説明

成形機

【課題】 カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を用いて、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を加熱圧縮成形により成形する成形機において、成形品の密度を均一にすること。
【解決手段】 カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を用いて、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を加熱圧縮成形により成形する成形機において、固定側金型と可動側金型とで形成される一面または該一面の一部のみが開放された閉空間の厚さが、成形品の厚みよりも所定量大きい状態で、この閉空間内に成形原料を供給充填して、金型を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料、例えばカーボン微粒子の表面に樹脂をコーティングした成形原料を用いて加熱圧縮成形を行う成形機に係り、特に、燃料電池のセパレータのように、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を成形するのに好適な成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(例えば、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell))に用いられるセパレータには、その両面に複数の溝が形成されたものがあり、このような、燃料電池のセパレータの作製手法としては、カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を、成形機で加熱圧縮成形することによりセパレータを得る手法がある。
【0003】
図9は、その表裏に複数の溝を有するセパレータを、粉末状の成形原料を加熱圧縮成形することによって作製する、従来の手法を示す図である。
【0004】
図9において、101は、図示せぬ固定ダイプレートに搭載された固定側金型、101bは、セパレータの一面に複数の溝を形成するために、固定側金型101の凹部101aの底面に形成された複数の突条、102は、図示せぬ可動ダイプレートに搭載され、可動ダイプレートと共に上下動する可動側金型、102bは、セパレータの他の一面に複数の溝を形成するために、可動側金型102の凸部102aの表面に形成された複数の突条、103は、カーボン微粒子の表面にフェノール系樹脂をコーティングしてなる粉末状の成形原料である。
【0005】
図9に示す従来の手法では、図示せぬ型開き状態において、適宜の手段により一定量の成形原料103が固定側金型101の凹部101aに供給充填され、この後、型閉じ(型締め)動作が開始されて、可動側金型102が固定側金型101に向かって下降する(図9の(a))。型閉じ動作が進行すると、可動側金型102の突条102bの表面が成形原料103の表面に接触し(図9の(b))、次に、突条102bが成形原料103内に食い込み、PL面(金型パーティングライン面)が閉じられた型閉じ完了状態(型締め状態では)では、成形原料103はセパレータの厚みに相当する厚みまで圧縮され(図9の(c))、この状態で所定時間の間加熱を行うことで、図9の(c)に示すような成形品としてのセパレータ104を得るようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形品をフェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂を用いて成形する場合、一般的に加熱圧縮成形法が用いられ、この加熱圧縮成形法は、熱可塑性樹脂を用いる射出成形法に較べると、1成形サイクル時間は長いものの、射出成形法のように溶融樹脂が射出されると即座にその表面がスキン層として固化し始めることがないので、薄肉でかつ多数の溝が有する燃料電池のセパレータなどへの適用では、金型転写性の面で優れている。
【0007】
ところで、図9に示した従来の手法では、図9の(a)に示す状態では、固定側金型101の突条101bの間には成形原料103が入り込んでいるが、可動側金型102側には未だ成形原料103は非接触状態にあり、この状態から型閉じ動作の進行に伴い、可動側金型102の突条102bが成形原料103内に食い込みことになるので、このような成形原料103への圧縮過程で成形原料103に密な部分と粗な部分とを生じて、成形品としてのセパレータ104の密度が不均一になるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を用いて、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を加熱圧縮成形により成形する成形機において、成形品の密度を均一にして、良品成形を達成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した目的を達成するため、カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を用いて、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を加熱圧縮成形により成形する成形機において、固定側金型と可動側金型とで形成される一面または該一面の一部のみが開放された閉空間の厚さが、成形品の厚みよりも所定量大きい状態で、この閉空間内に成形原料を供給充填して、金型を振動させるように、構成する。
【発明の効果】
【0010】
固定側金型と可動側金型とで形成される、例えばその上面のみが開放された閉空間の厚さが、成形品の厚みよりも所定量大きい状態(例えば、成形品の全体厚みの略3倍程度の厚み)で、この閉空間内に上方から粉末状の成形原料を供給充填して、金型を振動させると、固定側金型の突条間の隙間および可動側金型の突条間の隙間の隅々まで成形原料が均一に行き渡り、閉空間内の成形原料の密度(粉末密度)を均一な状態とすることができる。したがって、この均一な密度の粉末状の成形原料を圧縮して加熱して得られる成形品は、可及的に均一な密度をもつものとなり、品質に優れた成形品を得ることができる。また、固定側金型と可動側金型とで形成される閉空間を、その上面のみが開放された閉空間として、この閉空間内に上方から粉末状の成形原料を供給充填するようになすと、成形原料の供給の途上で固定側金型と可動側金型とを振動させることで、成形原料の供給充填の完了時点では成形原料の密度は概ね均一なものとなっているので、成形原料の供給充填の完了後の金型振動時間をごく短時間で済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1〜図8は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)による成形機に係り、図1は、本実施形態の成形機の要部構成を上面から見た説明図である。なお、本実施形態は、成形品としてその両面に複数の溝をもつ板状のセパレータ(燃料電池のセパレータ)を、加熱圧縮成形により成形する成形機への適用例である。
【0012】
図1において、1は固定ダイプレート、2は、タイバー3に挿通・案内されて図示左右方向に前後進可能な可動ダイプレート、4は、図示せぬ保持プレート(テールストック)に搭載された型開閉用サーボモータ、5は、図示せぬ保持プレートにその回転部を回転可能に保持され、型開閉用サーボモータ4の回転を直線運動に変換するボールネジ機構、6は、図示せぬ保持プレートと可動ダイプレート2とにそれぞれ連結され、ボールネジ機構5の直線運動部により伸張または折り畳み駆動されて、可動ダイプレート2を図示左右方向に前後進駆動するトグルリンク機構、7は、固定ダイプレート1に搭載された固定側金型、8は、可動ダイプレート2に搭載された可動側金型(図1では可動側金型8の一部を破断して示してある)、9は、固定ダイプレート1に搭載され、図示していないが振動発生用サーボモータと該サーボモータの回転を直線運動に変換するボールネジ機構と該ボールネジ機構で微小往復駆動されて固定側金型7に衝合する微小往復動部材とを備えた、固定側金型7に振動を与えるための振動発生部、10は、可動ダイプレート2に搭載され、図示していないが振動発生用サーボモータと該サーボモータの回転を直線運動に変換するボールネジ機構と該ボールネジ機構で微小往復駆動されて可動側金型8に衝合する微小往復動部材とを備えた、可動側金型8に振動を与えるための振動発生部、11は、固定側金型7と可動側金型8とで形成されるその上面のみが開放された閉空間内に、該閉空間の上方から形成原料(カーボン微粒子の表面にフェノール系樹脂をコーティングしてなる粉末状の成形原料)を供給充填する成形原料供給装置、12は、例えば固定ダイプレート1に搭載され、固定側金型7と可動側金型8とで形成される閉空間の開放された上面(すなわち、ここでは可動側金型8の上面開口)に、閉塞用金型を嵌め込んだり嵌め込んだ閉塞用金型を取り外す閉塞部材着脱装置である。
【0013】
図2は本実施形態の固定側金型7を示す図で、図2の(a)は固定側金型7の上面図、図2の(b)は図2の(a)の左側面図である。図2において、7aは固定側金型7の凸部、7bは、セパレータの一面に複数の溝を形成するために、凸部7aの表面上に形成された複数の突条である。
【0014】
図3は本実施形態の可動側金型8を示す図で、図3の(a)は可動側金型8の上面図、図3の(b)は図3の(a)の右側面図である。図3において、8aは可動側金型8の凹部、8bは、セパレータの他の一面に複数の溝を形成するために、凹部8aの底面に形成された複数の突条、8cは、凹部8aと連通するように可動側金型8の上面に形成された上面開口である。凹部8aには、固定側金型7の凸部7aが入れ/出し可能となっており、上面開口8cには、閉塞部材着脱装置12により閉塞用金型(これについては後述する)が、嵌め込み/取り外し可能となっている。
【0015】
図4は本実施形態の成形原料供給装置11を示す図で、本実施形態の成形原料供給装置11は、図1に示すように、成形機の横型の(可動ダイプレートの移動方向が水平方向の)型開閉系メカニズムの側方に配置されている。
【0016】
図4において、21は、成形原料供給装置11の全体を保持した適宜のベース部材、22は、ベース部材21上に設けられ、成形原料供給装置11の主体部を図4において左右方向(図1において上下方向)に移送する、例えばサーボモータを駆動源とするY方向駆動部、23は、Y方向駆動部22の可動部材上に設けられ、成形原料供給装置11の主体部を高さ方向に上下動させる、例えばサーボモータを駆動源とするZ方向駆動部、24は、Z方向駆動部23の可動部材上に取り付けられた保持ブロック、25は、保持ブロック24に取り付けられたスリーブ、26は、スリーブ25の先端に取り付けられた第1の原料供給筒、27は、スリーブ25に支持材28を介して保持され、第1の原料供給筒26から落下してくる成形原料を、1成形サイクル分の分量に相当する量だけ計量して、計量した成形原料を例えば電磁駆動される開閉扉を通じて所定のタイミングで落下させる計量供給部、29は、計量供給部27に接続され、計量供給部27から落下してくる成形原料を、固定側金型7と可動側金型8とで形成される上面が開放された閉空間内に供給充填するための第2の原料供給筒、30は、スリーブ25内に回転可能に保持された原料搬送用のスクリュー、31は、スクリュー30の基端部に固着されるとともに、保持ブロック24に軸受けを介して回転可能に保持された回転体、32は、回転体31に固着されるとともに、図示せぬサーボモータの回転が伝達される被動プーリ、33は、図示せぬ形成原料貯蔵部から例えば搬送チューブなどを通して成形原料が導入されるホッパー、24a、25aは、ホッパー33からの成形原料をスリーブ25の基部側内部に導入するために、保持ブロック24、スリーブ25にそれぞれ穿設された原料導入穴である。
【0017】
図4に示す構成において、ホッパー33からスリーブ25の基部側内部に落下した成形原料は、図示せぬサーボモータによって被動プーリ32、回転体31を介してスクリュー30が所定方向に回転駆動されることで、スクリュー30のネジ送り作用によってスクリュー30の前方側に移送され、第1の原料供給筒26を経て計量供給部27に送り込まれて、計量供給部27によって1成形サイクル分の分量に相当する量の成形原料が計量される。そして、金型内への成形原料の供給タイミングに至ると、成形機の図示せぬコントローラからの指示により、計量供給部27が計量した成形原料を落下させ、第2の原料供給筒29を通じて成形原料が金型内に供給充填される。
【0018】
また、図4に示す構成において、成形原料の金型内への供給充填の前の所定時点に至ると、成形機の図示せぬコントローラからの指示により、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部が図4で左方向に前進駆動され、次に、Z方向駆動部23によって成形原料供給装置11の主体部が下降駆動されて、これにより、成形原料供給装置11の第2の原料供給筒29の先端を、可動側金型8の前記した上面開口8c内に位置付けるようになっている(後述する図6参照)。この後、成形機の図示せぬコントローラからの指示により、計量供給部27が計量した成形原料を落下させると同時に、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部が前後進駆動されて、第2の原料供給筒29の先端を上面開口8cの長手方向に沿って往復動させて、これにより、固定側金型7と可動側金型8とで形成される上面が開放された閉空間内に、成形原料を均等に供給充填するようになっている。そして、成形原料の金型内への供給充填が完了すると、成形機の図示せぬコントローラからの指示により、Z方向駆動部23によって成形原料供給装置11の主体部が上昇駆動されて、これにより、成形原料供給装置11の第2の原料供給筒29の先端を、可動側金型8の上面開口8cから離脱させ、次に、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部を図4で右方向に後退駆動させて、成形原料供給装置11を所定の待機状態におくようになっている。
【0019】
図5は、本実施形態の固定側金型7と可動側金型8との関係が、成形原料の供給受け入れ状態にある際の、固定側金型7と可動側金型8とを示す断正面図である。可動ダイプレート2が型閉じ方向に移送されて、これにより、可動側金型8の凹部8a内に固定側金型7の凸部7aが所定量入り込んだ図5に示す状態に至ると、型閉じ動作は一旦中断される。このとき、固定側金型7と可動側金型8とにより、その上面のみが開放された閉空間41が形成され、この閉空間41の厚みSは、成形品としてのセパレータの全厚みの略3倍となるようにされている。また、この状態においては、上記の閉空間41の開放面である可動側金型8の上面開口8cの長手方向中心線の延長方向(図5で紙面に対して奥行き方向である)に、成形原料供給装置11の第2の原料供給筒29の中心線が一致するようになっている。さらにまた、この状態においては、前記した閉塞部材着脱装置12によって持ち運ばれる後記する閉塞用金型は、上記の閉空間41の開放面(可動側金型8の上面開口8c)から待避した待機状態におかれている。
【0020】
なお、図5および後記する図6、図7において、8c−1は、可動側金型8の上面開口8cに設けたテーパー面であり、このテーパー面8c−1は、図1、図3では図示を割愛してある。
【0021】
図6は、固定側金型7と可動側金型8とで形づくられる厚みがSの前記閉空間41内に、成形原料供給装置11により成形原料を供給する動作を示す図である。図5の状態から、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部が前進駆動され(図6で紙面の裏から表に向かう方向)、次に、Z方向駆動部23によって成形原料供給装置11の主体部が下降駆動されて、図6に示すように、成形原料供給装置11の第2の原料供給筒29の先端が可動側金型8の上面開口8c内に位置付けられる。然る後、計量供給部27が計量した成形原料を落下させると同時に、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部を前後進駆動して、第2の原料供給筒29の先端を上面開口8cの長手方向に沿って往復動させ(図6で紙面と直交する方向)、これにより、前記閉空間41内に成形原料を均等に供給充填する。この成形原料の閉空間41内への供給充填の開始と同時に、前記した振動発生部9、10によって、固定側金型7および可動側金型8を、例えば数10μmのストロークでかつ数10Hz程度の往復周期で高速に振動させ、これによって、固定側金型7の突条7b間の隙間および可動側金型8の突条8b間の隙間の隅々まで成形原料を均一に行き渡らせるとともに、閉空間41内の成形原料の密度(粉末密度)を均一な状態となるようにする。この固定側金型7および可動側金型8の振動は、成形原料の閉空間41内への供給充填後も、数秒程度は継続して実行されることが望ましく、こうすることで、閉空間41内の成形原料の密度(粉末密度)をより均一な状態とすることができる。
【0022】
閉空間41内への成形原料の供給充填が完了し、また、固定側金型7および可動側金型8への振動付与を終了させた後、Z方向駆動部23によって成形原料供給装置11の主体部が上昇駆動され、次に、Y方向駆動部22によって成形原料供給装置11の主体部が後退駆動されて(図6で紙面の表から裏に向かう方向)、成形原料供給装置11は所定の待機状態におかれる。
【0023】
図7は、閉空間41内への成形原料の供給充填が完了し、成形原料供給装置11が所定の待機状態へ移行した後、閉塞部材着脱装置12によって、閉空間41の開放面(可動側金型8の上面開口8c)に閉塞用金型を嵌め込む動作を示す図である。閉塞部材着脱装置12は、図示していないが、水平往復動機構と、該水平往復動機構の水平直線移動する水平移動部に設けられた上昇/下降機構と、該上昇/下降機構の上下移動部に例えば磁力により保持可能な閉塞用金型とを、具備したものとなっており、図7では、閉塞用金型51のみを図示してある。
【0024】
閉空間41内への成形原料の供給充填が完了し、成形原料供給装置11が所定の待機状態へ移行すると、成形機の図示せぬコントローラからの指示により、閉塞部材着脱装置12は、水平往復動機構の水平移動部を図7で左方向に移動させ、次に、上昇/下降機構の上下移動部を下降させ、上下移動部に保持した閉塞用金型51を可動側金型8の上面開口8c(閉空間41の開放面)に嵌め込んだ後、上下移動部による閉塞用金型51の保持を解除し、然る後、上昇/下降機構の上下移動部を上昇させる。これにより、成形原料が満たされた閉空間41は完全な密閉空間となる。
【0025】
成形原料が満たされた閉空間41を完全な密閉空間とした後、成形機の図示せぬコントローラは、型開閉用サーボモータ4を駆動制御して、可動ダイプレート2を型閉じ方向に移送し、可動側金型8をセパレータの形状を規定する位置(成形空間の厚みがセパレータの厚みとなる位置)まで移動させて、固定側金型7と可動側金型8のPL面を閉じ切るとともに、所期の型締め力を発生させて、成形空間内の成形原料に圧縮力を付与する。また、この型締め状態では、両金型7、8に内蔵された図示せぬヒータにより成形空間内の成形原料を所定温度で加熱する。このような、加熱圧縮を例えば5分間程度行うことにより、カーボン微粒子の表面にフェノール系樹脂をコーティングしてなる粉末状の成形原料は、完全に一体化し、この後、所定の冷却時間をおくことにより、成形品としての導電性をもつセパレータが作製される。
【0026】
上記の冷却が終了した後、閉塞部材着脱装置12の上昇/下降機構の上下移動部を下降させて、上下移動部により閉塞用金型51を保持させ、次に、上下移動部を上昇させることにより、閉塞用金型51は可動側金型8の上面開口8cから取り外され、然る後、閉塞部材着脱装置12の水平往復動機構の水平移動部を、図7で右方向に移動させることで、閉塞部材着脱装置12によって持ち運ばれる閉塞用金型51は、前記した待機状態におかれる。
【0027】
図8は、本実施形態の成形機によりセパレータを成形する様子を模式的に示す図である。可動側金型8を型締め方向に移動させ(図8の(a))、可動側金型8と固定側金型7とで形成される閉空間41の厚みが、セパレータの厚みよりも所定量大きな状態となる位置で、可動側金型8を一旦停止させる(図8の(b))。次に、閉空間41の開放された上面から閉空間41内へ一定量の成形原料61を供給充填しつつ、両金型7、8を振動させる(図8の(c))。成形原料61の供給充填が完了し、両金型7、8への振動付与が終了すると、閉空間41の上面が閉塞され、可動側金型8はセパレータの形状を規定する位置まで移動して型締め状態となると同時に、両金型7、8により成形原料61が加熱される(図8の(d))。このような手法をとる本実施形態では、成形原料61を圧縮する前に、固定側金型7の突条7b間の隙間および可動側金型8の突条8b間の隙間の隅々まで成形原料61が均一に行き渡り、閉空間41内の成形原料61の密度(粉末密度)を均一な状態とすることができる。したがって、この均一な密度の粉末状の成形原料61を圧縮して加熱して得られるセパレータ62は、図8の(d)に示すように、可及的に均一な密度をもつものとなり、品質に優れたセパレータを得ることができる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、固定側金型7に凸部7aを設け、可動側金型8に凹部8aと上面開口8cを設けた構成としているが、上述した実施形態の形状の固定側金型を可動側金型とし、上述した実施形態の形状の可動側金型を固定側金型としてよい。
【0029】
また、上述した実施形態では、固定側金型7と可動側金型8とで形成される閉空間の上面全体を開放した構成としたが、固定側金型7と可動側金型8とで形成される閉空間の上面の一部のみを開放して(つまり、上述した実施形態の可動側金型8の上面開口8cの長さを小さくして)、この開放部位から閉空間内に成形原料を供給充填するようにしてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、粉末搬送用のスクリューを用いた成形原料供給装置11の例を示したが、成形原料供給装置はこれに限るものではなく、1成形サイクル分の計量した一定量の成形原料を、1成形サイクル毎に、固定側金型と可動側金型とで形成される一面または該一面の一部のみが開放された閉空間内に、自動的に供給充填可能な構成であれば、どのような構成の成形原料供給装置でも採用可能である。
【0031】
また、上述した実施形態では、水平往復動機構と上昇/下降機構とをもつ閉塞部材着脱装置12の例を示したが、閉塞用金型またはこれと同等の機能の部材を、閉空間の開放面に嵌め込み/取り外しできるものであれば、どのような構成の閉塞部材着脱装置でも採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形機の要部構成を上面から見た説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成形機の固定側金型を示す上面図および左側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る成形機の可動側金型を示す上面図および右側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る成形機で用いる成形原料供給装置の構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る成形機における、成形原料の供給受け入れ状態にある際の金型などを示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る成形機における、成形原料供給装置の動作を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る成形機における、閉塞部材着脱装置の動作を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る成形機における、成形プロセスの概略を示す説明図である。
【図9】従来技術による加熱圧縮成形の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 固定ダイプレート
2 可動ダイプレート
3 タイバー
4 型開閉用サーボモータ
5 ボールネジ機構
6 トグルリンク機構
7 固定側金型
7a 凸部
7b 突条
8 可動側金型
8a 凹部
8b 突条
8c 上面開口
9、10 振動発生部
11 成形原料供給装置
12 閉塞部材着脱装置
21 ベース部材
22 Y方向駆動部
23 Z方向駆動部
24 保持ブロック
24a 原料導入穴
25 スリーブ
25a 原料導入穴
26 第1の原料供給筒
27 計量供給部
28 支持材
29 第2の原料供給筒
30 スクリュー
31 回転体
32 被動プーリ
33 ホッパー
41 閉空間
51 閉塞用金型
61 成形原料
62 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンと樹脂とを含んだ粉末状の成形原料を用いて、その両面に複数の溝をもつ板状の成形品を加熱圧縮成形により成形する成形機において、
固定側金型と可動側金型とで形成される一面または該一面の一部のみが開放された閉空間の厚さが、前記成形品の厚みよりも所定量大きい状態で、この閉空間内に前記成形原料を供給充填して、金型を振動させることを特徴とする成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機において、
前記固定側金型と前記可動側金型とを含んで構成される型開閉機構は、前記可動側金型が水平方向に前後進する横型の型開閉機構であり、前記成形原料は、その上面または該上面の一部のみが開放された前記閉空間の上方から該閉空間内に供給充填されることを特徴とする成形機。
【請求項3】
請求項2に記載の成形機において、
その上面または該上面の一部のみが開放された前記閉空間の開放部は、前記成形原料を供給充填した後に閉塞され、この閉塞の後に、前記可動側金型が前記成形品の形状を規定する位置まで移動されることを特徴とする成形機。
【請求項4】
請求項1に記載の成形機において、
前記した金型の振動は、前記成形原料の供給充填の途上および供給充填後の所定期間実行されることを特徴とする成形機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の成形機において、
前記金型の振動の駆動源は、サーボモータであることを特徴とする成形機。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の成形機において、
前記成形原料は、カーボン微粒子の表面にフェノール系樹脂をコーティングしたものであり、前記成形品は、その表裏に複数の溝を有する燃料電池のセパレータであることを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−26917(P2006−26917A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204571(P2004−204571)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】