情報記録媒体
【課題】 傷や汚れによる認識精度の低下、認識対象となる導電体の表面形状の認識精度のバラツキが少なく、セキュリティ上も安全な認証システムに用いることのできる情報記録媒体を提供する。
【解決手段】 認証システムに用いられる情報記録媒体1であって、薄板状の基材部2と、この基材部2の表面の少なくとも一部に形成された導電層4と、この導電層4の上に形成された誘電体層5とを有し、導電層4と誘電体層5によって読み取り情報の保持部3が形成され、この保持部3は、導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされている。
【解決手段】 認証システムに用いられる情報記録媒体1であって、薄板状の基材部2と、この基材部2の表面の少なくとも一部に形成された導電層4と、この導電層4の上に形成された誘電体層5とを有し、導電層4と誘電体層5によって読み取り情報の保持部3が形成され、この保持部3は、導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、この読み取り情報と予め格納されている固有情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体に関するものである。
尚、本発明において導電体とは、絶縁体以外の半導電体も含む概念で用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
この種の認証システムの代表的なものに指紋(導電体である指の表面形状)による認証システムがあり、この認証システムにおいて指紋を認識する認識装置に関しては、感圧センサを用いたもの、感熱センサを用いたもの、静電容量の変化をとらえるもの、レーザー光の反射を用いたもの等が知られている。
例えば特許文献1には感圧式の指紋センサを用いた認識装置が記載されている。
また、特許文献2には指紋を指紋記録シート上に押下して、指から記録シート上に付着した皮脂にトナーを定着させる認識装置に関するものであり、記録媒体として指紋記録シートを用いることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−138416号公報
【特許文献2】特開昭61−288837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1にあっては、磁気カードのような物理的な記録媒体を要することなく指紋を認識することが可能ではあるが、各ユーザーは装置本体に取り付けられたセンサの読み取り面上に指を押し付ける必要があり、その結果、読み取り面には多数のユーザーが触れることになる。
かかる場合には、読み取り面に傷や汚れが発生しやすくなって認識の精度が低下してしまうことが懸念される。
また、人によっては不特定のユーザーが接触した面に触れることに対し不快感を覚える場合がある。
【0004】
また、特許文献2にあっては、指紋記録シート上に付着した皮脂にトナーを定着させるためには、指が適度に皮脂を含んでいなければならず、個人差により安定して指紋を認識することが困難であった。
更に、記録シート上に定着された指紋を装置本体外で他人から見られてしまうことから偽造や盗用といったセキュリティ上の問題もあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、傷や汚れによる認識精度の低下の少ない情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、認識対象となる導電体の表面形状の認識精度のバラツキが小さい認証システムに用いることのできる情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、ユーザーが不快感を覚えることを防止でき、装置本体外では当該表面形状を他人から見られることのない認証システムに用いることのできる情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、請求項1記載の情報記録媒体は、導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、予め格納されている前記導電体に関する固有情報と前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体であって、薄板状の基材部と、該基材部表面の少なくとも一部に形成された導電層と、該導電層上に形成された誘電体層とを有し、前記導電層と前記誘電体層によって前記読み取り情報の保持部が形成され、該保持部が、前記導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされていることを特徴とする。
【0007】
この請求項1記載の発明によると、情報記録媒体には、導電体の表面形状に応じた静電潜像が読み取り情報として安定して形成され保持される。この静電潜像自体は肉眼では識別されず、後述する認識装置内部でのみ可視化される。
また、導電体の表面形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像として情報記録媒体に保持される。
【0008】
請求項2記載の情報記録媒体は、前記誘電体層上にオーバーコート層が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この請求項2記載の発明によると、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護される。
【0010】
請求項3記載の情報記録媒体は、前記基材上に前記固有情報を格納する記憶手段を形成し、前記固有情報を読み出し可能としたことを特徴とする。
【0011】
この請求項3記載の発明によると、情報記録媒体に固有情報が格納されるので、当該固有情報と読み取り情報を対照するのに好適である。
【0012】
請求項4記載の情報記録媒体は、前記基材上にマイクロコンピュータ部を設け、前記固有情報と前記読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能としたことを特徴とする。
【0013】
この請求項4記載の発明によると、情報記録媒体内で前記固有情報と前記読み取り情報との照合が行われるので、認証システムの構築が容易となる。
【0014】
請求項5記載の情報記録媒体は、前記導電層の厚さが0.1μmから1000μmであることを特徴とする。
【0015】
この請求項5記載の発明によると、導電層の厚さが0.1μm以上であれば、導電層をアースする場合にも、導電層が薄すぎて剥離の問題が生じることはない。また、導電層の厚さが1000μm以内であれば、コストアップとなることもない。
【0016】
請求項6記載の情報記録媒体は、前記誘電体層の厚さが5μmから100μmであることを特徴とする。
【0017】
この請求項6記載の発明によると、誘電体層の厚さが5μm以上であれば、帯電時に電荷のリークを起こすこともなく、十分な耐電圧性が得られる。
また、誘電体層の厚さが100μm以内であれば、層の厚さに反比例する静電容量も大きくでき、帯電時に前記読み取り情報の保持部に保持される電荷も大きくできるので、静電潜像が十分に形成され、この静電潜像から鮮明な画像を得ることができる。
【0018】
請求項7記載の情報記録媒体は、前記オーバーコート層の厚さが0.1μmから10μmであることを特徴とする。
【0019】
この請求項7記載の発明によると、オーバーコート層の厚さが0.1μm以上であれば、オーバーコート層の十分な耐久性が確保される。また、オーバーコートも一種の誘電体層であるが、オーバーコート層の厚さが10μm以内であれば、誘電体層の静電容量の減少を生じることもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る情報記録媒体によれば、導電体の表面形状に応じた静電潜像が読み取り情報として安定して形成され保持されるので、傷や汚れによる認識精度の低下を少なくできる。
また、認識対象となる導電体の表面形状の相違による認識精度のバラツキを小さくすることができ、認証システムへの使用に好適である。
また、静電潜像自体は肉眼では識別されず、認識装置内部でのみ可視化されるので、保持された当該表面形状を他人から見られることがなく、セキュリティの問題も解消できる。
また、導電体の表面形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像として情報記録媒体に保持される。したがって、不特定のユーザーが当該情報記録媒体に触れることは無いので、媒体の保有者が不快感を覚えることがない。
また、誘電体層上にオーバーコート層を形成することにより、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護されて、情報記録媒体の耐久性が向上する。
また、情報記録媒体に固有情報を格納する記憶手段を形成し、この固有情報を読み出し可能とすれば、読み取り情報を対照するのに好適である。
更に、情報記録媒体にマイクロコンピュータ部を設け、固有情報と読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能とすれば、読み取り情報を外部のホストコンピュータに一々送信する必要が無く、認証システムの構築を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る情報記録媒体としての第1の実施形態であるカードを示すものであり、このカードは、後述する表面形状(指紋)認識装置に用いられ、指紋に関する読み取り情報を保持し、予め登録されているカード保有者の指紋に関する固有情報と、前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられるものである。ここで、図1(a)は本実施形態のカードの平面図を、図1(b)は要部断面図をそれぞれ示すものである。
【0022】
図1において、1はカードであり、このカード1自体の大きさは任意であるが、銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカード等と同様な大きさである幅54mm、長さ86mm、厚さ0.75mmであれば汎用性が高い。
このカード1は、基材2及びこの基材2上に形成された静電潜像形成部3を有しており、静電潜像形成部3の大きさは、表面形状認識の対象が例えば指紋である場合には、約1インチ角(25.4mm×25.4mm)程度の大きさとされる。
【0023】
基材2の材質としては、硬さ、強度、剛性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、他に塩化ポリビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート等各種の樹脂材料を用いても差し支えない。
基材の厚さは、強度、利便性の面から、0.1mmから2mmの範囲が好ましい。
【0024】
静電潜像形成部3は、基材2上に導電層4、誘電層5、オーバーコート層6を塗布した構造になっている。導電層4、誘電層5、オーバーコート層6の塗布方法としては、所定の添加材料と結着樹脂とを溶媒に分散また、は溶解して塗工液を調製し、この塗工液を基材2上に塗布する方法が一般的である。
なお、他の塗布方法としては、浸漬塗工、カーテンフロー、バーコート、ロールコート、リングコート、スピンコート、スプレーコート、真空蒸着法等があり、下地の形状や塗工液の状態に合わせて選択することができる。
【0025】
導電層4としては、金、アルミなどの導電性金属の蒸着層を用いることができるほか、金属及びその酸化物、窒化物、塩、合金、更にはカーボンなどの導電性材料などを含有した樹脂層としても良い。
この場合における樹脂としてはポリエステル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジェン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂及びブチラール樹脂等を用いることができる。
導電層の厚さは、0.1μmから1000μmであるが、より好ましくは2μmから30μmの範囲とされる。
導電層の厚さが0.1μmより薄いと、導電層をアースする場合に導電層が薄すぎて剥離の問題が生じる一方、導電層の厚さが1000μmを超えると、コストも増えることになるからである。
プラスチックのカード上に導電層を設ける場合には、直接コートする場合は、2から20μm程度が好ましい。また導電シートなどを導電層として使用する場合は、30から50μmの厚さのシートが好ましい。
【0026】
誘電層5としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、二トリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル・共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(ABS)樹脂、エポキシアリレート樹脂等の各種樹脂材料を用いることができる。
【0027】
また、誘電層5の最表面には、必要に応じて電荷移動剤からなる電荷移動層が形成される。この電荷移動剤としては、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタロシアニン等の高分子電荷移動剤や、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、キノン、ジフェノキノン、アントラキノン、イソオキサゾリリデン及びこれらの誘導体等を用いることもでき、またアントラセン、ピレン等の多環芳香族化合物や、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、スチルベン、ブタジエン化合物等の低分子電荷移動剤を用いることも可能である。
【0028】
更に、誘電層5には光導電材料や結着樹脂の酸化劣化による特性変化、クラックの防止、機械的強度の向上の目的で、その感光層中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
酸化防止剤や紫外線吸収剤はいずれの層に添加してもよいが、最表面の層である電荷移動層に添加することが好適である。
酸化防止剤は、結着樹脂に対して3から20重量%の割合で添加することが、紫外線吸収剤は、結着樹脂に対して3から30重量%の割合で添加することが好適である。なお、酸化防止剤と紫外線吸収剤との両者を添加する場合には、両成分の添加量を結着樹脂に対して5から40重量%の範囲内とすることが好ましい。
酸化防止剤、紫外線吸収剤とも3重量%より少ないと、酸化防止や紫外線吸収の効果も低減する。また量が多くなりすぎると、酸化防止剤、紫外線吸収剤のいずれも着色粒子であるので、誘電体層の色が暗くなる傾向が生じるほか、誘電体層にクラックが発生することも懸念される。
【0029】
また、上述の酸化防止剤や紫外線吸収剤以外に、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物等の光安定剤、ジフェニルアミン化合物等の老化防止剤、界面活性剤等を誘電層5に添加しても構わない。
誘電層5の厚さは、5μmから100μmであるが、より好ましくは20μmから40μmの範囲とされる。
誘電体層の厚さが5μmより薄いと、耐電圧性が不十分となり、帯電時に電荷のリークを起こす場合がある。また誘電体層の厚さが100μmより厚いと、誘電体の静電容量は厚さに反比例するので、静電容量が小さくなり、帯電時に誘電体表面に保持される電荷が少なくなり、静電潜像が十分に形成されず、この静電潜像から鮮明な画像を得ることができなくなる。
【0030】
オーバーコート層6は必ずしも必要なものではないが、フッ素樹脂粒子と結着樹脂とを含有する溶液を塗布することにより形成される。
フッ素樹脂粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキビニルエーテル共重合体等を用いることができる。これらのフッ素樹脂粒子は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素樹脂粒子の粒径は、通常0.01から5μmの範囲であることが好ましく、その数平均分子量は3000から5000000の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、フッ素樹脂粒子を分散する結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ブチラール樹脂などが用いられる。
オーバーコート層6にシリコーンオイルを含有させる場合には、ジメチルシリコーンオイル、メチル−フェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニル共重合シリコーンオイルなどが、結着樹脂に対して、0.05から5%の重量比、好ましくは0.1から2%の重量比で含有される。
シリコンオイルの含有量が少なすぎると、表面の離型性が悪くなることがある。
また、シリコンオイルの含有量が多すぎる場合は、表面の離型性は良くなるものの、余分なシリコンオイルと、皮脂のステアリン酸などとの相性が悪くなることがある。
オ−バ−コ−ト層の厚さは、0.1μmから10μmであるが、より好ましくは1μmから5μmの範囲とされる。
オーバーコート層の厚さが0.1μmより薄いと、オーバーコート層がすぐに磨耗して耐久性が不十分となる。またオーバーコート層の厚さが10μmより厚いと、オーバーコート層自体の耐久性はよいが、オーバーコートも一種の誘電体層であるので、情報記録媒体の誘電体層の厚さが増えたことと同様になり、誘電体層の静電容量が減少し、帯電性が低下することになる。
【0032】
次に、図2は、上述したカード1を取り扱う表面形状認識装置であり、必要に応じてカード1にクリーニング、除電、帯電といった工程を施した上で、保持された指紋に関する保持情報を可視化し、電気信号に変換するものである。ここで7はカード1を用いた表面形状認識装置であり、この装置7は、挿入口と排出口を兼ねるスロット8が形成されたケース9を有しており、このケース9の内部に、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25、制御手段26の各手段が設けられている。これら各手段には図示しない電源により所定の電圧が必要に応じて適宜印加される。
また、カード1が、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24及び形状情報作成手段25を通過できるように搬送手段27が設けられている。
【0033】
クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25及び搬送手段27は、それぞれライン28から33で制御手段26と接続されており、この制御手段26により、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25及び搬送手段27の作動が制御される。
また、40は、図示しないホストコンピュータに設けられた中央演算装置であり、この中央演算装置40はメモリー41を有すると共に、ライン42を介して形状情報作成手段25と、ライン43を介して制御手段26と接続されている。
図2の例においては、このメモリー41に、固有情報としてのユーザーの指紋情報が格納されている。
【0034】
図3は、クリーニング手段21の概略構成図であり、このクリーニング手段21には、搬送手段27上を搬送されてくる図示しないカード1の表面に摺接されるファーブラシローラ44、このファーブラシローラ44に当接されるバイアスローラ(回収ローラ)45、及びこのバイアスローラ45の外周に当接され、ウレタンゴム等からなるクリーニングブレード46が設けられている。
また、図3の矢印Aで示されるように、クリーニング手段21は、クリーニング時のみカード1と接触し、クリーニングを行わない時はカード1から離れるように上下に移動する構造とされている。
【0035】
図4は、除電手段22の概略構成図であり、除電ブラシ47の先端部47aが、図示しないカード1の表面から1mmから4mmの位置となるように設けられてAC除電器を構成している。
なお、図4においてはAC除電のみを行っているが、媒体表面を光照射する光除電をAC除電に代えてあるいはAC除電と併用して用いても良い。
【0036】
図5は、帯電手段23の概略構成図であり、ワイヤー状のコロナ放電電極48、シールド部材としてのコ字状サイドプレート49、このサイドプレート49に取り付けられた制御グリッド50が設けられてスコロトロン帯電装置を構成している。ここで制御グリッド50のグリッド面50aは、図示しないカード1の表面から1mmから4mmの位置となるように配置されている。
なお、図5においてはスコロトロン帯電装置を採用したが、これに代えて帯電ローラを用いても構わない。
【0037】
図6は、トナー像形成手段24の概略構成図であり、このトナー像形成手段24は、現像ローラ61、現像ローラ61上のトナー62を薄層化する現像ブレード63、現像ローラ61にトナー62を供給するトナー供給ローラ64で構成される接触の1成分現像器である。トナー62には、負帯電性の非磁性1成分系のトナーが用いられている。
なお、図6においては接触の1成分現像器を採用したが、これに代えて非接触の1成分現像方式、2成分非接触現像方式、2成分接触現像方式等を用いても構わない。
【0038】
図7は、形状情報作成手段25の概略構成図であり、この形状情報作成手段25は、読み取りレンズ65、CCDセンサ66で構成されている。
読み取りレンズ65としては、2f系、4f系などを用いることができる。
また、CCDセンサ66としては、例えば表面形状認識の対象が大きさ約1インチ角(25.4mm×25.4mm)で表現可能な指紋の場合には、512×512画素程度(約500DPI)のもので十分と考えられるが、更に画素数を増やしても構わないことは言うまでもない。
【0039】
次に、上述したカード1を表面形状認識装置7に用いて、どのように指紋認識が行われるかを図8のフローに基づいて説明する。ここで図8においては、中央の点線部を境界とし、左側が装置7の外部で実行されるステップ、右側が装置7の内部で実行されるステップを示している。
【0040】
ステップS1で、カード(媒体)1が、スロット8より挿入され、搬送手段27上に載置される。
【0041】
カード1は、搬送手段27によりクリーニング手段21と対向する位置まで搬送され、このカード1の静電潜像形成部3に対してステップS2のプレクリーニングが行われる。
この際クリーニング手段21においては、ファーブラシローラ44及びバイアスローラ45のそれぞれに、図示しない別々の外部電源によってバイアス電圧が印加されており、プラス側の端子がそれぞれファーブラシローラ44及びバイアスローラ45に接続され、マイナス側の端子が接地されている。
外部電源により、ファーブラシローラ44に印加される電圧は、通常マイナスに帯電している静電潜像形成部3とは反極性のプラス300Vからプラス400Vの電圧が印加されている。
一方、図示しない別の外部電源によりバイアスローラ45に印加されるバイアス電圧は、ファーブラシローラ44に印加される電圧より高くプラス500Vからプラス600Vに設定されている。
かかる電圧の極性の違いと大小関係により、静電潜像形成部3のマイナス極性を有する汚れは、バイアスローラ45に集められ、クリーニングブレード46によって除去される。
【0042】
次にカード1は、搬送手段27により除電手段22と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS3のプレ除電が行われる。
除電手段22においては、図示しない外部電源が接続されて±100Vから±1000V程度のAC電圧が印加されることで、カード1表面の除電が行われる。
【0043】
次にカード1は、搬送手段27により帯電手段23と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS4の帯電が行われる。
帯電手段23においては、図示しない外部高圧電源からコロナ放電電極48に電圧が印加され、かつ所定の電位に保持された制御グリッド50とによってカード1が帯電される。
具体的には、コロナ放電電極48には、外部高圧電源からマイナス5000Vからマイナス6000Vの電圧が印加されており、また制御グリッド50はマイナス700Vに保持されているので、カード1の表面は約マイナス700Vに帯電することになる。
なお、本実施例では、コロナ放電電極48と制御グリッド50にマイナスの電圧を印加することにより、カード1をマイナスに帯電させているが、コロナ放電電極48と制御グリッド50に印加する電圧の極性は、プラスあるいはマイナスのいずれであっても構わない。
一般的にはプラス電圧を印加するとオゾンの放出が減少するといわれており、コロナ放電電極48と制御グリッド50に印加する電圧の極性がプラスの場合は、カード1もプラスに帯電する。
【0044】
ステップS4の帯電が行われた後、カード1は一旦スロット8から外部に排出される(ステップS5)。
この際、クリーニング手段21は前述の通りカード1から離れる位置まで移動されており、また、除電手段22は制御手段26によりオフ状態とされる。
また、カード1を全部排出する必要はなく、静電潜像形成部3が外部に露出すれば十分である。
【0045】
そしてステップS6で、ユーザーが静電潜像形成部3上に指紋を押下することにより、静電潜像形成部3の表面には指紋(導電体の表面形状)に応じた静電潜像Sが形成される(図9(a))。
すなわち指紋は、皮膚の汗腺が突起した模様であり、連続した突起状の表面形状であるので、ユーザーが指を静電潜像形成部3に押下するように接触させるとき、微細に見るとこの突起状の部分が静電潜像形成部3と接触している。
また、指は導電体であるので、帯電手段により約マイナス700Vに帯電している静電潜像形成部3の表面の電荷は、指との接触部分のみを通じてアースに流れることになる。この結果、静電潜像形成部3においては、当該接触部分のみの電荷が失われ、表面に指紋状の静電潜像が形成される。ちなみに本願出願人の実験結果によると、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、当初の約マイナス700Vに対し、マイナス100Vから0Vに低下していた。
なおこのステップS6では、ユーザーに指紋を押下させる際、必要に応じて指紋の押下を促すための音声や文字表示等によるガイダンスが行われる。
【0046】
この後、カード1は、再度スロット8より装置7内に挿入され(ステップS7)、搬送手段27によりトナー像形成手段24と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS8のトナー像形成が行われる。
この際、クリーニング手段21は前述の通りカード1から離れる位置まで移動されており、また、除電手段22、帯電手段23は、制御手段26によりオフ状態とされており、再度挿入されたカード1は、クリーニング、除電、帯電の各工程をスキップしてトナー像形成手段24に至る。
【0047】
トナー像形成手段24においては、現像ローラ61に図示しない外部電源が接続されており、この現像ローラ61はカード1の進行方向と同じ方向に回転されている。
トナー供給ローラ64は、現像ローラ61と接触して回転されており、その回転方向は現像ローラ61と同方向でも反対方向でも構わない。トナー62は負帯電系の非磁性一成分トナーであり、粒径は6μmから10μm程度である。
現像ローラ61は、カード1の静電潜像形成部3と接触される。そして静電潜像形成部3上に形成されている指紋の静電潜像Sは現像され、トナー像Tが形成されることにより可視化される(図9(b))。
具体的には、現像ローラ61は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス300Vの電圧が印加されている。また、トナー供給ローラ64は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス450Vの電圧が印加されている。トナー62は、トナー像形成手段24のフレーム内に蓄えられており、トナー供給ローラ64の回転によって機械的に現像ローラ61に付着するようになっている。
また、トナー供給ローラ64に印加されている電圧は、現像ローラ61に印加されている電圧より絶対値の大きいマイナスの電圧であるので、トナー62は現像ローラ61に吸着されるようになっている。吸着されたトナー62は、現像ローラ61に圧接して取り付けられている薄板状の現像ブレード63により薄層化される。
【0048】
ここでカード1が現像ローラ61と接触すると、静電潜像形成部3において、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、前述の通り、マイナス100Vから0Vであるので、現像ローラ61に付着しているトナー62は、静電潜像形成部3側に移動し、現像が行われる。
一方、静電潜像形成部3において、指の突起状の部分が接触しなかった箇所の電位はマイナス約700Vのままであるので、カード1が現像ローラ61と接触しても、現像ローラ61に付着しているトナー62は、静電潜像形成部3側に移動しないので、現像は行われない。
以上のようにして、カード1の静電潜像形成部3には、指紋(表面形状)に応じたトナー像Tが形成される。
【0049】
次にカード1は、搬送手段27により形状情報作成手段25と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS9の形状情報作成が行われる。
形状情報作成手段25において、前記トナー像TはCCDセンサ66により読み取られ、ユーザーの指紋の形状に応じた電気信号に変換される。
【0050】
このユーザーの指紋の形状に応じた電気信号は、ライン42を通じて中央演算装置40に出力され(ステップS10)、このメモリー41に予め登録されているユーザーの指紋の固有情報と照合される。
そして照合結果の一致、不一致により、当該ユーザーがカード1の真の所有者であるか否かが判別される。
【0051】
一方、ステップS10の電気信号出力を終えた後、カード1は、搬送手段27によりクリーニング手段21と対向する位置まで戻され、このカード1の静電潜像形成部3に対してステップS11のポストクリーニングが行われる。
このポストクリーニングの内容も、前述したプレクリーニング(ステップS2)とほぼ同様であるが、このとき静電潜像形成部3はマイナス極性を有しており、静電潜像形成部3に残存するトナー62もマイナス極性を有している。
したがって、前述の通り、静電潜像形成部3の表面電位とファーブラシローラ44の表面電位の電圧の極性の違い、ファーブラシローラ44に印加されているバイアス電圧、バイアスローラ45に印加されるバイアス電圧の大小関係により、静電潜像形成部3に残存するマイナス極性のトナー62は、バイアスローラ45に集められ、クリーニングブレード46によって除去される。
【0052】
次にカード1は、搬送手段27により除電手段22と対向する位置まで戻され、このカード1に対してステップ12のポスト除電が行われる。このポスト除電の内容は、前述したプレ除電(ステップS3)と同様であるので説明を省略する。
【0053】
そしてカード1は、スロット8から外部に排出され(ステップS13)、ユーザーに返却されて繰り返し使用される。
【0054】
検出された指紋(トナー像T)の一例を図10に示す。
この図10に示す画像は、カード1をプレクリーニング、プレ除電及び帯電させ、実際にカード1の静電潜像形成部3に指紋を押下した後、トナー像形成手段24で静電潜像形成部3にトナー62を付着させ、形成されたトナー像Tをテープで剥離させて、白紙に貼り付け、デジタルカメラで撮影した画像である。
指紋の形状が非常に鮮明に検出されていることがわかる。
【0055】
この第1の実施形態の情報記録媒体によれば、指紋に応じた静電潜像が、カード表面に形成された静電潜像形成部に読み取り情報として安定して形成され保持されるので、傷や汚れによる認識精度の低下を少なくできる。
また、指紋形状の相違による認識精度のバラツキが小さくすることができ、指紋認証システムへの使用に好適である。
また、この静電潜像自体は肉眼では識別されず、認識装置内部でのみ可視化され、その後、カード表面がクリーニングされるので、保持された当該指紋を他人から見られることがなく、セキュリティの問題も解消できる。
また、指紋形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像としてカードに保持されるので、不特定のユーザーが当該カードに触れることは無く、カードの保有者が不快感を覚えることもない。
【0056】
また、誘電体層上にオーバーコート層を形成することにより、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護されて、カードの耐久性が向上する。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態を図11に基づいて説明する。なお、この第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。
【0058】
図10に示されるように、この第2の実施形態のカード1の基材2上には、静電潜像形成部3に加えて、ROM(記憶手段)67を内蔵するCPU(マイクロコンピュータ部)68が埋め込まれている。
すなわちこの第2の実施形態においては、ROM67に固有情報としてのユーザーの指紋情報が格納されており、当該固有情報がCPU68によって読み出され、認識装置7からCPU68に送信された読み取り情報と照合されることにより、当該ユーザーがカード1の真の所有者であるか否かが判別される。
【0059】
この第2の実施形態によれば、カードには、固有情報としてのユーザーの指紋情報を格納できるROMを内蔵するCPUが埋め込まれているので、当該固有情報は、CPUにより読み出すことができ、読み取り情報と対照するのに好適である。
また、カードに埋め込まれたCPUにより、当該固有情報と読み取り情報との照合結果をカード外部へ出力できるので、読み取り情報を外部の中央演算装置に一々送信する必要が無く、指紋認証システムの構築を容易に行うことができる。
【0060】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では指紋の認識について説明したが、指紋だけでなく掌紋、足紋等のあらゆる皮脂紋に採用することができる。
また、認識の対象は皮脂紋に限られず、導電体であれば認識することが可能であるので、導電体からなる筆記具により形成された署名や、導電体からなる印鑑により形成された押印にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態によるカードの構造を説明する図であり、それぞれ、(a)は平面図、(b)は要部断面図である。
【図2】図1のカードを用いた表面形状認識装置のブロック図である。
【図3】同認識装置のクリーニング手段の概略構成図である。
【図4】同認識装置の除電手段の概略構成図である。
【図5】同認識装置の帯電手段の概略構成図である。
【図6】同認識装置のトナー像形成手段の概略構成図である。
【図7】同認識装置の形状情報作成手段の概略構成図である。
【図8】同認識装置による表面形状認識のフロー図である。
【図9】カード表面の静電潜像形成部に押下された指紋の様子を概念的に説明する図であり、それぞれ、(a)は静電潜像Sを、(b)はトナー像Tを示すものである。
【図10】図2の認識装置により検出された指紋(トナー像T)の一例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態によるカードの構造を説明する図であり、それぞれ、(a)は平面図、(b)は要部断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 カード(媒体)
2 基材
3 静電潜像形成部
4 導電層
5 誘電層
6 オーバーコート層
7 表面形状(指紋)認識装置
67 ROM(記憶手段)
68 CPU(マイクロコンピュータ部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、この読み取り情報と予め格納されている固有情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体に関するものである。
尚、本発明において導電体とは、絶縁体以外の半導電体も含む概念で用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
この種の認証システムの代表的なものに指紋(導電体である指の表面形状)による認証システムがあり、この認証システムにおいて指紋を認識する認識装置に関しては、感圧センサを用いたもの、感熱センサを用いたもの、静電容量の変化をとらえるもの、レーザー光の反射を用いたもの等が知られている。
例えば特許文献1には感圧式の指紋センサを用いた認識装置が記載されている。
また、特許文献2には指紋を指紋記録シート上に押下して、指から記録シート上に付着した皮脂にトナーを定着させる認識装置に関するものであり、記録媒体として指紋記録シートを用いることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−138416号公報
【特許文献2】特開昭61−288837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1にあっては、磁気カードのような物理的な記録媒体を要することなく指紋を認識することが可能ではあるが、各ユーザーは装置本体に取り付けられたセンサの読み取り面上に指を押し付ける必要があり、その結果、読み取り面には多数のユーザーが触れることになる。
かかる場合には、読み取り面に傷や汚れが発生しやすくなって認識の精度が低下してしまうことが懸念される。
また、人によっては不特定のユーザーが接触した面に触れることに対し不快感を覚える場合がある。
【0004】
また、特許文献2にあっては、指紋記録シート上に付着した皮脂にトナーを定着させるためには、指が適度に皮脂を含んでいなければならず、個人差により安定して指紋を認識することが困難であった。
更に、記録シート上に定着された指紋を装置本体外で他人から見られてしまうことから偽造や盗用といったセキュリティ上の問題もあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、傷や汚れによる認識精度の低下の少ない情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、認識対象となる導電体の表面形状の認識精度のバラツキが小さい認証システムに用いることのできる情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、ユーザーが不快感を覚えることを防止でき、装置本体外では当該表面形状を他人から見られることのない認証システムに用いることのできる情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、請求項1記載の情報記録媒体は、導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、予め格納されている前記導電体に関する固有情報と前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体であって、薄板状の基材部と、該基材部表面の少なくとも一部に形成された導電層と、該導電層上に形成された誘電体層とを有し、前記導電層と前記誘電体層によって前記読み取り情報の保持部が形成され、該保持部が、前記導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされていることを特徴とする。
【0007】
この請求項1記載の発明によると、情報記録媒体には、導電体の表面形状に応じた静電潜像が読み取り情報として安定して形成され保持される。この静電潜像自体は肉眼では識別されず、後述する認識装置内部でのみ可視化される。
また、導電体の表面形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像として情報記録媒体に保持される。
【0008】
請求項2記載の情報記録媒体は、前記誘電体層上にオーバーコート層が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この請求項2記載の発明によると、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護される。
【0010】
請求項3記載の情報記録媒体は、前記基材上に前記固有情報を格納する記憶手段を形成し、前記固有情報を読み出し可能としたことを特徴とする。
【0011】
この請求項3記載の発明によると、情報記録媒体に固有情報が格納されるので、当該固有情報と読み取り情報を対照するのに好適である。
【0012】
請求項4記載の情報記録媒体は、前記基材上にマイクロコンピュータ部を設け、前記固有情報と前記読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能としたことを特徴とする。
【0013】
この請求項4記載の発明によると、情報記録媒体内で前記固有情報と前記読み取り情報との照合が行われるので、認証システムの構築が容易となる。
【0014】
請求項5記載の情報記録媒体は、前記導電層の厚さが0.1μmから1000μmであることを特徴とする。
【0015】
この請求項5記載の発明によると、導電層の厚さが0.1μm以上であれば、導電層をアースする場合にも、導電層が薄すぎて剥離の問題が生じることはない。また、導電層の厚さが1000μm以内であれば、コストアップとなることもない。
【0016】
請求項6記載の情報記録媒体は、前記誘電体層の厚さが5μmから100μmであることを特徴とする。
【0017】
この請求項6記載の発明によると、誘電体層の厚さが5μm以上であれば、帯電時に電荷のリークを起こすこともなく、十分な耐電圧性が得られる。
また、誘電体層の厚さが100μm以内であれば、層の厚さに反比例する静電容量も大きくでき、帯電時に前記読み取り情報の保持部に保持される電荷も大きくできるので、静電潜像が十分に形成され、この静電潜像から鮮明な画像を得ることができる。
【0018】
請求項7記載の情報記録媒体は、前記オーバーコート層の厚さが0.1μmから10μmであることを特徴とする。
【0019】
この請求項7記載の発明によると、オーバーコート層の厚さが0.1μm以上であれば、オーバーコート層の十分な耐久性が確保される。また、オーバーコートも一種の誘電体層であるが、オーバーコート層の厚さが10μm以内であれば、誘電体層の静電容量の減少を生じることもない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る情報記録媒体によれば、導電体の表面形状に応じた静電潜像が読み取り情報として安定して形成され保持されるので、傷や汚れによる認識精度の低下を少なくできる。
また、認識対象となる導電体の表面形状の相違による認識精度のバラツキを小さくすることができ、認証システムへの使用に好適である。
また、静電潜像自体は肉眼では識別されず、認識装置内部でのみ可視化されるので、保持された当該表面形状を他人から見られることがなく、セキュリティの問題も解消できる。
また、導電体の表面形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像として情報記録媒体に保持される。したがって、不特定のユーザーが当該情報記録媒体に触れることは無いので、媒体の保有者が不快感を覚えることがない。
また、誘電体層上にオーバーコート層を形成することにより、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護されて、情報記録媒体の耐久性が向上する。
また、情報記録媒体に固有情報を格納する記憶手段を形成し、この固有情報を読み出し可能とすれば、読み取り情報を対照するのに好適である。
更に、情報記録媒体にマイクロコンピュータ部を設け、固有情報と読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能とすれば、読み取り情報を外部のホストコンピュータに一々送信する必要が無く、認証システムの構築を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る情報記録媒体としての第1の実施形態であるカードを示すものであり、このカードは、後述する表面形状(指紋)認識装置に用いられ、指紋に関する読み取り情報を保持し、予め登録されているカード保有者の指紋に関する固有情報と、前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられるものである。ここで、図1(a)は本実施形態のカードの平面図を、図1(b)は要部断面図をそれぞれ示すものである。
【0022】
図1において、1はカードであり、このカード1自体の大きさは任意であるが、銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカード等と同様な大きさである幅54mm、長さ86mm、厚さ0.75mmであれば汎用性が高い。
このカード1は、基材2及びこの基材2上に形成された静電潜像形成部3を有しており、静電潜像形成部3の大きさは、表面形状認識の対象が例えば指紋である場合には、約1インチ角(25.4mm×25.4mm)程度の大きさとされる。
【0023】
基材2の材質としては、硬さ、強度、剛性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、他に塩化ポリビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート等各種の樹脂材料を用いても差し支えない。
基材の厚さは、強度、利便性の面から、0.1mmから2mmの範囲が好ましい。
【0024】
静電潜像形成部3は、基材2上に導電層4、誘電層5、オーバーコート層6を塗布した構造になっている。導電層4、誘電層5、オーバーコート層6の塗布方法としては、所定の添加材料と結着樹脂とを溶媒に分散また、は溶解して塗工液を調製し、この塗工液を基材2上に塗布する方法が一般的である。
なお、他の塗布方法としては、浸漬塗工、カーテンフロー、バーコート、ロールコート、リングコート、スピンコート、スプレーコート、真空蒸着法等があり、下地の形状や塗工液の状態に合わせて選択することができる。
【0025】
導電層4としては、金、アルミなどの導電性金属の蒸着層を用いることができるほか、金属及びその酸化物、窒化物、塩、合金、更にはカーボンなどの導電性材料などを含有した樹脂層としても良い。
この場合における樹脂としてはポリエステル、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジェン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂及びブチラール樹脂等を用いることができる。
導電層の厚さは、0.1μmから1000μmであるが、より好ましくは2μmから30μmの範囲とされる。
導電層の厚さが0.1μmより薄いと、導電層をアースする場合に導電層が薄すぎて剥離の問題が生じる一方、導電層の厚さが1000μmを超えると、コストも増えることになるからである。
プラスチックのカード上に導電層を設ける場合には、直接コートする場合は、2から20μm程度が好ましい。また導電シートなどを導電層として使用する場合は、30から50μmの厚さのシートが好ましい。
【0026】
誘電層5としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、二トリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル・共重合体(EVA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(ABS)樹脂、エポキシアリレート樹脂等の各種樹脂材料を用いることができる。
【0027】
また、誘電層5の最表面には、必要に応じて電荷移動剤からなる電荷移動層が形成される。この電荷移動剤としては、ポリビニルカルバゾール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタロシアニン等の高分子電荷移動剤や、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、キノン、ジフェノキノン、アントラキノン、イソオキサゾリリデン及びこれらの誘導体等を用いることもでき、またアントラセン、ピレン等の多環芳香族化合物や、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、スチルベン、ブタジエン化合物等の低分子電荷移動剤を用いることも可能である。
【0028】
更に、誘電層5には光導電材料や結着樹脂の酸化劣化による特性変化、クラックの防止、機械的強度の向上の目的で、その感光層中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
酸化防止剤や紫外線吸収剤はいずれの層に添加してもよいが、最表面の層である電荷移動層に添加することが好適である。
酸化防止剤は、結着樹脂に対して3から20重量%の割合で添加することが、紫外線吸収剤は、結着樹脂に対して3から30重量%の割合で添加することが好適である。なお、酸化防止剤と紫外線吸収剤との両者を添加する場合には、両成分の添加量を結着樹脂に対して5から40重量%の範囲内とすることが好ましい。
酸化防止剤、紫外線吸収剤とも3重量%より少ないと、酸化防止や紫外線吸収の効果も低減する。また量が多くなりすぎると、酸化防止剤、紫外線吸収剤のいずれも着色粒子であるので、誘電体層の色が暗くなる傾向が生じるほか、誘電体層にクラックが発生することも懸念される。
【0029】
また、上述の酸化防止剤や紫外線吸収剤以外に、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物等の光安定剤、ジフェニルアミン化合物等の老化防止剤、界面活性剤等を誘電層5に添加しても構わない。
誘電層5の厚さは、5μmから100μmであるが、より好ましくは20μmから40μmの範囲とされる。
誘電体層の厚さが5μmより薄いと、耐電圧性が不十分となり、帯電時に電荷のリークを起こす場合がある。また誘電体層の厚さが100μmより厚いと、誘電体の静電容量は厚さに反比例するので、静電容量が小さくなり、帯電時に誘電体表面に保持される電荷が少なくなり、静電潜像が十分に形成されず、この静電潜像から鮮明な画像を得ることができなくなる。
【0030】
オーバーコート層6は必ずしも必要なものではないが、フッ素樹脂粒子と結着樹脂とを含有する溶液を塗布することにより形成される。
フッ素樹脂粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキビニルエーテル共重合体等を用いることができる。これらのフッ素樹脂粒子は、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フッ素樹脂粒子の粒径は、通常0.01から5μmの範囲であることが好ましく、その数平均分子量は3000から5000000の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、フッ素樹脂粒子を分散する結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ブチラール樹脂などが用いられる。
オーバーコート層6にシリコーンオイルを含有させる場合には、ジメチルシリコーンオイル、メチル−フェニルシリコーンオイル、ジメチルジフェニル共重合シリコーンオイルなどが、結着樹脂に対して、0.05から5%の重量比、好ましくは0.1から2%の重量比で含有される。
シリコンオイルの含有量が少なすぎると、表面の離型性が悪くなることがある。
また、シリコンオイルの含有量が多すぎる場合は、表面の離型性は良くなるものの、余分なシリコンオイルと、皮脂のステアリン酸などとの相性が悪くなることがある。
オ−バ−コ−ト層の厚さは、0.1μmから10μmであるが、より好ましくは1μmから5μmの範囲とされる。
オーバーコート層の厚さが0.1μmより薄いと、オーバーコート層がすぐに磨耗して耐久性が不十分となる。またオーバーコート層の厚さが10μmより厚いと、オーバーコート層自体の耐久性はよいが、オーバーコートも一種の誘電体層であるので、情報記録媒体の誘電体層の厚さが増えたことと同様になり、誘電体層の静電容量が減少し、帯電性が低下することになる。
【0032】
次に、図2は、上述したカード1を取り扱う表面形状認識装置であり、必要に応じてカード1にクリーニング、除電、帯電といった工程を施した上で、保持された指紋に関する保持情報を可視化し、電気信号に変換するものである。ここで7はカード1を用いた表面形状認識装置であり、この装置7は、挿入口と排出口を兼ねるスロット8が形成されたケース9を有しており、このケース9の内部に、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25、制御手段26の各手段が設けられている。これら各手段には図示しない電源により所定の電圧が必要に応じて適宜印加される。
また、カード1が、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24及び形状情報作成手段25を通過できるように搬送手段27が設けられている。
【0033】
クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25及び搬送手段27は、それぞれライン28から33で制御手段26と接続されており、この制御手段26により、クリーニング手段21、除電手段22、帯電手段23、トナー像形成手段24、形状情報作成手段25及び搬送手段27の作動が制御される。
また、40は、図示しないホストコンピュータに設けられた中央演算装置であり、この中央演算装置40はメモリー41を有すると共に、ライン42を介して形状情報作成手段25と、ライン43を介して制御手段26と接続されている。
図2の例においては、このメモリー41に、固有情報としてのユーザーの指紋情報が格納されている。
【0034】
図3は、クリーニング手段21の概略構成図であり、このクリーニング手段21には、搬送手段27上を搬送されてくる図示しないカード1の表面に摺接されるファーブラシローラ44、このファーブラシローラ44に当接されるバイアスローラ(回収ローラ)45、及びこのバイアスローラ45の外周に当接され、ウレタンゴム等からなるクリーニングブレード46が設けられている。
また、図3の矢印Aで示されるように、クリーニング手段21は、クリーニング時のみカード1と接触し、クリーニングを行わない時はカード1から離れるように上下に移動する構造とされている。
【0035】
図4は、除電手段22の概略構成図であり、除電ブラシ47の先端部47aが、図示しないカード1の表面から1mmから4mmの位置となるように設けられてAC除電器を構成している。
なお、図4においてはAC除電のみを行っているが、媒体表面を光照射する光除電をAC除電に代えてあるいはAC除電と併用して用いても良い。
【0036】
図5は、帯電手段23の概略構成図であり、ワイヤー状のコロナ放電電極48、シールド部材としてのコ字状サイドプレート49、このサイドプレート49に取り付けられた制御グリッド50が設けられてスコロトロン帯電装置を構成している。ここで制御グリッド50のグリッド面50aは、図示しないカード1の表面から1mmから4mmの位置となるように配置されている。
なお、図5においてはスコロトロン帯電装置を採用したが、これに代えて帯電ローラを用いても構わない。
【0037】
図6は、トナー像形成手段24の概略構成図であり、このトナー像形成手段24は、現像ローラ61、現像ローラ61上のトナー62を薄層化する現像ブレード63、現像ローラ61にトナー62を供給するトナー供給ローラ64で構成される接触の1成分現像器である。トナー62には、負帯電性の非磁性1成分系のトナーが用いられている。
なお、図6においては接触の1成分現像器を採用したが、これに代えて非接触の1成分現像方式、2成分非接触現像方式、2成分接触現像方式等を用いても構わない。
【0038】
図7は、形状情報作成手段25の概略構成図であり、この形状情報作成手段25は、読み取りレンズ65、CCDセンサ66で構成されている。
読み取りレンズ65としては、2f系、4f系などを用いることができる。
また、CCDセンサ66としては、例えば表面形状認識の対象が大きさ約1インチ角(25.4mm×25.4mm)で表現可能な指紋の場合には、512×512画素程度(約500DPI)のもので十分と考えられるが、更に画素数を増やしても構わないことは言うまでもない。
【0039】
次に、上述したカード1を表面形状認識装置7に用いて、どのように指紋認識が行われるかを図8のフローに基づいて説明する。ここで図8においては、中央の点線部を境界とし、左側が装置7の外部で実行されるステップ、右側が装置7の内部で実行されるステップを示している。
【0040】
ステップS1で、カード(媒体)1が、スロット8より挿入され、搬送手段27上に載置される。
【0041】
カード1は、搬送手段27によりクリーニング手段21と対向する位置まで搬送され、このカード1の静電潜像形成部3に対してステップS2のプレクリーニングが行われる。
この際クリーニング手段21においては、ファーブラシローラ44及びバイアスローラ45のそれぞれに、図示しない別々の外部電源によってバイアス電圧が印加されており、プラス側の端子がそれぞれファーブラシローラ44及びバイアスローラ45に接続され、マイナス側の端子が接地されている。
外部電源により、ファーブラシローラ44に印加される電圧は、通常マイナスに帯電している静電潜像形成部3とは反極性のプラス300Vからプラス400Vの電圧が印加されている。
一方、図示しない別の外部電源によりバイアスローラ45に印加されるバイアス電圧は、ファーブラシローラ44に印加される電圧より高くプラス500Vからプラス600Vに設定されている。
かかる電圧の極性の違いと大小関係により、静電潜像形成部3のマイナス極性を有する汚れは、バイアスローラ45に集められ、クリーニングブレード46によって除去される。
【0042】
次にカード1は、搬送手段27により除電手段22と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS3のプレ除電が行われる。
除電手段22においては、図示しない外部電源が接続されて±100Vから±1000V程度のAC電圧が印加されることで、カード1表面の除電が行われる。
【0043】
次にカード1は、搬送手段27により帯電手段23と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS4の帯電が行われる。
帯電手段23においては、図示しない外部高圧電源からコロナ放電電極48に電圧が印加され、かつ所定の電位に保持された制御グリッド50とによってカード1が帯電される。
具体的には、コロナ放電電極48には、外部高圧電源からマイナス5000Vからマイナス6000Vの電圧が印加されており、また制御グリッド50はマイナス700Vに保持されているので、カード1の表面は約マイナス700Vに帯電することになる。
なお、本実施例では、コロナ放電電極48と制御グリッド50にマイナスの電圧を印加することにより、カード1をマイナスに帯電させているが、コロナ放電電極48と制御グリッド50に印加する電圧の極性は、プラスあるいはマイナスのいずれであっても構わない。
一般的にはプラス電圧を印加するとオゾンの放出が減少するといわれており、コロナ放電電極48と制御グリッド50に印加する電圧の極性がプラスの場合は、カード1もプラスに帯電する。
【0044】
ステップS4の帯電が行われた後、カード1は一旦スロット8から外部に排出される(ステップS5)。
この際、クリーニング手段21は前述の通りカード1から離れる位置まで移動されており、また、除電手段22は制御手段26によりオフ状態とされる。
また、カード1を全部排出する必要はなく、静電潜像形成部3が外部に露出すれば十分である。
【0045】
そしてステップS6で、ユーザーが静電潜像形成部3上に指紋を押下することにより、静電潜像形成部3の表面には指紋(導電体の表面形状)に応じた静電潜像Sが形成される(図9(a))。
すなわち指紋は、皮膚の汗腺が突起した模様であり、連続した突起状の表面形状であるので、ユーザーが指を静電潜像形成部3に押下するように接触させるとき、微細に見るとこの突起状の部分が静電潜像形成部3と接触している。
また、指は導電体であるので、帯電手段により約マイナス700Vに帯電している静電潜像形成部3の表面の電荷は、指との接触部分のみを通じてアースに流れることになる。この結果、静電潜像形成部3においては、当該接触部分のみの電荷が失われ、表面に指紋状の静電潜像が形成される。ちなみに本願出願人の実験結果によると、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、当初の約マイナス700Vに対し、マイナス100Vから0Vに低下していた。
なおこのステップS6では、ユーザーに指紋を押下させる際、必要に応じて指紋の押下を促すための音声や文字表示等によるガイダンスが行われる。
【0046】
この後、カード1は、再度スロット8より装置7内に挿入され(ステップS7)、搬送手段27によりトナー像形成手段24と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS8のトナー像形成が行われる。
この際、クリーニング手段21は前述の通りカード1から離れる位置まで移動されており、また、除電手段22、帯電手段23は、制御手段26によりオフ状態とされており、再度挿入されたカード1は、クリーニング、除電、帯電の各工程をスキップしてトナー像形成手段24に至る。
【0047】
トナー像形成手段24においては、現像ローラ61に図示しない外部電源が接続されており、この現像ローラ61はカード1の進行方向と同じ方向に回転されている。
トナー供給ローラ64は、現像ローラ61と接触して回転されており、その回転方向は現像ローラ61と同方向でも反対方向でも構わない。トナー62は負帯電系の非磁性一成分トナーであり、粒径は6μmから10μm程度である。
現像ローラ61は、カード1の静電潜像形成部3と接触される。そして静電潜像形成部3上に形成されている指紋の静電潜像Sは現像され、トナー像Tが形成されることにより可視化される(図9(b))。
具体的には、現像ローラ61は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス300Vの電圧が印加されている。また、トナー供給ローラ64は、図示せぬ外部高圧電源と接続されており、約マイナス450Vの電圧が印加されている。トナー62は、トナー像形成手段24のフレーム内に蓄えられており、トナー供給ローラ64の回転によって機械的に現像ローラ61に付着するようになっている。
また、トナー供給ローラ64に印加されている電圧は、現像ローラ61に印加されている電圧より絶対値の大きいマイナスの電圧であるので、トナー62は現像ローラ61に吸着されるようになっている。吸着されたトナー62は、現像ローラ61に圧接して取り付けられている薄板状の現像ブレード63により薄層化される。
【0048】
ここでカード1が現像ローラ61と接触すると、静電潜像形成部3において、指の突起状の部分が接触した箇所の電位は、前述の通り、マイナス100Vから0Vであるので、現像ローラ61に付着しているトナー62は、静電潜像形成部3側に移動し、現像が行われる。
一方、静電潜像形成部3において、指の突起状の部分が接触しなかった箇所の電位はマイナス約700Vのままであるので、カード1が現像ローラ61と接触しても、現像ローラ61に付着しているトナー62は、静電潜像形成部3側に移動しないので、現像は行われない。
以上のようにして、カード1の静電潜像形成部3には、指紋(表面形状)に応じたトナー像Tが形成される。
【0049】
次にカード1は、搬送手段27により形状情報作成手段25と対向する位置まで搬送され、このカード1に対してステップS9の形状情報作成が行われる。
形状情報作成手段25において、前記トナー像TはCCDセンサ66により読み取られ、ユーザーの指紋の形状に応じた電気信号に変換される。
【0050】
このユーザーの指紋の形状に応じた電気信号は、ライン42を通じて中央演算装置40に出力され(ステップS10)、このメモリー41に予め登録されているユーザーの指紋の固有情報と照合される。
そして照合結果の一致、不一致により、当該ユーザーがカード1の真の所有者であるか否かが判別される。
【0051】
一方、ステップS10の電気信号出力を終えた後、カード1は、搬送手段27によりクリーニング手段21と対向する位置まで戻され、このカード1の静電潜像形成部3に対してステップS11のポストクリーニングが行われる。
このポストクリーニングの内容も、前述したプレクリーニング(ステップS2)とほぼ同様であるが、このとき静電潜像形成部3はマイナス極性を有しており、静電潜像形成部3に残存するトナー62もマイナス極性を有している。
したがって、前述の通り、静電潜像形成部3の表面電位とファーブラシローラ44の表面電位の電圧の極性の違い、ファーブラシローラ44に印加されているバイアス電圧、バイアスローラ45に印加されるバイアス電圧の大小関係により、静電潜像形成部3に残存するマイナス極性のトナー62は、バイアスローラ45に集められ、クリーニングブレード46によって除去される。
【0052】
次にカード1は、搬送手段27により除電手段22と対向する位置まで戻され、このカード1に対してステップ12のポスト除電が行われる。このポスト除電の内容は、前述したプレ除電(ステップS3)と同様であるので説明を省略する。
【0053】
そしてカード1は、スロット8から外部に排出され(ステップS13)、ユーザーに返却されて繰り返し使用される。
【0054】
検出された指紋(トナー像T)の一例を図10に示す。
この図10に示す画像は、カード1をプレクリーニング、プレ除電及び帯電させ、実際にカード1の静電潜像形成部3に指紋を押下した後、トナー像形成手段24で静電潜像形成部3にトナー62を付着させ、形成されたトナー像Tをテープで剥離させて、白紙に貼り付け、デジタルカメラで撮影した画像である。
指紋の形状が非常に鮮明に検出されていることがわかる。
【0055】
この第1の実施形態の情報記録媒体によれば、指紋に応じた静電潜像が、カード表面に形成された静電潜像形成部に読み取り情報として安定して形成され保持されるので、傷や汚れによる認識精度の低下を少なくできる。
また、指紋形状の相違による認識精度のバラツキが小さくすることができ、指紋認証システムへの使用に好適である。
また、この静電潜像自体は肉眼では識別されず、認識装置内部でのみ可視化され、その後、カード表面がクリーニングされるので、保持された当該指紋を他人から見られることがなく、セキュリティの問題も解消できる。
また、指紋形状は、認識装置に直接読み取らせるのではなく、一旦、静電潜像としてカードに保持されるので、不特定のユーザーが当該カードに触れることは無く、カードの保有者が不快感を覚えることもない。
【0056】
また、誘電体層上にオーバーコート層を形成することにより、導電層と誘電体層によって形成された読み取り情報の保持部が保護されて、カードの耐久性が向上する。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態を図11に基づいて説明する。なお、この第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。
【0058】
図10に示されるように、この第2の実施形態のカード1の基材2上には、静電潜像形成部3に加えて、ROM(記憶手段)67を内蔵するCPU(マイクロコンピュータ部)68が埋め込まれている。
すなわちこの第2の実施形態においては、ROM67に固有情報としてのユーザーの指紋情報が格納されており、当該固有情報がCPU68によって読み出され、認識装置7からCPU68に送信された読み取り情報と照合されることにより、当該ユーザーがカード1の真の所有者であるか否かが判別される。
【0059】
この第2の実施形態によれば、カードには、固有情報としてのユーザーの指紋情報を格納できるROMを内蔵するCPUが埋め込まれているので、当該固有情報は、CPUにより読み出すことができ、読み取り情報と対照するのに好適である。
また、カードに埋め込まれたCPUにより、当該固有情報と読み取り情報との照合結果をカード外部へ出力できるので、読み取り情報を外部の中央演算装置に一々送信する必要が無く、指紋認証システムの構築を容易に行うことができる。
【0060】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では指紋の認識について説明したが、指紋だけでなく掌紋、足紋等のあらゆる皮脂紋に採用することができる。
また、認識の対象は皮脂紋に限られず、導電体であれば認識することが可能であるので、導電体からなる筆記具により形成された署名や、導電体からなる印鑑により形成された押印にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態によるカードの構造を説明する図であり、それぞれ、(a)は平面図、(b)は要部断面図である。
【図2】図1のカードを用いた表面形状認識装置のブロック図である。
【図3】同認識装置のクリーニング手段の概略構成図である。
【図4】同認識装置の除電手段の概略構成図である。
【図5】同認識装置の帯電手段の概略構成図である。
【図6】同認識装置のトナー像形成手段の概略構成図である。
【図7】同認識装置の形状情報作成手段の概略構成図である。
【図8】同認識装置による表面形状認識のフロー図である。
【図9】カード表面の静電潜像形成部に押下された指紋の様子を概念的に説明する図であり、それぞれ、(a)は静電潜像Sを、(b)はトナー像Tを示すものである。
【図10】図2の認識装置により検出された指紋(トナー像T)の一例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態によるカードの構造を説明する図であり、それぞれ、(a)は平面図、(b)は要部断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 カード(媒体)
2 基材
3 静電潜像形成部
4 導電層
5 誘電層
6 オーバーコート層
7 表面形状(指紋)認識装置
67 ROM(記憶手段)
68 CPU(マイクロコンピュータ部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、予め格納されている前記導電体に関する固有情報と前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体であって、
薄板状の基材部と、
該基材部表面の少なくとも一部に形成された導電層と、
該導電層上に形成された誘電体層とを有し、
前記導電層と前記誘電体層によって前記読み取り情報の保持部が形成され、
該保持部が、前記導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記誘電体層上にオーバーコート層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記基材上に前記固有情報を格納する記憶手段を形成し、前記固有情報を読み出し可能としたことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記基材上にマイクロコンピュータ部を設け、前記固有情報と前記読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能としたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記導電層の厚さが0.1μmから1000μmであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記誘電体層の厚さが5μmから100μmであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記オーバーコート層の厚さが0.1μmから10μmであることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項1】
導電体の表面形状に関する読み取り情報を保持させ、予め格納されている前記導電体に関する固有情報と前記読み取り情報を照合する認証システムに用いられる情報記録媒体であって、
薄板状の基材部と、
該基材部表面の少なくとも一部に形成された導電層と、
該導電層上に形成された誘電体層とを有し、
前記導電層と前記誘電体層によって前記読み取り情報の保持部が形成され、
該保持部が、前記導電体の表面形状に対応した静電潜像を保持可能とされていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記誘電体層上にオーバーコート層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記基材上に前記固有情報を格納する記憶手段を形成し、前記固有情報を読み出し可能としたことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記基材上にマイクロコンピュータ部を設け、前記固有情報と前記読み取り情報との照合結果を媒体外部へ出力可能としたことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記導電層の厚さが0.1μmから1000μmであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記誘電体層の厚さが5μmから100μmであることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記オーバーコート層の厚さが0.1μmから10μmであることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の情報記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−64500(P2006−64500A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246571(P2004−246571)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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