感光性接着剤組成物、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び、半導体装置の製造方法。
【課題】 複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することができる感光性接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物。
【解決手段】 (A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の半導体チップが積層された多層構造を有する半導体装置において、半導体チップ積層数が増大するにつれ、チップが薄くなる傾向となっている。そのため、半導体ウェハを各個片のチップに分割するために、一般的に使用されていたブレードダイシングを適用すると、個片化するときにチップが破損し、歩留りの低下を招くことが問題となっている。この問題を解決するために、厚膜の半導体ウェハを予めハーフカットしておき、その後バックグラインドを行うことで薄型化と同時にチップを個片化するプロセスが提案されている(特許文献1参照)。このプロセスは、「先ダイシング法」とも呼ばれている。
【0003】
しかしながら、上記のプロセスを適用した場合、積層するチップ同士を接続するための接着剤層を、個片化後に塗布や積層によってチップ上に形成することが必要になる。そのため、分割したチップとチップの間に接着剤が存在した状態になり、チップを再分割するために接着剤層を除去するか、又は接着剤層ごとチップを分割する必要があった(特許文献2参照)。このような方式を用いた場合、薄型化したチップに接着剤層の形成、除去などの工程を更に加えてしまうため、チップを破損する懸念がある。
【0004】
一方、感光性接着剤を用いて、予め接着剤層を半導体ウェハ上に形成し、その後、チップを分割する方式が提案されている。本方式により予め厚膜の半導体ウェハに接着剤層を形成した後、先ダイシング法を適用することも可能である。これらに用いることができる感光性接着剤としては、特許文献3に記載されたもの等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−335411号公報
【特許文献2】特開2005−322853号公報
【特許文献3】特開2009−009110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する場合、分割した接着剤層付きの半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップし、これを他の半導体チップと圧着することにより、多層構造を形成することとなる。しかしながら、連続して積層する半導体チップの数を増やすと、ダイボンド時に使用するダイボンド装置(フレキシブルダイボンダ等)のコレットに接着剤層が付着しやすいという問題があることが本発明者らの検討により判明した。
【0007】
連続してチップを積層していくと、ダイボンド装置の熱板の熱がチップを吸着するコレットに伝わり、接着剤層の粘着性発現温度よりもコレット温度が高くなる場合がある。その結果、接着剤層を介してコレットに半導体チップが付着してしまい、上記の問題が生じるものと本発明者らは考えている。
【0008】
その一方で、例えば10μm以下の薄膜の感光性接着剤層を形成するために、ワニス状態の感光性接着剤組成物を半導体ウェハの回路面上に形成した場合、接着剤層の密着性が低下し、パターン形成性に問題が発生しやすいことも判明した。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することができる感光性接着剤組成物、並びに、それを用いて得られる、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明者らは、上述した知見及び考えに基づいて、従来の感光性接着剤組成物では十分な検討がなされていなかった連続圧着性や薄膜のパターン形成時の密着性に関して鋭意検討を行った。その結果、連続圧着性を有し、且つ、薄膜で現像時の密着性に優れる感光性接着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記各成分を含有するとともに、上記タック強度を有することにより、優れた連続圧着性を有し、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、且つ、現像時の密着性に優れ、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することが可能である。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートとの混合物であることが好ましい。これにより、良好な連続圧着性を得ながら、現像時の密着性をより向上させることができ、薄膜での接着剤パターン形成性をより向上させることができる。
【0014】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A2)多官能(メタ)アクリレート及び上記(B)エポキシ樹脂の少なくとも一方が、フルオレン骨格を含有していることが好ましい。これにより、薄膜での良好な接着剤パターン形成性を得ながら、感光性接着剤組成物からなる接着剤層の露光後の80℃でのタック強度を低くすることができ、連続圧着性をより向上させることができる。
【0015】
本発明の感光性接着剤組成物は、更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な連続圧着性を得ながら、現像時の密着性をより向上させることができ、薄膜での接着剤パターン形成性をより向上させることができる。
【0016】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の上記接着剤層を現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターンを提供する。かかる接着剤パターンは、半導体ウェハ等の被着体に対して優れた密着性を有し、薄膜かつ高精細なものが得られる。また、かかる接着剤パターンは、優れた連続圧着性を有する。
【0017】
本発明はまた、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハを提供する。かかる接着剤層付半導体ウェハでは、接着剤層が現像時の密着性に優れるため、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することが可能である。また、かかる接着剤層付半導体ウェハでは、接着剤層が優れた連続圧着性を有するため、複数の半導体チップに分割した後、それら複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能である。
【0018】
本発明はさらに、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を半導体ウェハ上に形成する工程と、上記接着剤層を露光及び現像によってパターニングする工程と、接着剤層付半導体ウェハをダイシングする工程と、ダイシングで得られた接着剤層付半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップする工程と、上記接着剤層付半導体チップと半導体素子搭載用支持部材及び/又は他の半導体チップとを圧着する工程と、を備える、半導体装置の製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、複数の半導体チップの連続圧着が可能であり、半導体装置を効率的に製造することができる。また、かかる製造方法によれば、接着剤層を薄膜化できるため、得られる半導体装置の小型化が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することができる感光性接着剤組成物、並びに、それを用いて得られる、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図2】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図4】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図6】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図7】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図8】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図9】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図10】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図11】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図12】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図13】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図14】接着剤層に形成された開口パターンの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
<感光性接着剤組成物>
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(以下、場合により「(A)成分」と言う)、(B)エポキシ樹脂(以下、場合により「(B)成分」と言う)、(C)光開始剤(以下、場合により「(C)成分」と言う)、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマー(以下、場合により「(D)成分」と言う)を少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、該感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下であるものである。また、本発明の感光性接着剤組成物は、更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂(以下、場合により「(E)成分」と言う)を含むことが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0023】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。
【0024】
このような(メタ)アクリル基を用いた場合、パターン形成性と低温熱圧着性の観点から、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートを組合せて使用することが好ましい。
【0025】
単官能(メタ)アクリレートは、熱圧着時のボイド発生を低減すると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため、5%質量減少温度が100℃以上であり、1分子中にイミド基又は芳香族環を含有するものを使用することが好ましい。
【0026】
特に硬化後の接着性を向上させるため、下記式(1)又は(2)で表される単官能アクリレートを使用することが好ましい。
【化1】
[式中、gは1〜10の整数を示す。]
【化2】
【0027】
これらの単官能(メタ)アクリレートの含有量は(D)可溶性ポリマー100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下であることが好ましい。この含有量が10質量部未満であると圧着性の点で好ましくなく、500質量部を超えると耐熱信頼性の点で好ましくない。
【0028】
また、(A)成分としては、パターン形成性や硬化後の信頼性を向上させるために、(A2)多官能(メタ)アクリレートを(A1)単官能(メタ)アクリレートと組合せて使用することが好ましい。
【0029】
組合せる(A2)多官能(メタ)アクリレートの種類は特に制限はないが、現像時の溶解性を調整し、パターン形状を向上することが可能であり、かつ露光、現像後の圧着温度でのタック力を低減するために、下記一般式(3)で表されるフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【化3】
[式中、R1はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R2は分岐アルキレン基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はアルキル基を示し、kは0〜4の整数を示し、mは1以上の整数を示し、nは2〜4の整数を示す。]
【0030】
これらのフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレートの含有量は、(D)可溶性ポリマー100質量部に対して5質量部以上、100質量部以下であることが好ましい。この含有量が5質量部未満であるとタック力制御及びパターン形成性の点で好ましくなく、100質量部を超えると光硬化後の熱圧着性の点で好ましくない。
【0031】
これらの単官能及び多官能(メタ)アクリレートを組合せることで、露光・現像時のパターン形成性が向上し、かつ低温、低圧、短時間での圧着が可能となる感光性接着剤組成物を得ることができる。
【0032】
その他に使用可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、特に制限はないが、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、2官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。このような(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートウレタンアクリレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0033】
これらの(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、グリコール骨格を有する炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0034】
炭素−炭素不飽和結合を有する化合物として、3官能以上のアクリレート化合物を含有する場合、硬化後の接着性をより向上させることができると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため好ましい。
【0035】
硬化後の耐熱性を十分に付与できる点で、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物として、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ及びトリアクリレートを含有することが最も好ましい。
【0036】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の全含有量は、(D)可溶性ポリマー100質量部に対して5〜300質量部であることが好ましく、10〜250質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、5質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる、つまり現像前後の膜厚変化が大きくなる及び/又は残渣が多くなる傾向にある。また、熱圧着時に溶融し、パターンが変形する傾向にある。
【0037】
(B)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、熱圧着性及び硬化後の接着力の観点から、下記一般式(4)で表される分子中にフルオレン骨格を持つエポキシ樹脂が特に好ましい。
【化4】
[式中、R11はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R12はプロピレン基などの分岐アルキレン基を示し、R13は水素原子又はメチル基を示し、R14はアルキル基を示し、pは0〜4の整数を示し、qは1以上の整数を示し、rは2〜4の整数を示す。]
【0038】
また、他に使用可能な(B)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が特に好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に下記式(5)で表されるエポキシ樹脂は、熱圧着性及び硬化後の接着性の観点から使用することが好ましい。
【化5】
【0039】
また、これらの(B)エポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0040】
これらの(B)エポキシ樹脂は単独で又は2種類以上を組合せて使用することができる。
【0041】
また、使用する(B)エポキシ樹脂は、5%質量減少温度が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、260℃以上であることが最も好ましい。5%質量減少温度が150℃以上であることで、低アウトガス性、高温接着性、耐リフロー性が向上する。
【0042】
上記5%質量減少温度とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)の条件下で測定したときの5%質量減少温度である。
【0043】
また、使用する(B)エポキシ樹脂成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜300質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が5質量部未満であると、十分な熱圧着性、及び高温接着性が得にくくなる傾向がある。
【0044】
(C)光開始剤としては、感度向上の点から、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上であるものが好ましく、2000ml/g・cm以上であるものがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:U−3310)を用いて吸光度を測定することによって求められる。
【0045】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合、(C)成分は、感度向上、内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものが好ましい。このような(C)成分としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド等の中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
(C)成分は、放射線の照射によって(B)エポキシ樹脂の重合及び/又は付加反応などの硬化反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤等が挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0047】
放射線としては、例えば、電離性放射線や非電離性放射線が挙げられ、具体的にはArF、及びKrF等のエキシマレーザー光、電子線極端紫外線、真空紫外光、X線、並びに、イオンビーム、i線、及びg線等の紫外光が挙げられる。
【0048】
光塩基発生剤を用いることで、生成した塩基が(B)成分の硬化触媒として効率よく作用する。その結果、感光性接着剤組成物の架橋密度がより一層高まり、上記感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性、及び耐湿性が向上する。また、上記感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることによって、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができる。
【0049】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0050】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 1999年、12巻、313〜314頁や、Chemistry of Materials 1999年、11巻、170〜176頁等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、放射線照射によって高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0051】
また、Journal of American Chemical Society 1996年、118巻 12925頁や、Polymer Journal 1996年、28巻 795頁等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0052】
さらに、放射線照射によって1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア369)、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア379)、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール(ADEKA社製、商品名:オプトマーN−1414)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0053】
上記光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性、及び耐熱性の観点から重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0054】
(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーは、Tgが150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、パターン形成後の上記接着剤の溶融粘度が高くなり、熱圧着性が低下する傾向がある。
【0055】
ここで、(D)成分の「Tg」とは、(D)成分をフィルム化したものについて、粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製、商品名:RSA−2)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定したときのtanδピーク温度である。
【0056】
(D)成分の重量平均分子量は、5,000〜500,000の範囲内で制御されていることが好ましく、10,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状、又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好となる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。上記重量平均分子量が5,000未満であると、フィルム形成性が十分でなくなる傾向がある。一方、上記重量平均分子量が500,000を超えると、熱時流動性、及び上記埋め込み性が十分でなくなる傾向や、パターン形成する際に感光性接着剤組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が十分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0057】
(D)成分のTg、及び重量平均分子量を上記範囲内とすることによって半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制しながら、高温接着性を付与することができる。
【0058】
本実施形態の感光性接着剤組成物では、(D)成分は、アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶なポリマーであれば特に制限されないが、アルカリ可溶性基を有するポリマーが好ましく、アルカリ可溶性基を末端、又は側鎖に有するポリマーがより好ましい。アルカリ可溶性基としては、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、フェノール性水酸基等が挙げられる。アルカリ可溶性基を有するポリマーは、上記の官能基1種を単独で有するものであってもよく、又は2種以上を有するものであってもよい。
【0059】
(D)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が10,000〜1,000,000の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0060】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性、及びフィルム形成性の観点から、(D)成分は主鎖にイミド骨格を持つ樹脂であることが好ましい。これらの樹脂としてはイミドアクリレートを反応させたポリアクリル樹脂やポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
【0061】
上記縮合反応における、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比は、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が0.5〜2.0molであることが好ましく、0.8〜1.0molであることがより好ましい。なお、テトラカルボン酸無水物、及びジアミンの添加順序は任意でよい。
【0062】
上記縮合反応において、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂に、アミン末端を有するポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向がある。一方、ジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端を有するポリイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向がある。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比を上記範囲内にすることで、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が高くなり、感光性接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が付与される。
【0063】
また、上記縮合反応における反応温度は80℃以下が好ましく、0〜60℃がより好ましい。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、感光性接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0064】
本実施形態でのポリイミド樹脂とは、イミド基を有する樹脂を意味する。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0065】
ポリイミド樹脂は、上記縮合反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0066】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。下記一般式(6)中、aは2〜20の整数を示す。
【0067】
【化6】
【0068】
上記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド、及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0069】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、並びに365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記式(7)、又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0070】
【化7】
【0071】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
(D)成分は、更に、カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂であることが好ましい。上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(9−1)〜(9−2)で表される芳香族ジアミンの1種以上を含むことが好ましい。これらの式で表されるジアミンは、全ジアミンの5〜100モル%とすることが好ましく、10〜90モル%とすることがより好ましく、10〜80モル%とすることが更に好ましく、20〜80モル%とすることが特に好ましい。上記ジアミンの配合量を上記範囲とすることで、アルカリ可溶性を維持しつつ、ポリイミドのTgを上述した範囲に調整することができ、感光性接着剤組成物の貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性を向上させることが可能となる。
【0073】
【化8】
[式中、s及びuは1〜3の整数を示し、tは1〜4の整数を示し、R5は、−O−、−S−、−CO−、−CH2−、−SO2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、及び、−O−CH2−C(CH3)2−CH2−O−から選ばれる2価の有機基を示す。]
【0074】
また、ジアミンとしては上記一般式(9−1)〜(9−2)で表されるものの他に、別途、水酸基やカルボキシル基を1個有するジアミンを用いることもできる。このようなジアミンとしては、例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル化合物、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルフォン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン化合物、3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類を挙げることができる。
【0075】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(11)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0076】
【化9】
[式中、R21、R22及びR23は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。]
【0077】
【化10】
[式中、R24及びR29は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基、又はフェニレン基を示し、R25、R26、R27、及びR28は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。なお、上記フェニレン基は、置換基を有していてもよい。]
【0078】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、アルカリ可溶性を付与する点で、上記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
【0079】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製のジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2000、EDR−148、BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更により好ましい。この量が1モル%未満であると、高温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、逆に吸湿後の高温接着性が低下する傾向になる。
【0080】
さらに、上記脂肪族エーテルジアミンは、パターン形成性の観点から、下記一般式(12)で表されるプロピレンエーテル骨格を有し、且つ分子量が300〜600であることが好ましい。このようなジアミンを用いる場合、高温接着性、耐リフロー性、感光性接着剤組成物をフィルム状に成形した際の該フィルムの自己支持性の観点から、全ジアミンの80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。また、熱圧着性、及び高温接着性の観点から、全ジアミンの10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。この量が上記範囲にあることで、ポリイミドのTgを上述した範囲に調整することができ、感光性接着剤組成物の貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性を向上させることが可能となる。
【0081】
【化11】
[式中、eは3〜40の整数を示す。]
【0082】
また、室温での密着性、接着性を向上させる観点からは、上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンを用いることが好ましい。
【0083】
上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(11)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0084】
上記シロキサンジアミンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記シロキサンジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%とすることが好ましく、2〜50モル%とすることが更に好ましく、5〜30モル%とすることが最も好ましい。1モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性、及び現像性が低下する傾向がある。
【0085】
上述したポリイミド樹脂は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
【0086】
また、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが、上述のように150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0087】
上記ポリイミド樹脂の合成時に、下記式(13)、(14)、(15)又は(16)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することによって、ポリマー末端に酸無水物、又はジアミン以外の官能基を導入することができる。これによって、ポリマーの分子量を低くし、パターン形成時の現像性、及び熱圧着性を向上させることができる。酸無水物及びジアミン以外の官能基としては、特に限定されないが、パターン形成時のアルカリ可溶性を向上させる点で、カルボキシル基やフェノール性水酸基、グリコール基等のアルカリ可溶性基が好ましい。また、接着性を付与する点で、下記式(15)で表される化合物や、(メタ)アクリレート等の放射線重合性基及び/又は熱硬化性基を有する化合物が好ましく用いられる。また、低吸湿性を付与する点で、シロキサン骨格等を有する化合物も好ましく用いられる。
【0088】
【化12】
【0089】
上記ポリイミド樹脂は、光硬化性の観点から、厚み30μmのフィルム状に成形した時の波長365nmの光に対する透過率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記式(7)で表される酸無水物と、上記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0090】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(D)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが更に好ましく、30〜60質量%であることが最も好ましい。この含有量が10質量%未満であると、パターン形成時の現像性が十分でなくなる傾向や、タックなどの取り扱い性が十分でなくなる傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成時の現像性、及び接着性が十分でなくなる傾向がある。
【0091】
(D)成分としてポリイミド樹脂を配合するときにポリイミド樹脂のアルカリ溶解性が乏しい場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、並びに、親水性基を有する樹脂の一方又は両方を添加してもよい。親水性基を有する樹脂とは、アルカリ可溶性の樹脂であれば特に限定はされないが、エチレングリコール、プロピレングリコール基のようなグリコール基を有する樹脂が挙げられる。
【0092】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、硬化性成分として、硬化剤、及び硬化促進剤等を含んでもよい。
【0093】
硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。
【0094】
上記硬化剤の中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。フェノール系化合物を用いることでパターン形成性が向上する。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0095】
上記フェノール系化合物の中でも、数平均分子量が400〜4,000の範囲内のものが好ましい。これによって、半導体装置組立加熱時に、半導体素子、又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。上記フェノール系化合物の含有量は、(D)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることが最も好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光時の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の反応性が乏しくなる傾向がある。さらに、樹脂の溶解性が上昇することで現像後に膜厚が減少したり、膨潤したりする傾向がある。また、現像液の樹脂パターンへの浸透が大きくなることで、その後の加熱硬化時や組立熱履歴でのアウトガスが多くなり、耐熱信頼性や耐湿信頼性が大きく低下する傾向がある。一方、上記含有量が1質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0096】
上記フェノール系化合物として、パターン形成性を十分に付与できる点で、下記一般式(17)で表されるアミノ基含有トリアジン化合物と、フェノール樹脂と、アルデヒド類とを反応させて得ることができる(E)トリアジン骨格を持つフェノール化合物を用いることが好ましい。
【0097】
【化13】
[式中、R31、R32及びR33は各々独立に、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、酸基、ビニル基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。但し、R31、R32及びR33の少なくとも一つはアミノ基である。]
【0098】
硬化促進剤としては、加熱によってエポキシの硬化/重合を促進する硬化促進剤を含有するものであれば特に制限はない。例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、(B)エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0099】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜(F)フィラー(以下、場合により「(F)成分」と言う)を含有させることもできる。(F)成分としては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類や形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0100】
上記(F)成分は、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、感光性接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与し、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する。また、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する。
【0101】
これら金属フィラー、無機フィラー、又は有機フィラーは、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、これらを用いることにより、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等が付与される。さらに無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好で且つ、熱時の高い接着力を付与できるため、シリカフィラーがより好ましい。
【0102】
上記(F)成分は、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径、及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、取り扱い性の観点から、どちらも0.001μm以上が好ましい。
【0103】
上記(F)成分の含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%が更に好ましい。フィラーを増量させることによって、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0104】
上記(F)成分の含有量が50質量%を超えると、熱圧着性、パターン形成性が得にくくなる傾向にある。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0105】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、各種カップリング剤を添加することもできる。上記カップリング剤を用いることで、異種材料間の界面結合性が向上する。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有する化合物又は、ヘテロ原子を含有する化合物がより好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性、及びコストの面から、使用する(D)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0106】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、更にイオン捕捉剤を添加することもできる。上記イオン補足剤によって、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性が向上する。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系、及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。
【0107】
具体例としては、特に限定はしないが、東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名:IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは1種を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(D)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0108】
本実施形態では、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上併用して使用することができる。
【0109】
本実施形態では、必要に応じて熱ラジカル発生剤を用いることができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が120℃以上であるものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましい。
有機過酸化物は、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。
【0110】
使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0111】
上記熱ラジカル発生剤の添加量は、(A)成分100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましく、0.5〜5質量部が最も好ましい。添加量が0.01質量部未満であると硬化性が低下し、添加効果が小さくなる傾向がある。また、5質量部を超えるとアウトガス量が増加し、保存安定性が低下する傾向にある。
【0112】
上記熱ラジカル発生剤としては、半減期温度が120℃以上の化合物であれば特に限定はしないが、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)等が挙げられる。
【0113】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤、又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。保存安定性、プロセス適応性、又は酸化防止性が付与される。
【0114】
例えば、スピンコート法で接着剤層を形成する場合は上記構成成分に(G)加熱することにより除去することが可能な有機溶剤を加えることが好ましい。
【0115】
使用する有機溶剤には材料を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)が挙げられる。この時、パターン形成後の接着力向上の観点からN−メチル−ピロリジノンを有機溶剤として使用することが好ましい。
【0116】
このとき、(G)有機溶剤を含んだ感光性接着剤組成物の粘度は、25℃での薄膜形成性の点から10〜10000mP・sであることが好ましく、薄膜化と膜の均一性の両立の点から100〜1000mPa・sであることが更に好ましい。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0117】
<半導体装置の製造方法>
次に、上述した感光性接着剤組成物を用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
【0118】
図1〜7は、本発明に係る半導体装置の製造方法の好適な一実施形態(第一実施形態)を示す図である。本実施形態に係る製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図3):露光後の接着剤層5を現像して個片化する。
工程4(図4):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってハーフカットする。
工程5(図5):半導体ウェハ1の裏面F2を研磨して半導体ウェハ1を薄くするとともに、複数の半導体チップ2に個片化する。
工程6(図6、7):半導体チップ2を接着剤層5とともにピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
以下、各図面を参照しながら、各工程について説明する。
【0119】
工程1(図1)
半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。塗布は、例えばボックス20内で、粘着テープ(図示せず)等により半導体ウェハ1を治具21に固定した状態で行うことができる。塗布方法は、印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、ジェットディスペンス法及びインクジェット法などから選ばれる。これらの中でも、薄膜化及び膜厚均一性の観点から、スピンコート法が好ましい。スピンコート装置が有する吸着台には穴が形成されていてもよいし、吸着台がメッシュ状であってもよい。吸着痕が残りにくい点から、吸着台はメッシュ状であることが好ましい。スピンコート法による塗布は、ウェハのうねり、及びエッジ部の盛り上がりを防止するために、500〜5000rpmの回転数で行うことが好ましい。同様の観点から、回転数は1000〜4000rpmがさらに好ましい。感光性接着剤組成物の粘度を調整する目的でスピンコート台に温度調節器を備えることもできる。
【0120】
感光性接着剤組成物は、シリンジ内に保存することができる。この場合、スピンコート装置のシリンジセット部分に温度調節器が備えられていてもよい。
【0121】
半導体ウェハ1に感光性接着剤組成物を例えばスピンコート法によって塗布する際、半導体ウェハ1のエッジ部分に不要な感光性接着剤組成物が付着する場合がある。このような不要な接着剤をスピンコート後に溶剤などで洗浄して除去することができる。洗浄方法は特に限定されないが、半導体ウェハ1をスピンさせながら、不要な接着剤が付着した部分にノズルから溶剤を吐出させる方法が好ましい。洗浄に使用する溶剤は接着剤を溶解させるものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール及びメタノールから選ばれる低沸点溶剤、DMFやNMPなどの高沸点溶剤が用いられる。
【0122】
スピンコート法によって塗布される感光性接着剤組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜30000mPa・s、より好ましくは30〜10000mPa・s、さらに好ましくは50〜5000mPa・s、より一層好ましくは100〜3000mPa・s、最も好ましくは200〜1000mPa・sである。上記粘度が10mPa・s以下であると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下したり、塗布された感光性接着剤組成物にピンホールが生じやすくなる傾向がある。粘度が30000mPa・s以上であると、塗布時に薄膜化が困難であったり、吐出が困難となる傾向がある。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0123】
半導体ウェハ1に感光性接着剤組成物4を塗布した後、乾燥させることで、接着剤層5が形成される。
【0124】
工程2(図2)
塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側(面F3側)から、露光装置9によって活性光線(典型的には紫外線)を照射して、接着剤層5を露光する。露光は、接着剤層5をBステージ化する目的、及び/又は、接着剤パターンを形成する目的で行われる。本実施形態では、半導体ウェハ1を複数の半導体チップに個片化する際のダイシングライン部分、及び、ワイヤボンディング用のボンディングパッド部分の接着剤層5が現像で除去されるように、所定のパターンを有するマスク(図示せず)を介して露光を行う。露光は、真空下、窒素下、空気下などの雰囲気下で行なうことができる。酸素阻害を低減するために、離形処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルムなどの基材を接着剤層5上に積層した状態で、露光することもできる。露光量は、50〜2000mJ/cm2が好ましい。
【0125】
接着剤層5の膜厚は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。
【0126】
工程3(図3)
図3(a)及び(b)に示すように、露光後の接着剤層5を現像し、上述したダイシングライン部分、及び、電気的接続を行う部分(ボンディングパッド部分)の接着剤層5を除去することで、個片化された接着剤層(接着剤パターン)5を形成する。図3(b)は現像後の接着剤層5を拡大した上面図である。この図3(b)に示すように、ボンディングパッド部分の接着剤層5が除去されることで、ワイヤボンディングパッドを設けるための開口51が形成される。また、図3(b)に示すように、ダイシングラインDに沿った部分の接着剤層5が除去される。現像は、アルカリ現像液又は有機溶剤を用いて行う。アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、テトラアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムハイドライド)等のアルカリ水溶液等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、DMF、NMP等が挙げられる。このように、予めダイシングライン部分、及び、ボンディングパッド部分の接着剤層5を除去しておくことで、ダイシング時の切りくずの発生を抑制したり、ワイヤボンディング時の接続不良を抑制する効果が得られる。
【0127】
露光及び現像後の接着剤層表面の80℃におけるタック強度(表面タック力)は、100gf以下であることが好ましい。これにより、ピックアップ時にコレットに接着剤層が付着することを十分に抑制することができ、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に、連続圧着が可能となる。このタック強度は、上記の効果がより十分に得られることから、100gf以下であることがより好ましく、80gf以下であることが更に好ましい。また、複数の半導体チップを積層しやすくなることからタック強度は50gf以上であることが好ましい。なお、本発明において、露光後のタック強度は、露光及び現像後のタック強度を測定することで求めることができる。
【0128】
露光及び現像後の接着剤層表面のタック強度は以下のように測定される。まず、シリコンウェハ等の基板上に感光性接着剤組成物からなる接着剤層を膜厚5μmとなるように形成する。このとき、接着剤層の形成方法は特に限定されないが、例えば、スピンコータを用いて感光性接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成することができる。この接着剤層に対し、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)により100mJ/cm2で露光を行う。次いで、アルカリ現像液又は有機溶剤で現像を行う。例えば、現像はスピン現像機(ノア社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液として感光性接着剤層の全体に留まるように滴下し、10秒間感光性接着剤層上に放置する(浸漬工程)。浸漬後、スピン現像機を用いて、回転数2000rpm、温度25℃の純水にてスプレー圧0.1MPa/30sの条件で水洗し、窒素のエアーガンで水滴を飛ばす。その後、所定の温度(例えば80℃)における接着剤層表面のタック強度をレスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:200gf/cm2、接触時間:1sの条件で測定する。
【0129】
露光及び現像後の接着剤層表面の120℃におけるタック強度(表面タック力)は、100gf以上であることが好ましく、110gf以上であることがより好ましい。このタック強度が100gf未満であると、熱圧着性が損なわれて、熱圧着時にボイドが発生する、熱圧着温度が高温化するといった傾向がある。この120℃におけるタック強度は、上述した80℃におけるタック強度と同様の方法で測定される。
【0130】
工程4(図4)
図4(a)及び(b)に示すように、導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってハーフカットする。図4(a)はカット前の状態の斜視図であり、(b)はカット後の状態の断面図である。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。
【0131】
工程5(図5)
ハーフカット後、接着剤層5側の面F3に粘着テープ6bを貼り付けて全体を反転させ、粘着テープ6aを剥離する。その後、図5(a)及び(b)に示すように、半導体ウェハ1の裏面F2を、ハーフカットにより形成された切り込み部分まで研磨する(バックグラインド)。これにより、半導体ウェハ1を薄くするとともに、複数の半導体チップ2に個片化する。研磨は、粘着テープ6bによって半導体ウェハ1を研磨用の治具に固定した状態で、グラインド装置8を用いて行う。図5(a)及び(b)はいずれも、バックグラインド前の状態を示している。
【0132】
工程6(図6、7)
研磨の後、個片化された半導体チップ2の裏面F2に粘着テープ6cを貼り付けて全体を反転させ、粘着テープ6bを剥離して、図6(b)に示した状態とする。その後、図6(a)に示すように、ダイボンド装置のコレット(吸着コレット)12によって接着剤層5とともにピックアップし、図7に示すように、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。コレット12で接着剤層5付きの半導体チップ2をピックアップする際には、接着剤層面F3をコレット12で吸着してピックアップする。一段目の半導体チップ2を支持部材13に圧着する場合は、図7に示すように両面テープ等の接着部材30を介して圧着する。
【0133】
圧着により、半導体チップが支持部材又は他の半導体チップに接着される。圧着は、熱板50上で加熱しながら行われる。圧着は、通常、熱板表面温度:30〜150℃、圧着荷重:0.1〜100N、圧着時間:0.1〜10sの条件で行うことができる。
【0134】
圧着後、半導体チップと支持部材又は他の半導体チップとの260℃におけるせん断接着強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。せん断接着強度が0.2MPa未満であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。せん断接着強度は、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて測定することができる。
【0135】
上記の方法により、複数の段数の半導体チップ2が連続的に積層され、多層構造が形成されることとなる。その後、図11に示すように、半導体チップ2はそのボンディングパッド17に接続されたワイヤ14を介して支持部材13上の外部接続端子16と接続される。半導体チップ2を含む積層体を封止材15によって封止することにより、半導体装置100が得られる。
【0136】
ここで、ワイヤ14の材質としては、金、銅等が挙げられる。封止材15の材質としては、エポキシ樹脂混合物等が挙げられる。外部接続端子16の材質としては、アルミ、金等が挙げられる。ボンディングパッド17の材質としては、金、アルミ等が挙げられる。
【0137】
以上のような工程を経て、半導体素子同士、及び、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置を製造することができる。半導体装置の構成及び製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。以下、他の実施形態について説明する。
【0138】
第二実施形態に係る半導体装置の製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図3):露光後の接着剤層5を現像して個片化された接着剤層5を形成する。
工程4(図8):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってダイシングし、複数の半導体チップ2に切り分ける。
工程5(図6、7):半導体チップ2をピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
【0139】
第二実施形態の工程4では、図8(a)及び(b)に示すように、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を切断する。図8(a)はダイシング前の状態の斜視図であり、(b)はダイシング後の状態の断面図である。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの回路面F1に接着剤層5が設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。ダイシング深さは、図8(b)に示すように、ダイシングブレード11が粘着テープ6aに達する深さとすることが好ましい。
【0140】
第一実施形態においては、バックグラインドにより半導体ウェハ1を半導体チップ2に個片化する場合を示したが、第二実施形態においては、ダイシングにより半導体ウェハ1を半導体チップ2に個片化する。第二実施形態においては、半導体ウェハ1に接着剤層5を形成する前に、予めバックグラインドを行なって半導体ウェハ1を薄くしてもよい。第二実施形態では、上記以外の工程は全て第一実施形態と同様に行なうことができる。
【0141】
第三実施形態に係る半導体装置の製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図9):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってダイシングし、複数の半導体チップ2に切り分ける。
工程4(図10、7):半導体チップ2をピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
【0142】
第三実施形態の工程3では、接着剤層5をパターニングせずに、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を接着剤層5とともに切断する。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの回路面F1に接着剤層5が設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。ダイシング深さは、ダイシングブレード11が粘着テープ6aに達する深さとすることが好ましい。
【0143】
その後、工程4により、個片化された半導体チップ2を、図10に示すように、ダイボンド装置のコレット12によって接着剤層5とともにピックアップし、図7に示すように、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。
【0144】
第三実施形態においては、半導体ウェハ1に接着剤層5を形成する前に、予めバックグラインドを行なって半導体ウェハ1を薄くしてもよい。第二実施形態では、上記以外の工程は全て第一実施形態と同様に行なうことができる。
【0145】
なお、第三実施形態においては、接着剤層5に対し、ワイヤボンディングパッド17を設けるための開口51を設ける必要がある。この開口は、所望の開口パターンを有するマスクを介して接着剤層の露光及び現像を行なうことで形成することができる。なお、第一及び第二実施形態においても同様の方法で接着剤層5に開口51を形成している。すなわち、第一及び第二実施形態においては、接着剤層5の露光及び現像によりダイシングライン部分の接着剤層5の除去及び開口部51の形成を行い、第三実施形態においては、接着剤層5の露光及び現像によりダイシングライン部分の接着剤層5の除去は行わず、開口部51の形成のみを行う。
【0146】
以上、半導体装置の製造方法を、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態に基づいて説明しが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、半導体装置は図11に示した構造を有するものに限定されず、図12及び13に示したような構造を有するものであってもよい。図12及び13に示したような構造を有する半導体装置では、同一サイズの半導体チップ2を積層できるという利点があるとともに、大容量化に有利であるという利点がある。
【実施例】
【0147】
以下、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0148】
<(D)成分:アルカリ可溶性樹脂の作製>
(ポリイミド樹脂PI−1)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンであるMBAA(商品名、和歌山精化社製、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)、分子量:286.3)を5.72g(0.02mol)、D−400(商品名、BASF社製、ポリエーテルジアミン、分子量:452.4)を12.99g(0.03mol)、BY16−871EG(商品名、東レ・ダウコーニング社製、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン)を2.48g(0.01mol)、及び、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成社製、商品名:B−12、分子量:204.31)8.17g(0.04mol)と、溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)110gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0149】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)27.9g(0.09mol)、及び、TAA(無水トリメリット酸)3.84g(0.02mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−1を得た。PI−1のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=21,000であった。また、PI−1のTgは55℃であった。
【0150】
<感光性接着剤組成物の調製>
上記で得られたポリイミド樹脂PI−1及び他の化合物を用いて、下記表1に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、実施例1〜4及び比較例1〜2の感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0151】
表1において、各記号は下記のものを意味する。
A−9300:新中村化学社製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、
A−LEN−10:新中村化学社製、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、
M−140:東亞合成社製、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、
A−BPEF:新中村化学社製、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、
YDF−8170C:東都化成社製、ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル、
EG−200:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量292)、
EG−250:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量393)、
PG−100:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量259)、
VG−3101:プリンテック社製、2−[4−(2,3エポキシプロポキシ)フェノル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、
LA−7052:DIC社製、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)、
I−819:チバ・ジャパン社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、
I−OXE02:チバ・ジャパン社製、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾールー3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド、
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリドン。
【0152】
【表1】
【0153】
<感光性接着剤層の形成>
得られた感光性接着剤組成物を、50μm又は400μmの厚みの6インチシリコンウェハの鏡面加工側に、乾燥後の膜厚が5μmになるように所定量滴下し、スピンコータ(700rpm/10s+1200rpm/30s)を用いて、薄膜を形成した。その後、温度を100℃に設定したホットプレート上に10分間放置した。このようにして、感光性接着剤組成物から形成された接着剤層を有する接着剤層付シリコンウェハを得た。
【0154】
<評価試験>
上記で得られた接着剤層付シリコンウェハについて、以下の評価試験を行った。
【0155】
(パターン形成性)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハに、接着剤層側から約100μm以上隙間が開くようにネガマスクをかぶせ、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光した。その後、スピン現像機(ノア社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液として感光性接着剤層の全体に留まるように滴下し、10秒間感光性接着剤層上に放置した。浸漬後、スピン現像機を用いて、回転数2000rpm、温度25℃の純水にてスプレー圧0.1MPa/30sの条件で水洗し、窒素のエアーガンで水滴を飛ばした。その後、60μm×60μmの四角型の開口ができているかを確認した。開口していたものをA、開口していなかったものをBとして評価した。結果を表2に示す。また、開口パターンが得られなかった比較例1〜2の接着剤層は、現像時の密着強度を増すため、上記条件で露光した後、PEB(Post Exposure Bake)工程として80℃のホットプレート上に30秒間放置し、次いで上記条件で現像を行うことで、開口パターンを得た。実施例1〜4及び比較例1〜2の開口パターンの電子顕微鏡写真を図14に示す。図14中、(a)が実施例1、(b)が実施例2、(c)が実施例3、(d)が実施例4、(e)が比較例1、(f)が比較例2、の開口パターンである。
【0156】
(熱圧着性)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後、シリコンウェハの接着剤層とは反対側の面に、室温でダイシングテープ(厚み80μm)をラミネートし、ダイシングサンプルを作製した。
【0157】
その後、フルオートダイサーDFD−6361(ディスコ社製)を用いて、接着剤層、シリコンウェハ及びダイシングテープを積層した上記ダイシングサンプルを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式、ブレードに株式会社ディスコ社製ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HEDDを用い、ブレード回転数45000rpm、切断速度20mm/sの条件にて行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを10μm残す設定とした。半導体ウェハを切断するサイズは3.0mm×3.0mmとした。その後、ダイシング後のサンプルを24時間放置した後、熱圧着機(日化設備社製)を用いて、10mm×10mm×400μmtのシリコンチップ上に、ダイシングした接着剤層付シリコンウェハの接着剤層がシリコンチップ側に来るように積層し、120℃/1s/100gの条件で圧着を行った。その後、せん断接着力測定器DAGE−4000(Dage社製)で室温のせん断接着力測定を行い、1.0MPa以上の値を示したものをA、示さなかったものをBとして評価した。結果を表2に示す。
【0158】
(連続圧着性)
接着剤層を形成した50μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後、シリコンウェハの接着剤層とは反対側の面に、室温でダイシングテープ(厚み80μm)をラミネートし、ダイシングサンプルを作製した。
【0159】
その後、フルオートダイサーDFD−6361(ディスコ社製)を用いて、接着剤層、シリコンウェハ及びダイシングテープを積層した上記ダイシングサンプルを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式、ブレードに株式会社ディスコ社製ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HEDDを用い、ブレード回転数45000rpm、切断速度20mm/sの条件にて行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを10μm残す設定とした。半導体ウェハを切断するサイズは7.5mm×7.5mmとした。その後、まずは一段目として、両面テープが張られた銅貼積層板(日立化成工業社製、商品名:E−679F、厚み:0.2mm)上の9箇所に、接着剤層付シリコンチップをチップが両面テープと密着するように9回連続で圧着した。圧着は、フレキシブルダイボンダDB−730(ルネサス東日本セミコンダクタ社製)を用い、接着剤層面をコレットで吸着して接着剤層付シリコンチップをピックアップし、熱板表面温度:120℃、圧着荷重:5N、圧着時間:0.1sの条件で圧着することにより行った。次に、圧着された9個のシリコンチップ上の感光性接着剤層と密着するように2段目のチップをそれぞれ9回連続で一段目と同じ条件で圧着し、銅貼積層板上の9箇所にシリコンチップが2個ずつ積層されている状態とした。このとき、フレキシブルダイボンダのコレットに接着剤層付チップが密着せず、連続で積層可能であったサンプルをAとして評価した。また、コレットに接着剤層付チップが密着し、連続で積層が不可能であったサンプルをBとして評価した。結果を表2に示す。
【0160】
(感光性接着剤層表面の80℃でのタック強度)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後の接着剤層付シリコンウェハを、レスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:200gf/cm2、接触時間:1sにより、80℃におけるタック力(粘着力)を測定し、これを感光性接着剤層表面の80℃タック力(タック強度)とした。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
1…半導体ウェハ、2…半導体チップ、4…感光性接着剤組成物、5…接着剤層、6a,6b,6c…粘着テープ、8…グラインド装置、9…露光装置、11…ダイシングブレード、12…コレット、13…支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…外部接続端子、17…ボンディングパッド、50…熱板、100…半導体装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の半導体チップが積層された多層構造を有する半導体装置において、半導体チップ積層数が増大するにつれ、チップが薄くなる傾向となっている。そのため、半導体ウェハを各個片のチップに分割するために、一般的に使用されていたブレードダイシングを適用すると、個片化するときにチップが破損し、歩留りの低下を招くことが問題となっている。この問題を解決するために、厚膜の半導体ウェハを予めハーフカットしておき、その後バックグラインドを行うことで薄型化と同時にチップを個片化するプロセスが提案されている(特許文献1参照)。このプロセスは、「先ダイシング法」とも呼ばれている。
【0003】
しかしながら、上記のプロセスを適用した場合、積層するチップ同士を接続するための接着剤層を、個片化後に塗布や積層によってチップ上に形成することが必要になる。そのため、分割したチップとチップの間に接着剤が存在した状態になり、チップを再分割するために接着剤層を除去するか、又は接着剤層ごとチップを分割する必要があった(特許文献2参照)。このような方式を用いた場合、薄型化したチップに接着剤層の形成、除去などの工程を更に加えてしまうため、チップを破損する懸念がある。
【0004】
一方、感光性接着剤を用いて、予め接着剤層を半導体ウェハ上に形成し、その後、チップを分割する方式が提案されている。本方式により予め厚膜の半導体ウェハに接着剤層を形成した後、先ダイシング法を適用することも可能である。これらに用いることができる感光性接着剤としては、特許文献3に記載されたもの等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−335411号公報
【特許文献2】特開2005−322853号公報
【特許文献3】特開2009−009110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する場合、分割した接着剤層付きの半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップし、これを他の半導体チップと圧着することにより、多層構造を形成することとなる。しかしながら、連続して積層する半導体チップの数を増やすと、ダイボンド時に使用するダイボンド装置(フレキシブルダイボンダ等)のコレットに接着剤層が付着しやすいという問題があることが本発明者らの検討により判明した。
【0007】
連続してチップを積層していくと、ダイボンド装置の熱板の熱がチップを吸着するコレットに伝わり、接着剤層の粘着性発現温度よりもコレット温度が高くなる場合がある。その結果、接着剤層を介してコレットに半導体チップが付着してしまい、上記の問題が生じるものと本発明者らは考えている。
【0008】
その一方で、例えば10μm以下の薄膜の感光性接着剤層を形成するために、ワニス状態の感光性接着剤組成物を半導体ウェハの回路面上に形成した場合、接着剤層の密着性が低下し、パターン形成性に問題が発生しやすいことも判明した。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することができる感光性接着剤組成物、並びに、それを用いて得られる、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明者らは、上述した知見及び考えに基づいて、従来の感光性接着剤組成物では十分な検討がなされていなかった連続圧着性や薄膜のパターン形成時の密着性に関して鋭意検討を行った。その結果、連続圧着性を有し、且つ、薄膜で現像時の密着性に優れる感光性接着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の感光性接着剤組成物によれば、上記各成分を含有するとともに、上記タック強度を有することにより、優れた連続圧着性を有し、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、且つ、現像時の密着性に優れ、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することが可能である。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートとの混合物であることが好ましい。これにより、良好な連続圧着性を得ながら、現像時の密着性をより向上させることができ、薄膜での接着剤パターン形成性をより向上させることができる。
【0014】
本発明の感光性接着剤組成物において、上記(A2)多官能(メタ)アクリレート及び上記(B)エポキシ樹脂の少なくとも一方が、フルオレン骨格を含有していることが好ましい。これにより、薄膜での良好な接着剤パターン形成性を得ながら、感光性接着剤組成物からなる接着剤層の露光後の80℃でのタック強度を低くすることができ、連続圧着性をより向上させることができる。
【0015】
本発明の感光性接着剤組成物は、更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより、良好な連続圧着性を得ながら、現像時の密着性をより向上させることができ、薄膜での接着剤パターン形成性をより向上させることができる。
【0016】
本発明はまた、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の上記接着剤層を現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターンを提供する。かかる接着剤パターンは、半導体ウェハ等の被着体に対して優れた密着性を有し、薄膜かつ高精細なものが得られる。また、かかる接着剤パターンは、優れた連続圧着性を有する。
【0017】
本発明はまた、半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハを提供する。かかる接着剤層付半導体ウェハでは、接着剤層が現像時の密着性に優れるため、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することが可能である。また、かかる接着剤層付半導体ウェハでは、接着剤層が優れた連続圧着性を有するため、複数の半導体チップに分割した後、それら複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能である。
【0018】
本発明はさらに、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を半導体ウェハ上に形成する工程と、上記接着剤層を露光及び現像によってパターニングする工程と、接着剤層付半導体ウェハをダイシングする工程と、ダイシングで得られた接着剤層付半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップする工程と、上記接着剤層付半導体チップと半導体素子搭載用支持部材及び/又は他の半導体チップとを圧着する工程と、を備える、半導体装置の製造方法を提供する。かかる製造方法によれば、複数の半導体チップの連続圧着が可能であり、半導体装置を効率的に製造することができる。また、かかる製造方法によれば、接着剤層を薄膜化できるため、得られる半導体装置の小型化が可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に連続圧着が可能であり、薄膜かつ高精細な接着剤パターンを形成することができる感光性接着剤組成物、並びに、それを用いて得られる、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図2】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図4】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図6】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図7】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図8】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図9】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図10】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図11】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図12】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図13】半導体装置の一実施形態を示す模式図である。
【図14】接着剤層に形成された開口パターンの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
<感光性接着剤組成物>
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(以下、場合により「(A)成分」と言う)、(B)エポキシ樹脂(以下、場合により「(B)成分」と言う)、(C)光開始剤(以下、場合により「(C)成分」と言う)、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマー(以下、場合により「(D)成分」と言う)を少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、該感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下であるものである。また、本発明の感光性接着剤組成物は、更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂(以下、場合により「(E)成分」と言う)を含むことが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0023】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。
【0024】
このような(メタ)アクリル基を用いた場合、パターン形成性と低温熱圧着性の観点から、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートを組合せて使用することが好ましい。
【0025】
単官能(メタ)アクリレートは、熱圧着時のボイド発生を低減すると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため、5%質量減少温度が100℃以上であり、1分子中にイミド基又は芳香族環を含有するものを使用することが好ましい。
【0026】
特に硬化後の接着性を向上させるため、下記式(1)又は(2)で表される単官能アクリレートを使用することが好ましい。
【化1】
[式中、gは1〜10の整数を示す。]
【化2】
【0027】
これらの単官能(メタ)アクリレートの含有量は(D)可溶性ポリマー100質量部に対して10質量部以上、500質量部以下であることが好ましい。この含有量が10質量部未満であると圧着性の点で好ましくなく、500質量部を超えると耐熱信頼性の点で好ましくない。
【0028】
また、(A)成分としては、パターン形成性や硬化後の信頼性を向上させるために、(A2)多官能(メタ)アクリレートを(A1)単官能(メタ)アクリレートと組合せて使用することが好ましい。
【0029】
組合せる(A2)多官能(メタ)アクリレートの種類は特に制限はないが、現像時の溶解性を調整し、パターン形状を向上することが可能であり、かつ露光、現像後の圧着温度でのタック力を低減するために、下記一般式(3)で表されるフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【化3】
[式中、R1はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R2は分岐アルキレン基を示し、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はアルキル基を示し、kは0〜4の整数を示し、mは1以上の整数を示し、nは2〜4の整数を示す。]
【0030】
これらのフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレートの含有量は、(D)可溶性ポリマー100質量部に対して5質量部以上、100質量部以下であることが好ましい。この含有量が5質量部未満であるとタック力制御及びパターン形成性の点で好ましくなく、100質量部を超えると光硬化後の熱圧着性の点で好ましくない。
【0031】
これらの単官能及び多官能(メタ)アクリレートを組合せることで、露光・現像時のパターン形成性が向上し、かつ低温、低圧、短時間での圧着が可能となる感光性接着剤組成物を得ることができる。
【0032】
その他に使用可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物としては、特に制限はないが、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、2官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。このような(メタ)アクリレートとしては、特に制限されないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートウレタンアクリレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0033】
これらの(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、グリコール骨格を有する炭素−炭素不飽和結合を有する化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0034】
炭素−炭素不飽和結合を有する化合物として、3官能以上のアクリレート化合物を含有する場合、硬化後の接着性をより向上させることができると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため好ましい。
【0035】
硬化後の耐熱性を十分に付与できる点で、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物として、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ及びトリアクリレートを含有することが最も好ましい。
【0036】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の全含有量は、(D)可溶性ポリマー100質量部に対して5〜300質量部であることが好ましく、10〜250質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、5質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる、つまり現像前後の膜厚変化が大きくなる及び/又は残渣が多くなる傾向にある。また、熱圧着時に溶融し、パターンが変形する傾向にある。
【0037】
(B)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、熱圧着性及び硬化後の接着力の観点から、下記一般式(4)で表される分子中にフルオレン骨格を持つエポキシ樹脂が特に好ましい。
【化4】
[式中、R11はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、R12はプロピレン基などの分岐アルキレン基を示し、R13は水素原子又はメチル基を示し、R14はアルキル基を示し、pは0〜4の整数を示し、qは1以上の整数を示し、rは2〜4の整数を示す。]
【0038】
また、他に使用可能な(B)エポキシ樹脂としては、特に制限はないが、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が特に好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に下記式(5)で表されるエポキシ樹脂は、熱圧着性及び硬化後の接着性の観点から使用することが好ましい。
【化5】
【0039】
また、これらの(B)エポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
【0040】
これらの(B)エポキシ樹脂は単独で又は2種類以上を組合せて使用することができる。
【0041】
また、使用する(B)エポキシ樹脂は、5%質量減少温度が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、260℃以上であることが最も好ましい。5%質量減少温度が150℃以上であることで、低アウトガス性、高温接着性、耐リフロー性が向上する。
【0042】
上記5%質量減少温度とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)の条件下で測定したときの5%質量減少温度である。
【0043】
また、使用する(B)エポキシ樹脂成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜300質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が5質量部未満であると、十分な熱圧着性、及び高温接着性が得にくくなる傾向がある。
【0044】
(C)光開始剤としては、感度向上の点から、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上であるものが好ましく、2000ml/g・cm以上であるものがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:U−3310)を用いて吸光度を測定することによって求められる。
【0045】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合、(C)成分は、感度向上、内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものが好ましい。このような(C)成分としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド等の中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
(C)成分は、放射線の照射によって(B)エポキシ樹脂の重合及び/又は付加反応などの硬化反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤等が挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0047】
放射線としては、例えば、電離性放射線や非電離性放射線が挙げられ、具体的にはArF、及びKrF等のエキシマレーザー光、電子線極端紫外線、真空紫外光、X線、並びに、イオンビーム、i線、及びg線等の紫外光が挙げられる。
【0048】
光塩基発生剤を用いることで、生成した塩基が(B)成分の硬化触媒として効率よく作用する。その結果、感光性接着剤組成物の架橋密度がより一層高まり、上記感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性、及び耐湿性が向上する。また、上記感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることによって、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができる。
【0049】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0050】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 1999年、12巻、313〜314頁や、Chemistry of Materials 1999年、11巻、170〜176頁等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、放射線照射によって高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0051】
また、Journal of American Chemical Society 1996年、118巻 12925頁や、Polymer Journal 1996年、28巻 795頁等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0052】
さらに、放射線照射によって1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア369)、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア379)、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール(ADEKA社製、商品名:オプトマーN−1414)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0053】
上記光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性、及び耐熱性の観点から重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0054】
(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーは、Tgが150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、パターン形成後の上記接着剤の溶融粘度が高くなり、熱圧着性が低下する傾向がある。
【0055】
ここで、(D)成分の「Tg」とは、(D)成分をフィルム化したものについて、粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製、商品名:RSA−2)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定したときのtanδピーク温度である。
【0056】
(D)成分の重量平均分子量は、5,000〜500,000の範囲内で制御されていることが好ましく、10,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが最も好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状、又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が良好となる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。上記重量平均分子量が5,000未満であると、フィルム形成性が十分でなくなる傾向がある。一方、上記重量平均分子量が500,000を超えると、熱時流動性、及び上記埋め込み性が十分でなくなる傾向や、パターン形成する際に感光性接着剤組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が十分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0057】
(D)成分のTg、及び重量平均分子量を上記範囲内とすることによって半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制しながら、高温接着性を付与することができる。
【0058】
本実施形態の感光性接着剤組成物では、(D)成分は、アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶なポリマーであれば特に制限されないが、アルカリ可溶性基を有するポリマーが好ましく、アルカリ可溶性基を末端、又は側鎖に有するポリマーがより好ましい。アルカリ可溶性基としては、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、フェノール性水酸基等が挙げられる。アルカリ可溶性基を有するポリマーは、上記の官能基1種を単独で有するものであってもよく、又は2種以上を有するものであってもよい。
【0059】
(D)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が10,000〜1,000,000の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0060】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性、及びフィルム形成性の観点から、(D)成分は主鎖にイミド骨格を持つ樹脂であることが好ましい。これらの樹脂としてはイミドアクリレートを反応させたポリアクリル樹脂やポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
【0061】
上記縮合反応における、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比は、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が0.5〜2.0molであることが好ましく、0.8〜1.0molであることがより好ましい。なお、テトラカルボン酸無水物、及びジアミンの添加順序は任意でよい。
【0062】
上記縮合反応において、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂に、アミン末端を有するポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向がある。一方、ジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端を有するポリイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向がある。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比を上記範囲内にすることで、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が高くなり、感光性接着剤組成物の耐熱性を含む種々の特性が付与される。
【0063】
また、上記縮合反応における反応温度は80℃以下が好ましく、0〜60℃がより好ましい。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、感光性接着剤組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0064】
本実施形態でのポリイミド樹脂とは、イミド基を有する樹脂を意味する。具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0065】
ポリイミド樹脂は、上記縮合反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0066】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。下記一般式(6)中、aは2〜20の整数を示す。
【0067】
【化6】
【0068】
上記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド、及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0069】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、並びに365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記式(7)、又は(8)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0070】
【化7】
【0071】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
(D)成分は、更に、カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂であることが好ましい。上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(9−1)〜(9−2)で表される芳香族ジアミンの1種以上を含むことが好ましい。これらの式で表されるジアミンは、全ジアミンの5〜100モル%とすることが好ましく、10〜90モル%とすることがより好ましく、10〜80モル%とすることが更に好ましく、20〜80モル%とすることが特に好ましい。上記ジアミンの配合量を上記範囲とすることで、アルカリ可溶性を維持しつつ、ポリイミドのTgを上述した範囲に調整することができ、感光性接着剤組成物の貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性を向上させることが可能となる。
【0073】
【化8】
[式中、s及びuは1〜3の整数を示し、tは1〜4の整数を示し、R5は、−O−、−S−、−CO−、−CH2−、−SO2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、及び、−O−CH2−C(CH3)2−CH2−O−から選ばれる2価の有機基を示す。]
【0074】
また、ジアミンとしては上記一般式(9−1)〜(9−2)で表されるものの他に、別途、水酸基やカルボキシル基を1個有するジアミンを用いることもできる。このようなジアミンとしては、例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル化合物、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルフォン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン化合物、3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類を挙げることができる。
【0075】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(11)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0076】
【化9】
[式中、R21、R22及びR23は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。]
【0077】
【化10】
[式中、R24及びR29は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基、又はフェニレン基を示し、R25、R26、R27、及びR28は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。なお、上記フェニレン基は、置換基を有していてもよい。]
【0078】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、アルカリ可溶性を付与する点で、上記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
【0079】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製のジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−600、ED−900、ED−2000、EDR−148、BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%であることが好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更により好ましい。この量が1モル%未満であると、高温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、逆に吸湿後の高温接着性が低下する傾向になる。
【0080】
さらに、上記脂肪族エーテルジアミンは、パターン形成性の観点から、下記一般式(12)で表されるプロピレンエーテル骨格を有し、且つ分子量が300〜600であることが好ましい。このようなジアミンを用いる場合、高温接着性、耐リフロー性、感光性接着剤組成物をフィルム状に成形した際の該フィルムの自己支持性の観点から、全ジアミンの80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましい。また、熱圧着性、及び高温接着性の観点から、全ジアミンの10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。この量が上記範囲にあることで、ポリイミドのTgを上述した範囲に調整することができ、感光性接着剤組成物の貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性を向上させることが可能となる。
【0081】
【化11】
[式中、eは3〜40の整数を示す。]
【0082】
また、室温での密着性、接着性を向上させる観点からは、上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンを用いることが好ましい。
【0083】
上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(11)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0084】
上記シロキサンジアミンは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記シロキサンジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%とすることが好ましく、2〜50モル%とすることが更に好ましく、5〜30モル%とすることが最も好ましい。1モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性、及び現像性が低下する傾向がある。
【0085】
上述したポリイミド樹脂は、1種を単独で、又は必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
【0086】
また、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが、上述のように150℃以下となるように設計することが好ましい。
【0087】
上記ポリイミド樹脂の合成時に、下記式(13)、(14)、(15)又は(16)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することによって、ポリマー末端に酸無水物、又はジアミン以外の官能基を導入することができる。これによって、ポリマーの分子量を低くし、パターン形成時の現像性、及び熱圧着性を向上させることができる。酸無水物及びジアミン以外の官能基としては、特に限定されないが、パターン形成時のアルカリ可溶性を向上させる点で、カルボキシル基やフェノール性水酸基、グリコール基等のアルカリ可溶性基が好ましい。また、接着性を付与する点で、下記式(15)で表される化合物や、(メタ)アクリレート等の放射線重合性基及び/又は熱硬化性基を有する化合物が好ましく用いられる。また、低吸湿性を付与する点で、シロキサン骨格等を有する化合物も好ましく用いられる。
【0088】
【化12】
【0089】
上記ポリイミド樹脂は、光硬化性の観点から、厚み30μmのフィルム状に成形した時の波長365nmの光に対する透過率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記式(7)で表される酸無水物と、上記一般式(10)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(11)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0090】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(D)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが更に好ましく、30〜60質量%であることが最も好ましい。この含有量が10質量%未満であると、パターン形成時の現像性が十分でなくなる傾向や、タックなどの取り扱い性が十分でなくなる傾向があり、90質量%を超えると、パターン形成時の現像性、及び接着性が十分でなくなる傾向がある。
【0091】
(D)成分としてポリイミド樹脂を配合するときにポリイミド樹脂のアルカリ溶解性が乏しい場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、並びに、親水性基を有する樹脂の一方又は両方を添加してもよい。親水性基を有する樹脂とは、アルカリ可溶性の樹脂であれば特に限定はされないが、エチレングリコール、プロピレングリコール基のようなグリコール基を有する樹脂が挙げられる。
【0092】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、硬化性成分として、硬化剤、及び硬化促進剤等を含んでもよい。
【0093】
硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。
【0094】
上記硬化剤の中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。フェノール系化合物を用いることでパターン形成性が向上する。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0095】
上記フェノール系化合物の中でも、数平均分子量が400〜4,000の範囲内のものが好ましい。これによって、半導体装置組立加熱時に、半導体素子、又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。上記フェノール系化合物の含有量は、(D)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることが最も好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光時の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の反応性が乏しくなる傾向がある。さらに、樹脂の溶解性が上昇することで現像後に膜厚が減少したり、膨潤したりする傾向がある。また、現像液の樹脂パターンへの浸透が大きくなることで、その後の加熱硬化時や組立熱履歴でのアウトガスが多くなり、耐熱信頼性や耐湿信頼性が大きく低下する傾向がある。一方、上記含有量が1質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0096】
上記フェノール系化合物として、パターン形成性を十分に付与できる点で、下記一般式(17)で表されるアミノ基含有トリアジン化合物と、フェノール樹脂と、アルデヒド類とを反応させて得ることができる(E)トリアジン骨格を持つフェノール化合物を用いることが好ましい。
【0097】
【化13】
[式中、R31、R32及びR33は各々独立に、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、酸基、ビニル基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。但し、R31、R32及びR33の少なくとも一つはアミノ基である。]
【0098】
硬化促進剤としては、加熱によってエポキシの硬化/重合を促進する硬化促進剤を含有するものであれば特に制限はない。例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、(B)エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0099】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜(F)フィラー(以下、場合により「(F)成分」と言う)を含有させることもできる。(F)成分としては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類や形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0100】
上記(F)成分は、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、感光性接着剤組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与し、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する。また、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する。
【0101】
これら金属フィラー、無機フィラー、又は有機フィラーは、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、これらを用いることにより、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等が付与される。さらに無機フィラー、又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好で且つ、熱時の高い接着力を付与できるため、シリカフィラーがより好ましい。
【0102】
上記(F)成分は、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径、及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、取り扱い性の観点から、どちらも0.001μm以上が好ましい。
【0103】
上記(F)成分の含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%が更に好ましい。フィラーを増量させることによって、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0104】
上記(F)成分の含有量が50質量%を超えると、熱圧着性、パターン形成性が得にくくなる傾向にある。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0105】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、各種カップリング剤を添加することもできる。上記カップリング剤を用いることで、異種材料間の界面結合性が向上する。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有する化合物又は、ヘテロ原子を含有する化合物がより好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性、及びコストの面から、使用する(D)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0106】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、更にイオン捕捉剤を添加することもできる。上記イオン補足剤によって、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性が向上する。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系、及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。
【0107】
具体例としては、特に限定はしないが、東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名:IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは1種を単独で、又は2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(D)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0108】
本実施形態では、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上併用して使用することができる。
【0109】
本実施形態では、必要に応じて熱ラジカル発生剤を用いることができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が120℃以上であるものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましい。
有機過酸化物は、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。
【0110】
使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0111】
上記熱ラジカル発生剤の添加量は、(A)成分100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましく、0.5〜5質量部が最も好ましい。添加量が0.01質量部未満であると硬化性が低下し、添加効果が小さくなる傾向がある。また、5質量部を超えるとアウトガス量が増加し、保存安定性が低下する傾向にある。
【0112】
上記熱ラジカル発生剤としては、半減期温度が120℃以上の化合物であれば特に限定はしないが、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)等が挙げられる。
【0113】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤、又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。保存安定性、プロセス適応性、又は酸化防止性が付与される。
【0114】
例えば、スピンコート法で接着剤層を形成する場合は上記構成成分に(G)加熱することにより除去することが可能な有機溶剤を加えることが好ましい。
【0115】
使用する有機溶剤には材料を均一に溶解又は分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)が挙げられる。この時、パターン形成後の接着力向上の観点からN−メチル−ピロリジノンを有機溶剤として使用することが好ましい。
【0116】
このとき、(G)有機溶剤を含んだ感光性接着剤組成物の粘度は、25℃での薄膜形成性の点から10〜10000mP・sであることが好ましく、薄膜化と膜の均一性の両立の点から100〜1000mPa・sであることが更に好ましい。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0117】
<半導体装置の製造方法>
次に、上述した感光性接着剤組成物を用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
【0118】
図1〜7は、本発明に係る半導体装置の製造方法の好適な一実施形態(第一実施形態)を示す図である。本実施形態に係る製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図3):露光後の接着剤層5を現像して個片化する。
工程4(図4):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってハーフカットする。
工程5(図5):半導体ウェハ1の裏面F2を研磨して半導体ウェハ1を薄くするとともに、複数の半導体チップ2に個片化する。
工程6(図6、7):半導体チップ2を接着剤層5とともにピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
以下、各図面を参照しながら、各工程について説明する。
【0119】
工程1(図1)
半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。塗布は、例えばボックス20内で、粘着テープ(図示せず)等により半導体ウェハ1を治具21に固定した状態で行うことができる。塗布方法は、印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、ジェットディスペンス法及びインクジェット法などから選ばれる。これらの中でも、薄膜化及び膜厚均一性の観点から、スピンコート法が好ましい。スピンコート装置が有する吸着台には穴が形成されていてもよいし、吸着台がメッシュ状であってもよい。吸着痕が残りにくい点から、吸着台はメッシュ状であることが好ましい。スピンコート法による塗布は、ウェハのうねり、及びエッジ部の盛り上がりを防止するために、500〜5000rpmの回転数で行うことが好ましい。同様の観点から、回転数は1000〜4000rpmがさらに好ましい。感光性接着剤組成物の粘度を調整する目的でスピンコート台に温度調節器を備えることもできる。
【0120】
感光性接着剤組成物は、シリンジ内に保存することができる。この場合、スピンコート装置のシリンジセット部分に温度調節器が備えられていてもよい。
【0121】
半導体ウェハ1に感光性接着剤組成物を例えばスピンコート法によって塗布する際、半導体ウェハ1のエッジ部分に不要な感光性接着剤組成物が付着する場合がある。このような不要な接着剤をスピンコート後に溶剤などで洗浄して除去することができる。洗浄方法は特に限定されないが、半導体ウェハ1をスピンさせながら、不要な接着剤が付着した部分にノズルから溶剤を吐出させる方法が好ましい。洗浄に使用する溶剤は接着剤を溶解させるものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール及びメタノールから選ばれる低沸点溶剤、DMFやNMPなどの高沸点溶剤が用いられる。
【0122】
スピンコート法によって塗布される感光性接着剤組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜30000mPa・s、より好ましくは30〜10000mPa・s、さらに好ましくは50〜5000mPa・s、より一層好ましくは100〜3000mPa・s、最も好ましくは200〜1000mPa・sである。上記粘度が10mPa・s以下であると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下したり、塗布された感光性接着剤組成物にピンホールが生じやすくなる傾向がある。粘度が30000mPa・s以上であると、塗布時に薄膜化が困難であったり、吐出が困難となる傾向がある。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0123】
半導体ウェハ1に感光性接着剤組成物4を塗布した後、乾燥させることで、接着剤層5が形成される。
【0124】
工程2(図2)
塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側(面F3側)から、露光装置9によって活性光線(典型的には紫外線)を照射して、接着剤層5を露光する。露光は、接着剤層5をBステージ化する目的、及び/又は、接着剤パターンを形成する目的で行われる。本実施形態では、半導体ウェハ1を複数の半導体チップに個片化する際のダイシングライン部分、及び、ワイヤボンディング用のボンディングパッド部分の接着剤層5が現像で除去されるように、所定のパターンを有するマスク(図示せず)を介して露光を行う。露光は、真空下、窒素下、空気下などの雰囲気下で行なうことができる。酸素阻害を低減するために、離形処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルムなどの基材を接着剤層5上に積層した状態で、露光することもできる。露光量は、50〜2000mJ/cm2が好ましい。
【0125】
接着剤層5の膜厚は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。
【0126】
工程3(図3)
図3(a)及び(b)に示すように、露光後の接着剤層5を現像し、上述したダイシングライン部分、及び、電気的接続を行う部分(ボンディングパッド部分)の接着剤層5を除去することで、個片化された接着剤層(接着剤パターン)5を形成する。図3(b)は現像後の接着剤層5を拡大した上面図である。この図3(b)に示すように、ボンディングパッド部分の接着剤層5が除去されることで、ワイヤボンディングパッドを設けるための開口51が形成される。また、図3(b)に示すように、ダイシングラインDに沿った部分の接着剤層5が除去される。現像は、アルカリ現像液又は有機溶剤を用いて行う。アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、テトラアンモニウムヒドロキシド(テトラメチルアンモニウムハイドライド)等のアルカリ水溶液等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、DMF、NMP等が挙げられる。このように、予めダイシングライン部分、及び、ボンディングパッド部分の接着剤層5を除去しておくことで、ダイシング時の切りくずの発生を抑制したり、ワイヤボンディング時の接続不良を抑制する効果が得られる。
【0127】
露光及び現像後の接着剤層表面の80℃におけるタック強度(表面タック力)は、100gf以下であることが好ましい。これにより、ピックアップ時にコレットに接着剤層が付着することを十分に抑制することができ、複数の半導体チップを積層して半導体装置を作製する際に、連続圧着が可能となる。このタック強度は、上記の効果がより十分に得られることから、100gf以下であることがより好ましく、80gf以下であることが更に好ましい。また、複数の半導体チップを積層しやすくなることからタック強度は50gf以上であることが好ましい。なお、本発明において、露光後のタック強度は、露光及び現像後のタック強度を測定することで求めることができる。
【0128】
露光及び現像後の接着剤層表面のタック強度は以下のように測定される。まず、シリコンウェハ等の基板上に感光性接着剤組成物からなる接着剤層を膜厚5μmとなるように形成する。このとき、接着剤層の形成方法は特に限定されないが、例えば、スピンコータを用いて感光性接着剤組成物を塗布し、乾燥させることで形成することができる。この接着剤層に対し、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)により100mJ/cm2で露光を行う。次いで、アルカリ現像液又は有機溶剤で現像を行う。例えば、現像はスピン現像機(ノア社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液として感光性接着剤層の全体に留まるように滴下し、10秒間感光性接着剤層上に放置する(浸漬工程)。浸漬後、スピン現像機を用いて、回転数2000rpm、温度25℃の純水にてスプレー圧0.1MPa/30sの条件で水洗し、窒素のエアーガンで水滴を飛ばす。その後、所定の温度(例えば80℃)における接着剤層表面のタック強度をレスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:200gf/cm2、接触時間:1sの条件で測定する。
【0129】
露光及び現像後の接着剤層表面の120℃におけるタック強度(表面タック力)は、100gf以上であることが好ましく、110gf以上であることがより好ましい。このタック強度が100gf未満であると、熱圧着性が損なわれて、熱圧着時にボイドが発生する、熱圧着温度が高温化するといった傾向がある。この120℃におけるタック強度は、上述した80℃におけるタック強度と同様の方法で測定される。
【0130】
工程4(図4)
図4(a)及び(b)に示すように、導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってハーフカットする。図4(a)はカット前の状態の斜視図であり、(b)はカット後の状態の断面図である。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。
【0131】
工程5(図5)
ハーフカット後、接着剤層5側の面F3に粘着テープ6bを貼り付けて全体を反転させ、粘着テープ6aを剥離する。その後、図5(a)及び(b)に示すように、半導体ウェハ1の裏面F2を、ハーフカットにより形成された切り込み部分まで研磨する(バックグラインド)。これにより、半導体ウェハ1を薄くするとともに、複数の半導体チップ2に個片化する。研磨は、粘着テープ6bによって半導体ウェハ1を研磨用の治具に固定した状態で、グラインド装置8を用いて行う。図5(a)及び(b)はいずれも、バックグラインド前の状態を示している。
【0132】
工程6(図6、7)
研磨の後、個片化された半導体チップ2の裏面F2に粘着テープ6cを貼り付けて全体を反転させ、粘着テープ6bを剥離して、図6(b)に示した状態とする。その後、図6(a)に示すように、ダイボンド装置のコレット(吸着コレット)12によって接着剤層5とともにピックアップし、図7に示すように、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。コレット12で接着剤層5付きの半導体チップ2をピックアップする際には、接着剤層面F3をコレット12で吸着してピックアップする。一段目の半導体チップ2を支持部材13に圧着する場合は、図7に示すように両面テープ等の接着部材30を介して圧着する。
【0133】
圧着により、半導体チップが支持部材又は他の半導体チップに接着される。圧着は、熱板50上で加熱しながら行われる。圧着は、通常、熱板表面温度:30〜150℃、圧着荷重:0.1〜100N、圧着時間:0.1〜10sの条件で行うことができる。
【0134】
圧着後、半導体チップと支持部材又は他の半導体チップとの260℃におけるせん断接着強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。せん断接着強度が0.2MPa未満であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。せん断接着強度は、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて測定することができる。
【0135】
上記の方法により、複数の段数の半導体チップ2が連続的に積層され、多層構造が形成されることとなる。その後、図11に示すように、半導体チップ2はそのボンディングパッド17に接続されたワイヤ14を介して支持部材13上の外部接続端子16と接続される。半導体チップ2を含む積層体を封止材15によって封止することにより、半導体装置100が得られる。
【0136】
ここで、ワイヤ14の材質としては、金、銅等が挙げられる。封止材15の材質としては、エポキシ樹脂混合物等が挙げられる。外部接続端子16の材質としては、アルミ、金等が挙げられる。ボンディングパッド17の材質としては、金、アルミ等が挙げられる。
【0137】
以上のような工程を経て、半導体素子同士、及び、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置を製造することができる。半導体装置の構成及び製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。以下、他の実施形態について説明する。
【0138】
第二実施形態に係る半導体装置の製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図3):露光後の接着剤層5を現像して個片化された接着剤層5を形成する。
工程4(図8):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってダイシングし、複数の半導体チップ2に切り分ける。
工程5(図6、7):半導体チップ2をピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
【0139】
第二実施形態の工程4では、図8(a)及び(b)に示すように、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を切断する。図8(a)はダイシング前の状態の斜視図であり、(b)はダイシング後の状態の断面図である。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの回路面F1に接着剤層5が設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。ダイシング深さは、図8(b)に示すように、ダイシングブレード11が粘着テープ6aに達する深さとすることが好ましい。
【0140】
第一実施形態においては、バックグラインドにより半導体ウェハ1を半導体チップ2に個片化する場合を示したが、第二実施形態においては、ダイシングにより半導体ウェハ1を半導体チップ2に個片化する。第二実施形態においては、半導体ウェハ1に接着剤層5を形成する前に、予めバックグラインドを行なって半導体ウェハ1を薄くしてもよい。第二実施形態では、上記以外の工程は全て第一実施形態と同様に行なうことができる。
【0141】
第三実施形態に係る半導体装置の製造方法は、主に以下の工程から構成される。
工程1(図1):半導体ウェハ1の回路面F1に感光性接着剤組成物4を塗布する。
工程2(図2):塗布された感光性接着剤組成物4からなる接着剤層5側から露光を行う。
工程3(図9):半導体ウェハ1をダイシングラインDに沿ってダイシングし、複数の半導体チップ2に切り分ける。
工程4(図10、7):半導体チップ2をピックアップして半導体素子搭載用の支持部材13又は他の半導体チップに圧着(マウント)する。
【0142】
第三実施形態の工程3では、接着剤層5をパターニングせずに、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を接着剤層5とともに切断する。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの回路面F1に接着剤層5が設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6aによって半導体ウェハ1を固定した状態で、ダイシングブレード11を用いて行われる。ダイシング深さは、ダイシングブレード11が粘着テープ6aに達する深さとすることが好ましい。
【0143】
その後、工程4により、個片化された半導体チップ2を、図10に示すように、ダイボンド装置のコレット12によって接着剤層5とともにピックアップし、図7に示すように、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。
【0144】
第三実施形態においては、半導体ウェハ1に接着剤層5を形成する前に、予めバックグラインドを行なって半導体ウェハ1を薄くしてもよい。第二実施形態では、上記以外の工程は全て第一実施形態と同様に行なうことができる。
【0145】
なお、第三実施形態においては、接着剤層5に対し、ワイヤボンディングパッド17を設けるための開口51を設ける必要がある。この開口は、所望の開口パターンを有するマスクを介して接着剤層の露光及び現像を行なうことで形成することができる。なお、第一及び第二実施形態においても同様の方法で接着剤層5に開口51を形成している。すなわち、第一及び第二実施形態においては、接着剤層5の露光及び現像によりダイシングライン部分の接着剤層5の除去及び開口部51の形成を行い、第三実施形態においては、接着剤層5の露光及び現像によりダイシングライン部分の接着剤層5の除去は行わず、開口部51の形成のみを行う。
【0146】
以上、半導体装置の製造方法を、第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態に基づいて説明しが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、半導体装置は図11に示した構造を有するものに限定されず、図12及び13に示したような構造を有するものであってもよい。図12及び13に示したような構造を有する半導体装置では、同一サイズの半導体チップ2を積層できるという利点があるとともに、大容量化に有利であるという利点がある。
【実施例】
【0147】
以下、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0148】
<(D)成分:アルカリ可溶性樹脂の作製>
(ポリイミド樹脂PI−1)
撹拌機、温度計、窒素置換装置(窒素流入管)、及び水分受容器付きの還流冷却器を備えたフラスコ内に、ジアミンであるMBAA(商品名、和歌山精化社製、5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)、分子量:286.3)を5.72g(0.02mol)、D−400(商品名、BASF社製、ポリエーテルジアミン、分子量:452.4)を12.99g(0.03mol)、BY16−871EG(商品名、東レ・ダウコーニング社製、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン)を2.48g(0.01mol)、及び、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル(東京化成社製、商品名:B−12、分子量:204.31)8.17g(0.04mol)と、溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)110gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0149】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA(4,4’−オキシジフタル酸二無水物)27.9g(0.09mol)、及び、TAA(無水トリメリット酸)3.84g(0.02mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、ポリイミド樹脂PI−1を得た。PI−1のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=21,000であった。また、PI−1のTgは55℃であった。
【0150】
<感光性接着剤組成物の調製>
上記で得られたポリイミド樹脂PI−1及び他の化合物を用いて、下記表1に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、実施例1〜4及び比較例1〜2の感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0151】
表1において、各記号は下記のものを意味する。
A−9300:新中村化学社製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、
A−LEN−10:新中村化学社製、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、
M−140:東亞合成社製、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、
A−BPEF:新中村化学社製、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、
YDF−8170C:東都化成社製、ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル、
EG−200:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量292)、
EG−250:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量393)、
PG−100:大阪ガスケミカル社製:フルオレン骨格含有エポキシ樹脂(エポキシ当量259)、
VG−3101:プリンテック社製、2−[4−(2,3エポキシプロポキシ)フェノル]−2−[4−[1,1−ビス[4−([2,3−エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン、
LA−7052:DIC社製、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)、
I−819:チバ・ジャパン社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、
I−OXE02:チバ・ジャパン社製、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾールー3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド、
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリドン。
【0152】
【表1】
【0153】
<感光性接着剤層の形成>
得られた感光性接着剤組成物を、50μm又は400μmの厚みの6インチシリコンウェハの鏡面加工側に、乾燥後の膜厚が5μmになるように所定量滴下し、スピンコータ(700rpm/10s+1200rpm/30s)を用いて、薄膜を形成した。その後、温度を100℃に設定したホットプレート上に10分間放置した。このようにして、感光性接着剤組成物から形成された接着剤層を有する接着剤層付シリコンウェハを得た。
【0154】
<評価試験>
上記で得られた接着剤層付シリコンウェハについて、以下の評価試験を行った。
【0155】
(パターン形成性)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハに、接着剤層側から約100μm以上隙間が開くようにネガマスクをかぶせ、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光した。その後、スピン現像機(ノア社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液として感光性接着剤層の全体に留まるように滴下し、10秒間感光性接着剤層上に放置した。浸漬後、スピン現像機を用いて、回転数2000rpm、温度25℃の純水にてスプレー圧0.1MPa/30sの条件で水洗し、窒素のエアーガンで水滴を飛ばした。その後、60μm×60μmの四角型の開口ができているかを確認した。開口していたものをA、開口していなかったものをBとして評価した。結果を表2に示す。また、開口パターンが得られなかった比較例1〜2の接着剤層は、現像時の密着強度を増すため、上記条件で露光した後、PEB(Post Exposure Bake)工程として80℃のホットプレート上に30秒間放置し、次いで上記条件で現像を行うことで、開口パターンを得た。実施例1〜4及び比較例1〜2の開口パターンの電子顕微鏡写真を図14に示す。図14中、(a)が実施例1、(b)が実施例2、(c)が実施例3、(d)が実施例4、(e)が比較例1、(f)が比較例2、の開口パターンである。
【0156】
(熱圧着性)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後、シリコンウェハの接着剤層とは反対側の面に、室温でダイシングテープ(厚み80μm)をラミネートし、ダイシングサンプルを作製した。
【0157】
その後、フルオートダイサーDFD−6361(ディスコ社製)を用いて、接着剤層、シリコンウェハ及びダイシングテープを積層した上記ダイシングサンプルを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式、ブレードに株式会社ディスコ社製ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HEDDを用い、ブレード回転数45000rpm、切断速度20mm/sの条件にて行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを10μm残す設定とした。半導体ウェハを切断するサイズは3.0mm×3.0mmとした。その後、ダイシング後のサンプルを24時間放置した後、熱圧着機(日化設備社製)を用いて、10mm×10mm×400μmtのシリコンチップ上に、ダイシングした接着剤層付シリコンウェハの接着剤層がシリコンチップ側に来るように積層し、120℃/1s/100gの条件で圧着を行った。その後、せん断接着力測定器DAGE−4000(Dage社製)で室温のせん断接着力測定を行い、1.0MPa以上の値を示したものをA、示さなかったものをBとして評価した。結果を表2に示す。
【0158】
(連続圧着性)
接着剤層を形成した50μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後、シリコンウェハの接着剤層とは反対側の面に、室温でダイシングテープ(厚み80μm)をラミネートし、ダイシングサンプルを作製した。
【0159】
その後、フルオートダイサーDFD−6361(ディスコ社製)を用いて、接着剤層、シリコンウェハ及びダイシングテープを積層した上記ダイシングサンプルを切断した。切断は、ブレード1枚で加工を完了するシングルカット方式、ブレードに株式会社ディスコ社製ダイシングブレードNBC−ZH104F−SE 27HEDDを用い、ブレード回転数45000rpm、切断速度20mm/sの条件にて行った。切断時のブレードハイトは、ダイシングテープを10μm残す設定とした。半導体ウェハを切断するサイズは7.5mm×7.5mmとした。その後、まずは一段目として、両面テープが張られた銅貼積層板(日立化成工業社製、商品名:E−679F、厚み:0.2mm)上の9箇所に、接着剤層付シリコンチップをチップが両面テープと密着するように9回連続で圧着した。圧着は、フレキシブルダイボンダDB−730(ルネサス東日本セミコンダクタ社製)を用い、接着剤層面をコレットで吸着して接着剤層付シリコンチップをピックアップし、熱板表面温度:120℃、圧着荷重:5N、圧着時間:0.1sの条件で圧着することにより行った。次に、圧着された9個のシリコンチップ上の感光性接着剤層と密着するように2段目のチップをそれぞれ9回連続で一段目と同じ条件で圧着し、銅貼積層板上の9箇所にシリコンチップが2個ずつ積層されている状態とした。このとき、フレキシブルダイボンダのコレットに接着剤層付チップが密着せず、連続で積層可能であったサンプルをAとして評価した。また、コレットに接着剤層付チップが密着し、連続で積層が不可能であったサンプルをBとして評価した。結果を表2に示す。
【0160】
(感光性接着剤層表面の80℃でのタック強度)
接着剤層を形成した400μm厚のシリコンウェハの接着剤層を、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって100mJ/cm2で露光し、上記パターン形成性の評価試験と同じ条件で現像を行った。現像後の接着剤層付シリコンウェハを、レスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:200gf/cm2、接触時間:1sにより、80℃におけるタック力(粘着力)を測定し、これを感光性接着剤層表面の80℃タック力(タック強度)とした。結果を表2に示す。
【0161】
【表2】
【符号の説明】
【0162】
1…半導体ウェハ、2…半導体チップ、4…感光性接着剤組成物、5…接着剤層、6a,6b,6c…粘着テープ、8…グラインド装置、9…露光装置、11…ダイシングブレード、12…コレット、13…支持部材、14…ワイヤ、15…封止材、16…外部接続端子、17…ボンディングパッド、50…熱板、100…半導体装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、前記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートとの混合物である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A2)多官能(メタ)アクリレート及び前記(B)エポキシ樹脂の少なくとも一方が、フルオレン骨格を含有している、請求項2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の前記接着剤層を現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項6】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を半導体ウェハ上に形成する工程と、
前記接着剤層を露光及び現像によってパターニングする工程と、
接着剤層付半導体ウェハをダイシングする工程と、
ダイシングで得られた接着剤層付半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップする工程と、
前記接着剤層付半導体チップと半導体素子搭載用支持部材及び/又は他の半導体チップとを圧着する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項1】
(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)光開始剤、及び、(D)アルカリ性水溶液又は有機溶剤に可溶な可溶性ポリマーを少なくとも含む感光性接着剤組成物であって、前記感光性接着剤組成物からなる接着剤層を100mJ/cm2で露光後の80℃でのタック強度が100gf以下である、感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、(A1)単官能(メタ)アクリレートと(A2)多官能(メタ)アクリレートとの混合物である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A2)多官能(メタ)アクリレート及び前記(B)エポキシ樹脂の少なくとも一方が、フルオレン骨格を含有している、請求項2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
更に(E)トリアジン骨格を含有するフェノール樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層を露光し、露光後の前記接着剤層を現像液により現像処理することにより形成される、接着剤パターン。
【請求項6】
半導体ウェハと、該半導体ウェハの一方の面上に設けられた請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える、接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を半導体ウェハ上に形成する工程と、
前記接着剤層を露光及び現像によってパターニングする工程と、
接着剤層付半導体ウェハをダイシングする工程と、
ダイシングで得られた接着剤層付半導体チップの接着剤層面をコレットに吸着してピックアップする工程と、
前記接着剤層付半導体チップと半導体素子搭載用支持部材及び/又は他の半導体チップとを圧着する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−162676(P2012−162676A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25233(P2011−25233)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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