説明

感光性組成物及び感光性平版印刷版

【課題】本発明は、耐傷性と画質に優れた感光性組成物を提供することを課題とする。もう一つの課題としては、耐傷性、画質及び耐刷性に優れた感光性平版印刷版を提供する事である。
【解決手段】(1)平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する事を特徴とする感光性組成物。(2)支持体上に、平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する画像形成層を有する事を特徴とする感光性平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、感光性水溶性樹脂を使用したスクリーン用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。また、特に前記感光性組成物を用いた感光性平版印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物は、光反応(紫外光や可視光の照射)によって分子構造が化学変化を起こし、その結果、物理現象(物性)に変化が生じる。この光の作用による化学変化としては、架橋・重合・分解・解重合・官能基変換などがあり、溶解度・接着性・屈折率・物質浸透性及び相変化など多様である。このような感光性組成物は、印刷版、レジスト、塗料、コーティング剤、カラーフィルター等の広い分野で実用化されている。さらに、写真製版技術(フォトリソグラフィ)を用いるフォトレジスト分野で活用され、発展してきた。フォトレジストは、光反応による溶解度の変化を利用したもので、高解像度及び高作業性の要求が強まり、高作業性の確保の観点より感光性組成物に対しては、作業工程での欠陥の減少、例えば作業工程中に生じる、傷などによる損傷の低減の改善等が望まれる様になっている。
【0003】
この傷に対する問題を解決するため、例えば、特公昭52−41050号公報(特許文献1)に記載されているポリヒドロキシスチレンまたはヒドロキシスチレン共重合体の使用が提案されているが、形成されたパターンと支持体との接着性が低下する問題があった。また特開昭51−34711号公報(特許文献2)にはアクリル酸誘導体の構造単位を分子構造中に有する高分子化合物をバインダーとして用いることが提案されているが、かかる高分子化合物は適正な現像条件の範囲が狭くなる問題があった。この他にも種々の高分子化合物が、バインダーとして検討されてきたが、いずれも物理的強度及び化学的強度と現像性とのバランスに難点があり十分な対策ではなかった。
【0004】
一方、感光性平版印刷版の分野では、感光性組成物を感光性平版印刷版に適する画像形成層として用いる試みが行われてきた。例えば、支持体としてアルミニウム板を使用したネガ型感光性平版印刷版の場合は、支持体上に感光性組成物を塗布及び乾燥を行い感光性平版印刷版を作製し、活性光を照射露光し露光部を硬化させ、現像液により露光部を残し未露光部を溶解除去する事で親水性表面を露出させる。これにより、アルミニウム支持体上に、露光パターンに応じた形で、親油性表面を有する硬化した被膜を形成するものである。この様な平版印刷版は、例えば、感光性組成物として、ジアゾ樹脂に高分子化合物を組み合わせたもの等が広く用いられており、米沢輝彦著、「PS版概論」(印刷学会出版部発行)や、永松元太郎、乾英夫著、「感光性高分子」(講談社発行)、山岡亜夫、松永元太郎著、「フォトポリマーテクノロジー」(日刊工業発行)等に詳しく述べられている。
【0005】
近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、その様なデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用化される様になってきた。その結果レーザー光の様な指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、版下原稿を介す事なく、直接印刷版を製造するコンピューター・トゥ・プレート(CTP)技術が望まれ、光重合系組成物を用いた直描型CTPシステムが提案され、既に上市されている。
【0006】
これらの直描型CTPシステムの導入にあたり、これまで以上の高画質性、及び高作業性が求められる様になった。高作業性の根元としては、安定性、即ち製版条件、印刷条件の様々な変化に対して十分に対応し、安定した印刷ができる高耐刷力を兼ね備えた性能が必要となる。また作業効率の面からも製版作業のCTPシステム化に伴う自動製版システムに対応した性能が求められる様になってきている。
【0007】
上記直描型CTPシステムは一般商業印刷市場のみならず、新聞印刷市場への適用が期待されている。一般商業印刷と異なり、新聞印刷では短時間に多数の印刷版を出力する必要があることから、感光性平版印刷版を自動製版機に500枚程度の多数枚装填し、自動で製版処理を行う自動製版機が主流である。そして感光性平版印刷版は、通常メーカーから500版積載した専用架台で供給されている。この専用架台を運搬用トラックで輸送する際に、振動や慣性力の影響で積載されている感光性平版印刷版の版間のズレに伴い、画像形成層に傷が発生する場合があった。また傷の発生は輸送時のみならず、ユーザーが自動製版機中に専用架台を装着する際にも発生する場合があった。
【0008】
この問題に対して、版と版の間に合い紙(薄い紙、フィルム、ラミネイト加工した紙等のシート)を挟む、或いは、画像形成層の上にオーバー層を設ける等の対策が行われている。しかしながら、合い紙を使用する場合、露光前の合い紙除去工程でのトラブル等、作業上の問題及び産業廃棄物の増加の問題が発生する。又、画像形成層の上にオーバー層を設ける技術については、特開平6−324478号公報(特許文献3)等様々な技術が開示されているが、現像前にオーバー層を除去するプレ水洗工程が必要になる、オーバー層の存在により露光時に光の散乱等が起こり画質を低下させる問題があった。
【0009】
その他、合い紙、オーバー層を設けずに耐傷性を改善する方法として、特開昭57−34558号公報(特許文献4)に開示されている、画像形成層の表面に樹脂を溶解又は分散しスプレーする方法があるが、自動製版機内でマット剤が欠落し問題であった。その他、特開平11−295882号公報(特許文献5)記載の、画像形成層上にスルホン酸を有するモノマーを構成成分とする突起物を塗工又は散布し加熱して溶解し固着させる技術が開示されているが、加熱溶解し固着するマット化方法に用いられるマット剤は、加熱工程が画像形成層に悪影響がない程度の加熱で溶解するマット剤の使用に限定され、一般的に硬度の低いマット剤であり、圧力がかかるとマット剤が潰れ又は変形し十分満足できる効果が得られなかった。もしくは、潰れ変形しても効果を発揮する程の大きなマット剤を使用した場合、画質への影響が問題となる。その他にも、画像形成層に粒子を分散し表面をマット化する技術として、特開平11−109642号公報(特許文献6)に、0.5〜20μmのゴム弾性を有する粒子を添加する技術が開示されているが、これも余り大きなマット剤を使用する事は画質への影響が懸念されるばかりでなく、マット剤が欠落した場合、マット剤としての機能が低下するばかりでなく、自動給版装置による版の搬送不良の原因になり問題があった。
【0010】
作業性につながる、もう一方の性能である感光性平版印刷版としての耐刷性については、特開2001−290271号(特許文献7)に、側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーを感光層に使用することで、オーバー層を用いることなく、高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されている。しかしながら、スチレン性二重結合を有するポリマーを含む感光性組成物を使用した感光性平版印刷版の場合には、感光性組成物の力学的な性質として、堅いものの、脆くて柔軟性に欠けるという欠点を有している為、特にFMスクリーンでの印刷や300線を越える高精細印刷を行う場合、印刷条件に於いては、画像部の一部または周囲が欠落し、画像が細くなることによる、印刷物の濃度低下やインキの着肉不良という問題が発生し改良が望まれている。
【特許文献1】特公昭52−41050号公報
【特許文献2】特開昭51−34711号公報
【特許文献3】特開平06−324478号公報
【特許文献4】特開昭57−34558号公報
【特許文献5】特開平11−295882号公報
【特許文献6】特開平11−109642号公報
【特許文献7】特開2001−290271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、耐傷性と画質に優れた感光性組成物を提供することを課題とする。もう一つの課題としては、耐傷性、画質及び耐刷性に優れた感光性平版印刷版を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、この課題を解決するため研究を行った結果、下記(1)、(2)によって達成した。
(1)平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する事を特徴とする感光性組成物。
(2)支持体上に、平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する画像形成層を有する事を特徴とする感光性平版印刷版。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、耐傷性と画質に優れた感光性組成物を提供することができる。更には、耐傷性、画質及び耐刷性に優れた感光性平版印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物の画像形成層は、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維を含有する。本発明に使用される平均繊維径1μm以下のセルロース繊維とは、成分の90%以上がセルロースであり、電子顕微鏡で観察し、30箇所の繊維径を測定し平均した値を平均繊維径とし、その値が1μm以下であるセルロース繊維である。また、耐傷性の観点から平均繊維径の下限は0.05μmである。
【0015】
本発明に使用される平均繊維径1μm以下のセルロース繊維の作製方法に、特に制限はないが、例えば、原材料となるセルロース繊維としては、絹、綿、麻、パルプ、わら、水苔、ピートモス等、肉眼で繊維状であると認められるものの他、サトウキビや甜菜、各種果実の絞り粕等、繊維より構成されているものを用いても良い。また、発酵装置を用いて微生物を培養することにより得られるバクテリアセルロースや、ポリ乳酸を繊維状に加工したものを用い作製することができる。
【0016】
上記の様なセルロース繊維の平均繊維径を1μm以下とする方法としては、例えば、ボールミルや回転式ホモジナイザーといった湿式や乾式の各種裁断、粉砕、摩砕装置で好適な大きさとなるよう処理する他、塩酸や硫酸等の酸による加水分解やセルラーゼ等の酵素による分解によって調整したものも使用することができる。
【0017】
上記の様にして得られた平均繊維径1μm以下のセルロース繊維を感光性組成物に添加する方法としては、該セルロース繊維を水に分散し懸濁液を作製し、必要に応じて懸濁液の媒体をエタノールに順次置換し、最終的に90〜100質量%のエタノール懸濁液として脱水した後、所望の溶媒にエタノールに置換した時と同様にして順次置換し添加するのが好ましい。又、平均繊維径1μm以下のセルロース繊維の添加量は、感光性組成物の全固形分量に対して、0.05質量%〜50質量%添加することが好ましく、更に好ましくは、1質量%〜30質量%の範囲である。
【0018】
本発明の感光性組成物のバインダーは、紫外光や可視光の照射によって分子構造に化学変化を生じるものであり、代表的なポジ型感光性平版印刷版の感光性組成物としては、ノボラック樹脂を主成分としてキノンジアジドを感光成分として使用する事ができ、又、ネガ型感光性平版印刷版の組成物としては、ジアゾ樹脂や重合性二重結合有した樹脂を利用しする事ができる。中でも好ましく使用できるポリマーとしては、画像強度及び現像性のバランスを有するのに適した側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーが挙げられる。この側鎖に重合性二重結合を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーのカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0019】
上記のポリマー側鎖に重合性二重結合を導入する場合のモノマーとしては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、1−プロペニル−アクリレート、1−プロペニル−メタクリレート、β−フェニル−ビニル−メタクリレート、β−フェニル−ビニル−アクリレート、ビニルメタクリルアミド、ビニルアクリルアミド、α−クロロ−ビニル−メタクリレート、α−クロロ−ビニル−アクリレート、β−メトキシ−ビニル−メタクリレート、β−メトキシ−ビニル−アクリレート、ビニル−チオ−アクリレート、ビニル−チオ−メタクリレート等が挙げられる。
【0020】
本発明に特に好ましく用いられるポリマーとしては、重合性二重結合としてビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーが挙げられる。該ポリマーは、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため高感度化に有効であり、また、カルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有する事で現像性に優れる性能を示す。ビニル基が置換したフェニル基は、直接もしくは連結基を介して主鎖と結合したものであり、連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。また、前記フェニル基は置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記一般式で表される基を側鎖に有するものである。
【0021】
【化1】

【0022】
式中、Z1は連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は水素原子と置換可能な基または原子を表す。nは0または1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0023】
上記一般式について更に詳細に説明する。Z1の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記に示す基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。
【0024】
【化2】

【0025】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
上記一般式で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
上記一般式で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R1及びR2が水素原子でR3が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、Z1の連結基としては複素環を含むものが好ましく、k1は1または2であるものが好ましい。
【0031】
上記一般式で示される基を有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーの例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
本発明に係わるポリマーは、更に他のモノマーを共重合体成分として含んでも良い。他のモノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマー、が挙げられる。
【0038】
本発明に係わるポリマーの分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量として1000から100万の範囲にあることが好ましく、さらに5000から50万の範囲にあることが更に好ましい。
【0039】
本発明に好ましく使用される重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を使用することができる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載されるチタノセン化合物、特公平6−29285号公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール化合物、特開昭62−143044号公報等に記載されるホウ酸塩、及び、ジアリールヨードニウム塩、有機過酸化物等が挙げられ、本発明においては、これらの重合開始剤の中でも高い感度と高い耐刷性が得られる理由から、有機ホウ素塩が好ましく用いられる。特に好ましく用いられる有機ホウ素塩としては、下記一般式で示される有機ホウ素アニオンを有する化合物を用いることである。
【0040】
【化12】

【0041】
上記一般式において、R11、12、13及びR14は各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、12、13及びR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0042】
上記の有機ホウ素塩としては、上記一般式で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を以下に示す。
【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
画像形成層中に於ける有機ホウ素塩の割合については好ましい範囲が存在し、感光性組成物の全固形分量100質量部において該有機ホウ素塩は0.1質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0046】
本発明に使用でされる別の形態として、光酸発生剤の添加が挙げられる。光酸発生剤としては感光性組成物が活性光線の照射を受けた時に、酸を生成する化合物であって、例えば、ハロゲン置換アルカン等のハロゲン含有化合物類、オニウム塩類、及びスルホン化合物類、スルホン酸エステル類等が好ましいものとして挙げられ、本発明においては、高感度が得られる観点から、トリハロアルキル置換化合物が特に好ましい。
【0047】
更に、前記有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を併用することは好ましい形態の一つで、ここで言うトリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物でs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
【0048】
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
トリハロアルキル置換化合物を用いる場合に於いて、その感光性組成物中に於ける好ましい範囲が存在し、感光性組成物の全固形分量100質量部中に於ける割合として0.1質量部から50質量部の範囲で含まれることが好ましい。さらに、これらは前述した有機ホウ素塩とともに画像形成層中に含まれている場合において特に感度が向上するため好ましく、この場合有機ホウ素塩に対する割合としては、有機ホウ素塩1質量部に対してトリハロアルキル置換化合物は0.1質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
【0051】
本発明の好ましい形態として感光性組成物中に、重合性モノマーを含有するのが好ましい。これを組み合わせることによって更に高感度が実現でき、強固な画像を形成することができる。
【0052】
重合性モノマーとしては、重合性二重結合を有する重合性化合物が挙げられる。好ましい重合性モノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。
【0053】
或いは、上記の重合性化合物に代えてラジカル重合性を有するオリゴマーも好ましく使用され、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用されるが、これらも重合性二重結合を有する重合性化合物として同様に好ましく用いることができる。
【0054】
重合性モノマーとして、更に好ましい態様は、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上を有する重合性化合物が挙げられる。該化合物を使用した場合に於いて、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、高感度で強固な画像を作製する上で極めて好ましい。
【0055】
分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する重合性化合物は、代表的には下記一般式で表される。
【0056】
【化17】

【0057】
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は水素原子と置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
【0058】
更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R25)−、−C(O)−O−、−C(R26)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR25及びR26は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。
【0059】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0060】
上記一般式で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k2は2〜10の化合物が好ましい。以下に上記一般式で表される化合物の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0061】
【化18】

【0062】
【化19】

【0063】
【化20】

【0064】
上記のような重合性モノマーが、感光性組成物中に占める割合に関しては好ましい範囲が存在し、感光性組成物の全固形分量100質量部中において重合性モノマーは1質量部から60質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに5質量部から50質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0065】
本発明の感光性組成物に増感色素を添加することは好ましい。添加する増感色素としては、380〜1300nmの波長域において重合開始剤の分解を増感するものであり、種々のカチオン性色素、アニオン性色素及び電荷を有しない中性の色素としてメロシアニン、クマリン、キサンテン、チオキサンテン、アゾ色素等が使用できる。これらの内で特に好ましい例は、カチオン色素としてのシアニン、カルボシアニン、へミシアニン、メチン、ポリメチン、トリアリールメタン、インドリン、アジン、チアジン、キサンテン、オキサジン、アクリジン、ローダミン、及びアザメチン色素から選ばれる色素である。これらのカチオン性色素との組み合わせに於いては特に高感度でかつ保存性に優れるために好ましく使用される。さらには近年380〜410nmの範囲に発振波長を有するバイオレット半導体レーザーを搭載した出力機(プレートセッター)が開発されている。この出力機に対応する高感度である感光系としては増感色素としてピリリウム系化合物やチオピリリウム系化合物を含む系が好ましい。本発明に係わる好ましい増感色素の例を以下に示す。
【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
【化24】

【0070】
【化25】

【0071】
【化26】

【0072】
750nm以上の近赤外から赤外光の波長領域の光に感光性を持たせる系に於いて増感色素として特に好ましい例を以下に示す。
【0073】
【化27】

【0074】
【化28】

【0075】
上記のような増感色素と重合開始剤との量的な比率に於いて好ましい範囲が存在する。増感色素1質量部に対して重合開始剤は0.01質量部から100質量部の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは重合開始剤は0.1質量部から50質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0076】
本発明の感光性組成物中に着色剤を含有する事は好ましい形態の一つである。画像部の視認性を高める為に使用されるものであるが、更に好ましくは、セーフライト性向上の為に、可視光領域に吸収を有するものである。又、画質向上の為に、感光波長域の着色剤を含有する事も好ましい。これら着色剤の例としては、下記のような、無機顔料、有機顔料、色素などが挙げることができる。
【0077】
無機顔料としては、雲母状酸化鉄、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、二酸化チタン、被覆雲母、ストンチームクロメート、チタニウムイエロー、ジンククロロメート、モリブデン赤、酸化クロム、鉛酸カルシウム等が挙げられる。又、有機顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アンスロン顔料、キナクリドン顔料、アンスラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、インダスロン顔料、ピランスロン顔料等が挙げられる。又、色素としては、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素が挙げられる。
【0078】
上記顔料、色素は、単独で用いてもかまわないが、2種以上を併用して用いても良い。又、顔料は、ペイントコンディショナー、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー等の分散機で有機溶剤に分散した状態で感光性組成物に添加する事が好ましく、色素については有機溶剤に溶解した状態で添加することが好ましい。
【0079】
感光性組成物を構成する他の要素として重合禁止剤の添加も好ましく行うことができる。例えば、キノン系、フェノール系等の化合物が好ましく使用され、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、カテコール、t−ブチルカテコール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の化合物が好ましく用いられる。これらの重合禁止剤と先に述べた感光性組成物のバインダーとの好ましい割合は、感光性組成物のバインダー1質量部に対して0.0001から0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0080】
感光性組成物を、印刷版、レジスト、カラーフィルター等、紫外光や可視光の照射によってパターンを形成する用途に使用する場合に、現像液が好ましく用いられる。該現像液としては、pH8以上であれば、任意のアルカリ水溶液を使用することができる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム及び第3リン酸アンモニウム等の無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−アミノエチルプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩やケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
本発明に用いられる現像液にはその他の種々界面活性剤と併用することができ、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの併用する界面活性剤は、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0082】
本発明に用いられる現像液には、種々現像安定化剤を用いる事ができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩及びジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオン性ポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸又はアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0083】
本発明に用いられる現像液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であり、含有物にもよるが、通常、濃縮液:水=1:0〜1:10程度に濃縮する事ができる。又、容器としてはアルカリ性であることから、炭酸ガスを透過しない、しかも安全上輸送中に破損することのない材料を用いることが好ましく、通常ハードボトル、キュービテナー等の樹脂製容器が好ましく用いられる。
【0084】
本発明の感光性組成物を感光性平版印刷版の画像形成層として用いる場合の処理方法においては、露光後通常自動現像機で処理を行う。自動現像機は、一般に現像部と後処理部とからなり、印刷版を搬送する装置と、各処理液槽及びスプレー槽からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで組み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像及び後処理するものである。又、最近は現像液が満たされた現像槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて現像処理する方法が開発されており、この様な現像方法も本発明に好適に適用できる。この様な自動現像液においては、現像処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0085】
この様な組成の現像液で現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明の印刷版の後処理はこれらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理がリンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水性水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。この様な自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。この様な処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、印刷に用いられる。
【実施例1】
【0086】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の%は質量%を示す。
【0087】
<セルロース繊維1の作製>
脱葉し約50cmの長さに切りそろえた沖縄産サトウキビの茎をケインセパレーター(アムケイン社製)で処理した。得られたフレーク状の茎内部を、スクリュープレスで圧搾した後、10L用のオートクレーブに投入した。液比4、有効アルカリ添加率11〜14%となるように苛性ソーダを混合し、保持温度120℃、保持時間30分の条件で蒸解した。ろ過による洗浄後、試料濃度8%、有効塩素濃度2%となるように次亜塩素酸ソーダを加えて攪拌し、室温で8時間漂白した後、ろ過により洗浄した。得られたセルロース繊維を1%の懸濁液とし、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を500kg/cm2の圧力で4分間循環処理した。得られたセルロース繊維の懸濁液の媒体をエタノールに順次置換し、固形分濃度が1%で溶媒の99%がエタノールである懸濁液とした後、1,3−ジオキソランに順次置換し最終的に固形分濃度が1%で溶媒の98%が1,3−ジオキソランである懸濁液、セルロース繊維1を得た。
【0088】
<セルロース繊維2の作製>
サトウダイコンの絞り粕であるビートパルプから微細セルロース繊維を抽出、精製し前記と同様にスクリュープレスで圧搾した後、10L用のオートクレーブに投入し、苛性ソーダを混合し、保持温度130℃、保持時間30分の条件で蒸解した。ろ過による洗浄後、次亜塩素酸ソーダを加えて攪拌し、室温で10時間漂白した後、ろ過により洗浄した。得られたセルロース繊維を1%の懸濁液とした後、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を500kg/cm2の圧力で4分間循環処理した。得られたセルロース繊維の懸濁液の媒体をエタノールに順次置換し、固形分濃度が1%で溶媒の99%がエタノールである懸濁液とした後、1,3−ジオキソランに順次置換し最終的に固形分濃度が1%で溶媒の98%が1,3−ジオキソランである懸濁液、セルロース繊維2を得た。
【0089】
<セルロース繊維3の作製>
沖縄県内の製糖工場にて排出される、粉砕したサトウキビ茎の搾汁粕であるバガスを、前記と同様にスクリュープレスで圧搾した後、10L用のオートクレーブに投入し、苛性ソーダを混合し、保持温度130℃、保持時間60分の条件で蒸解した。ろ過による洗浄後、次亜塩素酸ソーダを加えて攪拌し、室温で10時間漂白した後、ろ過により洗浄した。得られたセルロース繊維を1%の懸濁液とした後、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)を用いて、1Lの懸濁液を500kg/cm2の圧力で20分間循環処理した。得られたセルロース繊維の懸濁液の媒体をエタノールに順次置換し、固形分濃度が1%で溶媒の99%がエタノールである懸濁液とした後、1,3−ジオキソランに順次置換し最終的に固形分濃度が1%で溶媒の98%が1,3−ジオキソランである懸濁液、セルロース繊維3を得た。
【0090】
<セルロース繊維4の作製>
広葉樹由来の木材チップをクラフト法によりパルプ化した広葉樹晒しクラフトパルプを作製し、ギャップを0.02mmに設定したシングルディスクリファイナー(熊谷理機工業社製)に3回通過させセルロース繊維懸濁液を作製した。得られたセルロース繊維の懸濁液の媒体をエタノールに順次置換し、固形分濃度が1%で溶媒の99%がエタノールである懸濁液とした後、1,3−ジオキソランに順次置換し最終的に固形分濃度が1%で溶媒の98%が1,3−ジオキソランである懸濁液、セルロース繊維4を得た。
【0091】
前記の様に作製したセルロース繊維1〜4の懸濁液を2−メチル−2−プロパノールに順次置換して最終的に99%の2−メチル−2−プロパノール懸濁液にした後、凍結乾燥した。乾燥試料に金をスパッタリング蒸着し、走査型電子顕微鏡で観察し、30箇所の繊維径を測定し平均した値を平均繊維径とした。その結果、セルロース繊維1は、平均繊維径0.3μm以下の繊維及びそれらの繊維が絡み合った網目構造が観察された。又セルロース繊維2についても同様に観察すると、平均繊維径1μmの微細セルロース繊維が観察されされた。しかし、セルロース繊維3については、表皮部分に由来すると思われる繊維径5μm以上の残渣が認められ平均繊維径3μmのセルロース繊維が得られていることが判った。又、セルロース繊維4については、一部に繊維径1μm以下の繊維が確認されたが、ほとんどは10μm以上の太さの繊維で平均繊維径9μmであった。
【0092】
ポリマーとして特開2001−290271号公報に記載された方法を参考にして、クロロメチルスチレンとビスムチオールを等モル反応させて得たモノマーとアクリル酸をトリエチルアミンで中和してエタノール中で重合を行い、重合終了後クロロメチルスチレンを付加することにより合成した化7(P−1)を使用し、下記処方による感光性組成物の塗布液を作製した後、ワイヤドクターコーターで厚みが1mmの銅張り積層板上に、乾燥膜厚が4μmになるよう塗布し、90℃の温風で乾燥させ、感光性組成物が塗布されたサンプル1〜12を作製した。サンプル内容は表1記載する。
【0093】
<感光性組成物の塗布液>
重合性ポリマー
(P−1)10%ジオキサン溶液 300質量部
重合開始剤
(BC−5) 4質量部
(T−4) 2質量部
重合性化合物
(C−5) 15質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10質量部
増感色素
(S−37) 1質量部
重合禁止剤
2,6−ジ−t−ブチルクレゾール 0.2質量部
着色剤
銅フタロシアンニ顔料(青色顔料)
25%メチルエチルケトン溶液 10質量部
セルロース繊維
下記表1に記載の種類及び添加量(質量部)
溶媒
1,3−ジオキソラン 70質量部
シクロヘキサノン 20質量部
【0094】
【表1】

【0095】
上記の様にして作製したサンプル1〜12について、HEIDON−18型連続加重式引掻試験機を使用し、針先1000μmの針を装着し、針先とサンプルの画像形成層との接触角度を60°とし、10g〜100gまで10gおきに加重をかけて引っ掻いた時の傷の入り始める加重で評価した(傷が入らなかった場合100g以上と記載)。この結果を耐傷性試験として表2に示す。
【0096】
同様にして作製したサンプルを、タングステンランプを光源とする感光計を使用し、780nm以下の光をカットする干渉フィルターを通し、50mJ/cm2の露光が与えられる様に露光量を調整し、10μm細線画像を露光した後、下記現像液を使用して現像処理30℃の液温で20秒間処理し水洗後乾燥した。
【0097】
<現像液>
N−エチルエタノールアミン 30g
リン酸(85%溶液) 10g
水酸化テトラメチルアンモニウム(25%溶液) 24g
水酸化カリウム 5.5g
アルキルナフタレンスルホン酸Na(35%溶液) 30g
ジエチレントリアミン5酢酸 1g
水で 1L
【0098】
上記の様にして作製したサンプルの画像が、明瞭に再現できているか、画像のエッジ部がシャープに再現できているか観察し下記評価基準で画質の評価を行い、この結果を画質試験1として表2に示した。
【0099】
○:画像のエッジ部がシャープに形成され、細線画像が均一且つ明瞭に再現している。
△:細線画像は途切れる事なく明瞭に再現しているが、エッジ部の均一性が若干低い。
×:画像のエッジ部に凹凸が見られ不均一な細線画像である。
【0100】
【表2】

【0101】
上記結果より、本発明の感光性組成物は、露光前のサンプルの耐傷性に優れ、得られた画像が高画質であることが判る。サンプルNo.10及び12の画質試験1の評価が△であるが、実質上許容できるレベルである。
【実施例2】
【0102】
実施例1と同様にして作製した感光性組成物の塗布液を、ワイヤドクターコーターで厚みが0.30mmである砂目立て処理及び陽極酸化処理を施したアルミ板上に乾燥膜厚が2.5μmになるよう塗布し、90℃の温風で乾燥させ、画像形成層を有する感光性平版印刷版であるサンプル13〜24を作製した。サンプル内容は表3に記載する。
【0103】
【表3】

【0104】
上記の様にして作製したサンプル13〜24を実施例1の耐傷性試験と同様に、耐傷性を引っ掻いた時の傷の入り始める加重で評価した。結果を表4に示す。
【0105】
前記の様に作製したサンプル13〜24を830nm半導体レーザーを搭載したプレートセッター、CREO社製Trendsette 800II Quantumを使用して、ドラム回転速度360rpm解像度2400dpi/100線、FMスクリーンStaccato20、レーザー照射エネルギー100mJ/cm2の条件で1%〜50%まで10%刻みの網画像露光を行った。露光後に自動現像機として大日本スクリーン製造株式会社製PS版用自動現像機P−1310Tを使用し、下記現像液を使用して28℃の液温で15秒間処理を行い、続いて下記処方のガム液を塗布した。
【0106】
<現像液>
N−エチルエタノールアミン 30g
リン酸(85%溶液) 10g
水酸化カリウム 25g
20%珪酸カリ水溶液(SiO2を20%含む) 50g
アルキルナフタレンスルホン酸Na(35%溶液) 30g
ジエチレントリアミン5酢酸 1g
水で 1L
<ガム液>
リン酸1カリ 5g
アラビアガム 25g
デヒドロ酢酸 0.5g
EDTA2Na 1g
水で 1L
【0107】
現像処理後のサンプル13〜24について、網点ドットのエッジ部のシャープさ及び均一性を観察し下記評価基準で画質の評価を行い、その結果を画質試験2として、表4に示した。
【0108】
○:画像のエッジ部がシャープで均一な網画像を形成している。
△:画像のエッジ部に若干の乱れが見られる部分はあるものの全体的には均一に再現性されている。
×:画像のエッジ部に凹凸が見られ不均一な網画像を形成している。
【0109】
耐刷性の評価は、印刷機はハイデルベルグTOK(Haidelberg社製オフセット印刷機の商標)を使用し、版胴と版の間に0.1mmのゲージフィルムを挟み印刷時の圧力を高くした状態で使用し、インキはBEST ONE墨N(T&KTOKA(株)社製)、湿し水はアストロマークIII(株式会社日研化学研究所社製湿し水)の0.5%水溶液を使用し、画像部が欠落し印刷ができなくなった枚数で評価した。その結果を耐刷試験として、表4に示した。
【0110】
○:20万枚以上
△:15〜20万枚
×:15万枚未満
【0111】
【表4】

【0112】
上記結果より、本発明の感光性平版印刷版が、耐傷性に優れ且つ画質及び耐刷性に優れていることが判る。
【0113】
実施例1及び2の結果より本発明の感光性組成物は、耐傷性と画質に優れていることが判る。また、本発明の感光性平版印刷版は、耐傷性、画質及び耐刷性に優れた感光性平版印刷版であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する事を特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
支持体上に、平均繊維径1μm以下であるセルロース繊維を含有する画像形成層を有する事を特徴とする感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2008−216748(P2008−216748A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55481(P2007−55481)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】