説明

成形機における射出制御方法

【課題】電動駆動タイプの射出成形機やダイカストマシンなどの成形機において、射出用部材の加速性能、減速性能の可及的な向上を図ること
【解決手段】第1サーボモータの回転でその回転部が回転駆動されるボールネジ機構Aの直動部を、射出用部材の基端部を保持した射出用部材に固定し、第2サーボモータの回転によってボールネジ機構Aの回転部を前後進させる構成をとる成形機において、第1サーボモータの十分に高められた加速を一気に解き放して、射出用部材を前進させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動タイプの射出成形機やダイカストマシンなどの成形機における射出制御方法に係り、特に、射出用部材(インラインスクリュ式の射出成形機ではスクリュ、プリプラ式の射出成形機やダイカストマシンでは射出プランジャ)の前進加速や前進減速を、急加速、急減速で行えるようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機としての例えば電動タイプのインラインスクリュ式の射出成形機では、スクリュを前後進させる駆動源としてのサーボモータ(射出用電動サーボモータ)を1つのみ用いる構成をとるのが、一般的である。図10は、このような従来のインラインスクリュ式の射出成形機の射出系メカニズムの要部構成を示す図である。
【0003】
図10において、101はヘッドストック、102は、ヘッドストック101と所定距離をおいて対向配置された支持盤、103は、その両端をヘッドストック101と支持盤102に固定されて、ヘッドストック101と支持盤102とを連結した複数本の連結・ガイドバー、104は、連結・ガイドバー103に挿通・案内されて、ヘッドストック101と支持盤102との間を前後進可能な直動ブロック、105は、その基端部をヘッドストック101に固定された加熱シリンダ、106は、加熱シリンダ105の先端に設けられたノズル、107は、少なくとも射出時にはその樹脂注入口の周辺にノズル106が押し付けられる固定側金型、108は、固定側金型107に対して前後進可能な可動側金型、109は、型締め状態にある両金型107、108で形づくられるキャビティ(成形品形成用空間)、110は、加熱シリンダ105内に回転並びに前後進可能であるように配設され、その基端部を直動ブロック104に回転可能に保持されて、直動ブロック104に搭載された図示せぬ計量用電動サーボモータの駆動力で回転駆動されると共に、直動ブロック104と一体となって前後進するスクリュ、111は、支持盤102に搭載された射出用電動サーボモータ、112は、射出用電動サーボモータ111の回転を直線運動に変換するボールネジ機構、113は、支持盤102にその端部を回転可能に保持されて、射出用電動サーボモータ111の回転を駆動プーリ115、図示せぬタイミングベルト、被動プーリ116を介して伝達される、ボールネジ機構112のネジ軸(ボールネジ機構112の回転部)、114は、ネジ軸113に螺合されると共に、その端部を直動ブロック104に固定されて、ネジ軸113の回転で直動ブロック104と一体となって前後進する、ボールネジ機構112のナット体(ボールネジ機構112の直動部)である。
【0004】
図10に示す構成において、射出時には、射出用電動サーボモータ111が所定方向に回転駆動され、これにより、ボールネジ機構112のナット体114が前進駆動されることで、ナット体114と共に直動ブロック104、スクリュ110が前進して、スクリュ110の先端側に貯えられた溶融樹脂が、型締め状態にある金型107、108で形づくられたキャビティ109内に、射出充填されるようになっている。
【0005】
ところで、薄肉・精密成形などでは、キャビティ109内に溶融樹脂を素早く充填開始して、素早く充填終了させることが良品成形のためには必須であるが、図10に示すように単独の射出用電動サーボモータ111を用いた構成では、射出の加速性能、減速性能(スクリュ110の加速性能、減速性能)の向上には自ずと一定の限界があり、たとえ、低慣性・高応答性のサーボモータを射出用電動サーボモータ111に用いたとしても、加速立ち上げ時間は30ms強程度の達成が、現状ではその限界である。
【0006】
そこで、2つの射出用電動サーボモータを用いて、2つの射出用電動サーボモータにより1つのボールネジ機構の回転部を協働で同一方向に回転駆動することで、射出の加速性能、減速性能を向上させるようにした射出成形機も知られている。図11は、このような2つの射出用電動サーボモータを用いた、従来のインラインスクリュ式の射出成形機の射出系メカニズムの要部構成を示す図である。同図において、図10と均等な構成要素には同一符号を付してあり、重複する説明は割愛することとする。
【0007】
図11において、111A、111Bは、支持盤102に搭載された2つの射出用電動サーボモータで、この2つの射出用電動サーボモータ111A、111Bによって、ボールネジ機構112のネジ軸113に固定した被動プーリ116’を、駆動プーリ115A、115B、図示せぬ2つのタイミングベルトを介して、それぞれ同一方向に回転駆動することで、スクリュ110を前進させるようになっている。
【0008】
しかしながら、このような図11に示す構成をとっても、1つの電動サーボモータ111を用いた図10の構成よりも、射出の加速性能、減速性能の改善は、約3割程度に留まるものとなる。
【0009】
また、射出系メカニズムにおいて、1つのボールネジ機構に対して、ナット体を回転駆動するナット用サーボモータと、ネジ軸を回転駆動するネジ用サーボモータとを設けて、ナット用サーボモータとネジ用サーボモータとの協働で、射出動作を制御するようにした構成も、特公平4−64492号公報(特許文献1)や、特開平9−104028号公報(特許文献2)により知られている。特許文献1においては、ナット用サーボモータの回転とネジ用サーボモータの回転との協働で、モータは回転しているが、スクリュは軸方向移動しない状態をつくり、この状態からネジ用サーボモータの回転速度をナット用サーボモータよりも大きくすることで、スクリュを前進させるようにし、特に、低速域での制御精度の向上を図るようにしている。また、特許文献2においては、ナット用サーボモータの回転とネジ用サーボモータの回転との協働で、低速射出に適した状態と高速射出に適した状態とをつくり出すことで、寿命の短いクラッチを用いることなく、低速と高速の切り替えを行えるようにしている。
【特許文献1】特公平4−64492号公報
【特許文献2】特開平9−104028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1においては、上記したように、ナット用サーボモータの回転とネジ用サーボモータの回転との協働で、モータは回転しているが、スクリュは軸方向移動しない状態をつくり出してはいるが、この状態は2つのモータの加速が完了し終わるまで(2つのモータの起動が完了するまで)継続されていて、サーボモータの加速領域、減速領域におけるスクリュの動作挙動については考慮されておらず、したがって、射出(1次射出)初期のスクリュの加速性能および射出(1次射出)終期の減速性能を向上させようとする技術思想は、特許文献1には見られない。
【0011】
また、特許文献1、特許文献2には、ナット用サーボモータとネジ用サーボモータとを、共にスクリュを前進させる方向に回転駆動することで、高速射出を行うようにした技術が開示されているが、このような構成・動作をとっても、図11に示した構成と同様に、射出の加速性能、減速性能の向上には限界のあるものとなる。
【0012】
なおまた、特許文献1、特許文献2に示された技術では、スクリュが前進することでスクリュが樹脂から受ける大きな圧力(荷重)を、一方のサーボモータの力で支え続ける構成となっているので、この一方のサーボモータにかかる負荷が厳しいものなる構成となっている。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、電動駆動タイプの射出成形機やダイカストマシンなどの成形機において、射出用部材(スクリュや射出プランジャといった射出用部材)の加速性能、減速性能の可及的な向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記した目的を達成するために、前後進可能な射出用部材の直動駆動源としての1つ以上の第1サーボモータと1つ以上の第2サーボモータとを備え、前記第1サーボモータの回転でその回転部が回転駆動されるボールネジ機構Aの直動部を、前記射出用部材の基端部を保持した部材に固定し、前記第2サーボモータの回転によって前記ボールネジ機構Aの回転部を前後進させる構成をとる成形機における射出制御方法において、
前記射出用部材が前進開始する前に、前記第1サーボモータを前記射出用部材を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始させて前記第1サーボモータの回転速度を加速すると共に、前記第2サーボモータを前記射出用部材を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速して、前記第1サーボモータと前記第2サーボモータの回転速度がそれぞれ所定速度に達するまでは、前記射出用部材を実質的に射出開始位置に保持するようにし、
前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転速度と前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度がそれぞれ所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速前進させる。
【0015】
また、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)として、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の定速回転によって、前記射出用部材を定速度で前進させ、
前記第1サーボモータを、前記第1回転方向Ra1の定速回転から減速開始させて、前記第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、前記第2サーボモータを、前記第1サーボモータの減速開始と略同時に、前記射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速することで、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、前記射出用部材に略定速前進を維持させ、
前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速停止させる。
【0016】
また、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速が終了すると、前記第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、前記第2サーボモータを、前記第1サーボモータの減速開始と略同時に、前記射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速することで、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、前記射出用部材に略定速前進を維持させ、
前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速停止させる。
【0017】
また、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)とすると共に、この前記第2サーボモータの回転停止と略同時に、前記ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロックを固定部材に当接させ、前記射出用部材の前進完了まで、前記ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロックを固定部材に当接させた状態を維持させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、射出用部材が前進開始する前に、第1サーボモータを射出用部材を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始させて第1サーボモータの回転速度を加速すると共に、第2サーボモータを射出用部材を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始させて第2サーボモータの回転速度を加速して、第1サーボモータと第2サーボモータの回転速度がそれぞれ所定速度に達するまでは、射出用部材を実質的に射出開始位置に保持するようにし、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転速度と第2サーボモータの第2回転方向Rb2の回転速度がそれぞれ所定速度に達すると、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、第2サーボモータの第2回転方向Rb2の回転速度を減速することで、射出用部材を急速前進させるようにしている。したがって、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の加速が十分に達成されたタイミングで、第2サーボモータの第2回転方向Rb2の回転速度を減速するので、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の十分に高められた加速を一気に解き放して、射出用部材を前進させることができ、これにより、射出用部材の前進加速をきわめて急加速で行うことが可能となって、例えば、20G程度の加速度を得ることが可能となり、射出用部材の前進加速時間を5ms(5ミリ秒)程度のきわめて短時間とすることができる。
【0019】
また、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、第2サーボモータの第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)として、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の定速回転によって、射出用部材を定速度で前進させ、次に、第1サーボモータを、第1回転方向Ra1の定速回転から減速開始させて、第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、第2サーボモータを、第1サーボモータの減速開始と略同時に、射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて第2サーボモータの回転速度を加速することで、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、射出用部材に略定速前進を維持させ、次に、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、射出用部材を急速停止させるようにしているので、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の十分に低減された減速を一気に解き放すと同時に、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の減速をこれに足し合わせて、射出用部材を停止制御することができ、これにより、射出用部材の前進減速をきわめて急減速で行うことが可能となって、先の加速性能と同等もしくはそれ以上の減速性能を得ることが可能となる。
【0020】
また、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転加速が終了すると、第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、第2サーボモータを、第1サーボモータの減速開始と略同時に、射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて第2サーボモータの回転速度を加速することで、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、射出用部材に略定速前進を維持させ、次に、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、射出用部材を急速停止させるようにしているので、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の十分に低減された減速を一気に解き放すと同時に、第2サーボモータの第1回転方向Rb1の減速をこれに足し合わせて、射出用部材を停止制御することができ、これにより、射出用部材の前進減速をきわめて急減速で行うことが可能となって、先の加速性能と同等もしくはそれ以上の減速性能を得ることが可能となる。
【0021】
また、第1サーボモータの第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、第2サーボモータの第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)とすると共に、この第2サーボモータの回転停止と略同時に、ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロック(例えば直動ブロック)を固定部材(例えば支持盤)に当接させ、射出用部材の前進完了まで、ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロックを固定部材に当接させた状態を維持させるようにしているので、この当接状態となった以後は、射出用部材が樹脂や金属から受ける大きな圧力(荷重)を第2サーボモータで支承する必要がなくなり、これ以後の第2サーボモータの負担を大幅に軽減することができ、同一容量であっても、第2サーボモータとして第1サーボモータよりも低トルクで高回転出力のモータを用いることができ、第2サーボモータを第1サーボモータよりも加減速性能のよいものとすることが容易となり、より一層の急加速制御を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1〜図8は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)によるインラインスクリュ式の射出成形機に係り、図1〜図4は、本実施形態の射出成形機の射出系メカニズムの要部構成を示す図である。
【0023】
図1〜図4において、1はヘッドストック、2は、ヘッドストック1と所定距離をおいて対向配置された支持盤、3は、その両端をヘッドストック1と支持盤2に固定されて、ヘッドストック1と支持盤2とを連結した複数本の連結・ガイドバー、4は、連結・ガイドバー3に挿通・案内されて、ヘッドストック1と支持盤2との間を前後進可能な第1直動ブロック、5は、同じく連結・ガイドバー3に挿通・案内されて、ヘッドストック1と支持盤2との間を前後進可能な第2直動ブロック、6は、その基端部をヘッドストック1に固定された加熱シリンダ、7は、加熱シリンダ6の先端に設けられたノズル、8は、少なくとも射出時にはその樹脂注入口の周辺にノズル7が押し付けられる固定側金型、9は、固定側金型8に対して前後進可能な可動側金型、10は、型締め状態にある両金型8、9で形づくられるキャビティ(成形品形成用空間)、11は、加熱シリンダ6内に回転並びに前後進可能であるように配設され、その基端部を第1直動ブロック4に回転可能に保持されたスクリュ(射出用部材)で、該スクリュ11は、第1直動ブロック4に搭載された図示せぬ計量用電動サーボモータの駆動力で回転駆動されると共に、第1直動ブロック4と一体となって前後進するようになっている。
【0024】
また、12は、第2直動ブロック5に搭載されたスクリュ直動用の第1電動サーボモータ、13は、第1電動サーボモータ12の出力軸に固定された第1駆動プーリ、14は、第1電動サーボモータ12の回転を直線運動に変換する第1ボールネジ機構(請求項でいうボールネジ機構A)、15は、第2直動ブロック5に回転可能に保持された第1ボールネジ機構14のネジ軸(第1ボールネジ機構14の回転部)、16は、ネジ軸15に螺合されると共に、その端部を第1直動ブロック4に固定されて、ネジ軸15の回転で第1直動ブロック4と一体となって前後進する、第1ボールネジ機構14のナット体(第1ボールネジ機構14の直動部)、17は、ネジ軸15に固定されて、第1電動サーボモータ12の回転を、第1駆動プーリ13、図示せぬ第1タイミングベルトを介して伝達される第1被動プーリである。
【0025】
また、18は、支持盤2に搭載されたスクリュ直動用の第2電動サーボモータ、19は、第2電動サーボモータ18の出力軸に固定された第2駆動プーリ、20は、第2電動サーボモータ18の回転を直線運動に変換する第2ボールネジ機構、21は、支持盤2に回転可能に保持された第2ボールネジ機構20のネジ軸(第2ボールネジ機構20の回転部)、22は、ネジ軸21に螺合されると共に、その端部を第2直動ブロック5に固定されて、ネジ軸21の回転で第2直動ブロック5と一体となって前後進する第2ボールネジ機構20のナット部(第2ボールネジ機構20の直動部)、23は、ネジ軸21に固定されて、第2電動サーボモータ18の回転を、第2駆動プーリ19、図示せぬ第2タイミングベルトを介して伝達される第2被動プーリである。
【0026】
なお、図1〜図4において、24は溶融樹脂を示している。ここでは、第2電動サーボモータ18として、その加減速性能が第1電動サーボモータ12のそれよりも優れたものを用いている。
【0027】
図1〜図4に示す構成において、第1電動サーボモータ12の回転は、第1駆動プーリ13、図示せぬ第1タイミングベルト、第1被動プーリ17を介して、第1ボールネジ機構14のネジ軸15に伝達され、ネジ軸15が回転することで、ナット体16がネジ軸15に沿って軸方向移動し、ナット体16と一体となって第1直動ブロック4やスクリュ11が、軸方向に前後進可能なようになっている。また、第2電動サーボモータ18の回転は、第2駆動プーリ19、図示せぬ第2タイミングベルト、第2被動プーリ23を介して、第2ボールネジ機構20のネジ軸21に伝達され、ネジ軸21が回転することで、ナット体22がネジ軸21に沿って軸方向移動し、ナット体22と一体となって、第2直動ブロック5や第1ボールネジ機構14のネジ軸15や第1ボールネジ機構14の直動で移送される部材(スクリュ11など)が、軸方向に前後進可能なようになっている。
【0028】
このように、本実施形態では、スクリュ11が、第1電動サーボモータ12の回転でも、第2電動サーボモータ18の回転でも軸方向に移送可能となっているので、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18とを同期回転させて、第1電動サーボモータ12の回転によるスクリュ11の前進量と、第2電動サーボモータ18の回転によるスクリュ11の後退量とを等しくすることで、2つのサーボモータ12、18は回転しているが、スクリュ11は軸方向に移動していない状態をつくり出すことができる。
【0029】
図5は、本発明の射出用部材(ここではスクリュ11)の加速原理を示す図である。図5において、横軸は時間を表し、縦軸は速度(相対速度)を表している。図5に示すように、実際の射出に先立って(スクリュ11の前進に先立って)、第1電動サーボモータ12をスクリュ11を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始させて第1電動サーボモータ12の回転速度を加速すると共に、第2電動サーボモータ18をスクリュ11を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始させて第2電動サーボモータ18の回転速度を加速して、スクリュ11が射出開始位置に留まった状態となるように、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18を、図示せぬコントローラの制御の下に、同期して回転加速制御すると、第1電動サーボモータ12の回転速度と第2電動サーボモータ18の回転速度は高まってゆき、回転系の回転慣性力も増してゆく。ここで、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度が設定された所定最高速度Vm(モータが出力可能な最高速度とは限らない)まで加速されたタイミングtm、すなわち、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度が所定速度まで加速されたタイミングtmで、第2電動サーボモータ18により直線駆動される部材(ここでは、第2直動ブロック5)の後退が強制的に阻止されると、静止慣性などを無視すると、スクリュ11は一気に前進して垂直な加速特性で、速度Vmまで加速される。このように、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の十分に高められた加速を一気に解き放して、スクリュ11を前させるように制御するのが、本発明のスクリュ11(射出用部材)の加速原理である。ただし、高速度が出ている第2直動ブロック5の後退を強制的に停止させるということは、高後退速度が出ている第2直動ブロック5を支持盤2に衝合させることを意味するので、メカ耐久性や騒音から見て実用的ではない。そこで、本実施形態では、以下に述べるようなスクリュ11の前進制御(1次射出の制御)を行うようにしている。
【0030】
本実施形態のスクリュ11の前進制御(1次射出の制御)の1例について、図1〜図4、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態のスクリュ前進制御の1例の様子を示す説明図であり、図1〜図4は本例における射出系メカニズムの動作遷移の様子を示している。また、図6において、横軸は時間を表し、縦軸は速度(相対速度)を表しており、時間軸に沿った、第1電動サーボモータ12の回転速度、第2電動サーボモータ18の回転速度、スクリュ11の前進速度の変化をそれぞれ示している。
【0031】
図1は、計量および必要に応じて行われるサックバックが完了した、射出待機状態を示しており、このとき、スクリュ11は射出開始位置にある。この図1に示した状態において、図6に示す1次射出開始タイミングの直前のタイミングt1に至ると、射出成形機全体の制御を司る図示せぬコントローラの制御の下に、第1電動サーボモータ12がスクリュ11を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始されて第1電動サーボモータ12の回転速度が加速されると共に、第2電動サーボモータ18がスクリュ11を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始されて第2電動サーボモータ18の回転速度が加速され、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18の回転速度がそれぞれ所定速度V1、−V1に達する(加速される)タイミングt2までは、スクリュ11は射出開始位置を保持される。図2は、タイミングt1とタイミングt2との間における射出系メカニズムの様子を示している。
【0032】
第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度がV1まで加速されると共に、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度が−V1まで加速されたタイミングt2に至ると、図示せぬコントローラは、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度を急減速させ、これによって、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の十分に高められた加速を一気に解き放すことで、スクリュ11は、急速な加速度で前進駆動を開始される。例えば、スクリュ11は、20G程度の加速度で加速されて、タイミングt2から、後記するスクリュ11の加速完了タイミングt3までの、スクリュー11の前進加速時間は、5ms(5ミリ秒)程度が達成される。
【0033】
次に、図示せぬコントローラは、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度が設定された所定最高速度V2(モータが出力可能な最高速度とは限らない)まで加速されたタイミングt3に至ると、第1電動サーボモータ12の回転加速を終了させて、第1電動サーボモータ12の制御を第1回転方向Ra1の定速回転制御に切り替え、また、上記タイミングt3において、第2電動サーボモータ18の回転速度を0(零)とする。これによって、スクリュ11は、タイミングt3以降は、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の一定速の回転速度V2によって、定速度で前進駆動される。また、上記タイミングt3に至ると(第2電動サーボモータ18が回転停止した状態に至ると)、第2直動ブロック5を支持盤2に当接させた状態とする。図3は、タイミングt3における射出系メカニズムの様子を示している。
【0034】
次に、図示せぬコントローラは、タイミングt3から所定時間が経過したタイミングt4に至ると、第1電動サーボモータ12の回転制御を、回転速度V2の定速回転制御から減速制御に切り替えて、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度を減速すると共に、第2電動サーボモータ18を、スクリュ11を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて第2電動サーボモータの回転速度を加速することで、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度V1に達するタイミングt5までは、スクリュ11に、モータ回転速度V2に対応する定速前進を維持させる。
【0035】
次に、図示せぬコントローラは、上記のタイミングt5に至ると、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の回転速度を急速に減速することで、スクリュ11を急速停止させるように制御する。これによって、スクリュ11が前進を停止させた、1次射出完了のタイミングt6に至るようになっている。このように、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の回転速度を加速から急減速することで、スクリュ11を急速停止させるようにしているので、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の十分に低減された減速を一気に解き放すと同時に、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の急減速をこれに足し合わせて、スクリュ11を停止制御することができ、これにより、スクリュ11の前進減速をきわめて急減速で行うことが可能となって、先の加速性能と同等もしくはそれ以上の減速性能を得ることが可能となる。図4は、タイミングt6における射出系メカニズムの様子を示している。
【0036】
なお、上述した図6のスクリュ前進制御の1例では、スクリュ11の減速制御においても、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18との協働で、スクリュ11の急峻な減速制御を行うようにしているが、スクリュ11の減速制御は第1電動サーボモータ12のみで行うようにしてもよい。この場合には、スクリュ11の減速度合いは従来と同等のものとなるが、図6のタイミングt3以降は、第2直動ブロック5が支持盤2に当接した状態を維持させることができるので、スクリュ11が樹脂(溶融樹脂24)から受ける大きな圧力(荷重)を第2電動サーボモータ18で支承する必要がなくなり、これ以後の第2電動サーボモータ18の負担を大幅に軽減することができる。つまり、薄肉・精密成形で最も重視されるは1次射出の前進加速性能であるので、1次射出の前進加速性能のみを重視する場合には、第2電動サーボモータ18にかかる負荷を少なくできて、同一容量であっても、第2電動サーボモータ18として第1電動サーボモータ12よりも低トルクで高回転出力のモータを用いることができ、第2電動サーボモータ18を第1電動サーボモータ12よりも加減速性能のよいものとすることが、より容易となる。
【0037】
なおまた、第2直動ブロック5を支持盤2に当接させた状態として、スクリュ11の減速制御は第1電動サーボモータ12のみで行う場合には、図7に示すように、第1電動サーボモータ12を第1回転方向Ra1に回転開始すると共に、第2電動サーボモータ18を第2回転方向Rb2に回転開始させて、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18の回転速度がそれぞれ所定速度Vn1、−Vn1に達する(加速される)タイミングtn1までは、スクリュ11に射出開始位置を保持させ、タイミングtn1に至ると、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度を減速させ、第2電動サーボモータ18の回転速度が−Vn2となったタイミングtn2で、第2直動ブロック5を支持盤2に当接させるようにしてもよい。この場合には、メカ寿命や騒音などが多少懸念されるも、スクリュ11の前進加速をより高めることが可能となり、また、同一容量であっても、第2電動サーボモータ18として第1電動サーボモータ12よりも低トルクで高回転出力のモータを用いることができ、第2電動サーボモータ18を第1電動サーボモータ12よりも加減速性能のよいものとすることが、より一層容易となる。
【0038】
続いて、本実施形態のスクリュ11の前進制御(1次射出の制御)の他の例について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態のスクリュ前進制御の他の例の様子を示す説明図であり、図8において、横軸は時間を表し、縦軸は速度(相対速度)を表しており、時間軸に沿った、第1電動サーボモータ12の回転速度、第2電動サーボモータ18の回転速度、スクリュ11の前進速度の変化をそれぞれ示している。
【0039】
図8に示す1次射出開始タイミングの直前のタイミングt11に至ると、射出成形機全体の制御を司る図示せぬコントローラの制御の下に、第1電動サーボモータ12がスクリュ11を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始されて第1電動サーボモータ12の回転速度が加速されると共に、第2電動サーボモータ18がスクリュ11を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始されて第2電動サーボモータ18の回転速度が加速され、第1電動サーボモータ12と第2電動サーボモータ18の回転速度がそれぞれ所定速度V11、−V11に達する(加速される)タイミングt12までは、スクリュ11は射出開始位置を保持される。
【0040】
第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度がV11まで加速されると共に、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度が−V11まで加速されたタイミングt12に至ると、図示せぬコントローラは、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第2回転方向Rb2の回転速度を急減速させ、これによって、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の十分に高められた加速を一気に解き放すことで、スクリュ11は、急速な加速度で前進駆動を開始される。例えば、スクリュ11は、20G程度の加速度で加速されて、タイミングt12から、後記するスクリュ11の加速完了タイミングt13までの、スクリュー11の前進加速時間は、5ms(5ミリ秒)程度が達成される。
【0041】
次に、図示せぬコントローラは、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転速度が設定された所定最高速度V12(モータが出力可能な最高速度とは限らない)まで加速されたタイミングt13に至ると、第1電動サーボモータ12の回転加速を終了させて、第1電動サーボモータ12の制御を回転減速に切り替え、また、第2電動サーボモータ18を、スクリュ11を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて、第2電動サーボモータ18の回転速度を、第1電動サーボモータ12の減速度合いに合わせた加速度合いで加速する。これにより、第2電動サーボモータの第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度V11に達するタイミングt14までは、スクリュ11は定速の前進動作を行う。
【0042】
次に、図示せぬコントローラは、上記のタイミングt14に達すると、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の回転速度を加速から急減速することで、スクリュ11の前進速度を急速に減速させ、スクリュ11を急速停止させる。これによって、スクリュ11が前進を停止させた、1次射出完了のタイミングt15に至るようになっている。このように、第1電動サーボモータ12の第1回転方向Ra1の十分に低減された減速を一気に解き放すと同時に、第2電動サーボモータ18の第1回転方向Rb1の急減速をこれに足し合わせて、スクリュ11を停止制御することができ、これにより、スクリュ11の前進減速をきわめて急減速で行うことが可能となって、先の加速性能と同等もしくはそれ以上の減速性能を得ることが可能となる。
【0043】
以上の実施形態では、本発明を射出成形機に適用した例を示したが、本発明はダイカストマシンにも適用可能である。図9は、本発明の他の実施形態に係るダイカストマシンの射出系メカニズムの要部構成を示す図である。
【0044】
図9において、31は固定ダイプレート、32は、固定ダイプレート31に搭載された固定側金型、33は、固定ダイプレート31に対して前後進可能な可動ダイプレート、34は、可動ダイプレート32に搭載された可動側金型、35は、型締め状態にある両金型32、34で形づくられるキャビティ(成形品形成用空間)、36は、固定側金型32にその端部を固定されて、その内部がキャビティ35と金型湯道部37を通じて連通した射出スリーブ、38は、射出スリーブ36の給湯口、39は、射出スリーブ36内を前後進可能な射出プランジャ、40は、固定ダイプレート31と所定距離をおいて対向配置された支持盤、41は、その両端を固定ダイプレート31と支持盤40に固定された複数本の連結・ガイドバー、42は、連結・ガイドバー41に挿通・案内されて、固定ダイプレート31と支持盤40との間を前後進可能な第1直動ブロック、43は、同じく連結・ガイドバー41に挿通・案内されて、固定ダイプレート31と支持盤40との間を前後進可能な第2直動ブロックである。
【0045】
また、44は、第2直動ブロック43に搭載された射出プランジャ駆動用の第1電動サーボモータ、45は、第1電動サーボモータ44の出力軸に固定された第1駆動プーリ、46は、第1電動サーボモータ44の回転を直線運動に変換する第1ボールネジ機構(請求項でいうボールネジ機構A)、47は、第2直動ブロック43に回転可能に保持された第1ボールネジ機構46のネジ軸(第1ボールネジ機構46の回転部)、48は、ネジ軸47に螺合されると共に、その端部を第1直動ブロック42に固定されて、ネジ軸47の回転で第1直動ブロック42と一体となって前後進する、第1ボールネジ機構46のナット体(第1ボールネジ機構46の直動部)、49は、ネジ軸47に固定されて、第1電動サーボモータ44の回転を、第1駆動プーリ45、図示せぬ第1タイミングベルトを介して伝達される第1被動プーリである。
【0046】
また、50は、支持盤40に搭載された射出プランジャ駆動用の第2電動サーボモータ、51は、第2電動サーボモータ50の出力軸に固定された第2駆動プーリ、52は、第2電動サーボモータ50の回転を直線運動に変換する第2ボールネジ機構、53は、支持盤40に回転可能に保持された第2ボールネジ機構52のネジ軸(第2ボールネジ機構52の回転部)、54は、ネジ軸53に螺合されると共に、その端部を第2直動ブロック43に固定されて、ネジ軸53の回転で第2直動ブロック43と一体となって前後進する第2ボールネジ機構52のナット部(第2ボールネジ機構52の直動部)、55は、ネジ軸53に固定されて、第2電動サーボモータ50の回転を、第2駆動プーリ55、図示せぬ第2タイミングベルトを介して伝達される第2被動プーリである。
【0047】
なお、56は、金属(溶融金属ないし固化し始めた金属ないし固化した金属)示している。
【0048】
図9に示す構成において、第1電動サーボモータ44の回転は、第1駆動プーリ45、図示せぬ第1タイミングベルト、第1被動プーリ49を介して、第1ボールネジ機構46のネジ軸47に伝達され、ネジ軸47が回転することで、ナット体48がネジ軸47に沿って軸方向移動し、ナット体48と一体となって第1直動ブロック42や射出プランジャ39が、軸方向に前後進可能なようになっている。また、第2電動サーボモータ50の回転は、第2駆動プーリ51、図示せぬ第2タイミングベルト、第2被動プーリ55を介して、第2ボールネジ機構52のネジ軸53に伝達され、ネジ軸53が回転することで、ナット体54がネジ軸53に沿って軸方向移動し、ナット体54と一体となって、第2直動ブロック43や第1ボールネジ機構46のネジ軸47や第1ボールネジ機構46の直動で移送される部材(射出プランジャ39など)が、軸方向に前後進可能なようになっている。
【0049】
このように、本他の実施形態では、射出プランジャ39が、第1電動サーボモータ44の回転でも、第2電動サーボモータ50の回転でも、軸方向に移送可能となっているので、先に述べた射出成形機の実施形態と同様の手法で、射出制御(射出プランジャ39の前進制御)を行うことができ、先に述べた射出成形機の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0050】
なお、上述した射出成形機やダイカストマシンの実施形態では、第1電動サーボモータと第2電動サーボモータをそれぞれ1つずつ用いた例を示したが、第1電動サーボモータとして2つ以上のモータを用いても、あるいは、第2電動サーボモータとして2つ以上のモータを用いてもよく、この場合には、2つ以上のモータの出力を1つの被動プーリに同時に伝達するように構成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【図5】本発明の射出用部材の加速原理を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、スクリュ前進制御の1例の様子を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、スクリュ前進制御の1例の変形を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る射出成形機における、スクリュ前進制御の他の1例の様子を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るダイカストマシンの射出系メカニズムの要部構成を示す説明図である。
【図10】従来の第1例の射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【図11】従来の第2例の射出成形機の要部構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ヘッドストック
2 支持盤
3 連結・ガイドバー
4 第1直動ブロック
5 第2直動ブロック
6 加熱シリンダ
7 ノズル
8 固定側金型
9 可動側金型
10 キャビティ
11 スクリュ
12 スクリュ直動用の第1電動サーボモータ
13 第1駆動プーリ
14 第1ボールネジ機構
15 ネジ軸
16 ナット体
17 第1被動プーリ
18 スクリュ直動用の第2電動サーボモータ
19 第2駆動プーリ
20 第2ボールネジ機構
21 ネジ軸
22 ナット部
23 第2被動プーリ
24 溶融樹脂
31 固定ダイプレート
32 固定側金型
33 可動ダイプレート
34 可動側金型
35 キャビティ
36 射出スリーブ
37 金型湯道部
38 給湯口
39 射出プランジャ
40 支持盤
41 連結・ガイドバー
42 第1直動ブロック
43 第2直動ブロック
44 射出プランジャ駆動用の第1電動サーボモータ
45 第1駆動プーリ
46 第1ボールネジ機構
47 ネジ軸
48 ナット体
49 第1被動プーリ
50 射出プランジャ駆動用の第2電動サーボモータ
51 第2駆動プーリ
52 第2ボールネジ機構
53 ネジ軸
54 ナット部
55 第2被動プーリ
56 金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後進可能な射出用部材の直動駆動源としての1つ以上の第1サーボモータと1つ以上の第2サーボモータとを備え、前記第1サーボモータの回転でその回転部が回転駆動されるボールネジ機構Aの直動部を、前記射出用部材の基端部を保持した部材に固定し、前記第2サーボモータの回転によって前記ボールネジ機構Aの回転部を前後進させる構成をとる成形機における射出制御方法であって、
前記射出用部材が前進開始する前に、前記第1サーボモータを前記射出用部材を前進させる第1回転方向Ra1に回転開始させて前記第1サーボモータの回転速度を加速すると共に、前記第2サーボモータを前記射出用部材を後退させる第2回転方向Rb2に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速して、前記第1サーボモータと前記第2サーボモータの回転速度がそれぞれ所定速度に達するまでは、前記射出用部材を実質的に射出開始位置に保持するようにし、
前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転速度と前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度がそれぞれ所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速前進させるようにしたことを特徴とする成形機における射出制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機の射出制御方法において、
前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)として、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の定速回転によって、前記射出用部材を定速度で前進させることを特徴とする成形機における射出制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の成形機の射出制御方法において、
前記第1サーボモータを、前記第1回転方向Ra1の定速回転から減速開始させて、前記第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、前記第2サーボモータを、前記第1サーボモータの減速開始と略同時に、前記射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速することで、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、前記射出用部材に略定速前進を維持させ、
前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速停止させるようにしたことを特徴とする成形機における射出制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の成形機の射出制御方法において、
前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速が終了すると、前記第1サーボモータの回転速度を減速すると共に、前記第2サーボモータを、前記第1サーボモータの減速開始と略同時に、前記射出用部材を前進させる第1回転方向Rb1に回転開始させて前記第2サーボモータの回転速度を加速することで、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達するまでは、前記射出用部材に略定速前進を維持させ、
前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度が所定速度に達すると、前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転減速を継続させつつ、前記第2サーボモータの前記第1回転方向Rb1の回転速度を減速することで、前記射出用部材を急速停止させるようにしたことを特徴とする成形機における射出制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の成形機の射出制御方法において、
前記第1サーボモータの前記第1回転方向Ra1の回転加速の終了と略同時に、前記第2サーボモータの前記第2回転方向Rb2の回転速度を0(零)とすると共に、この前記第2サーボモータの回転停止と略同時に、前記ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロックを固定部材に当接させ、前記射出用部材の前進完了まで、前記ボールネジ機構Aの回転部を保持した保持ブロックを固定部材に当接させた状態を維持させるようにしたことを特徴とする成形機における射出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−230192(P2008−230192A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76868(P2007−76868)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】