説明

感光性樹脂および感光性樹脂組成物

【課題】高感度で十分な現像性、ガラスへの密着性を有する感光性樹脂及び感光性樹脂組成物、ならびにその硬化物(特にカラーフィルターに有用である)を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(a)、エチレン性不飽和一塩基酸(b)、並びにイミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)を反応させ得られた樹脂に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂(A)、さらに該感光性樹脂(A)にラジカル重合性不飽和基およびエポキシ基を有する化合物(e)を含む感光性樹脂(B)、ならびに感光性樹脂(A)及び/又は(B)を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂および感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物に関する。詳しくは液晶ディスプレー、固体映像素子等に用いられるカラーフィルターを製造するのに好適な感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレーはコンパクトで消費電力が少ないことから従来のCRT型テレビに代わり使用が進んでいる。
【0003】
液晶ディスプレーをカラー表示するためにカラーフィルターが用いられている。これはガラス基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)の三色を所定のパターンで作成された透明塗膜と、それらRGBの三色のカラーフィルター間の黒色のブラックマトリックスからなる。通常、ガラスなどの透明基板上にブラックマトリックスを形成し、次にR、G、Bのパターンを順次形成して製造される。
【0004】
一般的にカラーフィルターは染色法、印刷法、顔料分散法、電着法などの製造方法がある。これらの中で、顔料分散法は、アルカリ可溶性樹脂、反応性希釈剤、光重合開始剤、顔料及び溶剤を主体とする光硬化性樹脂組成物を用い、これを透明基板上に塗布し、露光、現像、さらに必要に応じて、後硬化を繰り返すことでカラーフィルターが作成される。この方法は、特に耐光性・耐熱性などの耐久性に優れ、ピンホールなどの欠陥が少ないため現在主流となっている。
【0005】
一方ブラックマトリックスは、R、G、Bのパターンの間に格子状、ストライプ状、またはモザイク状に配置されるのが一般的である。これは各色が混合してしまうことを防いだり各色間の光の漏れを防いだりする役割を果たす。従来ブラックマトリックスはクロムなどの金属を蒸着し金属膜パターン化する方法が一般的であった。しかし、この方法では製造工程が長くかつ生産性が低く高コストであること、光の反射が生じることや製造工程で使用されるエッチング処理に生じる廃液の問題などの問題がある。
【0006】
そのため、カーボンブラック等の遮光性の黒色顔料や染料を感光性樹脂に分散させた樹脂組成物を用いパターンを形成する方法等が提案されている。しかし、この方法では従来のクロムなどの金属膜パターンと同様の遮光性を持たせるには顔料や染料の含有量を増やす必要があり、光の透過性が落ちるため感光性樹脂の光感度が低下し硬化が不十分になり易いこと、現像性や密着性や解像性が悪くなる傾向にあるなどの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、上記の問題点である高感度で十分な現像性、ガラスへの密着性を有する感光性樹脂及び感光性樹脂組成物、ならびにその硬化物(特にカラーフィルター及びブラックマトリックスに有用である)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記した問題点を鋭意検討した結果、
(1)エポキシ樹脂(a)、エチレン性不飽和一塩基酸(b)、並びにイミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)を反応させ得られた樹脂に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂(A)、
(2)(1)に記載の感光性樹脂(A)に、さらにラジカル重合性不飽和基およびエポキシ基を有する化合物(e)を反応させて得られる感光性樹脂(B)、
(3)(1)に記載の感光性樹脂(A)及び/又は(2)に記載の感光性樹脂(B)、光開始剤(C)、有機色素(D)、反応性希釈剤(E)、並びに溶剤(F)を含む感光性樹脂組成物、
(4)前記イミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)を0.03〜5.0質量%含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の感光性樹脂、
(5)固形分酸価が20〜120mgKOH/gであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の感光性樹脂、
(6)(3)に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化塗膜、および
(7)カラーフィルター用である(3)に記載の感光性樹脂組成物を開発することにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、カラーフィルターおよびブラックマトリックスに特に有用である、高感度で十分な現像性、ガラスへの密着性を有する感光性樹脂もしくは感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)は、1分子中にグリシジル基を2個以上有しているものであれば、特に限定されずに使用可能である。例えば、グリシジルエーテル型として、ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールAおよびビスフェノールフルオレン等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、あるいはビスフェノールAのグリシジルエーテルと前記フェノール類の縮合物とエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの、ビフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの(例えばジャパンエポキシレジン製 エピコート YX−4000);ジヒドロキシナフタレンとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの(例えば大日本インキ化学工業製 EPICLON HP−4032);アルキルジフェノールとエピクロルヒドリンおよび/またはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの(例えば大日本インキ化学工業製 EPICLON EXA−7120)等が存在する。他のグリシジルエーテル型としてフェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル、ナフトールアラルキルのグリシジルエーテルが挙げられる。さらに、グリシジルエステル型のダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等、グリシジルアミン型のジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等、脂環式型のアリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、前記エポキシ樹脂とジイソシアネートとを反応させて得られるオキサゾリドン環を有するもの(例えば旭化成エポキシ製 アラルダイト AER4152)等、脂環式エポキシ(例えばダイセル化学工業製EHPE3150、セロキサイド)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、これらは、1種または2種以上混合して用いてもよい。
【0011】
本発明で用いるエチレン性不飽和一塩基酸(b)は、感光性基としてエチレン性不飽和基を本発明の感光性樹脂に導入する役割を果たす。エチレン性不飽和一塩基酸(b)としては、特に限定はされないが例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、等を挙げることができる。また、1個の水酸基と1個以上の(メタ)アクロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等)と多塩基酸無水物との反応物等も用いることができる。これらエチレン性不飽和一塩基酸(b)は単独あるいは2種以上併用することが出来る。
【0012】
本発明で用いるイミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)は、特に限定はされないがイミダゾールシランの例としては下記(1)、(2)、(3)に示される化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
(ただし、Rは水素、ビニル基または炭素数が1〜5のアルキル基、Rは水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、RおよびRは、独立して炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3)。
【0015】
アミノシランは例えば下記(4)、(5)、(6)に示される化合物が挙げられる。
【化2】

【0016】
(ただしR’は炭素数が1〜12の1価の炭化水素基または水素、R’は炭素数が1〜12の2価の炭化水素基、R’およびR’は、独立して炭素数が1〜12の1価の炭化水素基または水素、nは1〜3)。
【0017】
これらは単独あるいは2種以上へ移用することが出来る。イミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)の使用量は感光性樹脂(A)または(B)中の0.03〜5.0質量%である。0.03質量%未満であると十分な効果が得られない場合があり、5.0質量%を超えると添加量に見合う効果が得られない。
【0018】
エポキシ樹脂(a)とエチレン性不飽和一塩基酸(b)、イミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)の反応は公知の手法を用いることが出来る。例えば反応温度70〜140℃の温度で反応させることが出来る。この反応でイミダゾールシラン及び/又はアミノシランは前記エポキシ樹脂(a)とエチレン性不飽和一塩基酸(b)の反応の反応触媒としての効果だけでなく、それ自体も樹脂骨格中に組み込まれて本発明の感光性樹脂の密着性向上を付与する効果を有する。
【0019】
またイミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)と併用して公知のエステル化触媒や重合禁止剤を併用することも出来る。エステル化触媒としてはトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどのアミン系触媒や、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−o―トルイルホスフィン、トリ−m−トルイルホスフィン、トリ−p−トルイルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン等のリン系触媒、金属塩などの金属系触媒が挙げられる。重合禁止剤としてはハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、メトキノン、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0020】
多塩基酸無水物(d)は特に限定されないが、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水こはく酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。これら1種又は2種以上を併用しても良い。多塩基酸無水物(d)の付加反応も公知の手法を用いることが出来る。例えば70〜130℃で反応させることが出来る。このような手法で本発明の感光性樹脂(A)を得ることが出来る。
また、本発明の効果を奏する限り、多塩基酸無水物(d)の配合量は限定されないが、後述の固形分酸価の範囲内になる量が好ましい。
上記エポキシ樹脂(a)とエチレン性不飽和一塩基酸(b)を反応させた場合、エポキシ樹脂のエポキシ基とエチレン性一塩基酸のカルボキシル基が反応して水酸基を生じる。この水酸基と上記多塩基無水物(d)が反応して、遊離のカルボキシル基が生成される。
【0021】
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物(e)は特に限定はされないが、例えばグリシジル(メタ)アクリレートや、脂環式エポキシを有する(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業製サイクロマーA200:3,4−エポキシシクロへキシルメチルアクリレート、M100:3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート)が挙げられる。これら1種又は2種以上を併用しても良い。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物(e)の付加反応も公知の手法を用いることが出来る。例えば70〜130℃で反応させることが出来る。また前記感光性樹脂(A)にラジカル重合性不飽和基を別途合成し、それとエポキシ基を持つ化合物(e)を付加させても良いし、初めから反応を行なっても良い。このようにして本発明の感光性樹脂(B)を得ることが出来る。
また、本発明の効果を奏する限り、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物(e)の配合量は限定されないが、後述の固形分酸価の範囲内に入る量が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物(e)は上記多塩基酸無水物(c)の反応により生成された遊離のカルボキシル基と反応し、本発明の感光性樹脂に感光基を導入することで感光性を向上させる効果がある。
【0022】
本発明における感光性樹脂(A)、感光性樹脂(B)およびこれらの感光性樹脂の混合物の固形分酸価は20〜120mgKOH/gであることが望ましい。酸価が20mgKOH/g未満であると十分なアルカリ現像性を得ることが出来ない場合があり、酸価が120mgKOH/gを超えると現像性が良くなりすぎて現像速度が大きくなりすぎで実用性に乏しい場合がある。
【0023】
本発明の別の見地によれば、前記感光性樹脂(A)、及び/又は感光性樹脂(B)、光開始剤(C)、有機色素(D)、反応性希釈剤(E)並びに溶剤(F)を含む感光性樹脂組成物が提供される。さらに、本発明は、前記感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化塗膜もしくはカラーフィルター用である前記感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線照射などにより光硬化させるために光開始剤(C)を添加することができる。利用できる光重合開始剤としては特に限定はされないが、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインおよびそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノンー1;アシルホスフィンオキサイド類及びキサントン類等が挙げられる。光重合開始剤(C)の配合量は、本発明の感光性樹脂の固形分100質量部に対して、0.5〜30質量部で配合することが好ましい。
【0025】
本発明の感光性樹脂組成物において有機色素(D)としては、黒色のものであり、具体的にはカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、カーボンナノチューブ、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、黒鉛などの黒色顔料や黒色染料が挙げられる。また赤色、緑色、青色の顔料または染料を黒色として混合し使用することが出来る。前述のように黒色だけでなく赤色、緑色、青色の顔料も使用可能であることから本発明の感光性樹脂組成物はカラーフィルターのブラックマトリックスだけでなくカラーフィルターにも使用することも可能である。
有機色素(D)の配合量は、本発明の感光性樹脂の固形分100質量部に対して、100〜500質量部で配合することが好ましい。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物において、反応性希釈剤(E)を添加することができる。利用できる反応性希釈剤(E)としては、感光性樹脂(A)及び/又は感光性樹脂(B)と反応可能なものであれば特に制限はされないが例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のポリカルボン酸モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ジ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル系モノマー;トリアリルシアヌレート等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
反応性希釈剤(E)の配合量は、本発明の感光性樹脂の固形分100質量部に対して、10〜200質量部で配合することが好ましい。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物において、溶剤(F)を添加することができる。利用できる溶剤(F)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート等を挙げることが出来る。
溶剤(F)の配合量は感光性樹脂100質量部に対して30から800質量部であることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の組成物は、必要に応じて公知の溶剤や顔料分散剤、消泡剤、前記エポキシシラン(c)以外のカップリング剤、レベリング剤等を含有することができる。
【0029】
本発明の感光性樹脂はボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ペイントコンディショナー、3本ロールミル、ホモシナイザー等を用いて混合、分散処理を行なうことで得ることが出来る。感光性樹脂組成物をガラス基板などの透明基板上に塗布し塗膜を乾燥させ、次いで組成物を露光現像させ、更に諸物性の向上のためにポストベークを行ない十分な硬化を行ない硬化塗膜が得られる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。なお、部及びパーセントとあるのは特に断らない限りすべて質量基準である。
【0031】
合成例1
4つ口フラスコに攪拌器、温度計、空気導入管、還流冷却器をセットした反応装置に、エピクロンN680(大日本インキ化学工業株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ、エポキシ当量212)212部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート360部、アクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部、イミダゾールシラン(日鉱マテリアルズ製IM−1000)0.7部を仕込み、空気を吹き込みながら100℃に加熱し、約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に温度を90℃まで下げテトラヒドロ無水フタル酸76部を仕込み90℃で6時間反応させた。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価78mgKOH/gの感光性樹脂(A−1)を得た。
【0032】
合成例2
イミダゾールシランIM−1000をアミノシラン(信越シリコーン製KBE903:3−アミノプロピルトリメトキシシラン)0.7部に変更した以外は合成例1に準じて合成を行なった。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価79.5mgKOH/gの感光性樹脂(A−2)を得た。
【0033】
合成例3
合成例1と同様の装置にエピクロンN680(大日本インキ製造株式会社製クレゾールノボラック型エポキシ、エポキシ当量212)212部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート360部に加熱溶解し、そこへアクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部、イミダゾールシラン(日鉱マテリアルズ製IM−1000)0.7部を仕込み、空気を吹き込みながら100℃で約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に温度を90℃まで下げ、テトラヒドロ無水フタル酸106.4部を仕込み90℃で6時間反応させた。次にグリシジルメタクリレートを28.4部仕込み90℃で6時間反応させた。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価68mgKOH/gの感光性樹脂(B−1)を得た。
【0034】
合成例4
合成例1と同様の装置にエピコート1004(ジャパンエポキシレジン製ビスフェノールA型エポキシ、エポキシ当量970)970部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1042部を加熱溶解し、そこへアクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部、イミダゾールシラン(日鉱マテリアルズ製IM−1000)0.7部を仕込み、空気を吹き込みながら100℃で約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に温度を90℃まで下げ、テトラヒドロ無水フタル酸547.2部を仕込み90℃で6時間反応させた。次にグリシジルメタクリレートを28.4部仕込み90℃で6時間反応させた。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価118mgKOH/gの感光性樹脂(B−2)を得た。
【0035】
合成例5
イミダゾールシランIM−1000の量を0.1部に変更した以外は合成例1に準じて合成を行なった。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価79.5mgKOH/gの感光性樹脂(A−3)を得た。
【0036】
合成例6
イミダゾールシランIM−1000の量を19部に変更した以外は合成例1に準じて合成を行なった。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価79.5mgKOH/gの感光性樹脂(A−4)を得た。
【0037】
合成例7
合成例1と同様の装置にエピコート1004(ジャパンエポキシレジン製ビスフェノールA型エポキシ、エポキシ当量970)970部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1042部を加熱溶解し、そこへアクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部、イミダゾールシラン(日鉱マテリアルズ製IM−1000)0.7部を仕込み、空気を吹き込みながら100℃で約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に温度を90℃まで下げ、テトラヒドロ無水フタル酸85.2部を仕込み90℃で6時間反応させた。次にグリシジルメタクリレートを28.4部仕込み90℃で6時間反応させた。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価19.3mgKOH/gの感光性樹脂(B−3)を得た。
【0038】
合成例8
合成例1と同様の装置にエピコート1004(ジャパンエポキシレジン製ビスフェノールA型エポキシ、エポキシ当量970)970部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1042部を加熱溶解し、そこへアクリル酸72部、メチルハイドロキノン0.2部、イミダゾールシラン(日鉱マテリアルズ製IM−1000)0.7部を仕込み、空気を吹き込みながら100℃で約30時間反応させ、酸価0.5mgKOH/gの反応物を得た。次に温度を90℃まで下げ、テトラヒドロ無水フタル酸608部を仕込み90℃で6時間反応させた。次にグリシジルメタクリレートを28.4部仕込み90℃で6時間反応させた。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価127mgKOH/gの感光性樹脂(B−4)を得た。
【0039】
(比較合成例1)触媒をトリフェニルホスフィン0.4部に変更した以外は合成例1に準じて合成を行なった。その後樹脂固形分30%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、固形分酸価79.5mgKOH/gの感光性樹脂(C−1)を得た。
【0040】
(実施例1〜8、比較例1)
表1の配合表で示した組成物をペイントシェーカーで調整し、0.8μmのガラスフィルターを用いて濾過をした。次いでこれをガラス基板上にスピンコーターで乾燥膜厚1.0μm厚みになるように塗工し、90℃の乾燥機に3分間入れて溶剤乾燥を行ない予備乾燥塗膜を得た(以下予備乾燥塗膜とする)。次にパターンマスクを介し超高圧水銀灯を用いて露光量 200mJ/cmで露光を行なった。次にスピン現像装置(現像液:1%炭酸ナトリウム水溶液、液温20℃)で所定の時間現像し、純水で30秒リンスを行ない、乾燥した。次に200℃の乾燥機に30分入れてポストベークし、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜および予備乾燥塗膜を以下の項目を評価した。結果を表2に示す。
【0041】
感度
予備乾燥塗膜にステップタブレットNO.2(コダック社製21段)を密着させ露光量200mJ/cmで露光を行ない、次にスピン現像装置(現像液:1%炭酸ナトリウム水溶液、液温20℃)で現像し(現像時間は未露光時の現像時間の2倍とした)、純水で30秒リンスを行ない、乾燥した塗膜の残った段数を測定した。
【0042】
薬品耐性
硬化塗膜を40℃の2%水酸化ナトリウム水溶液または40℃の10%塩酸水溶液、室温のN-メチルピロリドン(以下NMP)中に試験片を30分浸漬し侵食の有無を確認した。
○:外観に変化無し。
△:一部侵食が見られるもの。
×:侵食が見られるもの。
【0043】
密着性
硬化塗膜をJIS K5400に準じた碁盤目試験を行ない100個の碁盤目の剥離の状態を目視で評価した。
○:全く剥離が見られない。
△:部分的(全体の10%以下)に剥離が見られるもの。
×:剥離が認められるもの。
【0044】
膜厚保持率
露光現像後の膜厚と200℃30分ポストベーク後の膜厚を測定し保持率を以下の式で求めた。
膜厚保持率(%)=100×(露光現像後の膜厚−ポストベーク後の膜厚)/(露光現像後の膜厚)
【0045】
パターン形状
硬化塗膜の露光部分に形成された塗膜の形状の直線性を光学顕微鏡も用いて観察して評価を行った。
○;直線性良好
△;部分的に直線性良好
×;直線性不良
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(a)、エチレン性不飽和一塩基酸(b)、並びにイミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)を反応させ得られた樹脂に、さらに多塩基酸無水物(d)を反応させて得られる感光性樹脂(A)。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂(A)に、さらにラジカル重合性不飽和基およびエポキシ基を有する化合物(e)を反応させて得られる感光性樹脂(B)。
【請求項3】
請求項1に記載の感光性樹脂(A)及び/又は請求項2に記載の感光性樹脂(B)、光開始剤(C)、有機色素(D)、反応性希釈剤(E)、並びに溶剤(F)を含む感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記イミダゾールシラン及び/又はアミノシラン(c)を0.03〜5.0質量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂。
【請求項5】
固形分酸価が20〜120mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂。
【請求項6】
請求項3に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化塗膜。
【請求項7】
カラーフィルター用である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−165180(P2008−165180A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227888(P2007−227888)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】