、グラビア方式、オフセット方式、レーザー方式、インクジェット方式、熱転写方式、感熱記録方式などの印刷機、もしくは、インクを用いずに情報記録媒体の表面にエンボス加工を施すことにより符号化された情報を記録することができるエンボス機などのことである。
【0026】
例えば、エンボス機は、エンボスロールを熱可塑性樹脂からなる情報記録媒体の表面に、ガラス転移温度以上融点以下で熱圧着することにより情報を記録することができるものである。他に、符号化された情報を記録する方法として、熱可塑性樹脂からなる情報記録媒体の溶融製膜工程中に情報記録をすることができる。例えば、情報記録媒体がフィルム状であり、公知のフィルム製造方法の製膜過程中に、厚み方向に凹凸加工を施すことで、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を記録することができる。
【0027】
すなわち、Tダイ口金などのスリットから吐出されたシートをキャスティングドラム上で冷却固化させる際に、シートとキャスティングドラムを密着させるための針状、ワイヤー、テープ状の静電印加装置の出力電圧・電流などを制御することができる静電印加装置を用いることにより、電圧・電流変化に同期した線上、ドット状の静電印加痕を情報として容易に熱可塑性樹脂のフィルム上に上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を記録することができる。
【0028】
また、キャストにエンボス加工を設置することによっても、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を情報を記録することができる。一方、印刷機を用いる場合、情報となるインクの色は、本発明の情報記録媒体とのコントラスを高く保つ観点から、黒色を用いることが好ましい。
【0029】
本発明にかかる情報記録媒体12は、上述の光学上の情報が書き込まれた媒体のことであり、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に積層した構造を有するものである。
【0030】
例えば、熱可塑性樹脂A、BおよびC成分の3種からなる3層積層の場合には、ABC、ACB、BACなどのいかなる順列の積層構造を有したものであってもよい。情報記録媒体の反射率を高くする観点から、A(BC)nA、A(BAC)nA(ここで、nは自然数であり、「(BC)n」と表記した場合、B層とC層の重なりを全体でn回繰返してなる積層構造(積層総数は2×n層)という意味である。)などの規則的な配列で多層積層されていることが好ましい。より具体的には、本発明の情報記録媒体は、製造コスト、光学設計上の簡便さの観点から、2種類の熱可塑性樹脂が、A(BA)nなどの交互に積層された構造を有する情報記録媒体を用いて形成されることが好ましい。
【0031】
本発明の情報記録媒体における該積層数は、本発明者らの各種知見によれば、反射率を高める観点から50層以上は必要てあり、50層以上であればよく、特に層数の上限限定はされないものであるが、好ましくは、100〜1000層の範囲である。
【0032】
また、本発明にかかる情報記録媒体の形状は、好ましくは、平面状、曲面状のものであり、特にそれらの平面状、曲面状のものなどに限定されるものではなく、面を有するものであればいかなる形状であってもよい。中では、加工性の観点から、シート状、もしくはフィルム状であることが好ましいものである。
【0033】
本発明の情報記録媒体に用いられる熱可塑性樹脂は、例えば、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が、透明性の観点から好ましいが、耐熱性、寸法安定性、コスト面からはポリエステルを用いることが好ましい。
【0034】
本発明の情報記録媒体を構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルである。
【0035】
ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。中でも好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸を用いることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0036】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0037】
本発明の情報記録媒体は、少なくとも、ポリエチレンテレフタレートからなる層とシクロヘキサンジメタノールの共重合したポリエステルからなる層とで構成されることが好ましい。より好ましくは、成形性および高反射率を達成する観点からポリエチレンテレフタレートからなる層と、シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体からなる層を含んでなることが好ましい。このポリエステルには、必要に応じて各種添加剤を添加してもよいものである。
【0038】
また、情報記録媒体がシートやフィルム状などの構造物の場合には、滑材としては、有機滑材および/または無機滑材を用いることもできる。該滑材の形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイトウ状粒子、鱗片状粒子などの形状粒子を使用することができる。また、該滑材の材質としては、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂または無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂または無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、また有機滑材としてステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、あるいはフマール酸アミドなどの各種アミド化合物を挙げることができる。
【0039】
また、本発明にかかる情報記録媒体は、寸法変化による誤認を防ぐ観点から150℃、30分間における熱収縮率(乾熱収縮率)が長手方向、幅方向とも3%以下であることが好ましい。長手方向とは、製造工程において製品が流れる方向のことであり、幅方向とはその直角方向のことである。熱寸法安定性が悪いと、外観上の問題および反射波長のシフトによる品質低下などを引き起こす観点から、より好ましくは、該熱収縮率が長手方向、幅方向とも2%以下である。
【0040】
多層積層されている情報記録媒体を製造する方法は、例えば、(AB)n・Aの積層フィルムの場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から供給され、それぞれの流路からのポリマーが、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサーを用いて積層された溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、−その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る方法などで製造して得ることができる。
【0041】
あるいは、さらに、該未延伸フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸する方法などで得ることもできる。その際の延伸の方法は、少なくとも一方向に延伸されていることが記録媒体としての支持体の腰の強さを付与する観点から好ましい。特に、公知の2軸延伸法で2軸延伸されていることが好ましい。
【0042】
公知の2軸延伸法とは、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、あるいは、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法で行えばよく、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行なってもよい。
【0043】
本発明によれば、延伸温度および延伸倍率は、特に限定されるものではなく、延伸が可能な条件であれば、いくらであっても良いが、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下であり、延伸倍率としては2倍以上5倍以下が好ましい。
【0044】
次いで、この延伸されたフィルムを熱処理する。この熱処理は、延伸温度より高く、融点より低い温度で行うのが一般的である。通常のポリエステルの場合、130℃ないし250℃の範囲で行うのが好ましいが、熱収縮率を抑える観点から200℃ないし240℃の範囲で行うのがより好ましい。さらに、フィルムの熱寸法安定性を付与するために、2〜10%程度の弛緩熱処理を施すことも好ましい。本発明の情報記録媒体の厚みは、使い勝手の良さ、および各層厚みと総積層数の兼ね合いから5μm〜200μmが好ましい。より好ましくは、10μm〜100μmの範囲である。
【0045】
本発明の情報記録媒体は、表裏において光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が互いに異なるものであることが好ましい。例えば、光を投受するための投光器および受光器を設置した側の情報記録媒体の面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。そうした場合、情報が記録された表面からの反射光を際立たせるために、裏面には黒色の層が隣接されていることが好ましい。これは、例えば、カーボンブラックなどの黒を裏面に塗布、あるいは最下層の樹脂層に添加、または、貼り合わせる支持体が黒色であることで達成される。または、前記した黒色の層の代わりに蛍光発光する層を用いてもよい。すなわち、光が入射する表面で、蛍光発光する励起エネルギーに相当する波長領域の光を反射させることによって裏面にある蛍光層まで光が届かないため、蛍光発光しない。しかしながら、裏面から励起光に相当する波長の光を当てると発光する。この違いにより、表裏で反射領域の分布が異なる情報認識が達成され、表裏が簡単に判断できるものとなる。
【0046】
本発明にかかる情報記録媒体12からの反射光は干渉反射であることが必要である。干渉反射とは、異なる媒質、すなわち屈折率が異なる薄い層を多数重ね、その境の面の反射光が互いに干渉し、強め合う現象である。
【0047】
多層膜の反射の原理に関しての詳細は、「波動光学」p206−p236(岩波書店)(1971)に記載の通りである。例えば、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね、その界面で反射する光の波長λ(nm)は、入射光が面に垂直である場合、以下の(6)式で求められる。
2・(nA・dA+nB・dB)=nλ (nは、自然数)・・・式(6)
【0048】
ただし、熱可塑性樹脂A、Bの屈折率が、それぞれ、nA、nBであり、層厚みが、それぞれ、dA(nm)、dB(nm)である。
【0049】
この反射波長は、熱可塑性樹脂A、Bの選択、さらに、層厚みを調整することにより、任意に選択することができる。
【0050】
本発明にかかる情報記録媒体が樹脂である観点から、一般に各層の屈折率が1.4〜1.7の範囲にあるため、各層厚みが30〜650nmの範囲の値に設定された層が50層以上必要である。50層未満であると反射波長が出現しにくい観点から、好ましくは100層以上である。(6)式により調整された反射波長は、例えば、分光光度計で測定することができる。その測定結果を、図2に示す。
【0051】
実際に得られる反射波長は、多層膜の積層精度などによって多少変動するため、本発明の情報記録媒体からの反射波長とは、(6)式のnが1である一次の反射波長であり、分光光度計の測定によって得られる波長250〜2000nmの範囲における分光分布の最大反射率を示す波長のことである。図2においては、反射波長21のことである。
【0052】
また、反射波長における反射率は、正確に情報検出する観点から50%以上あることが必要である。より好ましくは、80%以上である。また、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅22は、正確に情報検出する観点から10nm〜200nmであることが好ましい。より好ましくは10nm〜100nmである。
【0053】
本発明の情報記録媒体は、検出角度10°における反射波長λ1と50°における反射波長λ2との関係が、下記(3)式を満足していることが好ましい。
150nm ≧ |λ1−λ2| ≧ 30nm ・・・・式(3)
【0054】
ここでの検出角度とは、図6に記載するように投光器62から入射角63で照射された光が情報記録媒体61で反射角65で反射され、受光器66で検出されるときの反射角のことである。すなわち、検出角度10°とは、投光器から入射角10°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことであり、また、検出角度50°とは、投光器から入射角50°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことである。そして、異なる検出角度である50°と10°での反射波長の変化が30nm以上であることが、情報の変化をより有効に検出して情報の再生がより正確に可能となるので好ましい。また、150nmよりも大きい値となる場合は、全波長にわたり反射率が高くなる傾向があるため、分光分布の形が変化して、情報として正確に認識することができなくなる場合があることから、好ましくない。|λ1−λ2|の値は、より好ましくは、50nm以上100nm以下である。
【0055】
また、|λ1−λ2|を30nm以上150nm以下とするには、その達成手段としては、例えば、本発明にかかる情報記録媒体が、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた情報記録媒体の場合、反射率を高めるという観点からA層とB層の屈折率差を0.02以上、積層数を50以上、かつ以下の(7)式を満足するようにA層の厚みdA(nm)とB層の厚みdB(nm)となるように調整すればよいものである。
−1.15×dA+120≦dB≦−1.04×dA+630・・・式(7)
【0056】
特に、情報記録媒体が公知の溶融製膜で製造される積層フィルムである場合は、A層の樹脂に対応する押出機AとB層の樹脂に対応する押出機Bによる樹脂吐出量およびその比、キャストドラムの速度、さらには、長手、幅方向の延伸により面倍率を調整することによって所望のA層とB層の厚みが得られる。
【0057】
さらに、本発明にかかる情報記録媒体からの検出角度10°における反射光のクロマティクネス指数a* 1、b* 1と検出角度50°における反射光のクロマティクネス指数a* 2、b* 2の関係が、以下の(4)式および/あるいは(5)式を満足することが好ましい。
|a* 1−a* 2| ≧ 10 ・・・・式(4)
|b* 1−b* 2| ≧ 10 ・・・・式(5)
ここでのクロマティクネス指数a* とb* は、JIS Z8729に規定されているL* a* b* 表示系の値のことである。
【0058】
a* とb* は、色相を表す値である。異なる2点での検出角度間のクロマティクネス指数a* 、b* の変化量のうち、どちらか一方が10未満であると色相の変化が微少なため、視覚での差が感知できず、偽造防止性の観点から好ましくない。より好ましくは、20以上であり、さらに好ましくは30以上である。また、その達成手段としては、例えば、本発明の情報記録媒体が、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた情報記録媒体の場合、反射率を高める観点からA層とB層の屈折率差を0.02以上、積層数を50以上、かつ以下の(8)式を満足するようにA層の厚みdA(nm)とB層の厚みdB(nm)となるように調整すればよい。
−1.15×dA+120≦dB≦−1.04×dA+260・・・・(8)式
【0059】
本発明にかかる情報処理媒体によれば、検出角度が同一であって情報記録媒体上の該分布内に異なる反射波長を有する領域が存在する場合は、任意の2領域間の反射波長IとIIの差は、情報として認識させる観点から30nm以上に調整された情報記録媒体を用いていることが好ましい。30nm未満であると分布内の反射特性の差を認識することが難しくなってくるからである。
【0060】
一方、上限は反射特性の差異を検出しやすいため、いくらでもよい。また、反射波長の数が多すぎると情報検出が複雑化し、誤認する観点から、好ましい反射波長の数は、2個すなわち2領域分である。1つの反射波長に着目したときの該分布の領域の形状は、文字、数字、2次元模様、絵柄、幾何学模様など如何なるものであってもよい。また、その達成手段としては、例えば、本発明の情報記録媒体が、2種のポリエステル樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた構成からなるフィルムである場合は、その溶融製膜のキャスト工程の静電印加電圧や電流を変化させることで得られる。
【0061】
すなわち、Tダイのスリットから吐出した溶融シートをキャストドラム上で冷却固化する際に、シートをドラム上にピンニングするための針状、ワイヤーもしくはテープ状の静電印加装置の電圧を少なくとも3kV以上変化させることによって、同一検出角で様々な反射波長の領域を有するフィルム状の情報記録媒体を得ることができる。ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートからなる場合は、静電印加電圧の設定電圧を5kV〜10kVの間で変化させることが好ましい。5kv未満であると、本来のピニング効果がなく、10kV以上では放電し、フィルム破れに繋がるためである。
【0062】
また、本発明の情報記録媒体は、後工程のエンボス加工でも付与することができる。すなわち、エンボスロールの温度を熱可塑性樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度で、さらにニップロール圧力を0.2MPa以上10MPaに調整し、エンボスロールのパターンを本発明の情報記録媒体に刻印することにより得ることができる。さらに、反射表面にコロナ処理を施し、ポリビニルアルコールなどのインク吸収層を形成し、インクジェットプリンターを用いて、所望のパターンを本発明の情報記録媒体上に印刷することにより、反射波長の有する領域とインク部は反射波長を有しない領域ができるため、実質的に反射波長が30nm以上異なる領域を有する情報記録媒体が得られる。
【0063】
本発明の情報記録媒体12からの反射波長および/または反射率の分布は、偽造防止効果がある符号化された情報、さらに意匠性を兼ね備える観点から、規則的であることが好ましい。例えば、円、三角形、四角形、六角形、長方形などの図形が幾何学的に配列した模様、さらにこれらを組み合わせたものが好ましい。
【0064】
特に、図3に示すように、反射波長の分布が、反射波長Iの領域31と反射波長IIの領域32が周期性を有するストライプ状の分布を形成していることが好ましい。ここで、周期性を有するとは、ある領域一つに着目したときに、その領域が一定の距離間隔で情報記録媒体上に繰り返し配列していることである。また、ストライプ状であるとは、情報記録媒体である熱可塑性樹脂フィルムの長手方向あるいは幅方向に、反射波長が同一の領域が縞状に分布を形成していることである。
【0065】
図4に、図3のストライプ状の模様を垂直に横切る線上で反射波長IIの反射率を検出した場合の位置42とその反射率41の関係を示す。この反射波長Iの領域とIIの領域を交互に並べたストライブ状の分布は、本発明の溶融製膜では、静電印加装置の出力電圧を、時間に対してサイン波、矩形波、パルス波状に静電印加制御することにより、電圧変化に同期したストライプ状の周期的な反射波長および/または反射率の分布を有した情報記録媒体である熱可塑性樹脂フィルムを作製することができる。
【0066】
そのストライプ状の分布間距離は、生産性及び情報として正確な光検出を実現するという観点から、好ましくは1mm以上200mm以下、より好ましくは1mm以上100mm以下に調整された情報記録媒体であることが好ましい。ストライプ状の分布間距離とは、その周期方向において隣合う領域間の距離のことである。具体的には、2つの領域の中心点間距離のことである。
【0067】
その達成手段としては、キャスティングドラム速度に対する静電印加周波数を調整することで1mm以上200mm以下のストライプ状の分布間距離が得られる。例えば、キャスト速度が、5m/分の場合は、周波数を0.1〜100Hzに設定することによって達される。ここでの分布間距離は、反射波長が可視光にある場合は、色の変化から定規などにより測長することができる。異なる間隔が複数存在する場合は、その最小値をストライプ状の分布間距離とする。他に、情報記録媒体に周期的な凹凸の情報が付与された場合は、厚みむらのパターンを解析することによってそのストライプ状の分布間距離を求めることができる。厚みを連続的に測定し、そこで得られたデータのフーリエ変換(以下、「FFT処理」と称する)を行って評価する方法が好ましく用いられる。FFT処理については、例えば、「技術者の数学1」初版(共立出版株式会社 共立全書516)などにフーリエ変換の理論について、「光工学」初版(共立出版株式会社)などにFFT処理の手法について記載があるとおりである。この際、規則的な周期が存在すれば、その周期に対応する周波数スペクトルのピークが得られる。測定条件から逆算して、その周期である分布間距離が求められる。
【0068】
この規則性のある厚みむら、すなわち、厚み変化率R(R=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100(%))の好ましい範囲は、5〜200%である。生産性上の巻き姿の観点から厚み変化率のより好ましい範囲としては、好ましくは10〜200%、より好ましくは10〜100%である。また、その厚みむらの調整方法としては、通常の製膜方法において、最低でもフィルム長手方向の厚みむらは5%は生じるため、その調整は必要ないが、その上限は、電圧の変化量とドラフト比=(ダイのリップ間隙)/(キャストドラム上のフィルム厚み)を調整することで調整できる。本発明においては、電圧の変化量は5kV、ドラフト比は1以上20未満で達成される。
【0069】
本発明の情報記録媒体によれば、上記に説明した反射波長および/または反射率の分布が情報認識されることが必要である。情報検出部13で、情報を読みとるために情報記録媒体12からの反射光を検出する。
【0070】
情報検出部は、情報が単に偽造防止効果を持たせた真偽判定が目的である場合は、人間の視覚に相当するが、数値データなどが符号化した情報の場合は、バーコードリーダーのように面内の光量の分布(反射率の分布)を光学的に線状もしくは面状に検出し、符号化された情報として捉えることができる光学センサーであることが好ましい。例えば、記録情報が、バーコードのようなストライプ状の模様の場合は、線状で情報認識がされれば良いが、2次元バーコードのような絵柄の場合は、面状で光学的に検出する。通常、バーコード情報を反射率の分布として検出するためには、基材とバーコード部での反射率の差は、30%以上あることが好ましい。光検出するのに用いられる光の波長は、光源の汎用性の観点から紫外線〜赤外線の範囲であることが主流である。そのため、本発明の情報記録媒体の最大反射率を示す反射波長は250nm〜2000nmの範囲にあるように調整することが必要である。また、投光する光の種類は、情報検出部が視覚である場合は、太陽光、A光、C光、D65光などの可視の波長帯域が広いものを用いることによって、色合いを持たせた情報として認識できるため好ましい。一方、数値データなどが符号化した情報の場合は、検出光が単色光を用いて情報認識されることが好ましい。単色とは、特定波長のみの光であり、その代表的な例がレーザーなどである。しかし、ここでは指向性が強くない公知の干渉フィルターなどで得られる単色光でも良い。また、発振波長帯域が狭い発光ダイオードや半導体、近赤外光、He−Neレーザーなどを用いることにより効率良く検出することができる。
【0071】
本発明の情報記録媒体は、情報検出部13で情報認識する際に、偽造防止性をもたせる観点から、検出角度に依存した情報記録媒体である。以下にその態様を説明する。例えば、情報記録媒体52の法線ベクトルと検出器51の検出方向となす検出角度が0度である場合を図5に、検出器61の検出方向となす検出角度が45°である場合を図6に示す。
【0072】
なお、図5の投光器は、検出器と同じ位置にあり、図6の投光器62は、法線ベクトルを挟んで受光器61の位置と対称の関係にある。情報検出部が視覚である場合は、情報記録媒体上の検出角度を図5から図6に変化させることにより、反射波長が低波長側へシフトするために反射光の色相変化が生じ、通常のコピー機では、複写印刷不可能な偽造防止効果が得られる。
【0073】
また、バーコードのように数値データなどが符号化した情報の場合は、例えば、図3において、予め情報記録の領域IIの検出角度0°の反射波長IIと一致するように、投光する光源側のピーク波長(例えば、650nm)を揃えておくことにより、図5の配置の場合は、図7に示したコントラストの高い情報としての反射特性71が得られるが、図6の場合は、情報記録媒体からの反射波長が異なるため反射率が低下し、コントラストの低い情報としての反射特性81が得られることとなる。この違いは、従来の近紫外〜近赤外領域までの全ての光を均一に反射する紙などの白色支持体を用いた情報記録媒体には見られない特性であるため、情報自体に偽造防止効果があることが理解される。
【0074】
また、本発明の情報記録媒体を用いた情報処理方法によれば、入射光に直線偏光を用いて情報検出部13で情報認識する際に、偏光方向に依存した情報記録媒体であることが好ましい。図9に情報記録媒体91の長手方向94と平行な方向の直線偏光93を入射したときと、直角な方向の直線偏光92を入射したときの関係図を示す。この直線偏光93と92により得られる分光特性が異なるため、すなわち、反射波長および/または反射率が異なることにより偽造防止性を兼ね備えた真偽判定が可能となる。この直線偏光を用いた本発明の情報処理媒体の場合は、MOR(Maximum Oriented Ratio)値が1.5以上3.0未満である面内屈折率が異なる情報記録媒体であることが好ましい。MOR値とは、マイクロ波透過型分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)である。従来の蒸着法により得られる誘電体の多層膜は、各層の屈折率が等方的であるため、直線偏光93と92により得られる分光反射特性は同じであるが、本発明の情報記録媒体は、熱可塑性樹脂からなるフィルムであるため、公知の逐次二軸延伸法において、長手方向と幅方向の延伸倍率比を変えることにより、各層の長手方向の屈折率と幅方向の屈折率を異ならせしめ、偏光方向に依存した反射波長および/または反射率を有する情報記録媒体が得られることとなる。例えば、A層とB層の異なる2種の熱可塑性樹脂が交互に積層された情報記録媒体の熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレート、熱可塑性樹脂Bがシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルの場合、延伸温度90℃で、長手方向もしくは幅方向のどちらか一方を3倍以上延伸する一軸延伸フィルムを作製し、150℃以上の熱処理温度で直線偏光を用いた際の情報記録媒体を作製することができる。
【0075】
この異方性を有する情報記録媒体を用いることにより、検出角度だけでなく、偏光方向にも依存した情報であるため、真偽判定ならびに偽造防止効果がある情報記録媒体12となる。また、情報検出部13が人間の視覚である場合は、色の違いもしくは反射率が異なるため、真偽判定ならびに偽造防止効果をもつ。
【0076】
したがって、本発明の情報記録媒体が等方的なものである場合は、偏光方向により反射波長および/または反射率が異ならないため、光源は、直線偏光を用いなくてもよく、円偏光、楕円偏非偏光であってもよい。等方的な情報処理媒体の好ましいMOR値は、1.0〜1.3程度である。
【0077】
本発明の情報記録媒体は、その記録された情報が、既知の情報と照合されて使用されて、その偽造防止機能や真正品の識別機能などを発揮することができる。ここでの既知の情報とは、照合を目視で実施するならば、検出角度に依存した色相を有した文字、絵柄などを象った反射光分布で、視覚によって記憶される情報のことであり、照合を実施するものがコンピュータであれば、予めエンコードされた情報に対応した既存のデータテーブルなどのことである。
【0078】
情報検出部13で得られたエンコードされた情報を、外部記憶装置である既存データテーブル14内のデータと照合して、コンピューターのCPUに相当する情報処理部15での論理演算によりデコードし、ディスプレイなどの情報出力部16から結果表示を行う。
例えば、既存データテーブルとしては、JAN(EAN、UPC)、ITF、CODE39、NW−7(CODABAR)、CODE128などに対応するバーコード表記などであるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
すなわち、文字、図形、絵柄、バーコードに類似した線のパターンなどでも、適宜、記録する情報は、用途により選択されれば良い。情報処理部15でデコードされた、すなわち数値化された情報は、もの固有の情報であることが好ましい。例えば、本発明にかかる情報記録媒体が、物流品に付随したラベル、タグとして用いられる場合は、日付、価格、重量、製造番号などの固有情報である。
【0080】
また、認証判定として用いられる場合は、認証番号であり、外部記憶装置などに格納されている情報と照合することにより認証判定を行うことができる。
【0081】
本発明の情報記録媒体を学生カードなどに利用された場合の例を図10に示す。基材である学生カード101上に学生の所属情報が記録された情報記録媒体102が部分的に貼り合わされて利用されることにより、偽造防止効果がある情報自体を記録・検出できる情報記録媒体を提供できる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明にかかる情報記録媒体について、実施例に用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
【0083】
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は、次の通りである。
【0084】
(1)厚み変化率
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメータ「K306C」を用い、フィルムの長手方向に30mm幅、2m長にサンプリングしたフィルムを0.1sのサンプリング刻み、フィルム走査速度1.5m/分で連続的に厚みを測定した。長さ2m内の厚みの最大値、厚みの最小値、および平均厚みを求め、以下の(9)式を用いて厚み変化率を求めた。但し、平均厚みは、サンプリング数回分の厚み測定結果の平均値である。この操作を5回繰り返し、5回分の厚み変化率の平均値を採用した。
厚み変化率(%)=(厚みの最大値−厚みの最小値)/平均厚み・・・・(9)式
【0085】
(2)ストライプ状の分布間距離の測定方法
フィルムの裏面をマジックインキ(登録商標)で黒く塗り、裏面からの反射光を取り除く。次に、フィルム長手方向において異なる2色が交互に並んだストライプ模様のうち、隣り合う縞の中心点間距離を定規を用いて測長した。この操作を5回繰り返し、その平均値をストライプ状の分布間距離とした。
【0086】
(3)反射波長および反射率
ストライプ状の模様がないサンプルの場合は、フィルム幅方向中央部から幅方向4cm×長手方向4cmにフィルムを切り出し、測定波長250〜2000nm、バンドパス5nm/servo、走査速度120nm/分、積分球ユニットの条件で、分光光度計U−3410((株)日立製作所)を用いて反射光の分光測定を行った。波長と反射率の関係のグラフから、最大反射率を示す波長を反射波長とした。但し、反射率は、標準白色板である硫酸バリウムを用いたときの反射率を100%として校正した。異なる場所から切り出したサンプルにおいても同様の操作をし、5個のサンプルの反射光の分光分布を測定した。反射波長、反射率は、これらの平均値を採用した。
【0087】
また、ストライプ状の模様があるサンプルの場合は、フィルム幅方向20mm×長手方向10mm角でフィルム幅方向中央部からサンプルを切り出し、これをサンプル(1)とした。さらに、フィルム長手方向である周期方向に5mmずらして切り出したものをサンプル(2)とした。この操作を、順次繰り返して10個のサンプルを得た。これらのサンプル全てを、分光光度計U−3410((株)日立製作所)を用いて、平行光線モードでの透過率(%)を測定した。次に、フィルムの光吸収がないものとして100%から透過率を引くことにより反射率の分光分布を求めた。但し、入射光は、サンプル面に垂直とした。
【0088】
実施例4においては、入射光に直線偏光を用いるため、サンプル測定前に入射光源側に偏光板を設置した状態でベースライン補正を行った。次に、サンプルの長手方向を地面に垂直および平行に設置して反射率の分光分布の測定を行った。サンプルサイズ、測定条件においては、ストライプ状の模様のないサンプルと同様にし、反射率、反射波長においても、5個のサンプルの平均値を採用した。
【0089】
また、ピーク半値幅は、これらの得られた反射率の分光分布の最大反射率の1/2に相当する反射率での波長幅を読みとって求めた。ピーク半値幅においても5個のサンプルの平均値を採用した。
【0090】
(4)変角分光反射スペクトル
フィルム幅方向中央部から、幅方向5cm×長手方向12cmのサイズにフィルムを切り出し、片面を黒のマジックインキ(登録商標)で塗りつぶした。次に、変角分光測色システムGCMS−3B(村上色彩技術研究所(株))を用いて測定波長380nm〜720nm、測定波長間隔10nm刻み、正反射モードで入射・受光角(検出角)が10°、50°の反射光における変角分光分布の測定を行った。また、得られた反射光の分光分布スペクトルから、付属のソフトにより色空間表示a*、b* を算出した。反射強度の白色標準板としては、付属の硫酸バリウムを用いた。この測定結果から検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|、|a*1−a* 2|、|b* 1−b* 2|の変化量を求めた。但し、測定回数は1回で行った。
【0091】
(5)積層数、積層厚み
積層フィルムの層構造である積層数、積層厚みは、フィルムの断面観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000〜100000倍に拡大観察し、断面写真を撮影し、積層数および各層厚みを測定した。透過型電子顕微鏡で観察しにくい場合、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
【0092】
但し、熱可塑性樹脂A、Bが交互に繰り返されたA(BA)n構造の場合、A層の平均厚みdA(nm)およびB層dB(nm)の平均厚みは、(3)の評価方法で得られた積層フィルムの反射波長から(6)式を用いて求めた。(但し、A層であるポリエチレンテレフタレートの屈折率を1.65、B層である共重合ポリエステルの屈折率を1.58、A層の平均厚みdA(nm)とB層の平均厚みdB(nm)の積層比の関係は、押出機Aと押出機Bの吐出量比を採用した。)また、反射波長が得られない場合は、透過型電子顕微鏡による断面観察結果である写真から、全ての各層の厚みを定規により拡大率を考慮して測長し、A層およびB層、それぞれについての平均層厚みを求めた。
【0093】
(6)バーコードの印刷
JANコードの規格に相当するパターンをゴムローラーのロール部の表面に凹凸に型どり、黒の油性インクをそのゴムロール部に塗布し、得られた積層フィルムの表面にバーコードパターンを刻印した。
【0094】
(7)バーコード検出
バーコード検出には、波長650nm、最大出力1.0m、パルス巾1.0ms、Class2のキーエンス(株)製レーザー式ハディバーコードリーダーBL−200UBを用いた。
【0095】
(8)熱収縮率(乾熱収縮率):
フィルム幅方向における中央部から、長手方向、幅方向、それぞれ、1×10cmのサンプルを切り出し、ギアオーブン(タバイエスペック(株)製GHPS−222)で150℃、10分間の条件で熱処理した。その前後におけるフィルム長手方向と幅方向の長さをそれぞれ万能投影機(77−7ニコン(株)製E04)で正確に測長することにより、熱収縮率を求めた。なお、長手方向、幅方向それぞれについて、5回測定し、その平均値を採用した。
【0096】
(9)MOR値:
フィルム幅方向の中央部分を10×10cmの寸法で切り出したものを測定サンプルとし、マイクロ波分子配向計を用いてMOR値を測定した。マイクロ波分子配向計としては、KSシステムズ(株)製(現 王子計測機器(株))の分子配向計MOA−2001(周波数4GHz)を用いた。なお、この測定を異なるサンプルで5回実施し、その平均値をMOR値として採用した。
【0097】
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また熱可塑性樹脂BとしてPET/I(テレフタレート成分80mol%/イソフタレート成分20mol%)の共重合体を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0098】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが101層、熱可塑性樹脂Bが100層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=1/1になるようにした。このようにして得られた計201層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフト比が10でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0099】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、3.5倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、厚み14.2μm、反射波長526nm、反射率100%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は75nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=dB=81nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.2%、0.4%であった。
【0100】
変角分光分布の測定結果を図11に示す。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は60nmであり、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、1041、648であった。なお、MOR値は、1.06であった。
【0101】
この積層フィルムの上に、JANコードのバーコード印刷を行った。バーコード印刷を行ったインキ塗布領域の波長526nmにおける反射率は2%であり、他の領域は100%のままであったため、反射率の分布が形成されていることを確認した。この結果から、反射光の色相の変化、さらには単色光を用いたときの検出角度に依存した情報記録となるため、複写機などで印刷可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0102】
実施例2
静電印加の条件は、高圧電源発生装置とファンクションジェネレーターを用い、中心電圧6.5kV、電圧変動幅3kV、周波数25Hzのサイン波を周期的に印加した以外は、実施例1と同様にして、厚み変化率20.2%、ストライプ状の分布間距離30mmの周期的な厚み変化を有した積層フィルムを製膜した。
【0103】
この情報が記録された積層フィルムは、図3と類似した一定間隔のストライプ状の模様をした情報記録媒体であり、反射光のスペクトルにおける反射波長および反射率は、フィルムの長手方向において、凹部の中心が526nmおよび85%、凸部の中心が578nmおよび80%であった。情報記録媒体内における周期的な凹凸部の反射波長の差が、52nmであることを確認した。実施例1に示したように検出角に依存した色相変化を有しており、かつ偽造防止効果がある情報記録媒体であることを確認した。
【0104】
次に、情報認識に必要な反射率の周期性を確認するために、波長570nmに着目し、フィルム長手方向の1周期分の位置と反射率の関係を調べた。その結果を図12に示す。図から反射率50%を越えるピークが、ストライプ状の分布間距離30mmの周期性が確認できた。色相の角度依存性、さらにはバーコード情報として認識可能な反射波長および反射率の分布を有していることを確認できたことから、情報自体に偽造防止効果がある情報記録媒体が作製された。
【0105】
実施例3
静電印加の条件は、高圧電源発生装置とファンクションジェネレーターを用い、中心電圧6.5kV、電圧変動幅3kV、周波数1000Hzのサイン波を周期的に印加した以外は、実施例2と同様にして、厚み変化率15.2%、ストライプ状の分布間距離0.1mm以下の周期的な厚み変化を有した積層フィルムを製膜した。この情報が記録された積層フィルムは、図3と類似した一定間隔のストライプ状の模様をしたコントラストが得られなかった。フィルム長手方向における反射波長および反射率は、凹凸部で差が見られず、576nmおよび80%であった。
【0106】
この積層フィルムの上に、JANコードのバーコード印刷を行った。バーコード印刷を行ったインキ塗布領域の波長526nmにおける反射率は2%であり、他の領域は80%のままであったため、反射率の分布が形成できていることを確認した。実施例1に示したように検出角に依存した色相変化を有しており、そのため偽造防止効果がある情報記録媒体であることは確認したが、反射波長の分布は記録できていないことが確認された。
【0107】
実施例4
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また、熱可塑性樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合した共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0108】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが101層、熱可塑性樹脂Bが100層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=2/1になるようにした。このようにして得られた計201層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフト比が10でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0109】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、3.5倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、厚み18.2μm、反射波長653nm、反射率96%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は80nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=134nm、dB=67nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.5%、0.9%であった。変角分光分布の測定結果を図13に示す。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は80nmであり、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、435、15であった。
【0110】
なお、MOR値は、1.062であった。この結果から、反射光の色相の変化、さらには、単色光を用いたときに検出角度に依存した情報認識が可能となるため複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。さらに、この見る角度により色相が変化する積層フィルムに、黒のJANコードのバーコード印刷を行った。印刷面の反対側は、黒インキで全面塗りつぶした。この記録情報を予め照合モードで登録していたバーコードリーダーを用いて検出角度0°で検出を行ったところ、照合検出することができた。さらに、検出角度40°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。反射光の色相の変化、さらには、単色光を用いたときの検出角度に依存した情報認識が可能となるため複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0111】
また、フィルム幅方向と平行および直角に偏光方向を配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。偏光方向が幅方向と平行配置と直角配置の反射波長および反射率は、それぞれ、98%と652nm、92%と648nmであった。反射波長の差は、4nmであり、その反射率の差は、6%であった。入射光の偏光方向により情報認識するのには、十分に識別可能な反射波長および/または反射率の変化でないことを確認した。
【0112】
実施例5
実施例4と同様にして、未延伸フィルムを作製し、次いで90℃、延伸倍率4倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き、横延伸することなく、230℃で熱処理を施し、厚み20μmのフィルムを得た。偏光板の偏光方向と得られたフィルムの長手方向と平行に配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。
【0113】
次いで、フィルム幅方向と平行に偏光方向を配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。フィルム長手方向配置と幅方向配置の反射波長および反射率は、それぞれ、98%と718nm、27%と682nmであった。反射波長の差は、36nmであり、その反射率の差は、71%であった。情報認識するのに、十分に識別可能な反射波長および/または反射率の変化であることを確認した。なお、このフィルムのMOR値は2.2であった。
【0114】
比較例1
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また熱可塑性樹脂Bとしてポリブチレンテレフタレートを用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0115】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させ、さらに流路形状がスクエアーのスタティックミキサーにより熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが801層、熱可塑性樹脂Bが800層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=1/1になるようにした。このようにして得られた計1601層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフトが17でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0116】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き95℃、3.4倍横延伸した後、235℃で熱処理を施し、厚み13μm、反射波長なしのブロード状に反射率約6%の積層フィルムを得た。A,B層それぞれの厚みは、TEM断面観察から800層以上がdA、dB=10〜30nmであり、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.4%、0.5%であった。検出角度10°と50°間の反射波長の変化はなく、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、2および1であった。なお、このフィルムのMOR値は、1.04であった。
【0117】
この結果から、十分な反射率が得られず、かつ反射光の色相が変化していないため、情報が記録されても、情報自体に偽造防止効果がもたせられないことが確認できた。
【0118】
比較例2
実施例1のフィードブロックを33層に変えて、ドラフト比100で厚み3.4μm、反射波長642nm、反射率40%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は205nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=100nm、dB=100nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.9%、1.2%であった。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は29nmであり、|a* 1−a* 2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、337、9であった。なお、MOR値は、1.06であった。反射光の色相の変化が見られたので、この見る角度により色相が変化する積層フィルムに、黒のJANコードのバーコード印刷を行った。印刷面の反対側は、黒インキで全面塗りつぶした。この記録情報を予め照合モードで登録していたバーコードリーダーを用いて検出角度0°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。さらに、検出角度40°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。反射光の色相の変化はあるが、単色光を用いたときに情報認識ができない複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0119】
比較例3
比較例2の押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=10/1になるようにして、厚み93μm、反射波長なし、ブロード状に反射率5%、の積層フィルムを得た。断面TEM観察からA、B層それぞれの平均厚みは、dA=500nm、dB=5000nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、0.8%、0.5%であった。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|はなく、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、1未満であった。なお、MOR値は、1.06であった。
【0120】
この結果から、十分な反射率が得られず、かつ反射光の色相が変化していないため、情報が記録されても、情報自体に偽造防止効果がもたせられないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、情報記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、真偽を判定を必要とする有価証券類、バーコード情報の記録が必要とされるクレジットカード、IDカード、物流用品のラベル、タグなど、その他、バーコードが利用されているものでセキュリティー性が必要とされるもの全般に好適な情報記録媒体に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明にかかる情報記録媒体を情報処理に用いるときの情報処理システムのフローチャート図である。
【図2】図2は、本発明にかかる情報記録媒体の分光分布の測定結果の1例を示した線図である。
【図3】図3は、ストライプ状の情報が記録された本発明にかかる情報記録媒体の例を示したものである。
【図4】図4は、図3のストライプ状の模様を垂直に横切る線上で反射波長IIの反射率を検出した場合の位置とその反射率の関係を示した線図である。
【図5】図5は、図3のストライプ状の情報が記録された情報記録媒体から検出角0°で光検出している図を示したものである。
【図6】図6は、図3のストライプ状の情報が記録された情報記録媒体から検出角45°で光検出している図を示したものである。
【図7】図7は、図5において得られる位置と反射率の関係を示した線図である。
【図8】図8は、図6において得られる位置と反射率の関係を示した線図である。
【図9】図9は、光検出方向が直角の関係にある模式図を示したものである。
【図10】図10は、本発明にかかる情報記録媒体が学生証に利用された例を示したものである。
【図11】図11は、実施例1の情報記録媒体からの反射光における変角分光分布例を示したものである。
【図12】図12は、反射波長570nmにおける情報記録媒体から検出された位置と反射率の関係例を示したものである。
【図13】図13は、実施例3の情報記録媒体からの反射光における変角分光分布の結果を示したものである。
【符号の説明】
【0123】
11:情報記録装置
12:情報記録媒体
13:情報検出部
14:既存データテーブル
15:情報処理部
16:情報出力部
21:反射波長
22:ピーク半値幅
31:反射波長Iの領域
32:反射波長IIの領域
41:反射率
42:測定位置
43:符号化された反射率分布
51:検出角0°の検出器
52:情報記録媒体
53:黒色の層
61:情報記録媒体
62:投光器
63:入射角
64:情報記録媒体の法線
65:反射角(検出角)
66:受光器
71:検出角0°の反射率分布
81:検出角45°の反射率分布
91:情報記録媒体
92:長手方向に直角な偏光方向
93:長手方向と平行な偏光方向
94:情報記録媒体の長手方向
101:支持体である学生カード
102:ストライプ状の情報が記録された情報記録媒体
111:入射・検出角10°における反射光の分光分布
112:入射・検出角30°における反射光の分光分布
113:入射・検出角50°における反射光の分光分布
114:入射・検出角70°における反射光の分光分布
121:検出角0°の反射率分布
131:入射・検出角10°における反射光の分光分布
132:入射・検出角30°における反射光の分光分布
133:入射・検出角50°における反射光の分光分布
134:入射・検出角70°における反射光の分光分布
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体に関し、さらに詳しくは、別物品(代表的には、例えば、クレジットカード、IDカード等の各種カード類、商品券、ギフト券、シールなど)に組み込まれて、該別物品が第三者などにより偽造されることを防止するのに有効に機能する、あるいは、該別物品が真正品か偽造品であるかを簡単かつ正確に検査して判断することを可能にする光学上の情報が記録された情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、数字情報、文字によって表現された情報と等価な情報をバーコード化したものを同一紙面上等に印刷し、情報を電子メディアで使う必要が生じたら、該必要情報に対応するバーコード情報をバーコードリーダーを用いて、バーコードが印刷された部分の紙面等から反射される光の強度分布を、符号化された情報として捉えて読み込み、その情報を照合して電子メディアにより出力をする情報記録媒体、情報提供方法あるいはその装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、これらの情報提供に用いられる情報記録媒体は、暗号化されたバーコードが印刷された紙が代表的なものであったために、印刷などの複製・生産性に優れる反面、2次元平面内に情報が限定されていたために有価証券類に用いられたときには、セキュリティー面にまだ不十分な点があり、偽造防止性の点でまだ改善の余地があった。
【0004】
一方、偽造防止のための技術としては、従来から透かし技術、凹凸構造技術(特許文献3、特許文献4)、また、近年では、メタリズム技術などがある。メタリズムとは、分光分布特性が異なっているにもかかわらず、観察条件によって視覚的に同じ色に見えることをいう。例えば、太陽光などの光と所望のフィルターや分光分布をもった光源で見るのとでは、彩度、明度、色相が異なるメタリックインキを用いた偽造防止技術が提案されている(特許文献5)。
【0005】
その他、見る角度により色が異なる多層膜のカラーシフト効果を利用していて真偽判定が容易であるという偽造防止媒体なども提案されている(特許文献6、特許文献7)。
【0006】
このような偽造防止技術は、いずれも、複数の複雑な工程を必要とするためにコスト面で高く、また、作製上の問題から利用領域が限られており、基材上で部分(スレッド)的な利用のされ方が多く、特殊な用途のみに用いられており、汎用性に乏しかった。
【0007】
そのため、例えば、バーコード化情報レベルなどの識別情報を印刷するに止まり、偽造防止効果・偽造防止性のある情報自体を提供する意味合いのものは乏しかった。
【0008】
しかし、近年のますますの情報化された社会でのセキュリティー上の管理は厳しく、情報自体の偽造防止効果の需要が高まってきている。
【0009】
例えば、赤外波長域で発光する赤外蛍光体を用いた透明インク組成物を使用して、肉眼では見えない文字、図形、バ―コ―ドなどの赤外発光層を印刷し、このコ―ド情報を光学的読み取り装置によって得ることが知られている。(特許文献8、特許文献9)。
【0010】
しかしながら、赤外蛍光体は、特殊なインクであり、かつ特殊な光学装置でなければ読み取りが困難なため高コストとなるし汎用性に乏しい。また、基材が赤外光を反射するものに限定されるという不都合も有していた。
【特許文献1】特開平7−121673号公報
【特許文献2】特開2001−344588号公報
【特許文献3】特開2003−281596号公報
【特許文献4】特開2003−141594号公報
【特許文献5】特許第1331101号公報
【特許文献6】特開平11−224050号公報
【特許文献7】特開平8−118529号公報
【特許文献8】特公昭61−18231号公報
【特許文献9】特開昭53−9600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる事情下に鑑み、本発明の目的は、特殊な蛍光体を用いなくとも、かつ特殊な光学装置を使用しなくとも、偽造されることを防止するのに有効に機能する、あるいは真正品か偽造品であるかを簡単・正確に検査して判断することを可能にする光学上の情報が記録された情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【0013】
すなわち、本発明の情報記録媒体は、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とするものである。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出角度さらには入射光の偏光に依存した反射波長および/または反射率を有した積層構造体、代表的には積層フィルムを用いるものであるがため、エンコードされた情報などをその面状に印刷もしくは、そのフィルム厚みを周期的に変化させたりすることによって記録できる。
【0015】
そのため、特殊な蛍光体、かつ特殊な光学装置を用いなくとも、その面状の反射波長および/または反射率の分布が位置および検出角度に依存しているため、情報自体に偽造防止効果、真正品の判別機能を持たせた非常にセキュリティー性が強い情報記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の情報記録媒体について詳細に説明する。
【0017】
本発明の情報記録媒体は、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂が厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数で50層以上積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体である。該積層構造体は、代表的には、積層フィルムという形で具現化される。
【0018】
そして、該情報記録媒体には、光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されているものである。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【0019】
本発明の情報記録媒体は、該情報記録媒体からの光干渉によって生じる反射光の反射波長と反射率の関係が、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されているため、すなわち、λR (nm)が250以上、2000以下の範囲内において、その最大反射率が50%以上であるものが存在するために、その面状に印刷もしくは、その厚みを周期的に変化させたりすることによってエンコードされた情報を記録すると、位置、検出角度もしくは入射光の偏光に依存した反射波長および/または反射率の分布が面状に形成され、目視認識もしくは光学装置で検出可能であり、さらには既知の情報と照合できるものである。また、その面状の反射波長および反射率の分布が位置および検出角度に依存しているため、情報自体に偽造防止効果を持たせた非常にセキュリティー性が強い情報記録媒体となる。
【0020】
ここで、反射波長および反射率の分布とは、情報記録媒体上の面状に反射波長の分布と反射率の分布が同時に存在するものである。反射波長または反射率の分布とは、どちらか一方の分布が存在するものである。本発明において、「反射波長の分布が形成されている」とは、情報記録部となる装置を用いて情報記録媒体上に形成された異なる反射波長を有する2つ以上の領域が混在することである。さらに望ましくは、該領域毎の反射波長において、情報をより正確に検出する観点から、その最大値と最小値の差は30nm以上あることが好ましい。また、本発明において、「反射率の分布が形成されている」とは、情報記録部となる装置を用いて情報記録媒体上に形成された異なる反射率を有する2つ以上の領域が、混在することである。さらに望ましくは、該領域のうち少なくとも1つは存在する反射波長において、情報をより正確に検出する観点から、領域間の反射率の差(最大値と最小値の差)が30%以上あることが好ましい。反射波長の分布がある例としては、例えば、面状に反射光の色が異なる領域が存在する場合、また、反射率の分布がある例としては、例えば、面状に白黒の領域が存在する場合などである。これらは、領域毎に分光反射分布を測定することによって厳密に判断できる。このような分布としての記録情報は、特殊な蛍光体、かつ特殊な光学装置を用いなくとも、コピー印刷機などによる複写が不可能である偽造防止効果を奏するものである。
【0021】
たとえ、λR が(1)式を満足していても、R値が50%未満のときは、目視認識もしくは光学装置で検出が不可能であり、さらには、既知の情報と照合不可能であり、本発明の所期の効果を得ることは難しく、また、たとえR値が50%以上であるとしても、そのときの反射波長λR (nm)が250以上、2000以下の範囲にないときは、やはり本発明の所期の効果を得ることは難しい。
【0022】
かかる(1)式と(2)式を満足することができる光学上の情報は、各樹脂層の厚み方向の積層むらを300%以下にすることにより得ることができ、また、該情報を面状に記録するには、印刷機などでインクを塗布、もしくはロールによるエンボス加工やフィルム溶融製膜時のキャスティング時の静電印加の出力・電圧電流を制御し、厚みの凹凸を付与することにより行うことができる。
【0023】
積層むら(%)は、限られた積層フィルムの幅方向中央部からサンプルを切り出し、熱可塑性樹脂A、B、それぞれについて、倍率10000〜40000倍で幅方向−厚み方向の断面TEM観察結果から最大層厚みおよび最小層厚みを定規で測長し、その差を平均層厚みで除し、100を乗じることにより求められる。より好ましくは、200%以下である。
【0024】
本発明の情報記録媒体を用いた情報処理システムのフローチャートを図1に示し、該システムの各構成部を以下に説明する。
【0025】
図1において、情報記録部11は、文字、絵柄、バーコードのように数値データが符号化された情報などを記録する装置であり、具体的には、グラビア方式、オフセット方式、レーザー方式、インクジェット方式、熱転写方式、感熱記録方式などの印刷機、もしくは、インクを用いずに情報記録媒体の表面にエンボス加工を施すことにより符号化された情報を記録することができるエンボス機などのことである。
【0026】
例えば、エンボス機は、エンボスロールを熱可塑性樹脂からなる情報記録媒体の表面に、ガラス転移温度以上融点以下で熱圧着することにより情報を記録することができるものである。他に、符号化された情報を記録する方法として、熱可塑性樹脂からなる情報記録媒体の溶融製膜工程中に情報記録をすることができる。例えば、情報記録媒体がフィルム状であり、公知のフィルム製造方法の製膜過程中に、厚み方向に凹凸加工を施すことで、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を記録することができる。
【0027】
すなわち、Tダイ口金などのスリットから吐出されたシートをキャスティングドラム上で冷却固化させる際に、シートとキャスティングドラムを密着させるための針状、ワイヤー、テープ状の静電印加装置の出力電圧・電流などを制御することができる静電印加装置を用いることにより、電圧・電流変化に同期した線上、ドット状の静電印加痕を情報として容易に熱可塑性樹脂のフィルム上に上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を記録することができる。
【0028】
また、キャストにエンボス加工を設置することによっても、上記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報を情報を記録することができる。一方、印刷機を用いる場合、情報となるインクの色は、本発明の情報記録媒体とのコントラスを高く保つ観点から、黒色を用いることが好ましい。
【0029】
本発明にかかる情報記録媒体12は、上述の光学上の情報が書き込まれた媒体のことであり、少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に積層した構造を有するものである。
【0030】
例えば、熱可塑性樹脂A、BおよびC成分の3種からなる3層積層の場合には、ABC、ACB、BACなどのいかなる順列の積層構造を有したものであってもよい。情報記録媒体の反射率を高くする観点から、A(BC)nA、A(BAC)nA(ここで、nは自然数であり、「(BC)n」と表記した場合、B層とC層の重なりを全体でn回繰返してなる積層構造(積層総数は2×n層)という意味である。)などの規則的な配列で多層積層されていることが好ましい。より具体的には、本発明の情報記録媒体は、製造コスト、光学設計上の簡便さの観点から、2種類の熱可塑性樹脂が、A(BA)nなどの交互に積層された構造を有する情報記録媒体を用いて形成されることが好ましい。
【0031】
本発明の情報記録媒体における該積層数は、本発明者らの各種知見によれば、反射率を高める観点から50層以上は必要てあり、50層以上であればよく、特に層数の上限限定はされないものであるが、好ましくは、100〜1000層の範囲である。
【0032】
また、本発明にかかる情報記録媒体の形状は、好ましくは、平面状、曲面状のものであり、特にそれらの平面状、曲面状のものなどに限定されるものではなく、面を有するものであればいかなる形状であってもよい。中では、加工性の観点から、シート状、もしくはフィルム状であることが好ましいものである。
【0033】
本発明の情報記録媒体に用いられる熱可塑性樹脂は、例えば、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボーネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が、透明性の観点から好ましいが、耐熱性、寸法安定性、コスト面からはポリエステルを用いることが好ましい。
【0034】
本発明の情報記録媒体を構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルである。
【0035】
ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。中でも好ましくはテレフタル酸とイソフタル酸を用いることができる。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0036】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0037】
本発明の情報記録媒体は、少なくとも、ポリエチレンテレフタレートからなる層とシクロヘキサンジメタノールの共重合したポリエステルからなる層とで構成されることが好ましい。より好ましくは、成形性および高反射率を達成する観点からポリエチレンテレフタレートからなる層と、シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体からなる層を含んでなることが好ましい。このポリエステルには、必要に応じて各種添加剤を添加してもよいものである。
【0038】
また、情報記録媒体がシートやフィルム状などの構造物の場合には、滑材としては、有機滑材および/または無機滑材を用いることもできる。該滑材の形状としては、凝集粒子、真球状粒子、数珠状粒子、コンペイトウ状粒子、鱗片状粒子などの形状粒子を使用することができる。また、該滑材の材質としては、無機系としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、珪酸アルミニウム、マイカ、クレー、タルク、硫酸バリウム等を、有機系としては、ポリイミド系樹脂、オレフィンあるいは変性オレフィン系樹脂、架橋ポリスチレン系樹脂または無架橋ポリスチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂または無架橋アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂等の樹脂、また有機滑材としてステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、あるいはフマール酸アミドなどの各種アミド化合物を挙げることができる。
【0039】
また、本発明にかかる情報記録媒体は、寸法変化による誤認を防ぐ観点から150℃、30分間における熱収縮率(乾熱収縮率)が長手方向、幅方向とも3%以下であることが好ましい。長手方向とは、製造工程において製品が流れる方向のことであり、幅方向とはその直角方向のことである。熱寸法安定性が悪いと、外観上の問題および反射波長のシフトによる品質低下などを引き起こす観点から、より好ましくは、該熱収縮率が長手方向、幅方向とも2%以下である。
【0040】
多層積層されている情報記録媒体を製造する方法は、例えば、(AB)n・Aの積層フィルムの場合、A層に対応する押出機AとB層に対応する押出機Bの2台から供給され、それぞれの流路からのポリマーが、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサーを用いて積層された溶融体をT型口金等を用いてシート状に溶融押出し、−その後、キャスティングドラム上で冷却固化して未延伸フィルムを得る方法などで製造して得ることができる。
【0041】
あるいは、さらに、該未延伸フィルムを樹脂組成物のガラス転移点(Tg)以上の温度で延伸する方法などで得ることもできる。その際の延伸の方法は、少なくとも一方向に延伸されていることが記録媒体としての支持体の腰の強さを付与する観点から好ましい。特に、公知の2軸延伸法で2軸延伸されていることが好ましい。
【0042】
公知の2軸延伸法とは、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸する方法、あるいは、幅方向に延伸した後に長手方向に延伸する方法で行えばよく、長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行なってもよい。
【0043】
本発明によれば、延伸温度および延伸倍率は、特に限定されるものではなく、延伸が可能な条件であれば、いくらであっても良いが、通常のポリエステルフィルムの場合、延伸温度は80℃以上130℃以下であり、延伸倍率としては2倍以上5倍以下が好ましい。
【0044】
次いで、この延伸されたフィルムを熱処理する。この熱処理は、延伸温度より高く、融点より低い温度で行うのが一般的である。通常のポリエステルの場合、130℃ないし250℃の範囲で行うのが好ましいが、熱収縮率を抑える観点から200℃ないし240℃の範囲で行うのがより好ましい。さらに、フィルムの熱寸法安定性を付与するために、2〜10%程度の弛緩熱処理を施すことも好ましい。本発明の情報記録媒体の厚みは、使い勝手の良さ、および各層厚みと総積層数の兼ね合いから5μm〜200μmが好ましい。より好ましくは、10μm〜100μmの範囲である。
【0045】
本発明の情報記録媒体は、表裏において光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が互いに異なるものであることが好ましい。例えば、光を投受するための投光器および受光器を設置した側の情報記録媒体の面を表面とし、その反対側の面を裏面とする。そうした場合、情報が記録された表面からの反射光を際立たせるために、裏面には黒色の層が隣接されていることが好ましい。これは、例えば、カーボンブラックなどの黒を裏面に塗布、あるいは最下層の樹脂層に添加、または、貼り合わせる支持体が黒色であることで達成される。または、前記した黒色の層の代わりに蛍光発光する層を用いてもよい。すなわち、光が入射する表面で、蛍光発光する励起エネルギーに相当する波長領域の光を反射させることによって裏面にある蛍光層まで光が届かないため、蛍光発光しない。しかしながら、裏面から励起光に相当する波長の光を当てると発光する。この違いにより、表裏で反射領域の分布が異なる情報認識が達成され、表裏が簡単に判断できるものとなる。
【0046】
本発明にかかる情報記録媒体12からの反射光は干渉反射であることが必要である。干渉反射とは、異なる媒質、すなわち屈折率が異なる薄い層を多数重ね、その境の面の反射光が互いに干渉し、強め合う現象である。
【0047】
多層膜の反射の原理に関しての詳細は、「波動光学」p206−p236(岩波書店)(1971)に記載の通りである。例えば、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね、その界面で反射する光の波長λ(nm)は、入射光が面に垂直である場合、以下の(6)式で求められる。
2・(nA・dA+nB・dB)=nλ (nは、自然数)・・・式(6)
【0048】
ただし、熱可塑性樹脂A、Bの屈折率が、それぞれ、nA、nBであり、層厚みが、それぞれ、dA(nm)、dB(nm)である。
【0049】
この反射波長は、熱可塑性樹脂A、Bの選択、さらに、層厚みを調整することにより、任意に選択することができる。
【0050】
本発明にかかる情報記録媒体が樹脂である観点から、一般に各層の屈折率が1.4〜1.7の範囲にあるため、各層厚みが30〜650nmの範囲の値に設定された層が50層以上必要である。50層未満であると反射波長が出現しにくい観点から、好ましくは100層以上である。(6)式により調整された反射波長は、例えば、分光光度計で測定することができる。その測定結果を、図2に示す。
【0051】
実際に得られる反射波長は、多層膜の積層精度などによって多少変動するため、本発明の情報記録媒体からの反射波長とは、(6)式のnが1である一次の反射波長であり、分光光度計の測定によって得られる波長250〜2000nmの範囲における分光分布の最大反射率を示す波長のことである。図2においては、反射波長21のことである。
【0052】
また、反射波長における反射率は、正確に情報検出する観点から50%以上あることが必要である。より好ましくは、80%以上である。また、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅22は、正確に情報検出する観点から10nm〜200nmであることが好ましい。より好ましくは10nm〜100nmである。
【0053】
本発明の情報記録媒体は、検出角度10°における反射波長λ1と50°における反射波長λ2との関係が、下記(3)式を満足していることが好ましい。
150nm ≧ |λ1−λ2| ≧ 30nm ・・・・式(3)
【0054】
ここでの検出角度とは、図6に記載するように投光器62から入射角63で照射された光が情報記録媒体61で反射角65で反射され、受光器66で検出されるときの反射角のことである。すなわち、検出角度10°とは、投光器から入射角10°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことであり、また、検出角度50°とは、投光器から入射角50°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことである。そして、異なる検出角度である50°と10°での反射波長の変化が30nm以上であることが、情報の変化をより有効に検出して情報の再生がより正確に可能となるので好ましい。また、150nmよりも大きい値となる場合は、全波長にわたり反射率が高くなる傾向があるため、分光分布の形が変化して、情報として正確に認識することができなくなる場合があることから、好ましくない。|λ1−λ2|の値は、より好ましくは、50nm以上100nm以下である。
【0055】
また、|λ1−λ2|を30nm以上150nm以下とするには、その達成手段としては、例えば、本発明にかかる情報記録媒体が、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた情報記録媒体の場合、反射率を高めるという観点からA層とB層の屈折率差を0.02以上、積層数を50以上、かつ以下の(7)式を満足するようにA層の厚みdA(nm)とB層の厚みdB(nm)となるように調整すればよいものである。
−1.15×dA+120≦dB≦−1.04×dA+630・・・式(7)
【0056】
特に、情報記録媒体が公知の溶融製膜で製造される積層フィルムである場合は、A層の樹脂に対応する押出機AとB層の樹脂に対応する押出機Bによる樹脂吐出量およびその比、キャストドラムの速度、さらには、長手、幅方向の延伸により面倍率を調整することによって所望のA層とB層の厚みが得られる。
【0057】
さらに、本発明にかかる情報記録媒体からの検出角度10°における反射光のクロマティクネス指数a* 1、b* 1と検出角度50°における反射光のクロマティクネス指数a* 2、b* 2の関係が、以下の(4)式および/あるいは(5)式を満足することが好ましい。
|a* 1−a* 2| ≧ 10 ・・・・式(4)
|b* 1−b* 2| ≧ 10 ・・・・式(5)
ここでのクロマティクネス指数a* とb* は、JIS Z8729に規定されているL* a* b* 表示系の値のことである。
【0058】
a* とb* は、色相を表す値である。異なる2点での検出角度間のクロマティクネス指数a* 、b* の変化量のうち、どちらか一方が10未満であると色相の変化が微少なため、視覚での差が感知できず、偽造防止性の観点から好ましくない。より好ましくは、20以上であり、さらに好ましくは30以上である。また、その達成手段としては、例えば、本発明の情報記録媒体が、2種の熱可塑性樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた情報記録媒体の場合、反射率を高める観点からA層とB層の屈折率差を0.02以上、積層数を50以上、かつ以下の(8)式を満足するようにA層の厚みdA(nm)とB層の厚みdB(nm)となるように調整すればよい。
−1.15×dA+120≦dB≦−1.04×dA+260・・・・(8)式
【0059】
本発明にかかる情報処理媒体によれば、検出角度が同一であって情報記録媒体上の該分布内に異なる反射波長を有する領域が存在する場合は、任意の2領域間の反射波長IとIIの差は、情報として認識させる観点から30nm以上に調整された情報記録媒体を用いていることが好ましい。30nm未満であると分布内の反射特性の差を認識することが難しくなってくるからである。
【0060】
一方、上限は反射特性の差異を検出しやすいため、いくらでもよい。また、反射波長の数が多すぎると情報検出が複雑化し、誤認する観点から、好ましい反射波長の数は、2個すなわち2領域分である。1つの反射波長に着目したときの該分布の領域の形状は、文字、数字、2次元模様、絵柄、幾何学模様など如何なるものであってもよい。また、その達成手段としては、例えば、本発明の情報記録媒体が、2種のポリエステル樹脂A、Bを交互に多数重ね合わせた構成からなるフィルムである場合は、その溶融製膜のキャスト工程の静電印加電圧や電流を変化させることで得られる。
【0061】
すなわち、Tダイのスリットから吐出した溶融シートをキャストドラム上で冷却固化する際に、シートをドラム上にピンニングするための針状、ワイヤーもしくはテープ状の静電印加装置の電圧を少なくとも3kV以上変化させることによって、同一検出角で様々な反射波長の領域を有するフィルム状の情報記録媒体を得ることができる。ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートからなる場合は、静電印加電圧の設定電圧を5kV〜10kVの間で変化させることが好ましい。5kv未満であると、本来のピニング効果がなく、10kV以上では放電し、フィルム破れに繋がるためである。
【0062】
また、本発明の情報記録媒体は、後工程のエンボス加工でも付与することができる。すなわち、エンボスロールの温度を熱可塑性樹脂のガラス転移点以上融点未満の温度で、さらにニップロール圧力を0.2MPa以上10MPaに調整し、エンボスロールのパターンを本発明の情報記録媒体に刻印することにより得ることができる。さらに、反射表面にコロナ処理を施し、ポリビニルアルコールなどのインク吸収層を形成し、インクジェットプリンターを用いて、所望のパターンを本発明の情報記録媒体上に印刷することにより、反射波長の有する領域とインク部は反射波長を有しない領域ができるため、実質的に反射波長が30nm以上異なる領域を有する情報記録媒体が得られる。
【0063】
本発明の情報記録媒体12からの反射波長および/または反射率の分布は、偽造防止効果がある符号化された情報、さらに意匠性を兼ね備える観点から、規則的であることが好ましい。例えば、円、三角形、四角形、六角形、長方形などの図形が幾何学的に配列した模様、さらにこれらを組み合わせたものが好ましい。
【0064】
特に、図3に示すように、反射波長の分布が、反射波長Iの領域31と反射波長IIの領域32が周期性を有するストライプ状の分布を形成していることが好ましい。ここで、周期性を有するとは、ある領域一つに着目したときに、その領域が一定の距離間隔で情報記録媒体上に繰り返し配列していることである。また、ストライプ状であるとは、情報記録媒体である熱可塑性樹脂フィルムの長手方向あるいは幅方向に、反射波長が同一の領域が縞状に分布を形成していることである。
【0065】
図4に、図3のストライプ状の模様を垂直に横切る線上で反射波長IIの反射率を検出した場合の位置42とその反射率41の関係を示す。この反射波長Iの領域とIIの領域を交互に並べたストライブ状の分布は、本発明の溶融製膜では、静電印加装置の出力電圧を、時間に対してサイン波、矩形波、パルス波状に静電印加制御することにより、電圧変化に同期したストライプ状の周期的な反射波長および/または反射率の分布を有した情報記録媒体である熱可塑性樹脂フィルムを作製することができる。
【0066】
そのストライプ状の分布間距離は、生産性及び情報として正確な光検出を実現するという観点から、好ましくは1mm以上200mm以下、より好ましくは1mm以上100mm以下に調整された情報記録媒体であることが好ましい。ストライプ状の分布間距離とは、その周期方向において隣合う領域間の距離のことである。具体的には、2つの領域の中心点間距離のことである。
【0067】
その達成手段としては、キャスティングドラム速度に対する静電印加周波数を調整することで1mm以上200mm以下のストライプ状の分布間距離が得られる。例えば、キャスト速度が、5m/分の場合は、周波数を0.1〜100Hzに設定することによって達される。ここでの分布間距離は、反射波長が可視光にある場合は、色の変化から定規などにより測長することができる。異なる間隔が複数存在する場合は、その最小値をストライプ状の分布間距離とする。他に、情報記録媒体に周期的な凹凸の情報が付与された場合は、厚みむらのパターンを解析することによってそのストライプ状の分布間距離を求めることができる。厚みを連続的に測定し、そこで得られたデータのフーリエ変換(以下、「FFT処理」と称する)を行って評価する方法が好ましく用いられる。FFT処理については、例えば、「技術者の数学1」初版(共立出版株式会社 共立全書516)などにフーリエ変換の理論について、「光工学」初版(共立出版株式会社)などにFFT処理の手法について記載があるとおりである。この際、規則的な周期が存在すれば、その周期に対応する周波数スペクトルのピークが得られる。測定条件から逆算して、その周期である分布間距離が求められる。
【0068】
この規則性のある厚みむら、すなわち、厚み変化率R(R=(最大厚み−最小厚み)/平均厚み×100(%))の好ましい範囲は、5〜200%である。生産性上の巻き姿の観点から厚み変化率のより好ましい範囲としては、好ましくは10〜200%、より好ましくは10〜100%である。また、その厚みむらの調整方法としては、通常の製膜方法において、最低でもフィルム長手方向の厚みむらは5%は生じるため、その調整は必要ないが、その上限は、電圧の変化量とドラフト比=(ダイのリップ間隙)/(キャストドラム上のフィルム厚み)を調整することで調整できる。本発明においては、電圧の変化量は5kV、ドラフト比は1以上20未満で達成される。
【0069】
本発明の情報記録媒体によれば、上記に説明した反射波長および/または反射率の分布が情報認識されることが必要である。情報検出部13で、情報を読みとるために情報記録媒体12からの反射光を検出する。
【0070】
情報検出部は、情報が単に偽造防止効果を持たせた真偽判定が目的である場合は、人間の視覚に相当するが、数値データなどが符号化した情報の場合は、バーコードリーダーのように面内の光量の分布(反射率の分布)を光学的に線状もしくは面状に検出し、符号化された情報として捉えることができる光学センサーであることが好ましい。例えば、記録情報が、バーコードのようなストライプ状の模様の場合は、線状で情報認識がされれば良いが、2次元バーコードのような絵柄の場合は、面状で光学的に検出する。通常、バーコード情報を反射率の分布として検出するためには、基材とバーコード部での反射率の差は、30%以上あることが好ましい。光検出するのに用いられる光の波長は、光源の汎用性の観点から紫外線〜赤外線の範囲であることが主流である。そのため、本発明の情報記録媒体の最大反射率を示す反射波長は250nm〜2000nmの範囲にあるように調整することが必要である。また、投光する光の種類は、情報検出部が視覚である場合は、太陽光、A光、C光、D65光などの可視の波長帯域が広いものを用いることによって、色合いを持たせた情報として認識できるため好ましい。一方、数値データなどが符号化した情報の場合は、検出光が単色光を用いて情報認識されることが好ましい。単色とは、特定波長のみの光であり、その代表的な例がレーザーなどである。しかし、ここでは指向性が強くない公知の干渉フィルターなどで得られる単色光でも良い。また、発振波長帯域が狭い発光ダイオードや半導体、近赤外光、He−Neレーザーなどを用いることにより効率良く検出することができる。
【0071】
本発明の情報記録媒体は、情報検出部13で情報認識する際に、偽造防止性をもたせる観点から、検出角度に依存した情報記録媒体である。以下にその態様を説明する。例えば、情報記録媒体52の法線ベクトルと検出器51の検出方向となす検出角度が0度である場合を図5に、検出器61の検出方向となす検出角度が45°である場合を図6に示す。
【0072】
なお、図5の投光器は、検出器と同じ位置にあり、図6の投光器62は、法線ベクトルを挟んで受光器61の位置と対称の関係にある。情報検出部が視覚である場合は、情報記録媒体上の検出角度を図5から図6に変化させることにより、反射波長が低波長側へシフトするために反射光の色相変化が生じ、通常のコピー機では、複写印刷不可能な偽造防止効果が得られる。
【0073】
また、バーコードのように数値データなどが符号化した情報の場合は、例えば、図3において、予め情報記録の領域IIの検出角度0°の反射波長IIと一致するように、投光する光源側のピーク波長(例えば、650nm)を揃えておくことにより、図5の配置の場合は、図7に示したコントラストの高い情報としての反射特性71が得られるが、図6の場合は、情報記録媒体からの反射波長が異なるため反射率が低下し、コントラストの低い情報としての反射特性81が得られることとなる。この違いは、従来の近紫外〜近赤外領域までの全ての光を均一に反射する紙などの白色支持体を用いた情報記録媒体には見られない特性であるため、情報自体に偽造防止効果があることが理解される。
【0074】
また、本発明の情報記録媒体を用いた情報処理方法によれば、入射光に直線偏光を用いて情報検出部13で情報認識する際に、偏光方向に依存した情報記録媒体であることが好ましい。図9に情報記録媒体91の長手方向94と平行な方向の直線偏光93を入射したときと、直角な方向の直線偏光92を入射したときの関係図を示す。この直線偏光93と92により得られる分光特性が異なるため、すなわち、反射波長および/または反射率が異なることにより偽造防止性を兼ね備えた真偽判定が可能となる。この直線偏光を用いた本発明の情報処理媒体の場合は、MOR(Maximum Oriented Ratio)値が1.5以上3.0未満である面内屈折率が異なる情報記録媒体であることが好ましい。MOR値とは、マイクロ波透過型分子配向計で測定された透過マイクロ波強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)である。従来の蒸着法により得られる誘電体の多層膜は、各層の屈折率が等方的であるため、直線偏光93と92により得られる分光反射特性は同じであるが、本発明の情報記録媒体は、熱可塑性樹脂からなるフィルムであるため、公知の逐次二軸延伸法において、長手方向と幅方向の延伸倍率比を変えることにより、各層の長手方向の屈折率と幅方向の屈折率を異ならせしめ、偏光方向に依存した反射波長および/または反射率を有する情報記録媒体が得られることとなる。例えば、A層とB層の異なる2種の熱可塑性樹脂が交互に積層された情報記録媒体の熱可塑性樹脂Aがポリエチレンテレフタレート、熱可塑性樹脂Bがシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルの場合、延伸温度90℃で、長手方向もしくは幅方向のどちらか一方を3倍以上延伸する一軸延伸フィルムを作製し、150℃以上の熱処理温度で直線偏光を用いた際の情報記録媒体を作製することができる。
【0075】
この異方性を有する情報記録媒体を用いることにより、検出角度だけでなく、偏光方向にも依存した情報であるため、真偽判定ならびに偽造防止効果がある情報記録媒体12となる。また、情報検出部13が人間の視覚である場合は、色の違いもしくは反射率が異なるため、真偽判定ならびに偽造防止効果をもつ。
【0076】
したがって、本発明の情報記録媒体が等方的なものである場合は、偏光方向により反射波長および/または反射率が異ならないため、光源は、直線偏光を用いなくてもよく、円偏光、楕円偏非偏光であってもよい。等方的な情報処理媒体の好ましいMOR値は、1.0〜1.3程度である。
【0077】
本発明の情報記録媒体は、その記録された情報が、既知の情報と照合されて使用されて、その偽造防止機能や真正品の識別機能などを発揮することができる。ここでの既知の情報とは、照合を目視で実施するならば、検出角度に依存した色相を有した文字、絵柄などを象った反射光分布で、視覚によって記憶される情報のことであり、照合を実施するものがコンピュータであれば、予めエンコードされた情報に対応した既存のデータテーブルなどのことである。
【0078】
情報検出部13で得られたエンコードされた情報を、外部記憶装置である既存データテーブル14内のデータと照合して、コンピューターのCPUに相当する情報処理部15での論理演算によりデコードし、ディスプレイなどの情報出力部16から結果表示を行う。
例えば、既存データテーブルとしては、JAN(EAN、UPC)、ITF、CODE39、NW−7(CODABAR)、CODE128などに対応するバーコード表記などであるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
すなわち、文字、図形、絵柄、バーコードに類似した線のパターンなどでも、適宜、記録する情報は、用途により選択されれば良い。情報処理部15でデコードされた、すなわち数値化された情報は、もの固有の情報であることが好ましい。例えば、本発明にかかる情報記録媒体が、物流品に付随したラベル、タグとして用いられる場合は、日付、価格、重量、製造番号などの固有情報である。
【0080】
また、認証判定として用いられる場合は、認証番号であり、外部記憶装置などに格納されている情報と照合することにより認証判定を行うことができる。
【0081】
本発明の情報記録媒体を学生カードなどに利用された場合の例を図10に示す。基材である学生カード101上に学生の所属情報が記録された情報記録媒体102が部分的に貼り合わされて利用されることにより、偽造防止効果がある情報自体を記録・検出できる情報記録媒体を提供できる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明にかかる情報記録媒体について、実施例に用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
【0083】
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は、次の通りである。
【0084】
(1)厚み変化率
アンリツ株式会社製フィルムシックネステスタ「KG601A」および電子マイクロメータ「K306C」を用い、フィルムの長手方向に30mm幅、2m長にサンプリングしたフィルムを0.1sのサンプリング刻み、フィルム走査速度1.5m/分で連続的に厚みを測定した。長さ2m内の厚みの最大値、厚みの最小値、および平均厚みを求め、以下の(9)式を用いて厚み変化率を求めた。但し、平均厚みは、サンプリング数回分の厚み測定結果の平均値である。この操作を5回繰り返し、5回分の厚み変化率の平均値を採用した。
厚み変化率(%)=(厚みの最大値−厚みの最小値)/平均厚み・・・・(9)式
【0085】
(2)ストライプ状の分布間距離の測定方法
フィルムの裏面をマジックインキ(登録商標)で黒く塗り、裏面からの反射光を取り除く。次に、フィルム長手方向において異なる2色が交互に並んだストライプ模様のうち、隣り合う縞の中心点間距離を定規を用いて測長した。この操作を5回繰り返し、その平均値をストライプ状の分布間距離とした。
【0086】
(3)反射波長および反射率
ストライプ状の模様がないサンプルの場合は、フィルム幅方向中央部から幅方向4cm×長手方向4cmにフィルムを切り出し、測定波長250〜2000nm、バンドパス5nm/servo、走査速度120nm/分、積分球ユニットの条件で、分光光度計U−3410((株)日立製作所)を用いて反射光の分光測定を行った。波長と反射率の関係のグラフから、最大反射率を示す波長を反射波長とした。但し、反射率は、標準白色板である硫酸バリウムを用いたときの反射率を100%として校正した。異なる場所から切り出したサンプルにおいても同様の操作をし、5個のサンプルの反射光の分光分布を測定した。反射波長、反射率は、これらの平均値を採用した。
【0087】
また、ストライプ状の模様があるサンプルの場合は、フィルム幅方向20mm×長手方向10mm角でフィルム幅方向中央部からサンプルを切り出し、これをサンプル(1)とした。さらに、フィルム長手方向である周期方向に5mmずらして切り出したものをサンプル(2)とした。この操作を、順次繰り返して10個のサンプルを得た。これらのサンプル全てを、分光光度計U−3410((株)日立製作所)を用いて、平行光線モードでの透過率(%)を測定した。次に、フィルムの光吸収がないものとして100%から透過率を引くことにより反射率の分光分布を求めた。但し、入射光は、サンプル面に垂直とした。
【0088】
実施例4においては、入射光に直線偏光を用いるため、サンプル測定前に入射光源側に偏光板を設置した状態でベースライン補正を行った。次に、サンプルの長手方向を地面に垂直および平行に設置して反射率の分光分布の測定を行った。サンプルサイズ、測定条件においては、ストライプ状の模様のないサンプルと同様にし、反射率、反射波長においても、5個のサンプルの平均値を採用した。
【0089】
また、ピーク半値幅は、これらの得られた反射率の分光分布の最大反射率の1/2に相当する反射率での波長幅を読みとって求めた。ピーク半値幅においても5個のサンプルの平均値を採用した。
【0090】
(4)変角分光反射スペクトル
フィルム幅方向中央部から、幅方向5cm×長手方向12cmのサイズにフィルムを切り出し、片面を黒のマジックインキ(登録商標)で塗りつぶした。次に、変角分光測色システムGCMS−3B(村上色彩技術研究所(株))を用いて測定波長380nm〜720nm、測定波長間隔10nm刻み、正反射モードで入射・受光角(検出角)が10°、50°の反射光における変角分光分布の測定を行った。また、得られた反射光の分光分布スペクトルから、付属のソフトにより色空間表示a*、b* を算出した。反射強度の白色標準板としては、付属の硫酸バリウムを用いた。この測定結果から検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|、|a*1−a* 2|、|b* 1−b* 2|の変化量を求めた。但し、測定回数は1回で行った。
【0091】
(5)積層数、積層厚み
積層フィルムの層構造である積層数、積層厚みは、フィルムの断面観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、フィルムの断面を3000〜100000倍に拡大観察し、断面写真を撮影し、積層数および各層厚みを測定した。透過型電子顕微鏡で観察しにくい場合、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
【0092】
但し、熱可塑性樹脂A、Bが交互に繰り返されたA(BA)n構造の場合、A層の平均厚みdA(nm)およびB層dB(nm)の平均厚みは、(3)の評価方法で得られた積層フィルムの反射波長から(6)式を用いて求めた。(但し、A層であるポリエチレンテレフタレートの屈折率を1.65、B層である共重合ポリエステルの屈折率を1.58、A層の平均厚みdA(nm)とB層の平均厚みdB(nm)の積層比の関係は、押出機Aと押出機Bの吐出量比を採用した。)また、反射波長が得られない場合は、透過型電子顕微鏡による断面観察結果である写真から、全ての各層の厚みを定規により拡大率を考慮して測長し、A層およびB層、それぞれについての平均層厚みを求めた。
【0093】
(6)バーコードの印刷
JANコードの規格に相当するパターンをゴムローラーのロール部の表面に凹凸に型どり、黒の油性インクをそのゴムロール部に塗布し、得られた積層フィルムの表面にバーコードパターンを刻印した。
【0094】
(7)バーコード検出
バーコード検出には、波長650nm、最大出力1.0m、パルス巾1.0ms、Class2のキーエンス(株)製レーザー式ハディバーコードリーダーBL−200UBを用いた。
【0095】
(8)熱収縮率(乾熱収縮率):
フィルム幅方向における中央部から、長手方向、幅方向、それぞれ、1×10cmのサンプルを切り出し、ギアオーブン(タバイエスペック(株)製GHPS−222)で150℃、10分間の条件で熱処理した。その前後におけるフィルム長手方向と幅方向の長さをそれぞれ万能投影機(77−7ニコン(株)製E04)で正確に測長することにより、熱収縮率を求めた。なお、長手方向、幅方向それぞれについて、5回測定し、その平均値を採用した。
【0096】
(9)MOR値:
フィルム幅方向の中央部分を10×10cmの寸法で切り出したものを測定サンプルとし、マイクロ波分子配向計を用いてMOR値を測定した。マイクロ波分子配向計としては、KSシステムズ(株)製(現 王子計測機器(株))の分子配向計MOA−2001(周波数4GHz)を用いた。なお、この測定を異なるサンプルで5回実施し、その平均値をMOR値として採用した。
【0097】
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また熱可塑性樹脂BとしてPET/I(テレフタレート成分80mol%/イソフタレート成分20mol%)の共重合体を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0098】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが101層、熱可塑性樹脂Bが100層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=1/1になるようにした。このようにして得られた計201層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフト比が10でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0099】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、3.5倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、厚み14.2μm、反射波長526nm、反射率100%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は75nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=dB=81nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.2%、0.4%であった。
【0100】
変角分光分布の測定結果を図11に示す。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は60nmであり、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、1041、648であった。なお、MOR値は、1.06であった。
【0101】
この積層フィルムの上に、JANコードのバーコード印刷を行った。バーコード印刷を行ったインキ塗布領域の波長526nmにおける反射率は2%であり、他の領域は100%のままであったため、反射率の分布が形成されていることを確認した。この結果から、反射光の色相の変化、さらには単色光を用いたときの検出角度に依存した情報記録となるため、複写機などで印刷可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0102】
実施例2
静電印加の条件は、高圧電源発生装置とファンクションジェネレーターを用い、中心電圧6.5kV、電圧変動幅3kV、周波数25Hzのサイン波を周期的に印加した以外は、実施例1と同様にして、厚み変化率20.2%、ストライプ状の分布間距離30mmの周期的な厚み変化を有した積層フィルムを製膜した。
【0103】
この情報が記録された積層フィルムは、図3と類似した一定間隔のストライプ状の模様をした情報記録媒体であり、反射光のスペクトルにおける反射波長および反射率は、フィルムの長手方向において、凹部の中心が526nmおよび85%、凸部の中心が578nmおよび80%であった。情報記録媒体内における周期的な凹凸部の反射波長の差が、52nmであることを確認した。実施例1に示したように検出角に依存した色相変化を有しており、かつ偽造防止効果がある情報記録媒体であることを確認した。
【0104】
次に、情報認識に必要な反射率の周期性を確認するために、波長570nmに着目し、フィルム長手方向の1周期分の位置と反射率の関係を調べた。その結果を図12に示す。図から反射率50%を越えるピークが、ストライプ状の分布間距離30mmの周期性が確認できた。色相の角度依存性、さらにはバーコード情報として認識可能な反射波長および反射率の分布を有していることを確認できたことから、情報自体に偽造防止効果がある情報記録媒体が作製された。
【0105】
実施例3
静電印加の条件は、高圧電源発生装置とファンクションジェネレーターを用い、中心電圧6.5kV、電圧変動幅3kV、周波数1000Hzのサイン波を周期的に印加した以外は、実施例2と同様にして、厚み変化率15.2%、ストライプ状の分布間距離0.1mm以下の周期的な厚み変化を有した積層フィルムを製膜した。この情報が記録された積層フィルムは、図3と類似した一定間隔のストライプ状の模様をしたコントラストが得られなかった。フィルム長手方向における反射波長および反射率は、凹凸部で差が見られず、576nmおよび80%であった。
【0106】
この積層フィルムの上に、JANコードのバーコード印刷を行った。バーコード印刷を行ったインキ塗布領域の波長526nmにおける反射率は2%であり、他の領域は80%のままであったため、反射率の分布が形成できていることを確認した。実施例1に示したように検出角に依存した色相変化を有しており、そのため偽造防止効果がある情報記録媒体であることは確認したが、反射波長の分布は記録できていないことが確認された。
【0107】
実施例4
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また、熱可塑性樹脂Bとしてシクロヘキサンジメタノールが30mol%共重合した共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0108】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが101層、熱可塑性樹脂Bが100層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=2/1になるようにした。このようにして得られた計201層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフト比が10でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0109】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き100℃、3.5倍横延伸した後、230℃で熱処理を施し、厚み18.2μm、反射波長653nm、反射率96%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は80nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=134nm、dB=67nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.5%、0.9%であった。変角分光分布の測定結果を図13に示す。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は80nmであり、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、435、15であった。
【0110】
なお、MOR値は、1.062であった。この結果から、反射光の色相の変化、さらには、単色光を用いたときに検出角度に依存した情報認識が可能となるため複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。さらに、この見る角度により色相が変化する積層フィルムに、黒のJANコードのバーコード印刷を行った。印刷面の反対側は、黒インキで全面塗りつぶした。この記録情報を予め照合モードで登録していたバーコードリーダーを用いて検出角度0°で検出を行ったところ、照合検出することができた。さらに、検出角度40°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。反射光の色相の変化、さらには、単色光を用いたときの検出角度に依存した情報認識が可能となるため複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0111】
また、フィルム幅方向と平行および直角に偏光方向を配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。偏光方向が幅方向と平行配置と直角配置の反射波長および反射率は、それぞれ、98%と652nm、92%と648nmであった。反射波長の差は、4nmであり、その反射率の差は、6%であった。入射光の偏光方向により情報認識するのには、十分に識別可能な反射波長および/または反射率の変化でないことを確認した。
【0112】
実施例5
実施例4と同様にして、未延伸フィルムを作製し、次いで90℃、延伸倍率4倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き、横延伸することなく、230℃で熱処理を施し、厚み20μmのフィルムを得た。偏光板の偏光方向と得られたフィルムの長手方向と平行に配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。
【0113】
次いで、フィルム幅方向と平行に偏光方向を配置し、分光光度計により反射率および反射波長を測定した。フィルム長手方向配置と幅方向配置の反射波長および反射率は、それぞれ、98%と718nm、27%と682nmであった。反射波長の差は、36nmであり、その反射率の差は、71%であった。情報認識するのに、十分に識別可能な反射波長および/または反射率の変化であることを確認した。なお、このフィルムのMOR値は2.2であった。
【0114】
比較例1
熱可塑性樹脂Aとして、ポリエチレンテレフタレートを用い、また熱可塑性樹脂Bとしてポリブチレンテレフタレートを用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBのチップを、それぞれ乾燥した後、それぞれの押出機に供給した(以下、熱可塑性樹脂Aには、予め平均粒径1.2μmの凝集シリカを0.02重量%添加)。
【0115】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれの押出機にて280℃で溶融させ、ギアポンプおよびメッシュ上の金網フィルタを介した後、フィードブロックにて201層に合流させ、さらに流路形状がスクエアーのスタティックミキサーにより熱可塑性樹脂AおよびBは、熱可塑性樹脂Aが801層、熱可塑性樹脂Bが800層からなる厚み方向に交互に積層された積層体とし、最表層を熱可塑性樹脂Aとした。押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=1/1になるようにした。このようにして得られた計1601層からなる積層体をTダイに供給し、ドラフトが17でシート状に成形した後、ワイヤーでの静電印加電圧をかけながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し未延伸フィルムを得た。このとき、静電印加時に電圧変動させることなく7.5kV一定とした。
【0116】
この未延伸フィルムを、90℃、延伸倍率3.0倍で縦延伸を行い、両端部をクリップで把持するテンターに導き95℃、3.4倍横延伸した後、235℃で熱処理を施し、厚み13μm、反射波長なしのブロード状に反射率約6%の積層フィルムを得た。A,B層それぞれの厚みは、TEM断面観察から800層以上がdA、dB=10〜30nmであり、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.4%、0.5%であった。検出角度10°と50°間の反射波長の変化はなく、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、2および1であった。なお、このフィルムのMOR値は、1.04であった。
【0117】
この結果から、十分な反射率が得られず、かつ反射光の色相が変化していないため、情報が記録されても、情報自体に偽造防止効果がもたせられないことが確認できた。
【0118】
比較例2
実施例1のフィードブロックを33層に変えて、ドラフト比100で厚み3.4μm、反射波長642nm、反射率40%、反射波長の反射率の1/2に相当するピーク半値幅は205nmの積層フィルムを得た。A、B層それぞれの平均厚みは、dA=100nm、dB=100nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、1.9%、1.2%であった。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|は29nmであり、|a* 1−a* 2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、337、9であった。なお、MOR値は、1.06であった。反射光の色相の変化が見られたので、この見る角度により色相が変化する積層フィルムに、黒のJANコードのバーコード印刷を行った。印刷面の反対側は、黒インキで全面塗りつぶした。この記録情報を予め照合モードで登録していたバーコードリーダーを用いて検出角度0°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。さらに、検出角度40°で検出を行ったところ、照合検出することができなかった。反射光の色相の変化はあるが、単色光を用いたときに情報認識ができない複写機などで印刷不可能な情報記録媒体であることが確認できた。
【0119】
比較例3
比較例2の押出機A、Bの吐出量を調整することにより、各層の積層厚み比がA/B=10/1になるようにして、厚み93μm、反射波長なし、ブロード状に反射率5%、の積層フィルムを得た。断面TEM観察からA、B層それぞれの平均厚みは、dA=500nm、dB=5000nm、長手方向および幅方向の熱収縮率は、それぞれ、0.8%、0.5%であった。検出角度10°と50°間の|λ1−λ2|はなく、|a*1−a*2|、|b*1−b*2|の変化量はそれぞれ、1未満であった。なお、MOR値は、1.06であった。
【0120】
この結果から、十分な反射率が得られず、かつ反射光の色相が変化していないため、情報が記録されても、情報自体に偽造防止効果がもたせられないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、情報記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、真偽を判定を必要とする有価証券類、バーコード情報の記録が必要とされるクレジットカード、IDカード、物流用品のラベル、タグなど、その他、バーコードが利用されているものでセキュリティー性が必要とされるもの全般に好適な情報記録媒体に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、本発明にかかる情報記録媒体を情報処理に用いるときの情報処理システムのフローチャート図である。
【図2】図2は、本発明にかかる情報記録媒体の分光分布の測定結果の1例を示した線図である。
【図3】図3は、ストライプ状の情報が記録された本発明にかかる情報記録媒体の例を示したものである。
【図4】図4は、図3のストライプ状の模様を垂直に横切る線上で反射波長IIの反射率を検出した場合の位置とその反射率の関係を示した線図である。
【図5】図5は、図3のストライプ状の情報が記録された情報記録媒体から検出角0°で光検出している図を示したものである。
【図6】図6は、図3のストライプ状の情報が記録された情報記録媒体から検出角45°で光検出している図を示したものである。
【図7】図7は、図5において得られる位置と反射率の関係を示した線図である。
【図8】図8は、図6において得られる位置と反射率の関係を示した線図である。
【図9】図9は、光検出方向が直角の関係にある模式図を示したものである。
【図10】図10は、本発明にかかる情報記録媒体が学生証に利用された例を示したものである。
【図11】図11は、実施例1の情報記録媒体からの反射光における変角分光分布例を示したものである。
【図12】図12は、反射波長570nmにおける情報記録媒体から検出された位置と反射率の関係例を示したものである。
【図13】図13は、実施例3の情報記録媒体からの反射光における変角分光分布の結果を示したものである。
【符号の説明】
【0123】
11:情報記録装置
12:情報記録媒体
13:情報検出部
14:既存データテーブル
15:情報処理部
16:情報出力部
21:反射波長
22:ピーク半値幅
31:反射波長Iの領域
32:反射波長IIの領域
41:反射率
42:測定位置
43:符号化された反射率分布
51:検出角0°の検出器
52:情報記録媒体
53:黒色の層
61:情報記録媒体
62:投光器
63:入射角
64:情報記録媒体の法線
65:反射角(検出角)
66:受光器
71:検出角0°の反射率分布
81:検出角45°の反射率分布
91:情報記録媒体
92:長手方向に直角な偏光方向
93:長手方向と平行な偏光方向
94:情報記録媒体の長手方向
101:支持体である学生カード
102:ストライプ状の情報が記録された情報記録媒体
111:入射・検出角10°における反射光の分光分布
112:入射・検出角30°における反射光の分光分布
113:入射・検出角50°における反射光の分光分布
114:入射・検出角70°における反射光の分光分布
121:検出角0°の反射率分布
131:入射・検出角10°における反射光の分光分布
132:入射・検出角30°における反射光の分光分布
133:入射・検出角50°における反射光の分光分布
134:入射・検出角70°における反射光の分光分布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とする情報記録媒体。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【請求項2】
検出角度10°における反射波長λ1と、検出角度50°における反射波長λ2との関係が、下記(3)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
150nm≧|λ1−λ2|≧30nm ・・・・式(3)
(ただし、検出角度10°とは、投光器から入射角10°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことであり、また、検出角度50°とは、投光器から入射角50°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことである。)
【請求項3】
検出角度10°における反射光のクロマティクネス指数a*1、b*1と、検出角度50°における反射光のクロマティクネス指数a*2、b*2の関係が、下記の(4)式および/あるいは(5)式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録媒体。
|a*1−a*2|≧10 ・・・・式(4)
|b*1−b*2|≧10 ・・・・式(5)
【請求項4】
光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が、表裏で異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項5】
反射波長および/または反射率の分布が、周期性を有するストライプ状の分布を形成しており、そのストライプ状の分布間の距離が1mm以上200mm以下、かつ厚み変化率が10%以上200%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
積層構造体が、ポリエチレンテレフタレートからなる層とシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルからなる層とで構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項7】
入射光に直線偏光を用いたときに示す情報記録媒体のMOR値が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項1】
少なくとも2種類以上の熱可塑性樹脂を厚み方向に各層厚さが30nm〜650nmの範囲を呈して総数が50層以上に積層されて形成された積層構造体からなる情報記録媒体であり、該情報記録媒体上には光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が形成されており、該反射光は、下記(1)式と(2)式を満足する光学上の情報が記録されていることを特徴とする情報記録媒体。
2000≧λR ≧250(nm) ・・・・式(1)
R≧50(%) ・・・・式(2)
(ただし、λR は波長250〜2000nmの範囲において最大反射率を示すときの情報記録媒体の反射波長(nm)であり、Rは該反射波長λR での反射率(%)である。)
【請求項2】
検出角度10°における反射波長λ1と、検出角度50°における反射波長λ2との関係が、下記(3)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
150nm≧|λ1−λ2|≧30nm ・・・・式(3)
(ただし、検出角度10°とは、投光器から入射角10°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことであり、また、検出角度50°とは、投光器から入射角50°で照射された光が情報記録媒体で反射され、受光器で検出されるときの反射角のことである。)
【請求項3】
検出角度10°における反射光のクロマティクネス指数a*1、b*1と、検出角度50°における反射光のクロマティクネス指数a*2、b*2の関係が、下記の(4)式および/あるいは(5)式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の情報記録媒体。
|a*1−a*2|≧10 ・・・・式(4)
|b*1−b*2|≧10 ・・・・式(5)
【請求項4】
光干渉によって生じる反射光の反射波長および/または反射率の分布が、表裏で異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項5】
反射波長および/または反射率の分布が、周期性を有するストライプ状の分布を形成しており、そのストライプ状の分布間の距離が1mm以上200mm以下、かつ厚み変化率が10%以上200%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
積層構造体が、ポリエチレンテレフタレートからなる層とシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルからなる層とで構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項7】
入射光に直線偏光を用いたときに示す情報記録媒体のMOR値が1.5〜3.0であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の情報記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−172562(P2006−172562A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361114(P2004−361114)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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