説明

感光性着色組成物及びこれを用いたカラーフィルタ基板

【課題】露光感度、現像性、パターン断面形状が良好であり、かつ、オーバーコート層との密着性に優れたカラーフィルタ材料として好適な感光性着色組成物、及び該組成物を用いて形成されたカラーフィルタ基板を提供する。
【解決手段】赤色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数を4.0×10-4mol/g以上、2.0×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を35質量%未満、緑感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数を1.4×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を33質量%未満、青色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数を1.8×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を30質量%未満とし、この感光性着色組成物を用いてカラーフィルタを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置用カラーフィルタに用いられる着色層用感光性着色組成物、及びこれを用いたカラーフィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、一般に、カラーフィルタとTFTアレイ基板との間に液晶を封入して構成されるものである。カラー液晶表示装置、カラーファクシミリ、イメージセンサー等の各種カラー表示体や、光学機器等に搭載されるカラーフィルタは、透明基板を構造的支持体として備え、その画面観察者側には偏光膜が積層されている。また、その反対側(背面側)は多数の画素領域に区分されている。画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位には有機樹脂に黒色色材を分散させたブラックマトリクスが設けられ、画素領域のそれぞれには着色画素が配置されている。ブラックマトリクスは、コントラスト向上の目的で着色画素間に配設する。着色画素は、画素ごとに透過光を着色するもので、一般に、光の三原色に相当する赤色(R),緑色(G),青色(B)の三色の着色画素を配列している。なお、ブラックマトリクスは、これら各色に着色された透過光の混色を防止するものである。
【0003】
ここで、カラーフィルタとしては、顔料分散型カラーフィルタが広く用いられている。顔料分散型カラーフィルタの着色層及び遮光層の形成方法としては、分散剤、溶剤等を用いて、顔料を樹脂(アクリル樹脂等)中に分散させて得られる顔料組成物に、光重合性モノマーと重合開始剤を添加して感光化した感光性着色組成物を、基板上に塗布形成後、直接パターニングするフォトリソグラフィー法が広く用いられている。
【0004】
カラーフィルタの製造工程は、透明基板にブラックマトリックスのパターンを形成した後、着色画素を赤色、緑色、青色の順で入色していくが、この際、画素端部同士が重なることで画素中央部との段差(ツノ段差)が発生する。この表面の平坦性が悪化したカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、突起の影響によって液晶分子の配向が乱され、光漏れの原因となり液晶表示装置の表示品質を低下させることになる。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には、着色画素が形成されたカラーフィルタの上に、厚膜のポジ型感光性樹脂を用いて、突起の段差が高いカラーフィルタであっても表面平滑性の優れたオーバーコート層を形成する技術が開示されている。すなわち、感光性着色組成物で形成された着色画素の上に透明樹脂層を形成し、カラーフィルタ表面の段差を平坦化させる技術である。
【0006】
カラーフィルタに用いられるオーバーコート層は、カラーフィルタ層の平坦性の向上に加えて、耐熱性、耐湿性、耐薬品性等の向上、溶出物の防止(バリア性)等を目的として設けられている。オーバーコート層は、カルボキシル基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物を溶媒等に溶解したものをスピンコート法やダイコート法等の塗工方法を用いてコーティングした後、熱処理や光露光により架橋させて形成させる。このカルボキシル基を有する化合物は、加熱により、エポキシ基と架橋反応を行うことができるカルボキシル基を有する化合物であればよい。ところで、カルボキシル基とエポキシ基は反応性が高いので、製造工程で問題が生じることがある。このため、前記カルボキシル基がアルキルビニルエーテルによりブロックされた化合物を用いられることもある。
【0007】
しかしながら、従来の感光性着色組成物では、オーバーコート剤の溶剤に着色画素が膨潤する、あるいは、組成物中に顔料が多量に含まれることにより、オーバーコート層と着
色層との密着性が十分に確保出来ず、剥がれが生ずるという問題があった。こうした膨潤や剥がれは、より高い品質、高信頼性を求める液晶表示装置にはあってはならず、耐溶剤性と密着性の改善が求められている。
【特許文献1】特開2002−228826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、露光感度、現像性、パターン断面形状が良好であり、かつ、オーバーコート層との密着性に優れたカラーフィルタ材料として好適な感光性着色組成物、及び該組成物を用いて形成されたカラーフィルタ基板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、感光性着色組成物に一定量のウレタン基を導入し、かつ、顔料の含有量を規制する事により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む赤色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が4.0×10-4mol/g以上、2.0×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が35質量%未満であることを特徴とする赤色感光性着色組成物である。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む緑色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が1.4×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が33質量%未満であることを特徴とする緑色感光性着色組成物である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む青色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が1.8×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が30質量%未満であることを特徴とする青色感光性着色組成物である。
【0013】
次に、本発明の請求項4に係る発明は、透明基板上に、複数色のカラーフィルタ、該カラーフィルタ上のオーバーコートを有する構成のカラーフィルタ基板において、前記カラーフィルタが、請求項1〜3のいずれか1項に記載する感光性着色組成物を単独で、もしくは請求項1〜3に記載の感光性着色組成物を複数用いて形成したことを特徴とするカラーフィルタ基板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性着色組成物は、赤色感光性着色組成物については、固形分中のウレタン基数を4.0×10-4mol/g以上、2.0×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を35質量%未満、緑感光性着色組成物については、固形分中のウレタン基数を1.4×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を33質量%未満、青色感光性着色組成物については、固形分中のウレタン基数を1.8×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を30質量%未満とすることでオーバーコート層との密着性を向上できる。
【0015】
なお、赤色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が4.0×10-4mol/g未満、緑色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が1.4×10-4mol未満、青色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が1.8×10-4mol/g未満の場合は、オーバーコート層との密着性に十分な効果が得られず好ましくない。また、赤色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が2.0×10-3mol/g以上、緑色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が1.5×10-3mol以上、青色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数が1.5×10-3mol/g以上になると、アルカリ現像性が悪くなり、カラーフィルタの作製が困難となる。
【0016】
ウレタン基は、水酸基を持つ樹脂あるいはモノマーに、多官能イソシアネートを反応させることで得られる。本発明においては、感光性着色組成物の固形分中の総量として、上記規定量を導入することで、前記課題を解決するものである。
【0017】
また、本発明の感光性組成物において、固形分中の顔料の含有量が少ないほど効果が大きいため、赤色感光性着色組成物については35質量%以上、緑色感光性着色組成物については33質量%以上、青色感光性着色組成物については30質量%以上の場合には、塗膜中の顔料分が多いためにオーバーコート層との密着性を確保できず、ハガレが発生してしまう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の感光性着色組成物及びこれを用いたカラーフィルタを、一実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明の赤色、緑色、青色の各感光性着色組成物は、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)、分散剤及び溶剤(ホ)を含有する。以下、これらの各成分について説明する。
【0020】
[光重合性モノマー(イ)]
光重合性モノマーは、ラジカルにより重合が誘起されるモノマーのことであり、本発明の感光性着色組成物では、ウレタン基を導入するために、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレートを用いることができる。なお、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートとの組み合わせは任意であり、特に限定されるものではない。また、1種の多官能ウレタンアクリレートを単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
ここで、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。また、多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
また、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレートの他に、ラジカルにより重合が誘起されるモノマー(他の光重合性モノマー)を用いても良く、このような、他の光重合性モノマーとしては、水酸基を有するアクリレートとしてすでに挙げられているアクリレートや、カプロラクトン変性をしたアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
光重合性モノマーの含有量は、現像性、基板上に塗布し乾燥させた後のタック性、及び組成物の安定性の観点から、感光性組成物総量(含溶剤)の20質量%以下であることが好ましい。また、露光感度、得られるパターンの解像性及び耐溶剤性の観点から、光重合性モノマーの含有量は、1質量%以上であることが好ましい。
【0024】
[非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂(ロ)]
本発明の感光性着色組成物には、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂(ロ)が配合される。現在、環境問題の観点から、現像液として有機溶剤は殆ど使われなくなり、アルカリ現像液が主流となっているが、アルカリ現像液を用いる場合、感光性着色組成物にはアルカリ可溶型非感光性樹脂を含有させることが好ましい。
【0025】
ここで、アルカリ可溶型非感光性樹脂は、アルカリ現像液に溶解性を有すると共に、ラジカル架橋性を有しない樹脂のことを意味しており、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性官能基を有する、重量平均分子量1000〜50万、好ましくは5000〜10万の樹脂が挙げられる。具体的には、アクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中では、アクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。これらの中でも特にアクリル樹脂は、耐熱性及び透明性が高いことから好適に用いられる。
【0026】
また、感光性樹脂は、ラジカル架橋性を有する樹脂のことを意味しており、少なくとも1個のエチレン不飽和二重結合を有する重量平均分子量5000〜10万の樹脂を好適に用いることが出来る。ここで、本発明の感光性着色組成物にウレタン結合を導入するために、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適に用いることができる。感光性樹脂の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性官能基を有する線状高分子に、前記反応性官能基と反応可能なイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を有する(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。また、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性官能基を有する線状高分子に、前記反応性官能基と反応可能な水酸基、カルボキシル基、アミノ基等を有する(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合体やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体等の酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0027】
[顔料(ニ)]
本発明のカラーフィルタの赤、緑、青の各画素の着色層を形成する着色組成物に用いるこ
とのできる有機顔料の具体例をカラーインデックス番号で示す。
【0028】
赤色着色組成物に用いる赤色顔料としては、C.I. Pigment Red 254、7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、255、264、272、279等が挙げられる。赤色着色組成物には、黄色顔料、橙色顔料を併用することができる。
【0029】
黄色顔料としては、C.I. Pigment Yellow 150、PY138の他に、PY1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、139、144、146、147、148、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等が挙げられる。
【0030】
橙色顔料としてはC.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等が挙げられる。
【0031】
緑色着色組成物に用いる緑色顔料としては、C.I. Pigment Green 58の他にPG7、10、36、37等が挙げられる。
【0032】
青色着色組成物に用いる青色顔料としては、C.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80等が挙げられる。青色着色組成物には、紫色顔料を併用することができる。
【0033】
紫色顔料としては、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の紫色顔料があげられる。
【0034】
また、上記有機顔料と組み合わせて、彩度と明度のバランスを取りつつ、良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、無機顔料を組み合わせて用いることも可能である。無機顔料としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。さらに、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0035】
[分散剤]
本発明の感光性着色組成物には、顔料を分散させるための分散剤を含有することができる。分散剤としては、界面活性剤、顔料の中間体、染料の中間体、ソルスパース(商品名、ゼネカ(株)社製)等が使用される。分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、顔料の配合量を100として、1〜10質量%とすることが好ましい。
【0036】
[光重合開始剤(ハ)]
本発明の感光性着色組成物に好適に使用される光重合開始剤(ハ)としては、4−フェノ
キシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2.4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)4,6ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ-ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、o(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ-ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物ボレート系化合物、カルバソール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
光重合開始剤の使用量は、感光性着色組成物の全固形分量(溶剤以外の成分)を基準として,0.5〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜30質量%である。
【0038】
[光増感剤]
光重合開始剤と光増感剤とを併用することが好ましい。光増感剤としては、α−アシロキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン系化合物を用いることができる。これらの光増感剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
光増感剤の使用量は、光重合開始剤と光増感剤の合計量を基準として0.5〜60質量%が好ましく、より好ましくは3〜40質量%である。
【0040】
本発明の感光性着色組成物は、連鎖移動剤としての作用を有する多官能チオールを含有
することができる。
【0041】
多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロビオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。これらの多官能チオールは、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
多官能チオールの使用量は、感光性着色組成物の全固形分量を基準として0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。0.1質量%未満では多官能チオールの添加効果が不充分であり、30質量%を越えると感度が高すぎて逆に解像度が低下する。
【0043】
[溶剤(ホ)]
本発明の感光性着色組成物には、基板上への均一な塗布を可能とするために、水や有機溶剤等の溶剤が配合される。好適に使用される有機溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、モノマー組成、用いる重合開始剤の種類等に応じて、これらを単独でもしくは混合して用いることが出来る。
【0044】
次に、本発明の感光性着色組成物の調製方法について説明する。
【0045】
[感光性着色組成物の調製方法]
本発明の感光性着色組成物は、公知の方法により調製することが出来る。例えば、光重合性モノマー、感光性樹脂、重合開始剤、顔料、分散剤、及び溶剤からなる感光性組成物は、以下の方法により調製することができる。
【0046】
(1)光重合性モノマー、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂、光重合開始剤、あるいはこれらを溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を予め混合して調製した顔料組成物を添加して分散させた後、残りの成分を添加する。
【0047】
(2)光重合性モノマー、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂、光重合開始剤、あるいはこれらを溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を別々に添加して分散させた後、残りの成分を添加する。
【0048】
(3)光重合性モノマー、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂、光重合開始剤、あるいはこれらを溶剤に溶解した溶液に、顔料を分散させた後、顔料分散剤を添加し、残りの成分を添加する。
【0049】
(4)光重合性モノマー、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂、光重合開始剤、あるいはこれらを溶剤に溶解した溶液を2種類調製し、それぞれに顔料と分散剤を予め別々に分散させてから、これらを混合した後、残りの成分を添加する。なお、顔料と分散剤のうち一方は溶剤にのみ分散させても良い。
【0050】
ここで、光重合性モノマー、非感光性樹脂及び/又は感光性樹脂、光重合開始剤、あるいはこれらを溶剤に溶解した溶液への顔料や分散剤の分散は、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、アトライター等の各種分散装置を用いて行うことができる。また、分散を良好に行うために、各種界面活性剤を添加して分散を行っても良い。
【0051】
また、顔料と分散剤を予め混合して顔料組成物を調製する場合、粉末の顔料と粉末の分散剤を単に混合するだけでも良いが、(a)ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル等の各種粉砕機により機械的に混合する方法、(b)顔料を溶剤に分散させた後、分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に分散剤を吸着させる方法、(c)硫酸等の強い溶解力を有する溶媒に顔料と分散剤を共溶解した後、水等の貧溶媒を用いて共沈させる方法などの混合方法を採用することが好ましい。
【0052】
本発明者らは、以上説明した各成分を用いることにより、露光感度、現像性、耐薬品性、耐溶剤性が良好であり、かつオーバーコート層との密着性に優れたカラーフィルタ材料として好適な感光性着色組成物を提供できることを見出した。
【0053】
以下、本発明の感光性着色組成物を用いて作製されたカラーフィルタについて説明する。
【0054】
[カラーフィルタ]
本発明のカラーフィルタは、基板上に所定のパターンで配列した色の異なる複数の着色層と、隣接する着色層間を遮光する遮光層とを具備してなり、これら着色層と遮光層上には、オーバーコート層が形成される。そして、本発明のカラーフィルタは、着色層として、本発明の赤色、緑色または青色感光性着色組成物を少なくとも一つ用いて形成されているものである。
【0055】
以下、本発明の赤色、緑色または青色の感光性着色組成物を用いて、本発明のカラーフィルタの着色層、オーバーコート層を形成する方法について説明する。
【0056】
まず、遮光層であるブラックマトリクスが予め公知の方法により形成された透明基板上に、本発明の感光性着色組成物を、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート等により均一に塗布し、乾燥させる。この工程において形成される層のことを「感光性着色組成物層」と称す。用いる基板としては、透明基板が好適であり、具体的には、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンフタレート等の樹脂基板が好適に用いられる。
【0057】
次に、フォトリソグラフィー法により、形成した感光性着色組成物層をパターニングする。すなわち、感光性着色組成物層に、所定のパターンのフォトマスクを介して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して露光した後、有機溶剤やアルカリ水溶液等の現像液を用いて現像する。ここで、露光工程においては、活性エネルギー線が照射された部分の光重合性モノマーが重合し硬化する。また、感光性樹脂を含有する場合には、該樹脂も架橋し、硬化する。
【0058】
また、露光感度を向上させるために、感光性着色組成物層を形成した後、水溶性あるい
はアルカリ水溶性樹脂(例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等)の溶液を塗布し、乾燥させることにより、酸素による重合阻害を制御する膜を形成した後、露光を行っても良い。
【0059】
そして、現像工程においては、活性エネルギー線が照射されなかった部分を現像液により洗い流すことで所望のパターンが形成される。現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像液としてはメチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等の有機溶剤も使用可能であるが、環境安全面、人体に対する毒性、火災の危険性などの面から好ましくなく、アルカリ水溶液を現像液に用いるのが好ましい。一例をあげるならば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム、アンモニア水等の無機アルカリ水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液、ジエタノールアミン水溶液、トリエタノールアミン水溶液、コリン水溶液等の有機アルカリ水溶液等が挙げられる。
【0060】
アルカリの濃度は0.0001質量%から1.5質量%の範囲が好ましく、この範囲からはずれると、解像性の低下、フリンジの発生、地汚れ、レジストダメージ等が発生しやすくなる。また、アルカリ現像液にアニオン、カチオン、ノニオン、両性の界面活性剤を添加すると、地汚れや解像性等を向上させる効果があるため添加して使用するのが好ましい。特に、アニオン型およびノニオン型界面活性剤は効果が高いためより好ましい。界面活性剤の添加の好ましい範囲は0.0001質量%から2.0質量%である。添加量が少ないと効果がなく、また、多すぎても廃液処理等が困難となるため好ましくない。
【0061】
現像温度は15℃ から30℃の範囲が解像性、地汚れ、レジストダメージ、レジスト密着性の観点から好適である。現像後はすぐに水等によりリンスするのが好ましい。現像液がレジスト膜に残存したまま乾燥すると、むら、ピンホール、欠陥などが出易くなる。乾燥はエアーナイフやIRオーブン等により行える。最後に、現像により得たパターンを焼成することにより、基板上に、着色層、遮光層、を形成することができる。
【0062】
以上の一連の工程を、感光性着色組成物およびパターンを替え、必要な数だけ繰り返すことで必要な色数が組み合わされた着色パターンすなわち複数色の画素を得ることができる。
【0063】
最後に、オーバーコート層塗液をスピンコート法にて塗布し、90℃のホットプレートで3分、230℃のオーブンで30分乾燥させ、オーバーコート層を形成する。
【0064】
[オーバーコート材料]
本発明のカラーフィルタに適用可能なオーバーコート材料は、液晶パネル工程に耐え、透明性および耐熱性など信頼性を備えた有機材料であれば良い。市販の代表的なオーバーコート材料、例えば、JSR社製のオプトマーSS、日本油脂社製のノフキュアーOP、新日鐵化学社製のV−259PA、日本化薬社製のKAYADADなどが適用できる。
【0065】
オーバーコート材料として使用される光硬化性樹脂組成物は、少なくともアルカリ可溶性ポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)、光重合開始剤(C)からなり、必要に応じて公知の添加剤、溶剤を添加しても良い。
【0066】
ここで、アルカリ可溶性ポリマー(A)としては、特に制限はないが、アクリル系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂の例としては、分子中に少なくとも1個以上のカルボン酸を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸または(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水フタル酸などの酸無水物を付加させたものを含むアクリル共重合体が挙げられる。特に感度の面でアクリル酸、メタクリル酸を用いたものが好ましい。
【0067】
また、その他の特性を調整する為に、第3成分のコモノマーを用いて3元あるいはそれ以上の多元共重合体としてもよい。そのようなコモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ビニルアセテート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−ビニルピロリドン、プロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等が挙げられるが、この限りではなく、共重合可能であれば使用することができる。
【0068】
また、N−置換マレイミドと酸性官能基を有するモノマーを含む共重合体を使用しても良い。N−置換マレイミドとしてはシクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、n−ブチルマレイミド、ラウリルマイレミド等がある。中でも、シクロヘキシルマレイミドあるいはフェニルマレイミドが、基板との密着性、現像性等の点においても良好であることから特に好ましい。さらに、ノボラック系樹脂の例としては、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂等にアクリル酸等のカルボン酸含有化合物を付加させた後、酸価を持たせるために酸無水物を付加させた樹脂などが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0069】
エチレン性不飽和化合物(B)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。これらは、1種単独で、または、2種以上を併用することができる。
【0070】
光重合開始剤(C)としては、例えば、アセトフェノン、2,2'−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等の硫黄化合物、2 − エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシフェニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシナフチル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン類、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、その1種単独で、または、2種以上を併用することもできる。
【0071】
また、単独では光重合開始剤として機能しないが、上記化合物と組合せて使用することで光重合開始剤の能力を増大させる化合物を添加できる。そのような化合物としては、例えばベンゾフェノンと組合せて使用すると効果のあるトリエタノールアミン等の3級アミンを挙げられる。上記重合開始剤は、上述した感光性樹脂の100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。0.1質量部未満では、光重合の速度が遅くなって感度がよくなく、30質量部よりも多いと、基板等との密着性が低下するからである。
【0072】
また本発明でオーバーコート材として適用する組成物には、必要により、公知の溶剤や公知の添加剤、あるいはエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂などの熱硬化性樹脂を含有させてもよい。溶剤としては、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられるが必ずしもこれらに限定されるものではない。溶剤を使用する場合、溶剤の配合量(質量%)は、特に限定されないが、光硬化性樹脂組成物の固形分の質量に基づいて、50〜1,000%が好ましく、さらに好ましくは200〜800%である。その他、例えば、無機顔料、シランカップリング剤、染料、蛍光増白剤、黄変防止剤、酸化防止剤、消泡剤、消臭剤、芳香剤、殺菌剤、防菌剤及び防かび剤溶剤等を必要に応じて使用できる。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明の実施例と比較例について説明する。なお、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
まず、感光性着色組成物中にウレタン基を導入するために用いる、多官能ウレタンアクリレートを合成した。
【0075】
[「多官能アクリレート」合成例]
内容量が1リットルの5つ口反応容器に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)社製)623g、ヘキサメチレンジイソシアネート44gを仕込み、60℃で8時間反応させ、(メタ)アクリロイル基を有する多官能ウレタンアクリレートを含む生成物を得た。生成物中、多官能ウレタンアクリレートの占める割合は、45質量%であり、残部を他の光重合性モノマーで占めている。なお、IR分析(赤外分光分析)により反応生成物中にイソシアネート基が存在しないことを確認した。また、得られた多官能ウレタンアクリレートのウレタン当量は、611であることを確認した。
【0076】
ここで、用いた多官能ウレタンアクリレートのウレタン当量と添加量から、ウレタン基数を計算した。合成例で合成した多官能ウレタンアクリレートのウレタン等量が611であるので、レジスト固形分中のウレタン基数は、ウレタン基数=(多官能ウレタンアクリレートの添加量/多官能ウレタンアクリレートのウレタン当量)/レジストの固形分で算出される。例えば、以下に記述する実施例1の場合、レジスト固形分が14.3%、多官能ウレタンアクリレート(ウレタン当量:611)の添加量が3.8gなので、ウレタン基数は=(3.8/611)/14.3=4.35×10-4mol/gとなる。以下、実施例2、3、比較例1〜6についても同様に算出した。
【0077】
<実施例1>
下記の要領で、カラーフィルタの作製に用いる赤色感光性着色組成物を調製した。
(赤色顔料分散体の調整)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで5時間分させた後。5μmのフィルタで濾過し、赤色顔料分散体を調製した。
・赤色顔料:C.I. Pigment Red 254 12質量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガーフォーレッド B−CF」)
・分散剤 3質量部
(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 85質量部
[赤色感光性着色組成物の調整]
その後、光重合性モノマーとして、上記合成例で合成した多官能ウレタンアクリレー
トを含む下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過し、赤色感光性着色組成物を得た。
・上記赤色顔料分散体 38.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 20.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 3.8質量部
・光重合開始剤 0.6質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.2質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 37.4質量部
<実施例2>
以下の手順で、カラーフィルタの作製に用いる緑色感光性着色組成物を調製した。
(緑色顔料分散体の調整)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで5時間分させた後。5μmのフィルタで濾過し、緑色顔料分散体を調製した。
・緑色顔料:C.I. Pigment Green 36 12質量部
(東洋インキ製造社製「リオノールグリーン 6YK」)
・分散剤 3質量部
(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 85質量部
(黄色顔料分散体の調整)
上記と同様にして、黄色顔料分散体を調製した。
・黄色顔料:C.I. Pigment Yellow 150 12質量部
・分散剤 3質量部
(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 85質量部
[緑色感光性着色組成物の調整]
その後、光重合性モノマーとして、上記合成例で合成した多官能ウレタンアクリレー
トを含む下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過し、緑色感光性着色組成物を得た。
・上記緑色顔料分散体 29.0質量部
・上記黄色顔料分散体 9.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 25.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 2.0質量部
・光重合性モノマー 1.0質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.5質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.1質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 33.4質量部
<実施例3>
以下の手順で、カラーフィルタの作製に用いる青色感光性着色組成物を調製した。
(青色顔料分散体の調製)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで5時間分させた後。5μmのフィルタで濾過し、青色顔料分散体を調製した。
・青色顔料:C.I. Pigment Blue 15:6 12質量部
(BASF社製「ヘリオゲンブルー」)
・分散剤 3質量部
(味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 85質量部
[青色感光性着色組成物の調整]
その後、光重合性モノマーとして、上記合成例で合成した多官能ウレタンアクリレートを含む下記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過し、青色感光性着色組成物を得た。
・上記青色顔料分散体 33.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 25.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 1.7質量部
・光重合性モノマー 1.7質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.5質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.1質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 38.0質量部
<比較例1>
赤色感光性着色組成物における比較のため、実施例1と同様の方法で、下記組成の赤色感光性着色組成物を作製した。
・上記赤色顔料分散体 35.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 20.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 2.5質量部
・光重合性モノマー 1.0質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.6質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.2質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 40.7質量部
<比較例2>
また同様に、実施例1と同様の方法で、下記組成の赤色感光性着色組成物を作製した。
・上記赤色顔料分散体 42.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 15.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 3.4質量部
・光重合開始剤 0.6質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.2質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 38.8質量部
<比較例3>
緑色感光性着色組成物における比較のため、実施例2と同様の方法で、下記組成の緑色感
光性着色組成物を作製した。
・上記緑色顔料分散体 29.0質量部
・上記黄色顔料分散体 9.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 25.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 1.0質量部
・光重合性モノマー 2.4質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.5質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.1質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 33.0質量部
<比較例4>
また同様に、実施例2と同様の方法で、下記組成の緑色感光性着色組成物を作製した。
・上記緑色顔料分散体 34.8質量部
・上記黄色顔料分散体 10.8質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 20.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 2.0質量部
・光重合性モノマー 2.0質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.6質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.2質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 29.6質量部
<比較例5>
青色感光性着色組成物における比較のため、実施例3と同様の方法で、下記組成の青色感光性着色組成物を作製した。
・上記青色顔料分散体 33.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 25.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 1.0質量部
・光重合性モノマー 2.4質量部
(東亞合成社製「アロニックスM402」)
・光重合開始剤 0.5質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.1質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 38.0質量部
<比較例6>
また同様に、下記組成の青色感光性着色組成物を作製した。
・上記青色顔料分散体 40.0質量部
・アクリルワニス(固形分20質量%) 25.0質量部
・上記多官能ウレタンアクリレート 3.4質量部
・光重合開始剤 0.5質量部
(チバガイギー社製「イルガキュアー369」)
・光増感剤 0.1質量部
(保土ヶ谷化学社製「EAB−F」)
・シクロヘキサノン 31.0質量部
各実施例及び比較例において調整した各感光性着色組成物について、以下のようにして評価を行った。
【0078】
[オーバーコート密着性評価]
ガラス基板上に、得られたそれぞれの上記感光性着色組成物をスピンコート法により塗布した後、乾燥し、感光性着色組成物層を形成した。なお、スピンコート条件は、500rpm、5秒とした。次いでガラス基板を70℃に保持したホットプレート上に載置して、1分間仮焼成した。
【0079】
次に、100mJ/cm2の露光量で感光性着色組成物層を露光した。その後、1.25%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、230℃で1時間本焼成し、カラーフィルタ層を作製した。
【0080】
続いて、カラーフィルタ層が形成された上記各ガラス基板に、一般的に市販されている、JSR株式会社製熱硬化性オーバーコート材料JSS−727−S2をスピンコート法により塗布し、90℃で3分のプリベークを行い、膜厚2.0μmの塗布膜を形成した後、230℃で30分加熱処理を行なって、オーバーコート層が形成された試験片を得た。
【0081】
密着性評価は、得られた試験片について、JIS−K5400 6.15記載の碁盤目試験(クロスカットピール試験)に準じて剥離試験を行った。各評価基板表面にカッターナイフによって1mm間隔の碁盤目状の切り込みを入れ、隙間無く貼り付けた市販のセロファンテープを剥がした後、光学顕微鏡にて観察した。評価基準は、オーバーコート層の剥がれが全く無い場合を○、少しでも剥がれが見られた場合を×とした。
【0082】
[現像性、パターン断面形状]
ガラス基板上に、得られた感光性着色組成物をスピンコート法により塗布した後、乾燥し、感光性着色組成物層を形成した。なお、スピンコート条件は、500rpm、5秒とした。次いでガラス基板を70℃に保持したホットプレート上に載置して、1分間仮焼成した。
【0083】
次に、線幅0.5〜50μmのテスト用のフォトマスク(凸版印刷社製)を用い、100mJ/cm2の露光量で感光性着色組成物層を露光した。その後、1.25%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、水洗してパターニングを完了した。その後、230℃で1時間本焼成し、カラーフィルタ層を作製した。
【0084】
現像性については、未露光部に、残渣が全く確認されなかったものを〇、残渣が認められたものを×とした。パターン断面形状については、断面形状が順テーパーのものを〇、逆テーパーのものを×とした。
【0085】
<比較結果>
評価結果について、表1に実施例1〜3を、表2に比較例1及び2を、表3に比較例3及び4を、表4に比較例5及び6を示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

表1〜4に示した結果から、赤色感光性着色組成物の固形分中のウレタン基数を4.0×10-4mol/g以上、2.0×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を35
質量%未満、緑感光性着色組成物については、固形分中のウレタン基数を1.4×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を33質量%未満、青色感光性着色組成物については、固形分中のウレタン基数を1.8×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ、固形分中の顔料を30質量%未満とした場合に、現像性、パターン断面形状が良好で、かつオーバーコート層との密着性が良好なカラーフィルタ層が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む赤色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が4.0×10-4mol/g以上、2.0×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が35質量%未満であることを特徴とする赤色感光性着色組成物。
【請求項2】
光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む緑色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が1.4×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が33質量%未満であることを特徴とする緑色感光性着色組成物。
【請求項3】
光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)、光重合開始剤(ハ)、顔料(ニ)および溶剤(ホ)を成分として含む青色感光性着色組成物において、光重合性モノマー(イ)、非感光性樹脂および/又は感光性樹脂(ロ)がウレタン結合を含み、組成物の固形分中のウレタン基数が1.8×10-4mol/g以上、1.5×10-3mol/g以下、かつ固形分中の顔料の割合が30質量%未満であることを特徴とする青色感光性着色組成物。
【請求項4】
透明基板上に、複数色のカラーフィルタ、該カラーフィルタ上のオーバーコートを有する構成のカラーフィルタ基板において、
前記カラーフィルタが、請求項1〜3のいずれか1項に記載する感光性着色組成物を単独で、もしくは請求項1〜3に記載の感光性着色組成物を複数用いて形成したことを特徴とするカラーフィルタ基板。

【公開番号】特開2010−2569(P2010−2569A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160251(P2008−160251)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】