説明

成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物

【課題】より洗浄力の向上した、加工機内洗浄用組成物の提供
【解決手段】(a)スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、(b)(b−1)アニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)ノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤混合物を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機、射出成形機器等の成形加工機の内部を洗浄するために用いる熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の成形加工機用の洗浄剤として、ベース樹脂と界面活性剤を組み合わせたものが知られている。
【0003】
特許文献1の実施例では、AS樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はα−オレフィンスルホン酸ナトリウムを配合したものが記載されている。
【0004】
特許文献2では、AS樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとα−オレフィンスルホン酸ナトリウムを併用したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−119464号公報
【特許文献2】特開2010−95624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より洗浄力が向上された、熱可塑性樹脂の成形加工機用の洗浄剤として使用する熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
(a)スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、
(b)(b−1)アニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)ノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤混合物を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0008】
本発明は、課題の他の解決手段として、
(a)スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、
(b)(b−1)アニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)ノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤混合物、及び
(c)12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を成形加工したあとの成形加工機に対して高い洗浄性能を有している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(a)成分>
(a)成分の熱可塑性樹脂は、スチレン系樹脂単独であるか、スチレン系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合物からなるものである。
【0011】
スチレン系樹脂は、スチレンのホモポリマー、スチレンと他のモノマーとのコポリマーを用いることができるが、他のモノマーには、(メタ)アクリル酸エステルは含まれない。
本発明において(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの両方を含むことを意味する。
【0012】
スチレン系樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ポリスチレン樹脂が好ましい。
【0013】
他の熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル単位を含む樹脂が好ましく、MS樹脂(メタクリル酸−スチレン共重合体)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)、無水マレイン酸−スチレン−メチルメタクリレート(MMA)の共重合体から選ばれるものがより好ましい。
【0014】
スチレン系樹脂と他の熱可塑性樹脂(好ましくは(メタ)アクリル酸エステル単位を含む樹脂)との混合割合は、洗浄力を高める観点から、
スチレン系樹脂は100〜50質量%が好ましく、より好ましくは95〜60質量%、さらに好ましくは90〜75質量%であり、
他の熱可塑性樹脂は0〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。
【0015】
<(b)成分>
(b)成分は、(b−1)成分のアニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)成分のノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤の混合物である。
【0016】
(b−1)成分のアニオン界面活性剤は、脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤から選ばれる1又は2以上の界面活性剤である。
【0017】
脂肪族系界面活性剤としては、アルカンスルホン酸ナトリウム塩、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく、芳香族系界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0018】
脂肪族系界面活性剤と芳香族系界面活性剤の混合物を用いるときの含有割合(質量基準)は、脂肪族系界面活性剤/芳香族系界面活性剤が1/10〜10/1の範囲が好ましく、1/6〜6/1の範囲がより好ましく、1/3〜3/1の範囲がさらに好ましい。
【0019】
(b−2)成分のノニオン界面活性剤は、オキシエチレン鎖型界面活性剤、ソルビタンエステル型界面活性剤、グリセリセライド系(グリセリン(モノ、ジ)脂肪酸エステル類)界面活性剤、12−ヒドロキシステアリン酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエ−テル、アルキルグルコシド等から選ばれるものを挙げることができる。
【0020】
これらの中でも、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸エステルから選ばれる2種以上が好ましい。
具体的には、
(i)ソルビタン脂肪酸エステル(好ましくは20〜35質量%)とグリセリン脂肪酸エステル(好ましくは80〜65質量%)の組み合わせ、
(ii)ソルビタン脂肪酸エステル(好ましくは20〜50質量%)と12−ヒドロキシステアリン酸エステル(好ましくは80〜50質量%)の組み合わせ、
(iii)グリセリン脂肪酸エステル(好ましくは20〜35質量%)と12−ヒドロキシステアリン酸エステル(好ましくは80〜65質量%)の組み合わせ、
(iv)ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及び12−ヒドロキシステアリン酸エステルの組み合わせにすることができる。
【0021】
(b)成分中、(b−1)成分のアニオン界面活性剤と(b−2)成分のノニオン界面活性剤の含有割合は、(b−1)成分が好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%、(b−2)成分が好ましくは70〜30質量%、より好ましくは65〜35質量%である。
【0022】
本発明の組成物中の(b)成分の界面活性剤混合物の含有量は、(a)成分の熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、3〜10質量部がさらに好ましい。
【0023】
<(c)成分>
本発明の組成物は、さらに(c)成分として12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩を含有することができる。
12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩は、亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩を挙げることができるが、洗浄性をより高める観点からは、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。
【0024】
<その他の成分>
本発明の組成物は、必要に応じて、ガラスファイバー、ロックウール等の公知の無機フィラーを含有することができる。無機フィラーの含有量は、(a)成分の熱可塑性樹脂100質量部に対して5〜60重量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましく、15〜40質量部が更に好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、本発明の課題を解決できる範囲内で、公知の各種添加剤を含有することができる。公知の添加剤としては、例えば、上記の特許文献1の段落12、13に記載のアルキレングリコール脂肪酸エステルの他、多価アルコールや金属石鹸(但し、12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩は除く)、また特開2002−1734に記載のリン酸エステル系化合物を用いることができる。
【0026】
本発明の組成物は、各成分をヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で溶融混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりする方法を適用して得ることができる。
【実施例】
【0027】
実施例1
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。結果を表1に示す。
【0028】
射出成形機(住友重機械工業社製「SH100」;シリンダー温度230℃)に、先行使用樹脂としてABS樹脂(ダイセルポリマー製セビアンV550SF)の黒着色品(カーボンブラック濃度2%)1kgを流した。その後、表1の各組成物を流して黒色が消えるまでの組成物の使用量により洗浄性を評価した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例と比較例との対比から明らかなとおり、(b)成分としてアニオン界面活性剤と2種のノニオン界面活性剤を併用することで、より洗浄性能が向上されることが確認された。
実施例2と実施例3、4との対比から明らかなとおり、(c)成分として12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩(亜鉛塩、アルミニウム塩)を併用することにより、ノニオン界面活性剤量を減少させた場合でも、洗浄性を高めることができた。
【0031】
(表1に示す成分)
<(a)成分>
・AS樹脂:ダイセルポリマー株式会社製のセビアンN 020SF
・PMMA樹脂:三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVH001
・MS樹脂:ダイセルポリマー株式会社製のセビアンMAS30
<(b)成分>
(b−1)
・アニオン界面活性剤1:アルカンスルホン酸ナトリウム
(b−2)
・ノニオン界面活性剤1:グリセリンモノベヘネート
・ノニオン界面活性剤2:ソルビタントリベヘネート
・ノニオン界面活性剤3:グリセリン12−ヒドロキシモノステアレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、
(b)(b−1)アニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)ノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤混合物を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(a)スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂と、
(b)(b−1)アニオン界面活性剤から選ばれる1種以上と(b−2)ノニオン界面活性剤から選ばれる2種以上を含む界面活性剤混合物、及び
(c)12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩を含有する成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(c)12−ヒドロキシステアリン酸の金属塩が亜鉛塩又はアルミニウム塩である請求項2記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(b−2)成分のノニオン界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸エステルから選ばれる2種以上の混合物である請求項1〜3のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(a)成分の熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂(但し、(メタ)アクリル酸エステル単位は含まない)と(メタ)アクリル酸エステル単位を含む樹脂との混合物である請求項1〜4のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位を含む樹脂が、MS樹脂、PMMA樹脂、無水マレイン酸−スチレン−MMAの共重合体から選ばれるものである請求項5記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−121953(P2012−121953A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272293(P2010−272293)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】