説明

懸架装置及び懸架装置用コイルスプリング

【課題】コイルスプリングに発生する横力を制御することができる技術を提供する。
【解決手段】 本願の懸架装置10は、車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する。この懸架装置10は、コイルスプリング20と、コイルスプリング20の巻き線の上端部に当接するアッパーシート36と、コイルスプリング20の巻き線の下端部に当接するロアシート42を有している。コイルスプリング20に基準荷重が作用したときに、コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部の少なくとも一方の座巻部は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する懸架装置と、この懸架装置に用いられるコイルスプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に用いられる懸架装置では、通常、車体側部材と車輪側部材との間にコイルスプリングが配される。この種の懸架装置に用いられるコイルスプリングは、通常、荷重の作用線がコイル軸から偏心している。このため、コイルスプリングが伸縮すると、コイルスプリングには横力(すなわち、コイルスプリングのコイル軸に対して垂直方向の力)が発生する。この種の懸架装置では、コイルスプリングに発生する横力を制御したいという要求がある。例えば、自動車等に用いられるストラット型懸架装置では、懸架装置への荷重入力軸がショックアブソーバ(ストラット)のストラット軸からずれるため、ショックアブソーバには曲げモーメントが作用する。ショックアブソーバに曲げモーメントが作用すると、ショックアブソーバの円滑な伸縮動作が阻害され、乗り心地や操縦・安定性(いわゆる操安性)を悪化させる。このため、コイルスプリングに発生する横力を利用して、ショックアブソーバに作用する曲げモーメントを低減できれば、乗り心地や操安性を改善することができる。しかしながら、コイルスプリングに発生する横力の大きさ及び方向が適切でないと、ショックアブソーバに作用する曲げモーメントを低減できず、かえってショックアブソーバに作用する曲げモーメントを増大させてしまう。そこで、コイルスプリングに発生する横力を制御するための技術が開発されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−94920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、コイルスプリングのコイル軸を湾曲させることで、コイルスプリングに発生する横力を制御する。このため、コイルスプリングを配置するスペースが十分に確保できない場合においては、コイル軸を湾曲することで、コイルスプリングと周辺の部品とが干渉してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コイル軸を湾曲させなくても、コイルスプリングに発生する横力を制御することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の懸架装置は、車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する。この懸架装置は、コイルスプリングと、車体側に配され、コイルスプリングの巻き線の上端部に当接するアッパーシートと、車輪側に配され、コイルスプリングの巻き線の下端部に当接するロアシートを有している。そして、コイルスプリングに基準荷重が作用したときに、コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部の少なくとも一方の座巻部は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している。
【0007】
ここで、上記の「基準荷重」は、車両が水平面上に静止しているときにコイルスプリングに加わる荷重を意味する。なお、積載重量が変化する車両の場合、車両の積載重量によって「基準荷重」が変化する。このため、車両に予め設定された積載重量の物体を載せたときに、コイルスプリングに作用する荷重を「基準荷重」とする。
【0008】
上記の懸架装置では、コイルスプリングに基準荷重が作用したときに、コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部のいずれかの座巻部に、線径の大きな第1線径部と、線径の小さな第2線径部が形成される。このため、コイルスプリングの巻き線とシートとの間の接触力は第1線径部と第2線径部の位置等によって変化し、それに応じた横力が、コイルスプリングに発生する。したがって、第1線径部と第2線径部の位置と長さを調節することで、コイル軸を湾曲させなくても、コイルスプリングに発生する横力の大きさと方向を制御することができる。
【0009】
なお、上記の懸架装置においては、コイルスプリングの横力を制御するための他の従来技術をあわせて用いることができる。例えば、コイルスプリングのコイル軸を湾曲させてもよいし、コイルスプリングのコイル径をコイル軸方向で変化させてもよいし、コイルスプリングの巻き線のピッチを変化させてもよい。これらを組合せることで、コイルスプリングで発生する横力をより広範囲に制御することができる。
【0010】
上記の懸架装置は、ストラット型の懸架装置として実現することができる。すなわち、上記の懸架装置は、コイルスプリングの内側に配置され、上端が車体側部材に連結されると共に下端が車輪側部材に連結されるショックアブソーバをさらに有することができる。アッパーシートは車体側部材に固定されており、ロアシートはショックアブソーバに固定されている。そして、コイルスプリングで発生する横力が、路面から車輪に作用する外力によってショックアブソーバに作用する曲げモーメントを打ち消す方向となるように、第1線径部と第2線径部とが配置されている。
このような構成によると、コイルスプリングで発生する横力によって、ショックアブソーバに作用する曲げモーメントが打ち消される。このため、ショックアブソーバの円滑な伸縮動作を確保することができる。
【0011】
上記の懸架装置では、コイルスプリングを円筒コイルスプリングとすることができる。円筒コイルスプリングを用いることで、コイルスプリングの製造を簡易に行うことができる。
【0012】
また、本明細書は、コイルスプリングに発生する横力を制御することができる新規な懸架装置用のコイルスプリングを開示する。本明細書に開示される懸架装置用コイルスプリングは、車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する懸架装置において、車体側と車輪側にそれぞれ配された一対のシート間に配設される。そして、コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部の少なくとも一方は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る懸架装置10の側面図。
【図2】実施例に係るコイルスプリングの巻き線の上端からの巻数と線径の関係を示すグラフ。
【図3】実施例に係るコイルスプリングの巻き線の上端から1巻き目までの平面図。
【図4】実施例に係るコイルスプリングの巻き線とアッパーシートの間に発生する接触力を計算した計算結果を示す図。
【図5】比較例に係るコイルスプリングの巻き線の上端からの巻数と線径の関係を示すグラフ。
【図6】比較例に係るコイルスプリングの巻き線とアッパーシートの間に発生する接触力を計算した計算結果を示す図。
【図7】コイルスプリングの上端部の巻き線の線径を変化させた場合(図中では線径除変あり)の上端側(アッパーシート面)と下端側(ロアシート面)のそれぞれの荷重偏心位置と、コイルスプリングの上端部および下端部の巻き線の線径を変化させなかった場合(図中では線径除変なし)の上端側(アッパーシート面)と下端側(ロアシート面)のそれぞれの荷重偏心位置とを合わせて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、本実施形態の懸架装置10は、自動車の車体側部材(図示しない)と車輪側部材(図示しない)との間を連結するストラット型懸架装置である。懸架装置10は、ショックアブソーバ30とコイルスプリング20とアッパーシート36とロアシート42を備えている。
【0015】
ショックアブソーバ30は、図示しない車輪の位置決め用の支柱(ストラット)として機能している。ショックアブソーバ30は、シリンダ40とピストンロッド34を備えている。シリンダ40は、円筒形状を有している。シリンダ40の内部には、粘性流体(例えば、オイル)が封入されている。シリンダ40の下端は、図示しない車輪側部材に固定されている。シリンダ40の上端には、ピストンロッド34の下端部が挿し込まれている。ピストンロッド34は、シリンダ40に対して進退動可能に組み付けられている。ピストンロッド34がシリンダ40に対して進退動すると(すなわち、ショックアブソーバ30が伸縮すると)、ピストンロッド34にはシリンダ40内に封入された粘性流体の粘性力が作用する。ピストンロッド34の上端は、車体側部材に固定されている。
【0016】
ショックアブソーバ30の外側には、コイルスプリング20が配置されている。すなわち、コイルスプリング20の内側にはショックアブソーバ30が配置され、ショックアブソーバ30はコイルスプリング20の内側を貫通しているということができる。コイルスプリング20は、コイル軸回りに螺旋状に巻回された巻き線により構成されている。本実施形態においては、コイルスプリング20は、等ピッチの円筒コイルスプリングである。コイルスプリング20の表面全体は、樹脂(塗料)によりコーティングされている。コイルスプリング20のコイル軸は、ショックアブソーバ30の軸線(すなわち、ピストンロッド34とシリンダ40の軸線)と一致している。
【0017】
コイルスプリング20の巻き線の上端部22は、アッパーシート36の下面に当接する。コイルスプリング20の巻き線の下端部24は、ロアシート42の上面に当接する。すなわち、コイルスプリング20は、アッパーシート36とロアシート42の間に配設されている。アッパーシート36は、円板形状を有しており、ピストンロッド34の上端に固定されている。ピストンロッド34の上端が車体側部材に固定されているため、アッパーシート36も車体側部材に固定されていることとなる。ロアシート42は、円板形状を有しており、シリンダ40に固定されている。シリンダ40の下端が車輪側部材に固定されるため、ロアシート42も車輪側部材に固定されていることとなる。
【0018】
図1に示すように、懸架装置10は、中心軸50(ピストンロッド34、シリンダ40及びコイルスプリング20に共通の軸)がY軸回りに傾斜して取り付けられている。ロアシート42に対して上向きに加わる荷重が大きくなると、コイルスプリング20が圧縮されると共に、ピストンロッド34がシリンダ40に対して摺動し、ロアシート42がZ軸方向に沿ってアッパーシート36側(上側)に移動する。ロアシート42に対して上向きに加わる荷重が小さくなると、コイルスプリング20が伸びると共に、ピストンロッド34がシリンダ40に対して摺動し、ロアシート42がZ軸方向に沿ってアッパーシート36と反対側(下側)に移動する。このようなコイルスプリング20とショックアブソーバ30の動作によって、車輪が路面の突起等を乗り越えたときの衝撃が吸収され、快適な乗り心地を実現することができる。
【0019】
上記の懸架装置10においては、コイルスプリング20に作用する荷重の大きさが変化すると、コイルスプリング20の巻き線の上端部22で、座巻部(ばねとして機能しない部分)と有効巻部(ばねとして機能する部分)の境界の位置が変化する。同様に、コイルスプリング20の巻き線の下端部24でも、コイルスプリング20に作用する荷重の大きさが変化すると、座巻部と有効巻部の境界の位置が変化する。コイルスプリング20の上端部22と下端部24において座巻部と有効巻部の境界が変化すると、それによってコイルスプリング20に発生する横力も変化する。したがって、コイルスプリング20を設計する際には、どのような状態のときにどのような横力を発生させたいかを決めなければならない。そこで、本実施形態では、懸架装置10の動作範囲内で基準状態を設定し、基準状態のときにコイルスプリング20に所望の横力が発生するように設計する。すなわち、本実施形態では、車両が水平面に静止している状態を「基準状態」とし、その「基準状態」のときにコイルスプリング20に加わる荷重を「基準荷重」としている。なお、「基準状態」においてコイルスプリング20に作用する「基準荷重」は、積載重量を含む車体の重量に応じて変化する。このため、本実施形態では、乗車人数が二人であるときに、コイルスプリング20に加わる荷重を「基準荷重」としている。なお、「基準状態」は、車両に求められる特性に応じて懸架装置10の動作範囲内で適宜設定することができる。また、「基準荷重」も車両の用途(トラック、自家用車等)等に応じて、他の積載重量のときの荷重を基準荷重とすることができる。
【0020】
懸架装置10では、コイルスプリング20に基準荷重が作用したときに、コイルスプリング20の上端部22と下端部24の少なくとも一方の座巻部は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している。そして、第2線径部は、第1線径部より線径が小さいため、第1線径部と比較してシート(36又は42)に接触し難くなる。これによって、コイルスプリング20とシート(36又は42)との間に生じる接触力は、第1接触部と第2接触部の位置及びサイズに応じて変化する。したがって、第1接触部と第2接触部の位置及びサイズを適切に設計することで、コイルスプリング20に発生する横力の大きさと方向を制御することができる。
【0021】
上述したように、懸架装置10では、ショックアブソーバ30が、図示しない車輪の位置決め用の支柱(ストラット)として機能する。その結果、懸架装置10への荷重入力軸がショックアブソーバ30の中心軸50からずれ、路面から車輪に作用する外力によってショックアブソーバ30には曲げモーメントが作用する。そこで、本実施形態では、コイルスプリング20に基準荷重が作用したときにコイルスプリング20に発生する横力が、路面から車輪に作用する外力によってショックアブソーバ30に作用する曲げモーメントを打ち消す方向となるように、第1線径部と第2線径部の位置と大きさが設定されている。これによって、ショックアブソーバ30のピストンロッド34の円滑な摺動動作が可能となり、乗り心地や操安性が悪化することを抑制することができる。
【0022】
ここで、コイルスプリング20の巻き線の上端部22及び/又は下端部24に、第1線径部と第2線径部を形成することで、コイルスプリング20の横力を制御できることを実例を挙げて説明しておく。図2〜4は、コイルスプリング20の上端部22に第1線径部と第2線径部を形成した実施例を説明するための図である。図5,6は、コイルスプリングの上端部の線径を一定にした比較例を説明するための図である。
【0023】
図2,3に示すように、コイルスプリング20の上端部22では、0.0〜0.1巻目(図3のAの範囲)の線径が6.0mmで一定となり、0.1〜0.2巻目(図3のBの範囲)の線径が6.0mmから10.0mmに徐々に変化し、0.2〜0.4巻目(図3のCの範囲)の線径が10.0mmで一定となり、0.4〜0.5巻目(図3のDの範囲)の線径が10.0mmから6.0mmに徐々に変化し、0.5〜0.65巻目(図3のEの範囲)の線径が6.0mmで一定となり、0.65〜0.7巻目(図3のFの範囲)の線径が6.0mmから10.0mmに徐々に変化し、0.7〜1.0巻目(図3のGの範囲)の線径が10.0mmで一定となっている。したがって、この実施例では、0.2〜0.4巻目(図3のCの範囲)と0.7〜1.0巻目(図3のGの範囲)が第1線径部となり、0.0〜0.1巻目(図3のAの範囲)と0.5〜0.65巻目(図3のEの範囲)が第2線径部となっている。なお、0.1〜0.2巻目(図3のBの範囲)と0.4〜0.5巻目(図3のDの範囲)と0.65〜0.7巻目(図3のFの範囲)は、第1線径部と第2線径部を接続する接続部となっている。
【0024】
上記のコイルスプリング20に基準荷重が作用すると、コイルスプリング20の上端部22の0.0巻目から0.7巻目までが座巻部となり、0.7巻目を超えた部分が有効巻部となる。また、座巻部においては、第1線径部がアッパーシート36に接触し、第2線径部及び接触部はアッパーシート36と非接触となる。図4に示すように、コイルスプリング20に基準荷重が作用したときにコイルスプリング20とアッパーシート36の間で発生する接触力は、0.2巻目と、0.4巻目と、0.7巻目においてピークが生じる。すなわち、コイルスプリング20の巻き線のうち、接続部と第1線径部の境界において接触力にピークが生じている。したがって、接続部と第1線径部の境界の位置を制御すること、すなわち、第2線径部の位置を制御することで、コイルスプリング20とアッパーシート36の間で接触力のピークが発生する位置を制御することができる。
【0025】
一方、図5に示すように、比較例のコイルスプリングは、その線径が10.0mmで一定となっている。また、比較例のコイルスプリングに基準荷重が作用すると、コイルスプリングの上端部の0.0巻目から0.6巻目までが座巻部(アッパーシートと接触する部分)となり、0.6巻目を超えた部分が有効巻部となっている。図6に示すように、比較例のコイルスプリングに基準荷重が作用すると、コイルスプリング20とアッパーシート36の間で発生する接触力は、0.1〜0.15巻目においてピークが生じている。
【0026】
図2〜6から明らかなように、実施例のコイルスプリング20では、その巻き線の上端部22に第1線径部と第2線径部を形成することで、図5,6の比較例と比較して、コイルスプリング20とアッパーシート36の間で接触力のピークが発生する位置と、その接触力の大きさが変化している。これによって、図7に示すように、コイルスプリング20のコイル中心からの荷重偏心量も変化する。すなわち、比較例(巻き線の線径が一定)のコイルスプリングの上端側の荷重偏心位置△に対して、実施例のコイルスプリングの上端側の荷重偏心位置○は、x方向については中心に向かって移動し、y方向については外側に向かって僅かに移動している。このことは、コイルスプリング20の下端部においても同様となる。すなわち、比較例(巻き線の線径が一定)のコイルスプリングの下端側の荷重偏心位置▲に対して、実施例のコイルスプリングの下端側の荷重偏心位置●は、x方向については中心に向かって移動し、y方向については外側に向かって移動している。したがって、コイルスプリングの上端部に第1線径部と第2線径部を形成することで、コイルスプリングの上端部及び下端部の荷重偏心位置を変えることができる。コイルスプリングの上端部及び下端部の荷重偏心位置が変化すると、コイルスプリングに発生する横力の大きさと方向も変化する。したがって、コイルスプリングの上端部に形成する第1線径部と第2線径部の位置及び長さを制御することで、コイルスプリングに発生する横力の大きさと方向を制御することができる。
【0027】
なお、上述した説明から明らかなように、コイルスプリングの一端に第1線径部と第2線径部を形成することで、コイルスプリングの両端において荷重偏心位置が変化し、それによって、コイルスプリングに発生する横力の大きさと方向が変化する。このため、コイルスプリングの下端に第1線径部と第2線径部を形成しても、コイルスプリングに発生する横力の大きさを変えることができる。また、コイルスプリングの上端および下端に第1線径部と第2線径部を形成しても、コイルスプリングに発生する横力の大きさを変えることができる。したがって、コイルスプリングの上端および/または下端に第1線径部と第2線径部を適宜形成することで、コイルスプリングから所望の横力を発生させることができる。
【0028】
以上に説明したように、本実施形態の懸架装置10では、コイルスプリング20の上端部22の座巻部が第1線径部と第2線径部を有することで、コイルスプリング20に発生する横力の大きさ及び方向を制御する。このため、コイルスプリング20の軸線を湾曲させなくてもよく、懸架装置10の配置スペースを小さくすることができる。
【0029】
また、上述の懸架装置10では、コイルスプリング20の端部に第1線径部と第2線径部を形成するだけでよいため、コイルスプリング20を等ピッチの円筒コイルスプリングとすることができる。このため、コイル軸を湾曲させる場合と比較して、コイルスプリング20を簡易な方法で製造することができる。
【0030】
また、上述した実施形態の懸架装置10では、第1線径部と第2線径部の間に、線径が徐々に変化する領域(接続領域(図3のB,D,Fの領域))が形成されており、コイルスプリングの断面が急激に変化しないようになっている。これによって、コイルスプリングに応力集中が発生しないようにされている。
【0031】
なお、上述した実施形態では、コイルスプリングの端部に第1線径部と第2線径部を設けたが、本明細書に開示の技術はこのような形態に限られず、コイルスプリングに発生させたい横力に応じて適宜設計することができる。例えば、コイルスプリングの端部に、第1線径部の線径とは異なり、かつ、第2線径部の線径とも異なる線径を有する第3の線径部を形成してもよい。
【0032】
さらに、上述した実施形態では、コイル軸が直線となる円筒コイルスプリングを用いていたが、本明細書に開示の技術は、これに限定されない。例えば、コイル軸が湾曲していてもよいし、コイルスプリングの形状が、円錐形、片側絞り形、たる形、つづみ形等であってもよいし、コイルスプリングの巻き線のピッチが変化するものであってもよい。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
10:懸架装置
20:コイルスプリング
22:上端部
24:下端部
30:ショックアブソーバ
34:ピストンロッド
36:アッパーシート
40:シリンダ
42:ロアシート
50:中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する懸架装置であって、
コイルスプリングと、
車体側に配され、コイルスプリングの巻き線の上端部に当接するアッパーシートと、
車輪側に配され、コイルスプリングの巻き線の下端部に当接するロアシートと、を有しており、
コイルスプリングに基準荷重が作用したときに、コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部の少なくとも一方の座巻部は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している、懸架装置。
【請求項2】
前記懸架装置はストラット型懸架装置であり、
前記コイルスプリングの内側に配置され、上端が車体側部材に連結されると共に下端が車輪側部材に連結されるショックアブソーバをさらに有しており、
前記アッパーシートは車体側部材に固定されており、
前記ロアシートはショックアブソーバに固定されており、
コイルスプリングで発生する横力が、路面から車輪に作用する外力によってショックアブソーバに作用する曲げモーメントを打ち消す方向となるように、前記第1線径部と第2線径部とが配置されている、請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記コイルスプリングが、円筒コイルスプリングである、請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項4】
車両の車体側部材と車輪側部材の間を連結する懸架装置において、車体側と車輪側にそれぞれ配された一対のシート間に配設される懸架装置用コイルスプリングであり、
コイルスプリングの巻き線の上端部と下端部の少なくとも一方は、第1線径部と、第1線径部よりも線径の小さな第2線径部を有している、懸架装置用コイルスプリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57777(P2012−57777A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204368(P2010−204368)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】