説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】ステップカバレッジが良好で、原料を安定的に供給すると共に原料の劣化を生じさせずに実用的かつ安価に良質な金属膜を形成することができる成膜方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する工程と、基板1上に1価のカルボン酸金属塩ガスを供給して1価のカルボン酸金属塩膜2を堆積させる工程と、1価のカルボン酸金属塩膜2が堆積した基板1にエネルギーを与えて1価のカルボン酸金属塩膜2を分解し、金属膜3を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の配線として用いられる銅膜等の金属膜を形成する成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体デバイスの高速化、配線パターンの微細化、高集積化の要求に対応して、配線間の容量の低下及び配線の導電性向上並びにエレクトロマイグレーション耐性の向上が求められている。これらに対応した技術として、配線材料にアルミニウムやタングステンよりも導電性が高くかつエレクトロマイグレーション耐性に優れている銅を用い、層間絶縁膜として低誘電率膜(Low−k膜)を用いた銅多層配線技術が注目されている。
【0003】
銅多層配線の銅の成膜方法としては、スパッタリングに代表される物理蒸着(PVD(Physical Vapor Deposition))法、めっき法及び有機金属原料を気化して利用する化学蒸着(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition))法が知られている。しかし、PVD法ではステップカバレッジが悪く、微細パターンへの埋め込みが困難である。めっき法では、めっき液内に含まれる添加剤のため、銅膜中に不純物が多く含まれる。MOCVD法では良好なステップカバレッジは得られやすいものの、銅原子に配位する側鎖基からの炭素、酸素、フッ素などの不純物が銅膜中に多く残留するため、膜質の向上が困難である。さらに、銅原子に配位させる側鎖基が複雑であることから、原料が非常に高価である。また、熱的に不安定かつ低蒸気圧であるため、安定的な原料気体の供給が難しい。
【0004】
これに対し、特許文献1には、アルゴンガスプラズマで塩化銅板をエッチングすることにより、基板に銅膜を形成する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、銅膜中に微量の塩素が残存するおそれがある。塩素はその残留量がわずかであっても銅配線の腐食にともなう配線抵抗の上昇や信頼性の低下等の問題がある。また、成膜初期に基板表面がプラズマにさらされるため、基板が化学的若しくは物理的なダメージを受ける懸念がある。特に配線で使用されるLow−k膜は、これらプラズマによって誘電率の上昇や微細構造の破壊が起こりやすい(プラズマダメージ)。また、プラズマはチャンバ内部の塩化銅板以外の部材もスパッタリングするため、部材の損傷、スパッタリングされた粒子に起因するコンタミネーション汚染を引き起こす。よって、特許文献1の技術を銅多層配線に適用することは、上記の問題を克服するために、コストが高い機構や材料を必要としなければならないという不都合がある。
【0006】
一方、半導体製造プロセス以外で、湿式めっき法ではない方法で安い原料を用いて銅配線を製造する方法が特許文献2に開示されている。特許文献2の製造方法では、安価な有機銅化合物である第二蟻酸銅(Cu(HCOO)2 )若しくはその水和物を基板に塗布し、非酸化雰囲気中にて熱を与えることで銅薄膜を製造している。同様に、基板に塗布した水和第二蟻酸銅を、光径を絞ったレーザ光により加熱することで銅配線を形成する報告が非特許文献1にある。これらはいずれも、第二蟻酸銅が熱分解反応により銅になることを利用している。これらの手法は、安価に金属銅を成膜させることができるが、超集積回路(ULSI(Ultra Large Scale Integration))の配線のようにナノメーターレベルに加工された微細な形状の中に金属を埋め込むには適しておらず、その電気伝導率も銅本来の値より悪い値になってしまう。
【0007】
安価な水和第二蟻酸銅をMOCVDの原料として使用する試みが非特許文献2に報告されている。原料容器内に水和第二蟻酸銅の粉体を入れ、加熱したところにキャリアガスを導入する。加熱したことによって生じる気化成分を、配管を通してキャリアガスで別の反応容器内の加熱された基板表面まで輸送する。輸送された気化成分は基板表面で熱分解し、銅膜が形成される。
【0008】
非特許文献3によって、この原料容器内部で生じる気化した成分は、第一蟻酸銅(Cu(HCOO))であることが知られている。以下の(1)式に示す反応式により気化し難い第二蟻酸銅から気化しやすい第一蟻酸銅がガスとして生成し、これが基板まで輸送されている。
2Cu(HCOO)2 →2Cu(HCOO)+CO+CO2 +H2 O……(1)
第一蟻酸銅は、非特許文献3に報告されているように、非常に熱分解しやすい物質であるため、低温で以下の(2)式に示す反応式により第一蟻酸銅から容易に銅薄膜が成膜される。
2Cu(HCOO)→2Cu+2CO2 +H2 ……(2)
この方法によれば、配位子であるフォルメート基(HCOO)は二酸化炭素や水素に熱分解して排気されやすいために銅膜中に取り込まれ難い。そのため不純物を含まない、高純度の銅膜が生成されやすい。しかし、一般に固体原料から気化させたものをキャリアガスで運ぶ方法は、減圧下での固体原料容器内部の熱伝導状態に大きく影響され、安定した供給が難しい。また、固体原料容器内部で原料の第二蟻酸銅が熱分解してしまい、そこで銅が成膜されてしまう。つまり、原料の劣化が起こりやすい。
【0009】
また、非特許文献3には、蟻酸化物として同様の反応を示す金属種として銅の他に銀を挙げており、同様な手法で配線層として銀膜を形成可能であるが、やはり銅の場合と同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−27352号公報
【特許文献2】特許第2745677号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A.Gupta and R.Jagannathan,Applied Physics Letters,51(26),p2254,(1987).
【非特許文献2】M.-J.Mouche et al,Thin Solid Films 262,p1〜6,(1995).
【非特許文献3】A.Keller and F.Korosy,Nature,162,p580,(1948).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、ステップカバレッジが良好で、原料を安定的に供給すると共に原料の劣化を生じさせずに実用的かつ安価に良質な金属膜を形成することができる成膜方法及び成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る成膜方法は、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する工程と、基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給する工程と、基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスを、基板にエネルギーを与えることにより分解して金属膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る成膜方法は、前記2価のカルボン酸金属塩は粉末状であり、これに一酸化炭素又はアンモニアを供給することにより1価のカルボン酸金属塩ガスを得ることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る成膜装置は、真空に保持され、基板が配置される処理容器と、該処理容器内で基板を支持する基板支持部材と、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成するガス生成手段と、前記処理容器内の基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給するガス供給手段と、前記基板支持部材上の基板にエネルギーを与えるエネルギー付与手段と、前記処理容器内を排気する排気手段とを具備し、前記ガス供給手段により基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は前記ガス供給手段により基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスが、前記エネルギー付与手段によるエネルギーにより分解して基板上に金属膜が形成されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る成膜装置は、前記ガス生成手段は、前記2価のカルボン酸金属塩が貯留され、一酸化炭素又はアンモニアと前記2価のカルボン酸金属塩との反応により1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する反応部と、一酸化炭素又はアンモニアを前記反応部に導入する導入配管とを有し、前記ガス供給手段は、生成された前記1価のカルボン酸金属塩ガスを前記処理容器に導入するカルボン酸金属塩ガス導入部を有することを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成し、生成した1価のカルボン酸金属塩ガスを基板上に供給する。基板にエネルギーを与えることにより、基板上に供給した1価のカルボン酸金属塩ガスから堆積した1価のカルボン酸金属塩を分解することにより金属膜が形成される。あるいは、基板にエネルギーを与えることにより、基板上に供給した1価のカルボン酸金属塩ガスを分解することにより金属膜が形成される。
【0018】
本発明にあっては、2価のカルボン酸金属塩は粉末状であり、塊状の場合よりも一酸化炭素又はアンモニアと接触する面積が大きい。
【0019】
本発明にあっては、真空に保持された処理容器に基板が配置され、基板支持部材は処理容器内で基板を支持する。ガス生成手段は2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成し、ガス供給手段は処理容器内の基板上に生成した1価のカルボン酸金属塩ガスを供給する。基板にエネルギーを与えることで、基板上に供給した1価のカルボン酸金属塩ガスから堆積した1価のカルボン酸金属塩を分解することにより金属膜が形成される。あるいは、基板にエネルギーを与えることで、基板上に供給した1価のカルボン酸金属塩ガスを分解することにより金属膜が形成される。
【0020】
本発明にあっては、ガス生成手段は、一酸化炭素又はアンモニアを導入する導入配管及び反応部を有する。反応部は2価のカルボン酸金属塩を貯留し、導入配管から導入された一酸化炭素又はアンモニアと2価のカルボン酸金属塩との反応により1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する。ガス供給手段は、生成された1価のカルボン酸金属塩ガスを処理容器に導入するカルボン酸金属塩ガス導入部を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2価のカルボン酸金属塩、例えば第二蟻酸銅を原料として用い、これを一酸化炭素又はアンモニアにより還元し、低エネルギーで熱分解して金属膜が生成される1価のカルボン酸金属塩、例えば第一蟻酸銅を基板上に供給し、この1価のカルボン酸金属塩にエネルギーを与えることにより銅膜のような配線層として有効な金属膜を高ステップカバレッジで得ることができる。この場合に、1価のカルボン酸金属塩を基板上に堆積させ、その後に基板上の1価のカルボン酸金属塩にエネルギーを与えて金属膜を形成する手法を用いることにより、特に良好なステップカバレッジを得ることができる。原料としての2価のカルボン酸金属塩中の金属原子への有機配位子は、熱分解して金属膜(銅膜)に影響を与えないガスとして排気されるので、膜中の不純物が非常に少なく極めて良質な膜を得ることができる。2価のカルボン酸金属塩は、銅を成膜するCVDの既存の原料有機化合物よりも極めて安価であり、原料コストを低くできるメリットがある。
【0022】
さらに、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成するので、生成する1価のカルボン酸金属塩の量を容易に調節することができる。そのため、従来の粉末状の第二蟻酸銅を加熱して第一蟻酸銅ガスを得る方法よりも、安定的に、かつ調節可能な方法で原料を供給することができ、原料の劣化も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1に係る成膜方法の一例を説明するための模式図である。
【図2】実施の形態1に係る成膜方法の他の例を説明するための模式図である。
【図3】実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置の他の例の概略構成を示す断面図である。
【図5】実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置のさらに他の例の概略構成を示す断面図である。
【図6】実施の形態1に係る成膜方法を実施するためのマルチチャンバシステムの概略構造を示す説明図である。
【図7】図6のマルチチャンバシステムに用いられるアニールユニットを示す断面図である。
【図8】実施の形態2に係る反応容器の一例の概略構成を示す断面図である。
【図9】実施の形態2に係る反応容器の他の例の概略構成を示す断面図である。
【図10】図9のX−X線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
実施の形態1
2価のカルボン酸金属塩を一酸化炭素又はアンモニアにより還元して、1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する。生成した1価のカルボン酸金属塩ガスを基板に供給して、1価のカルボン酸金属塩を基板上に堆積させる。1価のカルボン酸金属塩は金属に熱分解しやすく、実施の形態1ではこの1価のカルボン酸金属塩の性質を利用して金属膜を形成する。
【0025】
図1は、実施の形態1に係る成膜方法の一例を説明するための模式図である。
最初に、図1Aに示すように、得ようとする金属膜3の金属を含む2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する。具体的には、例えば典型的には粉末状の2価のカルボン酸金属塩を加熱し、そこに一酸化炭素又はアンモニアを供給することによりこれらを反応させ、2価のカルボン酸金属塩を還元して1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する。2価のカルボン酸金属塩は通常結晶水を持っており、金属をMとすると、M(II)(R−COO)2 (H2 O)n と表すことができる。この2価の水和カルボン酸金属塩に一酸化炭素又はアンモニアを供給し、加熱すると、還元反応により、M(I)(R−COO)で表される1価のカルボン酸金属塩ガスを得ることができる。
【0026】
供給する一酸化炭素又はアンモニアの量を調節することによって、生成する1価のカルボン酸金属塩ガスの量を調節することができ、安定的に制御性よく原料を供給することができる。ここで、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させる前に、結晶水を加熱により除去してもよいし、結晶水を除去せずに反応させてもよい。
【0027】
一酸化炭素又はアンモニアは、蒸気圧が高く、常温では気体状態である。そのため、一酸化炭素又はアンモニアは、気体として反応させる場合、液体材料のように加熱して気化する必要がなく、取り扱いが簡便である。また、一酸化炭素又はアンモニアを用いて2価のカルボン酸金属塩を還元する場合、分子量の大きい副生成物が発生しないのでプロセスへの悪影響がない。これらの点から、一酸化炭素又はアンモニアは2価のカルボン酸金属塩を還元する還元剤として好ましい。
【0028】
2価のカルボン酸金属塩を構成するカルボン酸は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、酪酸から選択されたものを用いることが好ましい。
【0029】
2価のカルボン酸金属塩を構成する金属としては、銅を適用することが好適であり、その他に銀、ニッケル、コバルトを挙げることができる。これらの金属は、熱分解しやすい1価のカルボン酸金属塩を形成することができる。銅及び銀は、電気抵抗が小さく、中でも銅は配線材料として注目されている。また、ニッケル、コバルトは、半導体デバイストランジスタ部の電極、ソースドレイン部へのコンタクト材、半導体メモリキャパシタ電極として用いられている。
【0030】
次に、図1Bに示すように、基板1上に上記のようにして生成した1価のカルボン酸金属塩ガスを供給する。
2価のカルボン酸金属塩として第二蟻酸銅を用い、還元剤として一酸化炭素又はアンモニアを用いる場合、不安定な物質であり、銅に分解されやすいことが知られている第一蟻酸銅ガスを生成させることができる。第一蟻酸銅は真空中ではガスとして存在するが、大気雰囲気下では容易に酸化されて酸化第一銅となってしまうため、第一蟻酸銅ガスの供給は真空中で行う。その際に、第一蟻酸銅はガス状に保持されるように50〜150℃程度の温度にされる。
【0031】
なお、第一蟻酸銅には、単量体のみならず多量体も含まれる。また、第一蟻酸銅ガスを大量に生成し、生成した第一蟻酸銅ガスの分解を抑制するために、一酸化炭素又はアンモニアのガスの分圧条件はある程度高くする必要がある。ただし、圧力が高すぎると一酸化炭素又はアンモニアの気化供給に不利となる。よって、第一蟻酸銅生成反応の際の一酸化炭素又はアンモニアの分圧は、133〜6650Pa(1〜50Torr)程度が望ましい。
【0032】
次に、図1Cに示すように、1価のカルボン酸金属塩を基板1に吸着させ、所定量堆積させて、金属膜3の前駆体としての1価のカルボン酸金属塩膜2を形成する。このとき、基板1の温度は−30〜50℃程度が好ましい。
【0033】
次に、図1Dに示すように、1価のカルボン酸金属塩膜2が形成された基板1にエネルギーを与え、1価のカルボン酸金属塩を分解して金属膜3を形成する。このときエネルギーとしては典型的には熱エネルギーを用いる。熱エネルギーは通常の成膜装置に用いられている抵抗発熱体や加熱ランプ等により与えることができるので適用が容易である。
【0034】
このような成膜方法によれば、気相での熱分解なしに、1価のカルボン酸金属塩を基板1の表面に吸着させてから、エネルギーを与えて金属膜3とするために、通常のCVDと同様にステップカバレッジを良好にすることができる。そのため、実施の形態1に係る成膜方法はULSI配線工程における微細パターンへの適用が可能である。また、実施の形態1に係る成膜方法はMOCVDよりも安価な原料を使用することができるため、低コストでの金属配線用の成膜が可能である。
【0035】
図2は、実施の形態1に係る成膜方法の他の例を説明するための模式図である。図2Aでは図1Aと同様、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとから1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する。その後、図2Bに示すように、基板1に熱エネルギー等のエネルギーを与えながら、生成した1価のカルボン酸金属塩ガスを基板1上に供給してもよい。この場合には、図2Cに示すように、カルボン酸金属塩ガスが基板1上に到達すると即座に分解し、金属膜3が形成されることとなる。
図2の成膜方法では、より短時間で金属膜3を形成することができるというメリットがある。
【0036】
次に、実施の形態1をより具体的に説明する。
ここでは、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとから1価のカルボン酸金属塩ガスを形成する典型例として、2価のカルボン酸金属塩に第二蟻酸銅を用いる例を挙げる。かかる場合、生成する1価のカルボン酸金属塩ガスは第一蟻酸銅ガスである。第一蟻酸銅ガスを基板1としての半導体ウエハに供給し、固体状の第一蟻酸銅を堆積させる。堆積させた第一蟻酸銅にエネルギーを与えて銅膜を形成する。
【0037】
図3は、実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例の概略構成を示す断面図である。
図3に示す成膜装置は、例えばアルミニウムなどにより中空円柱状あるいは中空箱状に成形されたチャンバ11を有している。チャンバ11の内部には、被処理体である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを水平に支持するためのサセプタ12が、その中央下部に設けられた円筒状の支持部材13により支持された状態で配置されている。サセプタ12にはヒータ14が埋め込まれており、このヒータ14はヒータ電源15から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。なお、サセプタ12はセラミックス、例えば窒化アルミニウムで構成することができる。
【0038】
チャンバ11の天壁11aには、シャワーヘッド20が形成されている。シャワーヘッド20は、チャンバ11の天壁11a内に形成された略水平に延材する扁平形状のガス拡散空間21と、その下方に設けられた多数のガス吐出孔23を有するシャワープレート22とを有している。シャワーヘッド20の内面にはヒータ20aが設けられている。
【0039】
チャンバ11の底壁には排気口24が形成されており、排気口24周辺の底壁下面には排気管25が接続されている。この排気管25には真空ポンプを有する排気装置26が接続されている。そして、この排気装置26を作動させることにより、排気管25を介してチャンバ11内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。チャンバ11の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口27と、この搬入出口27を開閉するゲートバルブ28とが設けられている。
【0040】
一方、チャンバ11の近傍には、第二蟻酸銅粉末31を貯留した反応容器32が配置されており、反応容器32の周囲にはヒータ32aが設けられている。反応容器32の上部には配管33が接続されており、この配管33はチャンバ11の上方からシャワーヘッド20内部のガス拡散空間21に臨む位置まで延びている。配管33の周囲にはヒータ33aが設けられている。
【0041】
反応容器32には不活性ガスのガスライン16aと還元ガスのガスライン16bとが合流した配管34が接続されている。ガスライン16aは、配管34等を不活性ガスでパージするためのガスラインである。ガスライン16bは、反応容器32に一酸化炭素又はアンモニアを導入するためのガスラインである。これらガスライン16a、16bには、夫々図示しない不活性ガス供給源及び還元ガス供給源が接続されている。不活性ガス供給源にはアルゴン、窒素等の不活性ガスが貯留されている。還元ガス供給源には一酸化炭素又はアンモニアが貯留されている。なお、不活性ガス供給源及び還元ガス供給源は、成膜装置に含まれていてもよいし、成膜装置に含まれず、外付けでもよい。
【0042】
ガスライン16a、16bには、夫々マスフローコントローラ(MFC(Mass Flow Controller))18a、18bが設けられている。マスフローコントローラ(MFC)18a、18bの上流側には夫々バルブ17a、17bが設けられている。マスフローコントローラ(MFC)18a、18bの下流側には夫々バルブ17c、17dが設けられている。
【0043】
シャワーヘッド20のガス拡散空間21内にはガスライン16cが接続されている。ガスライン16cは、副生成物のパージ及び希釈ガスを供給するためのガスラインである。ガスライン16cには図示しない不活性ガス供給源が接続されている。ガスライン16cの不活性ガス供給源には、アルゴン、窒素等の不活性ガスが貯留されている。ガスライン16cの不活性ガス供給源は、成膜装置に含まれていてもよいし、成膜装置に含まれず、外付けでもよい。
ガスライン16cには上流側からバルブ17e及びマスフローコントローラ(MFC)18cが設けられている。
【0044】
還元ガス供給源内の一酸化炭素又はアンモニアは、ガスライン16b及び配管34を介して反応容器32に導入される。反応容器32内では、一酸化炭素又はアンモニアのガス供給に先立って、反応容器32をヒータ32aにより50〜150℃程度に加熱しながら、ガスライン16a及び配管34を介して反応容器32内に不活性ガスを供給して第二蟻酸銅の結晶水を除去する。その後、ヒータ32aにより反応容器32内が50〜150℃に保持された状態で、一酸化炭素又はアンモニアのガスを供給することにより第二蟻酸銅粉末31と一酸化炭素又はアンモニアのガスとが反応し、第一蟻酸銅ガスが生成される。
なお、第二蟻酸銅の結晶水を除去せずに、反応容器32へ一酸化炭素又はアンモニアのガスを供給するようにしてもよい。
【0045】
第二蟻酸銅と一酸化炭素との反応式を以下の(3)式に、第二蟻酸銅とアンモニアとの反応式を以下の(4)式に示す。
2Cu(II)(HCOO)2 +CO→2Cu(I)(HCOO)+2CO2 +H2 CO……(3)
2Cu(II)(HCOO)2 +NH3 →2Cu(I)(HCOO)+HCO−NH2 +H2 O……(4)
【0046】
成膜装置を構成する各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ80に接続されて制御されるようになっている。また、プロセスコントローラ80には、オペレータが成膜装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザインタフェース81が接続されている。
【0047】
さらに、プロセスコントローラ80には、成膜装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ80の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部82が接続されている。レシピはハードディスク等の固定的な記憶媒体に記憶されていてもよいし、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬性の記憶媒体に収容された状態で記憶部82の所定位置にセットするようになっていてもよい。さらに、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザインタフェース81からの指示等にて任意のレシピを記憶部82から呼び出してプロセスコントローラ80に実行させることで、プロセスコントローラ80の制御下で、成膜装置での所望の処理が行われる。
【0048】
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行われる成膜処理について説明する。
まず、ゲートバルブ28を開いて、ウエハWを搬入出口27からチャンバ11内に搬入し、サセプタ12上に載置する。排気装置26により排気口24及び排気管25を介してチャンバ11内を排気することによりチャンバ11内を所定の圧力にする。
【0049】
この状態で、必要に応じて反応容器32をヒータ32aにより50〜150℃程度に加熱しながら、第二蟻酸銅粉末31の結晶水を除去する。その後、バルブ17b、17dを開いてマスフローコントローラ(MFC)18bにより所定流量に調整された一酸化炭素又はアンモニアのガスをガスライン16b及び配管34を介して反応容器32に導入する。反応容器32はヒータ32aにより50〜150℃程度に加熱されており、これにより反応容器32内の第二蟻酸銅粉末31と一酸化炭素又はアンモニアのガスとが夫々上述した(3)式、(4)式に従って反応し、第一蟻酸銅ガスが生成される。
【0050】
生成された第一蟻酸銅ガスは、配管33を経てシャワーヘッド20のガス拡散空間21に至り、シャワープレート22に形成された多数のガス吐出孔23からウエハWに向けて吐出される。その際に、配管33の外周に設けられたヒータ33a及びシャワーヘッド20の内面に設けられたヒータ20aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給される。
【0051】
第一蟻酸銅ガスは、常温〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である第一蟻酸銅膜を形成する。このときの第一蟻酸銅膜の膜厚は、第一蟻酸銅ガスの供給時間とウエハ温度とによって制御することができる。
【0052】
このようにして前駆体である第一蟻酸銅の成膜を所定時間行って、第一蟻酸銅膜が所定の厚さになった時点で、第一蟻酸銅ガスの供給を停止する。引き続きヒータ14によりウエハWを100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
【0053】
その後、ヒータ14の出力を停止し、ガスラインを不活性ガスのガスライン16a、16cに切替え、窒素やアルゴンなどの不活性ガスによって副生成ガスや余分な一酸化炭素又はアンモニアのガスをパージする。次いで、チャンバ11内の圧力を外部の圧力に合わせた後、ゲートバルブ28を開いてウエハWを搬出する。
【0054】
上記構成の成膜装置によれば、ステップカバレッジが良好で良質の銅膜を安価に形成することができる。また、一酸化炭素又はアンモニアのガスを反応容器32に導入して第一蟻酸銅ガスを生成し、生成した第一蟻酸銅ガスをチャンバ11内に導入してウエハWに第一蟻酸銅を吸着させ、その後ウエハWを加熱するといった、極めて簡便な手法で銅膜を形成することができる。
【0055】
上記構成の成膜装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ヒータ14によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器32内で生成した第一蟻酸銅ガスをシャワーヘッド20によってウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。そのため、上記構成の成膜装置によれば、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0056】
次に、実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置の他の例について説明する。図4は、実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置の他の例の概略構成を示す断面図である。
この成膜装置は、サセプタ121上のウエハWを加熱する機構及び排気経路が図3の成膜装置と異なっており、その他の構成は基本的に図3の成膜装置と同じであるので、同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
図4の成膜装置では、ヒータ14を有するサセプタ12の代わりにヒータ14を有しないサセプタ121が設けられており、サセプタ121の下方にランプ加熱ユニット50が設けられている。ランプ加熱ユニット50には、紫外線ランプからなる複数のランプヒータ51が配列され、これらランプヒータ51の上に石英等の熱線透過材料よりなる透過窓52が設けられている。サセプタ121は透過窓52の上に載置されている。
【0058】
また、チャンバ11の側壁のサセプタ121に対応する高さ位置に、排気口53が開口している。この排気口53からチャンバ11の側壁を略水平に延び途中で略下方に延びてチャンバ11の底面を開口する排気流路54が形成されている。排気流路54周辺のチャンバ11底面には排気管25が接続されている。排気管25には真空ポンプを有する排気装置26が接続されている。そして、この排気装置26を作動させることにより、排気口53、排気流路54及び排気管25を介してチャンバ11内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。
【0059】
図4の成膜装置においても基本的に図3の成膜装置と同様に、ウエハWを搬入してサセプタ121上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持する。バルブ17b、17dを開いてマスフローコントローラ(MFC)18bにより所定流量に調整された一酸化炭素又はアンモニアのガスをガスライン16b及び配管34を介して反応容器32に導入する。反応容器32内をヒータ32aにより50〜150℃に保持した状態で、その中の第二蟻酸銅粉末31と導入した一酸化炭素又はアンモニアのガスとを反応させ、第一蟻酸銅ガスを生成させる。
【0060】
この第一蟻酸銅ガスは、配管33を経てシャワーヘッド20に至り、ガス吐出孔23からウエハWに向けて吐出される。配管33の外周に設けられたヒータ33a及びシャワーヘッド20の内面に設けられたヒータ20aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給される。ここで、シャワーヘッド20から吐出された第一蟻酸銅ガスは、ウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。そして、所望の厚さの第一蟻酸銅膜が形成されたウエハWをランプヒータ51により100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
【0061】
図4の成膜装置はランプ加熱ユニット50によりウエハWの加熱を行うため、第一蟻酸銅膜を形成した後の昇温速度が速い。よって迅速に上記(2)式に示す反応式を進行させることができ、極めて簡便な手法であることに加えて高スループットで銅膜を形成することができる。
【0062】
図4の成膜装置においては、ウエハWをサセプタ121上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器32内で生成した第一蟻酸銅ガスをシャワーヘッド20によってウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。そのため、銅膜の成膜時間のさらなる短縮化を図ることが可能となる。
【0063】
次に、実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置のさらに他の例について説明する。図5は、実施の形態1に係る成膜方法を実施するための成膜装置のさらに他の例の概略構成を示す断面図である。
図5に示す成膜装置は、図3の成膜装置と対比した場合、サセプタ122にヒータ14を設ける代わりにチャンバ11の上部にランプ加熱ユニット50を設け、シャワーヘッド20を設ける代わりにチャンバ11の天壁11aにガス導入口71を設け、その内面にヒータ71aを設けている。サセプタ122には温度制御用の冷媒流路19が設けられており、サセプタ122は予め冷媒流路19を流れる冷媒により−30〜50℃程度の温度に保持される。その他の構成は基本的に図3の成膜装置と同じであり、同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
このように構成された図5の成膜装置においては、基本的に図3の成膜装置と同様に、チャンバ11内にウエハWを搬入してサセプタ122上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持する。バルブ17b、17dを開いてマスフローコントローラ(MFC)18bにより所定流量に調整された一酸化炭素又はアンモニアのガスをガスライン16b及び配管34を介して反応容器32に導入する。反応容器32はヒータ32aにより50〜150℃程度に加熱されており、これにより反応容器32内の第二蟻酸銅粉末31と一酸化炭素又はアンモニアのガスとが夫々上述した(3)式、(4)式に示す反応式に従って反応して第一蟻酸銅ガスを生成する。
【0065】
この第一蟻酸銅ガスは配管33及びガス導入口71を経てチャンバ11内に導入される。その際に、配管33のヒータ33a及びガス導入口71のヒータ71aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給されるが、−30〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに接触して吸着する。従って、所定時間第一蟻酸銅ガスを供給することにより、所定厚さの固体状の第一蟻酸銅膜が形成される。
【0066】
その後、ランプ加熱ユニット50によりウエハWを加熱し、その際の熱エネルギーにより(2)式に示す反応式の反応に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
【0067】
このような構成によれば、上方からのランプ加熱で第一蟻酸銅を分解するので、ランプ加熱ユニット50をサセプタ122の下方に設けた図4の成膜装置よりも迅速にウエハWを加熱することができ、スループットを一層向上させることができる。
図5の成膜装置に係るサセプタ122の中には、ヒータ14のような加熱機構が設けられていない。そのため、サセプタ122の中に冷媒流路19のような冷却機構を設けることが可能となる。第一蟻酸銅ガスのウエハW表面への吸着量は温度が低ければ低いほど多いので、この方式では上述の図3、図4の成膜装置と比べてスループットが有利となる。
【0068】
図5の成膜装置においては、ウエハWをサセプタ122上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器32内で生成された第一蟻酸銅ガスをガス導入口71からウエハWに向けて供給してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。そのため、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0069】
図3〜図5の成膜装置では、一つのチャンバ内で第一蟻酸銅の吸着工程と、加熱による銅膜の形成工程との両方を行う例を示したが、スループット及び処理の自由度等の観点から、これらの工程を異なるチャンバで実施することもできる。
【0070】
図6は、実施の形態1に係る成膜方法を実施するためのマルチチャンバシステムの概略構造を示す説明図である。図6は、各工程を行うチャンバをクラスター化したマルチチャンバシステムの概略構造を示している。このマルチチャンバシステムは、ウエハWに第一蟻酸銅を吸着させる吸着処理ユニット101と、ウエハWをアニールしてウエハWに吸着した第一蟻酸銅に熱エネルギーを与えて分解し、銅膜を形成するアニールユニット102と、アニール後のウエハWを冷却する冷却ユニット103とを備えている。吸着処理ユニット101、アニールユニット102及び冷却ユニット103は、7角形のウエハ搬送室104の3つの辺に対応して設けられている。
【0071】
また、ウエハ搬送室104の他の2つの辺には、夫々ロードロック室105、106が設けられている。これらロードロック室105、106のウエハ搬送室104と反対側には、ウエハ搬入出室108が設けられている。ウエハ搬入出室108のロードロック室105、106と反対側には、ウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート109、110、111が設けられている。
【0072】
吸着処理ユニット101、アニールユニット102、冷却ユニット103及びロードロック室105、106は、図6に示すように、ウエハ搬送室104の各辺にゲートバルブGを介して接続されている。吸着処理ユニット101、アニールユニット102、冷却ユニット103及びロードロック室105、106は、夫々対応するゲートバルブGを開放することによりウエハ搬送室104と連通され、夫々対応するゲートバルブGを閉じることによりウエハ搬送室104から遮断される。
【0073】
また、ロードロック室105、106がウエハ搬入出室108と接続される部分にも夫々ゲートバルブGが設けられている。ロードロック室105、106は、夫々対応するゲートバルブGを開放することによりウエハ搬入出室108に連通され、夫々対応するゲートバルブGを閉じることによりウエハ搬入出室108から遮断される。
【0074】
ウエハ搬送室104内には、吸着処理ユニット101、アニールユニット102、冷却ユニット103及びロードロック室105、106に対して、ウエハWの搬入出を行うウエハ搬送装置112が設けられている。このウエハ搬送装置112は、ウエハ搬送室104の略中央に配設されており、回転及び伸縮可能な回転・伸縮部113の先端にウエハWを保持する2つのブレード114a、114bを有している。これら2つのブレード114a、114bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部113に取り付けられている。なお、このウエハ搬送室104内は所定の真空度に保持されるようになっている。
【0075】
ウエハ搬入出室108のキャリアC取り付け用の3つのポート109、110、111には夫々図示しないシャッタが設けられており、これらポート109、110、111にウエハWを収容したキャリアC又は空のキャリアCが直接取り付けられるようになっている。また、ウエハ搬入出室108の側面にはアライメントチャンバ115が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
【0076】
ウエハ搬入出室108内には、キャリアCに対するウエハWの搬入出及びロードロック室105、106に対するウエハWの搬入出を行うウエハ搬送装置116が設けられている。このウエハ搬送装置116は、多関節アーム構造を有しており、キャリアCの配列方向に沿ってレール118上を走行可能となっており、その先端のハンド117上にウエハWを載せてその搬送を行う。ウエハ搬送装置112、116の動作等、システム全体の制御は制御部119によって行われる。この制御部119は、上記プロセスコントローラ80、ユーザインタフェース81、記憶部82の機能を有する。
【0077】
上記吸着処理ユニット101は、基本的に図3の成膜装置から加熱手段を除いた構成を有するものを用いることができる。
【0078】
また、アニールユニット102としては、ウエハWを加熱することができるものであればよい。図7は、図6のマルチチャンバシステムに用いられるアニールユニット102を示す断面図である。アニールユニット102としては、図7に示すものを好適に用いることができる。このアニールユニット102は、扁平形状のチャンバ151を有し、チャンバ151の底部には第一蟻酸銅膜200が形成されたウエハWを載置するサセプタ123が配置されている。
【0079】
チャンバ151の天壁151a部分は、複数の紫外線ランプからなるランプヒータ131と透過窓132とからなるランプ加熱ユニット130を有している。ランプヒータ131は透過窓132の上に配置されており、ランプヒータ131の熱線が透過窓132から下方へ照射されるようにランプ加熱ユニット130は構成されている。
【0080】
チャンバ151の側壁にはガス導入口141が設けられており、このガス導入口141周辺の側壁外面にはガス導入配管142が接続されている。ガス導入配管142には、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを供給するガス供給機構143が接続されている。
【0081】
チャンバ151の側壁のガス導入口141と反対側部分には、排気口144が形成されており、この排気口144周辺の側壁外面には排気管145が接続されている。この排気管145には真空ポンプを有する排気装置146が接続されている。そして、この排気装置146を作動させることにより排気管145を介してチャンバ151内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。
【0082】
図7のアニールユニット102は、ランプ加熱による急速加熱及び不活性ガスによる急速冷却が可能であり、極めて迅速なアニール処理を行うことができ、スループットを高めることができる。また、アニールユニット102は、アニール専用モジュールであるため、処理の自由度が高く、例えば銅成膜ウエハ温度よりも高温でウエハWをアニール処理して膜中の炭素及び酸素を低減することも容易である。
【0083】
冷却ユニット103は、図示しないが、冷媒流路を備えた冷却ステージをチャンバ内に配した簡単な構成のものであり、アニール処理により高温になったウエハWを冷却するためのものである。
【0084】
このように構成されるマルチチャンバシステムにおいては、ウエハ搬送装置116によりウエハWをいずれかのキャリアCから取り出してロードロック室105に搬入し、ウエハ搬送装置112によりウエハWをロードロック室105からウエハ搬送室104に搬送する。そして、まずウエハWを吸着処理ユニット101に搬送して第一蟻酸銅の吸着処理を行う。吸着処理ユニット101において所定厚さの第一蟻酸銅膜が形成されたウエハWを、ウエハ搬送装置112により吸着処理ユニット101から取り出し、引き続きアニールユニット102に搬入する。アニールユニット102においては、第一蟻酸銅膜をランプ加熱することにより分解し、銅膜を形成する。
【0085】
その後、銅膜が形成されたウエハWをウエハ搬送装置112によりアニールユニット102から取り出し、引き続き冷却ユニット103に搬入する。冷却ユニット103ではウエハステージ上でウエハWを所定温度に冷却する。冷却ユニット103で冷却されたウエハWは、ウエハ搬送装置112によりロードロック室106に搬送され、ウエハ搬送装置116によりロードロック室106から所定のキャリアCに搬入される。そして、このような一連の処理をキャリアCに収容されている枚数のウエハWについて連続的に行う。
【0086】
このように各工程を異なる装置により行うようにして、これらをクラスター化することにより、各装置(ユニット)において処理を専用化することができ、一つの装置で全ての工程を行うよりもスループットを向上させることができる。
【0087】
なお、実施の形態1に係る銅膜の成膜処理を行うユニットと、スパッタリング等を行う他のユニットとを図6と同様にクラスター化してもよい。
【0088】
本発明は実施の形態1に限定されることなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、第一蟻酸銅の生成手段および第一蟻酸銅膜の加熱手段等は一例に過ぎず、他のいかなる手段を用いてもよい。
また、実施の形態1では、第二蟻酸銅と一酸化炭素又はアンモニアとを用いて第一蟻酸銅を生成し、これを基板に供給すると共にエネルギーを与えて分解し銅膜を形成する場合を例に説明した。しかし、2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを用いて1価のカルボン酸金属塩を生成し、これを分解して金属膜を形成するものであればよく、銅膜に限定されない。銅以外の金属の場合、1価のカルボン酸金属塩の生成温度、圧力、1価のカルボン酸金属塩の分解温度は、銅の場合と異なることがある。
さらに、実施の形態1では基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、フラットパネルディスプレイ(FPD(Flat Panel Display))用のガラス基板等、他の基板であっても適用可能である。さらにまた、本発明の範囲を逸脱しない限り、実施の形態1の構成要素を適宜組み合わせたもの、あるいは実施の形態1の構成要素を一部取り除いたものも本発明の範囲内である。
【0089】
実施の形態2
実施の形態2は、固体原料とガスとを反応させ、成膜処理のための処理ガスを生成する反応容器を備えた成膜装置に関する。
一般に、固体原料は反応性を高めるために粉末状に成形される。ここでは、固体原料として第二蟻酸銅粉末31を、ガスとして一酸化炭素又はアンモニアのガスを挙げ、第一蟻酸銅ガスが生成される場合について説明する。なお、第二蟻酸銅粉末31と一酸化炭素又はアンモニアとの反応が実施の形態2に係る反応容器で行う反応の例示であることは勿論である。実施の形態2に係る反応容器で行う反応は、固体原料とガスとを反応させ、成膜処理のための処理ガスを生成する反応であれば、どのような反応でもよい。
【0090】
実施の形態2に係る成膜装置は、反応容器が図3の成膜装置と異なっており、その他の構成は基本的に図3の成膜装置と同じであるので、同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0091】
図8は、実施の形態2に係る反応容器91の一例の概略構成を示す断面図である。反応容器91は、中空直方体状をなし、側壁911、底壁912及び側壁911の上端に対して着脱自在な天壁913を含んで構成される。第二蟻酸銅粉末31は底壁912と略平行な層として、反応容器91内部に貯留される。
【0092】
なお、第二蟻酸銅粉末31を反応容器91の底壁912上に直接貯留するのではなく、反応容器91内部に収納可能な受け皿を用意し、この受け皿に第二蟻酸銅粉末31を貯留してもよい。この受け皿は反応容器91の底壁912上に配置される。
【0093】
側壁911には、不活性ガスと一酸化炭素又はアンモニアとを導入する配管34の断面と略同一の形状及び大きさを有する導入口914が設けられている。導入口914周辺の側壁911外面には配管34が接続されている。また、導入口914と対向する位置の側壁911には、第一蟻酸銅ガスをチャンバ11に供給する配管33の断面と略同一の形状及び大きさを有する放出口915が設けられている。放出口915周辺の側壁911外面には配管33が接続されている。配管33、34が側壁911に接続される高さは、反応容器91内に貯留される第二蟻酸銅粉末31の表面近傍である。
【0094】
反応容器91の底壁912にはヒータ91aが埋め込まれており、ヒータ91aは図示しない電源から給電されることにより第二蟻酸銅粉末31を加熱する。なお、ヒータ91aは反応容器91の周囲に設けてもよい。
【0095】
次に、図8の反応容器91を用いて行われる第一蟻酸銅ガスの生成処理について説明する。
反応容器91から天壁913を取り外して、反応容器91内部に第二蟻酸銅粉末31を配置した後、天壁913を反応容器91に取り付け、反応容器91を密閉する。
反応容器91に配置された第二蟻酸銅粉末31は、ヒータ91aにより50〜150℃程度に加熱される。第二蟻酸銅粉末31には、ヒータ91aに近い底壁912付近から表面へ向かって温度勾配が形成される。そのため、第二蟻酸銅粉末31の表面付近が所望の温度となるように、ヒータ91aによる加熱を調整することが好ましい。
【0096】
バルブ17a、17cを開き、ガスライン16a及び配管34を介して反応容器91内に不活性ガスを供給して第二蟻酸銅の結晶水を除去する。その後、バルブ17b、17dを開き、還元ガス供給源の一酸化炭素又はアンモニアのガスをガスライン16b及び配管34を介して反応容器91に導入する。その際、マスフローコントローラ(MFC)18bにより、一酸化炭素又はアンモニアの流量を所定流量に調整する。なお、第二蟻酸銅の結晶水を除去せずに、一酸化炭素又はアンモニアのガスを導入してもよい。
【0097】
反応容器91に導入された一酸化炭素又はアンモニアのガスは、第二蟻酸銅粉末31の表面近傍に沿って略横方向に流れ、加熱された第二蟻酸銅を還元することにより第一蟻酸銅ガスを生成させる。生成した第一蟻酸銅ガスは、一酸化炭素又はアンモニアと共に導入される不活性ガスの流線方向に移送され、導入口914が設けられた側壁911と対向する側壁911に達する。導入口914及び放出口915は反応容器91の側壁911の対向位置に設けられているため、生成した第一蟻酸銅ガスは放出口915を介して効率よく配管33に取り込まれ、チャンバ11へ供給される。
【0098】
図9は、実施の形態2に係る反応容器92の他の例の概略構成を示す断面図である。図10は、図9のX−X線における断面図である。
反応容器92は、中空円柱状をなし、側壁921、底壁922、側壁921の上端に対して着脱自在な天壁923及び反応室926を含んで構成される。反応室926は反応容器92内部に収容可能な有底円筒状をなし、反応容器92内部に配設される。
反応室926は、側壁921と中心軸を共通にする円筒状の側壁927及び底壁928を含んで構成される。反応室926の内部には、ヒータ92a及び受け皿929が配置される。側壁927の上端は天壁923の下面と例えばボルト等により着脱自在に構成されており、反応室926を反応容器92本体から分離することができる。ヒータ92aは反応室926内部に収納可能な円盤状をなし、底壁928の上に配置される。受け皿929は、反応室926内部に収容可能な有底円筒状をなし、ヒータ92aの上に配置される。反応容器92、反応室926、ヒータ92a及び受け皿929は、これらの各中心軸が一致するように配置される。
【0099】
第二蟻酸銅粉末31は、受け皿929内部に、受け皿929の底面と略平行な層として貯留される。ヒータ92aは、図示しない電源から給電されることにより第二蟻酸銅粉末31を加熱する。
なお、ヒータ92aは反応容器92の周囲又は反応室926の周囲に設けてもよいし、反応室926の底壁928に埋め込んでもよい。かかる場合、第二蟻酸銅粉末31を受け皿929内部に貯留するのではなく、第二蟻酸銅粉末31を底壁928上に直接貯留してもよい。
【0100】
反応室926の側壁927には、反応容器92内部に導入される不活性ガスと一酸化炭素又はアンモニアとが流通可能な複数の孔930が、受け皿929の上端の高さ付近に設けられている。また、複数の孔930は反応室926の中心軸に対して軸対称に設けられている。なお、図10における孔930の数は、見やすくするために図9における孔930の数より少なく図示されている。同様に、図10における孔930の大きさは、図9における孔930の大きさより大きく図示されている。
【0101】
なお、側壁927に孔930を設ける代わりに、側壁927上端に不活性ガスと一酸化炭素又はアンモニアとが流通可能な複数の切り欠きを設けてもよい。
【0102】
側壁921上の天壁923上面には、配管34の断面と略同一の形状及び大きさを有する導入口924が設けられている。導入口924周辺の天壁923上面には配管34が接続されている。導入口924から下方に延びる導入流路931が、側壁921及び底壁922内部に形成されている。下方に延びた導入流路931は、底壁922周縁の内部から略横方向に底壁922中心部まで延び、底壁922中心部からさらに上方に延びて、底壁922上面の略中央を開口している。不活性ガスと一酸化炭素又はアンモニアとは、配管34、導入口924及び導入流路931を介して反応容器92に導入される。
【0103】
天壁923の略中央には、配管33の断面と略同一の形状及び大きさを有する放出口925が設けられている。放出口925周辺の天壁923上面には配管33が接続されている。反応室926内部で生成した第一蟻酸銅ガスは、放出口925及び配管33を介してチャンバ11に供給される。
【0104】
次に、図9及び図10の反応容器92を用いて行われる第一蟻酸銅ガスの生成処理について説明する。
側壁921から天壁923を取り外し、取り外した天壁923から反応室926を取り外す。取り外した反応室926から受け皿929を取り出し、取り出した受け皿929の内部に第二蟻酸銅粉末31を一様に配置する。その後、受け皿929を反応室926内部に配置し、反応室926を天壁923に取り付け、反応室926を密閉する。反応室926を取り付けた天壁923を側壁921の上端に取り付け、反応容器92を密閉する。
受け皿929に配置された第二蟻酸銅粉末31は、ヒータ92aにより50〜150℃程度に加熱される。
【0105】
なお、反応容器92の底壁922を側壁921の下端に対して着脱自在にする態様であってもよい。底壁922には配管33、34が接続されていないため、この底壁922の着脱作業は配管33、34が接続された天壁923の着脱作業よりも楽である。そのため、底壁922が着脱自在である場合、反応室926内部の受け皿929への第二蟻酸銅粉末31の補充が容易になる。
【0106】
バルブ17a、17cを開き、ガスライン16a、配管34、導入口924及び導入流路931を介して反応容器92内に不活性ガスを導入して第二蟻酸銅の結晶水を除去する。その後、バルブ17b、17dを開き、還元ガス供給源の一酸化炭素又はアンモニアのガスをガスライン16b、配管34、導入口924及び導入流路931を介して反応容器92に導入する。その際、マスフローコントローラ(MFC)18bにより、一酸化炭素又はアンモニアの流量を所定流量に調整する。なお、第二蟻酸銅の結晶水を除去せずに、一酸化炭素又はアンモニアのガスを反応容器92に導入してもよい。
【0107】
導入流路931に沿って導入された一酸化炭素又はアンモニアのガスは、不活性ガスと共に底壁922上面の略中央の開口から反応容器92内部に流入する。その際の一酸化炭素又はアンモニアの流線は、反応容器92の中心軸に対して軸対称である。やがて、一酸化炭素又はアンモニアのガスは反応容器92を構成する各壁と反応室926との間の空間を充満し、複数の孔930から反応室926に均等に流入する。その流線方向は、反応室926の半径方向である。図10の矢印は、一酸化炭素又はアンモニアの流路とその方向とを模式的に示している。
【0108】
一酸化炭素又はアンモニアのガスは、第二蟻酸銅粉末31の表面近傍に沿って略横方向に流れ、加熱された第二蟻酸銅を還元することにより第一蟻酸銅ガスを生成させる。生成した第一蟻酸銅ガスは、反応室926の略中央で収束する。反応室926の下方は第二蟻酸銅粉末31により行き止まりになっているため、反応室926の略中央で収束した第一蟻酸銅ガスは、上方の放出口925を介して配管33に取り込まれ、チャンバ11へ供給される。
【0109】
従来、粉末状固体原料と反応ガスとを反応させる場合、粉末状固体原料を配置した反応容器の下部から反応ガスを上方へシャワー状に放出するバブリングが行われていた。しかし例えば、第二蟻酸銅粉末を配置した反応容器の下部から一酸化炭素又はアンモニアのガスを上方へシャワー状に放出する場合、生成した第一蟻酸銅ガスが低温部分の第二蟻酸銅粉末内部で固化し、その場に留まることがあった。また、生成した第一蟻酸銅ガスが第二蟻酸銅粉末から放出される前に、温度条件によっては第一蟻酸銅ガスから銅が分解し、分解した銅が第二蟻酸銅粉末にトラップされてしまうという問題があった。
【0110】
しかしながら、実施の形態2に係る反応容器91、92によれば、一酸化炭素又はアンモニアのガスは第二蟻酸銅粉末31の表面近傍を略横方向に流れる。第二蟻酸銅粉末31はその表面で一酸化炭素又はアンモニアのガスによって還元され、生成した第一蟻酸銅ガスは不活性ガスにより移送されるので、第一蟻酸銅又は銅が第二蟻酸銅粉末31内部に留まることはない。バブリングの場合、下方からの一酸化炭素又はアンモニアのガスが第二蟻酸銅粉末31粒子の移動を引き起こすため、第二蟻酸銅粉末31内部の温度分布が複雑なものになる。そのため、このことが銅のトラップにも影響する。しかし、実施の形態2に係る反応容器91、92によれば、第二蟻酸銅粉末31はその表面から単調に消費されるので、一酸化炭素又はアンモニアのガスが第二蟻酸銅粉末31内部の温度構造を乱すことはない。従って、生成した第一蟻酸銅ガスは銅に分解することなく、放出口925及び配管33を介してそのままチャンバ11へ供給されるので、高スループットを図ることができる。
【0111】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92によれば、受け皿929は反応容器92に固定した状態で設けられていないため、反応容器92からの取り出し及び反応容器92への設置が簡便な構成部材である。そのため、受け皿929はその交換、点検、修理等が容易であり、全体として成膜装置の保守性に資する。また、受け皿929ごとの交換が可能であるため、第二蟻酸銅粉末31を補充する上で利便性が高い。
【0112】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92によれば、導入流路931は底壁922上面の略中央を開口しているため、導入口924から反応容器92内部に導入された一酸化炭素又はアンモニアのガスは、反応容器92の中心軸に対して軸対称に流れる。また、複数の孔930は側壁927の全域に等間隔で設けられている。そのため、一酸化炭素又はアンモニアのガスは第二蟻酸銅粉末31の表面に均等に供給されるので、第二蟻酸銅粉末31の表面で進行する還元反応にムラが生じることはない。
【0113】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92によれば、一酸化炭素又はアンモニアのガスは第二蟻酸銅粉末31の表面近傍を流れるにつれて消費されていくため、第一蟻酸銅ガスを生成する反応は反応室926の中心ほど低下するとも思われる。しかし、一酸化炭素又はアンモニアのガスは、側壁927から離れるにつれて、反応室926中央へ集中する。一方で、一酸化炭素又はアンモニアのガスが接触する第二蟻酸銅粉末31の表面積は、反応室926の中心ほど減少する。そのため、一酸化炭素又はアンモニアと第二蟻酸銅粉末31との反応は、反応室926の側壁927付近から中心まで低下することなく、第一蟻酸銅ガスを生成させる。
【0114】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92によれば、生成した第一蟻酸銅ガスが反応室926の中央で収束し、チャンバ11と接続された配管33に案内されるように構成されている。これにより、生成した第一蟻酸銅ガスを反応容器92内に留まらせることなく、チャンバ11へ供給することができるため、スループットがさらに向上する。
【0115】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92によれば、放出口925は天壁923に設けられており、生成した第一蟻酸銅ガスは上方へ移送される構成になっている。そのため、反応室926内部の第二蟻酸銅粉末及び他の汚染物質が放出口925及び配管33を介して重力によりチャンバ11に導入されることはない。これにより、チャンバ11内部の清浄を保つことができる。
【0116】
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92では、底壁922の上面中央に延びる導入流路931を設けて、一酸化炭素又はアンモニアを反応容器92の各壁と反応室926との間の空間に充満させてから、反応室926に一酸化炭素又はアンモニアを導入した。しかし、一酸化炭素又はアンモニアを反応室926に導入する形態はこれに限らない。例えば、導入口924から導入された一酸化炭素又はアンモニアを、孔930へ直接供給する新たな配管を反応容器92内部に設けてもよい。該配管は、上流側から下流側へ向かって孔930の数と同数の配管に分岐している。該配管の流入口を導入口924に接続し、分岐した各配管の流出口を側壁927の各孔930に接続する。一酸化炭素又はアンモニアのガスは、分岐した各配管を通って直接各孔930に均等に導入される。
【0117】
実施の形態2に係る図8の反応容器91の形状は、中空直方体状であった。しかし、図8の反応容器91の形状は、中空直方体状に限らず、中空円柱状又は中空直方体以外の中空箱状であってもよい。
実施の形態2に係る図9及び図10の反応容器92及び反応室926の形状は、夫々中空円柱状、有底円筒状であった。しかし、図9及び図10の反応容器92及び反応室926の形状は、夫々中空円柱状、有底円筒状に限らず、中空箱状であってもよい。
【0118】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0119】
(付記1)
2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する工程と、
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給する工程と、
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスを、基板にエネルギーを与えることにより分解して金属膜を形成する工程と
を有することを特徴とする成膜方法。
【0120】
(付記2)
前記2価のカルボン酸金属塩は粉末状であり、これに一酸化炭素又はアンモニアを供給することにより1価のカルボン酸金属塩ガスを得る
ことを特徴とする付記1に記載の成膜方法。
【0121】
(付記3)
前記2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させる際に加熱する
ことを特徴とする付記1又は付記2に記載の成膜方法。
【0122】
(付記4)
基板は真空に保持された処理容器内に配置され、前記2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとが反応して生成された1価のカルボン酸金属塩ガスを前記処理容器内に導入する
ことを特徴とする付記1から付記3までのいずれか一つに記載の成膜方法。
【0123】
(付記5)
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより基板上に前記1価のカルボン酸金属塩を堆積させ、
前記1価のカルボン酸金属塩が堆積した基板にエネルギーを与えることにより基板上の1価のカルボン酸金属塩を分解する
ことを特徴とする付記1から付記4までのいずれか一つに記載の成膜方法。
【0124】
(付記6)
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給しながら、基板にエネルギーを与える
ことを特徴とする付記1から付記4までのいずれか一つに記載の成膜方法。
【0125】
(付記7)
前記2価のカルボン酸金属塩に含まれる金属は銅、銀、コバルト、ニッケルからなる群から選択されるものである
ことを特徴とする付記1から付記6までのいずれか一つに記載の成膜方法。
【0126】
(付記8)
前記2価のカルボン酸金属塩は第二蟻酸銅であり、
前記1価のカルボン酸金属塩ガスは第一蟻酸銅ガスである
ことを特徴とする付記1から付記7までのいずれか一つに記載の成膜方法。
【0127】
(付記9)
真空に保持され、基板が配置される処理容器と、
該処理容器内で基板を支持する基板支持部材と、
2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成するガス生成手段と、
前記処理容器内の基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板支持部材上の基板にエネルギーを与えるエネルギー付与手段と、
前記処理容器内を排気する排気手段と
を具備し、
前記ガス供給手段により基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は前記ガス供給手段により基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスが、前記エネルギー付与手段によるエネルギーにより分解して基板上に金属膜が形成される
ことを特徴とする成膜装置。
【0128】
(付記10)
前記ガス生成手段は、
前記2価のカルボン酸金属塩が貯留され、一酸化炭素又はアンモニアと前記2価のカルボン酸金属塩との反応により1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する反応部と、
一酸化炭素又はアンモニアを前記反応部に導入する導入配管と
を有し、
前記ガス供給手段は、
生成された前記1価のカルボン酸金属塩ガスを前記処理容器に導入するカルボン酸金属塩ガス導入部
を有する
ことを特徴とする付記9に記載の成膜装置。
【0129】
(付記11)
前記反応部は、
前記2価のカルボン酸金属塩粉末を貯留する反応容器
を有する
ことを特徴とする付記10に記載の成膜装置。
【0130】
(付記12)
前記カルボン酸金属塩ガス導入部は、
前記1価のカルボン酸金属塩ガスをシャワー状に導入するシャワーヘッド
を有する
ことを特徴とする付記10又は付記11に記載の成膜装置。
【0131】
(付記13)
前記ガス供給手段により基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスが供給されて前記1価のカルボン酸金属塩が堆積し、前記エネルギー付与手段によるエネルギーによって基板上に堆積した該1価のカルボン酸金属塩が分解する
ことを特徴とする付記9から付記12までのいずれか一つに記載の成膜装置。
【0132】
(付記14)
前記ガス供給手段により基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスが供給されながら、前記エネルギー付与手段により基板にエネルギーが付与される
ことを特徴とする付記9から付記12までのいずれか一つに記載の成膜装置。
【0133】
(付記15)
前記2価のカルボン酸金属塩に含まれる金属は、銅、銀、コバルト、ニッケルからなる群から選択されるものである
ことを特徴とする付記9から付記14までのいずれか一つに記載の成膜装置。
【0134】
(付記16)
前記エネルギー付与手段は、前記基板に熱エネルギーを与える
ことを特徴とする付記9から付記15までのいずれか一つに記載の成膜装置。
【0135】
(付記17)
基板が配置される処理容器と、
固体原料及び反応ガスの反応により処理ガスを生成する反応容器と
を備え、
該反応容器で生成した処理ガスを前記処理容器内の基板上に供給し、基板に対して成膜処理を行う成膜装置において、
前記反応容器は、
反応ガスが固体原料集合物の表面近傍を略横方向に流れるように構成してある
ことを特徴とする成膜装置。
【0136】
(付記18)
前記反応容器で生成した処理ガスを前記処理容器へ供給する供給手段
を備え、
前記反応容器は、
側壁と、
反応ガスを前記反応容器に導入する導入口と、
生成した処理ガスを前記供給手段に放出する放出口と
を有し、
前記導入口及び放出口が側壁の対向位置に設けられている
ことを特徴とする付記17に記載の成膜装置。
【0137】
(付記19)
前記反応容器で生成した処理ガスを前記処理容器へ供給する供給手段
を備え、
前記反応容器は、
天壁と、
反応ガスを導入する導入口と、
生成した処理ガスを前記供給手段に放出する放出口と、
前記天壁下面に着設され、固体原料を貯留する有底円筒状の反応室と
を有し、
前記導入口から導入した反応ガスが流通可能な複数の孔が、前記反応室の側壁に設けられ、
前記放出口が前記反応室上の天壁に設けられている
ことを特徴とする付記17に記載の成膜装置。
【0138】
(付記20)
前記反応容器は、固体原料を加熱する加熱手段を有する
ことを特徴とする付記17から付記19までのいずれか一つに記載の成膜装置。
【符号の説明】
【0139】
1 基板
2 1価のカルボン酸金属塩膜
3 金属膜
11 チャンバ
12、121、122、123 サセプタ
14 ヒータ
16b ガスライン
19 冷媒流路
20 シャワーヘッド
20a、32a、33a、71a、91a、92a ヒータ
22 シャワープレート
26 排気装置
31 第二蟻酸銅粉末
32、91、92 反応容器
33、34 配管
50 ランプ加熱ユニット
80 プロセスコントローラ
81 ユーザインタフェース
82 記憶部
101 吸着処理ユニット
102 アニールユニット
103 冷却ユニット
119 制御部
911、921 側壁
913、923 天壁
914、924 導入口
915、925 放出口
926 反応室
930 孔
W 半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する工程と、
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給する工程と、
基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスを、基板にエネルギーを与えることにより分解して金属膜を形成する工程と
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記2価のカルボン酸金属塩は粉末状であり、これに一酸化炭素又はアンモニアを供給することにより1価のカルボン酸金属塩ガスを得る
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
真空に保持され、基板が配置される処理容器と、
該処理容器内で基板を支持する基板支持部材と、
2価のカルボン酸金属塩と一酸化炭素又はアンモニアとを反応させて1価のカルボン酸金属塩ガスを生成するガス生成手段と、
前記処理容器内の基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給するガス供給手段と、
前記基板支持部材上の基板にエネルギーを与えるエネルギー付与手段と、
前記処理容器内を排気する排気手段と
を具備し、
前記ガス供給手段により基板上に前記1価のカルボン酸金属塩ガスを供給することにより堆積した1価のカルボン酸金属塩、又は前記ガス供給手段により基板上に供給した前記1価のカルボン酸金属塩ガスが、前記エネルギー付与手段によるエネルギーにより分解して基板上に金属膜が形成される
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
前記ガス生成手段は、
前記2価のカルボン酸金属塩が貯留され、一酸化炭素又はアンモニアと前記2価のカルボン酸金属塩との反応により1価のカルボン酸金属塩ガスを生成する反応部と、
一酸化炭素又はアンモニアを前記反応部に導入する導入配管と
を有し、
前記ガス供給手段は、
生成された前記1価のカルボン酸金属塩ガスを前記処理容器に導入するカルボン酸金属塩ガス導入部
を有することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−168815(P2011−168815A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31664(P2010−31664)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】