説明

感光性樹脂組成物、印刷版原版およびフレキソ印刷版

【課題】水現像性、乾燥性、画像再現性に優れる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)水分散ラテックス、(B)ゴム、(C)界面活性剤、(D)光重合性モノマー、(E)光重合開始剤、を含有し、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分との合計質量に対する前記(C)成分の質量の比率が0.1〜20%の範囲内であり、前記(A)成分と前記(B)成分との合計質量に対する前記(A)成分の質量の比率が20〜90%の範囲内であり、前記(B)成分が主成分となる分散相のサイズが10μm以下である感光性樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、印刷版原版およびフレキソ印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷版を用いて、包装材やラベル、雑誌等の被刷体に、凸版印刷、凹版印刷、あるいは、平版印刷が行われている。このうち、凸版印刷は、凸版を用いて行われる。この凸版には、材質が柔らかいことから被刷体を選ばず、種々の被刷体に適用可能なフレキソ印刷版がある。
【0003】
フレキソ印刷版の原版は、PET樹脂などの基板上に感光性樹脂組成物よりなる感光層を備えている。フレキソ印刷版は、この感光層に密着させたネガフィルムを介して感光層に紫外線を照射し、未硬化部分を除去することでレリーフ像を形成したものである。最近では、水を媒介としてこの未硬化部分を除去する水現像によりレリーフ像を形成することがある。
【0004】
水現像可能な感光性樹脂組成物としては、例えば特許文献1に、水分散ラテックスと、光重合性モノマーと、ゴムと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物が開示されている。また、例えば特許文献2に、水溶性または水膨潤性ポリマと、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始剤と、スルホン酸塩の界面活性剤とを含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4211141号公報
【特許文献2】特開2005−331811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の感光性樹脂組成物は、水への溶解性や水の浸透性が低い成分が多いため、現像工程に長い時間がかかるという問題があった。現像時間が長いと、作業性の問題だけでなく、現像の際に、未硬化部分を除去するために印刷版原版の表面をブラシで擦る時間が長くなり、微小な網点などが欠けて画像再現性が低下するおそれがある。
【0007】
また、特許文献2は、現像時間の短縮の目的で感光性樹脂組成物に界面活性剤を含有させており、現像時間の短縮に効果が見られる一方、感光性樹脂組成物の主成分が水溶性または水膨潤性ポリマーであるため、水現像後の乾燥に時間がかかりすぎて実用性に劣る場合があった。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の成分である水分散ラテックスと、光重合性モノマーと、ゴムと、光重合開始剤に、特許文献2に記載の成分である界面活性剤を単に配合しただけでは、ネガフィルムの微小な網点を再現する画像再現性が低いことがあった。
【0009】
このように、従来の感光性樹脂組成物は、水現像性、乾燥性、画像再現性のいずれも満足させるというものではなかった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、水現像性、乾燥性、画像再現性に優れる感光性樹脂組成物を提供することにある。また、他の課題としては、この感光性樹脂組成物を用いた印刷版原版と、この印刷版原版を用いたフレキソ印刷版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定成分を特定割合で配合したときの分散状態が画像再現性に大きく影響することの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するため本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)水分散ラテックス、(B)ゴム、(C)界面活性剤、(D)光重合性モノマー、(E)光重合開始剤、を含有し、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分との合計質量に対する前記(C)成分の質量の比率が0.1〜20%の範囲内であり、前記(A)成分と前記(B)成分との合計質量に対する前記(A)成分の質量の比率が20〜90%の範囲内であり、前記(B)成分が主成分となる分散相のサイズが10μm以下であることを要旨とするものである。
【0013】
このとき、前記(C)成分がスルホン酸系界面活性剤であると良い。そして、さらに(F)可塑剤を0.1〜30質量%含有すると良い。また、前記(B)成分は、ブタジエンゴムおよびニトリルゴムから選択された1種または2種以上のゴムであると良い。
【0014】
そして、本発明に係る印刷版原版は、上記感光性樹脂組成物よりなる感光層を有することを要旨とするものである。
【0015】
また、本発明に係るフレキソ印刷版は、上記印刷版原版を用いたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る感光性樹脂組成物によれば、(A)水分散ラテックス、(B)ゴム、(C)界面活性剤、(D)光重合性モノマー、(E)光重合開始剤、を特定の配合比率で含有し、(B)成分が主成分となる分散相のサイズが10μm以下であることから、水現像性、乾燥性、画像再現性に優れる。
【0017】
このとき、前記(C)成分がスルホン酸系界面活性剤であると、より一層、水現像性に優れる。
【0018】
そして、さらに(F)可塑剤を0.1〜30質量%含有すると、溶剤インクやUVインクなどのインクによる膨潤が抑えられるため、インク耐性にも優れる。
【0019】
また、前記(B)成分が特定のゴムよりなると、より一層、画像再現性に優れる。
【0020】
そして、本発明に係る印刷版原版によれば、上記感光性樹脂組成物よりなる感光層を有することから、水現像性、乾燥性、画像再現性に優れる。
【0021】
また、本発明に係るフレキソ印刷版によれば、上記印刷版原版を用いたことから、画像再現性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例に係る感光性樹脂組成物の表面の観察写真であり、図1(a)は実施例1のものを、図1(b)は実施例4のものを、図1(c)は実施例7のものを、図1(d)は実施例8のものをそれぞれ示している。
【図2】比較例に係る感光性樹脂組成物の表面の観察写真であり、図2(a)は比較例1のものを、図2(b)は比較例2のものを、図2(c)は比較例5のものをそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)水分散ラテックス、(B)ゴム、(C)界面活性剤、(D)光重合性モノマー、(E)光重合開始剤、を特定の配合比率で含有するものからなる。本発明に係る感光性樹脂組成物は、水および水系現像液により現像できる印刷版原版の感光層に好適に用いることができる。
【0025】
(A)成分の水分散ラテックスとは、重合体粒子を分散質として水中に分散したものである。この水分散ラテックスから水を除去することにより、重合体が得られる。水分散ラテックスは、感光性樹脂組成物の水現像性を付与することができる。
【0026】
水分散ラテックスとしては、具体的には、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどの水分散ラテックス重合体やこれら重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。
【0027】
このうち、硬度の点などから、分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が好ましい。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
【0028】
(B)成分のゴムは、感光性樹脂組成物のゴム弾性を増加させることができる。これにより、例えば、種々の被刷体に印刷しやすくできるなどの効果が期待できる。ゴムとしては、具体的には、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレンなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。
【0029】
このうち、感光性樹脂組成物の水現像性、乾燥性、画像再現性を向上できるなどの観点から、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。さらには、感光性樹脂組成物中でゴム成分が特に微分散しやすく、これにより、微細形状の再現性に優れ、より一層、画像再現性を向上できるなどの観点から、ブタジエンゴム(BR)が好ましい。
【0030】
(C)成分の界面活性剤は、感光性樹脂組成物の水現像性を向上することができる。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、ラウリン酸ナトリウム・オレイン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸塩、ラウリル硫酸エステルナトリウム・セチル硫酸エステルナトリウム・オレイル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩・ドデシルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、アルキルジスルホン酸塩・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム・トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩、ラウリルリン酸モノエステルジナトリウム・ラウリルリン酸ジエステルナトリウム等の高級アルコールリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸モノエステルジナトリウム・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ジエステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。なお、具体例としてナトリウム塩を挙げたが、特にナトリウム塩に限定されるものではなく、カルシウム塩、アンモニア塩などでも同様の効果を得ることができる。
【0032】
このうち、より一層、感光性樹脂組成物の水現像性に優れるなどの観点から、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのスルホン酸系界面活性剤が好ましい。
【0033】
(D)成分の光重合性モノマーは、感光性樹脂組成物を硬化させ、あるいは、架橋させることができる。光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマ、(メタ)アクリル変性重合体などを挙げることができる。(メタ)アクリル変性重合体としては、例えば(メタ)アクリル変性ブタジエンゴム、(メタ)アクリル変性ニトリルゴムなどを挙げることができる。
【0034】
エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物であっても良いし、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する化合物であっても良い。
【0035】
エチレン性不飽和結合を1個だけ有するエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・プロピル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・イソアミル(メタ)アクリレート・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート・ラウリル(メタ)アクリレート・ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート・クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート・エトキシエチル(メタ)アクリレート・ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート・ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0036】
エチレン性不飽和結合を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコール等のエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等の多価ビニル化合物等を挙げることができる。
【0037】
(E)成分の光重合開始剤は、光重合性モノマーの光重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、アルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、ベンジル類、ビアセチル類等の光重合開始剤を挙げることができる。具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、メチル−O−ベンゾイルベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0038】
感光性樹脂組成物中における(A)成分(水分散ラテックス)と(B)成分(ゴム)との配合比率は、(A)成分と(B)成分との合計質量に対する(A)成分の質量の比率(A/(A+B)質量比率)で20〜90%の範囲内である。より好ましくは30〜80%の範囲内、さらに好ましくは50〜70%の範囲内である。この質量比率が20%未満では、十分な水現像速度が得られない。この質量比率を20%以上にすることにより、高速で水現像を行うことができる。これは、感光性樹脂組成物への水系現像液の浸透性が高くなるためと推察される。一方、この質量比率が90%を超えると、画像再現性が低下する。この質量比率を90%以下にすることにより、画像再現性を向上できる。
【0039】
感光性樹脂組成物中における(C)成分(界面活性剤)の含有量は、(A)成分(水分散ラテックス)と(B)成分(ゴム)と(C)成分との合計質量に対する(C)成分の質量の比率(C/(A+B+C)質量比率)として、0.1〜20%の範囲内である。より好ましくは0.1〜15%の範囲内、さらに好ましくは0.1〜10%の範囲内である。この質量比率が0.1%未満では、十分な水現像速度が得られない。この質量比率を0.1%以上にすることにより、短時間で水現像を行うことができる。これは、感光性樹脂組成物への水系現像液の浸透性が高くなるためと推察される。一方、この質量比率が20%を超えると、水現像後の乾燥性が低下する。この質量比率を20%以下にすることにより、乾燥性が良くなる。
【0040】
感光性樹脂組成物中における(D)成分(光重合性モノマー)の含有量は、好ましくは10〜80質量%の範囲内、より好ましくは20〜50質量%の範囲内である。(D)成分の含有量が10質量%以上であれば、架橋密度の不足がなく、良好な画像再現性とインク耐性が得られる。一方、(D)成分の含有量が80質量%以下であれば、レリーフが脆くなく、かつ、フレキソ印刷版の特徴である柔軟性を確保することができる。
【0041】
また、感光性樹脂組成物中における(E)成分(光重合開始剤)の含有量は、好ましくは0.3〜5質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜3質量%の範囲内である。(E)成分の含有量が0.3質量%以上であれば、(D)成分の光重合反応が十分に起こり、良好な画像が形成できる。一方、(D)成分の含有量が5質量%以下であれば、感度が高すぎないため、露光時間の調節が容易になる。
【0042】
本発明に係る感光性樹脂組成物においては、柔軟性を付与するなどの目的で、(F)成分の可塑剤を含有することができる。また、可塑剤を含有することにより、感光性樹脂組成物の硬さを抑えることができるため、(D)成分(光重合性モノマー)の含有量を増やすことができる。これにより、インク耐性を向上できる。
【0043】
可塑剤としては、液状ゴム、オイル、ポリエステル、リン酸系化合物などを挙げることができる。特に、(A)成分あるいは(B)成分と相溶性が良好なものが好ましい。液状ゴムとしては、例えば液状のポリブタジエン、液状のポリイソプレン、あるいは、これらをマレイン酸やエポキシ基により変性したものなどを挙げることができる。オイルとしては、パラフィン、ナフテン、アロマなどを挙げることができる。ポリエステルとしては、アジピン酸系ポリエステルなどを挙げることができる。リン酸系化合物としては、リン酸エステルなどを挙げることができる。
【0044】
感光性樹脂組成物中における(F)成分(可塑剤)の含有量は、0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5〜20質量%の範囲内である。(F)成分の含有量が0.1質量%以上であれば、感光性樹脂組成物に柔軟性を付与できるため、溶剤インクによる感光性樹脂組成物の膨潤が抑えられる。すなわち、溶剤インクに対する耐性(耐溶剤インク膨潤性)が向上する。一方、(F)成分の含有量が30質量%以下であれば、感光性樹脂組成物の強度を確保できる。
【0045】
さらに、本発明に係る感光性樹脂組成物においては、混練時の熱安定性を高める、貯蔵安定性を高めるなどの観点から、熱重合禁止剤(安定剤)を添加することができる。熱重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類のものなどを挙げることができる。感光性樹脂組成物中における熱重合禁止剤の含有量は、0.001〜5質量%の範囲内が一般的である。
【0046】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、種々の特性向上を目的として、さらに紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、香料などの他の成分を適宜添加することができる。
【0047】
以上の配合よりなる本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分(水分散ラテックス)が主成分となるマトリックス相中に、(B)成分(ゴム)が主成分となる分散相が微細に分散されたものからなる。より具体的には、本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記特定成分を特定割合で配合したときにおいて、(B)成分が主成分となる分散相のサイズが10μm以下である。より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。この分散相のサイズが10μmを超えると、分散が粗すぎるため、微細形状の再現が困難になる。そのため、画像再現性に劣る。この分散相のサイズを10μm以下とすることで、微細形状の再現性に優れ、画像再現性を向上できる。
【0048】
分散相のサイズは、感光性樹脂組成物を任意の視野角で観察したときの分散相の最大長さで表すことができる。分散相の観察は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)式の走査型プローブ顕微鏡(SPM)の位相モードなどにより行うことができる。
【0049】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、例えば、(A)〜(E)成分を混練しながら脱水することにより調製できる。あるいは、(A)成分を予め脱水した後、(A)成分から得られた重合体と、(B)〜(E)成分とを混練することにより調製できる。また、(A)〜(E)成分以外に、(F)成分あるいは他の成分を配合する場合には、(A)〜(E)成分に(F)成分あるいは他の成分を加えて混練することにより調製できる。混練時に用いる混練機としては、2軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。
【0050】
次に、本発明に係る印刷版原版について説明する。
【0051】
本発明に係る印刷版原版は、本発明に係る感光性樹脂組成物よりなる感光層を有するものからなる。本発明に係る印刷版原版は、使用時に、感光層の上にネガフィルム(すでに画像が形成されているもの)を密着させる、いわゆるアナログ方式の印刷版原版であっても良いし、予め感光層の上に赤外線アブレーション層が密着している、いわゆるCTP(Computer to plate)方式に含まれるLAM(Laser ablation mask)方式の印刷版原版であっても良い。
【0052】
アナログ方式の印刷版原版は、基板上に、基板と感光層とを接着する接着剤などからなる接着層と、本発明に係る感光性樹脂組成物よりなる感光層と、感光層表面が粘着しないようにするための粘着防止層と、使用前において感光性樹脂組成物の傷を防止する保護フィルムと、がこの順で積層されたものからなる。基板としては、PETフィルムなどのプラスチックフィルム(あるいはプラスチックシート)、ステンレス・アルミニウムなどの金属シート、ブタジエンゴムなどのゴムシートなどを挙げることができる。なお、アナログ方式の印刷版原版は、使用時には、保護フィルムを剥がし、露出された粘着防止層の上に、予め画像が形成されているネガフィルムが密着される。
【0053】
アナログ方式の印刷版原版は、例えば、基板の片面に予め接着剤を塗布し、保護フィルムの片面に予め粘着防止剤を塗布し、本発明に係る感光性樹脂組成物を、予め接着剤を塗布した基板と予め粘着防止剤を塗布した保護フィルムとの間に挟み、感光性樹脂組成物の厚みが所定の厚みになるようにプレスすることにより、製造できる。
【0054】
LAM方式の印刷版原版は、アナログ方式の印刷版原版と比較して、感光層と保護フィルムとの間に赤外線アブレーション層を有する点が異なり、その他の構成についてはアナログ方式の印刷版原版と同様の構成である。すなわち、基板上に、接着層と、感光層と、赤外線アブレーション層と、保護フィルムと、がこの順で積層されたものからなる。LAM方式の印刷版原版は、使用時には、保護フィルムを剥がし、赤外線アブレーション層が露出される。
【0055】
赤外線アブレーション層は、赤外線レーザにより照射された部分を除去することが可能な層であり、それ自体は実用上のレベルで紫外線の透過を遮蔽できる機能を併せ持つ層であって、それに画像を形成することによりネガ(あるいはポジ)としての役割をすることができるものである。
【0056】
赤外線アブレーション層は、主に、バインダーである樹脂やゴム、赤外線吸収物質、紫外線吸収物質、可塑剤などで構成されている。赤外線アブレーション層は、例えば、上記材料を溶剤に溶かし、これを基材に塗布した後、乾燥させ溶剤を除去することにより製造できる。
【0057】
LAM方式の印刷版原版は、例えば、基板の片面に予め接着剤を塗布し、保護フィルムの片面に予め赤外線アブレーション層を塗布し、本発明に係る感光性樹脂組成物を、予め接着剤を塗布した基板と予め赤外線アブレーション層を塗布した保護フィルムとの間に挟み、感光性樹脂組成物の厚みが所定の厚みになるようにプレスすることにより、製造できる。
【0058】
いずれの印刷版原版においても、感光層の厚みは、0.01〜10mmの範囲内であることが好ましい。感光層の厚みが0.01mm以上であれば、レリーフ深度を十分に確保できる。一方、感光層の厚みが10mm以下であれば、印刷版原版の重さを抑えることができ、実用上、印刷版として使用することができる。
【0059】
次に、本発明に係るフレキソ印刷版について説明する。
【0060】
本発明に係るフレキソ印刷版は、本発明に係る感光性樹脂組成物よりなる感光層を備えた本発明に係る印刷版原版を用いたものからなる。すなわち、本発明に係るフレキソ印刷版は、本発明に係る印刷版原版の感光層にレリーフ像を形成したものからなる。
【0061】
印刷版原版の感光層にレリーフ像を形成するには、まず、印刷版原版の基板側から紫外線照射を行う(裏露光)。
【0062】
アナログ方式の印刷版原版を用いる場合、保護フィルムを剥がし、露出された粘着防止層の上に、予め画像が形成されているネガフィルムを密着させる。一方、LAM方式の印刷版原版を用いる場合、保護フィルムを剥がし、露出された赤外線アブレーション層に赤外線レーザを照射するなどして所望の画像を形成する。
【0063】
次いで、ネガフィルムあるいは赤外線アブレーション層の上から紫外線を照射することにより、感光層を硬化させる(主露光)。紫外線は、通常、300〜400nmの波長の光を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などにより照射できる。感光性樹脂組成物は、紫外線照射により、照射された部分が硬化する。ネガフィルムあるいは赤外線アブレーション層で覆われた感光層には、紫外線が照射された硬化部分と、紫外線が照射されていない未硬化部分とが生じる。
【0064】
次いで、現像液中で感光層の未硬化部分を除去することにより、レリーフ像を形成する。現像液には、水系の現像液を用いる。水系の現像液は、水に、必要に応じて界面活性剤やpH調整剤などを添加したものからなる。感光層の未硬化部分の除去は、例えばスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機などを用いて未硬化部分を洗い出すことにより行うことができる。
【0065】
次いで、現像液から印刷版材を取り出してこれを乾燥させる。次いで、必要に応じて乾燥させた印刷版材全体に紫外線を照射する(後露光)。これにより、フレキソ印刷版が得られる。
【実施例】
【0066】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0067】
以下に、本実施例において用いた成分を具体的に示す。
・(A)成分
水分散ラテックス(日本ゼオン株式会社製、ニポールLX111NF)から得られた重合体。
・(B)成分
NBR:[日本ゼオン株式会社製、ニポールDN401]
BR:[日本ゼオン株式会社製、ニポールBR1220]
・(C)成分
界面活性剤:[花王株式会社製、エマール0]
・(D)成分
アクリル変性液状BR:[大阪有機化学株式会社製、BAC−45]
アクリルモノマー:[日油株式会社製、1,9−ノナンジオールジメタクリレート]
・(E)成分
光重合開始剤:[チバ・ジャパン株式会社製、イルガキュア651]
・(F)成分
可塑剤:[エッソ石油株式会社製、クリストール70]
・(その他の成分)
熱重合禁止剤:[精工化学株式会社製、MEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)]
紫外線吸収剤:[チバ・ジャパン株式会社製、チヌビン326]
【0068】
(実施例1)
<感光性樹脂組成物の調製>
水分散ラテックス45.5質量部(固形分としての重合体は25質量部)と、アクリル変性液状BR15質量部と、アクリルモノマー5質量部とを混合し、120℃に加熱した乾燥機で2時間水分を蒸発させて、水分散ラテックスから得られた重合体と光重合性モノマーとの混合物を得た。この混合物と、NBR30質量部と、界面活性剤2質量部とをニーダー中で45分間混練した。その後、ニーダー中に、熱重合禁止剤0.2質量部と、光重合開始剤を1質量部と、紫外線吸収剤0.03質量部とを投入し、5分間混練して、実施例1の感光性樹脂組成物を得た。
【0069】
<印刷版原版の作製>
このようにして得られた感光性樹脂組成物を、厚さ125μmのPETフィルムの片面に予め接着剤を塗布した基板と、厚さ100μmのPETフィルムの片面に予め粘着防止剤を塗布した保護フィルムとの間に挟み、感光性樹脂組成物の厚みが1mmになるように120℃に加熱したプレス機でプレスすることにより、基板上に、接着剤層、感光性樹脂組成物よりなる感光層、粘着防止剤層、保護フィルムがこの順で積層された実施例1の印刷版原版を作製した。
【0070】
<フレキソ印刷版の作製>
このようにして作製した印刷版原版の基板側から、20Wのケミカル灯を15本並べた露光装置で15cmの距離から30秒間露光(裏露光)した。その後、保護フィルムを剥がし、感光層の上に画像再現性評価用ネガフィルム(網点「175lpi2%」と網点「150lpi2%」を有する)を真空密着させ、ネガフィルム上から上記露光装置で15cmの距離から10分間露光(主露光)した。その後、ネガフィルムを除去し、水を入れたブラシ式洗い出し機(液温50℃)で5分間現像を行った。その後、60℃の熱風にて水分が除去されるまで乾燥を行った。その後、感光層上から上記露光装置で15cmの距離から10分間露光(後露光)することにより、実施例1のフレキソ印刷版を作製した。
【0071】
(実施例2〜11、比較例1〜4)
表1または表2に記載の成分構成で実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、次いで、実施例1と同様にして印刷版原版およびフレキソ印刷版を作製した。
【0072】
(比較例5)
実施例1の感光性樹脂組成物の調製において、疎水性重合体と光重合性モノマーとの混合物と、NBRと、界面活性剤とを混練する時間を45分から15分に短縮した以外は実施例1と同様にして、比較例5の感光性樹脂組成物を調製し、次いで、実施例1と同様にして、比較例5の印刷版原版およびフレキソ印刷版を作製した。
【0073】
(実施例12)
<感光性樹脂組成物の調製>
表1に記載の成分構成で実施例1と同様にして実施例12の感光性樹脂組成物を調製した。
【0074】
<赤外線アブレーション層/保護フィルム積層体の作製>
カーボンブラック(三菱化学株式会社製、MA8)28.8質量部と、アクリル樹脂(根上工業(株)社製、ハイパールM4501)28.8質量部と、可塑剤(和光純薬工業(株)社製、O−アセチルクエン酸トリブチル)4.5質量部と、をメチルイソブチルケトン105.2質量部に加え、羽攪拌にて混合した。得られた混合液を三本ロールミルを用いて分散させ、固形分が15質量%となるようにさらにメチルイソブチルケトンを加えて塗料を得た。次いで、厚さ100μmのPETフィルムに、乾燥後の塗膜の厚さが2μmとなるように、バーコータで塗料を塗布し、120℃で5分乾燥させることにより、赤外線アブレーション層/保護フィルム積層体を得た。
【0075】
<印刷版原版の作製>
実施例1の印刷版原版の作製において、実施例1の構成の保護フィルムに代えて、厚さ100μmのPETフィルムの片面に予め赤外線アブレーション層を塗布した保護フィルムを用い、この保護フィルムと基板との間に感光性樹脂組成物を挟んでプレスした以外は実施例1と同様にして、基板上に、接着剤層、感光性樹脂組成物よりなる感光層、赤外線アブレーション層、保護フィルムがこの順で積層された実施例12の印刷版原版を作製した。
【0076】
<フレキソ印刷版の作製>
実施例1のフレキソ印刷版の作製において、裏露光し、保護フィルムを剥がした後、赤外レーザで赤外線アブレーション層にパターン形成(網点「175lpi2%」と網点「150lpi2%」を形成)することによりネガフィルムを形成し、形成されたネガフィルム上から主露光した以外は実施例1と同様にして、実施例12のフレキソ印刷版を作製した。
【0077】
<評価>
(現像速度 μm/min)
水を入れたブラシ式洗い出し機(液温50℃)で1分間現像を行ったときのレリーフ深度(現像前の厚みと現像後の凹部の厚みとの差、μm)を現像速度とした。この際、現像速度が50μm/min未満の場合を遅い(×)とし、現像速度が50μm/min以上100μm/min未満の場合をやや速い(△)とし、現像速度が100μm/min以上300μm/min未満の場合を速い「○」とし、現像速度が300μm/min以上の場合を極めて速い(◎)とした。
【0078】
(乾燥性)
水現像後の乾燥工程において、60℃の熱風にて水分が除去されるまでの時間が5分未満の場合を速い(○)とし、5分以上の場合を遅い(×)とした。
【0079】
(画像再現性)
ネガフィルムの網点がフレキソ印刷版に再現されているか否かを光学顕微鏡(キーエンス社製、VH8000、倍率100倍)により判断した。網点「175lpi2%」と網点「150lpi2%」の両方が再現されている場合を特に良好(◎)とし、いずれか一方のみが再現されている場合を良好(○)とし、両方が再現されていない場合を不良(×)とした。また、現像不良のため、評価できなかったものは(−)とした。
【0080】
(膨潤率)
溶剤インクに対する膨潤性を評価した。具体的には、インク中に含まれる酢酸エチルを用い、酢酸エチル中に常温(25℃)で24時間浸漬した後の質量変化により算出した。すなわち、膨潤率は、{(浸漬後の質量)−(浸漬前の質量)}/(浸漬前の質量)とした。膨潤率が50%以下の場合を特に良好(◎)とし、膨潤率が50%超70%未満の場合を良好(○)とし、膨潤率が70%以上100%未満の場合をやや良好(△)とし、膨潤率が100%以上の場合を不良(×)とした。
【0081】
(ショアA硬度)
JIS K6253に準拠して、ショアA硬度を測定した。
【0082】
(分散相のサイズ)
走査型プローブ顕微鏡(SHIMADZU社製、SPM−9500J3)の位相モードにより感光層表面の任意の視野角30μm×30μmで観察される分散相の最大サイズが10μm以下の場合を良好(○)とし、分散相の最大サイズが10μm超の場合を不良(×)とした。
【0083】
各実施例および各比較例についての感光性樹脂組成物の成分の配合割合と評価結果とを表1および表2に示した。各成分の配合割合は質量部で表している。また、実施例1、4、7、8、比較例1、2、5については、感光層表面を、走査型プローブ顕微鏡(SHIMADZU社製、SPM−9500J3)の位相モードにより測定し、感光層における分散相の分散状態を確認した。その観察写真を図1、2に示した。
【0084】
実施例1、4、7、8の観察写真は、それぞれ図1(a)、(b)、(c)、(d)であり、比較例1、2、5の観察写真は、それぞれ図2(a)、(b)、(c)である。各写真の一辺の長さは30μmである。なお、(B)成分としてNBRを配合している実施例1、7、比較例5においては、観察写真中の比較的色の薄い部分は(A)成分を主として含む相であり、比較的色の濃い部分は(B)成分を主として含む相(分散相)である。一方、(B)成分としてBRを配合している実施例4、8、比較例1においては、反対に、観察写真中の比較的色の薄い部分は(B)成分を主として含む相(分散相)であり、比較的色の濃い部分は(A)成分を主として含む相である。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
比較例1では、感光性樹脂組成物中の水分散ラテックスの量が少なすぎるため、現像速度に劣っている。そして、現像速度が遅いため、現像不良で、画像再現性の評価ができなかった。一方、比較例2では、感光性樹脂組成物中の水分散ラテックスの量が多すぎるため、画像再現性に劣っている。
【0088】
比較例3では、感光性樹脂組成物中に界面活性剤が配合されていないため、現像速度に劣っている。そして、現像速度が遅いため、現像不良となり、画像再現性の評価ができなかった。一方、比較例4では、感光性樹脂組成物中の界面活性剤の量が多すぎるため、乾燥性に劣っている。そのため、実用性に劣っている。
【0089】
比較例5では、図2(c)に示すように、分散相のサイズが10μmを超えており、分散相のサイズが大きすぎるため、画像再現性に劣っている。
【0090】
これらに対し、実施例では、現像速度、乾燥性、画像再現性に優れていることが確認できた。このことは、いわゆるアナログ方式のフレキソ印刷版(実施例1〜11)および、いわゆるLAM方式のフレキソ印刷版(実施例12)の両方について確認できた。また、いずれの観察写真においても、分散相のサイズは10μm以下であった。
【0091】
ここで、実施例においては、実施例1、4、7、8の観察写真を示しているが、実施例2〜3、10は、実施例1および実施例7と、(B)ゴム成分が同じであり、実施例1および実施例7と類似の観察写真(分散相の大きさが同程度である観察写真)が得られることを確認している。また、実施例5〜6、11は、実施例4および実施例8と、(B)ゴム成分が同じであり、実施例4および実施例8と類似の観察写真(分散相の大きさが同程度の観察写真)が得られることを確認している。
【0092】
そして、これらの観察写真を比較すれば、(B)ゴム成分がBRであれば、より一層、分散相の大きさが小さく、より一層、分散相の分散性に優れることが確認できた。そして、画質再現性評価では、(B)ゴム成分がBRであれば、網点「175lpi2%」と網点「150lpi2%」の両方が再現されており、より微細な形状の再現性にも優れることが確認できた。
【0093】
さらに、実施例同士を比較すれば、次のことが分かる。すなわち、実施例1〜3と実施例10とを比較すると、(A)水分散ラテックス成分と(B)ゴム成分との合計質量に対する(A)水分散ラテックス成分の質量の比率が30%以上であれば、より一層、現像速度に優れることが分かる。実施例4〜6と実施例11とを比較した場合にも同様のことがいえる。
【0094】
また、実施例7〜9を見れば、感光性樹脂組成物中にさらに可塑剤を配合することで膨潤率の評価が向上しており、インク耐性が向上することが確認できた。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水分散ラテックス、(B)ゴム、(C)界面活性剤、(D)光重合性モノマー、(E)光重合開始剤、を含有し、
前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分との合計質量に対する前記(C)成分の質量の比率が0.1〜20%の範囲内であり、
前記(A)成分と前記(B)成分との合計質量に対する前記(A)成分の質量の比率が20〜90%の範囲内であり、
前記(B)成分が主成分となる分散相のサイズが10μm以下であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分は、スルホン酸系界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(F)可塑剤を0.1〜30質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分は、ブタジエンゴムおよびニトリルゴムから選択された1種または2種以上のゴムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物よりなる感光層を有する印刷版原版。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷版原版を用いたフレキソ印刷版。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−203453(P2011−203453A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70159(P2010−70159)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】