説明

感光性ネガ型画像形成材料

【課題】高感度であるとともに、作業性、経済性、耐刷性、耐汚れ性、保存安定性に優れた、例えばCTPシステムに適合する走査露光用の平版印刷版原版の感光層として有用な、感光性ネガ型画像形成材料を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物、(B)重合開始剤、および(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物、を含有する感光層を支持体上に塗布してなる感光性ネガ型画像形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元光造形、ホログラフィー、平版印刷用版材、カラープルーフ、フォトレジスト、カラーフィルター等の画像形成材料や、インク、塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料等に利用できる感光性組成物に関する。特にコンピュータ等のデジタル信号から各種レーザを用いて直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷用版材として好適に用いられる感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平版印刷版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すことなく、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が望まれ、これに適応した印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
【0003】
このような走査露光可能な平版印刷版を得る方式の一つとして、親水性表面を有する支持体上に、インク受容性の樹脂層領域を形成する方式が採用されている。これは、支持体上に、走査露光により硬化してインク受容性領域を形成するネガ型の感光層を設けてなる材料であって、感光スピードに優れた光重合系組成物を用いた構成が提案され、既に実用化されているものもある。このような構成の感光性平版印刷版(平版印刷版原版)は、現像処理が簡便であり、さらに解像度、着肉性、耐刷性、耐汚れ性に優れるといった望ましい刷版、印刷性能を有する。
【0004】
前記感光性組成物は、基本的にはエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光重合開始系、及び、所望によりバインダー樹脂を含有し、走査露光により、光開始系が光吸収し、活性ラジカル等の活性種を生成して重合性化合物の重合反応を生起、進行させることにより露光領域を硬化させて画像形成するものである。
このような走査露光可能な感光性組成物においては、感光性に優れた光開始系が種々開示されている(例えば、非特許文献1および2参照)。これらに記載の光開始系は、露光光源としてArレーザ(488nm)やFD−YAGレーザ(532nm)のような長波長の可視光源を用いた、従来のCTPシステムに適用された場合には、光源の出力が十分高くない現状においては充分な感度が得られず、さらなる高速露光に適合し得る高感度の開始系が望まれている。
【0005】
一方、近年、例えば、InGaN系の材料を用い、350nmから450nm域で連続発振可能な半導体レーザーが実用段階となっている。これらの短波光源を用いた走査露光システムは、半導体レーザーが構造上、安価に製造できるため、十分な出力を有しながら、経済的なシステムを構築できるといった長所を有する。さらに、従来のFD−YAGやArレーザを使用するシステムに比較して、より明るいセーフライト下での作業が可能な、短波長領域に感光性を有する感光材料が使用できる。しかしながら、このような350nmから450nmの短波長領域において走査露光に十分な感度を有する光開始系は知られていないのが現状である。
これを受けて、この短波長領域において高感度な増感色素、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、メルカプト化合物を含む感光性組成物が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
また、これらの感光性組成物を含有する画像形成材料全てに共通の課題として、レーザ光照射部と未照射部において、その画像のON−OFFをいかに拡大できるかという課題、つまり画像形成材料の高感度と保存安定性の両立という課題がある。通常、光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により大きく低感度化する。そのため、画像形成層の上に酸素遮断性の層を設ける手段が取られている。しかし、酸素遮断性の層を設けると逆に暗重合等によるカブリが発生し、保存安定性が悪化する。また、感光層中の光開始系素材が、保存条件下で分解、消失してしまう場合も、光照射による活性ラジカル発生量を減少させるため、保存安定性悪化の要因の1つになる。従って、高感度と保存安定性の両立は困難な課題であり、前述の高感度な増感色素、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、メルカプト化合物を含む感光性組成物(例えば、特許文献1および2参照)では、高感度と保存安定性の両立は十分に達成されているとは言えない。このように、従来の技術では十分に満足できる結果は得られておらず、従来にはない新たな技術が求められていた。
【0007】
また、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザおよび半導体レーザ(以下、「赤外線レーザ」という場合がある。)は、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになった。これらの赤外線光源を用いたCTPシステムを構築できれば、明室下(黄色灯または白色灯)での取り扱いが可能な感材が使用できるようになる。
特に、平版印刷の分野において、これらの赤外線レーザは、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する際の記録光源として非常に有用である。それに伴い、これら各種レーザ光に感応する画像記録材料についても種々研究がなされており、感光波長760nm以上の赤外線レーザ対応の酸触媒架橋型のネガ型記録材料(例えば、特許文献3参照)、ラジカル重合型のネガ型記録材料(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
これらのことから、350nmから450nmの比較的短波な半導体レーザーを用いたCTPシステムあるいは、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザおよび半導体レーザを用いたCTPシステムに適した、中でも、レーザーが安価で製造できるとことから、前者CTPシステムに適した平版印刷版用原版を得ることが、本産業分野において強く望まれるようになっている。
【特許文献1】特開2004−191938号公報
【特許文献2】特開2004−295058号公報
【特許文献3】特開平8−276558号公報
【特許文献4】特開2000−89455公報
【非特許文献1】ブルース M モンロー(Bruce M. Monroe)ら著、ケミカルレヴュー(Chemical Review)、1993年、93巻、p.435−448
【非特許文献2】R. S. デビッドソン(R. S. Davidson)著、ジャーナル オブ フォトケミストリー アンド バイオロジー (Journalof Photochemistry and Biology ) A: Chemistry、1993年、第73巻、p.81−96
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記課題を考慮した本発明の目的は、高感度であるとともに、作業性、経済性、耐刷性、耐汚れ性、保存安定性に優れた、例えばCTPシステムに適合する走査露光用の感光性平版印刷版として有用な、感光性ネガ型画像形成材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する化合物、重合開始剤、および付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物、を含有す
る感光性組成物を用いた感光性ネガ型画像形成材料が、高い感光性を与え、かつ経時安定性に優れることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
(1)(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物、(B)重合開始剤、および(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物、を含有する感光層を支持体上に塗布してなる感光性ネガ型画像形成材料。
(2)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物(A)が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の感光性ネガ型画像形成材料。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)中、
Aは炭素数6以上の直鎖あるいは分岐状アルキル基またはフッ素原子数3以上のフルオロアルキル基を有する基を表す。
Xは複素環基を表す。
mは1〜6の整数を表し、2以上のとき、複数のAは同一でも異なっても良い。
nは1〜6の整数を表す。
(3)式(1)中のXで表される複素環基に含まれる窒素原子、硫黄原子および酸素原子の数の合計が2以上であることを特徴とする(2)に記載の感光性ネガ型画像形成材料。(4)式(1)中のXで表される複素環基に含まれる窒素原子の数が2以上であることを特徴とする(2)に記載の感光性ネガ型画像形成材料。
(5)重合開始剤(B)が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の感光性ネガ型画像形成材料。
【発明の効果】
【0013】
親水性支持体上に感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーとを含有するラジカル重合型の感光層を設けた感光性材料においては、ラジカル重合反応を促進し、感度や硬化膜の強度を上げる目的で、感光層上層に酸素遮断性の保護層を設けた感光性平版印刷版が広く知られている。
【0014】
感光層上層に酸素遮断層を設けても完全に酸素の透過を抑制できないために、感光層表面は重合禁止剤である酸素による重合阻害を受けやすい。また、酸素遮断層の多くは水可溶性であるPVA(ポリビニルアルコール)を主成分としており、高湿度下では、酸素遮断性が大きく低下する。表層の硬化が不十分であると、現像液が浸透しやすく、画像強度の弱い画像を与えることになる。特に露光エネルギーが相対的に低い網点の小点部では、その影響が大きく、耐刷性が低下する。
【0015】
長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物は、その構造的性質から感光層表面に局在化する。また-SH基は、重合開始剤から発生したラジカルにより速やかに水素が引き抜かれ、-S・となり重合を開始する。この-S・は酸素の影響を受けにくいという性質を有し、感光層中のエチレン性不飽和結合に速やかに付加する。この様な化合物を使用することにより、感光層表層の硬化反応の酸素による影響が低減し、画像強度に優れた画像
を与えることができる。
【0016】
本発明の化合物を感光層成分として用いることにより、感度および経時安定性に優れ、また特に網点の小点部(ハイライト)の耐刷性に優れた感光性平版印刷版を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物は、(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物、(B)重合開始剤、および(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物、を含有することを特徴とする。以下に、本発明の感光性組成物に使用しうる各化合物について、順次説明する。
【0018】
(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物
本発明で使用する(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物は、これらの条件を満たす化合物であれば、構造等の制限はない。
好ましくは、下記式(1)で表される化合物である。
【0019】
【化2】

【0020】
式(1)中、
Aは炭素数6以上の直鎖あるいは分岐状アルキル基またはフッ素原子数3以上のフルオロアルキル基を有する基を表す。
Xは複素環基を表す。
mは1〜6の整数を表し、2以上のとき、複数のAは同一でも異なっても良い。
nは1〜6の整数を表す。
【0021】
Xの複素環としては、以下のものを例として挙げることができる。チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5−トリアジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、キノリン、フェナントリジン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、テトラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドリジン、イソインドリジン、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジン等が挙げられ、これらは、さらにベンゾ縮環しても良く、また置換基を有していても良い。
【0022】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合には更に置換基を有していてもよい。
【0023】
アルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数1から20までの直鎖状のアルキル基、炭素原子数5から20までの分岐状のアルキル基、及び炭素原子数5から20までの環状のアルキル基がより好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0024】
アルキル基が置換基を有する場合(即ち、置換アルキル基である場合)、置換アルキル基のアルキル部分としては、上述した炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましい炭素原子数の範囲についても上記アルキル基と同様である。
【0025】
置換アルキル基である場合の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、s−ブトキシブチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、ピリジルメチル基、テトラメチルピペリジニルメチル基、N−アセチルテトラメチルピペリジニルメチル基、トリメチルシリルメチル基、メトキシエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、等を挙げることができる。これらの中でも、特に、フェネチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、および、シンナミル基が好ましい。
【0026】
アルキル基に導入可能な置換基としては、上記置換アルキル基の説明中に記載された置換基の他、以下に例示する非金属原子から構成される1価の置換基も挙げられる。上述した置換基を含む好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリー
ルチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(ホスホナト基と称する。)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)「alkyl=アルキル基、以下同」、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)「aryl=アリール基、以下同」、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl))及びその共役塩基基(アルキルホスホナト基と称する。)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(アリールホスホナト基と称する。)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(アルキルホスホナトオキシ基と称する。)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(アリールホスホナトオキシ基と称する。)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロ環基、シリル基、等が挙げられる。
【0027】
アルキル基に導入可能な置換基におけるアルキル部分の具体例としては、上述した一価の置換基が置換アルキル基である場合と同様であり、好ましい範囲も同様である。
また、一価の置換基で表されるアルキル基に導入可能な置換基におけるアリール部分の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、
ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、等を挙げることができる。
【0028】
アルケニル基としては、炭素原子数2から20のアルケニル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数2から10までのアルケニル基が好ましく、炭素原子数2から8までのアルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。導入可能な置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、及び置換アリール基を挙げることができ、ハロゲン原子、炭素原子数1から10までの直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−ブテニル基、2−フェニル−1−エテニル基、2−クロロ−1−エテニル基、等が挙げられる。
【0029】
アルキニル基としては、炭素原子数2から20のアルキニル基を挙げることができる。これらの中でも、炭素原子数2から10までのアルキニル基が好ましく、炭素原子数2から8までのアルキニル基がより好ましい。その具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0030】
アリール基としては、ベンゼン環、2個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができる。その具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0031】
アリール基が置換基を有する場合(即ち、置換アリール基である場合)、置換アルキル基としては、環形成炭素原子上に置換基として、非金属原子から構成される1価の置換基を有するものが挙げられる。導入される置換基の好ましい例としては、前述したアルキル基、置換アルキル基、及び、置換アルキル基における置換基の説明において、記載したものを挙げることができる。
【0032】
置換アリール基である場合の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。これらの中でも、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クロロフェニル基等が好ましい。
【0033】
ヘテロ環基としては、3員環から8員環のヘテロ環基が好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む3乃至6員環のヘテロ環基がより好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含む5乃至6員環のヘテロ環基がさらに好ましい。その具体例としては、ピリジル基、ピペリジニル基等が挙げられる。
【0034】
シリル基としては、置換基を有していてもよく、炭素数0から30のシリル基が好ましく、炭素数3から20のシリル基がより好ましく、炭素数3から10のシリル基が更に好ましい。その具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基等が挙げられる。
【0035】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも、塩素原子および臭素原子が好ましい。
【0036】
置換オキシ基(R06O−)としては、R06が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基であるものを用いることができる。好ましい置換オキシ基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、ならびにアリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに、アリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。また、アシルオキシ基におけるアシル基(R07CO−)としては、R07が、先の例として挙げたアルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基のものを挙げることができる。これらの置換基の中では、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基がより好ましい。好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基等が挙げられる。
【0037】
アミノ基はアミド基も含む置換アミノ基であってもよい。アミド基も含む置換アミノ基
(R08NH−、(R09)(R010)N−)としては、R08、R09、R010が水素原子を除く一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。なおR09とR010とは結合して環を形成してもよい。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N'−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができ、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基におけるアシル基(R07CO−)のR07は前述のとおりである。これらの内、より好ましいものとしては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
置換スルホニル基(R011−SO2−)としては、R011が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。より好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、置換又は未置換のスルファモイル基、を挙げることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、等が挙げられる。
【0039】
スルホナト基(−SO3−)は前述のとおり、スルホ基(−SO3H)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンとともに使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0040】
置換カルボニル基(R013−CO−)としては、R013が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N'−アリールカルバモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらの内、より好ましい置換カルボニル基としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基が挙げられ、さらにより好ましいものとしては、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基ならびにアリーロキシカルボニル基が挙げられる。好ましい置換カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ジメチルアミノフェニルエテニルカルボニル基、メトキシカルボニルメトキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基等が挙げられる。
【0041】
置換スルフィニル基(R014−SO−)としては、R014が一価の非金属原子団からなる基のものを使用できる。好ましい例としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものを挙げることができる。これらの内、より好ましい例としてはアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基が挙げられる。このような置換スルフィニル基の具体例としては、ヘキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基等が挙げられる。
【0042】
置換ホスホノ基とはホスホノ基上の水酸基の一つもしくは二つが他の有機オキソ基によって置換されたものを意味し、好ましい例としては、前述のジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。これらの中ではジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基がより好ましい。このような具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基等が挙げられる。
【0043】
ホスホナト基(−PO32−、−PO3H−)とは、ホスホノ基(−PO32)の、酸第一解離もしくは、酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味する。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類、等)、ならびに金属イオン類(Na+、K+、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0044】
置換ホスホナト基とは前述の置換ホスホノ基の内、水酸基を一つ有機オキソ基に置換したものの共役塩基陰イオン基であり、具体例としては、前述のモノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))の共役塩基が挙げられる。
【0045】
Xの複素環としては、複素環を形成する窒素原子、硫黄原子、酸素原子の数の合計が2以上であるものが感度の点で好ましい。例えば、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジンが挙げられる。
【0046】
さらにXの複素環としては、複素環を形成する窒素原子の数が2以上であるものが感度、経時安定性の点で好ましい。例えば、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4-トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンズイミダゾール、トリアジン、ピリミジンが挙げられる。
【0047】
式(1)中のAで表される炭素数6以上の直鎖あるいは分岐状アルキル基を有する基としては、式(2)で表されるものが好ましい。
【0048】
【化3】

【0049】
式(2)において、nは6〜40の整数を表す。中でも、nは、10〜30の整数が好ましく、12〜20の整数がより好ましい。
nが6以上のものを用いることによって、膜厚方向に長鎖アルキル基の濃度分布を持った層が形成され、この濃度分布としては、感光層表面近傍の長鎖アルキル基濃度が高く、感光層の深部方向にアルキル基濃度が低くなるという現象が生じる。この範囲において、特定化合物を表面に配向させる効果が良好に発現し、感光層表層の硬化反応の酸素による影響が低減し、画像強度に優れた画像を与えることができる。
【0050】
Aで表されるフッ素原子数3以上のフルオロアルキル基を有する基としては、式(3)で表されるものが好ましい。
【0051】
【化4】

【0052】
式(3)において、nは1〜20の整数を表す。中でも、nは、1〜10の整数が好ましく、3〜10の整数がより好ましい。
nが1以上のものを用いることによって、膜厚方向にフルオロアルキル基の濃度分布を持った層が形成され、この濃度分布としては、感光層表面近傍のフルオロアルキル基濃度が高く、感光層の深部方向にフルオロアルキル基濃度が低くなるという現象が生じる。この範囲において、特定化合物を表面に配向させる効果が良好に発現し、感光層表層の硬化反応の酸素による影響が低減し、画像強度に優れた画像を与えることができる。
【0053】
式(2)および(3)において、Lは単結合または2価の連結基を表す。
Lが表す2価の連結基の具体例としては、炭素数1〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、炭素数2〜20の、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(単環、複素環)、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SO2NR−、−SO2NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SO2O−、−SO2OAr−、−OSO2−、−OSO2Ar−、−NRSO2−、−NArSO2−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR'−、−N+RAr−、−N+ArAr'−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、炭素数3ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−、−O−等が挙げられる。ここで、R及びR'は、それぞれ独立に、水素原子あるいは直鎖状、分岐状若しくは環状の、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。Ar及びAr'はそれぞれ独立にアリール基を表す。
【0054】
このような連結基の中でも、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−、−NR−、−O−等が好ましく、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−C(=O)O−、−O−、−NR−等がより好ましい。
また、Lで表される連結基としては、ここで挙げた連結基の2種類以上を組み合わせたものであってもよい。
【0055】
式(1)中、
mは1〜6の整数を表し、2以上のとき、複数のAは同一でも異なっても良い。mは現像性の点から1〜4が好ましく、1〜2が更に好ましい。
nは1〜6の整数を表す。nは、経時安定性の点で、1〜3が好ましく、1であることが特に好ましい。
【0056】
以下に、(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
これら化合物は、単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、2種以上を組み合わせることにより、硬化物の機械的強度といった物性や感度等を目的に応じて変化させることができる。
また必要に応じて、その他の-SH基を含有する化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本発明における(A)の化合物の含有量としては、感光性平版印刷版等の画像記録材料の記録層に適用される場合も同様に、感光性組成物に含有される全固形分中、0.01〜50質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜30質量%であり、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
【0062】
(B)重合開始剤
本発明における感光層に含有される重合開始剤とは、光及び/又は熱のエネルギーによってラジカルを発生し、(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物の重合反応を開始、促進させる化合物を指す。
【0063】
具体的な開始剤化合物は当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、ChemicalReview, 93, 435 (1993) や R. S. Davidson著、Journal of Photochemistry and Biology A: Chemistry, 73.81 (1993); J. P. Faussier,"Photoinitiated Polymerization-Theory and Applications": Rapra Review vol.9, Report, Rapra Technology (1998); M. Tsunooka et al., Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996) 等に多く記載されている。また、他の化合物群としては、さらに、F.D. Saeva, Topics in Current Chemistry, 156, 59 (1990); G. G. Maslak, Topics in Current Chemistry, 168, 1 (1993); H. B. Shuster et al, JACS, 112, 6329 (1990);I. D. F. Eaton et al, JACS, 102, 3298 (1980) 等に記載されているような、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0064】
以下、好ましい開始剤化合物の具体例に関し、(a)還元されて結合解裂を起こし活性
種を生成するもの、(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成しうるもの、及び(c)その他のもの、に分類して説明するが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては通説がない場合も多く、本発明はこれらの反応機構に関する記述に制限を受けるものではない。
【0065】
(a)還元されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの
炭素−ハロゲン結合結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、Polymer Preprints, Jpn., 41 (3) 542 (1992)に記載されている)。活性種としては、ラジカル、酸を発生しうる。具体的には、例えば、ハロメチル−s−トリアジン類の他、M.P. Hutt, E. F. Elslager および L. M. Merbel著,
Journal of Heterocyclic Chemistry, 7, 511 (1970) に記載される合成方法により当業者が容易に合成しうるハロメチルオキサジアゾール類、また、ドイツ特許2641100号、同3333450号、同3021590号、同3021599号の各明細書に記載される化合物等が好適に使用できる。
【0066】
窒素−窒素結合もしくは、含窒素ヘテロ環−含窒素ヘテロ環結合を有する化合物:還元的に結合解裂を起こす(例えば、J. Pys. Chem., 96, 207 (1992) に記載されている)。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。生成する活性種はロフィンラジカルであり、必要に応じ水素供与体との併用で、ラジカル連鎖反応を開始するほか、ロフィンラジカルによる酸化反応を用いた画像形成も知られている(J.Imaging Sci., 30, 215 (1986 )に記載されている)。
【0067】
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる(例えば、Polym. Adv. Technol., 1,287 (1990)に記載されている)。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。活性種としてラジカルを発生しうる。
【0068】
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性種を発生すると考えられる(例えば、J. Photopolym. Sci.Technol., 3, 149 (1990) に記載されている)。具体的には例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有しても良いベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウムテトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号,同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0069】
活性エステル類:スルホン酸やカルボン酸のニトロベンジルエステル類、スルホン酸やカルボン酸とN-ヒドロキシ化合物(N−ヒドロキシフタルイミドやオキシム等)とのエステル類、ピロガロールのスルホン酸エステル類、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類等は還元的に分解しうる。活性種としては、ラジカル、酸、を発生しうる。具体的な、スルホン酸エステル類の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、同0388343号、米国特許3901710号、同4181531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号の各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、同0101122号、米国特許4618564号、同4371605号、同4431774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平4−365048号の各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられ、さらに、例えば下記に示すような化合物が挙げられる。
【0070】
【化8】

【0071】
式中、Arは置換されても良い芳香族基または脂肪族基を表す。
また、活性種として塩基を生成することも可能であり、例えば下記のような化合物群が知られる。
【0072】
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的には例えば、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報に開示されている。
【0073】
【化9】

【0074】
式中Rは置換されても良い脂肪族基または芳香族基を表す。
ジスルホン類:還元的にS−S結合解裂を起こし酸を発生しうる。例えば特開昭61−166544号公報に記載されるようなジフェニルジスルホン類が知られる。
【0075】
(b)酸化されて結合解裂を起こし活性種を生成するもの
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる(例えば、J. Am. Chem. Soc., 112, 6329(1990)に記載される)。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
【0076】
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる(例えば、J. Am. Chem. Soc., 116, 4211 (1994)に記載される)。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
【0077】
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0078】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
【0079】
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0080】
(c)その他
増感機構は明確ではないが、開始剤化合物として機能しうるものも多い。チタノセン、フェロセン等の有機金属化合物や芳香族ケトン、アシルフォスフィン、ビスアシルフォスフィン類等が挙げられ、活性種としては、ラジカル、酸を発生しうる。
【0081】
以下、本発明に使用される開始剤化合物の内、感度や安定性に特に優れる好ましい化合物群を具体的に例示する。
【0082】
(1)ハロメチルトリアジン類
下記式[II]で表される化合物が挙げられる。特にラジカル発生、酸発生能にすぐれる。
【0083】
【化10】

【0084】
式[II]中、Xはハロゲン原子を表す。Y1は−CX'3、−NH2、−NHR1'、−NR1'2、−OR1'を表す。ここでR1'はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。R1は−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
【0085】
このような化合物の具体例としては、例えば、若林ら著、Bull. Chem. Soc. Japan, 42,2924(1969)記載の化合物、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(2',4'−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン等が挙げられる。その他、英国特許第1388492号明細書記載の化合物、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−S−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等、特開昭53−133428号公報記載の化合物、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン、2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス−トリクロルメチル−S−トリアジン等、独国特許第3337024号明細書記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0086】
【化11】

【0087】
【化12】

【0088】
また、F. C. Schaefer等による J. Org. Chem.,29,1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−S−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−S−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−S−トリアジン等を挙げることができる。
【0089】
さらに特開昭62−58241号公報記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0090】
【化13】

【0091】
更に特開平5−281728号公報記載の化合物、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0092】
【化14】

【0093】
(2)チタノセン類
開始剤化合物として特に好適に用いられる、チタノセン化合物は、前記した増感色素との共存下で光照射した場合、活性種を発生し得るチタノセン化合物であればいずれであってもよく、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41483号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−291号、特開平3−27393号、特開平3−12403号、特開平6−41170号の各公報に記載されている公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0094】
さらに具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0095】
(3)ボレート塩化合物
下記式[III]で表されるボレート塩類はラジカル発生能に優れる。
【0096】
【化15】

【0097】
式[III]中、R51、R52、R53およびR54は互いに同一でも異なっていてもよく、各々置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または置換もしくは無置換の複素環基を示し、R51、R52、R53およびR54はその2個以上の基が結合して環状構造を形成してもよい。ただし、R51、R52、R53およびR54のうち、少なくとも1つは置換または無置換のアルキル基である。Z+はアルカリ金属カチオンまたは第4級アンモニウムカチオンを示す。
【0098】
上記R51〜R54のアルキル基としては、直鎖、分枝、環状のものが含まれ、炭素原子数1〜18のものが好ましい。具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。また置換アルキル基としては、上記のようなアルキル基に、ハロゲン原子(例えば−Cl、−Brなど)、シアノ基、ニトロ基、アリール基(好ましくはフェニル基)、ヒドロキシ基、下記の基、
【0099】
【化16】

【0100】
ここでR55、R56は独立して水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。−COOR57(ここでR57は水素原子、炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。)、−COOR58または−OR59(ここでR58は炭素数1〜14のアルキル基、またはアリール基を示す。)を置換基として有するものが含まれる。
【0101】
上記R51〜R54のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの1〜3環のアリール基が含まれ、置換アリール基としては、上記のようなアリール基に前述の置換アルキル基の置換基、または炭素数1〜14のアルキル基を有するものが含まれる。
【0102】
上記R51〜R54のアルケニル基としては、炭素数2〜18の直鎖、分枝、環状のものが
含まれ、置換アルケニル基の置換基としては、前記の置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0103】
上記R51〜R54のアルキニル基としては、炭素数2〜28の直鎖または分枝のものが含まれ、置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の置換基として挙げたものが含まれる。
【0104】
また、上記R51〜R54の複素環基としてはN、SおよびOの少なくとも1つを含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられ、この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。さらに置換基として前述の置換アリール基の置換基として挙げたものを有していてもよい。
【0105】
式[III]で示される化合物例としては具体的には米国特許第3567453号、同4343891号、ヨーロッパ特許第109772号、同109773号の各明細書に記載されている化合物および以下に示すものが挙げられる。
【0106】
【化17】

【0107】
(4)ヘキサアリールビイミダゾール類
安定性に優れ、高感度なラジカル発生が可能である。具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロメチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0108】
(5)オニウム塩化合物
本発明に用いられるラジカル開始剤として好ましい(5)オニウム塩化合物には、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。
【0109】
【化18】

【0110】
一般式(1)中、Ar1とAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z2-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0111】
一般式(2)中、Ar3は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z3-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0112】
一般式(3)中、R23、R24及びR25は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z4-は(Z2-と同義の対イオンを表す。
【0113】
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、本願出願人が先に提案した特願平11−310623号明細書の段落番号[0030]〜[0033]に記載されたものや特願2000−160323号明細書の段落番号[0015]〜[0046]に記載されたもの、また、特願2000−266797号、特願2001−号177150号、特願2000−160323号、特願2000−184603号、特願2000−310808号、特願2002−265467号、特願2002−366539号記載の特定の芳香族スルホニウム塩化合物などを挙げることができる。
【0114】
本発明において用いられるオニウム塩は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、感光性平版印刷版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0115】
(6)有機過酸化物
有機過酸化物型の開始剤化合物を用いる場合、活性種としてラジカルの発生を非常に高感度で行うことができる。
【0116】
本発明に使用される有機過酸化物としては分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシオクタノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチル過酸化マレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0117】
これらの中で、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
開始剤化合物の好ましい例としては、チタノセン化合物、トリアジン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が挙げられ、特に好ましい開始剤化合物としては、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が挙げられる。
【0118】
以上述べた開始剤化合物に関しても、先の増感色素と同様、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素や、付加重合性不飽和化合物その他の開始剤化合物パートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。
【0119】
これらの開始剤化合物の使用法に関しても、先述の増感色素同様、感材の性能設計により適宜、任意に設定できる。例えば、2種以上併用することで、感光層への相溶性を高めることができる。
開始剤化合物の使用量は通常多い方が感光性の点で有利であり、感光層成分100質量部に対し、0.5〜80質量部、好ましくは1〜50質量部の範囲で用いることで十分な感光性が得られる。
【0120】
本発明におけるラジカル開始剤の更により好ましい例としては、上述の芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、メタロセン化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、を挙げることができ、更に最も好ましい例としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、チタノセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物を挙げることができる。
【0121】
これらのラジカル開始剤は、感光層の全固形分に対し、0.1〜50質量%、好ましくは、0.5〜30質量%、特に好ましくは5〜20質量%の割合で感光性組成物中に添加することができる。
本発明におけるラジカル開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
【0122】
(C)重合性化合物
本発明の感光性組成物における第3の必須成分「(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物」は、上述の光開始系の光反応により生じた、活性種の作用により、その物理的もしくは化学的特性が不可逆的に変化して、硬化反応、発色、消色反応などが生じる化合物であり、このような性質を有するものであれば特に制限なく任意のものを使用でき、例えば、上述の開始系に挙げた化合物自身がそのような性質を有する場合も多い。
光開始系から生成したラジカル、酸、および/または塩基により、変化する(C)重合
性化合物の特性としては、例えば、吸収スペクトル(色)、化学構造、分極率等の分子的な物性や、溶解性、強度、屈折率、流動性、粘着性、等の材料的な物性の変化を含む。
【0123】
例えば、成分(C)重合性化合物として、pH指示薬のように、pHによって吸収スペクトルの変化する化合物を用い、開始系から酸または塩基を発生させれば、露光部のみ色調を変化させることができ、このような組成物は画像形成材料として有用である。同様に、(C)重合性化合物として、酸化・還元や求核付加反応により吸収スペクトルが変化する化合物を用いた場合、開始系から生成するラジカルによる酸化、還元等を引き起こし画像形成が可能である。そのような例は、例えば、J.Am. Chem. Soc.,108,128(1986年)、J. Imaging. Soc.,30、215(1986年)、Israel. J. Chem.,25、264(1986年)に開示されている。
【0124】
なかでも、(C)重合性化合物として、付加重合または、重縮合可能な化合物を用い、開始系と組み合わせることにより、光硬化性樹脂、あるいはネガ型フォトポリマーを形成可能である。また、このような組成物は感光性平版印刷版のネガ型感光層としても有用である。
【0125】
このような(C)重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物(エチレン性不飽和結合を有する化合物等)やカチオン重合性化合物(エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、メチロール化合物等)、アニオン重合性化合物(エポキシ化合物等)が用いられ、そのような例は、例えば、フォトポリマー懇話会編、フォトポリマーハンドブック、工業調査会刊(1989)や、高分子、第45巻,786(1996)等に記載される。また、(C)重合性化合物としてチオール化合物を用い、光ラジカル発生系と組み合わせた組成物も良く知られる。
【0126】
(C)重合性化合物として酸分解性の化合物を用い、光酸発生剤と組み合わせることも有用である。例えば、側鎖や、主鎖が酸で分解する高分子を用い、光により溶解性や親疎水性等を変化させる材料は光分解型感光性樹脂、ポジ型フォトポリマーとして広く実用されている。そのような具体例は例えば、ACS.Symp. Ser. 242,11(1984)、特開昭60−3625号公報、米国特許第5102771号,同5206317号,同5212047号各明細書、特開平4−26850号,特開平3−1921731号,特開昭60−10247号,特開昭62−40450号各明細書等が挙げられる。
【0127】
以下には本発明の感光性組成物の主要な用途の一つである、高感度な感光性平版印刷版を得る目的に対し特に優れた(C)重合性化合物物である付加重合性化合物を用いた場合を例に挙げ、より詳しく述べる。
【0128】
(C−1)付加重合性化合物
本発明に使用される好ましい(C)重合性化合物である、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付
加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、ハロゲン基や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0129】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0130】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0131】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0132】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0133】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0134】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0135】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(V)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0136】
CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (V)
(ただし、R及びR'は、独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
【0137】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0138】
さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた感光性組成物を得ることができる。
【0139】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0140】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な感光性平版印刷版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。感光層中の付加重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、感光層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感光層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、付加重合性化合物は、感光層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0141】
(C)重合性化合物として、前記(C−1)付加重合性化合物以外のものを用いる場合の含有量は、目的とする特性変化或いは用いられる化合物により最適な量を適宜選択しうるが、一般的には、酸化・還元や求核付加反応により吸収スペクトルが変化する化合物を用いた場合、組成物全固形分中10〜80質量%程度であることが好ましい。
【0142】
(D)バインダーポリマー
本発明の感光性組成物の好ましい実施形態である感光性平版印刷版の感光層への適用に際しては、感光性組成物には膜性向上などの観点から、さらにバインダーポリマーを使用することが好ましい。
バインダーポリマーとしては線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どのような化合物を使用しても構わないが、好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とする水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0143】
このバインダーポリマーとしては、感度の観点から、側鎖に下記一般式(a)〜(c)で表されるエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。中でも、感度、保存安定性の点で、下記一般式(a)、(b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する化合物が最も好ましい。
【0144】
【化19】

【0145】
上記一般式(a)〜(c)中、R1〜R11は、それぞれ独立して、1価の有機基を表す。また、X、Yは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、−N−R12を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R12又はフェニレン基を表す。R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。
【0146】
前記一般式(a)において、Rl〜R3は、それぞれ独立に、1価の有機基を表すが、Rlとしては、好ましくは、水素原子又はアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
また、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR12−を表し、R12は、水素原子、又は1価の有機基を表す。ここで、R12は、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記各基は置換基を有してもよく、導入しうる置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0147】
前記一般式(b)において、R4〜R8は、それぞれ独立に、1価の有機基を表すが、R4〜R8は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基が好ましい。これら各基は置換基を有してもよく、導入しうる置換基としては、一般式(a)において挙げたものが例示される。
また、Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N−R12を表す。R12としては、一般式(a)におけるものと同様のものが挙げられる。
【0148】
前記一般式(c)において、R9〜R11は、それぞれ独立に、1価の有機基を表すが、R9としては、好ましくは、水素原子又はアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、中でも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。これら各基は置換基を有してもよく、導入しうる置換基としては、一般式(a)において挙げたものが例示される。
また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−NR12−、又は置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R12は、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0149】
また、本発明におけるバインダーポリマーとしては、非画像部の現像除去性に優れる点から、側鎖にカルボキシル基を有するものが好ましく、中でも、現像性及び本発明の保護層との接着性に優れる点から、下記一般式(d)で表される側鎖カルボキシル基含有ポリマーが好ましい。以下、側鎖カルボキシル基含有ポリマーについて詳細に説明する。
【0150】
【化20】

【0151】
一般式(d)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。
まず、一般式(d)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
【0152】
一般式(d)におけるR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その原子数が2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。ここで示す原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。
より具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(d)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
【0153】
一般式(d)におけるR2で表される連結基として、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
【0154】
この中でも、一般式(d)におけるR2で表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体
的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、R2は、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
【0155】
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、R2は、縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
【0156】
2で表される連結基として最も好ましくは、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものであり、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
【0157】
感光層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
【0158】
一般式(d)におけるAがNR3−である場合のR3は、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR3で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
【0159】
一般式(d)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
また、一般式(d)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
【0160】
更に、本発明のバインダーポリマーとしては、現像性、保存安定性、及び保護層との接着性に優れる点から、側鎖にアミド基を有するものが好ましく、中でも、側鎖に、下記一般式(e)で表されるアミド基を有するポリマーがより好ましい。
【0161】
【化21】

【0162】
一般式(e)中、Zは−CO−、−SO2−を表し、Rは、水素原子または1価の有機基を表す。また、Zとしては、特に、−CO−が好ましく、Rとしては、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、脂環基、ヘテロ環基が好ましい。
【0163】
また、本発明におけるバインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることもできる。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、感光層の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0164】
特にこれらの中で、ベンジル基又はアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂及び特開2000−187322号公報、特開2002−62648号、特願2001−253217号、特願2002−287920号、特開2002−62648号などに記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0165】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0166】
更に、この他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0167】
このようなバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性や感度の観点から、好ましくは60〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
【0168】
好ましい実施様態においてバインダーポリマーは実質的に水不要でアルカリに可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないかもしくは非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはバインダーポリマーの酸価(ポリマー1g当たりの酸含率を化学等量数で表したもの)は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、より好ましくは、酸価が0.6〜1.3meq/gの範囲である。
【0169】
本発明で使用されるバインダーポリマーの重量平均分子量については、好ましくは1、000以上であり、更に好ましくは1万〜20万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,500以上であり、更に好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0170】
本発明で使用されるバインダーポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
本発明で使用されるポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が使用できる。
【0171】
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。本発明における感光層に対するこれらバインダーポリマーを添加量は、全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で添加される。添加量を20質量%以上とすることにより、画像形成した際、画像部の強度向上効果が得られる。また添加量を95質量%以下とすることにより、画像形成が可能となる。また、(C)付加重合性化合物と(D)バインダーポリマーとの含有比は、質量比で1/3〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0172】
(E)増感色素
本発明に係る感光層は、感度向上の観点から、さらに増感色素を含むことが好ましい。増感色素は、その吸収波長に応じた露光感度を向上させる目的で用いられ、このため、画像形成機構に応じて、露光波長に適合する色素を選択すればよい。増感色素としては、(1)350nm〜450nm域に吸収を有するものや、(2)赤外領域に吸収を有するものなどが適宜用いられる。この増感色素が吸収し得る波長の露光により、既述の(B)重合開始剤のラジカル発生反応や、それによる(C)の付加重合性化合物の重合反応が促進されるものである。
【0173】
(1)350〜450nmの領域に吸収を有する増感色素
このような増感色素の例としては、下記一般式(XIV)〜(XVIII)で表される化合物が
挙げられる。
【0174】
【化22】

【0175】
式(XIV)中、A1は硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0176】
以下に一般式(XIV)で表される化合物の好ましい具体例を示す。
【0177】
【化23】

【0178】
【化24】

【0179】
式(XV)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−又は−S−を表す。また、Wは一般式(XIV)に示したものと同義である。
【0180】
一般式(XV)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0181】
【化25】

【0182】
【化26】

【0183】
式(XVI)中、A2は硫黄原子又はNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0184】
一般式(XVI)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0185】
【化27】

【0186】
【化28】

【0187】
式(XVII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−又は−NR63−又は−NR64−を表し、R63、R64はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同してして色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R61、R62はそれぞれ独立に一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0188】
一般式(XVII)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0189】
【化29】

【0190】
【化30】

【0191】
式(XVIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子又は−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性又は芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0192】
一般式(XVIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0193】
【化31】

【0194】
また、増感色素の例としては、下記一般式(I)で表される化合物も挙げられる。
350〜450nmの領域に吸収を有する増感色素としては、感度の点で、一般式(I
)で表される化合物が最も好ましい。
【0195】
【化32】

【0196】
前記一般式(I)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、Xは酸素原子、硫黄原子又は−NR1−を表す。R1、R2、R3、R6はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R4、R5はそれぞれ独立に一価の非金属原子団を表す。A、R3、R4、R5、R6は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
【0197】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6が一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基または置換もしくは非置換のアリール基を表す。
次に、R1、R2、R3、R4、R5、R6の好ましい例について具体的に述べる。好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0198】
R1、R2、R3、R4、R5、R6として好ましいアリール基の具体例としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、を挙げることができ、これらのなかでは、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0199】
なお、R1のさらに好ましい例としては、置換もしくは無置換のアリール基が挙げられ、R2及びR6のさらに好ましい例としては、置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられる。R2の特に好ましい例としては、脂環式アルキル基が挙げられ、具体的には、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。また、R3、R4、R5の好ましい例としては、置換もしくは無置換のアリール基もしくは置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられるが、とくに好ましい例は、R3とR4、或いはR4とR5、或いはR3とR5が、2価の連結基で結合している場合であり、具体的には、R3、R4、R5の間でシクロアルキル構造を形成していることが好ましい。好ましいシクロアルキル構造としては、シクロヘキシル構造、シクロへプチル構造、シクロオクチル構造、アダマンタン構造が挙げられる。これらの置換基が好適である要因は定かではないが、このような置換基を有することで、光吸収により生じる電子励起状態と開始剤化合物との相互作用が特に大きくなり、開始剤化合物のラジカル、酸または塩基を発生させる効率が向上すること(感度向上効果)、イミン構造に隣接して嵩高い構造が導入されることで、加水分解、酸化分解等、イミン構造の分解による感光膜からの消失が抑制されること(保存安定性向上効果)が考えられる。
【0200】
次に、一般式(I)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4、R5、R6の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
なかでも、好ましいAとしては、アルコキシ基、チオアルキル基、アミノ基を有するアリール基が挙げられ、より好ましいAとしてはアミノ基を有するアリール基が挙げられる。特に好ましいアミノ基を有するアリール基としては、ジアルキルアミノアリール基、ジアリールアミノアリール基が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、ピペリジノフェニル基、モルホリノフェニル基、ジュロリジン基、ジフェニルアミノフェニル基が挙げられる。
【0201】
以下に、本発明に係る一般式(I)で表される増感色素の好ましい具体例(例示化合物D1〜例示化合物D9)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0202】
【化33】

【0203】
【化34】

【0204】
これらの増感色素に関しては、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素と、付加重合性化合物構造(例えば、アクリロイル基やメタクリロイル基)とを共有結合・イオン結合・水素結合等の方法により結合させることで、露光膜の高強度化や、露光後の膜からの色素の不要な析出抑制を行うことができる。
【0205】
更に、感光層の(アルカリ)水系現像液への処理適性を高める目的に対しては、これらの増感色素に対し、親水性部位(カルボキシル基並びにそのエステル、スルホン酸基並びにそのエステル、エチレンオキサイド基等の酸基若しくは極性基)の導入が有効である。特に、エステル型の親水性基は、該感光層中では比較的疎水的構造を有するため相溶性に優れ、かつ、現像液中では、加水分解により酸基を生成し、親水性が増大するという特徴を有する。
その他、例えば、該感光層中での相溶性向上、結晶析出抑制のために、増感色素に対し、適宜、置換基を導入することができる。例えば、ある種の感光系では、アリール基やアリル基等の不飽和結合が相溶性向上に非常に有効である場合があり、また、分岐アルキル構造導入等の方法により、色素π平面間の立体障害を導入することで、結晶析出が著しく抑制できる。
また、増感色素に対し、ホスホン酸基やエポキシ基、トリアルコキシシリル基等の導入により、金属や金属酸化物等の無機物への密着性を向上させることができる。そのほか、目的に応じ、増感色素のポリマー化等の方法も利用できる。
【0206】
これらの増感色素のどの構造を用いるか、単独で使用するか2種以上併用するか、添加量はどうか、といった使用法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光性組成物層への相溶性を高めることができる。増感色素の選択は、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量は比較的少なくできるので、経済的であり、かつ平版印刷版用原版に用いた場合、その感光層の膜物性の点からも有利である。該感光層の感光性、解像度や、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量を適宜選択する。例えば、吸光度が0.1以下の低い領域では感度が低下する。また、ハレーションの影響により低解像度となる。
【0207】
但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化せしめる目的に対しては、この様な低い吸光度の方がかえって硬化度をあげられる場合もある。また、吸光度が3以上の様な高い領域では、上記感光層表面で大部分の光が吸収され、より内部での硬化が阻害され、例えば印刷版として使用した場合には膜強度、基板密着性の不十分なものとなる。比較的薄い膜厚で使用する平版印刷版としての使用に際しては、前記(1)350〜450nmの領域に吸収を有する増感色素の添加量は、感光層の吸光度が0.1から1.5の範囲、好ましくは0.25から1の範囲となるように設定するのが好ましい。感光性平版印刷版として利用する場合には、これは、通常、感光層成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0208】
(2)赤外領域に吸収を有する増感色素
本発明においては、赤外領域(具体的には波長680nm〜1200nm程度)に吸収を有する増感色素として、赤外光を吸収し、熱エネルギーに変換する赤外線吸収剤を含有することが好ましい。このような赤外線吸収剤としては、公知の分光増感色素、又は光を吸収して光ラジカル開始剤と相互作用する染料或いは顔料が挙げられる。このような(2)増感色素を用いることで、本発明の感光層は、赤外線感応性を有するようになる。
【0209】
<分光増感色素或いは染料>
本発明に用いられる赤外線吸収剤として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体(例えば、下記化合物)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)等が挙げられる。
【0210】
【化35】

【0211】
より好ましい分光増感色素又は染料としては、下記に示す各公報に記載の化合物が挙げ
られる。
特公昭40−28499号記載のピリリウム塩類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0212】
【化36】

【0213】
特公昭46−42363号記載のシアニン類、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0214】
【化37】

【0215】
特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0216】
【化38】

【0217】
特開平2−85858号、特開平2−216154号の共役ケトン色素、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0218】
【化39】

【0219】
特開昭57−10605号記載の色素、特公平2−30321号記載のアゾシンナミリデン誘導体、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0220】
【化40】

【0221】
特開平1−287105号記載のシアニン系色素、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0222】
【化41】

【0223】
特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号記載のキサンテン系色素、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0224】
【化42】

【0225】
特公昭59−28325号記載のアミノスチリルケトン、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0226】
【化43】

【0227】
また、増感色素として、特に、以下の赤外線吸収染料或いは顔料も好適に使用される。好ましい前記染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号公報等に記載されているシアニン染料、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0228】
その他、本発明において好適に用いることのできるシアニン色素としては、特開200
1−133969公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。また、具体例としては、以下に例示するものも挙げられる。
【0229】
【化44】

【0230】
【化45】

【0231】
【化46】

【0232】
また、増感色素としては、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、更に、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)公報に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や、特公平5−13514号、同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0233】
また、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料、EP916513A2号明細書に記載のフタロシアニン系染料も好ましい染料として挙げることができる。
【0234】
更に、特願平10−79912号公報に記載のアニオン性赤外線吸収剤も、好適に使用することができる。アニオン性赤外線吸収剤とは、実質的に赤外線を吸収する色素の母核にカチオン構造がなく、アニオン構造を有するものを示す。例えば、(イ)アニオン性金属錯体、(ロ)アニオン性カーボンブラック、(ハ)アニオン性フタロシアニン、更に(ニ)下記一般式(i)で表される化合物などが挙げられる。これらのアニオン性赤外線吸収剤の対カチオンは、プロトンを含む一価の陽イオン、或いは多価の陽イオンである。
赤外領域に吸収を有する増感色素としては、感度の点で、式(i)で表される化合物が最も好ましい。
【0235】
【化47】

【0236】
ここで、(イ)アニオン性金属錯体とは、実質的に光を吸収する錯体部の中心金属及び配位子全体でアニオンとなるものを示す。
【0237】
(ロ)アニオン性カーボンブラックは、置換基としてスルホン酸、カルボン酸、ホスホン酸基等のアニオン基が結合しているカーボンブラックが挙げられる。これらの基をカーボンブラックに導入するには、カーボンブラック便覧第三版(カーボンブラック協会編、1995年4月5日、カーボンブラック協会発行)第12頁に記載されるように、所定の酸でカーボンブラックを酸化する等の手段をとればよい。
【0238】
(ハ)アニオン性フタロシアニンは、フタロシアニン骨格に、置換基として、先に(ロ)の説明において挙げたアニオン基が結合し、全体としてアニオンとなっているものを示す。
【0239】
次に、前記(ニ)一般式(i)で表される化合物、について、詳細に説明する。前記一般式(i)中、G9はアニオン性置換基を表し、G10は中性の置換基を表す。(X10+は、プロトンを含む1〜m価のカチオンを表し、mは1ないし6の整数を表す。M5は共役鎖を表し、この共役鎖M5は置換基や環構造を有していてもよい。共役鎖M5は、下記式で表すことができる。
【0240】
【化48】

【0241】
式中、R80、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基を表し、これらは互いに連結して環構造を形成していてもよい。nは、1〜8の整数を表す。
【0242】
前記一般式(i)で表されるアニオン性赤外線吸収剤のうち、以下のIRA−1〜IRA−5のものが、好ましく用いられる。
【0243】
【化49】

【0244】
また、以下のIRC−1〜IRC−44に示すカチオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
【0245】
【化50】

【0246】
【化51】

【0247】
【化52】

【0248】
【化53】

【0249】
【化54】

【0250】
【化55】

【0251】
【化56】

【0252】
【化57】

【0253】
【化58】

【0254】
前記構造式中、T-は、1価の対アニオンを表し、好ましくは、ハロゲンアニオン(F-,Cl-、Br-、I-)、ルイス酸アニオン(BF4-、PF6-、SbCl6-、ClO4-)、アルキルスルホン酸アニオン、アリールスルホン酸アニオンである。
【0255】
前記アルキルスルホン酸のアルキルとは、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0256】
また、前記アリールスルホン酸のアリールとは、1個のベンゼン環からなるもの、2又は3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものを表し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらの中でも、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0257】
また、以下のIRN−1〜IRN−9に示す非イオン性赤外線吸収剤も好ましく使用できる。
【0258】
【化59】

【0259】
【化60】

【0260】
【化61】

【0261】
前記例示化合物中、特に好ましいアニオン性赤外線吸収剤としてはIRA−1が、カチオン性赤外線吸収剤としてはIRC−7、IRC−30、IRC−40、及びIRC−42が、非イオン性赤外線吸収剤としてはIRN−9が挙げられる。
【0262】
<顔料>
本発明において使用される赤外線吸収顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0263】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0264】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0265】
顔料の粒径は、感光層塗布液中の分散物の安定性や、感光層の均一性の観点から、0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
【0266】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0267】
なお、重合反応(硬化反応)を促進するために添加される増感色素は、感光層中に他の成分とともに直接添加してもよいが、これに隣接する別の層を設けて、そこへ添加しても同様の効果を得ることができる。
特に、本発明における感光層を後述する感光性平版印刷版のネガ型感光層の材料として使用する場合、該感光層と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよいが、ネガ型感光性平版印刷版を作成した際に、感光層の波長300nm〜1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1〜3.0の間にあることが、感度の観点から好ましい。光学濃度は前記増感色素の添加量と感光層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。感光層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、或いは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に感光層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
このような赤外線領域に吸収を有する増感色素の感光層中への添加量としては、0.5〜20質量%程度が好ましく、2〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0268】
(F)その他の成分
本発明の感光性組成物には、さらにその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
(F−1)共増感剤
ある種の添加剤(以後、共増感剤という)を用いることで、感度をさらに向上させる事ができる。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応
し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(a)還元されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
【0269】
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素一酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0270】
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等があげられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0271】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらと、ヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類をあげる事ができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等をあげる事ができる。
【0272】
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物:例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これ
らは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンゾオキサゾール類、2−メルカプトベンズイミダゾール類等があげられる。
【0273】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開平9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されており、それらを本発明においても適用することができる。以下に、その一部を例示するが、本発明はこれらに限定されるもの
はない。なお、下記式中、−TMSはトリメチルシリル基を表す。
【0274】
【化62】

【0275】
これらの共増感剤に関しても、先の増感色素と同様、さらに、感光層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素や開始剤化合物、付加重合性不飽和化合物その他のパートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。
これらの共増感剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。使用量はエチレン性不飽和二重結合を有する化合物100質量部に対し0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
【0276】
(F−2)重合禁止剤
また、本発明においては以上の基本成分の他に感光性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、感光性平版印刷版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の
過程でその感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0277】
(F−3)着色剤等
さらに、本発明の感光性組成物を感光性平版印刷版に用いる場合、その感光層の着色を目的として染料もしくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させる事ができる。着色剤としては、多くの染料は感光層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料および顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0278】
(F−4)その他の添加剤
さらに、本発明の感光性組成物を感光性平版印刷版に用いる場合、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0279】
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0280】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加もできる。
その他、感光層と支持体との密着性向上や、未露光感光層の現像除去性を高めるための添加剤、中間層を設ける事も可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高める事が可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、耐汚れ性の向上が可能となる。
【0281】
感光性平版印刷版を作製するために、本発明の感光性組成物を支持体上に塗布して感光層を形成する際には、種々の有機溶剤に溶かして使用に供される。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0282】
前記感光層の支持体への塗布量は、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性等の影響を考慮し、用途に応じ適宜選択することが望ましい。塗布量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の感光性組成物の好ましい使用態様である走査露光用感光性平版印刷版の感光層としての塗布量は、一般的には、乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
【0283】
また、感光層塗布液には、そのような感光層の現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。
【0284】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0285】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
【0286】
上記各界面活性剤の感光層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0287】
(支持体)
本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版を得るには上記感光層を、表面が親水性の支持体上に設けることが望ましい。親水性の支持体としては、従来公知の、平版印刷版に使用される親水性支持体を限定なく使用することができる。使用される支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)等が挙げられる。これらは、樹脂フィルムや金属板などの単一成分のシートであっても、2以上の材料の積層体であってもよく、例えば、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙やプラスチックフィルム、異種のプラスチックフィルム同志の積層シート等が含まれる。また、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上、等の目的で適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0288】
特に好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルムまたはアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は特に好ましい。また、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0289】
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の
異元素を含む合金板であり、更にはアルミニウムがラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0290】
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、粗面化(砂目立て)処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
この様に粗面化されたアルミニウム板は、所望により、アルカリエッチング処理、中和処理を経て、表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施すことができる。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0291】
さらに、粗面化したのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号公報に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、もしくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはそれらの塩の水溶液または非水溶液の単独または二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
支持体の親水化処理としては、米国特許第3658662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号公報、特開昭52−58602号公報、特開昭52−30503号公報に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理および珪酸ソーダ処理を組み合わせた表面処理も有用である。また、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレイン、陽極酸化処理さらに珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。
【0292】
さらに、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
さらに特開平7−159983号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
その他好ましい例として、任意の支持体上に表面層として耐水性の親水性層を設けたも
のも上げることができる。このような表面層としては例えば米国特許第3055295号明細書や、特開昭56−13168号公報記載の無機顔料と結着剤とからなる層、特開平9−80744号公報記載の親水性膨潤層、特表平8−507727号公報記載の酸化チタン、ポリビニルアルコール、珪酸類からなるゾルゲル膜等を挙げることができる。
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光性組成物の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性向上等のために施されるものである。
【0293】
(保護層)
本発明の感光性組成物を走査露光用感光性平版印刷版に用いる場合、重合性の化合物を含む感光層の上に、必要に応じて保護層を設ける事ができる。このような感光性平版印刷版は、通常、露光を大気中で行うが、保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、さらに、露光に用いる光の透過性が良好で、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できる事が望ましい。
【0294】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いる事がよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。特に、ポリビニルアルコールに対しポリビニルピロリドンを15〜50質量%の範囲で置き換えた混合物が保存安定性の観点から好ましい。
【0295】
ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものをあげる事ができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA一CS、PVA―CST、PVA一HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0296】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の重合層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。
【0297】
これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。たとえばポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジヨンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用する事ができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0298】
さらに、保護層に他の機能を付与する事もできる。例えば、露光に使う光(例えば、赤外線レーザならば波長760〜1200nm)の透過性に優れ、かつ露光に係わらない波長の光を効率良く吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性をさらに高める事ができる。
【0299】
本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版を製版し、平版印刷版とする際には、通常、以下に詳述する露光処理(画像露光)を施した後、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像を形成する。これらの感光性組成物を平版印刷版の作製に使用する際の好ましい現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミンまたはジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%になるように添加される。
【0300】
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号および同第3615480号明細書に記載されているものを挙げることができる。
さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0301】
ここで用いられる特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
【0302】
本発明に係る感光性平版印刷版の製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。温度が高すぎると、非画像部領域における所望されない硬化反応が生起する等の問題を生じるおそれがある。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は200〜500℃の範囲で加熱処理を行う。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる。
【0303】
本発明に係る走査露光用感光性平版印刷版の露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。望ましい、光源の波長は350nmから450nmであり、具体的にはInGaN系半導体レーザが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、
フラットベッド方式等の何れでもよい。また、本発明の感光層成分は、高い水溶性のものを使用することで、中性の水や弱アルカリ水に可溶とすることもできるが、このような構成の平版印刷版は印刷機上に装填後、機上で露光−現像といった方式を行うこともできる。
【0304】
350〜450nmの入手可能なレーザ光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザとして、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザ(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザ系として、KNbO3リング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)その他、パルスレーザとしてN2レーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)などが利用できる。
特にこの中でAlGaInN半導体レーザ(市販InGaN系半導体レーザ400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0305】
また走査露光方式の平版印刷版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源の中でパルスレーザ以外のもの全てを利用することができる。現実的には感材感度と製版時間の関係で、以下の露光装置が特に好ましい。
・内面ドラム方式でガスレーザあるいは固体レーザ光源を1つ使用するシングルビーム露光装置
・フラットベッド方式で半導体レーザを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
・外面ドラム方式で半導体レーザを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
【0306】
以上のようなレーザ直描型の平版印刷版においては、一般に感材感度X(J/cm2)、感材の露光面積S(cm2)、レーザ光源1個のパワーq(W)、レーザ本数n、全露光時間t(s)との間に式(eq1)が成立する。
X・S=n・q・t (eq1)
【0307】
i)内面ドラム(シングルビーム)方式の場合
レーザ回転数f(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)の間には一般的に式(eq2)が成立する。
f・Z・t=Lx (eq2)
ii)外面ドラム(マルチビーム)方式の場合
ドラム回転数F(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq3)が成立する。
F・Z・n・t=Lx (eq3)
iii)フラットベッド(マルチビーム)方式の場合
ポリゴンミラーの回転数H(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq4)が成立する。
H・Z・n・t=Lx (eq4)
【0308】
実際の印刷版に要求される解像度(2560dpi)、版サイズ(A1/B1、副走査長42inch)、20枚/1時間程度の露光条件と本発明の感光性組成物の感光特性(感光波長、感度:約0.1mJ/cm2)を上記式に代入することで、本発明の感材においては半導体レーザのマルチビーム露光方式との組み合わせがより好ましいことが理解できる。さらに操作性、コスト等を掛け合わせることにより外面ドラム方式の半導体レーザマルチビーム露光装置との組み合わせが最も好ましいことになる。
【0309】
(バックコート層)
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られる金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0310】
(中間層)
本発明における感光性平版印刷版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特願平8−225335号、特願平8−270098号、特願平9−195863号、特願平9−195864号、特願平9−89646号、特願平9−106068号、特願平9−183834号、特願平9−264311号、特願平9−127232号、特願平9−245419号、特願平10−127602号、特願平10−170202号、特願平11−36377号、特願平11−165861号、特願平11−284091号、特願2000−14697号等に記載のものを挙げることができる。
【0311】
(露光、現像及び印刷)
本発明に係る感光性平版印刷版は、上述の本発明における感光層を有するため、赤外線レーザによる露光、紫外線ランプによる露光、また、サーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
【0312】
また、本発明の感光性組成物に対するその他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる。
【0313】
本発明による感光性組成物の用途としては、先に詳述した走査露光用感光性平版印刷版の感光層の他、光硬化樹脂の用途として知られる広範な分野に制限なく適用できる。例えば、必要に応じカチオン重合性化合物と併用した液状の感光性組成物に適用することで、高感度な光造形用材料が得られる。また、光重合にともなう、屈折率の変化を利用し、ホログラム材料とすることもできる。光重合に伴う、表面の粘着性の変化を利用して様々な転写材料(剥離感材、トナー現像感材等)にも応用できる。マイクロカプセルの光硬化に
も適用できる。フォトレジスト等の電子材料製造、インクや塗料、接着剤等の光硬化樹脂材料にも応用できる。
【実施例】
【0314】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<合成例1および2>
(合成例1:例示化合物(A-26)の合成)
4,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジン30gをN,N-ジメチルアセトアミド 150mlに溶解し、0℃に冷却した。n-トリデカノイック酸クロリド98.2gを滴下し、滴下終了後、室温で6時間反応させた。反応液を水900ml中に投入し、析出した結晶を濾取し、乾燥した。得られた粗結晶を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=90/10〜70/30)にて単離精製し、化合物(A-26)を15g得た。1H−NMR、赤外吸収スペクトル、質量分析スペクトル、元素分析により同定を行った。
【0315】
【化63】

【0316】
(合成例2:例示化合物(A-32)の合成)
3,5-ビストリフルオロメチルベンズヒドラジド50gをアセトニトリル 500mlに溶解したのち、n-ヘプチルチオイソシアネート28gを滴下した。室温で8時間反応させた後、析出した結晶を濾取し、乾燥した。得られた結晶のうち、20gを、水酸化ナトリウム20gを水200mlに溶解した水溶液中に、添加した。90℃まで昇温し、2時間反応させた。室温まで冷却した後、5M塩酸水溶液でpH3に調整した。結晶を濾取、乾燥し、化合物(A-32)を10g得た。1H−NMR、赤外吸収スペクトル、質量分析スペクトル、元素分析により同定を行った。
【0317】
【化64】

【0318】
<実施例1〜6、比較例1>
(支持体の調製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10質量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20質量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dm2
陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2において、陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm(JISB0601によるRa表示)であった。
【0319】
このように処理された基板の裏面にバックコート塗布液をバーコーターで塗布し100℃で1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が70mg/m2のバックコート層を設けた支持体を作製した。バックコート塗布液は、下記ゾル−ゲル反応液に下記添加液を加え、以下に示した方法で調製した。
【0320】
(ゾル−ゲル反応液)
テトラエチルシリケート 50質量部
水 20質量部
メタノール 15質量部
リン酸 0.05質量部
【0321】
上記成分を混合、撹拌すると約5分で発熱が開始した。60分間反応させた後、以下に示す添加液を加えることによりバックコート塗布液を調製した。
【0322】
(添加液)
ピロガロールホルムアルデヒド縮合樹脂(分子量2000)
4質量部
ジメチルフタレート 5質量部
フッ素系界面活性剤 0.7質量部
(N−ブチルペルフルオロオクタン/スルホンアミドエチル
アクリレート/ポリオキシエチレンアクリレート共重合体:分子量2万)
メタノールシリカゾル 50質量部
(日産化学工業(株)製,メタノール30質量%)
メタノール 800質量部
【0323】
(感光層の塗設)
このように処理されたアルミニウム支持体上に、下記組成の感光性組成物を乾燥塗布量が1.0〜2.0g/m2となるように塗布し、80℃2分間乾燥させ感光層を形成した。
【0324】
(感光性組成物)
(A)成分(表1記載の化合物) 0.13g
(B)下記重合開始剤(I-1) 0.15g
(C)下記重合性化合物(M-1) 1.5g
下記バインダーポリマー(P-1) 1.2g
下記増感色素(D-4) 0.12g
フッ素系ノニオン界面活性剤(F−780F) 0.03g
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
顔料分散物 2.0g
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 15質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 15質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
メチルエチルケトン 20g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
【0325】
【化65】

【0326】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、感光性平版印刷版を得た。
【0327】
(感度評価)
このように得られた感光性平版印刷版上に、富士写真フイルム(株)製の富士ステップガイド(△D=0.15で不連続的に透過光学濃度が変化するグレースケール)を密着さ
せ、光学フィルターを通したキセノンランプにより既知の露光エネルギーとなるように露光を行った。
その後、下記組成の現像液に25℃、10秒間浸漬し、現像を行い、画像が完全に除去される最高の段数を読み、その露光エネルギー量を求め、感度を算出した(単位、mJ/cm2)。エネルギー量が小さい程、高感度であると評価する。短波半導体レーザへの露光適性を見積もる目的で、光学フィルターとしてケンコーBP−40を用い、400nmのモノクロミックな光で露光を行った。結果を表1に示す。
【0328】
(現像液)
下記組成からなるpH12.0の水溶液
・水酸化カリウム 0.2g
・1Kケイ酸カリウム 2.4g
(SiO2/K2O=1.9)
・下記化合物 5.0g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 0.1g
・水 91.3g
【0329】
【化66】

【0330】
(感光性平版印刷版の露光)
上記のようにして得られた感光性平版印刷版を、光源として400nmの単色光を用い、版面露光エネルギー密度100μJ/cm2となるように露光パワーを調節し、ベタ画像露光および175線/インチ、1%刻みで1から99%となる網点画像露光を行った。
【0331】
(現像/製版)
富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
【0332】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ社製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部および3%網点部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。評価結果を表1に示す。
【0333】
【表1】

【0334】
なお、表1において本発明の(A)成分の化合物(A−17、19、20、23、24、29)の構造は前記例示化合物と同様である。また、比較例に用いた化合物(PA−1)の構造は以下に示す通りである。比較例に用いた化合物(PA−1)は本発明の範囲外の化合物である。
【0335】
【化67】

【0336】
表1から明らかなように、本発明の感光性ネガ型画像形成材料を用いた感光性平版印刷版は、いずれも高感度で画像形成可能であり、ベタ部耐刷性、網点部耐刷性に優れることがわかる。
【0337】
<実施例7〜12、比較例2および3>
実施例1で用いた支持体に、以下の手順で中間層、感光層、保護層を順次形成し、感光性平版印刷版を作製した。
【0338】
(中間層の塗設)
支持体表面上に、フェニルホスホン酸の塗布量が20mg/m2となるようにように、下記の中間層塗布液を調製し、ホイラーにて180rpmの条件で塗布後、80℃で30秒間乾燥させて中間層を形成した。
【0339】
(中間層塗布液)
フェニルホスホン酸 0.07g〜1.4g
メタノール 200g
【0340】
(感光層の塗設)
上記中間層を設けた支持体上に、下記組成の感光性組成物を調製し、塗布量が1.0〜2.0g/m2になるよに、ホイラーで塗布し、100℃で1分間乾燥させて感光層を形成した。
【0341】
(感光性組成物)
(A)成分(表2記載の化合物) 0.25g
(B)前記重合開始剤(I-1) 0.22g
(C)下記付加重合性化合物(M-2) 2.2g
前記バインダーポリマー(P-1) 2.0g
下記増感色素(D−5) 0.18g
着色顔料分散物 2.0g
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 5質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 5質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
フッ素系界面活性剤 0.02g
(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−780F)
メチルエチルケトン 20.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
【0342】
【化68】

【0343】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、感光性平版印刷版を得た。
【0344】
(感光性平版印刷版の露光)
上記のようにして得られた感光性平版印刷版を、光源として400nmの単色光を用い、版面露光エネルギー密度100μJ/cm2となるように露光パワーを調節し、ベタ画像露光および175線/インチ、1%刻みで1から99%となる網点画像露光を行った。
また、別に、強制経時条件として、露光前に60℃、50%RHで3日間、または、45℃、75%RHで3日間保存した後、露光を行った。
【0345】
(現像/製版)
富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
【0346】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。結果を表2に示す。
【0347】
(耐汚れ性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(S)を使用して印刷を行ない、得られた印刷物を観察し、非画像部(未露光部)の耐汚れ性の状態を目視で評価した。結果を表2に示す。
【0348】
【表2】

【0349】
なお、表2において感光層の付加重合化合物として用いた本発明の(A)成分の化合物(A−14、17、20、23、29、32)の構造は前記例示化合物と同様である。比較例に用いた化合物(PA−2)の構造を以下に示す。化合物(PA−2)は本発明の範囲外の化合物である。化合物(PA−1)については、前述の通りである。
【0350】
【化69】

【0351】
表2から明らかなように、本発明の感光性ネガ型画像形成材料を用いた感光性平版印刷版は、いずれも耐刷性に優れ、強制経時を行ったものでも非画像部の汚れが生じないことがわかる。
【0352】
<実施例13〜18、及び比較例4及び5>
(感光層の塗設)
実施例7と同様の中間層を設けた支持体上に、下記組成の感光性組成物を調製し、塗布
量が1.0〜2.0g/m2になるよに、ホイラーで塗布し、100℃で1分間乾燥させて感光層を形成した。
【0353】
(感光性組成物)
(A)成分(表3記載の化合物) 0.14g
(B)前記重合開始剤(I-1) 0.22g
(C)下記付加重合性化合物(M-3) 2.0g
下記化合物(PA-2) 0.10g
下記バインダーポリマー(P-2) 2.0g
下記増感色素(D−6) 0.19g
着色顔料分散物 2.0g
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 5質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 0質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 5質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
フッ素系界面活性剤 0.02g
(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−780F)
メチルエチルケトン 20.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
【0354】
【化70】

【0355】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、感光性平版印刷版を得た。
【0356】
(感光性平版印刷版の露光)
上記のようにして得られた感光性平版印刷版を、光源として400nmの単色光を用い、版面露光エネルギー密度100μJ/cm2となるように露光パワーを調節し、ベタ画像露光および175線/インチ、1%刻みで1から99%となる網点画像露光を行った。
【0357】
(現像/製版)
富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
ここで、自動現像機の搬送速度を変えて現像を行い、各現像液浸漬時間の異なる印刷版を作製した。
【0358】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部および3%網点部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。評価結果を表3に示す。
【0359】
【表3】

【0360】
なお、表3において感光層の付加重合化合物として用いた本発明の(A)成分の化合物(A−14、26、27、28、29、32)の構造は前記例示化合物と同様である。比較例に用いた化合物(PA−3)の構造を以下に示す。化合物(PA−3)は本発明の範囲外の化合物である。化合物(PA−1)については、前述の通りである。
【0361】

【0362】
表3から明らかなように、本発明の感光性ネガ型画像形成材料を用いた感光性平版印刷版は、現像液浸漬時間の長短にかかわらず、ベタ画像部および3%網点部の耐刷性に優れることがわかる。
【0363】
<実施例19〜33、比較例6〜10>
(感光層の塗設)
実施例7と同様の中間層を設けた支持体上に、下記組成の感光性組成物を調製し、塗布量が1.0〜2.0g/m2になるよに、ホイラーで塗布し、100℃で1分間乾燥させて感光層を形成した。
【0364】
(感光性組成物)
(A)成分(表4記載の化合物) 0.50g
(B)重合開始剤(表4中に記載の化合物) 0.28g
(C)下記付加重合性化合物(M-4) 1.1g
前記付加重合性化合物(M-3) 1.0g
下記化合物(PA-4) 1.12g
下記バインダーポリマー(P-3) 2.0g
下記増感色素(D−9) 0.20g
着色顔料分散物 2.0g
(顔料分散物の組成)
・Pigment Blue 15:6 15質量部
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 10質量部
(共重合モル比83/17)
・シクロヘキサノン 15質量部
・メトキシプロピルアセテート 20質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
熱重合禁止剤 0.01g
(N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
フッ素系界面活性剤 0.02g
(大日本インキ化学工業(株)製、メガファックF−780F)
メチルエチルケトン 20.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
【0365】
【化71】

【0366】
(保護層の形成)
この感光層上にポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/m2となるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成し、感光性平版印刷版を得た。
【0367】
(感光性平版印刷版の露光)
上記のようにして得られた感光性平版印刷版を、光源として400nmの単色光を用い、版面露光エネルギー密度100μJ/cm2となるように露光パワーを調節し、ベタ画像露光および175線/インチ、1%刻みで1から99%となる網点画像露光を行った。
また、別に、強制経時条件として、露光前に60℃、50%RHで3日間、または、45℃、75%RHで3日間保存した後、露光を行った。
【0368】
(現像/製版)
富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製
FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
【0369】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。結果を表4に示す。
【0370】
(耐汚れ性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(S)を使用して印刷を行ない、得られた印刷物を観察し、非画像部(未露光部)の耐汚れ性の状態を目視で評価した。評価結果を表4に併記した。
【0371】
【表4】

【0372】
なお、表4において感光層の付加重合化合物として用いた本発明の(A)成分の化合物(A−20、23、26)の構造は前記例示化合物と同様である。(B)重合開始剤に用いた化合物(I−2)〜(I−5)の構造を以下に示す。化合物(PA−1)および(I−1)については、前述の通りである。
【0373】
【化72】

【0374】
表4から明らかなように、本発明の感光性ネガ型画像形成材料を用いた感光性平版印刷版は、耐刷性に優れ、強制経時を行ったものでも非画像部汚れがないことがわかる。
【0375】
<実施例34〜40、比較例11〜14>
(下塗り)
実施例1と同じアルミニウム支持体に下記下塗り液をワイヤーバーにて塗布し、温風式乾燥装置を用いて90℃で30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/m2であった。
【0376】
(下塗り液)
エチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン
スルホン酸ナトリウム塩のモル比75:15の共重合体 0.1g
2−アミノエチルホスホン酸 0.1g
メタノール 50g
イオン交換水 50g
【0377】
(感光層の塗設)
下記組成の感光性組成物を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して記録層を形成した。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0378】
(感光性組成物)
(A)成分(表5に記載の化合物) 0.25g
(B)重合開始剤(表5に記載の化合物) 0.32g
(C)下記重合性化合物(M−5) 0.70g
前記重合性化合物(M−1) 0.50g
下記バインダーポリマー(P−4) 1.00g
赤外線吸収剤(表5に記載の化合物) 0.08g
N-フェニルイミノジ酢酸モノアニリド 0.12g
エチルバイオレットのクロライド塩 0.04g
フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−176、大日本インキ化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 9.0g
メタノール 8.0g
1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0379】
【化73】

【0380】
(保護層の形成)
次に、感光層表面に下記保護層塗布液を、スライドホッパーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて120℃で75秒間乾燥して保護層を設け、感光性平版印刷版を得た。なお、塗布・乾燥後の保護層の膜重量は1.3〜1.6g/m2であった。
【0381】
(保護層塗布液)
ポリビニルアルコールPVA105(クラレ(株)製) 2.5g
非イオン性界面活性剤 0.03g
(EMAREX NP−10 日本エマルジョン社(株)製)
イオン交換水 96.9g
【0382】
(感光性平版印刷版の露光)
得られたネガ型感光性平版印刷版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0383】
(現像/製版)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DV−2の1:4水希釈液を用いた。現像浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液(pH=10.8)を用いた。
【0384】
(耐刷性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(
株)製GEOS−G(N)を使用した。印刷を継続しながらベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいと評価する。結果を表5に示す。
【0385】
(耐汚れ性試験)
印刷機としてローランド社製R201を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製GEOS−G(S)を使用して印刷を行ない、得られた印刷物を観察し、非画像部(未露光部)の耐汚れ性の状態を目視で評価した。評価結果を表5に併記した。
【0386】
【表5】

【0387】
なお、表5において感光層の付加重合化合物として用いた本発明の(A)成分の化合物(A−32)の構造は前記例示化合物と同様である。(B)重合開始剤に用いた化合物(IS−2)および(IS−4)〜(IS−6)、赤外線吸収剤(IR−1)〜(IR−3)の構造を以下に示す。化合物(PA−4)については、前述の通りである。
【0388】
【化74】

【0389】
表5から明らかなように、本発明による感光性平版印刷版は、耐刷性に優れ、強制経時を行ったものでも非画像部汚れがないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物、
(B)重合開始剤、および
(C)付加重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物
を含有する感光層を支持体上に塗布してなる感光性ネガ型画像形成材料。
【請求項2】
長鎖アルキル基およびフッ素原子を3つ以上有するフルオロアルキル基のうち、少なくとも一方の基を有し、かつ-SH基を有する化合物(A)が、下記式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性ネガ型画像形成材料。
【化1】

式(1)中、
Aは炭素数6以上の直鎖あるいは分岐状アルキル基またはフッ素原子数3以上のフルオロアルキル基を有する基を表す。
Xは複素環基を表す。
mは1〜6の整数を表し、2以上のとき、複数のAは同一でも異なっても良い。
nは1〜6の整数を表す。
【請求項3】
式(1)中のXで表される複素環基に含まれる窒素原子、硫黄原子および酸素原子の数の合計が2以上であることを特徴とする請求項2に記載の感光性ネガ型画像形成材料。
【請求項4】
式(1)中のXで表される複素環基に含まれる窒素原子の数が2以上であることを特徴とする請求項2に記載の感光性ネガ型画像形成材料。
【請求項5】
重合開始剤(B)が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性ネガ型画像形成材料。

【公開番号】特開2006−243611(P2006−243611A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62206(P2005−62206)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】