説明

手術装置

【課題】 手術中に用いられる電気刺激装置と共に用いられる電気メス装置、吸引装置等
の保持部の持ち替えをなくすことにより、手術時間全体を短縮化し、手術中の操作者およ
び患者の負担を軽減することができる手術装置を提供する。
【解決手段】被検体の所定の組織を凝固または切開するための電気を供給する電気メス装
置制御部27と、被検体の所定の組織に印加する、あるいは被検体の所定の組織から電気
信号を検出する電気刺激装置制御部25を、操作者が保持する1つの保持部に接続し、こ
の保持部の機能を切換えるためのスイッチ22bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術の際に用いられる手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術中に用いられる装置として、電気メス装置や吸引装置などが挙げられる。電
気メス装置とは、手術中に、出血を止めるための凝固を行ったり、硬い組織(硬膜など)
を焼き切るのに用いられる装置である。電気メス装置の中でもバイポーラと呼ばれるもの
は、先端が一対の小型電極になったピンセット様の器具で、電極の間に電圧を掛け、さら
に先端付近に設けられた穴から電解質を含んだ液体(一般に生理食塩水)を出す。この液
体中に電流が流れて発熱し、その熱で凝固や切開を行う。またモノポーラと呼ばれる電気
メス装置は、患者に常時接触させる大型の電極と、術野に挿入する1個の小型電極から構
成され、これらの電極の間に電圧を掛けることによって、挿入した小型電極の周囲でジュ
ール熱を発生させることによって、切開や凝固を行う。また、これらの器具は組織を保持
または剥離する器具としても利用される。
【0003】
また、吸引装置とは、低圧(通常「真空」と呼ばれる)に保たれた管(吸引管)の先端
から、組織、血液、洗浄水などを吸引・除去するのに用いられる装置である。このほか、
プローベ(消息子)と呼ばれる、組織中に挿入して手応えを調べる器具などがある。さら
に、脳組織を切るために綿布片が用いられることがある。綿布片をピンセットで保持して
脳組織をこすることによって、血管を切らずに脳組織だけを切開する。
【0004】
また、脳機能等の解明を目的として、脳組織や脊髄、末梢神経を電気刺激することによ
って、その神経が遠心性神経であるかどうか、さらにどの部位に接続しているかを判別す
る研究がされている。この電気刺激を行うに際して、電気的刺激を加える部分である刺激
用電極と、与えられた電気的刺激を検出する検出用電極を備えた装置(以下電気刺激装置
と呼ぶ)が用いられている。
【特許文献1】特開平11−318919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの手術装置は、互いに併用して用いられることがあり、この際に
以下のような問題点が生じていた。
【0006】
(1)手術中に使用される電気メス装置、吸引装置等の手術装置は、それぞれ別々の装置
であるため、操作者が手に持つ部分(保持部)も別途構成されており、さらに手術中にこ
の電気刺激装置を用いる場合には、保持部を持ち替える必要(手術の種類によっては、頻
繁に行われる場合もある)が多発し、操作者および患者に、多大な負担を課すことになる
。特に、電気刺激装置を使用する場合、非常に微妙な力のバランスで保持部の一部を被検
体の組織に接触させる必要があり、他の器具と持ち替えることは非常に困難である。一方
、必要な時に電気刺激装置による検査を省略すると、重要な神経を傷つける恐れがある。
【0007】
(2)従来の電気刺激装置では、検出用電極で検出された電気信号が、正確に神経を伝達
したものか(本明細書ではこれを「各電極と接触する組織同士が神経接続されているかど
うか」と表現する)、あるいは組織中に漏れたものかを詳しく知ることはできなかった。
このため、様々な要因(患者の体力等)によって時間的制限がある手術中に、従来の電気
刺激装置をそのまま手術装置として適応することは操作者に多大な負担を強いていた。
【0008】
(3)また、従来の電気刺激装置は、被検体に接着させるように取り付けており電極に絶
縁部材が被覆されていなかった。しかし、手術においては、操作者は電極を手で保持する
必要があり、このような絶縁部材の被覆されていない電極の場合、被検体を刺激するため
の電気信号が操作者に印加され、また検出された電気信号へノイズが混入してしまう恐れ
がある。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決し、電気刺激装置を手術中に用いるのに際し、操作者
および患者の負担を軽減することができる手術装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被検体の所定の組織を凝固また
は切開するための電気を供給する電気メス装置制御手段、被検体の所定の組織を刺激する
ための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、および被検体の所定の組織から電気
信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも2つの制御手段と、前記少なくと
も2つの制御手段に接続され、操作者が保持するための保持部と、前記少なくとも2つの
制御手段のうちいずれの制御手段を使用するかを切換える切換手段と、を具備することを
特徴とする。
【0011】
また、請求項9に記載の発明は、被検体の所定の組織を吸引管により吸引する吸引装置
制御手段、被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御
手段、および被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少
なくとも2つの制御手段と、前記少なくとも2つの制御手段に接続され、操作者が保持す
るための保持部と、前記少なくとも2つの制御手段のうちいずれの制御手段を使用するか
を切換える切換手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項12に記載の発明は、被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発
生させる電気信号発生制御手段、および被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気
信号検出制御手段のうち少なくとも1つの制御手段と、前記少なくとも1つの制御手段に
接続され、被検体の所定の組織に挿入して手応えを調べるための消息子と、を具備するこ
とを特徴とする。
【0013】
また、請求項13に記載の発明は、被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発
生させる電気信号発生制御手段、および被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気
信号検出制御手段のうち少なくとも1つの制御手段と、前記少なくとも1つの制御手段に
接続され、所定の部材を保持するための導電性のピンセットと、を具備することを特徴と
する。
【0014】
また、請求項15に記載の発明は、被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発
生させる電気信号発生制御手段、および被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気
信号検出制御手段のうち少なくとも1つの制御手段と、前記少なくとも1つの制御手段に
接続される導電性部材および前記導電性部材から操作者を絶縁状態にする絶縁部材を有す
る保持部と、を具備することを特徴とする。
【0015】
また、請求項16に記載の発明は、被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発
生させる電気信号発生制御手段と、被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号
検出制御手段と、前記発生した電気信号の波形および前記検出された電気信号の波形を同
一画面上に表示する表示制御手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、電気刺激装置を手術中に用いるのに際し
、操作者および患者の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して詳細に説明す
る。図1は本実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。
【0018】
まず、本実施の形態の保持部10は、大きく区分して電極11a、電極11bおよびこ
れらの電極を一体的に支持する絶縁性の支持部19を備えている。電極11a、11bは
、それぞれ中央部が屈曲した導電性部材を絶縁体のカバー12で被覆した構造となってお
り、さらに中央部より支持部19側に滑り止め部15が設けられている。操作者は、この
滑り止め部15を握ることによって、保持部10を保持する。また、絶縁体カバー12は
、操作者に刺激用の電気信号が印加されるのを防止し、また検出された電気信号にノイズ
が混入するのを防ぐためのものである。また、絶縁体カバー12は、被検体の組織に接触
する必要がある電極の先端部13および支持部19の内部には設けられていない。即ち、
先端部13は、導電性部材が剥き出しの状態となっており、また支持部19では、支持部
19自体が絶縁体カバーの役割を担っている。
【0019】
また、1つの電極(本実施の形態では電極11b)内には、本装置を電気メス装置とし
て使用する際に、上述の生理食塩水を被検体内に導入するために用いられる送水パイプ1
6が設けられている。送水パイプ16の一端は送水口14として先端部13に設けられ、
他端は、支持部19を介して、後述する送水タンク21へ接続される。
【0020】
また、支持部19内には、それぞれ電極11a、11b同士を絶縁状態に保つ絶縁部材
(図示しない)が設けられており、この絶縁部材は、操作者がそれぞれの電極同士を近づ
けた場合、これに対する応力を発生させるいわゆる弾性部材としての機能も有している。
これにより操作者がそれぞれの電極を近づく方向に力を加えない所謂定常状態においては
、電極同士は所定の距離に保たれる。それぞれの電極11a、11bの導電部材は、それ
ぞれの電線に接続され、接続用コード17を介して、後述の手術装置本体23と電気的に
接続される。
【0021】
また、支持部19には、発光部材の一例としてLED18が設けられている。
【0022】
LED18も、各電極の導電部材と同様に、接続用コード17を介して手術装置本体23
と電気的に接続されている。このLEDは、一例として、保持部10が電気メスとして使
用される場合には赤色、刺激用電極として使用される場合には緑色、検出用電極として使
用される場合には黄色に点灯(具体的には赤色、緑色、黄色のそれぞれの色を発光するL
EDが設けられており、それぞれのLEDに適宜電流が流れることにより発光するように
しても良いし、所定の電気信号によりそれぞれの色を発行する1つのLEDとしても良い
)し、手術装置本体23と接続されていない場合には消灯するものである。
【0023】
次に、本実施の形態における手術装置全体の構成について、手術装置のブロック図であ
る図2を参照して説明する。
【0024】
本実施の形態の手術装置は、主な構成として、上述の保持部10と接続される手術装置
本体23、上述の送水パイプに接続された送水タンク21、刺激用電気信号を発生させる
刺激用電極24、検出された電気信号の状態を波形として示すモニタ28および各種スイ
ッチ(本実施の形態ではフットスイッチ)22a、22bを備えている。なお、各種スイ
ッチの動作について簡単に説明しておくと、スイッチ22aは、本装置を電気メス装置と
して使用している場合には、保持部10に設けられた電極間に所定の電圧を印加すると共
に、送水口14から生理用食塩水を送出させ、また本装置を電気刺激装置として使用して
いる場合には、保持部10に設けられた電極、あるいは保持部10以外に設けられた刺激
用電極24から刺激用の電気信号を発生させるタイミングを決定する機能を有している。
【0025】
また、スイッチ22bは、保持部10を電気メスとして使用するか、刺激用電極として使
用するか、あるいは検出用電極として使用するかを順次、選択するために用いられる。
【0026】
手術装置本体23は、本装置を電気メス装置として使用する際に用いられる電気メス装
置制御部27、本装置を電気刺激装置として使用する際に用いられる電気刺激装置制御部
25およびこれらの切換え等を行う本体制御部26を主に備えている。電気メス装置制御
部27は、本体制御部26、保持部10の各電極11a、11bおよび送水タンク21と
接続されており、本体制御部26からの制御信号に基づいて各電極11a、11b間に所
定の電圧を印加すると共に、送水タンク21から生理用食塩水を送出させる。また、電気
刺激装置制御部25は、本体制御部26、保持部10の各電極11a、11bに接続され
ている。なお、電気刺激装置制御部25に関しては、詳しく後述する。なお、刺激用電極
24は、図1に示された保持部10とは別に設けられているものであり、保持部10を検
出用電極として使用する際に、刺激用の電気信号を発生させるために用いられるものであ
る。
【0027】
また、モニタ28は、本体制御部26に接続されており、刺激用電気信号および検出さ
れた電気信号の両方を波形として表示するものである。
【0028】
次に、電気刺激装置制御部25についてブロック図である図3を参照して説明する。本
実施の形態の電気刺激装置制御部25は、電気信号発生制御部32と、電気信号検出制御
部31から主として構成される。
【0029】
電気信号発生制御部32は、所定の大きさの電圧を被検体に印加するため、刺激用の電
気信号を発生させるため所定の機器を制御するもので、本体制御部26、刺激用電極24
および保持部10のそれぞれの電極11a、11bに接続されている。また、電気信号検
出制御部31は、刺激用電極で印加された電気信号、あるいは被検体が所定の動作(指を
動かす等)を行うことによって発生した電気信号を所定の部分から検出するために所定の
機器を制御するもので、本体制御部26、および保持部10のそれぞれの電極11a、1
1bに接続されている。
【0030】
次に、本実施の形態における手術装置の動作について、保持部10を以下の3つの用途
として使用する際の動作について説明する。
【0031】
(1)電気メスとして使用する場合
まず、本手術装置を電気メス装置として使用する場合について説明する。なお、ここで
は、この動作を開始する際の初期状態として、操作者は保持部10を握った状態であり、
また保持部10は、検出用電極として使用される場合が選択されているものとする。
【0032】
操作者は、この初期状態を、保持部10に設けられたLED18によって確認する(初
期状態では検出用電極を表す黄色に発光している)と、スイッチ22bを1度踏むことに
より、保持部10の使用状態を切換える。(なお、スイッチ22bをONする毎に電気メ
ス→刺激用電極→検出用電極→電気メスと繰り返し選択され、随時LED18の発光色が
赤色→緑色→黄色→赤色に変更される。)これにより、スイッチ22bからの信号は、手
術装置本体23の本体制御部26に入力され、電気メス装置制御部27および電気刺激装
置制御部25にそれぞれ制御信号が送られる。電気刺激装置制御部25が、この制御信号
を受け取ると、各電極11a、11b同士は、絶縁状態になる。また、電気刺激装置制御
部25に接続された刺激用電極24の動作は停止した状態となる。
【0033】
一方、電気メス装置制御部27は、各電極11a、11b間に所定の電圧(組織の凝固
あるいは切開に適した電圧)を印加するための安全点検を行う。なお、ここで「安全点検
」とは、安全確保のために行われる動作を示す概念で、例えば各電極11a、11b間の
絶縁性を自動的に調べる等の動作である。(但し、この「安全点検」は、必ずしも行わな
くても良く、また「安全点検」に要する時間は限りなく短時間である)例えば、この安全
点検を行った結果、各電極11a、11b間が短絡していたことが検知された場合には、
警告音等を発生させる。なお、この「安全点検」は、自動的に終了する。
【0034】
操作者は、LED18の発光色が赤色であることを確認すると、図1に示された保持部
10の各電極11a、11bの先端部13を、凝固、切開を行う組織に接触させる。この
状態で、操作者は、スイッチ22aをONにする。
【0035】
これにより、スイッチ22aからの信号は、本体制御部26に入力され、電気メス装置
制御部27から保持部10の各電極11a、11b間に所定の電圧が印加されると共に、
送水タンク21から生理用食塩水が送出され、送水パイプ16を介して、電極11bの先
端部13に設けられた送水口14から被検体の組織に噴出される。この噴出された液体中
に電流が流れて発熱し、その熱で組織の凝固、切開を行う。
【0036】
以上が保持部10を電気メスとして使用する場合の動作の説明である。
【0037】
(2)刺激用電極して使用する場合
次に、上述のように保持部10が電気メスとして使用された場合から、刺激用電極とし
て使用する場合に切換えられる場合の動作について説明する。
【0038】
操作者は、図1に示された保持部10を手に保持した状態で、上述と同様に、LED1
8により現在の状態(ここでは赤色)を確認し、保持部10を刺激用電極として動作させ
るため、スイッチ22bを再度ONにする。これにより、スイッチ22bからの信号は、
本体制御部26に入力され、電気メス装置制御部27および電気刺激装置制御部25にそ
れぞれ制御信号が送られる。これにより電気メス装置制御部27は停止状態となる。さら
に、本体制御装置26からの制御信号により、LED18の発光色は赤色から緑色に変化
する。
【0039】
また、本体制御部26からの制御信号により、電気刺激装置制御部25に設けられた電
気信号検出制御部31(図3に示されている)は停止状態(保持部10が電気メスとして
使用されている場合にも停止状態であるため、この場合には停止状態の維持)となる。一
方、電気信号発生制御部32は、所定の電気信号を印加するための安全点検を行う。なお
、ここでの「安全点検」に関しても、上記と同様、安全確保のために行われる動作を示す
概念で、ここでは、例えば各電極間に異常な電圧が印加されていないかを調べる等の動作
である。例えば、電気メスとしての使用で異常が発生し、電気メスに使用される所定の電
圧が各電極間に印加されつづけていた場合、この電極を刺激用電極として使用すると、組
織を傷つけてしまう。(ただし、これらの処置が安全上必須であるという意味ではない)
このような場合も想定して、この安全点検の際に、各電極間に異常な電圧が印加されてい
た場合には、警告音等を発生させても良い。また、この安全点検後、保持部10の各電極
11a、11bを電気的に短絡状態(電気メス使用時には絶縁状態であった)とする。ま
た、この他にも「安全点検」には、各電極間の電圧を調べることなく、単に各電極をそれ
ぞれ接地する(いずれか一方でも良い)等も含まれる。
【0040】
また、刺激用電極24については、電気メス使用時と同様、停止させたままの状態とす
る。
【0041】
操作者は、この状態で、LED18の発光色が緑色であることを確認すると、図1に示
された保持部10の各電極11a、11bの先端部13を、例えば脳組織の一部に接触さ
せる。操作者が、この状態でスイッチ22aをONにすると、スイッチ22aからの信号
は、本体制御部26に入力され、電気信号発生制御部32で刺激用の電気信号が生成され
る。生成された電気信号は、電極11a、11bを介して、被検体の組織に送出される。
なお、各電極11a、11bは、電気刺激装置制御部25において短絡状態になっている
ため、電極11a、電極11bのどちらの電極からでも電気信号を発生させることが可能
である。(ちなみに保持部10を電気メスとして使用していた場合には電極間に所定の電
圧が印加されていた。)なお、この刺激用電気信号の電圧(電極と接地間の電圧)は、上
述の電気メスにおける電極間の電圧に比して小さいものである。
【0042】
このように、脳組織に刺激用の電気信号が加えられると、その脳組織につながる神経が
存在する被検体の各部位が反応する。具体的に、この反応とは、例えば軽い痙攣(腕がピ
クピクと動く等)である。
【0043】
このようにして、操作者は、電気信号が加えられた脳組織が、被検体のどの部位に神経
接続されているかを手術中に知ることができ、これにより重要な神経を保護することがで
きる。
【0044】
以上が保持部10を刺激用電極として使用する場合の動作の説明である。
【0045】
(3)検出用電極して使用する場合
さらに、上述のように刺激用電極として使用された場合から切換えを行うことにより、
保持部10を検出用電極として使用する場合について説明する。
【0046】
操作者は、図1に示された保持部10を手に保持した状態で、上述と同様に、LED1
8により現在の状態(ここでは緑色)を確認し、保持部10を検出用電極として動作させ
るため、スイッチ22bを再度ONにする。これにより、スイッチ22bからの信号は、
本体制御部26に入力され、電気メス装置制御部27および電気刺激装置制御部25にそ
れぞれ制御信号が送られる。これにより電気メス装置制御部27は停止状態(この例では
停止状態の維持)となる。また、本体制御装置26からの制御信号により、LED18の
発光色は緑色から黄色に変化する。
【0047】
また、本体制御部26からの制御信号により、電気刺激装置制御部25に設けられた電
気信号発生制御部32は、保持部10の電極11aおよび11bから電気的に絶縁された
状態となる。即ち、電極11aおよび11bから電気信号は送出されない。また同様の制
御信号により、電気信号発生制御部32は、保持部10とは別に設けられた刺激用電極2
4所定の電気信号を印加するための安全点検を行う。なお、ここでの「安全点検」に関し
ては、上記と同様、安全確保のために行われる動作を示す概念で、ここでは、例えば刺激
用電極24が適正に電気信号発生制御部32に接続されているかを調べる等の動作である
。例えば、ここで刺激用電極24が接続されていなかった場合、モニタ28に「外部刺激
用電極は非接続」なる表示を行う。これにより、操作者は刺激用電極24から電気信号が
発せられないことを確認することができる。実際の使用においては後述するように、刺激
用電極24から電気信号を発することなく、電気信号を検出することも考えられるため、
操作者が、このように保持部10以外に設けられた刺激用電極24から電気信号が発せら
れるのか否かを知ることは重要である。なお、刺激用電極24が適正に接続されていた場
合でも、刺激用の電気信号を発生させないように設定することも可能である。また、刺激
用電極24から電気信号を発生させる設定になっているにも関わらず、適正に接続されて
いないことを検知した場合には、警告音を発する構成としても良い。
【0048】
一方、電気信号検出制御部31は、本体制御部26からの制御信号により、保持部10
の各電極11aまたは11bで電気信号を検出するための安全点検を行う。なお、ここで
の「安全点検」に関しても、上記と同様、安全確保のために行われる動作を示す概念で、
ここでは、例えば各電極間に異常な電圧が印加されていないかを調べる等の動作である。
上述のように、電気メスとしての使用で異常が発生した場合(この例では刺激用電極とし
ての使用後なのでこのような場合はない)等に有効である。また、この安全点検に際して
保持部10の各電極11a、11bを電気的に短絡状態(この例では短絡状態の維持)と
する。
【0049】
操作者は、この状態で、LED18の発光色が黄色であることを確認すると、図1に示
された保持部10の各電極11a、11bの先端部13を、例えば脳組織の一部に接触さ
せる。また、刺激用電極24は予め被検体の所定の部位、例えば腕等にテープなどの粘着
部材を用いて貼付させる、あるいは直接脳組織上に接触させておく。
【0050】
操作者が、この状態でスイッチ22aをONにすると、スイッチ22aからの信号は、
本体制御部26に入力され、電気信号発生制御部32で刺激用の電気信号が生成される。
生成された電気信号は、刺激用電極24を介して、被検体の所定の部位に送出される。
【0051】
また、電気信号検出制御部31では、送出された電気信号が検出される。なお、各電極
11a、11bは、短絡状態になっているため、電極11a、電極11bのどちらの電極
でも電気信号を検出することができる。このように、被検体の所定の部位に刺激用の電気
信号が加えられると、その部位と神経接続された脳組織から、電気信号が検出される。
【0052】
検出された電気信号は、送出された電気信号と共にモニタ28に表示される。
【0053】
神経は典型的に1m/sec程度の伝達測度を持ち、従って刺激用電極24から印加された電
気信号が、神経を通って、検出用電極(ここでは電極11a、11b)で検出されるまで
には遅延がある。一方、刺激用電極24から組織中に漏れた電気信号は遙かに短い時間で
検出用電極に到達する。即ち、これらの電極間の距離等に応じた遅延時間の後に検出され
た電気信号が実際に神経を通って伝達された刺激である。
【0054】
ここで、図4にモニタ28に表示されるグラフの一例を示す。なお、このグラフは、横
軸が時間、縦軸が電気信号の電圧の大きさを示している。このように、刺激用電気信号に
時間的に近い第1の電圧ピーク値における時間taは、組織中に漏れた電気信号が検出され
るまでの時間を示し、刺激用電気信号に時間的に遠い第2の電圧ピーク値における時間tb
は、神経を通って伝達した電気信号が検出されるまでの時間を示している。即ち、時間tb
における電圧ピーク値を観察することにより、刺激用電極24が接続された部位と、電極
11aあるいは11bが接触した脳組織が神経接続されているかどうかを知ることができ
る。(仮に、刺激用電極24が接続された部位と、電極11aあるいは11bが接触した
脳組織が神経接続していない場合には、時間tbにおける第2の電圧ピーク値は、ごく小さ
い、あるいはピークとならないことになる。)
ただし、第2の電圧ピーク値は、場合によっては神経接続されているにも関わらず、小
さい場合(あるいはノイズ等に埋もれてしまう場合)があるため、この問題点を打破する
ために、手術装置本体23に以下の2つの手段(あるいはいずれか1つの手段)を設けて
も良い。
【0055】
(1)電気信号を複数回刺激用電極24で検出し、得られた電気信号を平均化することに
より、ノイズ除去を行う。(平均化手段)
(2)上記平均化手段により、ノイズの除去された電気信号に高周波フィルタを動作させ
、組織中に漏れた電気信号(伝達経路がばらばらである為、比較的低周波の信号が含まれ
ている)を除去し、神経を通って伝達した電気信号を際立たせる。
【0056】
(低周波信号除去手段)
このように、操作者は、検出用電極で検出された電気信号を波形として観察することに
より、各電極に接した各組織同士が神経接続しているかどうかを判別する。
【0057】
また、刺激用電極24を用いない場合でも電気信号を検出することが可能である。これ
は、被検体の所定の部位を動かすことによっても電気信号を発生させることができるため
である。つまり、操作者、被検体あるいは操作者とは異なる他の補助者が被検体の所定の
部位を動かし、これによって発生する電気信号を検出することが可能である。なお、電気
信号の検出に関しては、上記と同様である。
【0058】
このようにして、操作者は、電気信号が加えられた(あるいは動かされた)被検体の部
位が、どの脳組織と神経接続されているかを手術中に知ることができ、これにより重要な
神経を保護することが可能である。
【0059】
以上が保持部10を検出用電極として使用する場合の動作の説明である。
【0060】
本実施の形態における手術装置では、操作者が手に保持する保持部が、電気メス、刺激
用電極、検出用電極の3つの機能を共有することにより、手術中に保持部の持ち替えをな
くすことができ、手術時間全体を短縮化し、操作者および患者の負担を軽減することがで
きる。
【0061】
また、保持部の機能の切換えに際し、いずれの機能を選択しているかを表示する表示手
段を保持部に設けたことにより、操作者は、例えば保持部の先端部を観察視野内に維持し
ながら、同時に選択されている機能を確認することができ、安全性の面から非常に有効で
ある。また、さらにこの表示手段は発光色により識別可能であるため、操作者は視点を先
端部に集中させた状態でも、選択されている機能を確認することができる。(文字等の表
示は、観察視野内にあっても視点を集中させないと識別は困難であるが、色の認識は観察
視野内にあれば、十分に可能である。)
また、本実施の形態では、電気メス装置制御部27から電極に電気を供給するタイミン
グ、電気信号発生制御部32から前記電気信号を発生させるタイミング、電気信号検出制
御部31で電気信号を検出するタイミングのいずれのタイミングも共通のスイッチ(本実
施の形態ではスイッチ22a)で決定していたため、それぞれの機能毎にそれぞれのタイ
ミングを発生させるスイッチを設ける場合に比して、スイッチの個数を減らすことができ
、これにより誤作動を防止することができる。(スイッチの個数が多いと誤ったスイッチ
を押してしまう恐れがある)
また、本実施の形態では、それぞれの機能を切換える毎に、各機能に応じた「安全点検
」を行っているため、切換えに際しても、高い安全性を確保することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、保持部を電気メス、刺激用電極、検出用電極の3つの使用を
可能とした場合について説明したが、これらのうちいずれか2つの機能を有するような構
成としても良い。特に刺激用電極および検出用電極のいずれか一方の電極と、電気メスと
しての機能を有するとした場合には、組織の検査と処置を1つの手術として行うことがで
き、非常に有用である。
【0063】
また、保持部を電気メスとして使用する場合には、特に他の機能に比して高い電圧を必
要とするため、安全確保のため、使用中(本実施の形態ではスイッチ22aを押している
最中)に操作者に報知する(例えば所定の音等を発する)機構を設けても良い。即ち、操
作者が保持部を電気メスとして使用する場合には、LEDの発光色の確認、スイッチの押
圧、音の確認の3つの動作を行うことにより、さらに高い安全性を確保することができる

【0064】
また、本実施の形態では、電気メス装置として、先端が一対の小型電極になったバイポ
ーラとして説明したが、モノポーラへの適応も可能である。
【0065】
以下、本発明に係る第2の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図5
は本実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。
【0066】
本実施の形態の保持部50は、主として、パイプ状の導電性部材で構成された弾力性の
ある吸引管53を備えた構成となっている。また、吸引管53には、操作者が吸引管53
先端の吸引口からの吸引力を調整可能な調整用の孔56が設けられており、操作者はこの
孔56の近傍を手に持つことにより、所定の処置を行う。
【0067】
また吸引管53の他端には接続部52が設けられており、接続部52の内部では、吸引
管53から吸引された被検体の吸引物を後述の吸引タンク62へ移動させるための吸引パ
イプ55と吸引管53が接続されている。また、吸引管53の外周部は、接続用コード5
1内の電線と電気的に接続されている。
【0068】
また、接続部52には、第1の実施の形態と同様、LED18が設けられており、接続
用コード51を介して手術装置本体23と電気的に接続されている。このLED18は、
一例として、保持部50が吸引管として使用される場合には赤色、刺激用電極として使用
される場合には緑色、検出用電極として使用される場合には黄色に点灯する。
【0069】
なお、本実施の形態においても第1の実施の形態と同様、操作者が直接触れる部分に絶
縁カバーを覆う構成としても良い。ここで、操作者が直接触れる部分とは孔56の近傍で
ある。
【0070】
次に、本実施の形態における手術装置全体の構成について、手術装置のブロック図であ
る図6を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と略同一構成のものは同一番号を付
して説明を省略する。
【0071】
本実施の形態の手術装置は、主な構成として、第1の実施の形態と異なり、吸引パイプ
55に接続された吸引タンク62、および手術装置本体23内に吸引タンク62の圧力調
整等を行う吸引装置制御部61を有している。吸引タンク62は、上述の吸引物を貯める
ためのタンクで、通常、タンク内は低圧に維持されている。
【0072】
次に、本実施の形態における手術装置の動作について、第1の実施の形態と異なる吸引
動作についてのみ説明する。
【0073】
第1の実施の形態における電気メスとして使用する場合と同様、吸引管としての使用へ
の切換えは、スイッチ22bを用いて行う。また、この状態で、保持部50を吸引管とし
て使用する場合には、第1の実施の形態と同様、スイッチ22aを用いる。スイッチ22
aがONの場合、吸引管53は手術装置本体23に対して絶縁状態とされる。
【0074】
この状態で、操作者は、吸引管53に設けられた孔56を指で塞ぎ、その塞ぎ方によっ
て吸引管53の吸引口における吸引力の調整を行う。なお、孔56が指で塞がれていない
時には吸引口に吸引力はほとんど生じない。孔56がある程度以上塞がれると、吸引タン
ク62内の圧力と、吸引管53を介して導通している被検体内の圧力の差により、吸引管
53から被検体の所定の組織が吸引され、吸引物は吸引タンク62内に蓄積される。また
、「安全点検」なる動作は、本実施の形態では、吸引動作への切換え時は、第1の実施の
形態と同様とし、また電気信号発生動作または電気信号検出動作への切換え時には、吸引
動作が行われていないかを調べる等を含むものとする。なお、その他の動作に関しては第
1の実施の形態と同様であるため、ここでは省略する。
【0075】
本実施の形態における手術装置では、操作者が手に保持する保持部50が、吸引管、刺
激用電極、検出用電極の3つの機能を共有することにより、手術中に保持部50の持ち替
えを極力少なくすることができ、手術時間全体を短縮化し、操作者および患者の負担を軽
減することができる。なお、その他の効果に関しては、第1の実施の形態と共通する構成
には、少なくとも共通の効果を有している。
【0076】
以下、本発明に係る第1の変形例について、図7を参照して説明する。図7は本実施の
形態における手術装置の保持部の外観図である。なお、手術用装置本体23、モニタ28
、刺激用電極24等に関しては第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略
する。
【0077】
本変形例における保持部70は、消息子として構成されている。なお本変形例における
消息子は、従来の消息子と同様、組織中に挿入して手応えを調べる器具であると共に、従
来の消息子と異なり、刺激用電極または検出用電極としての機能も有している。
【0078】
具体的な構成について説明すると、本変形例の保持部70は、消息子本体75と、消息
子本体75の一端を支える支持部74を主として備えている。また、消息子本体75は、
棒状の導電性部材の中央部に絶縁カバー72が被覆された構造である。操作者は、この絶
縁カバー72を握ることによって、保持部70を保持する。また、絶縁体カバー72は、
操作者に刺激用の電気信号が印加されるのを防止し、また検出された電気信号にノイズが
混入するのを防ぐためのものである。また、絶縁体カバー72は、被検体の組織に接触す
る必要がある電極の先端部73および支持部74内には設けられていない。即ち、先端部
73は、導電性部材が剥き出しの状態となっており、また支持部74では、支持部74自
体が絶縁体カバーの役割を担っている。
【0079】
また消息子本体75の導電性部材は、電線に接続され、接続用コード71を介して、手
術装置本体23と電気的に接続される。
【0080】
次に、本変形例における手術装置の動作について、第1の実施の形態と異なる保持部7
0による組織の手応えを調べる動作についてのみ説明する。
【0081】
第1の実施の形態における電気メスとして使用する場合と同様、消息子としての使用へ
の切換えは、スイッチ22bを用いて行う。また、この状態で、保持部70を使用する場
合には、第1の実施の形態と同様、スイッチ22aを用いる。
【0082】
スイッチ22aがONの場合、保持部70は手術装置本体23に対して絶縁状態とされる
。操作者は、この状態で、保持部70の先端部73を組織中に挿入して手応えを調べる。
なお、「安全点検」なる動作は、本変形例でも適応可能である。また、その他の動作に関
しては第1の実施の形態と同様であるため、ここでは省略する。
【0083】
本実施の形態における手術装置では、操作者が手に保持する保持部が、電気刺激装置の
電極としての機能に加え、組織中に挿入して手応えを調べる消息子としての機能も有する
ことにより、手術中に保持部の持ち替えをなくすことができ、手術時間全体を短縮化し、
操作者および患者の負担を軽減することができる。なお、その他の効果に関しては、第1
の実施の形態と共通する構成には、少なくとも共通の効果を有している。
【0084】
以下、本発明に係る第2の変形例について、図8を参照して説明する。図8は本実施の
形態における手術装置の保持部の外観図である。なお、手術用装置本体23、モニタ28
、刺激用電極24等に関しては第1の実施の形態と同様であるため、ここでは説明を省略
する。
【0085】
本変形例における保持部は、ピンセット80として構成されている。なお本変形例にお
けるピンセット80は、従来のピンセットと同様、綿布片等の所定の部材を保持する器具
であると共に、従来のピンセットと異なり、刺激用電極または検出用電極としての機能も
有している。
【0086】
ピンセット80の具体的な構成について説明すると、ピンセット80は、主としてピン
セット本体86と、ピンセット本体86の一端を支える支持部83を主として備えている
。また、ピンセット本体86は、それぞれ中央部が屈曲した導電性部材を絶縁体のカバー
82で被覆した構造となっており、さらに中央部より支持部83側に滑り止め部85が設
けられている。操作者は、この滑り止め部85を握ることによって、ピンセット80を保
持する。また、絶縁体カバー82は、上述と同様、操作者に刺激用の電気信号が印加され
るのを防止し、また検出された電気信号にノイズが混入するのを防ぐためのものである。
また、絶縁体カバー82は、被検体の組織に接触する必要がある電極の先端部87および
支持部83内には設けられていない。即ち、先端部87は、導電性部材が剥き出しの状態
となっており、また支持部83では、支持部83自体が絶縁体カバーの役割を担っている

【0087】
またピンセット本体86の導電性部材は、電線に接続され、接続用コード71を介して
、手術装置本体23と電気的に接続される。
【0088】
なお、本変形例のピンセット80は、第1の実施の形態における電気メスと、各導電性
部材が支持部83内で予め短絡状態となっている点、および綿布片84をこのピンセット
80で保持する点において主として相異している。
【0089】
ここで、綿布片84は、従来の綿布片と同様、脳組織を切開すると共に、従来の綿布片
と異なり、刺激用電極または検出用電極としての機能も有している。具体的には、本変形
例における綿布片84は、布地本体の一端側の表面に導電性部材が被覆されており、この
導電性部材を介して、刺激用電極または検出用電極として動作することになる。
【0090】
次に、本変形例における手術装置の動作について、第1の実施の形態と異なるピンセッ
ト80および綿布片84による脳組織の切開動作についてのみ説明する。
【0091】
第1の実施の形態における電気メスとして使用する場合と同様、ピンセットとしての使
用への切換えは、スイッチ22bを用いて行う。その後、スイッチ22aをONとするこ
とにより、ピンセット80は手術装置本体23に対して絶縁状態とされる。
【0092】
操作者は、この状態で、ピンセット80で保持した綿布片84の布地部分を脳組織にこ
すり、血管を切らずに脳組織だけを切開する。
【0093】
なお、の他の動作に関しては第1の実施の形態、第1の変形例と同様であるため、ここ
では説明を省略する。
【0094】
本実施の形態における手術装置では、操作者が手に保持する保持部が、電気刺激装置の
電極としての機能に加え、所定の部材を保持するピンセットとしての機能も有することに
より、手術中に保持部の持ち替えをなくすことができ、手術時間全体を短縮化し、操作者
および患者の負担を軽減することができる。なお、その他の効果に関しては、第1の実施
の形態と共通する構成には、少なくとも共通の効果を有している。
【0095】
以下、本発明に係る第3の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図9
は本実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。なお、本実施の形態は、主と
して刺激用電気信号と検出された電気信号の遅延時間に関するものであり、説明を簡単に
するために、保持部は検出用電極としての機能を有する場合についてのみ説明する。
【0096】
本実施の形態の保持部90は、主として導電性部材からなる検出用電極93と、検出用
電極93に設けられた絶縁性部材からなる支持部92を有しており、操作者は、支持部9
2を手で握ることにより操作を行う。
【0097】
また、支持部92内で、検出用電極93は接続用コード91内の電線と電気的に接続さ
れている。
【0098】
次に、本実施の形態における手術装置全体の構成について、手術装置のブロック図であ
る図10を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と略同一構成のものは同一番号を
付して説明を省略する。
【0099】
本実施の形態の手術装置は、第1の実施の形態と比して、主として電気刺激装置制御部
25内の構成、およびスピーカ101を有している点で異なっている。
【0100】
なお、スピーカ101は、電気刺激装置制御部25に接続され、所定の状態(具体的には
後述する)の際に所定の音を発するものである。また、電気刺激装置制御部25内の構成
の違いとは、具体的には、電気刺激装置制御部25のブロック図である図11に示すよう
に、電気信号発生制御部32および電気信号検出制御部31に神経接続検知部111が設
けられている点である。この神経接続検知部111は、各電極93、24に接した各組織
同士が、神経接続されているかどうかを自動的に検知するものである。
【0101】
次に、本実施の形態における手術装置の動作について、図11および図12を参照して
説明する。なお、図12は、モニタ28に表示されるグラフの一例である。操作者は、保
持部90における検出用電極93を被検体の所定の組織に接触させ、また刺激用電極24
を被検体の所定の部位に取り付けた後、スイッチ22aにより、刺激用電極24から電気
信号を送出する。
【0102】
第1の実施の形態において、図4を参照して説明したように、刺激用電極24から、神
経を通って、検出用電極93に到達した電気信号には遅延がある。一方、神経を通らずに
、組織中に漏れた電気信号は遙かに短い時間で検出用電極93に到達する。
【0103】
本実施の形態では、刺激用電極24で発生した電気信号および検出用電極93で検出さ
れた電気信号は、所定の記憶装置(メモリ等)に記憶された後、神経接続検知部111に
入力される。神経接続検知部111では、刺激用電極24から電気信号が発生した時刻か
ら、検出用電極93で検出された電気信号が所定のスレッショルド電圧値Vth以上になる
までの時間(t1)を求める。なお、この検出された電気信号に関しては、第1の実施の形
態と同様、複数回の検出における平均化を行い、また、高周波フィルタを動作させても良
い。
【0104】
次に、この時間t1に基づいて予測される最小遅延時間tthを算出する。具体的にはtth=
t1+tαとなる。なお、ここでtαは、実験等により予め求められている所定の時間である

【0105】
次に、所定の時刻tthが経過した後、検出された電気信号に所定のスレッショルド電圧
値Vth以上の電圧が存在した場合に、所定の信号を発する。図12にお
いては、時間t2がこの信号発生を行う時間である。即ち、神経接続検知部111は、刺激
用電極24から発せられた電気信号(あるいは電気信号が発せられたという信号のみでも
良い)と、検出用電極93で検出された電気信号から、所定の時間tthを算出し、この所
定の時間tthを経過後、所定の大きさの電圧Vth以上の信号が存在するか否かを検知するも
のである。
【0106】
神経接続検知部111によりこの信号が存在すると検知された場合には、スピーカ10
1に信号が送られ、所定の音がスピーカ101から発生され、操作者はこの音を認識する
ことにより、神経接続の状態を認知することができる。なお、第1の実施の形態と同様の
動作に関しては説明を省略する。
【0107】
本実施の形態における手術装置では、発生させた電気信号および検出された電気信号か
ら、刺激用電極が取り付けられた被検体の部位と検出用電極が接触する組織が、神経接続
されているか否かを自動的に検知し、その結果を操作者に報知することにより、操作者は
モニタに表示される波形から神経接続の有無を読み取る必要がなくなり、より検査に集中
することができる。
【0108】
また、印加された電気信号あるいは電気信号が発せられたという信号と、検出された電
気信号とから、神経接続を検知するための所定の時間を算出する構成としたため、刺激用
電極と検出用電極の距離に関わらず、的確に神経接続を検知することができる。刺激用電
極と検出用電極間の距離が異なると、神経を伝達して到達した電気信号も異なる時間に検
出されてしまうためである。
【0109】
ただし、神経接続を検知する基準となる所定の時間tthを算出する代わりに、予め記憶
されている一定の値(操作者が任意に変更可能としても良い)を用いることを、本発明か
ら除外するものではない。
【0110】
また、報知手段として、所定の音を発するスピーカを用いることにより、スピーカから
の音のみで、検出用電極が接触した組織と、刺激用電極が取り付けられた部位が神経接続
されているかどうかを認識することができ、操作者は観察視野を動かすことなく、検査を
行うことができ、高い安全性が確保される。
【0111】
また、本実施の形態では、神経接続されているか否かを自動的に検知する構成としたが
、これ以外にも操作者によって入力された所定の値によって半自動的に検知する構成とし
ても良い。
【0112】
具体的には、操作者が、刺激用電極24と検出用電極93の距離に応じて遅延予想時間
、あるいは電極間の距離自体を数値で入力(あるいは選択)する。操作者に入力された遅
延予想時間、あるいは入力された電極間の距離に応じて自動的に算出された遅延予想時間
を、上述のスレッショルド電圧値Vthとして、手術装
置本体23において、神経接続されているか否かを自動的に検知する。
【0113】
これにより、各電極間の距離が短い、あるいは電子回路の性能等の問題から、時間t1を
求めることが出来ない場合であっても、神経接続されているか否かを半自動的に検知する
ことが可能である。
【0114】
以上、本発明における各実施の形態、変形例について説明を行ったが、本発明は、上記
実施の形態および変形例を種々組みあせて用いても良く、また趣旨を一脱しない範囲での
さらなる変形も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態における手術装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態における電気刺激装置制御部のブロック図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態における電気信号の波形のグラフである。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態における手術装置のブロック図である。
【図7】本発明に係る第1の変形例における
【図8】本発明に係る第2の変形例における
【図9】本発明に係る第3の実施の形態における手術装置の保持部の外観図である。
【図10】本発明に係る第3の実施の形態における手術装置のブロック図である。
【図11】本発明に係る第3の実施の形態における電気刺激装置制御部のブロック図である。
【図12】本発明に係る第3の実施の形態における電気信号の波形のグラフである。
【符号の説明】
【0116】
10 保持部
11 電極
12 絶縁体カバー
13 先端部
14 送水口
15 滑り止め部
16 送水パイプ
17 接続用コード
18 LED
19 支持部
21 送水タンク
22 各種スイッチ
23 手術装置本体
24 刺激用電極
25 電気刺激装置制御部
26 本体制御部
27 電気メス装置制御部
28 モニタ
31 電気信号検出制御部
32 電気信号発生制御部
50 保持部
51 接続用コード
52 接続部
53 吸引管
55 吸引パイプ
56 孔
61 吸引装置制御部
62 吸引タンク
70 保持部
71 接続用コード
72 絶縁体カバー
73 先端部
74 支持部
75 消息子本体
80 ピンセット
81 接続用コード
82 絶縁体カバー
83 支持部
84 綿布片
85 滑り止め部
86 ピンセット本体
90 保持部
91 接続用コード
92 支持部
93 検出用電極
101 スピーカ
111 神経接続検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の組織を凝固または切開するための電気を供給する電気メス装置制御手段、
被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、およ
び被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも2
つの制御手段と、
前記少なくとも2つの制御手段に接続され、操作者が保持するための保持部と、前記少な
くとも2つの制御手段のうちいずれの制御手段を使用するかを切換える切換手段と、
を具備することを特徴とする手術装置。
【請求項2】
前記少なくとも2つの制御手段は、前記電気メス装置制御手段を含むことを特徴とする請
求項1記載の手術装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記切換手段によりいずれの制御装置が選択されたかを表示する表示手段
を有することを特徴とする請求項2記載の手術装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記切換手段によりいずれの制御装置が選択されたかを発光色により識
別可能な発光手段を有することを特徴とする請求項3記載の手術装置。
【請求項5】
前記切換手段により前記電気メス装置制御手段が選択された場合にのみ操作者に報知する
報知手段をさらに有することを特徴とする請求項3記載の手術装置。
【請求項6】
前記電気メス装置制御手段から前記電気を供給するタイミングを決定する第1のスイッチ
と、前記電気信号発生制御手段から前記電気信号を発生させるタイミングを決定する、ま
たは前記電気信号検出制御手段により前記電気信号を検出するタイミングを決定する第2
のスイッチは、共通のスイッチであることを特徴とする請求項2記載の手術装置。
【請求項7】
前記切換手段により使用される制御手段が切換えられた際に、安全点検を行う点検手段を
さらに有することを特徴とする請求項2記載の手術装置。
【請求項8】
前記安全点検を行う点検手段は、前記切換手段により前記電気メス装置制御手段から他の
制御手段に切換えられた場合に、前記保持部を所定の時間、接地することを特徴とする請
求項7記載の手術装置。
【請求項9】
被検体の所定の組織を吸引管により吸引する吸引装置制御手段、被検体の所定の組織を刺
激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、および被検体の所定の組織か
ら電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも2つの制御手段と、
前記少なくとも2つの制御手段に接続され、操作者が保持するための保持部と、前記少な
くとも2つの制御手段のうちいずれの制御手段を使用するかを切換える切換手段と、
を具備することを特徴とする手術装置。
【請求項10】
前記少なくとも2つの制御手段は、前記吸引装置制御手段を含むことを特徴とする請求項
9記載の手術装置。
【請求項11】
前記吸引管は導電性部材を有し、前記導電性部材を介して被検体の所定の組織に電気信号
が印加され、または被検体の所定の組織から電気信号が検出されることを特徴とする請求
項10記載の手術装置。
【請求項12】
被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、およ
び被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも1
つの制御手段と、
前記少なくとも1つの制御手段に接続され、被検体の所定の組織に挿入して手応えを調べ
るための消息子と、
を具備することを特徴とする手術装置。
【請求項13】
被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、およ
び被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも1
つの制御手段と、
前記少なくとも1つの制御手段に接続され、所定の部材を保持するための導電性のピンセ
ットと、
を具備することを特徴とする手術装置。
【請求項14】
前記ピンセットに保持される所定の部材は、組織を切開するための綿布片であり、
前記綿布片は、表面に導電性部材を有することを特徴とする請求項13記載の手術装置。
【請求項15】
被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段、およ
び被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段のうち少なくとも1
つの制御手段と、
前記少なくとも1つの制御手段に接続される導電性部材および前記導電性部材から操作者
を絶縁状態にする絶縁部材を有する保持部と、
を具備することを特徴とする手術装置。
【請求項16】
被検体の所定の組織を刺激するための電気信号を発生させる電気信号発生制御手段と、
被検体の所定の組織から電気信号を検出する電気信号検出制御手段と、
前記発生した電気信号の波形および前記検出された電気信号の波形を同一画面上に表示す
る表示制御手段と、
を具備することを特徴とする手術装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−260418(P2007−260418A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134031(P2007−134031)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願2001−328537(P2001−328537)の分割
【原出願日】平成13年10月26日(2001.10.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】