説明

感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法

【課題】解像度、密着性、レジスト形状、めっき後の剥離性がいずれも良好である感光性樹脂組成物、並びに、これを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、エッチングやめっきに用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物が広く用いられている。感光性樹脂組成物は、支持フィルムと、該支持フィルム上に感光性樹脂組成物を用いて形成された層(以下、「感光性樹脂組成物層」という。)と、を備える感光性エレメント(積層体)として用いられることが多い。
【0003】
プリント配線板は、例えば以下のようにして製造される。まず、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を回路形成用基板上に積層(ラミネート)する(積層工程)。次に、支持フィルムを剥離除去した後、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を硬化させる(露光工程)。その後、未露光部を基板上から除去(現像)することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンが形成される(現像工程)。得られたレジストパターンに対しエッチング処理又はめっき処理を施して基板上に回路を形成した後(回路形成工程)、最終的にレジストを剥離除去してプリント配線板が製造される(剥離工程)。
【0004】
露光の方法としては、従来、水銀灯を光源としてフォトマスクを介して露光する方法が用いられている。また、近年、DLP(Digital Light Processing)やLDI(Laser Direct Imaging)と呼ばれる、パターンのデジタルデータを直接感光性樹脂組成物層に描画する直接描画露光法が用いられている。この直接描画露光法は、フォトマスクを介した露光法よりも位置合わせ精度が良好であり、且つ高精細なパターンが得られることから、高密度パッケージ基板を作製するために導入されている。
【0005】
露光工程では、生産効率の向上のために露光時間を短縮する必要がある。しかし、上述の直接描画露光法では、光源にレーザ等の単色光を用いるほか、基板を走査しながら光線を照射するため、従来のフォトマスクを介した露光方法と比べて多くの露光時間を要する傾向がある。そのため、露光時間を短縮して生産効率を高めるためには、従来よりも感光性樹脂組成物の感度を向上させる必要がある。
【0006】
剥離工程では、生産効率の向上のためにレジストの剥離時間を短縮する必要がある。また、レジストの剥離片が回路基板へ再付着するのを防いで生産歩留まりを向上させるために、剥離片のサイズを小さくする必要がある。このように、硬化後の剥離特性(剥離時間、剥離片サイズ等)に優れた感光性樹脂組成物が要求される。
【0007】
また、近年のプリント配線板の高密度化に伴い、解像度(解像性)及び密着性に優れた感光性樹脂組成物に対する要求が高まっている。特に、パッケージ基板作製において、L/S(ライン幅/スペース幅)が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物が求められている。
【0008】
さらに、高密度パッケージ基板では、回路間の幅が狭いため、レジスト形状が優れていることも重要となる。レジストの断面形状が台形又は逆台形である場合や、レジストの裾引きがある場合には、その後のエッチング処理又はめっき処理により形成された回路に短絡や断線を生じる可能性があり望ましくない。従って、レジスト形状は矩形で、且つ、裾引きがないことが望ましい。
【0009】
また、めっきによる回路形成工程では、めっき後の剥離性に優れることが要求される。
【0010】
これらの要求に対して、従来、種々の感光性樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−128057号公報
【特許文献2】特開2009−229660号公報
【特許文献3】特開2009−003177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の感光性樹脂組成物は、解像度、密着性、レジスト形状又はめっき後の剥離性の点で改善の余地がある。特に、L/S(ライン幅/スペース幅)が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物を得ることは困難であるため、諸特性を満足しつつ、感光性樹脂組成物の解像度及び密着性を1μm単位で向上させることが強く求められる。
【0013】
そこで、本発明は、解像度、密着性、レジスト形状、めっき後の剥離性がいずれも良好である感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、特定の光重合性化合物とを含有する感光性樹脂組成物を用いることにより、感度、解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離性がいずれも良好である感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することによって、感度、レジスト形状及びめっき後の剥離性がいずれも良好であるのみならず、解像度及び密着性の点においても優れたものとなる。本発明の感光性樹脂組成物によれば、L/S(ライン幅/スペース幅)が10/10(単位:μm)以下のレジストパターンを形成することが可能となる。
【0017】
上記バインダーポリマーは、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に基づく構成単位を有するものであることが好ましい。これにより、解像度及び密着性をより向上させることができる。
【0018】
また、上記光重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物及び/又はエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物を更に含むことができる。
【0019】
本発明は支持フィルムと、該支持フィルム上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントを提供する。このような感光性エレメントを用いることにより、特に解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離性に優れたレジストパターンを、感度良く効率的に形成することができる。
【0020】
本発明はまた、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して上記所定部分を露光させ、硬化させる露光工程と、感光性樹脂組成物層の上記所定部分以外の部分を基板上から除去することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法を提供する。上記方法によれば、解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離性がいずれも良好なレジストパターンを、感度良く効率的に形成することができる。
【0021】
本発明はさらに、上記方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきする工程を含むプリント配線板の製造方法を提供する。この製造方法によれば、高密度パッケージ基板のような高密度化した配線を有するプリント配線板を、精度良く効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、感度、解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離特性がいずれも良好である感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味する。また、(ポリ)オキシエチレン鎖はオキシエチレン基又はポリオキシエチレン鎖を意味し、(ポリ)オキシプロピレン鎖はオキシプロピレン基又はポリオキシプロピレン鎖を意味する。さらに「EO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン鎖を有する化合物であることを意味し、「PO変性」とは、(ポリ)オキシプロピレン鎖を有する化合物であることを意味し、「EO・PO変性」とは、(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有する化合物であることを意味する。
【0025】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する。
【0026】
<バインダーポリマー>
まず、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下のバインダーポリマー(以下、「(A)成分」ともいう。)について説明する。
【0027】
本明細書において、「分散度」とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を意味する。バインダーポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.6以下であればよいが、1.58以下であることが好ましく、1.55以下であることがより好ましい。分散度が1.6を超えると、密着性及び解像度が充分に得られなくなる傾向がある。
【0028】
(A)成分としては、分散度が1.6以下のバインダーポリマーであれば特に制限無く用いることができる。(A)成分は、例えば、重合性単量体(モノマー)をラジカル重合させることにより得られる。バインダーポリマーの分散度は、合成時の反応温度、反応時間又は開始剤の添加量により調整することができる。
【0029】
重合性単量体(モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のα−位又は芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;マレイン酸;マレイン酸無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル;フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0030】
(A)成分は、解像度及び密着性を良好にする観点から、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に基づく構成単位を有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸ベンジル及び(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種と、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを双方含むことがより好ましい。すなわち、(A)成分は、これらの重合性単量体をラジカル重合させることにより得られるものであることが好ましく、これらの重合性単量体に由来する構成単位を有するものであることが好ましい。
【0031】
(A)成分が、(メタ)アクリル酸ベンジル又はその誘導体に基づく構成単位を有する場合、その含有量は、解像度及び剥離性に優れる点では、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが更に好ましい。この含有量が5質量%未満であると充分な解像度が得られ難くなる傾向があり、この含有量が80質量%を超えると、剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。
【0032】
(A)成分が、スチレン又はその誘導体に基づく構成単位を有する場合、その含有量は、密着性及び剥離性に優れる点では、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。この含有量が10質量%未満であると充分な密着性が得られ難くなる傾向があり、この含有量が70質量%を超えると、剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向がある。
【0033】
また、(A)成分は、アルカリ現像性及び剥離特性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位を有することが好ましい。
【0034】
(A)成分が、剥離性、解像度及び密着性に優れる点では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位を有する場合、その含有量は、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として1〜30質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、3〜10質量%であることが更に好ましい。この含有量が1質量%未満であると剥離片が大きくなり、剥離時間が長くなる傾向があり、この含有量が30質量%を超えると、充分な解像度及び密着性が得られ難くなる傾向がある。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を示す。
【0036】
【化1】

【0037】
上記一般式(1)中のRで示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。剥離特性をより向上させる観点から、上記アルキル基は、炭素数4以下のものであることが好ましい。
【0038】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル及び(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0039】
(A)成分の酸価は、現像性及び耐現像液性に優れる点では、90〜250mgKOH/gであることが好ましく、100〜230mgKOH/gであることがより好ましく、110〜210mgKOH/gであることが更に好ましく、120〜200mgKOH/gであることが特に好ましい。この酸価が90mgKOH/g未満であると現像時間が長くなる傾向があり、250mgKOH/gを超えると、感光性樹脂組成物の硬化物の耐現像液性(密着性)が充分に得られ難くなる傾向がある。なお、溶剤現像を行う場合は、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体(モノマー)を少量に調製することが好ましい。
【0040】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)した場合、現像性及び耐現像液性に優れる点では、10000〜100000であることが好ましく、20000〜80000であることがより好ましく、25000〜70000であることが更に好ましい。Mwが10000未満であると、感光性樹脂組成物の硬化物の耐現像液性(密着性)が充分に得られ難くなる傾向があり、100000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0041】
また、(A)成分は、必要に応じて340〜430nmの範囲内の波長を有する光に対して感光性を有する特性基をその分子内に有していてもよい。
【0042】
(A)成分としては、1種類のバインダーポリマーを単独で使用してもよく、2種類以上のバインダーポリマーを任意に組み合わせて使用してもよい。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上の(異なるモノマー単位を共重合成分として含む)バインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーが挙げられる。また、特開平11−327137号公報に記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを使用することもできる。
【0043】
(A)成分の含有量は、フィルム形成性、感度及び解像度に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して30〜70質量部とすることが好ましく、35〜65質量部とすることがより好ましく、40〜60質量部とすることが特に好ましい。この含有量が30質量部未満ではフィルム(感光性樹脂組成物層)を形成し難くなる傾向があり、70質量部を超えると、感度及び解像度が充分に得られ難くなる傾向がある。
【0044】
<光重合性化合物>
次に、光重合性化合物(以下「(B)成分」ともいう。)について説明する。
【0045】
(B)成分は、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを必須成分として含む。
【0046】
2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンとしては、例えば、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンポリプロピレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン、及び2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリブチレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンが挙げられる。
【0047】
中でも、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンとして、レジスト形状及びめっき後の剥離性に優れる点から、下記一般式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0048】
【化2】

【0049】
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。X及びYはそれぞれは独立に炭素数2又は3のアルキレン基を示す。m、m、n及びnはそれぞれ独立に0又は1以上の整数を示し、m+mは2〜30であり、n+nは0〜30である。複数存在するX又はYは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
+mは、2〜20であることが好ましく、2〜15であることがより好ましい。また、n+nは、0〜20であることが好ましく、0〜15であることがより好ましい。
【0051】
(B)成分は、式(2)中、R及びRがメチル基であり、Xがエチレン基であり、n及びnが0であり、m+m=10である化合物を含むことが特に好ましい。
【0052】
一般式(2)で表される化合物の含有量は、光感度及び解像性のバランスの見地から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、10〜40質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好しい。
【0053】
(B)成分は、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパン以外の光重合性化合物を併用することができる。(B)成分は、エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物及び/又はエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物を更に含むことが好ましい。エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物としては、例えば、フタル酸系化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。また、エチレン性不飽和結合を2つ有する化合物としては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0054】
フタル酸系化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートは、FA−MECH(日立化成工業(株)製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
(B)成分がフタル酸系化合物を含む場合、その含有量は、解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、(B)成分の全質量に対して1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましい。
【0056】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、分子内に(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの分子内において、(ポリ)オキシエチレン鎖及び(ポリ)オキシプロピレン鎖は、それぞれ連続してブロック的に存在しても、ランダムに存在してもよい。なお、(ポリ)オキシプロピレン鎖におけるオキシプロピレン基は、オキシ−n−プロピレン基又はオキシイソプロピレン基のいずれであってもよい。また、(ポリ)オキシイソプロピレン鎖において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0057】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、さらに、(ポリ)オキシ−n−ブチレン鎖、(ポリ)オキシイソブチレン鎖、(ポリ)オキシ−n−ペンチレン鎖、(ポリ)オキシヘキシレン鎖や、これらの構造異性体等である炭素原子数4〜6程度の(ポリ)オキシアルキレン鎖を有していてもよい。
【0058】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、特に下記一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物が好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
【化3】

【0060】
式(3)、(4)及び(5)中、R〜R10はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示す。r、r、r及びrはオキシエチレン基からなる構成単位の繰り返し数を示し、s、s、s及びsはオキシプロピレン基からなる構成単位の繰り返し数を示し、オキシエチレン基の繰り返し総数r+r、r及びr(平均値)はそれぞれ独立に1〜30の整数を示し、オキシプロピレン基の繰り返し総数s、s+s及びs(平均値)はそれぞれ独立に1〜30の整数を示す。
【0061】
上記一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物において、オキシエチレン基の繰り返し総数r+r、r及びrは1〜30の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは4〜9の整数であり、特に好ましくは5〜8の整数である。この繰り返し数の総数が30を超えると、充分な解像度、密着性及びレジスト形状が得られ難くなる傾向がある。
【0062】
また、オキシプロピレン基の繰り返し総数s、s+s及びsは1〜30の整数であり、好ましくは5〜20の整数であり、より好ましくは8〜16の整数であり、特に好ましくは10〜14の整数である。この繰り返し数の総数が30を超えると、充分な解像度が得られ難くなり、スラッジが発生しやすくなる傾向がある。
【0063】
上記一般式(3)で表される化合物としては、R及びR=メチル基、r+r=6(平均値)、s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業(株)製、製品名FA−023M)等が挙げられる。上記一般式(4)で表される化合物としては、R及びR=メチル基、r=6(平均値)、s+s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業(株)製、製品名FA−024M)等が挙げられる。上記一般式(5)で表される化合物としては、R及びR10=水素原子、r=1(平均値)、s=9(平均値)であるビニル化合物(新中村化学工業(株)製、サンプル名NKエステルHEMA−9P)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量としては、(B)成分全体の総量に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0065】
(B)成分全体の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して30〜70質量部とすることが好ましく、35〜65質量部とすることがより好ましく、35〜60質量部とすることが特に好ましい。この含有量が30質量部未満であると、充分な感度及び解像度が得られ難くなる傾向があり、70質量部を超えると、フィルムを形成し難くなる傾向があり、また良好なレジスト形状が得られ難くなる傾向がある。
【0066】
<光重合開始剤>
次に、光重合開始剤(以下、(C)成分ともいう)について説明する。
【0067】
(C)成分である光重合開始剤としては、特に制限はないが、例えば、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
(C)成分は、感度及び密着性を向上させる観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含むことが好ましく、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体を含むことがより好ましい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体はその構造が対称であっても非対称であってもよい。
【0069】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましく、2〜6質量部であることが更に好ましく、3〜5質量部であることが特に好ましい。この含有量が0.1質量部未満では良好な感度、解像度又は密着性が得られ難くなる傾向があり、10質量部を超えると良好なレジスト形状を得られ難くなる傾向がある。
【0070】
<増感色素>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、増感色素(以下、(D)成分ともいう)を含有することができる。
【0071】
(D)成分である増感色素としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
特に、340〜430nmの活性光線を用いて感光性樹脂組成物層の露光を行う場合には、感度及び密着性の観点から、(D)成分は、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、トリアリールアミン化合物、チオキサントン化合物及びアミノアクリジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増感色素を含むことが好ましく、中でも、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物又はトリアリールアミン化合物を含むことがより好ましく、ピラゾリン化合物を含むことが更に好ましい。
【0073】
(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.05〜5質量部とすることがより好ましく、0.1〜3質量部とすることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部未満では感度及び解像度が得られ難くなる傾向があり、10質量部を超えると充分に良好なレジスト形状が得られ難くなる傾向がある。
【0074】
上記ピラゾリン化合物としては、下記一般式(6)又は(7)で表される化合物を用いることができる。
【0075】
【化4】

【0076】
一般式(6)中、R11〜R13はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。また、a、b及びcはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、a、b及びcの総和は1〜6である。a、b及びcの総和が2以上のとき、複数存在するR11〜R13は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0077】
一般式(6)中、R11〜R13のうち少なくとも一つは、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数1〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又は炭素原子数1〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基であることがより好ましく、イソプロピル基、メトキシ基又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0078】
一般式(6)で表されるピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができるが、具体的には、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(6)中のa=0に該当するピラゾリン化合物が挙げられる。
【0079】
【化5】

【0080】
一般式(7)中、R14〜R16はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、ハロゲン原子又はフェニル基を示す。また、d、e及びfはそれぞれ独立に0〜5の整数を示し、且つ、d、e及びfの総和は1〜6である。d、e及びfの総和が2以上のとき、複数存在するR14〜R16は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0081】
一般式(7)中、R14〜R16のうち少なくとも一つは、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はフェニル基であることが好ましく、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基又はフェニル基であることがより好ましく、tert−ブチル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基又はフェニル基であることが更に好ましい。
【0082】
一般式(7)で表されるピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができるが、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシ−フェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピル−フェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−5−(4−イソプロピル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシ−フェニル)−5−(4−イソプロピル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−イソプロピル−フェニル)−5−(4−メトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−イソプロピル−フェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−イソプロピル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−メトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1,3−ジフェニル−5−(4−メトキシ−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1,5−ジフェニル−3−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(7)中のa=0に該当するピラゾリン化合物;1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチル−フェニル)−ピラゾリン等の上記一般式(7)中、e=1、R15=フェニル基であるピラゾリン化合物が挙げられる。
【0083】
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、分子内に少なくとも1つのカチオン重合可能な環状エーテル基を有する光重合性化合物(オキセタン化合物等)、カチオン重合開始剤、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等を含有してもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。これらの含有量は、(A)成分(バインダーポリマー)及び(B)成分(光重合性化合物)の総量100質量部に対して、それぞれ0.01〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0084】
(感光性樹脂組成物の溶液)
本実施形態の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液(塗布液)として用いることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0085】
上記塗布液を、金属板等の表面上に塗布し、乾燥させることにより、本実施形態の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を形成することができる。金属板としては、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金が挙げられる。
【0086】
感光性樹脂組成物層の厚みは、その用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましい。感光性樹脂組成物層の金属板とは反対側の表面を、保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0087】
(感光性エレメント)
図1は、本発明の感光性エレメント1の好適な実施形態を示す模式断面図である。
【0088】
上記感光性樹脂組成物の溶液を、支持フィルム2上に塗布し、乾燥させることにより、支持フィルム上に上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層3を形成することができる。このようにして、支持フィルム2と、該支持フィルム3上に形成された上記感光性樹脂組成物層とを備える、本実施形態の感光性エレメント1が得られる。
【0089】
支持フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
【0090】
支持フィルム(重合体フィルム)の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましい。この厚みが1μm未満であると、支持フィルムを剥離する際に支持フィルムが破れやすくなる傾向があり、100μmを超えると解像度が充分に得られ難くなる傾向がある。
【0091】
感光性エレメント1は、必要に応じて、感光性樹脂組成物層3の支持フィルム2とは反対側の表面を被覆する保護フィルム4を備えてもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムを用いることができる。
【0092】
保護フィルムの厚みは1〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、5〜30μmであることが更に好ましく、15〜30μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満であると、感光性樹脂組成物層及び保護フィルムを基板上に積層(ラミネート)する際、保護フィルムが破れやすくなる傾向があり、100μmを超えると廉価性の点で充分でなくなる傾向がある。
【0093】
感光性樹脂組成物の溶液の支持フィルム上への塗布は、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により行うことができる。
【0094】
上記溶液の乾燥は、70〜150℃にて、5〜30分間程度行うことが好ましい。乾燥後、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する観点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0095】
感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、5〜40μmであることが更に好ましい。この厚みが1μm未満であると、工業的に塗工し難くなる傾向があり、100μmを超えると、密着性及び解像度が充分に得られ難くなる傾向がある。
【0096】
感光性エレメントは、更にクッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層等を有していてもよい。
【0097】
得られた感光性エレメントは、シート状で又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが好ましい。巻芯としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。このようにして得られたロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0098】
(レジストパターンの形成方法)
上記感光性樹脂組成物を用いて、レジストパターンを形成することができる。本実施形態に係るレジストパターンの形成方法は、(i)上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、(ii)感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射してその所定部分を露光させ、硬化させる露光工程と、(iii)感光性樹脂組成物層の上記所定部分以外の部分を基板上から除去することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成する現像工程と、を有する。
【0099】
(i)積層工程
まず、感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層を基板上に積層する。基板としては、絶縁層と該絶縁層上に形成された導体層とを備えた基板(回路形成用基板)を用いることができる。
【0100】
感光性樹脂組成物層の基板上への積層は、例えば、上記感光性エレメントの保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光性樹脂組成物層を加熱しながら上記基板に圧着することにより行われる。これにより、基板と感光性樹脂組成物層と支持フィルムとからなり、これらが順に積層された積層体が得られる。
【0101】
この積層作業は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光性樹脂組成物層及び/又は基板の加熱は、70〜130℃の温度で行うことが好ましく、0.1〜1.0MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することが好ましいが、これらの条件には特に制限はない。なお、感光性樹脂組成物層を70〜130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性を更に向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0102】
(ii)露光工程
次に、基板上の感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射してその所定部分を露光させ、硬化させる。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持フィルムが活性光線に対して透過性である場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができるが、支持フィルムが遮光性である場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0103】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像上に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法やDLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0104】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、直接描画露光方法に好適に使用することができる。すなわち、本発明の好適な実施形態の一つは、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物の直接描画露光法への応用である。
【0105】
活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができ、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光等を有効に放射するものが用いられる。
【0106】
活性光線の波長(露光波長)としては、本発明の効果をより確実に得る観点から、340〜430nmの範囲内とすることが好ましく、350〜420nmの範囲内とすることがより好ましい。
【0107】
(iii)現像工程
さらに、感光性樹脂組成物層の上記所定部分以外の部分を基板上から除去することにより、基板上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成する。感光性樹脂組成物層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去してから、上記所定部分(露光部分)以外の部分(未露光部分)の除去(現像)を行う。現像方法には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0108】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッピング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種類以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0109】
現像液としては、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられる。
【0110】
アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩が用いられる。
【0111】
アルカリ性水溶液としては、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。アルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層のアルカリ現像性に合わせて調節される。アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0112】
(プリント配線板の製造方法)
上記方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング又はめっきすることにより、プリント配線板を製造することができる。基板のエッチング又はめっきは、形成されたレジストパターンをマスクとして、基板の導体層等に対して行われる。
【0113】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、プリント配線板の製造に好適に使用することができる。すなわち、本発明の好適な実施形態の一つは、分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物のプリント配線板の製造への使用である。
【0114】
エッチングを行う場合のエッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素エッチング液が挙げられ、これらの中では、エッチファクタが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが好ましい。
【0115】
めっきを行う場合のめっき方法としては、例えば、硫酸銅めっき、ピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき、スルファミン酸ニッケル等のニッケルめっき、ハード金メッキ、ソフト金メッキ等の金メッキが挙げられる。
【0116】
エッチング又はめっき終了後、レジストパターンは、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。なかでも、1〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0117】
レジストパターンの剥離方式としては、浸漬方式、スプレー方式等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。また、レジストパターンが形成されたプリント配線板は、多層プリント配線板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0118】
本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線板の製造に好適に使用できるが、セミアディティブ工法への応用により好適である。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
(感光性樹脂組成物の溶液の調製)
表1に示す成分を同表に示す配合量で混合することにより、実施例1〜4及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物の溶液を調製した。表1に示す(A)成分の配合量は不揮発分の質量(固形分量)である。表1に示す各成分の詳細については、以下のとおりである。
【0121】
<(A)バインダーポリマー>
[バインダーポリマー(A−1)及び(A−2)]
バインダーポリマー(A−1)及び(A−2)としては、リビングラジカル重合(精密重合)により合成した。合成手法としては、例えば、特開2009−19165公報に記載の手法が挙げられる。
【0122】
[バインダーポリマー(A−3)の合成]
重合性単量体(モノマー)であるメタクリル酸150g、メタクリル酸ベンジル125g、メタクリル酸メチル25g及びスチレン200g(質量比30/25/5/40)と、アゾビスイソブチロニトリル9.0gとを混合して得た溶液を「溶液a」とした。
【0123】
メチルセロソルブ60g及びトルエン40gの混合液(質量比3:2)100gに、アゾビスイソブチロニトリル1.2gを溶解して得た溶液を「溶液b」とした。
【0124】
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、メチルセロソルブ270g及びトルエン180gの混合液(質量比3:2)450gを投入し、フラスコ内に窒素ガスを吹き込みつつ撹拌しながら加熱し、80℃まで昇温させた。
【0125】
フラスコ内の上記混合液に、上記溶液aを4時間かけて滴下した後、撹拌しながら80℃にて2時間保温した。次いで、フラスコ内の溶液に、上記溶液bを10分間かけて滴下した後、フラスコ内の溶液を撹拌しながら80℃にて3時間保温した。さらに、フラスコ内の溶液を30分間かけて90℃まで昇温させ、90℃にて2時間保温した後、冷却してバインダーポリマー(A−3)の溶液を得た。
【0126】
バインダーポリマー(A−3)の不揮発分(固形分)は47.8質量%であり、重量平均分子量は40000であり、酸価は196mgKOH/gであった。
【0127】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
GPC条件
ポンプ:日立 L−6000型((株)日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−R420、Gelpack GL−R430、Gelpack GL−R440(以上、日立化成工業(株)製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI((株)日立製作所製、製品名)
【0128】
[バインダーポリマー(A−4)の合成]
重合性単量体(モノマー)として、表1に示す材料を同表に示す質量比で用いたほかは、バインダーポリマー(A−3)の溶液を得るのと同様にしてバインダーポリマー(A−4)の溶液を得た。
【0129】
【表1】

【0130】
(A−1):メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/スチレン(質量比27/23/5/45)酸価:176mgKOH/g、重量平均分子量:40000、分散1.53
(A−2):メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/スチレン(質量比30/25/5/40)酸価:196mgKOH/g、重量平均分子量:40000、分散1.47
(A−3):メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/スチレン(質量比30/25/5/40)酸価:196mgKOH/g、重量平均分子量:40000、分散2.1
(A−4):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル(質量比25/25/50)酸価:163mgKOH/g、重量平均分子量:40000、分散2.1
【0131】
<(B)光重合性化合物>
(B−1):一般式(2)中でR及びRがメチル基であり、Xがエチレン基であり、n及びnが0であり、m+m=10である化合物
(B−2):一般式(2)中でR及びRがメチル基であり、Xがエチレン基であり、n及びnが0であり、m+m=6である化合物。
FA−321M:2,2−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシポリエトキシ)フェニル]プロパン[日立化成工業(株)製、製品名]
FA−023M:ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジアクリレート(オキシエチレン鎖6モル、オキシプロピレン鎖12モル変性)[日立化成工業(株)製、製品名]
FA−MECH:γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート[日立化成工業(株)製、製品名]
<(C)光重合開始剤>
B−CIM:2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビスイミダゾール[保土ヶ谷化学工業(株)製、製品名]
<その他の成分>
(D−1):1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン[(株)日本化学工業所製]
LCV:ロイコクリスタルバイオレット[山田化学(株)製、製品名]
MKG:マラカイトグリーン[大阪有機化学工業(株)製、製品名]
【0132】
(感光性エレメント)
上記感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製、製品名「HTF−01」)上に均一に塗布し、70℃及び110℃の熱風対流式乾燥器で乾燥して、乾燥後の膜厚が25μmである感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層上に保護フィルム(タマポリ(株)製、製品名「NF−15」)を貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持フィルム)と、感光性樹脂組成物層と、保護フィルムとが順に積層された感光性エレメントを得た。
【0133】
(積層基板)
ガラスエポキシ材と、その両面に形成された銅箔(厚さ16μm)とからなる銅張積層板(日立化成工業(株)製、製品名「MCL−E−679F」)の銅表面を、メック(株)製CZ処理液で粗化した。この粗化銅基板(以下、「基板」という。)を加熱して80℃に昇温させた後、実施例1〜4及び比較例1〜3に係る感光性エレメントを、基板の銅表面にラミネート(積層)した。ラミネートは、保護フィルムを除去しながら、各感光性エレメントの感光性樹脂組成物層が基板の銅表面に密着するようにして、温度120℃、ラミネート圧力4kgf/cmの条件下で行った。このようにして、基板の銅表面上に感光性樹脂組成物層及びポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された積層基板を得た。
【0134】
(感度の評価)
得られた積層基板を放冷し、23℃になった時点で、積層基板のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、濃度領域0.00〜2.00、濃度ステップ0.05、タブレットの大きさ20mm×187mm、各ステップの大きさが3mm×12mmである41段ステップタブレットを有するフォトツールを密着させた。波長405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする日立ビアメカニクス(株)製の直描露光機「DE−1UH」(製品名)を使用して、80mJ/cmのエネルギー量(露光量)でフォトツール及びポリエチレンテレフタレートフィルムを介して感光性樹脂組成物層に対して露光を行った。なお、照度の測定は、405nm対応プローブを適用した紫外線照度計(ウシオ電機(株)製、製品名「UIT−150」)を用いて行った。
【0135】
露光後、積層基板からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、感光性樹脂組成物層を露出させ、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて24秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。このようにして、基板の銅表面上に感光性樹脂組成物の硬化物からなる硬化膜を形成した。硬化膜として得られたステップタブレットの残存段数(ステップ段数)を測定することにより、感光性樹脂組成物の感度を評価した。感度は、上記ステップ段数により示され、この段数が高いほど感度が良好であることを意味する。
結果を表3に示す。
【0136】
(解像度及び密着性の評価)
ライン幅(L)/スペース幅(S)(以下、「L/S」と記す。)が3/3〜30/30(単位:μm)である描画パターンを用いて、41段ステップタブレットの残存段数が16段となるエネルギー量で上記積層基板の感光性樹脂組成物層に対して露光(描画)を行った。露光後、上記感度の評価と同様の現像処理を行った。
【0137】
現像後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、且つライン部分(露光部分)が蛇行や欠けを生じることなく形成されたレジストパターンにおけるライン幅/スペース幅の値のうちの最小値により、解像度及び密着性を評価した。この数値が小さいほど解像度及び密着性が共に良好であることを意味する。結果を表3に示す。
【0138】
(レジスト形状の評価)
上記解像度及び密着性の評価において、得られたレジスト形状(レジストパターンの断面形状)を日立走査型電子顕微鏡S−500Aを用いて観察した。レジスト形状が台形又は逆台形である場合や、レジストの裾引き又はクラックがある場合には、その後のエッチング処理又はめっき処理により形成された回路に短絡や断線が生じやすくなる傾向がある。従って、レジスト形状は矩形(長方形)で、且つレジストの裾引き又はクラックがないことが望ましい。結果を表3に示す。
【0139】
(剥離特性の評価)
各感光性エレメントを上記銅張積層板(基板)上に積層し、表2に示す条件で露光及び現像を行うことにより、基板上に硬化膜が形成された試験片(40mm×50mm)を作製した。この試験片を室温で一昼夜放置した後、表2に示す条件で剥離を行った。撹拌開始から、硬化膜が基板から完全に剥離除去されるまでの時間を剥離時間(秒)とした。また、剥離後の剥離片のサイズを目視にて観察し、以下の基準で評価した。剥離時間が短く、剥離片サイズが小さいほど剥離特性が良好であることを意味する。結果を表3に示す。
剥離片サイズ
L:シート状
M:30〜40mm角
S:30mm角より小さい
【0140】
【表2】

【0141】
<細線めっき後剥離性の評価>
上記積層基板上に、細線めっき後剥離性評価用パターンとしてライン幅/スペース幅が3/3〜30/30(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。感度の評価と同様の条件で現像処理を行った後、脱脂浴(PC−455コンク(メルテックス(株)製)12.5質量部)に5分間浸漬し、水洗した。次いで、10質量%硫酸浴に1分間浸漬するという順に前処理を行い、硫酸銅めっき浴(硫酸銅5水和物60g/L、硫酸98mL/L、塩化ナトリウム100mg/L、ベーシックレベラーカパラシド(アトテックジャパン(株)製)20mL/L、光沢剤カパラシドユニバーサル(アトテックジャパン(株)製)3mL/L)に入れ、硫酸銅めっきを2A/dmで35分間行った。次いで、3重量%水酸化ナトリウム水溶液を4分間スプレーし、完全にレジストが除去されているめっきライン幅間のスペース幅の最小値を細線めっき後剥離性として評価した。この数値が小さいほど細線めっき後剥離性が良好であることを示す。結果を表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
表3に示すように、本発明の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、レジスト形状、剥離性(剥離時間、剥離片サイズ及び細線めっき後剥離性)、密着性及び解像度に優れた特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線板を製造するためのレジストパターンを形成する材料として適用される。特に、上記感光性樹脂組成物は、感度、解像度、密着性、レジスト形状及びめっき後の剥離特性がいずれも良好であるため、高密度パッケージ基板等の細線化・高密度化された配線を有するプリント配線板を製造するためのレジストパターン形成にも好適に用いられる。
【符号の説明】
【0145】
1…感光性エレメント、2…支持フィルム、3…感光性樹脂組成物層、4…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散度が1.6以下のバインダーポリマーと、
2,2−ビス[(4−(メタ)アクリロイルオキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル]プロパンを含む光重合性化合物と、
光重合開始剤と、
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記バインダーポリマーが、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ベンジル誘導体、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に基づく構成単位を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物及び/又はエチレン性不飽和結合を2つ有する化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持フィルムと、該支持フィルム上に請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層を基板上に積層する積層工程と、
前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して前記所定部分を露光させ、硬化させる露光工程と、
前記感光性樹脂組成物層の前記所定部分以外の部分を前記基板上から除去することにより、前記基板上に、前記感光性樹脂組成物の硬化物からなるレジストパターンを形成する現像工程と、を有するレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法によりレジストパターンが形成される基板をエッチング又はめっきする工程を含む、プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−92675(P2013−92675A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235056(P2011−235056)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】