説明

感光性樹脂組成物

【課題】 アルカリ現像性に優れ、かつ硬化収縮による反りが極めて小さい感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、分子内に芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロース(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有するアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物(Q)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により硬化し、アルカリ現像可能な感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂組成物は各種の用途に幅広く使用されている。例えば、プリント配線基板では、回路の永久保護被膜として感光性樹脂組成物がフォトソルダーレジストとして広く用いられている。
フォトソルダーレジストとは回路導体のはんだ付けする部分を除いた全面に被膜が形成されるもので、プリント配線基板に電子部品を配線する際、はんだが不必要な部分に付着するのを防ぐとともに、回路が直接空気に暴露されるのを防止する保護被膜として使用されるものである。
現在プリント配線基板用のフォトソルダーレジストとしては高精度化、高密度化、及び環境問題対応の点から、液状のフォトソルダーレジストが広く使用されている。
【0003】
この液状のフォトソルダーレジストインクとしては、ノボラック型エポキシ樹脂のアクリル酸との部分反応物を主成分とするソルダーレジストインク組成物(例えば特許文献1など)が提案されている。しかしながらこれらのインク組成物は、アルカリ現像性が不十分で、硬化収縮による反りが大きいという問題があった。
【0004】
これに対し、オキセタニル基を有する化合物とイミダゾール化合物を含むフォトソルダーレジスト(例えば特許文献2)が提案されている。
しかしながら、アルカリ現像性には優れるものの硬化収縮による反りの低減が不十分であった。
上述の通り、アルカリ現像性に優れ、硬化収縮による反りが極めて小さいフォトソルダーレジストは、まだ得られてはいなかった。
【特許文献1】特開昭61−59447号公報
【特許文献2】特開2005−105006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はアルカリ現像性に優れ、硬化収縮による反りが極めて小さく、特にフォトソルダーレジストに最適な感光性樹脂組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロースを用いた場合、優れたアルカリ現像性とともに硬化収縮による反りが極めて小さい硬化物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、分子内に芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロース(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有することを特徴とするアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物(Q)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性に優れ、硬化収縮による反りが極めて小さく、特にプリント配線基板におけるソルダーレジストに最適な感光性樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物は、親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロース(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有し、優れたアルカリ現像性とともに硬化収縮による反りが極めて小さい硬化物を提供するものである。
【0009】
なお、上記および以下において、例えば「(メタ)アクリレート」などの(メタ)を付した表現は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」などを意味する。
【0010】
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の必須構成成分である(A)〜(D)について順に詳細に説明する。
【0011】
まず親水性樹脂(A)において、親水性の指標はHLBにより規定され、一般にこの数値が大きいほど親水性が高いことを示す。
親水性樹脂(A)のHLB値は、親水性樹脂(A)の樹脂骨格(例えば、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂など)によって好ましい範囲が異なるが、通常4〜19、好ましくは5〜18、さらに好ましくは6〜17である。
4以上であればアルカリ現像を行う際に、現像性がさらに良好であり、19以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。
なお、本発明におけるHLBは、小田法によるHLB値であり、親水性−疎水性バランス値のことであり、有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
また、無機性の値および有機性の値は、文献「界面活性剤の合成とその応用」(槇書店発行、小田、寺村著)の501頁;または、「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)の198頁に詳しく記載されている。
【0012】
また、親水性樹脂(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値と略称する。)は、好ましくは7〜14、さら好ましくは8〜13、特に好ましくは10〜13である。7以上であるとさらにアルカリ現像性がさらに良好であり、14以下であると硬化物の耐水性がさらに良好である。SP値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(分散性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
【0013】
本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
【0014】
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,Robert F.Fedors.(147〜154頁)」
【0015】
親水性樹脂(A)は、アルカリ現像性の観点から、分子内にカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基の含有量は酸価で示される。
親水性樹脂(A)の酸価は、通常10〜50mgKOH/g、好ましくは20〜40mgKOH/gである。
10mgKOH/g以上であると、アルカリ現像性がさらに良好に発揮されやすく、50mgKOH/g以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好に発揮できる。
【0016】
本発明における酸価は、アルカリ性滴定溶液を用いた指示薬滴定法により測定できる。
方法は以下の通りである。
(i)試料約1gを精秤して三角フラスコに入れ、続いて中性メタノール・アセトン溶液[アセトンとメタノールを1:1(容量比)で混合したもの]を加え溶解する。
(ii)フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液で滴定する。指示薬の微紅色が30秒続いたときを中和の終点とする。
(iii)次式を用いて決定する。
酸価(mgKOH/g)=(A×f×5.61)/S
ただし、A:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液のmL数。
f:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液の力価
S:試料採取量(g)
【0017】
親水性樹脂(A)としては、親水性ビニル系樹脂(A1)、親水性エポキシ系樹脂(A2)、親水性ポリエステル樹脂、親水性ポリアミド樹脂、親水性ポリカーボネート樹脂および親水性ポリウレタン樹脂などが挙げられる。親水性樹脂(A)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、得られる硬化物の硬度の観点と、製造のし易さの観点から、好ましいのは親水性ビニル系樹脂(A1)、親水性エポキシ系樹脂(A2)である。
【0018】
親水性ビニル系樹脂(A1)としては、親水基をビニル系ポリマー分子の側鎖および/または末端に有するものが挙げられる。親水基としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基、ポリエーテル基およびこれらのうちの2種以上の併用などが挙げられる。
充分な現像性を発揮するためには、側鎖に親水基、特にカルボキシル基を有するものが好ましい。また、親水性ビニル系樹脂(A1)は硬化性を向上させる目的で(メタ)アクリロイル基を含有させてもよい。
【0019】
親水性ビニル系樹脂(A1)の好ましい製造方法は、親水基を有するビニルモノマー(a)単独、および必要により、この親水基を有するビニルモノマー(a)と親水基を有していない疎水基含有ビニルモノマー(b)とを併用して、ビニル重合して得られる。
【0020】
親水基を有するビニルモノマー(a)としては、以下の(a1)〜(a8)のビニルモノマーが挙げられる。
(a1)水酸基含有ビニルモノマー:
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミドなど]、ヒドロキシスチレンおよび2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなどが挙げられる。
(a1)のうち好ましいのはアルカリ現像性の観点からヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0021】
(a2)カルボキシル基含有ビニルモノマー:
不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸および桂皮酸など]、不飽和多価(2〜4価)カルボン酸[(無水)マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびシトラコン酸など]、不飽和多価カルボン酸アルキル(炭素数1〜10のアルキル基)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステルおよびシトラコン酸モノアルキルエステルなど]、並びにこれらの塩[アルカリ金属塩(ナトリウム塩およびカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、アミン塩およびアンモニウム塩等]が挙げられる。
(a2)のうち好ましいのは親水性の観点から不飽和モノカルボン酸、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
【0022】
(a3)1級又は2級アミノ基含有ビニルモノマー:
1級アミノ基含有(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレートおよびアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート]、2級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびN−メチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート]などが挙げられる。
【0023】
(a4)スルホン酸基含有ビニルモノマー:
例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩が挙げられる。塩としてはアルカリ金属(ナトリウムおよびカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)塩、第1〜3級アミン塩、アンモニウム塩および第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0024】
(a5)3級アミノ基含有ビニルモノマー:
3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート]などが挙げられる。
【0025】
(a6)アミド基含有ビニルモノマー:
(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(炭素数1〜6)またはジアラルキル(炭素数7〜15)(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN,N−ジベンジルアクリルアミドなど)、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、桂皮酸アミドおよび環状アミド(N−ビニルピロリドン、N−アリルピロリドン等)が挙げられる。
【0026】
(a7)第4級アンモニウム塩基含有ビニルモノマー;
炭素数6〜50(好ましくは8〜20)の第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化物(4級化剤としては、メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライドおよびジメチルカーボネート等)、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの4級化物およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの4級化物などが挙げられる。
【0027】
(a8)ポリエーテル基含有ビニルモノマー:
アルコキシ(アルコキシ基の炭素数1〜8)ポリアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4)グリコールモノ(メタ)アクリレート[メトキシポリエチレングリコール(重合度2〜40)モノ(メタ)アクリレートおよびメトキシポリプロピレングリコール(重合度2〜30)モノ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0028】
以上の親水基を有するビニルモノマー(a)のうち好ましいのは、充分な現像性と架橋性を発揮するという観点から(a1)及び(a2)であり、特に(a2)である。
【0029】
親水基を有するビニルモノマー(a)と併用する親水基を有していない疎水基含有ビニルモノマー(b)としては、以下の非イオン性のモノマー(b1)〜(b6)が挙げられる。
【0030】
(b1)(メタ)アクリル酸エステル;
アルキル基の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート[例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど];脂環基含有(メタ)アクリレート[ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シジクロペンテニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートなど];
【0031】
(b2)芳香族炭化水素モノマー;
スチレン骨格を有する炭化水素モノマー[例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレンおよびベンジルスチレン]およびビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0032】
(b3)カルボン酸ビニルエステル;
炭素数4〜50のもの、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルなどが挙げられる。
(b4)ビニルエーテル系モノマー;
炭素数3〜50(好ましくは6〜20)のもの、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルなどが挙げられる。
(b5)ビニルケトン系モノマー;
炭素数4〜50のもの、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンおよびビニルフェニルケトンなどが挙げられる。
(b6)ハロゲン原子含有モノマー;
炭素数2〜50(好ましくは2〜20)のもの、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、クロルスチレンおよびブロムスチレンなどが挙げられる。
【0033】
親水基を有していない(b)のうち好ましいのは、硬化性の観点から(b1)であり、さらに好ましいのは脂環基含有(メタ)アクリレートである。
【0034】
親水性ビニル系樹脂(A1)における、(a)/(b)の仕込みモノマーモル%は、通常10〜100/0〜90、硬化性と現像性の観点から、好ましくは10〜90/10〜90、さらに好ましくは20〜80/20〜80である。
【0035】
親水性ビニル系樹脂(A1)は、上記の(a)、および必要により(b)を構成単量体とする重合体に、さらに硬化性を向上させる目的で(メタ)アクリロイル基を側鎖に含有させてもよい。
側鎖に(メタ)アクリロイル基を含有させる方法としては、例えば下記の(1)および(2)の方法が挙げられる。
(1) (a)のうちの少なくとも一部にイソシアネート基と反応しうる基(水酸基または1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマー[(a1)及び/又は(a3)]を使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物(アクリロイルエチルイソシアネートなど)を反応させる方法、
(2) 重合体中の親水基と、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物(グリシジルアクリレートなど)を反応させる方法。
【0036】
親水性ビニル系樹脂(A1)が親水基としてカルボキシル基を有する場合は、現像性及び硬化性の観点から、親水性ビニル系樹脂(A1)中のカルボキシル基の含有量が一定以上であることが好ましく、硬化物の耐水性の観点からはカルボキシル基の含有量が一定以下であることが好ましい。
【0037】
親水性ビニル系樹脂(A1)中のカルボキシル基の含有量は酸価で示される。
親水性ビニル系樹脂(A1)の酸価は、10mgKOH/g以上であると、現像性がさらに良好に発揮されやすく、また、硬化しやすい。また、50mgKOH/g以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好に発揮できる。
【0038】
また、親水性ビニル系樹脂(A1)のSP値は、好ましくは7〜14、さら好ましくは9〜13、特に好ましくは11〜13である。7以上であるとさらに現像性が良好に発揮でき、14以下であると硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0039】
親水性ビニル系樹脂(A1)の数平均分子量(以下、Mnと略記。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによる測定値)は、硬化物となったときの硬度と現像性の観点から、好ましくは500〜500,000、さらに好ましくは1,000〜100,000、特に好ましくは3,000〜20,000である。
【0040】
親水性ビニル系樹脂(A1)の製造は、通常のラジカル重合で行うことができる。
ラジカル重合は、例えば、必要により有機溶剤 を使用し、モノマーをラジカル重合開始剤によって重合することで行われる。
有機溶剤としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテルおよびプロピレングリコールモノアルキルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなど)、およびエステル類(ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートなど)が挙げられる。有機溶剤のうち好ましいのはケトン類およびエステル類である。
有機溶剤を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、モノマーの合計重量に基づいて通常、1〜400重量%、好ましくは5〜300重量%、特に好ましくは10〜200重量%である。
有機溶剤は、重合終了後に加熱留去などの方法で除去してもよいが、そのまま残して、後述の感光性樹脂組成物で含有してもよいとされる有機溶剤の一部としてもよい。
【0041】
重合開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
過酸化物としては、無機過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、および有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキシドなど)などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、およびアゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライドなどが挙げられる。好ましいものとしては、アゾ化合物である。重合開始剤の使用量としては、モノマーの合計重量に基づいて、通常、0.0001〜20%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜15%、特に好ましくは0.005〜10%である。反応温度および反応時間は、ラジカル重合開始剤の種類により適宜決定される。
【0042】
本発明における親水性樹脂(A)のうちの親水性エポキシ系樹脂(A2)は、親水基を有するエポキシ樹脂骨格のポリマーである。
親水性エポキシ系樹脂(A2)に含まれる親水基としては、親水性ビニル系樹脂(A1)で挙げたものと同様に、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基、ポリエーテル基およびこれらのうちの2種以上の併用などが挙げられる。充分な現像性を発揮するためには、特にカルボキシル基を有するものが好ましい。←
【0043】
親水性エポキシ系樹脂(A2)の好ましい製造法は、通常のエポキシ樹脂(A2)中のエポキシ基に、例えばアクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させてエポキシ基を開環させて水酸基を生成させ、その水酸基の一部に多価カルボン酸もしくはその多価カルボン酸無水物(e)を反応させる方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
変性する前のエポキシ樹脂(A2)としては、脂肪族エポキシ樹脂[例えばエポトートYH−300、PG−202、PG−207(いずれも東都化成社製)など]や脂環式エポキシ樹脂[例えばCY−179、CY−177、CY−175(いずれも旭化成エポキシ社製)など]や芳香族エポキシ樹脂[例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂おおびグリシジル変性ポリビニルフェノールなど]が挙げられる。
エポキシ樹脂(A2)のうち好ましいのは硬化性の観点から芳香族エポキシ樹脂である。
【0045】
変性するためのアクリロイル基含有モノカルボン酸としては、アクリル酸が挙げられる。
親水性エポキシ系樹脂(A2)の製造における、アクリル酸/エポキシ樹脂(A2)の仕込み重量比は、好ましいのは親水性エポキシ系樹脂(A2)のアクリロイル基の濃度が1.0mmol/g以上となるようなアクリル酸の仕込み重量比である。アクリル酸/エポキシ樹脂(A2)の重量比は上記の観点から、好ましくは0.072以上/1、さらに好ましくは0.079〜0.72/1である。
【0046】
エポキシ樹脂(A2)とアクリル酸の反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは5〜30時間である。また、必要により触媒(例えば、トリフェニルホスフィンなど)およびラジカル重合禁止剤(ヒドロキノン、p−メトキシフェノールなど)を用いてもよい。
【0047】
また、多価カルボン酸および多価カルボン酸無水物(e)としては、前述のビニルモノマー(a)のうちの不飽和多価カルボン酸およびそれらの無水物、並びに飽和多価(2〜6価)カルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸およびオクタデセニルコハク酸などの脂肪族飽和多価カルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸)およびそれらの無水物(例えば、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、ペンタデセニル無水コハク酸およびオクタデセニル無水コハク酸などの脂肪族飽和多価カルボン酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびナフタレンテトラカルボン酸無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物)が挙げられる。好ましいのは、反応性及び現像性の観点から飽和多価カルボン酸無水物である。
【0048】
また、エポキシ樹脂(A2)のアクリル酸付加物の重量に対する、(e)の仕込み当量は、親水性エポキシ系樹脂(A2)の酸価が、好ましくは10〜50mgKOH/gとなるような(e)の仕込み当量であり、例えば、(e)が2価カルボン酸もしくはその無水物である場合、(e)の仕込み当量/エポキシ樹脂(A2)のアクリル酸付加物の重量は、上記の観点から、好ましくは0.18〜0.89ミリ当量/g、さらに好ましくは0.53〜0.71ミリ当量/gである。
【0049】
(A2)のアクリル酸付加物と(e)との反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは3〜10時間である。
【0050】
親水性エポキシ系樹脂(A2)が親水基としてカルボキシル基を有する場合は、現像性及び硬化性の観点から、親水性エポキシ系樹脂(A2)中のカルボキシル基の含有量が一定以上であることが好ましく、硬化物の耐水性の観点からは(A2)中のカルボキシル基の含有量が一定以下であることが好ましい。
【0051】
親水性エポキシ系樹脂(A2)中のカルボキシル基の含有量は酸価で示され、親水性エポキシ系樹脂(A2)の好ましい酸価は、(A1)の場合と同様に10〜50mgKOH/gであり、好ましい理由も同様である。
また、親水性エポキシ系樹脂(A2)のSP値は、親水性ビニル系樹脂(A1)の場合と同様に、好ましくは7〜14、さら好ましくは9〜13、特に好ましくは11〜13である。7以上であるとさらに現像性が良好に発揮でき、14以下であると硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0052】
親水性エポキシ系樹脂(A2)の数平均分子量(Mn)は、硬化物となったときの硬度と現像性の観点から、通常500〜3,000、好ましくは1,000〜2,800、特に好ましくは1,500〜2,500である。
【0053】
本発明の親水性樹脂(A)は、親水性ビニル系樹脂(A1)を2種以上、親水性エポキシ系樹脂(A2)を2種以上、あるいは(A1)と(A2)を組み合わせて2種以上使用することができる。
その際の「親水性樹脂(A)のHLB値」とは、使用した各種(A)のHLB値を重量比率の相加平均を計算することにより、求めることができる。
同様に、2種以上の親水性樹脂を併用した場合の本発明の「親水性樹脂(A)のSP値」とは、使用した各種(A)のSP値を重量比率の相加平均を計算することにより、求めることができる。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、親水性樹脂(A)の含有量は、10〜80重量%であり、好ましくは20〜60重量%である。10%以上であればさらに良好に現像性を発揮でき、80%以下であれば硬化物の硬度がさらに良好になる。
なお、本発明における「固形分」とは、溶剤以外の成分を指す。
【0055】
続いて、本発明の感光性樹脂組成物における多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)について詳細に説明する。
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、公知の多官能(メタ)アクリレートモノマーであれば、とくに限定されずに用いられ、2官能(メタ)アクリレート(B1)、3官能(メタ)アクリレート(B2)および4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)が挙げられる。
【0056】
2官能アクリレート(B1)としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等が例示される。
【0057】
3官能アクリレート(B2)としては、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等が例示される。
【0058】
4〜6官能アクリレート(B3)としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が例示される。
【0059】
市場から容易に入手できる多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、例えば、アロニックスM−210、M−240、M−305、M−402(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートPE−3A、DPE−6A(以上、共栄社化学(株)製)、ネオマーDA−600(三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)として、これらのうち好ましいものは3官能アクリレート(B2)及び4〜6官能アクリレート(B3)であり、最も好ましいものは硬化性の観点からジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびこれらの併用である。
【0061】
また、本発明における多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)には、その一部に感光性アクリルオリゴマー(B4)を含んでいてもよい。感光性アクリルオリゴマー(B4)としては、Mnが1,000以下であって、カルボキシル基を含有せず、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)中の感光性アクリルオリゴマー(B4)の含有量は、好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は、10〜60重量%であり、好ましくは25〜50重量%である。
10%以上であれば、硬化物の硬度がさらに好ましくなり、60%以下であれば、さらに現像性が良好になる。
【0063】
続いて、本発明の分子内に芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロース(C)について詳細に説明する。
この(C)は、下記一般式(1)で表される変性セルロースである。
【0064】
【化1】

【0065】
[式(1)中のR〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基、芳香族環およびカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有する炭素数7〜18のアシル基であり、かつR〜Rのうち少なくとも1つは芳香族環およびカルボキシル基をそれぞれ1つ以上有する炭素数7〜18のアシル基る。nは7〜10,000の整数である。]
【0066】
上記の変性セルロースとしては、メトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基およびカルボキシベンゾイル基を有する変性セルロース、メトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、アセチル基およびカルボキシベンゾイル基を有する変性セルロース等が挙げられ、
例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP:信越化学工業(株)製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート(HPMCAP:信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0067】
変性セルロース(C)は、アルカリ現像性の観点からカルボキシル基を有するものが好ましい。カルボキシル基の含有量は酸価で表される。
変性セルロース(C)の酸価は、10〜90mgKOH/gが好ましい。10mgKOH/g以上であると、現像性がさらに良好に発揮されやすく、90mgKOH/g以下であれば相溶性がさらに良好に発揮できる。
【0068】
変性セルロース(C)の数平均分子量(Mn)は、感光性樹脂組成物としての光硬化反応性と現像性の観点から、通常1,000〜1000,000、好ましくは3,000〜100,000である。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、変性セルロース(C)の含有量は、好ましくは3〜25重量%であり、特に好ましくは5〜15重量%である。
【0070】
最後に、本発明の感光性樹脂組成物における光ラジカル重合開始剤(D)について詳細に説明する。
光ラジカル重合開始剤(D)としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、ミヒラーズケトン、ベンジル−2,4,6−(トリハロメチル)トリアジン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9ーアクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、ジメチルベンジルケタール、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリブロモメチルフェニルスルホンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。(D)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
光ラジカル重合開始剤(D)は、市販のものが容易に入手することができ、例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては、イルガキュア907、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては、イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0072】
感光性樹脂組成物の固形分の重量に基づく光ラジカル重合開始剤(D)の含有量は、0.01〜5%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3%、特に好ましくは0.1〜2%である。0.01%以上であれば硬化物の感度がさらに良好に発揮でき、5%以下であれば解像度がさらに良好に発揮できる。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、必要によりさらにその他の成分(E)を含有していてもよい。
(E)としては、無機微粒子(E1)、増感剤(E2)、重合禁止剤(E3)、顔料(E4)、溶剤(E5)並びにその他の添加剤(例えば、レベリング剤、シランカップリング剤、密着性付与剤、粘度調整剤、マット化剤、染料、蛍光増白剤、黄変防止剤、酸化防止剤、消泡剤、消臭剤、芳香剤、殺菌剤および、防かび剤等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
無機微粒子(E1)としては、金属酸化物(E11)および金属塩(E12)が使用できる。
金属酸化物(E11)としては、公知のもの、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化アルミニウム等が挙げられる。
金属塩(E12)としては、公知のもの、例えば、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム等が挙げられる。
これらのうちで、生産性とコストの観点から、金属塩(E12)が好ましく、さらに好ましくは、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム、特に硫酸バリウムが好ましい。
無機微粒子(E1)は、体積平均粒子径が好ましくは1〜5,000nm、さらに好ましくは10〜30,000nm、特に好ましくは100〜2,000nmのものである。
体積平均粒子径の測定は、例えばトルエンを溶媒にしてレーザー散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)で行うことができる。
【0075】
感光性樹脂組成物の固形分の重量に基づく金属酸化物(E1)の含有量は、通常0〜50%、好ましくは1〜45%、特に好ましくは2〜40%である。50%以下であれば柔軟性がさらに良好に発揮でき、2〜40%であれば、特に硬化物の硬度が優れる。
【0076】
増感剤(E2)としては、ニトロ化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン及び2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン及びクリセン等)、硫黄化合物(例えば、ジフェニルジスルフィド等)及び窒素化合物(例えば、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン及びテトラシアノエチレン等)等が用いられる。
【0077】
光ラジカル重合開始剤(D)の重量に基づく増感剤(E2)の含有量は、通常0.1〜100%、好ましくは0.5〜80%、特に好ましくは1〜70%である。
【0078】
重合禁止剤(E3)としては、特に限定はなく、通常の反応に使用するものが用いられる。具体的には、ジフェニルヒドラジル、トリ−p−ニトルフェニルメチル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド及び塩化銅(II)等が挙げられる。
【0079】
感光性樹脂組成物の固形分の重量に基づく重合禁止剤(E3)の含有量は、0〜1.0%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5%、特に好ましくは0.02〜0.1%である。
【0080】
顔料(E4)としては通常のものが使用可能であり、例えば、体質顔料;炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、タルク、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム、微粉末シリカ、クレーなど、着色用顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジスアゾイエロー、アントラキノン系黄色顔料、ベンゾイミダゾロン、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。これらのうち好ましくは硫酸バリウム、タルク、微粉末シリカ、フタロシアニングリーンであり、特に好ましくはタルク、微粉末シリカ、フタロシアニングリーンである。
【0081】
顔料(E4)の感光性樹脂組成物に対する使用量は、体質顔料の場合、通常0〜50%、好ましくは1〜40%である。着色用顔料は通常0〜5%、好ましくは0.5〜3%である。
【0082】
溶剤(E5)としては通常のものが使用可能であり、例えば、親水性ビニル系樹脂(A1)の製造時にモノマー希釈する場合として例示した有機溶剤などが挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。これらのうち好ましくは、ケトン類およびエステル類である。
【0083】
その他の添加剤のうち、レベリング剤としては通常のものが使用可能であり、例えば、モンサント社製モダフロー等が使用できる。消泡剤としては通常のものが使用可能であり、例えば、シリコーンオイル系消泡剤が挙げられる。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、プラネタリーミキサーなどの公知の混合装置により、上記の各成分を混合等することにより得ることができる。
【0085】
また本発明の感光性樹脂組成物は、硬化前は通常、室温で液状であり、その粘度は、25℃で0.1mPa・s〜10,000mPa・s、好ましくは1mPa・s〜8,000mPa・sである。なお、当該粘度は、BL型粘度計で測定することができる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、プリント配線板などのフォトソルダーレジストとして好適に使用できる。
本発明の感光性樹脂組成物(Q)をフォトソルダーレジストとして用いるために基板上に塗布する方法としては、スクリーン印刷機、ロールコーター、カーテンコーターなどで塗布する方法、スプレー、刷毛、ヘラ等で塗る方法、及び浸漬する方法が挙げられる。好ましくはスクリーン印刷機、ロールコーターを用いて塗布する方法である。膜厚としては、通常0.5〜500μm、好ましくは5〜100μmである。
【0087】
塗布後、組成物中に含まれる揮発成分を除去するため乾燥する。乾燥する方法としては、熱を加える方法が挙げられる。加熱装置としては、通常の循風乾燥器、電気炉、ガス炉、遠赤外炉等が使用できる。好ましくは電気炉である。
乾燥温度としては、通常60℃〜90℃が好ましく、乾燥時間としては、通常30秒〜5分が好ましい。
乾燥時の圧力としては、減圧、常圧どちらでもよいが、減圧の方が好ましい。
【0088】
得られた乾燥塗膜に選択的に露光する方法としては、パターンを有するフォトマスクを介して活性光線を照射する方法が挙げられる。
露光に用いる活性光線としては、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させることができれば特に限定されることはないが、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等)等がある。これらのうち、好ましくは高圧水銀灯及び超高圧水銀灯である。
露光における光線の照射量としては、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)および光ラジカル重合開始剤(D)などの量により適宜選択されるが、好ましくは20〜300mJ/cmである。
【0089】
得られた露光後の塗膜をアルカリ現像することにより、未露光部分を除去し塗膜パターンが形成される。本発明でのアルカリ現像において、現像液はアルカリ水溶液を用いる。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩の水溶液;テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド等の有機塩の水溶液が挙げられる。これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることもでき、また、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を添加して用いることもできる。
現像方法としては、ディップ方式、シャワー方式、及びスプレー方式があるが、スプレー方式の方が好ましい。現像液の温度は、好ましくは25〜40℃で使用される。現像時間は、膜厚やレジストの溶解性に応じて適宜決定される。現像後、通常は水洗し乾燥する。
【0090】
硬化をより確実にするために、現像後に、必要に応じて後加熱を行ってもよい。
後加熱温度としては、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜240℃、特に好ましくは180〜230℃である。後加熱時間は5分〜6時間、好ましくは15分〜4時間、特に好ましくは30分〜3時間である。また、塗膜中の硬化収縮を抑えるため、加熱温度および加熱時間を二段階または三段階に分けることも好ましい。
後加熱は、減圧、常圧どちらでもよいが、減圧の方が好ましい。
また、空気中、不活性ガス中どちらで行ってもよいが、不活性ガス中が好ましい。
【0091】
以上説明した工程により、アルカリ現像性に優れ、硬化収縮による反りが極めて小さい硬化塗膜が形成される。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0093】
<製造例1> [親水性樹脂(A−1)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、イソボルニルメタクリレート56部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート36部、メタクリル酸8部、およびシクロヘキサノン250部を仕込み、80℃まで加熱した。系内の気相部分を窒素で置換したのち、あらかじめ作成しておいたアゾビスイソブチロニトリル(V−60:和光純薬製、以下AIBNと称す)5部をシクロヘキサノン50部に溶解した溶液55部を80℃のコルベン中に10分間で滴下し、さらに同温度で3時間反応させ、親水性樹脂(数平均分子量(Mn):8,800、SP値:11.86、HLB値:11.98、酸価:50mgKOH/g)のシクロヘキサノン溶液(A−1)を得た(固形分含有量は25%)。
【0094】
なお、MnはGPC測定機器(HLC−8120GPC、東ソー(株)製)、カラム(TSKgel GMHXL2本+TSKgel Multipore HXL−M、東ソ(株)製)を用いて、GPC法により測定されるポリスチレン換算の値として求めた。
また、SP値、HLB値、酸価は、前述のようにして求めた。
以下の製造例および比較例についても同様の測定法である。
【0095】
<製造例2>[カルボキシル基変性セルロース(C−3)の製造]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、および窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、メトローズ60SH(信越化学工業(株)製)98部、無水トリメリット酸2.5部、およびN,N−ジメチルホルムアミド900部を仕込み、均一に溶解させた。溶解後、系内の気相部分を窒素で置換したのち、80℃まで加熱した。トリエチルアミン0.5部を加え、同温度で8時間反応させた。冷却した後、ジエチルエーテルで再沈殿させ、再度ジエチルエーテルで洗浄することにより、白色固体の変性セルロース(C−3)85部を得た。
【0096】
<製造例3>[カルボキシル基変性セルロース(C−4)の製造]
製造例2において、無水トリメリット酸を無水ピロメリット酸1.5部に変えた以外は同様にして、変性セルロース(C−4)84部を得た。
【0097】
[感光性樹脂組成物溶液の調製]
紫外線にさらされない環境下において、ガラス製の容器に、上記の親水性樹脂溶液(A−1)、および下記の原材料を表1の配合例に従い仕込み、均一になるまで攪拌し、さらに三本ロールミルにより混錬して実施例1の感光性樹脂組成物溶液(Q−1)を調製した。
【0098】
以下、同様にして実施例2〜4の感光性樹脂組成物溶液(Q−2)〜(Q−4)、および比較例1〜4の感光性樹脂組成物溶液(Q’−1)〜(Q’−4)を調製した。なお、カルボキシル基変性セルロース(C−3)、(C−4)については上記のものを用いた。
【0099】
(B−1):「ネオマーDA−600」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物:三洋化成工業(株)製)
(B−2):「KAYARAD DPCA−30」(ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製)
(C−1):「HPMCP」(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート:信越化学工業(株)製)
(C−2):「HPMCAP」(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート:信越化学工業(株)製)
(C’−1):「信越 AQOAT」(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート:信越化学工業(株)製)
(C’−2):「セルロース,微結晶」(セルロース:和光純薬工業(株)製)
(D−1):「イルガキュア907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、
(E−1):「W−1」(硫酸バリウム:竹原化学工業(株)製)
(E−2):「アノン」(シクロヘキサノン:三協化学(株)製)
【0100】
【表1】

【0101】
現像性と反りは以下の方法で評価した。
ただし、比較例3の(Q’−3)については、撹拌後に均一溶解しなかったため、以下に示す現像性および反りの評価は実施できなかった。
【0102】
<現像性の評価方法>
感光性樹脂組成物溶液(Q−1)〜(Q−4)、(Q’−1)、(Q’−2)、(Q’−4)それぞれについて、スピンコート法により乾燥後の膜厚が20μmとなるように銅板に塗布し、80℃で30分間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。
次に、紫外線露光装置(型式:HMW−661−F−01(株)オーク製作所製)を用いて200mJ/cmの照射量で線幅20μmのマスクを使用し露光した。その後、室温にて1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて20秒間40kPaの圧力でスプレー現像を行なった。その後、30℃のイオン交換水で、現像時間と同時間、60kPaの圧力でスプレー洗浄しテストピース(Q−1)〜(Q−4)、(Q’−1)、(Q’−2)、(Q’−4)を作成した。各テストピースに関し、以下の判定基準 ←<下と同様に修正しました。>にて判定した。
○:目視により残留物無し。
△:目視により残留物やや有り。
×:目視により残留物が多く、パターン形成不十分。
【0103】
<反りの評価方法>
基材厚さ60μm、銅箔厚さ12μmであるガラスエポキシFR−4基板(JIS C6480:「プリント配線板用銅張積層板通則」記載のGE4F規格適合品)に、前記の感光性樹脂組成物溶液(Q−1)〜(Q−4)、(Q’−1)、(Q’−2)、(Q’−4)それぞれについて、スピンコート法により乾燥後の膜厚が30μmとなるように銅板に塗布し、80℃で60分間、熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。前述の紫外線露光装置により500mJ/cmの照射量で全面露光し、前述の方法で現像した後、熱硬化してテストピース(Q−1)〜(Q−4)、(Q’−1)、(Q’−2)、(Q’−4)を作成した。
このテストピース(400mm×300mm)を試験片とし、平面上でテストピースの4隅の平面からの高さを測定し、その値の合計を反り変形量として、以下の判定基準により判定した。
○:20mm以下
△:20mm〜40mm
×:40mm以上
【0104】
現像性と反りの評価結果を表1に示す。
【0105】
表1から明らかなように、本発明の実施例に示したアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物により、優れたアルカリ現像性を有し、硬化収縮による反りが極めて小さい硬化塗膜を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物は、アルカリ現像性に優れ、かつ硬化収縮による反りが極めて小さいため、プリント配線板製造用ソルダーレジスト、液晶ディスプレイ基板用フォトレジスト、プリント配線基板用エッチングレジスト、プリント配線基板用メッキレジストとして利用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、分子内に芳香族環を有するカルボキシル基変性セルロース(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有するアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項2】
該変性セルロース(C)の含有量が、感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて3〜25重量%である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
該変性セルロース(C)の酸価が10〜90mgKOH/gである請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
該親水性樹脂(A)のHLB値が4〜19である請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
該親水性樹脂(A)の溶解度パラメーター(SP値)が7〜14である請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
プリント配線板に使用されるフォトソルダーレジスト用である請求項1〜5いずれか記載の感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−79163(P2010−79163A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249922(P2008−249922)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】