説明

成長する動物の発育を促進するための組成物と方法

成長する動物の骨発達を促進し、神経的発達を強化し、認知能力及び運動神経能力の発達を強化し、健全な体組成を促進し、及び/又は脂肪を減少させるための組成物及び方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、米国仮出願No.60/891,171(2007年2月22日出願)への優先権を主張するものであり、該仮出願の内容は、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、成長する動物の発育を促進するための組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
商業的に入手可能な犬及び猫用フードは、多くの異なる特に処方された組成物を包含する。該犬及び猫用フードは、また、動物のライフサイクルの異なる段階における動物の栄養的ニーズに対処するように設計された製剤も包含する。典型的に、これらの段階は、生命の成長段階、成体段階及びシニア段階を包含する。例えば、米国特許No.5,851,573は、大型種子犬用のペットフード組成物を開示する;米国特許No.6,426,100は、成長する動物における骨造形(bone modelling)と軟骨細胞機能の改良を供与する組成物を開示する;米国特許No.6,582,752は、両性に通用する特殊子犬用フードを開示する。しかし、このようなペットフード製剤の入手可能性にも拘わらず、成長する動物の発育を促進するように設計された、画期的な成分と栄養素を含む、さらなる製剤を開発する必要性が依然として存在する。
【0004】
骨は代謝的に活性であり、カルシウムの再吸収(resorption)と再沈着を絶えず受けている。このことは、骨を除去するため(再吸収)の破骨細胞と、骨を交換するため(沈着)の骨芽細胞との連続的で組織的な作用を必要とする。これは一般に、“骨交代(bone turnover)”と呼ばれる。正常な骨では、動物の骨格成長後に、無機質沈着は無機質再吸収と平衡する;しかし、ある一定の条件下では、骨再吸収が骨沈着を上回り、結果として、骨の無機質含量の損失が生じる。骨再吸収の増加を伴う、高い骨交代は、骨の強度を危うくして、骨構造の菲薄化(thinning)を招く可能性がある。これは結果として、異常な骨微細構築と骨無機質化低減を生じる可能性がある。動物は加齢につれて、一般に骨無機質含量を減らし、その結果、オステオペニア(osteopenia)を生じ、これは、骨折傾向を大きくしうる骨粗しょう症の主な原因である。動物はまた、骨の無機質含量損失が種々な疾患及び状態に付随するので、骨の無機質含量損失を生じやすい傾向がありうる。骨損失を遅延させる又は骨の再石灰化を助成する、フードと栄養補助物質が開発されている。しかし、動物が成熟したときに、このような状態を避けるために、骨成長を促進する組成物を含めて、このような組成物を開発する必要性が依然として存在する。
【0005】
骨脱着が、骨からカルシウムとリンが遊離するので、骨型アルカリホスファターゼ(“BAP”)の増加を伴うことは、当該技術分野で一般に知られている。種々な物質を用いて、骨形成タンパク質又はマトリックス・メタロプロテアーゼを含めた、骨維持又は骨形成に関与する遺伝子を発現させることができる。例えば、骨形成のためのカルニチンの使用が知られている。しかし、動物における骨形成を促進する、他の組成物及び方法を開発する必要がある。太り過ぎ及び/又は肥満と考えられる動物の数は増加しており、合衆国では、コンパニオン動物の25%〜40%が太り過ぎ又は肥満と考えられるほどである。動物は、その理想体重を10%以上超える体重であるならば、太り過ぎと見なされ、その理想体重を15%以上超える体重であるならば、肥満と見なされる。動物のあばら骨が感知されうるが見られないならば、動物は理想体重を有すると言える。動物における肥満は、糖尿病、関節炎、膵臓炎、肝リピドーシス、肢体異常障害、心臓血管疾患、呼吸器病、股関節ディスプレシア、肝臓疾患、胃腸障害及び皮膚問題の危険性増強にに関与する。
【0006】
犬及び猫のような動物は、結局は体重制御には無効であった、数多くの食餌計画及び運動訓練の対象になってきている。低カロリー動物フード、脂肪なし動物フード、不溶性ファイバー増強動物フード(increased nonsoluble fiber animal foods)、低炭水化物/高タンパク質動物フード、及び体重制御用に市販されている他のフードの開発には進歩がなされている。それにも拘わらず、全体として、改良の機会が残されており、当該技術分野の更なる進歩が必要であることを、統計が示唆している。それ故、脂肪を減少させ、痩せた筋肉を強化して、動物の全身健康(general fitness)を改善するための新規な方法及び組成物の必要性がある。
【0007】
当該技術分野で脳機能改善薬が知られており、これには一般に認知発達及び神経的発達を改良する薬物及び化合物が包含される。脳機能改善薬は多年にわたって用いられているが、該薬物の一部はフード製品に使用するには有害若しくは高価である。したがって、製造費用を高めることなく、動物の神経的発達を助成しうる組成物及び方法を開発することが望ましい。当該技術分野で容易に入手可能である成分を神経的発達の改善に用いることができることが好ましい、しかし、特定の処方の利益が実現され、正しく認知されうる前に、このような特定の処方を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許No.5,851,573
【特許文献2】米国特許No.6,426,100
【特許文献3】米国特許No.6,582,752
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ある一定の態様では、本発明は、成長する動物の発育を促進するために有用である組成物に関する。特に、本発明の組成物は、神経的発達、骨の発達を強化し、成長する動物における健全な体組成を促進することができる、1つ以上の栄養素又はバイオアクティブ物質を含む。ある一定の実施態様では、該栄養素及びバイオアクティブ物質は、非限定的に、脂肪酸、酸化防止剤、必須栄養素、アミノ酸、ミネラルと微量元素、ビタミン及びビタミン様物質を包含する。本発明の他の態様は、成長する動物の発育を促進する方法であって、本発明の組成物の有効量を、成長する動物に直接に及び/又は、動物が子宮内にいる及び/又は乳飲み仔であるときに動物の母獣に投与することを含む方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、1態様において、下記成分:メチオニン約0.8〜約1.6%;マンガン約50-〜約200ppm;DHA約0.1〜約0.5%;EPA約0.1〜約0.7%;コリン約2500〜約7500ppmを含む組成物1、成長する動物の発育を促進するために有用なペットフード組成物に関する。
【0011】
本発明はさらに下記組成物を包含する:
1.1 タウリン約1000〜約2000ppmを含む組成物1.0;
1.2 リノール酸約2.5〜約6%を含む組成物1.0又は組成物1.1;
1.3 総合n−3脂肪酸約1〜約3%を含む先行組成物のいずれか;
1.4 ビタミンE約50〜約1200IU/kgを含む先行組成物のいずれか;
1.5 ビタミンC約50〜約500ppmを含む先行組成物のいずれか;
1.6 リシン約2.2〜約7g/1000kcalを含む先行組成物のいずれか;
1.7 炭水化物0〜約90重量%を含む組成物1;
1.8 タンパク質約5〜約70重量%、例えば、約20〜約50重量%又は約22〜約50重量%を含む組成物1.1又は組成物1.2;
1.9 脂肪約2〜約50重量%を含む先行組成物のいずれか;
1.10 総食物繊維約0.1〜約20重量%、例えば、約1〜約11重量%を含む先行組成物のいずれか;
1.11 動物の栄養的ニーズを支持する、変化する割合での、ビタミン、ミネラル及びその他の栄養素0〜約15重量%、例えば、約2〜約8%を含む先行組成物のいずれか;
1.12 炭水化物約5〜約55重量%を含む先行組成物のいずれか;
1.13 タンパク質約20〜約60重量%を含む先行組成物のいずれか;
1.14 脂肪約5〜約40重量%、例えば、脂肪少なくとも約8%、又は約9〜40%を含む先行組成物のいずれか;
1.15 ビタミンE約200〜約1000IU/kgを含む先行組成物のいずれか;
1.16 リシン約2.5〜約7g/1000kcalを含む先行組成物のいずれか;
1.17 カルニチン約100〜約500ppmを含む先行組成物のいずれか;
1.18 ドッグフード、例えば、子犬フードである先行組成物のいずれか。
【0012】
本発明の他の実施態様は、EPA約0.1〜約0.7%(例えば、約0.1〜約0.6%)、マンガン約50〜約200ppm(例えば、約50〜約150ppm)、及びメチオニン約0.5〜約1.6%(例えば、約0.8〜約1.6%)を含む、成長する動物の骨発達を促進するために有用なペットフード組成物である。
【0013】
本発明の他の実施態様は、DHA約0.1〜約0.5%、カルニチン約100〜約500ppm、及びリシン約2.5g/1000kcal〜リシン約7g/1000kcalを含む、動物における健全な体組成を促進するために有用なペットフード組成物である。
【0014】
本発明はまた、犬における骨発達を促進し、神経的発達を強化し、認知能力及び運動神経能力を強化し、健全な体組成を促進し、及び/又は脂肪を減少させるための方法、方法2.0であって、本発明の組成物(例えば、組成物1.0〜1.18)のいずれか1つを犬に投与することを含む方法を包含する。
【0015】
本発明はさらに、下記方法を包含する:
2.1 該犬が子犬である場合の方法2.0;
2.2 該犬が、妊娠中に組成物1.0〜1.18のいずれか1つをえさとして与えられた母獣から生まれた犬である場合の方法2.0又は方法2.1;
2.3 該子犬が子宮内にいる場合の方法2.2;
2.4 該母獣が、妊娠前に組成物1.0〜1.18のいずれか1つをえさとして与えられた母獣である場合の方法2.2;
2.5 該母獣が、妊娠期間の大部分にわたって組成物1.0〜1.18のいずれか1つをえさとして与えられた母獣である場合の方法2.2又は方法2.4;
2.6 該母獣が、妊娠前と妊娠中に組成物1.0〜1.18のいずれか1つから本質的に成る組成物をえさとして与えられた母獣である場合の方法2.2〜2.5のいずれか1方法;
2.7 該子犬が、離乳前に、例えば、まだ乳飲み仔であるときに、組成物1.0〜1.18のいずれか1つをえさとして与えられた子犬である場合の先行方法のいずれか1方法;
2.8 該子犬が、離乳後に組成物1.0〜1.18のいずれか1つをえさとして与えられた子犬である場合の先行方法のいずれか1方法;
2.9 該子犬が、組成物1.0〜1.18のいずれか1つから成るフード組成物をえさとして与えられた子犬である場合の方法2.8;
2.10 該組成物の有効量を該動物に投与する、先行方法のいずれか1方法;
2.11 該組成物を該動物に、有効な時間量にわたって投与する、先行方法のいずれか1方法。
【0016】
さらに、成長する動物、例えば、子犬に直接、本明細書に開示する組成物を投与することに加えて、該動物がまだ子宮内にいるときに及び/又は該動物が乳飲み仔であるときに該動物の母獣に該組成物を投与することもできると考えられる。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例の詳しい説明を参照することによって、理解されるであろう。
発明の詳細な説明
本明細書に述べる本発明が、記載した特定の方法論、プロトコル及び試薬類は変化可能であるので、これらに限定されないことが考慮される。本明細書に用いる専門用語が特定の実施態様を述べるために過ぎず、如何なる意味でも本発明の範囲を限定することを意図しないことが考慮される。
【0018】
他に定義しない限り、本明細書に用いる技術用語及び専門用語の全ては、本発明が属する技術分野で当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、本明細書に引用した全ての参考文献は、それらの全体で本明細書に援用される。本開示における定義と引用参考文献の定義とに不一致がある場合には、本開示が調整する。本明細書を通して用いる限り、範囲(ranges)は、該範囲内にある全ての値を表すためのショートハンド(shorthand)として用いられる。該範囲内のいずれの値も、該範囲の末端として選択することができる。
【0019】
本明細書及び添付請求の範囲において用いる限り、単数形(“a” 、“an”及び“the”)は、前後関係が明確に別なように指示しない限り、複数の関連を包含する。
本発明は任意の動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、コンパニオン動物に関する。“コンパニオン動物”なる用語は、ヒトと密接に関係して生活する、任意の動物を意味し、任意の種の犬及び猫を包含するが、これらに限定される訳ではない。しかし、本明細書では、その食餌がヒトによって調整することができるいずれの動物も本明細書に開示する処方を与えられることから利益を得ることができると考える。これらの動物は、例えば、飼育された家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ等)と、おりに入れられた非家畜動物(undomesticated animals held in captivity)、例えば、動物園等の動物を包含しうる。好ましくは、動物は犬科の動物、例えば犬である。この犬科動物が成長する犬、例えば子犬であることが好ましい。
【0020】
本明細書で用いる限り、特定の結果を得るために“有効な量”又は“有効量”等の用語は、特に望ましい生物学的結果を得るために有効であると考えられる、本明細書に述べる化合物、物質又は組成物の量を意味する。本明細書で考慮するように、このような結果は、例えば、動物の神経的発達と骨及び関節の健康と免疫機能との強化、及び/又は動物(例えば、犬科動物)の種及び血統に依存して、子宮内及び/又は生後の成長段階中(例えば、生後1年まで及び1年を超えて)の動物の健全な体組成の促進を包含する。このような有効な活性は、例えば、動物が子宮内にあるとき又は乳飲み仔であるときに前記動物の母獣に本発明の組成物を投与することによって、並びに動物の成長段階中に前記動物に直接投与することによって、達成することができる。
【0021】
本明細書で用いる限り、例えば、本明細書で述べるような、成長する動物における特定の生物学的プロセス又は体状態の“強化(enhancement)”は、対照動物に比較して、成長する動物の生物学的プロセス又は体状態の改善を意味する。このようなプロセス又は状態における改善は、当業者によって判定することができる。例えば、神経的発達の強化は、対照動物に比較して、MRIスペクトロスコピーで測定したときのより良好な脳発達によって、及び/又はより良好な認知能力及び運動能力スコアによって実証することができる。骨発達の強化は、例えば、対照動物に比較して、低い骨型アルカリホスファターゼ・レベルによって及び/又は対照動物に比較して、高い二重エネルギーX線吸収分析法(DXA又はDEXA)骨密度スコアによって実証することができる。成長する動物の体組成も、DXAによって評価することができ;本発明の方法による組成物を投与した動物において、骨ミネラル密度、骨ミネラル含量、除脂肪体重(lean mass)、総脂肪量(total fat mass)、体脂肪率(percent fat mass)、除脂肪骨含量(lean and bone content)を分析し、対照動物に比較することができる、この場合に、対照に比べて、体脂肪率が小さい動物は健全な体組成を有すると考えられる。
【0022】
本明細書で用いる限り、“成長する動物の発達の強化(enhancement of the development of a growing animal”又は“強化された発達(enhanced growth)”等の用語は、非限定的に、成長する動物の1つ以上の生物学的プロセス及び/又は体状態の総合的改善を意味し、該生物学的プロセス及び/又は体状態は、非限定的に、生物の成長と発達を中心とした生物学的プロセスを包含し、本明細書に述べた生物学的プロセス、例えば、骨及び関節の健康、神経的及び免疫系の発達と体重増加(例えば、脂肪組織の代わりに除脂肪筋肉量の増加)を非限定的に含む。
【0023】
動物の“成長”ライフステージは、動物の種と血統に依存して、誕生若しくは離乳(生後約8週間)から生後約1年以上までの期間を意味する。
本明細書で用いる限り、“子犬(puppy)”なる用語は、典型的に、誕生から生後12か月までの未成熟な犬を意味する。
【0024】
本明細書で用いる限り、“健全な体組成”とは、正常体脂肪率(例えば、約25%の体脂肪)を含む、成長する動物における体組成を意味し、脂肪組織ではなく除脂肪筋肉量を加えることによって重量を増す傾向がある、
本明細書で用いる“必須アミノ酸”は、生物によって新たに合成することができず、したがって、食餌中で供給しなければならないようなアミノ酸を意味する。必須アミノ酸が、生物の代謝に依存して、種毎に変化することは、当業者によって理解される。例えば、犬及び猫(及びヒト)にとっての必須アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、メチオニン、リシン、イソロイシン、バリン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンであることが、一般に理解される。
【0025】
当業者によって理解されるように、“制限アミノ酸”は、食餌中に不充分な量で存在するならば、別に、他の必須アミノ酸が非常に充分な量で存在するとしても、他の必須アミノ酸の有用性を制限することになるアミノ酸を意味する。リシンは、本明細書で開示する組成物中の制限必須アミノ酸である。したがって、残りの必須アミノ酸は、好ましい生物学的結果に影響を及ぼすために決定的と判定されるリシン量に関連して、定量的に処方される又は“バランスを取られる”。本明細書で用いる限り、“バランスの取れたアミノ酸類(balanced amino acids)”とは、最適の動物成長及び発達を確保するためのエネルギーに対する必須アミノ酸リシンの関係を参照する。
【0026】
本明細書で用いる“必須栄養素”とは、体によって合成することができない、正常な体機能のために必要な栄養素を意味する。必須栄養素のカテゴリーは、ビタミン食餌ミネラル、脂肪酸、及びアミノ酸を包含する。必須と判断される栄養素は、生物の代謝に依存して、種毎に異なることは、当業者によって理解される。例えば、犬と猫にとっての必須栄養素は、ビタミン類A、D、E、K、B、B、B12、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン及びヨウ素を包含する。一般にB複合ビタミンと見なされるコリンは、セミ必須栄養素に含めることができる。さらに、タウリンは、技術的にはアミノ酸ではなくシステイン誘導体でありながら、猫にとって必須アミノ酸である。
【0027】
L−カルニチン(レボカルニチン)としても知られるカルニチンは、アミノ酸リシンとメチオニンとから合成される第4級アンモニウム化合物であり、細胞質ゾルからミトコンドリア中への脂肪酸移動の原因である。
【0028】
何らかの理論又は特定の作用機序に限定される訳ではないが、本発明は、ペットフード組成物へのある一定成分の添加とこれらの組成物の動物への投与が、成長する動物の発達を強化することができるという意外な発見に基づいている。例えば、本発明の組成物をえさとして与えられた動物(又はそれらの母獣に妊娠中及び離乳前に該組成物がえさとして与えられ、それらの同腹仔の成長を通して続けられた動物)が神経的発達の強化、骨と関節の健康の強化を示し、総合的により健全な体組成を有することをデータが実証する。
【0029】
本明細書で考慮するように、本発明の組成物は、栄養的に完全で、バランスの取れた動物フード組成物を含む。このような組成物は、他の栄養素及び成分の中でも、望ましい、健康に良い量のタンパク質、炭水化物及び脂肪を包含する。“栄養的に完全で、バランスの取れた動物フード組成物”並びに動物フード組成物に適した栄養素及び成分とそれらの望ましい量は、当業者によく知られている(例えば、National Research Council, 2006 Nutritional Requirements for Dogs and Cats, National Academy Press, Washington D.C. 又は the Official Publication of the Association of American Feed Control Officials, Inc. Nutrient Requirements for Dogs and Cats 2006を参照のこと)。
【0030】
本明細書では、本明細書に開示する組成物がさらに、酸化防止剤、添加剤、安定剤、増粘剤(thickeners)、フレイバーラント(flavorants)、味の良さ増強剤及び着色剤を、当業者が熟知の量及び組み合わせで含むことを考慮する。“酸化防止剤”とは、フリーラジカルと反応して又はフリーラジカルの生成を減じて、フリーラジカルを中和することができる物質を意味する。例は、非限定的に、β−カロテン、セレン、コエンザイムQ10(ユビキノン)、ルテイン、トコトリエノール、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、グルタチオン、タウリン、N−アセチルシステイン、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンC、フラボノイド、アントシアニンジン、及びリポ酸を包含する。
【0031】
任意のコンシステンシー又は水分含量のフードが考慮されるが、好ましくは、本発明の組成物は、例えば、ウェット、セミドライ又はドライ動物フード組成物であることができる。“ウェット”フードとは、缶若しくはホイルバッグに入れて販売され、約70〜約90%の水分含量を有するフードを意味する。“ドライ”フードとは、約5〜約15%の水分含量を有する組成物を意味し、しばしば、小ビット又はキブル(kibbles)の形態で製造される。セミドライ組成物は、約15%〜約70%水分を有する組成物を意味する。本明細書では、中間の水分コンシステンシーを有する組成物と、種々なコンシステンシーの成分並びに2つ以上のコンシステンシー(more than one consistency)を包含しうる成分を含むことができる組成物(例えば、軟質でチューイなミート様粒子(soft,chewy meat-like particles)並びに、外部シリアル成分と内部クリーム成分を有するキブル)をも考慮する。
【0032】
本発明の他の態様は、本発明の組成物の有効量を動物に投与することによって、成長する動物の発達を強化する方法に関する。上記で定義したように、“成長する動物の発達の強化”は、生物の成長と発達に集中した生物学的プロセスを非限定的に含めた、成長する動物の1つ以上の生物学的プロセス及び/又は体状態(非限定的に、本明細書に述べた生物学的プロセス、例えば、骨及び関節の発達、神経的及び免疫系の発達、並びに健全な体重増加を包含する)の総合的改善に関する。動物の状態を分析して、該状態を改善した又は対照に比べられないとして(as improved or not compared to a control)特徴付けるための手段に、当業者は熟知している。
【0033】
1態様では、本発明は、成長する動物の神経的発達を強化する方法であって、本発明の組成物を前記動物に投与することを含む方法に関する。例えば、神経的発達の強化は、対照動物に比べてより良好な、認知能力及び運動能力スコアによって実証することができる。例えば、神経的発達の状態は、本発明の組成物を投与された、成長する動物における訓練可能性のレベルを測定して、該レベルを適当な対照動物に比較することによって分析することができる。
【0034】
他の態様では、本発明は、成長する動物における骨及び関節の健康を強化する方法であって、本発明の組成物を前記動物に投与することを含む方法に関する。骨及び関節の健康の強化は、例えば、対照動物に比べてより低い骨型アルカリホスファターゼ・レベルによって実証することができる、というのは、低い骨型アルカリホスファターゼ・レベルは低い骨交替を示唆し、したがって、より大きく緻密な骨密度が成長する傾向を示唆すると考えられるからである。さらに、関節炎マーカーの低いレベル、例えば、1型軟骨のカルボキシ−末端c−テロペプチド及びデオキシ−ピロジニリンが低レベルであることは、それぞれ、軟骨損傷度又は骨損傷度と交替度の低下を示唆しうる。骨及び関節の健康はさらに、二重エネルギーX線吸収分析法(DXA)を用いて分析することができ、骨及び関節の健康の強化は、対照に比べて高い骨密度スコアによって実証される。
【0035】
他の態様では、本発明は、成長する動物における免疫機能を強化する方法であって、本発明の組成物を前記動物に投与することを含む方法に関する。例えば、強化された免疫機能を有する動物は、抗原チャレンジに対する、対照よりも大きな抗体反応を実証する動物として特徴付けることができる。
【0036】
他の態様では、本発明は、成長する動物における健全な体組成を促進する方法に関する。一般に、健全な体組成は、正常な体脂肪率(例えば、約25%(BCS=3に対して16〜24%))を有する体状態(body condition)である、及び/又は体脂肪率がDXAによって測定して27%を超えない場合、又は動物が例えば、“Small Animal Clinical Nutrition”, 4th Edition, Chapter 13 (ISBN 0-945837-05-4)に開示された方法を用いて測定して3以下(no more than 3)の体状態スコア又は体状態スコアを測定するための他の慣用的方法を用いてその同等値を有する場合の体状態であると考えることができる。一般に、動物のいずれのライフステージにおいても脂肪なし筋肉量の増加による体重増加は、脂肪組織の蓄積に帰因できる重量増加よりも好ましい。
【0037】
本明細書では、本発明の組成物が栄養的にバランスの取れた完全な食餌として単独で、又は食餌用サプルメント類、ビタミン及び/又は当業者に熟知である他の栄養的有効剤と組み合わせて、動物にとっての総合的ウェルネス・プログラムの一部として投与することができることが考慮される。本発明の組成物はさらに、獣医学的治療用製品としても有用でありうる。このようなものとして、該組成物は、予定の使用に対するその適合性が当業者に熟知である、キャリヤー、希釈剤又は賦形剤を任意に含有することができる。
【0038】
本明細書に開示した組成物を成長する動物に、例えば、成長する子犬又は子猫に直接投与することの他に、動物がまだ子宮内にいるときに又は動物が乳飲み仔であるときに、該組成物を該動物の母獣に投与することができることも考慮される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の限定を意図するものではない。処方を述べる場合に、当該技術分野で通常であるように、それらの成分に関して、これらの成分が実際の製剤中で、該製剤の製造、貯蔵及び使用につれて、相互に反応する可能性があるにも拘わらず、該処方を説明することができ、そしてこのような製品も記載する処方によってカバーされると理解される。
【0040】
下記実施例はさらに、本発明の範囲内の具体的な実施態様を述べ、実地に明示する。該実施例は説明のためにのみ記載するのであり、本発明の要旨及び範囲から逸脱せずに、多くの変更が可能であるので、該実施例を本発明の限定と解釈すべきではない。本明細書に示し、説明した変更(modifications)の他に、本発明の種々な変更が当業者に明らかである筈であり、これらの変更は、添付した特許請求の範囲内に含まれると意図される。
【0041】
特に述べた範囲(extent)を除いて、本明細書中に用いた全ての割合(percentages)は、乾燥物質基準の重量割合である。“乾燥物質基準”なるフレーズは、組成物中の如何なる水分をも除去した後の該組成物中の成分濃度を意味する。
【実施例1】
【0042】
成長する動物の発育を強化する処方を本明細書に開示する。これらの組成物は、“理想的タンパク質概念”を考慮しながら開発する(Baker and Czarnecki-Maulden, 1991 Annu. Rev. Nutr. 11:239-63)。
【0043】
“成長”ライフステージのためにフードを開発する。これらのフードは、犬成長用及び猫成長用処方を包含する。これらのフードの栄養素最低勧告値(the minimum nutrient recommendations)並びに試作品フード(prototype food)の目標値を以下の表1に列挙する。
【0044】
【表1】

【実施例2】
【0045】
試験設計
本明細書に述べる試験には、5種類のフードを用いる。フードの栄養素を分析して、表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
組成物Hは、本出願の対象である組成物である。他の4種類の組成物は、商業的に入手可能である。組成物P1とP2はフードの同じブランドであるが、異なるロットで製造されている。組成物E1とE2は同じ製造者からのものであるが、組成物E1は小型犬向けに販売され、組成物E2は中型犬向けに販売されている。
【0048】
母獣22匹を3グループに分割して、受胎の前に少なくとも10日間、組成物H、P1又はE1のいずれかを摂取させる。母獣は、触診によって妊娠が確認されるまで、グループ・ロッジング(group lodging)で維持し、次に、マタニティ・ロッジングに移動させる。母獣からの子犬は、母獣にもともと離乳するまで与えられる同じフードで飼育される。離乳後に、組成物P1を与えた母獣から生まれた子犬48匹と、組成物E1を与えた母獣から生まれた子犬16匹と、組成物Hを与えた母獣から生まれた子犬16匹とを、さらなる試験のためにランダムに選択する。
【0049】
離乳後に、組成物P1をえさとして与えた母獣からの子犬48匹のうちの16匹は、それぞれ、組成物H、P2又はE2のいずれか1種類に切り替える。離乳後に、組成物E1をえさとして与えた母獣からの子犬16匹は、組成物E2に切り替える。組成物Hをえさとして与えた母獣からの子犬16匹は、離乳後に組成物Hを与える。
【0050】
10か月間の試験期間中に、健康バイオマーカーの分析のために並びにプロテオミック及びゲノミック分析のために血液サンプルをルーチンに採取する。体組成と骨密度の変化を記録するために、生後2か月、4か月、6か月、9か月及び12か月目に、犬をDXAによってスキャンする。さらに、生後2か月、4か月、6か月、9か月及び12か月目に、子犬の網膜電図を撮影して、網膜発達を評価する。生後2か月、6か月及び12か月目に、脳画像化試験も行なって、神経的成長及び発達を評価する。最後に、認知能力及び運動神経能力検査を試験を通して連続的に行なって、神経的(認知能力及び運動神経能力)発達を評価する。試験期間を通して、体重を毎週記録し、グループ収容した子犬のフード摂取量を毎日記録する。
【実施例3】
【0051】
犬の神経的発達
実施例2の子犬に対して、小型Granzfeld式刺激器を含む手持ち式ポータブル装置によって種々な時点で、網膜電図(ERGs)を撮影する。動物を少なくとも1時間暗順応させてから、赤色光下で(under red light)メデトミジン(0.1mg/kgIM)とケタミン(5mg/kgIM)を用いて、麻酔する。トロピカミド(tropicamide)1%(Tropicamide Ophthalmic Solution USP, Alcon Lab. Inc., Fort Worth, Texas)を用いて、瞳孔を最大に拡張して、塩酸プロパラカイン0.5%(Alcaine, Alcon Lab. Inc., Fort Worth, Texas)で眼を麻酔する。Jetコンタクトレンズ電極を眼の上に配置し、メチルセルロース(Methocel, Ciba Vision, Grosswallstadt, Germany)によって緩衝化する(cushioned)。皮下白金針電極を後頭部と、眼の外側眼角(lateral canthus of the eye)から約0.5cmのところに置く、これらはそれぞれ、外側電極(ground electrode)と基準電極として役立つ。この機器のための標準フラッシュ(SF)(0log)は、白色LEDsによって生ずる1.7cd s/mである。該フラッシュ強度は0.3logステップで、−3.0logから+1.2log単位まで変えることができる。この試験における暗順応刺激(scotopic stimulation)のために、SFによる、−3.0log、0log及び+1.2logが用いられる。10分間の明順応(室内で通常の蛍光灯を用いる)後に、明順応記録(photopic recording)を0logと+1.2logにおいて行なって、最後に、30Hzフリッカー刺激に対する反応を試験する。全ての記録はERGユニットに保存し、後に、さらに評価するためにコンピューターに転送する。
【0052】
最初のERGと、逆転による初期位置識別に関する分析: 最初の時点(生後8週間)では、ERGと分光法測定のために単一分析のみを行なう。この理論的説明は、出生後フード・グループの子犬は、試験施設に到達するまで、母獣フードで飼育されるからである。ERGとMRIデータは、試験施設に到達するまでの約1週間で(approximately one week within reaching the test facility)得られるので、出生後グループを一緒にして、単一グループにする(N=48)。これらの測定値が、試験施設に到達するまでに子犬に与えられるフードを代表するものであることを仮定する。
【0053】
第2時点(生後4か月)では、ANOVAを用いて、ERGsを研究する。統計的有意性のためには、0.05の有意水準が必要である、しかし、結果が0.10の有意水準に達するならば、該結果は辛うじて有意であると(as marginally significant)特徴付けられる。
【0054】
位置識別及び逆転に対する認知データは、対象間変数(between-subject variable)としてフード・グループを用いて、分散分析(ANOVA)によって研究する。統計的有意性のためには、0.05の有意水準が必要である;しかし、結果が0.10の有意水準に達するならば、該結果は辛うじて有意であると特徴付けられる。
【0055】
物体識別と逆転に関する統計分析(Statistical analysis for object discrimination and reversal): SPSS(バージョン10)を用いて、統計分析を行なう。物体識別データをGLM反復測定手段によって得られた3分散分析(ANOVAs)を用いて検討して、5グループ間の差異を評価する。30Hz ERGデータを、暗順応検査(scotopic test)と明順応検査(photopic test)の両方に関するGLMオプションによって分析し、残りのERGデータは、3多変量ANOVAs(MANOVAs)で分析する。あらゆる場合に、分散のGLM正規性(GLM normality)と均一性(homogeneity)による適合性(confirmity)は、前者に対してはShapiro-Wilk検定(有意水準α=.05に設定)及び後者に対してはLevene検定と(適当である場合には)Box検定(両方ともα=.001)を用いて評価する。いずれの前提をも完全には満たすことができないことは、有意妨害数(the number of significant violations)を最も減じる、いずれかの変換(平方根又は対数)を用いて対処し、該変換がそれらを実質的に除去しない場合には、オムニバスF検定の有意水準もα=.025に下げる。ANOVAは一般にロバストな手法(a robust procedure)であるので、少なくとも分散の不均一性に関して、バイアス修正のこれらの試みは検定全体を、恐らく、事実上慎重にする(make the overall test conservative in nature)、即ち、誤検知(false positive)(タイプ1エラー)の尤度(likelihood)を減ずると思われる。同時に、実際の検知(real findings)を非有意として間違って拒絶する(タイプIIエラー)確率の、結果としての増加には、p≦.05である“典型的な”分析において警告を出されるような結果(effects)を“辛うじて有意”として同定することによって対処して、重要である可能性のある他の検知結果を探求する機会を保護する。有意な結果を、Tukey’s Least Significant Difference(LSD)、Dunnett検定又はTamhane T2検定のいずれかを分散の不均一性に依存して用い、そして比較回数を調整して(Bonferroni補正)、行なわれる二グループ間比較(pairwise comparisons)によってさらに探求する。
【0056】
認知及び網膜電図データに関する結果は、両組成物H、E1とE2が、出産前(prior to breeding)及び授乳と成長を通して母獣にいずれをえさとして与えたとしても、又は母獣に組成物P1を与えた場合に離乳後何時開始したとしても、子犬の訓練可能性と学習能力並びに網膜機能を改善する可能性があることを示唆する。
【0057】
全く組成物P1だけをえさとして与えられた母獣から生まれ、3種類のフードのいずれかをえさとして与えられた離乳後子犬に関しては、グループ効果による辛うじて有意なフード(a marginally significant food)が、位置及び逆転分析で見出される[F(2,45)=2.9922、p=0.060245]。Post-hoc・Fisher検定は、組成物P2と比較して、組成物H(p=0.024683)と組成物E2(p=0.074957)をえさとして与えられたグループは、全体的に、エラーを犯すことが少ない(commit fewer errors)ことを実証する。ANOVAも、タスクの高度に有意な効果(highly significant effect of task)を明らかにする[F(1,45)=81.4819,p<0.001]、これは初期学習よりも、逆転を生じるほどにエラーが増加した結果である。さらに、グループ相互作用によるタスクが見出される[F(1,45)=5.1603,p=0.009602]。個々の一元配置ANOVAs(one-way ANOVAs)を各タスクに対して行なって、この相互作用の性質を判定する。位置タスク(positional task)にはグループ効果が見出されない;しかし、逆転には有意なグループ効果が見出される[F(2,45)=6.3878,p=0.003614]。Post-hoc・Bonferroni検定は、組成物P2をえさとして与えられたグループと比較して、組成物H(p=0.00318)と組成物E2(p=0.04129)をえさとして与えられたグループは、逆転に関してエラーを犯すことが少ないことを実証する。多重逆転相(multiple reversal phase)中に得られる逆転回数を検査する分析は、辛うじて有意なグループ効果を明らかにする[F(2,45)=2.692,p=0.078628]。Post-hoc・Fisher検定は、組成物Hをえさとして与えられたグループが、組成物P2(p=0.067566)と組成物E2(p=0.039307)の両グループよりも、多くの逆転を生ずることを実証する。
【0058】
離乳前処置条件: これは、母獣と同じ食餌を与えられた子犬の認知的比較(cognitive comparison)である。タスク相互作用による、有意なフード・グループが、位置及び逆転分析[F(2,44)=3.7114,p=0.032400]と、タスクの高度に有意な効果[F(1,44)=89.3907,p<0.001]に見出される。タスク効果は、位置問題に比較して、逆転を生じるほどにエラーが増加した結果である。個々の一元配置ANOVAsを各タスクに対して行なって、タスク相互作用によるフード・グループの性質を判定する。位置タスクにはグループ効果が見出されない;しかし、逆転には辛うじて有意なグループ効果が見出される[F(2,44)=3.0436,p=0.057807]。Post-hoc・Fisher検定は、組成物E2をえさとして与えられたグループが、組成物P2(p=0.021493)と組成物H(p=0.082970)の両グループと比較して、逆転に関してエラーを犯すことが少ないことを実証した。多重逆転相中に得られる逆転回数に対するグループ効果を検査する分析では、効果が見出されない。
【0059】
物体識別プロトコル(object discrimination protocol)では、子犬は、10回のセッションにわたって、2つの物体のうちの1つに反応するように学習する。逆転相では、報酬が得られる物体(rewarded objects)を切り替えて、今まで特徴の無い物体(previously neutral object)に逆転相において報酬を与えるようにし、今まで報酬が得られる物体をもはや報酬とは関係がないようにする。これらの分析は、初期獲得(initial acquisition)での成績(100回トライアルにわたっての正確な反応の回数)を逆転試験でのスコアと比較する。
【0060】
離乳後食餌のみの効果: 全ての子犬に母体期間中(during the maternal period)に組成物P2を与え、その後、他のフードに切り替える場合に、子犬の認知的発達に効果は見られない。
【0061】
離乳前/離乳後の食餌の効果: これは、母親と同じフードをえさとして与えた子犬について行なった比較である。Post-hoc比較は、組成物Hを与えた動物の初期獲得相 (initial acquisition phase)における及び組成物E2を与えた犬の逆転相における成績(performance)の辛うじて有意な(p<0.1)強化(組成物P1に比較して)を明らかにする。このように、要約すると、認知的効果の大きさは、与えたタスクによって及び給餌計画(feeding regimen)によって変化するように思われ、若干のケースでは統計的有意性に達する。
【0062】
ERG結果はさらに、離乳の前又は後の添加DHAを含むフードの給餌が、成長する子犬における網膜機能の増強を助けるという結論を支持する。特に、予備研究は、母体フードへの添加DHAの効果が、視力の暗順応範囲におけるb−波の振幅(amplitude of b-wave)の改善に重要であることを示す。この効果は、離乳後期間にも母体効果として充分に存続して、さらに、DHAを含有しない母体フード後にDHAを含むフードに移行した子犬にも出現する。このことは、DHAの添加が杆体(rods)の活性を改善して、淡い光(low-light)の場合に良好な視力明瞭度(the better visual acuity)を生じうることを実証すると考えられる。
【実施例4】
【0063】
骨発達
実施例2の子犬において骨発達を検査する。データは、より健全な骨発達をもたらしうる組成物Hの投与によって、骨交替が減少する可能性があることを示唆する。
【0064】
4か月目に、血清サンプルを採取して、凍結する。サンプルを解凍して、既述されたように(Yamka, et al. Intern J Appl Res Vet Med, Vol 4, No. 3, 2006) 、そしてQuidel (San Diego, CA)からの Metra BAP EIAカタログNo. 8012に従って、分析する。
【0065】
骨型アルカリホスファターゼ(BAP)の一元配置分散分析は、組成物P1−P2をえさとして与えた子犬に比較して、全てのグループにおいてBAP活性の低下を明らかにする。このことは、骨交替が減少する可能性と、より緻密な骨になる傾向を、合理的に示唆する。
【実施例5】
【0066】
体組成
実施例2の子犬に対して生後2、4、6、9及び12か月目に、麻酔下で、LUNAR機器(General Electric)を用いて、二重エネルギーX線吸収分析法を.行なう。これらの各時点において全体組成(whole body composition)を測定する。測定された結果(outcomes)は、骨ミネラル密度、骨ミネラル含量、脂肪なし体重(lean mass)、総脂肪量(total fat mass)、脂肪量%、脂肪なし+骨含量(lean + bone content)である。ANOVAを各時点において行なって、グループ間の有意差を測定する。各子犬に対して毎週、電子スケールを用いて、体重を測定する。
【0067】
結果:
誕生から離乳までの体重増加: 組成物Hをえさとして与えられた母獣に生まれた子犬(平均330g)は、組成物P1をえさとして与えられた母獣に生まれた子犬(355g)又は組成物E1をえさとして与えられた母獣に生まれた子犬(362g)よりも軽量である。この差は、誕生時には、グループ間で有意ではないが、4週間目にはANOVAはp=0.07で有意性に接近する。離乳時には、グループ間の体重に有意差が存在し、組成物P1をえさとして与えられた母獣から生まれた子犬(3060g)又は組成物E1をえさとして与えられた母獣から生まれた子犬(3080g)は、組成物Hをえさとして与えられた母獣に生まれた子犬(2540g;p<0.05)よりも有意に大きい体重を有する。平均の1日体重増加は、組成物P1、H及びE2をえさとして与えられた母獣からの子犬に関して、それぞれ、47、38及び47g/日であり、グループ間で顕著に異なる(p<0.05)。
【0068】
離乳(58日間)から生後4か月まで: 上述したように、離乳時にはグループ間に体重の有意差が存在する。生後4か月までに、一元配置ANOVAによって計算すると、子犬の平均体重間に有意差が存在する:
P1母獣〜P2子犬(P2−P2):平均6194g
P1母獣〜H子犬(P1−H): 平均5919g
P1母獣〜E2子犬(P1−E2):平均6106g
E1母獣〜E2子犬(E1−E2):平均6180g
H母獣〜H子犬(H−H): 平均5106g
グループを両側t−検定(two tailed t-test)によって比較すると、組成物H−Hグループが他の4グループのいずれよりも顕著に軽量であることが分かる。他の4グループのいずれも、相互から異ならない。
【0069】
生後6か月: 生後6か月目に、一元配置ANOVAによってグループ間に有意差がまだ存在し、組成物H−Hグループは、他のグループの全てよりも顕著に軽量である:
P1母獣〜P2子犬: 平均9544g
P1母獣〜H子犬: 平均9153g
P1母獣〜E2子犬: 平均9156g
E2母獣〜E1子犬: 平均9025g
H母獣〜H子犬: 平均7580g
この期間中の平均体重増加は、次のとおりである:
P1母獣〜P2子犬: 平均54.1g/日
P1母獣〜H子犬: 平均50.4g/日
P1母獣〜E2子犬: 平均51.2g/日
E1母獣〜E2子犬: 平均49.2g/日
H母獣〜H子犬: 平均41.7g/日
これは、一元配置ANOVAによって有意に異なる(p<0.05)。両側t−検定によるグループの比較は、組成物H−Hグループが成長速度においてP1−H、P1−P2又はP1−E2グループよりも顕著に低く、E1−E2子犬グループに比べて辛うじて異なる(marginally different)ことを示す。
【0070】
DEXA分析: 離乳時のH、P1及びE1の3グループに対して、最終フード・グループに割り当てる前に、初期DEXA分析を行なって、一元配置ANOVAによって比較する。全てのグループ(P1−P2、P1−H、P1−E2、H−H、及びE1−E2)に対して生後約4、6及び9か月目に、その後のDEXAを行なって、一元配置ANOVAによって比較する:
総脂肪
初期離乳時: E1を与えられた母獣からの子犬は、P1を与えられた母獣からの子犬よりも多くの総脂肪を有し、P1を与えられた母獣からの子犬は、Hを与えられた母獣からの子犬よりも多くの総脂肪を有した(グループ間に有意差(p<0.05))。
【0071】
生後4か月:
・E1−E2>P1−E2>P1−P1>P1−H>H−H
・グループ間に有意差(p<0.05)
生後9か月:
・E1−E2>P1−P1>P1−E2>P1−H>H−H
・組成物Hを与えられた母獣からの、組成物Hを与えられる子犬は、生後9か月目により少ない脂肪を有する。グループ間に有意差(p<0.05)
脂肪率
初期離乳時:
・E1>P1>H
・組成物Hを与えられた母獣からの子犬は、離乳時により小さい体脂肪率を有する。グループ間に有意差(p<0.05)
生後4か月:
・E1−E2>P1−E2>P1−P1>P1−H>H−H
・グループ間に有意差(p<0.05)
生後9か月:
・E1−E2>P1−E2>P1−P1>P1−H>H−H
・組成物Hを与えられた母獣からの、組成物Hを与えられる子犬は、生後9か月目により小さい体脂肪率を有する。グループ間に有意差(p<0.05)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオニン約0.8〜約1.6%;マンガン約50〜約200ppm;DHA約0.1〜約0.5%;EPA約0.1〜約0.7%;及びコリン約2500〜約7500ppmを含むペットフード組成物。
【請求項2】
EPA約0.1〜約0.7%;マンガン約50〜約200ppm;及びメチオニン約0.5〜約1.6%を含むペットフード組成物。
【請求項3】
DHA約0.10〜約0.5%;カルニチン約100〜約500ppm;及びリシン約2.5〜約7g/1000kcalを含むペットフード組成物。
【請求項4】
タウリン約1000〜約2000ppmを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
リノール酸約2.5〜約6%を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
総n−3脂肪酸約1〜約3%を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンE約50〜約1200IU/kgを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
ビタミンC約50〜約500ppmを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
リシン約2.2〜約7g/1000kcalを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
炭水化物0〜約90重量%を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
タンパク質約5〜約70重量%を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
脂肪約2〜約50重量%を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
総食物繊維約0.1〜約20重量%を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
リシン約2.5〜約7g/1000kcalを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
カルニチン約100〜約500ppmを含む、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
犬における骨発達を促進し、神経的発達を強化し、認知能力及び運動神経能力を強化し、健全な体組成を促進し、及び/又は脂肪を減少させるための方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物を該犬に投与することを含む方法。
【請求項17】
該犬が子犬である、請求項16の方法。
【請求項18】
該犬が、妊娠中に組成物1.0〜1.18のいずれか1種類をえさとした与えられた母獣から生まれた犬である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
該子犬が子宮内にいる、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
該母獣が、妊娠前に請求項1〜15のいずれかに記載の組成物をえさとして与えられた母獣である、請求項18又は19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
該母獣が、妊娠期間の大部分にわたって、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物をえさとして与えられた母獣である、請求項18又は20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
該母獣が、妊娠前及び妊娠中に、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物から本質的に成る組成物をえさとして与えられた母獣である、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
該子犬が、離乳前に、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物をえさとして与えられる、請求項16〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
該子犬が、離乳後に、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物をえさとして与えられる、請求項16〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
該子犬が、請求項1〜15に記載の組成物のいずれか1種類から成るペットフード組成物をえさとして与えられる、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−518865(P2010−518865A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551040(P2009−551040)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054773
【国際公開番号】WO2008/103939
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】