説明

感光性樹脂組成物

【課題】成分中にハロゲン化合物を含まずに優れた難燃性を有し、かつ耐絶縁信頼性(耐マイグレーション性)、密着性、耐熱性、折り曲げ耐性、耐溶剤性を有する感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム、及び積層体を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂前駆体と、感光剤と、直鎖状フェノキシホスファゼン化合物、及び環状フェノキシホスファゼン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1つのホスファゼン化合物と、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤としてオキサジン環含有ホスファゼン化合物を使用し、ポリイミド樹脂前駆体及び光重合可能な不飽和二重結合を有する化合物及び光重合開始剤、若しくはナフトキノンジアジドなどの感光剤を含有する感光性樹脂組成物、及びそれらから得られるカバーレイおよび積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に通信用・民生用の電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。このような要求に対して、フレキシブルプリント配線板は、可撓性を有し、繰り返し屈曲に耐えるため、狭い空間に立体的に高密度の実装が可能であり、電子機器への配線、ケーブル、コネクター機能等を付与した複合部品として、その用途が拡大しつつある。近年の電子機器の小型化、軽薄化に伴い、フレキシブルプリント配線板の絶縁保護層として感光性カバーレイフィルムが用いられている。
【0003】
感光性カバーレイフィルムは、パターン形成に必要な現像性のほか、耐熱性、耐薬品性、難燃性、接着性、電気絶縁性等で優れた物性を有することが要求される。現在アクリル系やエポキシ系の感光性カバーレイフィルムが上市されているが、耐熱性、難燃性及び耐薬品性などの物性で満足するものは得られていない。
【0004】
難燃性に関しては、臭素系難燃剤などハロゲン系の難燃剤を含有することで良好な難燃性を有していた。しかしながら、ハロゲン系難燃剤の燃焼時に有害ガスが発生する等環境への悪影響が指摘されており、ハロゲン系難燃剤を含まない感光性樹脂の難燃化が必要とされている。
【0005】
ポリイミド前駆体の1種であるポリアミド酸を含有し、かつハロゲン系難燃剤を含まない感光性樹脂組成物に関しては、リン酸エステル系難燃剤、ポリアミド酸、少なくとも2つ以上の光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物に関するもの(特許文献1)や、環状リン酸化合物、ポリアミド酸、少なくとも2つ以上の光重合可能な炭素−炭素二重結合を有する(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物に関するもの(特許文献2)がある。また、環状フェノキシホスファゼン化合物、ポリアミド酸、(メタ)アクリレート及び光重合開始剤に関するものがある(特許文献3)。
【0006】
しかし、それらを含む感光性樹脂組成物を使用した感光性カバーレイにおいて、難燃性や耐溶剤性が不充分であり、耐絶縁信頼性試験によって白化又は劣化や難燃剤の溶出によるべたつき不良を生じる問題があった。
【0007】
また、ホスファゼン化合物及びガラス転移温度が50℃以上である芳香環を有する高分子化合物を含有する組成物も提案されている(特許文献4)。特許文献4では、ホスファゼン化合物は難燃性向上のために用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−29702号公報
【特許文献2】特開2004−341059号公報
【特許文献3】特開2008−107492号公報
【特許文献4】特開2004−43339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、成分中にハロゲン化合物を含まずに優れた難燃性を有し、かつ耐絶縁信頼性(耐マイグレーション性)、密着性、耐熱性、折り曲げ耐性、耐溶剤性を有する感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム、及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、上記課題を解決するプリント配線板のカバーレイに好適な感光性樹脂組成物並びに感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム、カバーレイ、ポリイミド前駆体を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に示すものである。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂前駆体と、感光剤と、下記式(1)で表される直鎖状フェノキシホスファゼン、及び下記一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれる少なくとも1つのホスファゼン化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】

(式(1)中、mは3〜25の整数を示す。Rは置換基を有し、若しくは有しないフェニル基、ナフチル基、又はビスフェニレン基、炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のRのうち、少なくとも1つは下記式(2)で示されるオキサジン環を含有する。
【化2】

(式(2)中、Rはフェニル基、メチル基、又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基、又はアミノ基が置換していてもよい。Xはエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。)
【化3】

(式(3)中、Yは基−N=P(AR、又は基−N=P(A)ARを示し、Zは基−P(AR、又は基−P(A)(ARを示す。Aはエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。nは3〜10000の整数を示す。Rは置換基を有し若しくは有しないフェニル基、ナフチル基又はビスフェニレン基、炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。但し、2n個のRのうち、少なくとも1つは式(4)で示されるベンゾオキサジン環やナフトオキサジン環を有する。)
【化4】

(式(4)中、Rはフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。Xは、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、メチレン基を表す。)
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記感光剤が、1分子中に2つ以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する化合物、及び光重合開始剤であることが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記感光剤がナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0014】
本発明の感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物と、支持フィルム層とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のカバーレイは、上記感光性樹脂組成物をイミド化した構造であることを特徴とする。
【0016】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、配線を有する基材上において、上記感光性樹脂組成物をイミド化した構造を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の感光性フィルムにおいては、片側全面にキャリアフィルムを有することが好ましい。
【0018】
本発明の感光性フィルムにおいては、カバーフィルムを具備することが好ましい。
【0019】
本発明の積層体は、上記カバーレイと銅張積層板とから構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成分中にハロゲン化合物を含まずに優れた難燃性を有し、かつ耐絶縁信頼性(耐マイグレーション性)、密着性、耐熱性、折り曲げ耐性、耐溶剤性を有する感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム、及び積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、以下具体的に説明する。
【0022】
(A)ポリイミド前駆体
ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミドなどがあげられる。また、ポリアミド酸構造の一部が閉環し、イミド化されたポリイミド構造を有するポリイミド前駆体を用いてもよい。
【0023】
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られ、また必要に応じて、ジカルボン酸無水物も加えて反応させてもよい。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物としては、無水ピロメリット酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタトリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略称する)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAと略称する)、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、o−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などが挙げられる。
【0025】
テトラカルボン酸二無水物としては、支持フィルム層との積層時の反りや、ポリイミド樹脂の耐熱性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物であるBPDA、BTDA、ナフタレンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、o−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などのエステル酸無水物であることが好ましい。
【0026】
ジアミンとしては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBと略称する)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−ブタンジオール重縮合物−ビス(4−アミノベンゾエート)、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、2−メチル−4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどがあげられる。
【0027】
この中で、支持フィルム層との積層時の反りや、ポリイミド樹脂の耐熱性の観点から、芳香族ジアミンであるAPB、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−ブタンジオール重縮合物−ビス(4−アミノベンゾエート)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンが好ましい。中でも、ポリオキシエチレンジアミンや、ポリオキシプロピレンジアミンなどの、ポリオキシアルキレンジアミンが、後述するオキサジン環含有ホスファゼン化合物との相溶性が特に優れ、感光性樹脂組成物の現像性や、硬化体の折り曲げ耐性、難燃性付与の観点から特に好ましい。
【0028】
ポリオキシアルキレンジアミンとしては、米ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511などのポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000などのポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536などのポリテトラメチレンエチレン基をもつものなどが使用例として挙げられる。中でも、比較的分子量の低いEDR−148、D−230、D−400、HK−511などは、比較的高いガラス転移温度をもつポリマーとなり得るため、耐熱性、耐薬品性が必要な用途で好ましく用いられる。一方、比較的分子量の高いD−2000などは、柔軟性、低沸点溶媒溶解性などに優れる。
【0029】
また、耐熱性、耐薬品性と柔軟性、溶剤可溶性のバランスの点から、ポリオキシアルキレンジアミンの重量平均分子量としては、400〜1400が好ましく、500〜1000が特に好ましく、ED−600、ED−900、XTJ−542が好ましく用いられる。中でも、エチレン基を有するポリオキシエチレンジアミンであるED−600とED−900は、溶剤可溶性がより向上し、特に好ましく用いられる。
【0030】
また、ジアミンは、純度が高いものを用いた方がポリアミド酸およびポリイミドとして高分子量のものを得やすい。ポリオキシアルキレンジアミンの純度は、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98.5%以上である。
【0031】
ポリオキシアルキレンジアミンの含有量は、全ジアミンに対して25モル%〜80モル%であることが好ましい。より好ましくは25モル%〜60モル%、さらに好ましくは30モル%〜50モル%である。25モル%以上であれば、低反り、低反発性を示し、80モル%以下であれば、耐溶剤性と耐熱性に優れる。
【0032】
ポリイミド前駆体の末端構造は、ポリイミド前駆体を製造する際に用いる酸二無水物、ジアミンに由来する末端構造でも良いし、その他の酸無水物、アミン化合物等により末端封止した構造であってもよい。
【0033】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、1000以上1000000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の重量平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は、ポリイミド膜の強度の観点から、1000以上であることが好ましい。またポリイミド含有樹脂組成物の粘度、成型性の観点から、重量平均分子量は、1000000以下であることが好ましい。重量平均分子量は5000以上、500000以下がより好ましく、10000以上300000以下が特に好ましく、25000以上、50000以下が最も好ましい。
【0034】
ポリアミド酸の反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0035】
反応溶媒としては、特に限定されず、一般的なポリイミド酸の製造に使用可能な溶媒を用いることができる。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ―ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。
【0036】
これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0037】
製造終了後のポリイミド前駆体は反応溶媒に溶かしたまま用いても良いし、以下の方法で回収・精製してもよい。製造終了後のポリイミド前駆体の回収は、反応溶液中の溶媒を減圧留去することに行うことができる。
【0038】
ポリイミド前駆体の精製方法としては、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈殿によって精製することができる。
【0039】
(B)感光剤
感光性樹脂組成物は、上記ポリイミド前駆体及び感光剤を含有する。感光剤とは、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化する性質を有する化合物を表す。このような化合物としては、光照射部位が溶解する、いわゆるポジ型の感光剤と光照射部位が不溶化するいわゆるネガ型の感光剤とが挙げられる。
【0040】
ネガ型の感光剤としては、(B−1)2つ以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物と(D)光重合開始剤の組み合わせが挙げられる。
【0041】
(B−1)光重合可能な不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物
光重合可能な不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、β―ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルキシ)−プロピルフタレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。その中で、焼成後の反りの観点から、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレートが好ましい。また、ネガ型の感光剤としては、二重結合を2つ有する化合物と二重結合を3つ以上有する化合物との組合せであることが好ましい。2つ以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物の量は、ポリイミド前駆体の量を100質量部とした場合、現像性の観点から5質量部以上60質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下がより好ましい。
【0042】
(B−2)キノンジアジド化合物
ポジ型の感光性を示す化合物として、キノンジアジド構造を含有する化合物、芳香族ジアゾニウム塩化合物、アジド構造を有する化合物などが挙げられる。溶解性コントラストの観点から、キノンジアジド構造を含有する化合物が好ましい。
【0043】
キノンジアジド構造を含有する化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。具体的には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,4,4‘−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,3,4,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3’,4,4’,5’6,−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,5’,6,6’,7,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,5’,6,6’,7,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどの(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類などが挙げられる。溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましく、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル類が感光性コントラストの観点からより好ましい。なかでも下記一般式(5)で示す化合物(Qは下記構造式(6)で表される構造又は水素原子である。)が特に好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
感光性樹脂組成物におけるポジ型の感光剤の量としては、ポリイミド前駆体の量を100質量部とした場合、感光性コントラストの観点から、1質量部以上50質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。1質量部以上であれば、未露光部の溶解抑止が充分である傾向にあるため好ましい。50質量部以下であれば、感度が充分に高い傾向にあるため好ましい。
【0046】
(C)オキサジン環含有ホスファゼン化合物
オキサジン環含有ホスファゼン化合物は、環状フェノキシホスファゼン、及び直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれたホスファゼン化合物の分子内にオキサジン環を有する化合物である。環状フェノキシホスファゼンとしては、下記一般式(1)で表される骨格を有する化合物が挙げられる。
【0047】
【化6】

(式(1)中、mは3〜25の整数を示す。Rは、置換基を有し、若しくは有しないフェニル基、ナフチル基若しくはビスフェニレン基、又は炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のRのうち、少なくとも1つは式(2)で示されるベンゾオキサジン環やナフトオキサジン環を有する。)
【0048】
【化7】

(式(2)中、Rはフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。Xは、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。)
【0049】
また、直鎖状フェノキシホスファゼンとしては、下記一般式(3)で表される骨格を有する化合物が挙げられる。
【化8】

(式(3)中、Yは基−N=P(AR、又は基−N=P(A)ARを示し、Zは基−P(AR、又は基−P(A)(ARを示す。Aはエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。nは3〜10000の整数を示す。Rは置換基を有し若しくは有しないフェニル基、ナフチル基又はビスフェニレン基、炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。但し、2n個のRのうち、少なくとも1つは式(4)で示されるベンゾオキサジン環やナフトオキサジン環を有する。)
【0050】
【化9】

(式(4)中、Rはフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。Xは、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、メチレン基を表す。)
【0051】
これらのオキサジン環含有ホスファゼン化合物は、例えばヒドロキシフェニル基やヒドロキシナフチル基を有するホスファゼン化合物、アミン化合物、ホルマリン類との反応やアミノ基を有するホスファゼン化合物と、フェノールやナフトールなどの芳香族化合物とホルマリン類との反応により得る環状フェノキシホスファゼン、直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれる。
【0052】
感光性樹脂組成物においてオキサジン環含有ホスファゼン化合物の添加量は、ポリイミド前駆体の量を100質量部とした場合、現像性や折り曲げ耐性などの観点から、50質量部以下が好ましい。硬化体の難燃性付与の観点から、3重量部以上、45質量部以下が好ましく、更に好ましくは5重量部以上、40質量部以下が好ましく、15重量部以上、35質量部以下が最も好ましい。ホスファゼン化合物にオキサジン骨格を有することにより、ポリイミド前駆体との相溶性が向上し、難燃剤の溶出(ブリードアウト)が抑制される。また、通常のホスファゼン化合物よりも難燃性向上により添加量の低減が可能となり、得られる硬化体の靭性が向上し折り曲げ耐性が発現する。
【0053】
(D)光重合開始剤
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンのようなベンジルジメチルケタール類、ベンジルジプロピルケタール類、ベンジルジフェニルケタール類、ベンゾインメチルエーテル類、ベンゾインエチルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの芳香族ケトン化合物、ロフィン二量体などのトリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジンなどのアクリジン化合物、α,α―ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N−アリール−α―アミノ酸などのオキシムエステル化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジイソプロピルアミノ安息香酸、p−安息香酸エステル類、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどのα―ヒドロキシアルキルフェノン類、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノンなどのα―アミノアルキルフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド類、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などのオキシムエステル類などが挙げられる。これらの中で、感度の観点から、オキシムエステル類が好ましい。
【0054】
光重合開始剤の量は、ポリイミド前駆体の量を100質量部とした場合、感度及び解像度の観点から、0.01質量部以上40質量部以下が好ましい。0.5質量部以上35質量部以下がより好ましい。
【0055】
感光性樹脂組成物には、その性能に悪影響を及ぼさない範囲で、その他化合物を含むことが出来る。具体的には、密着性向上のための複素環化合物やフィルムの着色を目的とした顔料や染料などが挙げられる。顔料や染料としては、フタロシアニン系化合物があげられる。
【0056】
複素環化合物とはヘテロ原子を含む環式化合物であれば限定されない。ヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。ヘテロ原子を含む環式化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールのようなイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールのようなN−アルキル基置換イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの芳香族基含有イミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどのシアノ基含有イミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールなどのイミダゾール化合物、5−メチルベンゾトリアゾール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾール)、1−(2−エチルヘキシアミノメチルベンゾトリアゾール)などのトリアゾール化合物、2−メチル−5−フェニルベンゾオキサゾールなどオキサゾール化合物などが挙げられる。
【0057】
その他化合物の添加量は、0.01質量部以上、30質量部以下であれば限定されない。0.01質量部以上であれば十分に密着性やフィルムへの着色性が向上する傾向にあり、30質量部以下であれば感光性等への悪影響がない。
【0058】
感光性樹脂組成物は、任意で、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、ポリイミド前駆体を均一に溶解及び/又は分散させうるものであれば限定されない。このような有機溶剤として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。
【0059】
これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい有機溶剤としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。
【0060】
また、必要に応じて、1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミド前駆体の溶解性の観点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0061】
ポリイミド前駆体と有機溶剤とからなる樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の濃度は、樹脂成型体を合成可能な濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚の観点からポリイミド前駆体の濃度が1質量%以上、樹脂成型体の膜厚の均一性からポリイミド前駆体の濃度は、90質量%以下が好ましい。得られる樹脂成型体の膜厚の観点から、2質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0062】
(E)感光性フィルム
感光性樹脂組成物は感光性フィルムに好適に用いることができる。感光性フィルムを製造するという観点からは、感光性樹脂組成物におけるポリイミド前駆体の濃度は、1質量%以上、90質量%以下が好ましい。ポリイミド前駆体の濃度は、感光性フィルムの膜厚の観点から1質量%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から90質量%以下が好ましい。得られる感光性フィルムの膜厚の観点から、2質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0063】
次に、感光性フィルムの製造方法について説明する。
まず、感光性樹脂組成物を基材にコートする。基材としては、感光性ドライフィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材としては、シリコンウエハ、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂、キャリアフィルムなどが挙げられる。キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びキャリアフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0064】
コート方法としてはバーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0065】
このように、感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の基材上に塗布後乾燥し、ドライフィルム化し、例えばキャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。
【0066】
また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなど感光性フィルムを保護するフィルムであれば限定されない。
【0067】
次いで、感光性フィルムを、配線を有する基材に当該配線を覆うように圧着し、アルカリ現像を行い、焼成を行うことによりフレキシブルプリント配線板を得ることができる。
【0068】
フレキシブルプリント配線板における配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいは銅張積層板などのフレキシブルな基板などが挙げられる。この中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板が好ましい。
【0069】
上記フレキシブルプリント配線板の形成方法においては、上記感光性フィルムが配線を覆うように基材に形成されれば、限定されない。このような形成方法としては、上記配線を有する基材の配線側と本発明に係る感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネート等を行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。
【0070】
配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着しうる温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃以上、400℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上、150℃以下である。
【0071】
配線を有する基材の整面処理は、特に限定されないが、塩酸処理、硫酸処理、過硫酸ナトリウム水溶液処理などが挙げられる。
【0072】
感光性フィルムは、ポジ型の場合、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ポジ型のフォトリソグラフィーが可能である。また、ネガ型の場合、光照射後、光照射部位以外をアルカリ現像にて溶解することにより、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、光照射に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0073】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、ポジ型の場合は光照射部位を、ネガ型の場合は光照射部位以外を、溶解しうる溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0074】
次いで、感光性フィルムを圧着したプリント配線板を焼成することによりプリント配線板を形成する。焼成は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、30℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃以上、300℃以下である。
【0075】
焼成における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。上記プリント配線板の製造において、上記焼成に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には1時間から8時間の範囲で実施される。ポリイミド前駆体及び感光性樹脂組成物は、キュア後の反りが良好であり、かつ現像性も良好であり、硬化体とした際に耐薬品性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。このように、シリコンウエハ、銅張積層板、プリント配線板などの上に形成された配線を保護する保護膜をカバーレイという。また、ポリイミド前駆体及び感光性樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線回路(FPC)用基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にフレキシブルプリント配線回路用のカバーレイに好適に用いることができる。
【0076】
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0077】
<試薬>
実施例及び比較例において、用いた試薬であるTMEG(商標名:TMEG−100(新日本理化社製))、BPDA(三井化学社製)、APB(商標名:APB−N(三井化学社製))、ジェファーミン(商標名:ジェファーミンXTJ−542(ハンツマン社製)、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(商標名:BPE−500(新中村化学工業社製))、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレート(商標名:アロニックスM−306(東亞合成社製)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(商標名:IRGACURE OXE 02(チバ・ジャパン社製)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業社製)、炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、1,2−ナフトキノンジアジド−5-スルホン酸エステル(商標名:PA−6、ダイトーケミックス社製)は特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0078】
(合成例1)ベンゾオキサジン環基を含有するホスファゼンの合成
ジオキサンにて希釈した50wt%アニリン溶液を氷浴にて氷冷し、37wt%ホルムアルデヒド水溶液を10℃以下にて滴下した。その後、氷浴を取り除き、30分間、室温下にて攪拌した後、ジオキサンに溶解させたフェノール性水酸基を有する環状フェノキシホスファゼン(大塚化学社製、製品名:SPH−100、水酸基当量348)50wt%溶液を室温にて滴下した。これらの混合溶液を約6時間加熱還流した後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解して水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去して褐色油状物を得た。この褐色油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体であるベンゾオキサジン環基を含有するホスファゼンを得た。
【0079】
(合成例2)ナフトオキサジン環基を含有するホスファゼンの合成
特開2004−43339号公報に記載の方法に従ってナフトオキサジン環基を含有するホスファゼンを得た。以下に概略を示す。還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えたフラスコに、所定量の36%ホルマリンを量り取り、ジオキサンを加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリンのジオキサン溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、ヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物のジオキサン溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチルに溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た。この褐色油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た。
【0080】
<重量平均分子量測定>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記の条件により測定した。溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0081】
<膜厚測定>
硬化体の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて測定した。
【0082】
<ドライフィルム製造方法>
感光性ドライフィルムは、下記の条件で感光性樹脂組成物をコートして製造した。感光性樹脂組成物のコート方法は、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法により行った。PETフィルム(帝人デユポンフィルム社製、N152Q)に上記感光性樹脂組成物を滴下し、クリアランス150μmでコートを行った。コートした上記フィルムを、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で30分間乾燥することにより、感光性ドライフィルムを得た。
【0083】
<タック性評価>
タック性は、95℃で30分間乾燥後の感光層のタック有無を触診にて評価した。指紋がついたものを×、指紋がつかなかったものを○と表記した。
【0084】
<ラミネート条件>
本実施例において、ラミネートは、真空プレス機(名機製作所社製)を用いて行った。プレス温度70℃、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒間にて行った。
【0085】
<現像性評価>
現像性は、以下の条件により評価した。銅張積層板上に、感光性ドライフィルムを用いて、上記ラミネート条件でラミネートした後に、ポジ型感光性樹脂組成物の場合は、ポジ型マスクを用いて照射量1.0J/cmにて露光を行い、ネガ型感光性樹脂組成物の場合は、30J/cm−270mJ/cmにて露光を行い、続いて炭酸ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理と水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて評価することにより行った。マスクには100μm径の円形パターン(間隔100μmピッチ)を用いた。現像により、露光部で銅面が現れており、かつ残膜率が75%以上の場合を○、それ以外の解像度が劣る場合や残膜率が75%未満の場合を×とした。
【0086】
<焼成後の反り測定>
得られた感光性ドライフィルムを、カプトン(登録商標)に上記ラミネート条件にてラミネートした後に、120℃で1時間、続いて180℃で1時間焼成を行った。フィルムを5cm角に切り出し、端部の浮き高さが10mm以内のものを○、それ以上に浮き高さがあるものを×とした。
【0087】
<焼成後の折り曲げ試験>
キュア後に得られたフィルムを180度に折り曲げ(ハゼ折り)、カバーフィルムの割れ、剥れを目視にて観察した。割れ、剥れがない場合を○、割れ、剥れがあった場合を×とした。
【0088】
<耐溶剤性試験>
キュア後に得られたフィルムを2cm角に切り出し、23℃、メチルエチルケトン溶液中に1分浸漬させた後の外観変化(光沢の消失)がみられず及び膜厚変化が5%未満である場合を○、外観変化(光沢の消失)、又は膜厚変化が5%以上あった場合を×とした。
【0089】
<難燃性試験>
難燃性評価は、ポリイミドフィルム(Kapton EN−100 厚み25μm 商品名 東レ・デュポン社製)の両面に、感光性ドライフィルムを用いて、上記のラミネート条件でラミネートした後に、120℃で1時間、続いて180℃で1時間焼成を行った。
【0090】
UL94VTM−0難燃性規格に準拠して、これらのフィルムサンプルの難燃性を測定した。サンプルがUL94VTM−0規格を満足する難燃性を示した場合を○、サンプルがUL94VTM−0規格を満足する難燃性を示さなかった場合を×とした。
【0091】
<ハーフミル難燃性試験>
難燃性評価は、ポリイミドフィルム(Kapton EN−50 厚み12.5μm 商品名 東レ・デュポン社製)の両面に、感光性ドライフィルムを用いて、上記のラミネート条件でラミネートした後に、120℃で1時間、続いて180℃で1時間焼成を行った。
【0092】
UL94VTM−0難燃性規格に準拠して、これらのフィルムサンプルの難燃性を測定した。サンプルがUL94VTM−0規格を満足する難燃性を示した場合を○、サンプルがUL94VTM−0規格を満足する難燃性を示さなかった場合を×とした。
【0093】
<耐絶縁信頼性(マイグレーション性)>
フレキシブル銅張積層板にライン幅/スペース幅=50μm/50μmの櫛型回路を作製し、その回路形成面にカバーレイフィルムの接着剤組成物層を合わせ、フレキシブル銅張積層板とカバーレイフィルムとをプレス装置(温度:180℃、圧力:3MPa、時間:60分)にて貼り合わせることにより耐マイグレーション性評価用サンプルを作製した。温度85℃、相対湿度85%の条件下で、評価用サンプルの回路の両極に50Vの直流電圧を印加し、耐マイグレーション性を評価した(マイグレーションテスター、IMV社製、MIG−86)。電圧印加後、1000時間以内に導体間で短絡(抵抗値の低下)が発生した場合、若しくは1000時間経過後に、デンドライトの成長や基板のべたつきなどの外観不良が認められた場合を×で示し、1000時間経過後も抵抗値を維持し、かつデンドライトの成長や基板のべたつきなどの発生が生じなかった場合を○で示した。
【0094】
[実施例1]
窒素雰囲気下、ディーンシュタルク装置及び還流器を備えたセパラブルフラスコに、γ―ブチロラクトン(49.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(21.0g)、トルエン(20.0g)、ジェファーミンXTJ−542(14.85mmol)、TMEG(39.0mmol)を入れ、180℃まで昇温し、180℃で1時間加熱撹拌した。共沸溶媒であるトルエンを除去した後に、25℃まで冷却し、続いてAPB−N(21.4mmol)を加え、25℃で8時間撹拌し、ポリイミド前駆体(1)の溶液を得た。ポリイミド前駆体の重量平均分子量を下記表1に示す。
【0095】
次に、ポリイミド前駆体(1)100質量部に対して、BPE−500(30質量部)、M−306(10質量部)、IRGACURE OXE 02(1質量部)、合成例1で得られたベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。上記感光性樹脂組成物を1質量%炭酸ナトリウム水溶液でのアルカリ現像性の評価、タック性、焼成後の折り曲げ試験、難燃性試験、ハーフミル難燃性試験、焼成後のフィルムの反り測定、フィルムの折り曲げ試験、耐溶剤性試験を行った。感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示し、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0096】
[実施例2]
窒素雰囲気下、ディーンシュタルク装置及び還流器を備えたセパラブルフラスコに、γ―ブチロラクトン(35.0g)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(15.0g)、トルエン(20.0g)、ジェファーミンXTJ−542(12.4mmol)、BPDA(47.6mmol)を入れ、180℃まで昇温し、180℃で1時間加熱撹拌した。共沸溶媒であるトルエンを除去した後に、25℃まで冷却し、続いてAPB−N(31.1mmol)を加え、25℃で8時間撹拌し、ポリイミド前駆体(2)の溶液を得た。ポリイミド前駆体の重量平均分子量を下記表1に示す。
【0097】
ポリイミド前駆体(2)100質量部に対して、BPE−500(30質量部)、M−306(10質量部)、IRGACURE OXE 02(1質量部)、合成例1で得られたベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。上記感光性樹脂組成物を1質量%炭酸ナトリウム水溶液でのアルカリ現像性の評価、タック性、焼成後の折り曲げ試験、難燃性試験、焼成後のフィルムの反り測定、ガラス転移温度測定を行った。感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示し、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0098】
[実施例3]
実施例1で得られたポリイミド前駆体(1)100質量部に対して、1,2−ナフトキノンジアジド−5-スルホン酸エステル(PA−6)(20質量部)、3’−ヒドロキシアセトアニリド(12.5質量部)、合成例1で得られたベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調整した。上記感光性樹脂組成物を1質量%炭酸ナトリウム水溶液でのアルカリ現像性の評価、タック性、焼成後の折り曲げ試験、難燃性試験、焼成後のフィルムの反り測定、ガラス転移温度測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量を下記表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0099】
[実施例4]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりに合成例2で得られたナフトオキサジン環含有ホスファゼン化合物(20質量部)を利用する以外は、実施例1同様にして評価を行った。ポリイミド前駆体組成物の重量平均分子量を下記表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0100】
[実施例5]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりに合成例2で得られたナフトオキサジン環含有ホスファゼン化合物(20質量部)を利用する以外は、実施例2同様にして評価を行った。ポリイミド前駆体組成物の重量平均分子量を下記表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0101】
[実施例6]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりに合成例2で得られたらナフトオキサジン環含有ホスファゼン化合物(20質量部)を利用する以外は、実施例3同様にして評価を行った。ポリイミド前駆体組成物の重量平均分子量を下記表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0102】
[比較例1]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりにフェノール性水酸基を有する環状フェノキシホスファゼン(大塚化学社製、製品名SPH−100、30質量部)を利用する以外は、実施例1同様にして評価を行った。
【0103】
[比較例2]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりにリン含有ベンゾオキサジン化合物(昭和高分子社製、製品名 HFB2006M 30質量部)を利用する以外は、実施例1同様にして評価を行った。ポリイミド前駆体組成物の重量平均分子量を表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0104】
[比較例3]
ベンゾオキサジン環含有ホスファゼン化合物(30質量部)の代わりにリン酸エステル化合物(大八化学社製、製品名 PX−200 30質量部))を利用する以外は、実施例1同様にして評価を行った。ポリイミド前駆体組成物の重量平均分子量を下記表1に示し、感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。また、感光性フィルムの評価結果を下記表3に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【0108】
表1〜表3の結果から、ポリイミド前駆体(実施例1〜実施例6)は比較例1〜比較例3と比較して、タック性、現像性、反り、折り曲げ試験、耐溶剤性、ハーフミル難燃性、耐絶縁信頼性が良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線用絶縁膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、並びに液晶配向膜等として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂前駆体と、感光剤と、下記式(1)で表される直鎖状フェノキシホスファゼン、及び下記一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれた少なくとも1つのホスファゼン化合物と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、mは3〜25の整数を示す。Rは置換基を有し若しくは有しないフェニル基、ナフチル基又はビスフェニレン基、炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のRのうち、少なくとも1つは下記式(2)で示されるオキサジン環を含有する。
【化2】

(式(2)中、Rはフェニル基、メチル基、又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。Xはエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。)
【化3】

(式(3)中、Yは基−N=P(AR、又は基−N=P(A)ARを示し、Zは基−P(AR、又は基−P(A)(ARを示す。Aはエーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、又はメチレン基を表す。nは3〜10000の整数を示す。Rは置換基を有し若しくは有しないフェニル基、ナフチル基又はビスフェニレン基、炭素数1〜炭素数10の脂肪族炭化水素基を示す。但し、2n個のRのうち、少なくとも1つは式(4)で示されるベンゾオキサジン環やナフトオキサジン環を有する。)
【化4】

(式(4)中、Rはフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示し、フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。Xは、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピル基、メチレン基を表す。)
【請求項2】
前記感光剤が、1分子中に2つ以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する化合物、及び光重合開始剤であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記感光剤がナフトキノンジアジド化合物であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物と、支持フィルム層とを含むことを特徴とする感光性フィルム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物をイミド化した構造であることを特徴とするカバーレイ。
【請求項6】
配線を有する基材上において、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物をイミド化した構造を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
片側全面にキャリアフィルムを有することを特徴とする請求項4に記載の感光性フィルム。
【請求項8】
カバーフィルムを具備することを特徴とする請求項4記載の感光性フィルム。
【請求項9】
請求項5に記載のカバーレイと銅張積層板とから構成されたことを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2011−227133(P2011−227133A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94058(P2010−94058)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】