説明

感放射線性樹脂組成物

【課題】良好な感度などを有する感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】酸解離性基含有樹脂、下記一般式:M(Mはオニウムカチオン、Zは下記一般式(1−1)または(1−2)で表されるアニオン)で表される感放射線性酸発生剤、及び下記一般式(c1)で表される化合物を含有する感放射線性樹脂組成物。


(R〜Rはフッ素原子置換の炭素数1〜20のアルキル基など、Aは単結合など、R及びRは炭素数1〜25の炭化水素基などである)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線などの各種の放射線による微細加工に適した化学増幅型レジストとして使用される感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。このような要求に伴い、露光波長の短波長化が検討されている。具体的には、従来は露光波長としてg線を用いていたが、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光などが露光波長として使用されてきている。そして、現在では、エキシマレーザー光以外に、電子線やX線、或いはEUV光を用いたリソグラフィーの開発が進んでいる。
【0003】
EUV光を用いたリソグラフィーは、次世代または次々世代のパターン形成技術として期待され、露光波長としてEUV光を用いることが可能であり、高感度かつ高解像性のポジ型レジストの開発が望まれている。
【0004】
ポジ型レジストの高感度化は、ウェハー処理時間の短縮化を達成するために非常に重要な課題である。しかし、EUV用のポジ型レジストにおいて、高感度化を達成しようとすると、解像力が低下することに加え、ナノエッジラフネスが悪化してしまう。そのため、これらの特性を全て満たすレジストの開発が切望されている。
【0005】
なお、ナノエッジラフネスとは、レジストのパターンと基板界面のエッジがレジストの特性に起因して、ライン部の延びる方向と垂直な方向に不規則に変動するため、レジストパターンを真上から見たときに生じるずれ(即ち、設計寸法と実際のパターン寸法の差)のことである。
【0006】
このずれが生じると、レジストをマスクとして用いたエッチング工程(転写工程)において、ずれも同時に転写されてしまう。そして、このようなずれは、電気特性を劣化させるため、ずれの発生の頻度が高いと歩留りを低下させることになる。特に、EUV光は、32nm以下の超微細領域のリソグラフィーで使用されるため、微細なずれであっても電気特性を劣化させる原因になる。そのため、ナノエッジラフネスを向上させることは極めて重要な課題となっている。
【0007】
ここで、上述したように高感度化とナノエッジラフネスの向上(即ち、良好なパターン形状を得ること)は、トレードオフの関係にあり、このような関係にある上記性能の全てを満足させるかことが非常に重要な課題になっている。
【0008】
そこで、上記課題を解決するため、特に高感度化を達成するために、感放射線性酸発生剤から発生した酸を触媒として、酸を発生する酸増殖剤を配合することが報告されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−35665号公報
【特許文献2】特開2008−96743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1または2に記載の感放射線性樹脂組成物であっても、未だ感度は十分ではなく、ウェハー処理時間が長いという問題があった。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、良好な感度を有する(即ち、ウェハー処理時間が短い)ことに加え、解像度に優れるレジスト被膜を形成可能であり、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができる感放射線性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、以下の感放射線性樹脂組成物が提供される。
【0013】
[1](A)酸解離性基を有する繰り返し単位を含む樹脂と、(B)下記一般式(b1)で表される感放射線性酸発生剤と、(C)下記一般式(c1)で表される化合物と、を含有する感放射線性樹脂組成物。
(b1)
(前記一般式(b1)中、Mは1価のオニウムカチオンであり、Zは下記一般式(1−1)または(1−2)で表される一価のアニオンである。)
【0014】
【化1】

(前記一般式(1−1)中、R及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R及びRが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成している。前記一般式(1−2)中、R、R、及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R、R、及びRのいずれか2つが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成しており、残りの1つが、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基である。)
【0015】
【化2】

(前記一般式(c1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の炭化水素基である。Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。)
【0016】
【化3】

【0017】
[2]前記一般式(c1)で表される化合物が、下記一般式(c1−1)で表される化合物である前記[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0018】
【化4】

(前記一般式(c1−1)中、Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。)
【0019】
[3]前記一般式(b1)中のMが、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンである前記[1]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0020】
[4]前記(A)樹脂に含有される前記酸解離性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(a−1)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(a−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物。
【0021】
【化5】

(前記一般式(a−1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各Rは、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0022】
【化6】

(前記一般式(a−2)中、R10は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各R11は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのR11が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0023】
[5]前記(A)樹脂は、下記一般式(a−3)、下記一般式(a−4)、及び、下記一般式(a−5)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する前記[4]に記載の感放射線性樹脂組成物。
【0024】
【化7】

(前記一般式(a−3)中、R12は、水素原子またはメチル基であり、R13は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。kは0〜3の整数であり、lは0〜3の整数である。)
【0025】
【化8】

(前記一般式(a−4)中、R14は、水素原子またはメチル基であり、R15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。nは1〜3の整数であり、mは0〜3の整数である。)
【0026】
【化9】

(前記一般式(a−5)中、R16は、水素原子またはメチル基であり、R17は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。pは1〜3の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【発明の効果】
【0027】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、良好な感度を有することに加え、解像度に優れたレジスト被膜を形成可能であり、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ライン・アンド・スペースパターンを模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示すA−A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0030】
[1]感放射線性樹脂組成物:
本発明の感放射線性樹脂組成物は、(A)酸解離性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(以下、「樹脂(A)」と記す場合がある)と、(B)下記一般式(b1)で表される感放射線性酸発生剤(以下、「酸発生剤(B)」と記す場合がある)と、(C)下記一般式(c1)で表される化合物(以下、「酸増殖剤(C)」と記す場合がある)と、を含有するものである。上記構成の感放射線性樹脂組成物によれば、良好な感度を有することに加え、解像度に優れたレジスト被膜を形成可能であり、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができる。即ち、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線に有効に感応し、感度に優れる。また、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成可能な化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜することができものである。なお、感度が良好であると、ウェハーの処理時間が短くてよいという利点がある。
【0031】
[1−1]樹脂(A):
(A)酸解離性基を有する繰り返し単位を含む樹脂は、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性のものであり、酸の作用によりアルカリ易溶性となる樹脂である。ここで、本明細書において「アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性」とは、樹脂(A)を含有する感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト被膜からレジストパターンを形成する際に採用されるアルカリ現像条件下で、上記レジスト被膜の代わりに樹脂(A)のみを用いた膜厚100nmの被膜を現像した場合に、上記レジスト被膜の初期膜厚の50%以上が現像後に残存する性質を意味する。
【0032】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、このような樹脂(A)を含有しているため、リソグラフィープロセスにおいて、電子線または極紫外線に有効に感応し、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成することができる化学増幅型ポジ型レジスト被膜が成膜可能である。
【0033】
樹脂(A)中の酸解離性基を有する繰り返し単位は、酸の作用によって酸解離性基が解離するものである。この繰り返し単位は、上記作用を有するものである限り特に制限はないが、下記一般式(a−1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−1)」と記す場合がある)、及び、下記一般式(a−2)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−2)」と記す場合がある)の少なくともいずれかであることが好ましい。酸解離性基を有する繰り返し単位として、繰り返し単位(a−1)及び繰り返し単位(a−2)の少なくともいずれかを用いることによって、良好な感度を有するレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0034】
【化10】

(上記一般式(a−1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各Rは、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0035】
【化11】

(上記一般式(a−2)中、R10は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各R11は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのR11が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【0036】
一般式(a−1)のRの炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタンや、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類等に由来する脂環族環からなる基;これらの脂環族環からなる基を、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基の1種以上或いは1個以上で置換した基等を挙げることができる。
【0037】
一般式(a−1)のRの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
【0038】
いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体としては、例えば、ノルボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、アダマンタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンに由来する脂環族環からなる基や、これらの脂環族環からなる基を上記アルキル基で置換した基等を挙げることができる。
【0039】
次に、一般式(a−2)のR11の炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、一般式(a−1)のRの炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基と同様のものを例示することができる。また、一般式(a−2)のR11の炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、一般式(a−1)のRの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基と同様のものを例示することができる。更に、いずれか2つのR11が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体としては、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに形成される2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体と同様のものを例示することができる。
【0040】
一般式(a−1)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(a−1−1)〜(a−1−7)で表される繰り返し単位が好ましく、下記一般式(a−1−2)、(a−1−3)、または(a−1−4)で表される繰り返し単位が更に好ましい。これらの繰り返し単位であると、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0041】
【化12】

(上記一般式(a−1−1)〜(a−1−7)中、R18は、相互に独立に、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基であり、R19は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0042】
また、一般式(a−2)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(a−2−1)で表される繰り返し単位が好ましい。このような繰り返し単位であると、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0043】
【化13】

(上記一般式(a−2−1)中、R20は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基であり、R21は、相互に独立に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基である。)
【0044】
なお、樹脂(A)は、上記各繰り返し単位を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
樹脂(A)は、一般式(a−1)で表される繰り返し単位及び一般式(a−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかに加えて、下記一般式(a−3)、下記一般式(a−4)、及び、下記一般式(a−5)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有することが好ましい。
【0046】
【化14】

(上記一般式(a−3)中、R12は、水素原子またはメチル基であり、R13は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。kは0〜3の整数であり、lは0〜3の整数である。)
【0047】
【化15】

(上記一般式(a−4)中、R14は、水素原子またはメチル基であり、R15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。nは1〜3の整数であり、mは0〜3の整数である。)
【0048】
【化16】

(上記一般式(a−5)中、R16は、水素原子またはメチル基であり、R17は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。pは1〜3の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【0049】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−3)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0050】
一般式(a−3)のR13の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。これらの中でも、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるため、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0051】
一般式(a−3)のR13の炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等を挙げることができる。これらの中でも、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるため、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0052】
一般式(a−3)のkは、0〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、lは、0〜3の整数であり、0〜2であることが好ましい。
【0053】
繰り返し単位(a−3)としては、具体的には、下記式(a−3−1)〜(a−3−4)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−3)で表される繰り返し単位は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
【化17】

【0055】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位は、対応するヒドロキシスチレン誘導体を単量体として用いることにより得ることができる。また、加水分解することにより、ヒドロキシスチレン誘導体が得られる化合物を単量体として用いることにより得ることもできる。
【0056】
一般式(a−3)で表される繰り返し単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシ)スチレン、p−イソプロペニルフェノール等を挙げることができる。なお、p−アセトキシスチレンを用いた場合には、重合反応後、側鎖の加水分解反応を行うことにより、式(a−3)で表される繰り返し単位を生成する。
【0057】
一般式(a−4)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−4)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0058】
一般式(a−4)R15の、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、それぞれ、上述した一般式(a−3)のR13の、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基と同様のものを例示することができる。
【0059】
一般式(a−4)のnは、1〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、mは、0〜3の整数であり、0または1であることが好ましい。
【0060】
繰り返し単位(a−4)としては、具体的には、下記式(a−4−1)、(a−4−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−4)で表される繰り返し単位は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
【化18】

【0062】
一般式(a−4)で表される繰り返し単位は、対応する単量体を用いることにより得ることができる。一般式(a−4)で表される繰り返し単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、4−ヒドロキシフェニルアクリレート、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0063】
一般式(a−5)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−5)」と記す場合がある)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0064】
一般式(a−5)中のR17の、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、及び、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基としては、それぞれ、上述した一般式(a−3)のR13の、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基及び炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基と同様のものを例示することができる。
【0065】
一般式(a−5)のpは、1〜3の整数であり、1または2であることが好ましい。また、qは、0〜3の整数であり、0または1であることが好ましい。
【0066】
繰り返し単位(a−5)としては、具体的には、下記式(a−5−1)、(a−5−2)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。なお、一般式(a−5)で表される繰り返し単位は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
【化19】

【0068】
一般式(a−5)で表される繰り返し単位は、対応する単量体を用いることにより得ることができる。一般式(a−5)で表される繰り返し単位を生成するために用いられる単量体としては、例えば、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等を挙げることができる。
【0069】
なお、樹脂(A)は、上述した一般式(a−1)〜(a−5)で表される各繰り返し単位以外に、非酸解離性化合物に由来する繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(a−6)」と記す場合がある)を更に含有していてもよい。繰り返し単位(a−6)を含有することによって、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができるという利点がある。
【0070】
非酸解離性化合物は、酸の作用によっても解離する基(酸解離性基)を含有しない化合物である。繰り返し単位(a−6)を生成するための非酸解離性化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、イソボロニルアクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデセニル(メタ)アクリレート、下記式(a−6−1)で表される化合物等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、トリシクロデカニルアクリレート、下記式(a−6−1)で表される化合物が好ましい。なお、繰り返し単位(a−6)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0071】
【化20】

【0072】
樹脂(A)中の繰り返し単位(a−1)の含有割合は、樹脂(A)中の全繰り返し単位100モル%に対して、1モル%以上であることが好ましく、20〜70モル%であることが更に好ましく、20〜60モル%であることが特に好ましい。上記含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、上記含有量が20モル%以上である場合には、優れたナノエッジラフネスを発揮するレジストパターンを形成することができる。
【0073】
樹脂(A)中の繰り返し単位(a−2)の含有割合は、樹脂(A)中の全繰り返し単位100モル%に対して、1モル%以上であることが好ましく、20〜70モル%であることが更に好ましく、20〜60モル%であることが特に好ましい。上記含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、上記含有量が20モル%以上である場合には、優れたナノエッジラフネスのレジストパターンを形成することができる。
【0074】
樹脂(A)中の繰り返し単位(a−3)〜(a−5)の合計の含有割合は、樹脂(A)中の全繰り返し単位100モル%に対して、1モル%以上であることが好ましく、10〜95モル%であることが更に好ましく、40〜80モル%であることが特に好ましい。上記合計の含有割合が1モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。なお、95モル%超である場合には、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。
【0075】
樹脂(A)中の繰り返し単位(a−1)〜(a−5)の合計の含有割合は、樹脂(A)中の全繰り返し単位100モル%に対して、10モル%以上であることが好ましく、40〜100モル%であることが更に好ましく、50〜100モル%であることが特に好ましい。上記合計の含有割合の合計が10モル%未満であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。また、10モル%以上である場合には、優れたナノエッジラフネスのレジストパターンを形成することができる。
【0076】
樹脂(A)中の繰り返し単位(a−6)の含有割合は、樹脂(A)中の全繰り返し単位100モル%に対して、60モル%以下であることが好ましく、0〜50モル%であることが更に好ましい。60モル%以下である場合には、解像性能とナノエッジラフネスとの性能のバランスに優れたレジストパターンを形成することができる。また、上記含有割合が60モル%超であると、ナノエッジラフネスが悪化するおそれがある。
【0077】
樹脂(A)の合成方法は特に限定されないが、例えば、公知のラジカル重合またはアニオン重合により得ることができる。また、上述した繰り返し単位(a−3)〜(a−5)における側鎖のヒドロキシスチレン単位は、得られた樹脂(A)を有機溶媒中で塩基または酸の存在下でアセトキシ基等の加水分解を行うことにより得ることができる。
【0078】
ラジカル重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下において、上述した繰り返し単位(a−1)及び(a−2)の少なくともいずれかを生成するための単量体、並びに、必要に応じて繰り返し単位(a−3)〜(a−6)を生成するための単量体を攪拌し、加熱することにより行うことができる。
【0079】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)2,2’−アゾビスメチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、シアノメチルエチルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルプロピオン酸メチル)、2,2’−アゾビスシアノバレリック酸等のアゾ化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、過酸化水素等を挙げることができる。
【0080】
なお、上記重合の際には、必要に応じて、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、ヨウ素、メルカプタン、スチレンダイマー等の重合助剤を添加することもできる。
【0081】
ラジカル重合における反応温度は特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができるが、例えば、50〜200℃とすることができる。特に、アゾ系開始剤やパーオキサイド系開始剤を用いる場合には、開始剤の半減期が10分から30時間程度になる温度が好ましく、開始剤の半減期が30分から10時間程度になる温度であることが更に好ましい。
【0082】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費される反応時間が好ましく、多くの場合0.5〜24時間程度である。
【0083】
アニオン重合は、例えば、窒素雰囲気下、適当な有機溶媒中で、アニオン重合開始剤の存在下において、上述した繰り返し単位(a−1)及び(a−2)の少なくともいずれかを与える単量体、並びに、必要に応じて繰り返し単位(a−3)〜(a−6)を与える単量体を攪拌し、所定の温度で維持することにより行うことができる。
【0084】
アニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等の有機アルカリ金属を挙げることができる。
【0085】
アニオン重合における反応温度は特に限定されず、開始剤の種類等により適宜設定することができる。特に、アルキルリチウムを開始剤として用いる場合には、−100〜50℃であることが好ましく、−78〜30℃であることが好ましい。
【0086】
また、反応時間は、開始剤の種類や反応温度により異なるが、開始剤が50%以上消費される反応時間が好ましく、多くの場合0.5〜24時間程度である。
【0087】
なお、樹脂(A)の合成において、重合開始剤を用いずに、加熱により重合反応を行うことや、カチオン重合を採用することもできる。
【0088】
また、樹脂(A)の側鎖を加水分解することによってヒドロキシスチレン単位を導入する場合、上記加水分解反応に用いることのできる酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸及びその水和物、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、マロン酸、蓚酸、1,1,1−フルオロ酢酸などの有機酸;硫酸、塩酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;ピリジニウムp−トルエンスルホネート、アンモニウムp−トルエンスルホネート、4−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート等を挙げることができる。
【0089】
また、塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、N−メチル−2−ピロリドン、ピペリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩基等を挙げることができる。
【0090】
上記重合及び上記加水分解に用いることのできる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ブロモホルム、塩化メチレン、臭化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類等を挙げることができる。
【0091】
これらの中でも、アセトン、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0092】
樹脂(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と記す場合がある)は、3000〜100000であることが好ましく、3000〜40000であることが更に好ましく、3000〜25000であることが特に好ましい。
【0093】
また、樹脂(A)のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と記す場合がある)との比(Mw/Mn)は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることが更に好ましく、1〜2.5であることが特に好ましい。
【0094】
[1−2]酸発生剤(B):
酸発生剤(B)は、下記一般式(b1)で表されるものであり、リソグラフィープロセスにおいて電子線や放射線等が照射されると、酸を発生する物質である。この酸発生剤(B)から発生した酸は、感放射線性樹脂組成物に含有される樹脂(A)中の酸解離性基を解離させて(即ち、保護基を脱離させて)、樹脂(A)の一部をアルカリ可溶性とする。アルカリ可溶性となった樹脂(A)の一部は、アルカリ現像液などによって容易に除去することができるため、ポジ型のレジストパターンを容易に形成することができる。
【0095】
(b1)
(上記一般式(b1)中、Mは1価のオニウムカチオンであり、Zは下記一般式(1−1)または(1−2)で表される一価のアニオンである。)
【0096】
【化21】

(上記一般式(1−1)中、R及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R及びRが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成している。上記一般式(1−2)中、R、R、及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R、R、及びRのいずれか2つが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成しており、残りの1つが、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基である。)
【0097】
一般式(b1)中のMは、1価のオニウムカチオンである限り特に制限はなく、例えば、O、S、Se、N、P、As、Sb、Cl、Br、I等のオニウムカチオンを挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得るために、S、Iのオニウムカチオン、即ち、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましい。
【0098】
で表される1価のオニウムカチオンの具体例としては、下記一般式(3)、(4)で表されるものなどを挙げることができる。
【0099】
【化22】

【0100】
【化23】

【0101】
一般式(3)中、R22、R23、及びR24は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R22、R23、及びR24のいずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環状構造を形成しており、残りの1つが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基である。
【0102】
一般式(4)中、R25及びR26は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、或いは、R25及びR26が相互に結合して式中のヨウ素原子とともに環状構造を形成している。
【0103】
で表される1価のオニウムカチオンの部分は、例えば、Advances in Polymer Sciences,Vol.62,p.1−48(1984)に記載されている公知の方法に準じて製造することができる。1価のオニウムカチオンの具体例としては、下記式(5−1)〜(5−71)で表されるスルホニウムカチオン、下記式(6−1)〜(6−41)で表されるヨードニウムカチオン等を挙げることができる。
【0104】
【化24】

【0105】
【化25】

【0106】
【化26】

【0107】
【化27】

【0108】
【化28】

【0109】
【化29】

【0110】
【化30】

【0111】
【化31】

【0112】
【化32】

【0113】
【化33】

【0114】
【化34】

【0115】
【化35】

【0116】
【化36】

【0117】
【化37】

【0118】
【化38】

【0119】
上述した1価のオニウムカチオンの中でも、式(5−1)、式(5−2)、式(5−6)、式(5−8)、式(5−13)、式(5−19)、式(5−25)、式(5−27)、式(5−29)、式(5−30)、式(5−31)、式(5−51)、式(5−54)式(5−62)、式(5−63)、式(5−64)、式(5−65)、式(5−66)、式(5−67)、式(5−68)、式(5−69)、式(5−70)、式(5−71)で表されるスルホニウムカチオン;式(6−1)、式(6−11)、式(6−40)、式(6−41)で表されるヨードニウムカチオンが好ましく、これらのカチオンであると、良好な感度を有するため好ましい。
【0120】
また、Zは、一般式(1−1)または(1−2)で表される一価のアニオンであり、一般式(1−1)または(1−2)中、R〜Rの、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、ナノフルオロブチル基、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基、オクタフルオロブチレン基などを挙げることができる。
【0121】
酸発生剤(B)の具体例としては、例えば、下記式(7−1)〜(7−9)で表される化合物などを挙げることができる。これらの中でも、良好なナノエッジラフネスを得るためには、式(7−1)、(7−2)、(7−4)、(7−5)、(7−6)、(7−7)で表される化合物が好ましい。
【0122】
【化39】

【0123】
【化40】

【0124】
【化41】

【0125】
酸発生剤(B)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜40質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることが更に好ましい。上記含有量が0.1質量部未満であると、感度及び現像性が低下するおそれがある。一方、40質量部超であると、放射線に対する透明性、パターン形状、耐熱性等が低下するおそれがある。
【0126】
[1−3]酸増殖剤(C):
酸増殖剤(C)は、一般式(c1)で表される化合物であり、酸の作用により連鎖反応的に酸を発生する化合物である。別言すると、酸増殖剤(C)は、一次的に発生した(存在する)酸の作用により分解されて、その一時的に発生した酸より更に多くの酸を二次的に発生し、全体としてより多くの(上述した一時的に発生した酸より多くの)酸を発生させることが可能な化合物である。
【0127】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記酸増殖剤(C)を含有することによって、形成したレジスト被膜中の、放射線が照射された部分(露光部分)の全体に渡って大量の酸が発生する。このように露光部分に大量に酸が発生することによって、露光部分中の樹脂(A)の酸解離性基が均一に解離することになる。そのため、形成されるレジスト被膜は、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができる。
【0128】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上述した所定の酸発生剤(B)と酸増殖剤(C)を含有することによって、これらの作用が相俟って優れた感度を有するレジスト被膜を形成することができる。更に、解像度に優れたレジスト被膜を形成可能である。そのため、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することができる。
【0129】
【化42】

(上記一般式(c1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の炭化水素基である。Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。)
【0130】
【化43】

【0131】
一般式(c1)中、Aは、上述したように、単結合、式(2−1)、式(2−2)、または式(2−3)で表される基であり、更に良好な感度を得る(即ち、酸増殖剤(C)が酸の作用によって容易に分解される)ためには、単結合または上記一般式(2−1)で表される基が好ましく、単結合であることが更に好ましい。
【0132】
一般式(c1)中のRは、上述したように、水素原子または炭素数1〜25の炭化水素基であり、更に良好な感度を得るためには、水素原子であることが好ましい。
【0133】
一般式(c1)中のRの炭素数1〜25の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等の炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等の炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基等を挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得るためには、水素原子、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、水素原子、t−ブチル基が好ましい。
【0134】
一般式(c1)中のRのフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基等を挙げることができる。脂肪族基としては、鎖状または環状(架橋炭素環状を含む)のアルキル基、鎖状または環状(架橋炭素環状を含む)のアルケニル基などを挙げることができる。脂肪族基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、1〜8であることが更に好ましい。芳香族基としては、単環構造であってもよいし、多環構造であってもよく、具体的には、アリール基、アリールアルキル基などを挙げることができる。
【0135】
脂肪族基及び芳香族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アシル基、ヘキシル基、ビニル基、プロピル基、アリール基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ビシクロ炭化水素基、トリシクロ炭化水素基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチル基、ナフチルメチル基及びそれらの置換体を挙げることができる。置換体としては、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基を挙げることができる。
【0136】
複素環基としては、単環構造であってもよいし、多環構造であってもよく、従来公知の各種の複素環化合物から誘導されるものなどを挙げることができる。具体的には、各種の複素環化合物に由来する1価の基、例えば、フラン、ピロール、ベンゾフラン、インドール、カルバゾール等の1つのヘテロ原子を含む五員環化合物とその縮合環化合物、オキサゾール、ピラゾール等の2つのヘテロ原子を含む五員環化合物とその縮合環化合物、ピラン、ピロン、クマリン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン等の1つのヘテロ原子を含む六員環化合物とその縮合環化合物、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、フタルジン等の2つのヘテロ原子を含む六員環化合物とその縮合環化合物等を挙げることができる。
【0137】
酸増殖剤(C)は、ジオール化合物に、スルホン酸のハロゲン化物を反応させることによって合成することができる。上記ジオール化合物としては、シス、トランスの2つの異性体があるが、シス異性体の方が熱的により安定であるため好適に用いることができる。なお、酸増殖剤(C)は、酸が共存しない限り安定に保存することができる。
【0138】
一般式(c1)で表される化合物(酸増殖剤(C))としては、上述した一般式(c1−1)で表される化合物であることが好ましい。このような化合物であると、特に良好な感度を得ることができる。また、熱的に安定であるという利点がある。
【0139】
酸増殖剤(C)としては、具体的には、下記式(8−1)〜(8−11)で表される化合物等を挙げることができる。これらの中でも、更に良好な感度を得るためには、式(8−1)、(8−4)、(8−8)、(8−9)、(8−10)、(8−11)で表される化合物が好ましい。
【0140】
【化44】

【0141】
【化45】

【0142】
酸増殖剤(C)の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、5〜25質量部であることが更に好ましく、5〜20質量部であることが特に好ましい。上記含有量が30質量部超であると、形成したレジスト被膜の感度や露光部の現像性が低下するおそれがある。なお、5質量部未満である場合、感度が十分には向上されないおそれがある。
【0143】
[1−4]酸拡散制御剤(D):
本発明の感放射線性樹脂組成物は、酸拡散制御剤(D)を更に含有することが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光により酸発生剤(B)から生じる酸の、レジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する作用を有する成分である。
【0144】
このような酸拡散制御剤(D)を含有させることにより、得られる感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上する。また、形成したレジスト被膜の解像度が更に向上するとともに、露光後、加熱処理を行うまでの引き置き時間(PED)の変動に起因するレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0145】
酸拡散制御剤(D)としては、例えば、含窒素有機化合物または感光性塩基性化合物を挙げることができる。
【0146】
上記含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(9)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」という)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」という)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」という)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
【0147】
【化46】

【0148】
一般式(9)中、R27は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基である。
【0149】
含窒素化合物(i)としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジ(シクロ)アルキルアミン類;
【0150】
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のトリ(シクロ)アルキルアミン類;トリエタノールアミン等の置換アルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン、2,4,6−トリ−tert−ブチル−N−メチルアニリン、N−フェニルジエタノールアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン等の芳香族アミン類を挙げることができる。
【0151】
含窒素化合物(ii)としては、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等を挙げることができる。
【0152】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0153】
アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−オクチルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−ノニルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジ−n−デシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−2−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、(S)−(−)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、(R)−(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−2−ピロリジンメタノール、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン、
【0154】
N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−1−アダマンチルアミン、N,N−ジ−t−ブトキシカルボニル−N−メチル−1−アダマンチルアミン、N−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−t−ブトキシカルボニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,8−ジアミノオクタン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,9−ジアミノノナン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,10−ジアミノデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−1,12−ジアミノドデカン、N,N’−ジ−t−ブトキシカルボニル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−メチルベンズイミダゾール、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾール等のN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物のほか、
【0155】
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等を挙げることができる。
【0156】
ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0157】
含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、2−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、4−ヒドロキシキノリン、8−オキシキノリン、アクリジン、2,2’:6’,2”−ターピリジン等のピリジン類;ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のピペラジン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を好適例として挙げることができる。
【0158】
感光性塩基性化合物は、露光領域において中性の断片に効率よく分解するとともに、未露光部では分解せずにそのまま残る感光性の成分である。このような感光性塩基性化合物は、非感光性の塩基性化合物に比べて、露光部分(即ち、露光領域)に発生する酸を有効活用することができるため、感度を更に向上させることができる。
【0159】
感光性塩基性化合物としては、上記性質を有する限り、特に制限されないが、例えば、下記一般式(10−1)、(10−2)で表される化合物などを挙げることができる。
【0160】
【化47】

【0161】
上記一般式(10−1)中、R28〜R30は、相互に独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換されていてもよい脂環式炭化水素基であり、Aは、OH、R31−、R31COOである(但し、R31は1価の有機基である)。また、上記一般式(10−2)中、R32及びR33は、相互に独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換されていてもよい脂環式炭化水素基であり、Aは、OH、R34、R34COOである(但し、R34は1価の有機基である)。
【0162】
28〜R30、R32及びR33の置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、メトキシ基、t−ブトキシ基、t−ブトキシカルボニルメチルオキシ基等を挙げることができる。これらの中でも、水素原子、tert−ブチル基が好ましい。
【0163】
28〜R30、R32及びR33の置換されていてもよい脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などを挙げることができる。
【0164】
また、R31及びR34の1価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基などを挙げることができる。
【0165】
上記Aとしては、OH、CHCOO、下記式(11−1)〜(11−5)で表される化合物が好ましい。
【0166】
【化48】

【0167】
感光性塩基性化合物としては、具体的には、トリフェニルスルホニウム化合物(上記一般式(10−1)で表される化合物)であって、そのアニオン部(A)がOH、CHCOO、式(11−2)で表される化合物、式(11−3)で表される化合物、式(11−4)で表される化合物が好ましい。
【0168】
なお、上記酸拡散制御剤(D)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0169】
酸拡散制御剤(D)の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部であることが更に好ましく、0.005〜5質量部であることが特に好ましい。上記配合量が15質量部超であると、形成したレジスト被膜の感度や露光部の現像性が低下するおそれがある。なお、0.001質量部未満であると、プロセス条件によっては、形成したレジスト被膜のパターン形状や寸法忠実度が低下するおそれがある。
【0170】
[1−5]その他の成分:
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上述した樹脂(A)、酸発生剤(B)、酸増殖剤(C)及び酸拡散制御剤(D)以外に、その他の成分として、溶剤や各種の添加剤を更に配合することができ、上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、増感剤、脂肪族添加剤、染料、顔料、接着助剤、アルカリ可溶性重合体、酸解離性の保護基を有する低分子のアルカリ溶解性制御剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0171】
溶剤としては、直鎖状若しくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類、及びγ−ブチロラクトン等よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0172】
溶剤の配合量は、感放射線性樹脂組成物の全固形分濃度が、1〜70質量%となる量であることが好ましく、1〜15質量%となる量であることが更に好ましく、1〜10質量%となる量であることが特に好ましい。上記配合量が1質量%未満であると、粘度が高すぎるため、塗工が困難になるおそれがある。一方、70質量%超であると、十分な厚さのレジスト被膜を形成することが困難になるおそれがある。
【0173】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する作用を示す成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤のほか、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(共栄社化学社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F173(大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
界面活性剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましい。
【0175】
増感剤は、放射線のエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを酸発生剤(B)に伝達して酸の生成量を増加させる作用を有するものであり、感放射線性樹脂組成物のみかけの感度を向上させる効果を有するものである。
【0176】
このような増感剤としては、例えば、カルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等を挙げることができる。なお、これらの増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0177】
増感剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0178】
脂環族添加剤は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を更に改善する作用を有する成分である。
【0179】
このような脂環族添加剤としては、例えば、1−アダマンタンカルボン酸、2−アダマンタノン、1−アダマンタンカルボン酸t−ブチル、1−アダマンタンカルボン酸t−ブトキシカルボニルメチル、1−アダマンタンカルボン酸α−ブチロラクトンエステル、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジ−t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブチル、1−アダマンタン酢酸t−ブトキシカルボニルメチル、1,3−アダマンタンジ酢酸ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(アダマンチルカルボニルオキシ)ヘキサン等のアダマンタン誘導体類;
【0180】
デオキシコール酸t−ブチル、デオキシコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、デオキシコール酸2−エトキシエチル、デオキシコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、デオキシコール酸3−オキソシクロヘキシル、デオキシコール酸テトラヒドロピラニル、デオキシコール酸メバロノラクトンエステル等のデオキシコール酸エステル類;リトコール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブトキシカルボニルメチル、リトコール酸2−エトキシエチル、リトコール酸2−シクロヘキシルオキシエチル、リトコール酸3−オキソシクロヘキシル、リトコール酸テトラヒドロピラニル、リトコール酸メバロノラクトンエステル等のリトコール酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジn−ブチル、アジピン酸ジt−ブチル等のアルキルカルボン酸エステル類や、3−〔2−ヒドロキシ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)エチル〕テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン等を挙げることができる。
【0181】
なお、これらの脂環族添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
脂環族添加剤の配合量は、樹脂(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましい。上記配合量が20質量部超であると、形成したレジスト被膜の耐熱性が低下するおそれがある。
【0183】
染料、顔料は、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和することができるものである。また、接着助剤は、レジスト被膜と基板との接着性を改善するためのものである。
【0184】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、例えば、上述した樹脂(A)、酸発生剤(B)、酸増殖剤(C)、酸拡散制御剤(D)、及び、その他の成分(溶剤を除く)を溶剤と混合し、溶剤に均一に溶解して調製することができる。このとき、全固形分濃度が上記範囲となるように調節することが好ましい。そして、このように調製した後、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することが好ましい。
【0185】
[2]感放射線性樹脂組成物の使用方法:
本発明の感放射線性樹脂組成物は、化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜可能な材料として有用である。そして、この化学増幅型ポジ型レジスト被膜は、所望の形状のパターン(ポジ型のレジストパターン)を形成することができるものである。具体的には、上記化学増幅型ポジ型レジスト被膜は、露光されると、含有する酸発生剤(B)から酸が発生し、発生した酸の作用によって、樹脂(A)中の酸解離性基が脱離するため、この樹脂(A)がアルカリ可溶性となる。そのため、レジスト被膜にアルカリ可溶性部位が生じ、このアルカリ可溶性部位をアルカリ現像液によって溶解、除去することによって所望の形状のレジストパターンが形成されたレジスト被膜を得ることができる。以下、更に具体的に説明する。
【0186】
本発明の感放射線性樹脂組成物を用いてレジストパターンを形成するには、まず、本発明の感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布することよってレジスト被膜を形成する。感放射線性樹脂組成物としては、例えば、上述したように、全固形分濃度を調整した後、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過したものを用いることができる。基板としては、例えば、シリコンウエハー、アルミニウムで被覆されたウェハー等を用いることができる。感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができ、具体的には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0187】
その後、場合によっては70〜160℃程度の温度で加熱処理(以下、「PB」という)を行ってもよい。
【0188】
次に、所定のレジストパターンが形成されるように、このレジスト被膜を露光する。この露光に使用することができる放射線としては、例えば、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、EUV(極紫外線、波長13.5nm等)等の(極)遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線等を挙げることができる。また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。なお、この露光においては、液浸露光とすることもできる。
【0189】
なお、露光後には、加熱処理(以下、「PEB」という)を行うことが好ましい。このPEBにより、樹脂(A)中の酸解離性基の脱離を更に円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜170℃であることが更に好ましい。
【0190】
本発明においては、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、特公平6−12452号公報(特開昭59−93448号公報)等に開示されているように、基板上に有機系または無機系の反射防止膜を形成することもできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されているように、レジスト被膜上に保護膜を設けることもできる。なお、これらの技術は併用することができる。
【0191】
次に、露光されたレジスト被膜を現像する。このように現像することによって、所定のレジストパターンを得ることができる。現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液が好ましい。
【0192】
アルカリ性水溶液の濃度は、10質量%以下であることが好ましい。アルカリ性水溶液の濃度が10質量%超であると、非露光部も現像液に溶解するおそれがある。また、現像液は、具体的には、pH8〜14であることが好ましく、pH9〜14であることが更に好ましい。
【0193】
上記現像液には、例えば、有機溶媒を添加することもできる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0194】
有機溶媒の配合量は、アルカリ性水溶液100体積部に対して、100体積部以下であることが好ましい。上記配合量が100体積部超であると、現像性が低下して、露光部の現像残りが多くなるおそれがある。また、現像液には、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0195】
なお、アルカリ性水溶液からなる現像液によって現像した後は、水で洗浄して乾燥することもできる。
【実施例】
【0196】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0197】
[Mw,Mn及び分散度(Mw/Mn)の測定]:
Mw及びMnの測定は、東ソー社製の「GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、G4000HXL1本)」を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶剤としてテトラヒドロフラン、カラム温度を40℃とする分析条件で行い、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、上記測定結果より算出した。
【0198】
13C−NMR分析]:
13C−NMR分析は、日本電子社製の型式「JNM−EX270」を用いた。
【0199】
[感度(L/S)]:
露光量を変化させながら、ライン部と隣り合うライン部によって形成されるスペース部(即ち、溝部)からなるレジストパターン(いわゆる、ライン・アンド・スペースパターン(1L1S))を形成した。このとき、ライン部とスペース部の線幅を1対1(具体的には、線幅150nmのライン部と線幅150nmのスペース部)とするような露光量を最適露光量とし、この最適露光量を、感度の基準として評価した。
【0200】
図1は、ライン・アンド・スペースパターンを上方から見た際の模式的な平面図である。また、図2は、図1に示すA−A’断面を模式的に示す断面図である。但し、図1及び図2で示す凹凸は、実際より誇張して描いている。
【0201】
[ナノエッジラフネス]:
設計線幅150nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を形成し、その後、ライン・アンド・スペースパターンのライン部を半導体用走査電子顕微鏡(高分解能FEB測長装置、商品名「S−9220」、日立製作所社製)にて観察し、ライン部の横側面のうち、最も突出した凸部分の高さを測定した。具体的には、図1及び図2に示すように、シリコンウエハー1上に形成したレジスト被膜のライン部2の横側面2aに生じた最も著しい凸部分における線幅(図1中、「X」で示す)と、設計線幅150nmとの差(図1及び図2に示す「ΔCD」)を、CD−SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、「S−9220」)にて測定した。この測定値をナノエッジラフネスの評価値とした。
【0202】
[解像度(L/S)]:
上記[感度(L/S)]の評価で形成したライン・アンド・スペースパターンのライン部の線幅のうち、最小の線幅(nm)を解像度の評価値とした。
【0203】
(合成例1)樹脂(A−1)の合成:
p−アセトキシスチレン56g、下記式(M−1)で表される化合物(単量体)44g、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という)4g、及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン35g及び水7gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。
【0204】
【化49】

【0205】
得られた共重合体は、Mwが11000、Mw/Mnが2.0、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレン及び化合物(M−1)に由来する各繰り返し単位の含有比(モル比)が65:35の共重合体であった。以下、この共重合体を、樹脂(A−1)とする。
【0206】
(合成例2)樹脂(A−2)の合成:
p−アセトキシスチレン55g、下記式(M−2)で表される化合物(単量体)45g、AIBN4g及びt−ドデシルメルカプタン1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル100gに溶解した後、窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間重合させた。重合後、反応溶液を1000gのn−ヘキサン中に滴下して、生成共重合体を凝固精製した。次いで、この共重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル150gを加えた後、更に、メタノール150g、トリエチルアミン34g及び水6gを加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応後、溶剤及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた共重合体をアセトン150gに溶解した後、2000gの水中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下50℃で一晩乾燥した。
【0207】
【化50】

【0208】
得られた共重合体は、Mwが10000、Mw/Mnが2.1、13C−NMR分析の結果、p−ヒドロキシスチレンと化合物(M−2)に由来する各繰り返し単位の含有比(モル比)が65:35の共重合体であった。以下、この共重合体を、樹脂(A−2)とする。
【0209】
なお、実施例及び比較例に用いた各成分(酸発生剤(B)、酸増殖剤(C)、酸拡散制御剤(D)、及び溶剤(E))の詳細を以下に示す。
【0210】
酸発生剤(B)としては、以下に示す各式(B−1)〜(B−5)で表される化合物を用いた。
【0211】
【化51】

【0212】
酸増殖剤(C)としては、以下に示す各式(C−1)〜(C−5)で表される化合物を用いた。
【0213】
【化52】

【0214】
酸拡散制御剤(D)としては、トリ−n−オクチルアミン(表1中、「D−1」と示す)を用いた。
【0215】
溶剤(E)としては、乳酸エチル(表1中、「E−1」と示す)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表1中、「E−2」と示す)を用いた。
【0216】
(実施例1)
樹脂(A)として合成例1で得られた樹脂(A−1)100部、酸発生剤(B)として上記式(B−1)で表される化合物15部、酸増殖剤(C)として上記(C−1)で表される化合物15部、酸拡散制御剤(D)としてトリ−n−オクチルアミン2部、溶剤(E)として乳酸エチル1100部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2500部を混合して混合液を得、得られた混合液を孔径200nmのメンブランフィルターでろ過することにより、組成物溶液(感放射線性樹脂組成物)を調製した。
【0217】
調製した組成物溶液を、東京エレクトロン社製の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハー上に各スピンコートした後、110℃で60秒(表2に示す条件)PB(加熱処理)を行い、膜厚50nmのレジスト(感放射線性樹脂組成物)被膜を形成した。その後、簡易型の電子線描画装置(日立製作所社製、型式「HL800D」、出力;50KeV、電流密度;5.0アンペア/cm)を用いてレジスト被膜に電子線を照射した。電子線の照射後、110℃で60秒(表2に示す条件)PEBを行った。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、純水で水洗し、乾燥して、所定のレジストパターンが形成されたレジストを得た。このようにして得られたレジストについて上述した各評価を行った。
【0218】
本実施例の各評価結果は、感度が20μC/cmであり、ナノエッジラフネスが10nmであり、解像度の評価が80nmであった。
【0219】
(実施例2〜9、比較例1〜4)
表1に示す化合物を用い、表1に示す配合量としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9及び比較例1〜4の組成物溶液(感放射線性樹脂組成物)を調製した。調製した各組成物溶液を用いて実施例1と同様にして所定のレジストパターンが形成されたレジストを得た。得られたレジストについて上述した各評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0220】
【表1】

【0221】
【表2】

【0222】
表2から明らかなように、実施例1〜9の感放射線性樹脂組成物は、比較例1〜4の感放射線性樹脂組成物に比べて、良好な感度を有することに加え、解像度に優れたレジスト被膜を形成可能であり、ナノエッジラフネスに優れたレジストパターンを形成することが確認できた。
【0223】
具体的には、酸増殖剤(C)((C−1)〜(C−5))を含有する実施例1〜9の感放射線性樹脂組成物は、酸増殖剤(C)を含有しない比較例3の感放射線性樹脂組成物に比べて、電子線または極紫外線に有効に感応し、低ラフネスであるとともに、感度にも優れており、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜できることが確認できた。
【0224】
また、実施例1〜9及び比較例1,2の感放射線性樹脂組成物は、酸増殖剤(C)((C−1)〜(C−5))を含有するものであるが、実施例1〜9の感放射線性樹脂組成物は、酸発生剤(B)として酸発生剤(B−1)〜(B−3)を含有するため、比較例1,2の感放射線性樹脂組成物に比べて、低ラフネスであるとともに感度にも優れており、微細パターンを高精度に、かつ、安定して形成することが可能な化学増幅型ポジ型レジスト被膜を成膜できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、EB、EUVやX線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に半導体デバイスなどの製造に用いられるレジスト被膜の材料として好適であり、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用の化学増幅型レジストを形成可能なものとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸解離性基を有する繰り返し単位を含む樹脂と、
(B)下記一般式(b1)で表される感放射線性酸発生剤と、
(C)下記一般式(c1)で表される化合物と、を含有する感放射線性樹脂組成物。
(b1)
(前記一般式(b1)中、Mは1価のオニウムカチオンであり、Zは下記一般式(1−1)または(1−2)で表される一価のアニオンである。)
【化1】

(前記一般式(1−1)中、R及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R及びRが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成している。前記一般式(1−2)中、R、R、及びRは、相互に独立に、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基であるか、或いは、R、R、及びRのいずれか2つが相互に結合して、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20の環状構造を形成しており、残りの1つが、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜20のアルキル基である。)
【化2】

(前記一般式(c1)中、Aは、単結合、下記式(2−1)、下記式(2−2)、または下記式(2−3)で表される基である。Rは、水素原子、炭素数1〜25の炭化水素基である。Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。)
【化3】

【請求項2】
前記一般式(c1)で表される化合物が、下記一般式(c1−1)で表される化合物である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化4】

(前記一般式(c1−1)中、Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。)
【請求項3】
前記一般式(b1)中のMが、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンである請求項1または2に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)樹脂に含有される前記酸解離性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(a−1)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(a−2)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化5】

(前記一般式(a−1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各Rは、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのRが相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【化6】

(前記一般式(a−2)中、R10は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、またはヒドロキシメチル基である。各R11は、相互に独立に、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、或いは、いずれか2つのR11が相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子とともに2価の脂環式炭化水素基またはその誘導体を形成しており、残りの1つが、炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体、または炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。)
【請求項5】
前記(A)樹脂は、下記一般式(a−3)、下記一般式(a−4)、及び、下記一般式(a−5)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1種を更に含有する請求項4に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化7】

(前記一般式(a−3)中、R12は、水素原子またはメチル基であり、R13は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。kは0〜3の整数であり、lは0〜3の整数である。)
【化8】

(前記一般式(a−4)中、R14は、水素原子またはメチル基であり、R15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。nは1〜3の整数であり、mは0〜3の整数である。)
【化9】

(前記一般式(a−5)中、R16は、水素原子またはメチル基であり、R17は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基である。pは1〜3の整数であり、qは0〜3の整数である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−266755(P2010−266755A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118966(P2009−118966)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】