説明

成形機

【課題】小型にして起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性が高い駆動系を有し、製品をより高能率に成形可能な成形機を提供する。
【解決手段】電動モータ6の回転力を型締装置に備えられたボールネジ機構8のナット体12に直接伝達するダイレクト駆動方式の成形機において、前記電動モータ6として、円筒形のモータ固定子32内に円筒形のモータ回転子34を配置してなるビルトインモータを用いる。モータ回転子34の内径は、ナット体12に螺合されたネジ軸13を貫通可能な大きさに形成されており、モータ回転子34は、ネジ軸13と同心に配置される。ナット体12とモータ回転子34とは、端面どうしが突き合わされて、ボルト締結されており、ネジ軸13の軸線方向に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に係り、特に、型締装置に備えられるボールネジ機構のナット体に回転力を与える駆動部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の成形機においては、機械構造を小型化し、かつ駆動系の起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性を改善するため、型締装置に備えられるボールネジ機構の駆動方式として、歯車列やタイミングベルトなどの動力伝達機構を介さずに電動モータの回転力を直接ボールネジ機構のナット体に伝達するダイレクト駆動方式が多く採られている(特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
特許文献1に開示の型締装置は、エンドプレート(テールストック)に開設された透孔内にボールネジ機構を構成するナット(ナット体)が軸受を介して回転自在に保持されており、このナットに螺合されたネジ軸の一端が、移動ダイプレート(可動ダイプレート)に連結されている。エンドプレート内には、円筒形の固定子コイル(モータ固定子)内に円筒形の回転子(モータ回転子)を配置してなるビルトインモータが内蔵されており、ナットがこの回転子の内面に嵌入されている。したがって、この特許文献1に開示の型締装置においては、ナットの外周に回転子が配置された構造になっている。
【0004】
特許文献2に開示の型締装置は、リンクハウジング(テールストック)の背面側に、円筒形のステータ(モータ固定子)と、当該ステータ内に配置された円筒形のロータ(モータ回転子)と、当該ロータの内周に取り付けられたナットハウジングと呼ばれる円筒形の部材とを備えた直動モータ(ビルトインモータ)が、リングハウジングに開設された透孔と同心に取り付けられている。ナットハウジングの内面には、ボールネジ機構を構成するボールネジナット(ナット体)が嵌入されており、ロータ、ナットハウジング及びボールネジナットは、所要の軸受を介して直動モータのケーシングに回転自在に保持されている。また、ボールネジナットには、連結ボルト(ネジ軸)が螺合されており、この連結ボルトの一端は、前記リンクハウジングに開設された透孔を貫通して、直動モータの取付側とは反対側に配置されており、その先端部には、クロスヘッドが取り付けられている。クロスヘッドは、トグル機構(トグルリンク機構)を構成するリンクに連結される。したがって、この特許文献2に開示の型締装置も、ナットの外周にナットハウジング及びロータが配置された構造になっている。
【0005】
特許文献3に開示の型締装置は、トグルサポート(テールストック)に開設された透孔内にボールネジ機構を構成するボールねじナット(ナット体)が回転自在に保持されている。また、トグルサポートの背面には、円筒形のステータコア(モータ固定子)と、当該ステータコア内に配置された円筒形のロータコア(モータ回転子)と、当該ロータコアの内面に取り付けられた回転スリーブと呼ばれる二段円筒形の部材とを備えた駆動装置(ビルトインモータ)が取り付けられ、回転スリーブの大径部には、ボールねじナット(ナット体)が嵌入されている。このボールねじナットに螺合され、トグルサポートに開設された透孔を貫通して駆動装置の取付側とは反対側に配置されたボールねじ軸(ネジ軸)の先端部には、クロスヘッドが取り付けられている。このクロスヘッドは、トグル機構(トグルリンク機構)を構成するリンクに連結される。したがって、この特許文献3に開示の型締装置も、ボールねじナットの外周に回転スリーブ及びロータコアが配置された構造になっている。
【0006】
特許文献1−3に開示の型締装置は、ボールネジ機構のナット体を、これにモータ回転子が直結されたビルトインモータを用いて回転駆動するので、電動モータとナット体とを歯車列やタイミングベルトなどの動力伝達機構を介して連結する場合に比べて、機械構造を小型化できると共に、駆動系の慣性負荷を小さくできて、ナット体を含む駆動系の起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性を改善することができ、製品の成形効率を高めることができる。
【特許文献1】特公平2−55214号公報
【特許文献2】特開平7−329135号公報
【特許文献3】特許第2866314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、駆動系の慣性負荷は、GD、即ち駆動系の重量Gと回転直径Dの2乗との積に比例するので、駆動系の重量G及び回転直径Dを小さくすることが、駆動系の起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性を改善する上で重要である。特に、駆動系の回転直径Dは、2乗で作用するので、これを小さくすることが更に重要となる。
【0008】
ところが、従来例に係る型締装置は、特許文献1−3に開示されているように、いずれもナット体の外周側にモータ回転子を配置する構成であるので、回転直径Dの減少に自ずと限界があり、駆動系の慣性負荷GDを小さくすることが困難である。特に、特許文献2,3に開示の型締装置は、ナット体とモータ回転子との間にナットハウジング又は回転スリーブと呼ばれる部材を配置してなるので、回転直径Dを減少することが更に難しく、駆動系の起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性をより一層改善すること、ひいては製品をより一層高能率に成形することが困難である。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、小型にして起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性が高い駆動系を有し、製品をより高能率に成形可能な成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この目的を達成するため、第1に、固定側金型を搭載する固定ダイプレートと、可動側金型を搭載する可動ダイプレートと、回転可能に保持されたナット体及びこれに螺合されたネジ軸から構成されるボールネジ機構と、このボールネジ機構を保持するテールストックと、このテールストックと前記可動ダイプレートとの間に配置され、前記ネジ軸により駆動されて、前記可動ダイプレートを型開閉方向に駆動するトグルリンク機構と、前記ナット体を回転駆動する電動モータとを備えた成形機において、前記電動モータとして、円筒形のモータ固定子内に前記ネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のモータ回転子を組み込んだビルトインモータを用い、前記モータ回転子と前記ネジ軸とを同心に配置すると共に、前記モータ回転子の端面に前記ナット体の端面を取り付けて、これらモータ回転子とナット体とを前記ネジ軸の軸線方向に配置するという構成にした。
【0011】
このように、モータ回転子の端面にナット体の端面を取り付けると、ナット体の外周側にモータ回転子を配置する場合に比べて、ナット体及びモータ回転子を含む駆動系の回転直径を減少できるので、この駆動系の起動、停止、加速及び減速に関する制御応答性を著しく改善することができ、製品の成形効率を高めることができる。
【0012】
本発明は第2に、前記第1の成形機において、前記テールストックと前記ナット体との間に、前記モータ回転子及び前記ナット体を回転自在に支持する軸受を設けるという構成にした。
【0013】
このように、モータ回転子の端面に取り付けられたナット体とテールストックとの間に、モータ回転子及びナット体を回転自在に支持する軸受を設けると、モータ回転子の内周側に嵌入されたナット体とテールストックとの間に、モータ回転子及びナット体を回転自在に支持する軸受を設ける場合に比べて、軸受の設定間隔を大きくすることができるので、モータ回転子及びナット体を含む駆動系の回転を安定かつ円滑なものにすることができる。
【0014】
本発明は第3に、前記第1の成形機において、前記モータ回転子の回転量を検出する手段として、前記ネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のエンコーダ回転子と、その外周に配置されたコード板と、このコード板と対向に配置された検出素子とからなるロータリエンコーダを備え、前記エンコーダ回転子及び前記コード板を前記モータ回転子と同心に配置すると共に、これらエンコーダ回転子とモータ回転子とを所要の連結具を用いて連結するという構成にした。
【0015】
このように、モータ回転子の回転量を検出する手段として、ネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のエンコーダ回転子の外周にコード板を配置してなるロータリエンコーダを備えると、エンコーダ回転子内にネジ軸を貫通させることができるので、ネジ軸を貫通させることができない円板形のコード板を備えたロータリエンコーダをネジ軸の移動範囲の外側に配置する場合に比べて、型締装置の全長を短かくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の成形機は、型締装置に備えられる電動モータとして、円筒形のモータ固定子内にボールネジ機構を構成するネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のモータ回転子を組み込んだビルトインモータを用い、モータ回転子とネジ軸とを同心に配置すると共に、モータ回転子の端面に前記ナット体の端面を取り付けて、これらモータ回転子とナット体とをネジ軸の軸線方向に配置するので、ナット体の外周側にモータ回転子を配置する場合に比べて、ナット体とモータ回転子とを含む駆動系の回転直径を減少できる。よって、この駆動系の起動、停止、加速及び減速制御に対する応答性を改善できて、製品の成形効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る成形機に備えられる型締装置の実施形態を、図1〜図3を用いて説明する。図1は実施形態に係る型締装置の型開状態の断面図、図2は実施形態に係る型締装置の型閉状態の断面図、図3は実施形態に係る型締装置に備えられる電動モータの断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、実施形態に係る型締装置は、図示しない成形機のベッド上に固定される固定ダイプレート1及びテールストック2と、両端がこれら固定ダイプレート1及びテールストック2に固定された複数本のタイバー3と、タイバー3に案内されて固定ダイプレート1とテールストック2との間で前後進する可動ダイプレート4と、テールストック2と可動ダイプレート4とを連結するトグルリンク機構5と、テールストック2に搭載された型開閉用の駆動源である電動モータ(サーボモータ)6と、電動モータ6の回転量を検出するロータリエンコーダ7と、電動モータ6の回転を直線運動に変換してトグルリンク機構5に伝達するボールネジ機構8とを備えている。固定ダイプレート1には、固定側金型9が搭載され、可動ダイプレート4には、可動側金型10が搭載される。
【0019】
ボールネジ機構8は、テールストック2に軸受11を介して回転可能に保持されたナット体12と、ナット体12に螺合されたネジ軸13と、ネジ軸13の一端に取り付けられたクロスヘッド14とからなり、電動モータ6により回転駆動されるナット体12の回転運動をネジ軸13及びクロスヘッド14の直線運動に変換して、トグルリンク機構5に力を伝達する。
【0020】
トグルリンク機構5は、一端側がテールストック2に回動可能に結合されたBリンク21と、一端側が可動ダイプレート4に回動可能に結合されると共に、他端側がBリンク21の他端側と相対的に回動するように結合されたAリンク22と、一端側がクロスヘッド14に回動可能に結合されると共に、他端側がBリンク21の中間部と相対的に回動するように結合されたCリンク23とからなる。なお、O1はテールストック2に対するBリンク21の結合部、O2はBリンク21に対するAリンク22の結合部、O3はBリンク21に対するCリンク23の結合部、O4は可動ダイプレート4に対するAリンク22の結合部、O5はクロスヘッド14に対するCリンク23の結合部を示している。このように、本例のトグルリンク機構5は、Aリンク22とBリンク21とCリンク23とを有し、5つの結合部(回動中心)O1〜O5をもつ5点軸支構造のリンク機構となっている。なお、図1及び図2には、5点軸支構造を有するダブル式のトグルリンク機構が示されているが、他の形式のトグルリンク機構を備えることも勿論可能である。
【0021】
電動モータ6は、図3に拡大して示すように、ケーシング31と、ケーシング31に固定された円筒形のモータ固定子32と、モータ固定子32の外周に巻回されたモータコイル33と、モータ固定子32内に配置された円筒形のモータ回転子34と、モータ回転子34の外面に取り付けられたモータ磁石35と、モータ回転子34及びモータ磁石35をケーシング31に回転自在に支持する軸受36(図1及び図2参照)とから構成されており、モータ回転子34の内径D2は、ボールネジ機構8を構成するネジ軸13を貫通可能な大きさに形成されている。この電動モータ6は、図1に示すように、モータ回転子34をボールネジ機構8を構成するナット体12及びネジ軸13と同心に配置され、テールストック2の背面側に取り付けられる。
【0022】
前述したボールネジ機構8のナット体12は、図3に示すように、その一端面がモータ回転子34の一端面に突き合わされた状態で、ボルト37を用いてモータ回転子34に締結される。したがって、ナット体12とモータ回転子34とは、ネジ軸13の軸線方向に配置されることになる。なお、モータ回転子34のナット体取付側の端面には、浅い凹み状の段部38が形成されており、この段部38内にナット体12の端部を嵌入することにより、自動的にモータ回転子34に対するナット体12の位置決めがなされるようになっている。
【0023】
ロータリエンコーダ7は、ネジ軸13を貫通可能な大きさの内径を有するリング状のエンコーダ回転子7aと、その外周に配置された図示しないコード板と、このコード板と対向に配置された図示しない検出素子とからなり、電動モータ6の外側に取り付けられる。図1及び図2に示すように、エンコーダ回転子7aとモータ回転子34とは同心に配置されており、これらは、エンコーダ回転子7aの内面にモータ回転子34の一端を圧入することにより連結される。このように、ネジ軸13を貫通可能な大きさの内径を有するリング状のエンコーダ回転子7aを備えたロータリエンコーダ7を用いると、図1に示すように、型開状態において、エンコーダ回転子7a内にネジ軸13を貫通させることができるので、ネジ軸13を貫通させることができない円板形のコード板を備えたロータリエンコーダを、ネジ軸13の移動範囲の外側に配置する場合に比べて、型締装置の全長を短かくすることができる。
【0024】
以下、上記の型締装置を備えた実施形態に係る成形機の動作について説明すると、図1に示す型開状態から電動モータ6を駆動してナット体12を所定の一方向に回転すると、ネジ軸13がトグルリンク機構5を押圧する方向に移動される。その結果、ネジ軸13の先端部に取り付けられたクロスヘッド14によりCリンク23が押圧され、Cリンク23によりBリンク21が押圧され、Bリンク21によりAリンク22が押圧されて、Bリンク21とAリンク22とが徐々に展開される。そして、Bリンク21とAリンク22とが一直線状に展開された段階で、図2に示すように、固定側金型9と可動側金型10とが密着し、所定の型締力がこれら固定側金型9と可動側金型10とに付与される。これにより、金型キャビティ内への成型材料の充填が可能になる。
【0025】
充填物の固化後、電動モータ6を駆動してナット体12を逆方向に回転すると、ネジ軸13がトグルリンク機構5を引く方向に移動される。その結果、ネジ軸13の先端部に取り付けられたクロスヘッド14によりCリンク23が引かれ、Cリンク23によりBリンク21が引かれ、Bリンク21によりAリンク22が引かれて、Bリンク21とAリンク22とが徐々に折り畳まれる。そして、Bリンク21とAリンク22とが完全に折り畳まれた段階で、図1に示すように、固定側金型9と可動側金型10とが所定の間隔だけ離隔する。これにより、金型キャビティからの製品の取り出しが可能になる。
【0026】
ロータリエンコーダ7は、モータ回転子34の回転数を検出し、検出されたモータ回転子34の回転数に応じた信号を、図示しない制御装置に出力する。制御装置は、電動モータ6にサーボ信号を出力し、電動モータ6の起動、停止、加速及び減速をサーボ制御する。
【0027】
図4に比較例に係る型締装置、図5に比較例に係る型締装置に備えられる電動モータ及びナット体の構成を示す。この型締装置は、特許文献1,2,3に開示された型締装置を、実施形態に係る型締装置と比較しやすい形状に書き換えてモデル化したものであり、ボールネジ機構8のナット体12をモータ回転子34の内周に挿入したことを特徴とする。その他については、実施形態に係る成形機の型締装置と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して、説明を省略する。
【0028】
図3と図5の比較から判るように、実施形態に係る型締装置は、モータ回転子34の端面にナット体12の端面を突き合わせるするので、モータ回転子34の内部にナット体12を挿入することを特徴とする比較例に係る型締装置のように、モータ回転子34にナット体12を挿入するための空間部を形成する必要がなく、比較例に係る型締装置に比べて、ナット体12とモータ回転子34とモータ磁石35とから構成される駆動系の外径D1及び内径D2を小さくすることができる。
【0029】
周知のように、モータの立上り時のトルクは、回転速度によって変化する。そして、電動モータの起動から定速に至るまでの平均トルクを平均加速トルクT(kg・m)、モータに作用する慣性負荷をGD(kgf・m)、モータの回転速度をN(min−1)とすると、GDなる慣性負荷を時間t(sec)の間に回転速度Nまで加速するときに必要な平均加速トルクTは、下記の(1)式で求められます。
【数1】

【0030】
慣性負荷GDのGは、駆動系の重量(kgf)であり、Dは駆動系の外径(m)である。上述のように、実施形態に係る型締装置は、比較例に係る型締装置に比べて、駆動系の外径D1及び内径D2を小さくすることができるので、上記の(1)式から、平均加速トルクT及びモータの回転速度Nを一定とした場合、実施形態に係る型締装置は、慣性負荷を回転速度Nまで加速するに要する時間(加速時間)tを、比較例に係る型締装置よりも短縮することができる。
【0031】
例えば、比較例に係る型締装置の駆動系の外径を250mm、内径を200mm、長さを200mm、比重を7.8、平均加速トルクTを100kg・mとすると、GD=1.41kgf・mとなり、加速時間t=0.03secとなるのに対して、実施形態に係る型締装置の駆動系の外径を200mm、内径を150mm、長さを200mm、比重を7,8、平均加速トルクTを100kg・mとすると、GD=0.69kgf・mとなり、加速時間t=0.015secとなる。
【0032】
ここで、型締装置の型開量を50mm、型開速度を500mm/secとすると、型締装置の型開閉時間(片道)は、比較例に係る型締装置の場合、加速時間が0.03sec、加速時間内の可動側金型10の移動距離が15mm(=0.03×500)、定速で開閉される可動側金型10の移動距離が35mm(=50−15)、可動側金型10を35mm移動するに要する時間が0.07sec(=35÷500)であることから、0.13sec(=0.07+0.03×2)となり、往復では、0.26secとなる。同様の条件で、加速時間が0.015secである実施形態に係る型締装置の場合、型締装置の型開閉時間(往復)が0.23secとなる。
【0033】
両者の差は、0.03secであり、この差が、成形の1サイクル当たりの時間差となる。これは、比較例に係る型締装置を備えた成形機を用いた場合、1サイクル当たり2.0secを要するディスク成形を、実施形態に係る型締装置を備えた成形機を用いた場合には、1サイクル当たり1.97secで行えることを意味する。1日の稼働時間を24時間とした場合、比較例に係る型締装置を備えた成形機が生産可能なディスクは43200枚であるのに対して、実施形態に係る型締装置を備えた成形機が生産可能なディスクは45685枚となり、生産性を著しく高めることができる。
【0034】
また、図1と図4の比較から判るように、実施形態に係る型締装置は、ナット体12の端面をモータ回転子34の端面に突き合わせし、テールストック2とナット体12との間に設けられた軸受11及びケーシング31とモータ回転子34との間に設けられた軸受36によって、ナット体12とモータ回転子34とモータ磁石35とからなる駆動系を支持するので、ナット体12をモータ回転子34内に挿入する比較例に係る型締装置に比べて、軸受11,36の設定間隔を大きくすることができる。よって、実施形態に係る型締装置は、比較例に係る型締装置に比べて、駆動系の回転を安定かつ円滑なものにすることができる。
【0035】
なお、前記実施形態においては、モータ回転子34の内面に直接ナット体12を嵌入したが、かかる構成に換えて、モータ回転子34とナット体12との間に、ナットハウジング又は回転スリーブと呼ばれる部材を配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る型締装置の型開状態の断面図である。
【図2】実施形態に係る型締装置の型閉状態の断面図である。
【図3】実施形態に係る型締装置に備えられる電動モータ及びナット体の断面図である。
【図4】比較例に係る型締装置の型閉状態の断面図である。
【図5】比較例に係る型締装置に備えられる電動モータ及びナット体の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 固定ダイプレート
2 テールストック
3 タイバー
4 可動ダイプレート
5 トグルリンク機構
6 電動モータ
7 ロータリエンコーダ
8 ボールネジ機構
9 固定側金型
10 可動側金型
11 軸受
12 ナット体
13 ネジ軸
14 クロスヘッド
21 Bリンク
22 Aリンク
23 Cリンク
31 ケーシング
32 モータ固定子
33 モータコイル
34 モータ回転子
35 モータ磁石
36 軸受
37 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型を搭載する固定ダイプレートと、可動側金型を搭載する可動ダイプレートと、回転可能に保持されたナット体及びこれに螺合されたネジ軸から構成されるボールネジ機構と、このボールネジ機構を保持するテールストックと、このテールストックと前記可動ダイプレートとの間に配置され、前記ネジ軸により駆動されて、前記可動ダイプレートを型開閉方向に駆動するトグルリンク機構と、前記ナット体を回転駆動する電動モータとを備えた成形機において、
前記電動モータとして、円筒形のモータ固定子内に前記ネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のモータ回転子を組み込んだビルトインモータを用い、前記モータ回転子と前記ネジ軸とを同心に配置すると共に、前記モータ回転子の端面に前記ナット体の端面を取り付けて、これらモータ回転子とナット体とを前記ネジ軸の軸線方向に配置したことを特徴とする成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機において、
前記テールストックと前記ナット体との間に、前記モータ回転子及び前記ナット体を回転自在に支持する軸受を設けたことを特徴とする成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の成形機において、
前記モータ回転子の回転量を検出する手段として、前記ネジ軸を貫通可能な内径を有する円筒形のエンコーダ回転子と、その外周に配置されたコード板と、このコード板と対向に配置された検出素子とからなるロータリエンコーダを備え、前記エンコーダ回転子及び前記コード板を前記モータ回転子と同心に配置すると共に、これらエンコーダ回転子とモータ回転子とを所要の連結具を用いて連結したことを特徴とする成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220509(P2009−220509A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69609(P2008−69609)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】