説明

成形機

【課題】構造が簡単で安価かつ容易に実施可能な大型の電動式成形機を提供する。
【解決手段】第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14として、複数巻3相モータを用いる。各射出用電動サーボモータ13,14のそれぞれに対応して、そのモータの巻線数に応じた数のサーボアンプ5A〜5D及びインバータ6A〜6Dを接続する。サーボアンプ5A〜5Dのうちの1つをマスターサーボアンプとし、他をスレーブサーボアンプとする。また、いずれか1つの射出用電動サーボモータにその回転方向及び回転量を検出するエンコーダを備え、その出力信号を各サーボアンプ5A〜5Dに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機やダイカストマシンなどの成形機に係り、特に、1つの可動部を複数の電動サーボモータを用いて駆動するマルチモータ式成形機に備えられるモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形機には、大別して、油圧駆動方式の成形機(油圧式成形機)と電動駆動方式の成形機(電動式成形機)とがあるが、近年においては、油圧式成形機のように工場内を作動油で汚さず、また、油圧式成形機に比べて高精度の位置制御及び速度制御が可能であることから、可動部である射出装置、型開閉装置及び押出装置等の駆動源として電動サーボモータを用いた電動式成形機が普及しつつある。
【0003】
しかるに、1つの電動サーボモータにより得られる最大トルクには限界があるので、大型の成形機においては、1つの可動部に対応して複数の電動サーボモータを備え、それぞれの電動サーボモータを同期駆動して、必要なトルクを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、成形機用の電動サーボモータとしては、3相モータが一般的に用いられるが、成形機に大出力の単数巻3相モータを備えると、それを制御するためには、インバータの最大耐圧を高くしたり、最大電流を大きくする必要があると共に、サーボコントローラ等の制御系についても、その対応電圧を大きくする必要がある。かかる問題を解決するため、成形機用の電動サーボモータとして複数巻3相モータを用いて、それぞれの3相巻線に3相インバータとサーボコントローラとを接続すると共に、各サーボコントローラを互いに接続して、各3相インバータから各3相巻線に供給される駆動電流の位相が一致するように制御する技術も従来提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−28751号公報
【特許文献2】特許第3661578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、成形機の可動部を駆動する2つ以上の電動サーボモータのいずれか1つに対応してマスターサーボアンプを設けると共に、他の電動サーボモータに対応してスレーブサーボアンプを設け、マスターサーボアンプは、上位のモーションコントローラから出力される動作指令信号に従って、これに対応する1つのサーボモータを駆動制御すると共に、スレーブサーボアンプに対してトルク指令信号を出力し、スレーブサーボアンプは、マスターサーボアンプから出力されるトルク指令信号に基づいて、対応する他の電動サーボモータに対してトルク制御を行うという構成であるので、マスターサーボアンプにより駆動制御される1つの電動サーボモータの回転量と、スレーブサーボアンプにより駆動制御される他の電動サーボモータの回転量との間にずれが生じやすい。これを是正するため、特許文献1に開示の技術は、各電動サーボモータのモータ軸どうし、及びこれらの電動サーボモータによって回転駆動される可動部の回転軸をベルトで連結しているが、かかる構成によると、成形機の構造が複雑化して成形機が高コスト化すると共に、可動部の設計が困難なものになる。
【0006】
一方、特許文献2に開示の技術は、1つの複数巻3相モータに対応して2つのサーボアンプを備えているので、この技術を応用すれば、大出力の電動サーボモータの搭載が可能になり、電動式成形機のより一層の大型化を図ることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示の技術は、1つの複数巻3相モータに対応して2つのサーボアンプを備えるというものであり、1つの可動部に複数の電動サーボモータを備える技術については何ら開示されていないので、このままでは可動部の駆動に大きなトルクを要する大型の成形機に適用することができない。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造が簡単で安価かつ容易に実施可能な大型の電動式成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この目的を達成するため、第1に、複数の複数巻3相サーボモータと、これら複数の複数巻3相サーボモータの1つに備えられた位置検出器と、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動される回転部及び該回転部により前後進される直動体を有し、前記回転部が前記複数の複数巻3相サーボモータのそれぞれに直結された複数の運動変換機構と、前記直動体の動作を指示するモーションコントローラと、このモーションコントローラから出力される駆動指令信号に基づいて前記複数の複数巻3相サーボモータの1つを駆動するマスターサーボアンプと、該マスターサーボアンプから出力される同期制御信号に基づいて他の複数巻3相サーボモータを駆動するスレーブサーボアンプとを備えた成形機において、前記複数の複数巻3相サーボモータの1つに対応して1台の前記マスターサーボアンプと1乃至複数の前記スレーブサーボアンプを備えると共に、前記他の複数巻3相サーボモータのそれぞれに対応して1乃至複数の前記スレーブサーボアンプを備え、前記マスターサーボアンプ及び前記スレーブサーボアンプは、前記位置検出器の出力信号をフィードバック量として前記複数の複数巻3相サーボモータに対するフィードバック制御を行うという構成にした。
【0010】
本構成によると、全てのサーボアンプが、1つの複数巻3相サーボモータに備えられた位置検出器の出力信号をフィードバック量として、1つの可動部を駆動するために配置された複数の複数巻3相サーボモータに対するフィードバック制御を行うので、これら複数の複数巻3相サーボモータの回転速度及び回転量を高精度に同期させることができる。よって、複数の複数巻3相サーボモータどうし、及びこれら複数の複数巻3相サーボモータによって駆動される可動部の回転部をベルト等で連結する必要がなく、複数の複数巻3相サーボモータのそれぞれと、各複数巻3相サーボモータに対応する運動変換機構の回転部とを直結することができて、電動式成形機の低コスト化が図れると共に、可動部の構成を簡略化できて、設計の自由度を高めることができる。また、複数の複数巻3相サーボモータの1つに対応して1台のマスターサーボアンプと1乃至複数のスレーブサーボアンプとを備えると共に、他の複数巻3相サーボモータのそれぞれに対応して1乃至複数のスレーブサーボアンプを備えるので、大出力の複数巻3相サーボモータを搭載することが可能になり、電動式成形機の大型化を図ることができる。
【0011】
本発明は第2に、前記第1の成形機において、前記運動変換機構として、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動されるネジ軸と、これに螺合されるナット体とからなるボールネジ機構を用いるという構成にした。
【0012】
本構成によると、運動変換機構として、直動体(ナット体)の直進性に優れたボールネジ機構を用いるので、直動体を介して駆動される射出装置、型開閉装置及び押出装置等の位置制御及び速度制御を高精度に行うことができる。
【0013】
本発明は第3に、前記第1の成形機において、前記運動変換機構として、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動される第1アームと、一端が前記第1アームに回転可能に結合され、他端が前記直動体に回転可能に結合された第2アームとからなるクランク機構を用いるという構成にした。
【0014】
本構成によると、運動変換機構として、第1アームの回転角度に応じて直動体に作用するトルクが変化するクランク機構を用いるので、最も大きなトルクを必要とする工程において直動体に最も大きなトルクが作用するように第1アームの初期位置を調整しておくことにより、複数巻3相サーボモータの出力トルクの無駄をなくすことができ、複数巻3相サーボモータの小型化を図ることができる。また、クランク機構は、ボールネジ機構に比べて耐塵埃性に優れるので、塵埃が多い作業環境にて使用されるダイカストマシンに好適で、メンテナンスが容易で故障しにくいダイカストマシンとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成形機は、複数の複数巻3相サーボモータの1つに対応して1つのマスターサーボアンプと1乃至複数のスレーブサーボアンプを備えると共に、他の複数巻3相サーボモータのそれぞれに対応して1乃至複数のスレーブサーボアンプを備え、これらマスターサーボアンプ及びスレーブサーボアンプは、複数の複数巻3相サーボモータの1つに備えられた位置検出器の出力信号をフィードバック量として複数の複数巻3相サーボモータに対するフィードバック制御を行うようにしたので、複数の複数巻3相サーボモータどうし、及びこれら複数の複数巻3相サーボモータによって駆動される可動部の回転部をベルト等で連結する必要がなく、電動成形機の低コスト化が図れると共に、可動部の構成を簡略化できて、設計の自由度を高めることができる。また、各複数巻3相サーボモータに対応して複数のサーボアンプを備えるので、大出力の複数巻3相サーボモータを搭載することが可能になり、電動式成形機の大型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る成形機の実施形態を、射出成形機を例にとり、図1乃至図5を参照して説明する。図1は実施形態に係る射出成形機の構成図、図2は実施形態に係る射出装置の構成図、図3は実施形態に係る2重巻3相サーボモータの巻線構造を示す図、図4は実施形態に係るモータ駆動制御装置のブロック図、図5は実施形態に係るモータ駆動制御装置の回路図である。
【0017】
図1に示すように、本例の射出成形機は、射出装置1と、型締装置2と、押出装置3と、これらの各装置1,2,3に備えられた各電動サーボモータの駆動を制御するモーションコントローラ4と、このモーションコントローラ4から出力される駆動指令信号に基づいて前記各装置1,2,3に備えられた各電動サーボモータを駆動する所要数のサーボアンプ5と、該サーボアンプ5の出力端に接続された所要数のインバータ6とを備えている。
【0018】
射出装置1は、図2に詳細に示すように、ベース7上に所定の間隔を隔てて対向に配設されたヘッドストック11及びモータ取付板12と、モータ取付板12に取り付けられた第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14と、第1射出用電動サーボモータ13に備えられ、第1射出用電動サーボモータ13の回転方向及び回転量を検出するエンコーダ(位置検出器)15と、ヘッドストック11とモータ取付板12との間に架け渡された4本の連結バー16と、連結バー16に案内されてヘッドストック11とモータ取付板12との間を前後進する直動体17と、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14の回転運動を直動体17の直進運動に変換する第1及び第2のボールネジ機構18,19と、直動体17に取り付けられた計量用サーボモータ20と、該計量用サーボモータ20に一端が連結されたスクリュー21と、スクリュー21を収納するシリンダ22と、シリンダ22の先端部に備えられた射出ノズル23と、シリンダ22内に原料樹脂を供給するホッパ24とから主に構成されている。第1及び第2のボールネジ機構18,19は、それぞれ第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14のモータ回転子に直結され、これら第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14によって回転駆動されるネジ軸25と、該ネジ軸25に螺合され、一端が直動体17に固定されたナット体26とからなる。このように、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14のモータ回転子にボールネジ機構18,19のネジ軸25を直結すると、各射出用電動サーボモータ13,14どうし及びこれとネジ軸25とを連結する動力伝達機構を省略できるので、射出装置1ひいては成形機の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14としては、複数巻3相サーボモータが用いられる。この複数巻3相サーボモータは、互いに120度の位相角をもつU相、V相及びW相の巻線を複数重ね巻きしたもので、重ね巻きした巻線の数に応じた数のU相、V相及びW相の巻線を有する。図3は、2重巻3相サーボモータの巻線構造を模式的に示したものであって、巻線U1,V1,W1と、巻線U2,V2,W2とを有している。
【0020】
なお、本実施形態においては、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14として、円筒形のモータハウジング13a,14aと、モータハウジング13a,14a内に収納された円筒形のモータ固定子13b,14bと、モータ固定子13b,14bの外周に巻回されたモータコイル13c,14cと、モータ固定子13b,14b内に回転可能に配置された円筒形のモータ回転子13d,14dと、モータ回転子13d,14dの外面に取り付けられたモータ磁石13e,14eとからなる、いわゆるビルトインモータが用いられている。ビルトインモータは、モータ回転子13d,14dの内部に駆動部材であるネジ軸25を配置できるので、モータ設定部の構成を簡略化することができ、射出成形機の小型化に有利であるが、本発明の要旨は、ビルトインモータに限定されるものではなく、他の形式の複数巻3相サーボモータを用いることもできる。
【0021】
本実施形態に係る成形機は、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14の駆動力によって直動体17及びスクリュー21を前進する構成であり、かつ第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14のモータ回転子にボールネジ機構18,19のネジ軸25を直結する構成であるので、その駆動制御を厳密に行う必要がある。また、大型の成形機においては、射出速度の高速化及び射出圧力の高圧化を図るため、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14の駆動力を高める必要がある。
【0022】
このため、本実施形態に係る成形機は、図4に示すように、第1射出用電動サーボモータ13に対しては、モーションコントローラ4から出力される駆動指令信号S1の入力部を有するマスターサーボアンプ5Aと、マスターサーボアンプ5Aの出力端に接続された第1インバータ6Aと、マスターサーボアンプ5Aから出力される同期制御信号S2の入力部を有する第1スレーブサーボアンプ5Bと、第1スレーブサーボアンプ5Bの出力端に接続された第2インバータ6Bとが備えられる。また、第2射出用電動サーボモータ14に対しては、マスターサーボアンプ5Aから出力される同期制御信号S2の入力部を有する第2スレーブサーボアンプ5Cと、第2スレーブサーボアンプ5Cの出力端に接続された第3インバータ6Cと、マスターサーボアンプ5Aから出力される同期制御信号S2の入力部を有する第3スレーブサーボアンプ5Dと、第3スレーブサーボアンプ5Dの出力端に接続された第4インバータ6Dとが備えられる。これに加えて、マスターサーボアンプ5A及び第1乃至第3のスレーブサーボアンプ5B〜5Dには、第1射出用電動サーボモータ13に備えられたエンコーダ15の出力信号S3がそれぞれ入力される。
【0023】
マスターサーボアンプ5A及び第1乃至第3のスレーブサーボアンプ5B〜5Dは、同一のソフトウェアで動作する同一構成のものであって、それぞれ第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14に求められる最大出力の半分の制御能力を有するものが用いられる。なお、各サーボアンプ5A〜5Dとして、マスター/スレーブの切換機能を有するものを用いると、部品を共用化できるので、成形機の低コスト化を図ることができる。
【0024】
第1乃至第4のインバータ6A〜6Dは、同一構成のものであって、図5に示すように、それぞれ複数のパワートランジスタとダイオードをもって構成されている。第1インバータ6Aは、2重巻3相モータである第1射出用電動サーボモータ13の巻線U1,V1,W1に接続され、第2インバータ6Bは、この第1射出用電動サーボモータ13の巻線U2,V2,W2に接続される。同様に、図示は省略するが、第3インバータ6Cは、2重巻3相モータである第2射出用電動サーボモータ14の巻線U1,V1,W1に接続され、第4インバータ6Dは、この第2射出用電動サーボモータ14の巻線U2,V2,W2に接続される。なお、図中の符号8,9は電流センサを示しており、これらの各電流センサ8,9は、それぞれ巻線U1及びV1に流れるモータ駆動電流と、巻線U2及びV2に流れるモータ駆動電流を検出し、検出値をマスターサーボアンプ5A及び第1スレーブサーボアンプ5Bに出力する。これらマスターサーボアンプ5A及び第1スレーブサーボアンプ5Bは、各電流センサ8,9の検出値と、第1射出用電動サーボモータ13の回転速度及び回転量とに基づいて、第1射出用電動サーボモータ13の駆動を制御する。第2射出用電動サーボモータ14についても、これと同様に駆動が制御される。
【0025】
本例の射出装置1は、マスターサーボアンプ5A及び第1乃至第3のスレーブサーボアンプ5B〜5Dが、1つのエンコーダ15の出力信号S3をフィードバック量として、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14に対するフィードバック制御を行うので、第1射出用電動サーボモータ13の駆動と第2射出用電動サーボモータ14の駆動とを高精度に同期させることができ、これら各射出用電動サーボモータ13,14どうし及びこれとネジ軸25とを連結する動力伝達機構の省略が可能になる。
【0026】
計量用サーボモータ20としては、必ずしも複数巻3相サーボモータを用いる必要も、ビルトインモータを用いる必要もないが、複数巻3相のビルトインモータを用いると、成形機用モータを共用化できるので、射出成形機の低コスト化を図る上で有利である。
【0027】
以下、本実施形態に係る射出装置1の動作について説明する。モーションコントローラ4からの指令により計量用サーボモータ20を起動すると、モータ回転子と一体にスクリュー21が回転駆動され、それに伴ってホッパ24からシリンダ22内に原料樹脂が供給される。シリンダ22内に供給された原料樹脂は、スクリュー21の回転に伴う剪断力及びシリンダ22の外周に設けられた図示しないバンドヒータから与えられる熱によって可塑化及び混練され、シリンダ22の先端側に順次移送される。そして、シリンダ22の先端側に移送される樹脂の量が増加するにしたがって、スクリュー21に作用する背圧が大きくなるので、この背圧を適宜のセンサで検出することにより、可塑化及び混練された樹脂の計量を行うことができる。モーションコントローラ4は、可塑化及び混練された樹脂が所定量に達したと判定したとき、マスターサーボアンプ5Aに駆動指令信号を出力して、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14を起動する。これにより、モータ回転子13d、14dと一体にボールネジ機構18,19のネジ軸25が回転駆動し、ネジ軸25に螺合されたナット体26、及びナット体26に固定された直動体17が前進して、射出ノズル23から可塑化及び混練された樹脂が金型内に射出される。
【0028】
なお、前記実施形態においては、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14として、2重巻3相モータを用いたが、本発明の要旨は、複数巻3相モータを用いることにあるのであって、3重巻以上の3相モータを用いることもできる。その場合には、3相モータの巻線数に応じた数のサーボアンプ5及びインバータ6が備えられる。
【0029】
次に、実施形態に係る成形機の型締装置2について説明する。
【0030】
実施形態に係る型締装置2は、図1に示すように、成形機のベース7上に所定の間隔を隔てて対向に固定された固定ダイプレート31及びテールストック32と、両端がこれら固定ダイプレート31及びテールストック32に固定された複数本のタイバー33と、タイバー33に案内されて固定ダイプレート31とテールストック32との間で前後進する可動ダイプレート34と、テールストック32と可動ダイプレート34とを連結するトグルリンク機構35と、テールストック32に搭載された型締用電動サーボモータ36と、型締用電動サーボモータ36の回転運動を直進運動に変換してトグルリンク機構35に伝達するボールネジ機構37とを備えている。固定ダイプレート31には、固定側金型38が搭載され、可動ダイプレート34には、可動側金型39が搭載される。
【0031】
トグルリンク機構35は、一端側がテールストック32に回動可能にピン結合されたBリンク41と、一端側が可動ダイプレート34に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク41の他端側と相対的に回動するようにピン結合されたAリンク42と、ボールネジ機構37を介して型締用電動サーボモータ36の駆動力を受けるクロスヘッド43と、一端がクロスヘッド43に回動可能にピン結合されると共に、他端側がBリンク41の中間部と相対的に回動するようにピン結合されたCリンク44とからなる。なお、本例のトグルリンク機構35は、Aリンク42とBリンク41とCリンク44とを有する5点軸支構造のリンク機構となっているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、他の形式のトグルリンク機構を備えることも勿論可能である。
【0032】
図1においては、型締用電動サーボモータ36及びボールネジ機構37が1つずつしか表示されていないが、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14及びこれに連結された第1及び第2のボールネジ機構18,19と同様に、2つ或いはそれ以上の数の型締用電動サーボモータ36及びボールネジ機構37が備えられる。また、これら複数の型締用電動サーボモータ36のいずれか1つに回転検出用のエンコーダを備えると共に、各型締用電動サーボモータ36毎に、当該モータが有する巻線数に応じた数のサーボアンプ5及びインバータ6が備えられる。その他、型締用電動サーボモータ36の巻線構造、型締用電動サーボモータ36とサーボアンプ5及びインバータ6との接続構造、各サーボアンプ5に対するエンコーダの接続構造、それに各型締用電動サーボモータ36の駆動制御方法等については、射出用電動サーボモータ13,14と同じであるので、説明を省略する。
【0033】
また、型締用電動サーボモータ36としては、射出用電動サーボモータ13,14と同様のビルトインモータを用いることができる。このようにすると、成形機用モータを共用化できるので、成形機の低コスト化を図ることができる。
【0034】
本例の型締装置2は、マスターサーボアンプ5A及び第1乃至第3のスレーブサーボアンプ5B〜5Dが、1つのエンコーダの出力信号をフィードバック量として、複数の型締用電動サーボモータ36に対するフィードバック制御を行うので、これら複数の型締用電動サーボモータ36の駆動を高精度に同期させることができる。
【0035】
以下、本実施形態に係る型締装置2の動作について説明する。型締用電動サーボモータ36を駆動し、ボールネジ機構37を介してクロスヘッド43を固定ダイプレート31側に前進させると、図1に示すようにAリンク42とBリンク41とが一直線状に延びて可動ダイプレート43が固定ダイプレート31側に前進し、固定側金型38と可動側金型39とが型締めされる。これにより、固定側金型38と可動側金型39との間に所要の金型キャビティ40が形成されるので、射出装置1による金型キャビティ40内への成形材料の射出が可能になる。また、この状態から、型締用電動サーボモータ36を駆動し、ボールネジ機構37を介してクロスヘッド43をテールストック32側に後退させると、Aリンク42とBリンク41とが折り畳まれて可動ダイプレート43がテールストック32側に後退し、固定側金型38と可動側金型39とが型開される。これにより、後述する押出装置3を用いた成形品の取り出しが可能になる。
【0036】
次に、実施形態に係る成形機の押出装置3について説明する。
【0037】
実施形態に係る押出装置3は、図1に示すように、押出プレート51と、押出プレート51に植設された複数本の押出ピン52と、押出プレート51の駆動源である第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54と、これら第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54の回転運動を直進運動に変換して押出プレート51に伝達する第1及び第2のボールネジ機構55,56とからなる。押出プレート51、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54並びに第1及び第2のボールネジ機構55,56は、可動ダイプレート34の背面側に配置され、押出ピン52は、可動ダイプレート34に開設されたピン挿通孔57内に貫通して配置される。
【0038】
第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54としては、第1及び第2の射出用電動サーボモータ13,14と同様に、複数巻3相モータが用いられる。そして、いずれか一方の押出用電動サーボモータ53,54に回転検出用のエンコーダが備えられると共に、各押出用電動サーボモータ53,54毎に、当該モータが有する巻線数に応じた数のサーボアンプ5及びインバータ6が接続される。その他、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54の巻線構造、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54とサーボアンプ5及びインバータ6との接続構造、各サーボアンプ5に対するエンコーダの接続構造、それに各第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54の駆動制御方法等については、射出用電動サーボモータ13,14と同じであるので、説明を省略する。
【0039】
また、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54としては、射出用電動サーボモータ13,14と同様のビルトインモータを用いることができる。このようにすると、成形機用モータを共用化できるので、成形機の低コスト化を図ることができる。
【0040】
本例の押出装置3は、マスターサーボアンプ5A及び第1乃至第3のスレーブサーボアンプ5B〜5Dが、1つのエンコーダの出力信号をフィードバック量として、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54に対するフィードバック制御を行うので、これら第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54の駆動を高精度に同期させることができる。
【0041】
以下、本実施形態に係る押出装置3の動作について説明する。型開後に、第1及び第2の押出用電動サーボモータ53,54を駆動し、第1及び第2のボールネジ機構55,56を介して押出プレート51及びこれに植設された押出ピン52を固定ダイプレート31側に前進させることにより、金型キャビティ40にて成型された成形品を取り出すことができる。
【0042】
なお、前記実施形態においては、射出装置1、型締装置2及び押出装置3の全てについて、複数の複数巻3相モータを備えたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、射出装置1、型締装置2及び押出装置3のいずれか1つに複数の複数巻3相モータを備えれば足りる。
【0043】
また、前記実施形態においては、射出装置1、型締装置2及び押出装置3のそれぞれに、電動サーボモータの回転運動を可動部の直進運動に変換する運動変換機構として、ボールネジ機構18,19,37,55,56を備えたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、図6に示すように、複数巻3相サーボモータ13によって回転駆動される第1アーム61と、一端が第1アーム61に回転可能に結合され、他端が直動体17に回転可能に結合された第2アーム62とからなるクランク機構を備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態に係る射出成形機の構成図である。
【図2】実施形態に係る射出装置の構成図である。
【図3】実施形態に係る2重巻3相サーボモータの巻線構造を示す図である。
【図4】実施形態に係るモータ駆動制御装置のブロック図である。
【図5】実施形態に係るモータ駆動制御装置の回路図である。
【図6】実施形態に係る動力変換機構の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 射出装置
2 型締装置
3 押出装置
4 モーションコントローラ
5A マスターサーボアンプ
5B〜5D スレーブサーボアンプ
6A〜6D インバータ
13,14 射出用電動サーボモータ
15 エンコーダ(位置検出器)
17 直動体
18,19 ボールネジ機構
36 型締用電動サーボモータ
43 クロスヘッド(直動体)
51 押出プレート(直動体)
53,54 押出用電動サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複数巻3相サーボモータと、これら複数の複数巻3相サーボモータの1つに備えられた位置検出器と、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動される回転部及び該回転部により前後進される直動体を有し、前記回転部が前記複数の複数巻3相サーボモータのそれぞれに直結された複数の運動変換機構と、前記直動体の動作を指示するモーションコントローラと、このモーションコントローラから出力される駆動指令信号に基づいて前記複数の複数巻3相サーボモータの1つを駆動するマスターサーボアンプと、該マスターサーボアンプから出力される同期制御信号に基づいて他の複数巻3相サーボモータを駆動するスレーブサーボアンプとを備えた成形機において、
前記複数の複数巻3相サーボモータの1つに対応して1台の前記マスターサーボアンプと1乃至複数の前記スレーブサーボアンプを備えると共に、前記他の複数巻3相サーボモータのそれぞれに対応して1乃至複数の前記スレーブサーボアンプを備え、
前記マスターサーボアンプ及び前記スレーブサーボアンプは、前記位置検出器の出力信号をフィードバック量として前記複数の複数巻3相サーボモータに対するフィードバック制御を行うことを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記運動変換機構として、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動されるネジ軸と、これに螺合されるナット体とからなるボールネジ機構を用いたことを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記運動変換機構として、前記複数巻3相サーボモータによって回転駆動される第1アームと、一端が前記第1アームに回転可能に結合され、他端が前記直動体に回転可能に結合された第2アームとからなるクランク機構を用いたことを特徴とする請求項1に記載の成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−64349(P2010−64349A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232521(P2008−232521)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】