説明

把持ロボット装置

【課題】 1台のハンドでさまざまな硬さ、重さ、形状のものを把持する機構と制御法を提供する
【解決手段】識別情報が記録されたICタグを複数の物体にそれぞれ貼着し、前記各物体を自動的に識別して前記各物体を把持するロボットマニピュレータの把持ロボットハンドであって、把持ロボットハンドの中心位置に取り付けたCCDカメラと、同CCDカメラの近接位置に取り付けた照明装置と、前記各物体のICタグに記録された情報を読取るICタグリーダと、同ICタグリーダが読取った物体の形状情報及びその把持位置に基づいて、前記把持ロボットハンドの把持部を識別した前記各物体の把持位置に移動させる第1のアクチュエータと、同第1のアクチュエータの作動後に、前記把持ロボットハンドの把持力を前記物体のICタグに記録された把持力と比較して一致させる第2のアクチュエータとから構成されることを特徴とする把持ロボット装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさまざまな形状、硬さ、重さのものを把持し、仕分けることができるロボットハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグをつけた対象物を仕分けるロボットハンドがいくつか考案されているが、様々なセンサを使う必要があることから、既製品の組み合わせではハンドが大型になる、理想的な位置にセンサをレイアウトできないという問題を抱えていた。そこでセンサを最も効率的にレイアウトした専用のハンドが求められていた。一方、従来から特定のものを把持するロボットハンドが商品化されているが、対象物に合わせた指形状、ハンド機構を用意する必要があった。対象物が軽量で壊れやすいものならば出力トルクの小さなアクチュエータを使った小型のハンドを用意し、重量物であれば出力の大きな大型の専用ハンドを用意する必要があるため、作業に応じていくつものロボットを用意する必要があった。これを解決する為、人の手を模擬した多自由度多指ハンドが提案されているが、このハンドを用いた把持制御は計算量が多い、構造が精密で必要なトルクを実現しにくい、重量物を把持できない問題があった。
【特許文献1】特開2006−102881(把持ロボット装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、1台のハンドでさまざまな硬さ、重さ、形状のものを把持する機構と制御法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は
1)識別情報が記録されたICタグを複数の物体にそれぞれ貼着し、前記各物体を 自動的に識別して前記各物体を把持するロボットマニピュレータの把持ロボットハンドであって、把持ロボットハンドの中心位置に取り付けたCCDカメラと、同CCDカメラの近接位置に取り付けた照明装置と、前記各物体のICタグに記録された情報を読取るICタグリーダと、同ICタグリーダが読取った物体の形状情報及びその把持位置に基づいて、前記把持ロボットハンドの把持部を識別した前記各物体の把持位置に移動させる第1のアクチュエータと、同第1のアクチュエータの作動後に、前記把持ロボットハンドの把持力を前記物体のICタグに記録された把持力と比較して一致させる第2のアクチュエータとから構成されることを特徴とする把持ロボット装置である。
2)上記第1のアクチュエータは、上記把持ロボットハンドの把持部を前記各物体の把持位置に水平方向に移動させるボールネジ・スライド駆動機構からなり、上記第2のアクチュエータは、前記把持ロボットハンドの把持部をウォームギヤを介して、軸支され前記ウォームギヤに一側が噛合する把持レバーと、同把持レバーの他側把持部に貼着される力センサと、同力センサの圧力情報を前記物体の上記ICタグに記録された把持力に比較一致させる制御機構とから構成される把持ロボット装置である。



【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ICタグリーダ、CCDカメラ、照明装置、力センサを仕分け作業に適切な位置に配置したコンパクトなハンドを実現することができる。また
重量物を把持し持ち上げる場合、対象物重量が把持レバーに加わることで把持レバー軸にトルクが加わるが、ウォームギヤの特性によって把持レバー側からのトルクは第2のアクチュエータに伝わらない。第1のアクチュエータは対象物の荷重方向に対して水平である為、水平方向への分力は最小になる。よって第2のアクチュエータトルク以上の把持力が必要な重量物を把持することができる。把持レバーの角度を変更すれば柔軟構造の把持部を対象物に接触させ、その接触力を力センサで計測しつつ第1アクチュエータ、第2アクチュエータを制御することで、壊れやすいものを適切な力で把持することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
CCDカメラの視野をさえぎらないように、把持ロボットハンドの中心位置にCCDカメラを配置した。その近傍に照明角度を変更できるように、複数のLED等の照明装置を配置した。更にその近傍にICタグリーダを配置した。第1のアクチュエータはCCDカメラを中心として2個以上放射状に配置した。把持部は力センサを内蔵した柔軟素材で構成する。第1のアクチュエータのスライド方向は対象物の荷重方向に対して水平とし、把持レバーは第1のアクチュエータに対し、平行な角度から180度変更できることが望ましい。以下本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0007】
図1は実施例の商品仕分け用センサ統合ハンドの説明図で、図1(a)は正面図で、図1(b)は商品仕分け用センサ統合ハンドを下からみた平面図である。図2は実施例の第1のアクチュエータと第2のアクチュエータの説明図で、図2(a)は正面図で、図2(b)は側面図である。図3は第2のアクチュエータの説明図で、図3(a)は一部切欠部を示す正面図で、図3(b)は側面図である。図4は対象物の力制御把持動作の説明図で、図4(a)は正面図で、図4(b)は側面図である。図5は重量物把持動作の説明図で、図5(a)は正面図で、図5(b)は側面図である。
以下、図1から図5を参照して本発明に係る実施例を説明する。
【0008】
本実施例の把持ロボットハンドは図1,2,3に示すようにハンド中央部にCCDカメラ1を備え、その近接位置に複数のLEDからなる照明装置7を有し、その近傍にICタグに記録された情報を読取るICタグリーダ6が配置され、その周囲に、第1のアクチュエータ8を固定している第1のフレーム14を2個以上放射状に配置し、同第1アクチュエータ8の作動後にボールねじ8aを介してスライド動作するスライド部材8bに固定された第2のフレーム15を有し、同第2のフレーム15に固定された第2のアクチュエータ9作動後にウォームギヤ9aを介して軸支され、前記ウォームギヤ9aに一側が噛合する把持レバー10と、同把持レバー10の他側把持部2に貼着される力センサ5と、同力センサ5の圧力情報を物体のICタグに記録された把持力に比較一致させる制御機構とから構成した。

【0009】

CCDカメラ1によって対象物を撮影して対象物座標を特定するには、図4(a)に図示するように把持部2をカメラ視野外に位置させるため、第1のアクチュエータ8を動作させ、ボールねじ8aを介してスライド部材8bをCCDカメラ1から離す方向にスライド動作させる。同時に第2のアクチュエータ9を動作させ、把持レバー10を第2のアクチュエータ9の側に傾ける。

【0010】
対象物を把持するには、図4(b)に図示するように把持部2の動作範囲内に対象物を位置させたのち、第1のアクチュエータ8を動作させ、スライド部材8bをCCDカメラ1側にスライドさせると同時に、第2のアクチュエータ9を動作させ、把持部2が対象物に接触し、把持部2に貼着された力センサ5が圧力変化を検出するまで把持レバー10をCCDカメラ1側に傾ける。
【0011】
特定の把持力で対象物を把持するには、図4に図示するように把持部2に貼着された力センサ5の計測値が目標値になるよう第1のアクチュエータ8及び第2のアクチュエータ9を動作させ、スライド部材8bと把持レバー10を動かす。
【0012】
重量物を把持する場合は、図5に示すように把持レバー10をできるだけ水平にし、スライド部材8bをスライドさせ、把持部2を対象物の荷重が加わる部分の下部に位置させる。対象物荷重によるトルクが把持レバー10を介してウォームギヤ9aに加わるが、ウォームギヤ9aの特性により、把持レバー10から入力されるトルクは大幅に減少されて第2のアクチュエータ9に伝わるのみである。また、スライド部材8bのスライド方向の対象物荷重分力はほとんど発生しない為、第1のアクチュエータ8に伝わるトルクはほとんど発生しない。このため、小さいトルクのアクチュエータで重量物を把持することが可能になった。



【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の把持ロボットは、小売業での仕分け作業、ロボットを使ったセル生産システムなど多種の対象物を把持しなければならない分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の把持ロボットハンドの全体説明図で、(a) 把持ロボットハンドの正面図、(b) 商品仕分け用センサ統合ハンドを下からみた平面図である。
【図2】実施例の把持ロボットハンドの第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータ部の説明図で、(a) 正面図、(b) 側面図である。
【図3】実施例の把持ロボットハンドの第2のアクチュエータ部の説明図で、(a) 一部切欠部を示す正面図で、(b) 側面図である。
【図4】実施例の把持ロボットハンドの対象物力制御把持動作を示す説明図で、(a) 正面図、(b) 側面図である。
【図5】実施例の把持ロボットハンドの重量物把持動作を示す説明図で、(a) 正面図、(b) 側面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 CCDカメラ
2 把持部
3 シリンダ
4 ジョイント
5 力センサ
6 ICタグリーダ(アンテナ)
7 照明装置
8 第1のアクチュエータ
8a ボールネジ
8b スライド部材
9 第2のアクチュエータ
9a ウォームギヤ
9b ピン
10 把持レバー
11 レール
12 レールスライダー
13 把持ロボットハンドフレーム
14 第1のフレーム
15 第2のフレーム




【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報が記録されたICタグを貼付されている複数の物体に対し、前記各物体を自動的に識別して前記各物体を把持するロボットマニピュレータの把持ロボットハンドであって、把持ロボットハンドの中心位置に取り付けたCCDカメラと、前記各物体のICタグに記録された情報を読取るICタグリーダと、同ICタグリーダが読取った物体の形状情報及びその把持位置に基づいて、前記把持ロボットハンドの把持部を識別した前記各物体の把持位置に移動させる第1のアクチュエータと、同第1のアクチュエータの作動後に、前記把持ロボットハンドの把持力を前記物体のICタグに記録された把持力と比較して一致させるように制御される第2のアクチュエータとから構成されることを特徴とする把持ロボット装置。
【請求項2】
上記第1のアクチュエータは、上記把持ロボットハンドの把持部を前記各物体の把持位置に対して進退動するスライド駆動機構からなり、上記第2のアクチュエータは、前記把持ロボットハンドの把持部をウォームギヤを介して、軸支され前記ウォームギヤに一側が噛合し、回動する把持レバーと、同把持レバーの他側把持部に貼着される力センサと、同力センサの圧力情報を前記物体の上記ICタグに記録された把持力に比較一致させる制御機構とから構成されることを特徴とする請求項1記載の把持ロボット装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−50968(P2009−50968A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220521(P2007−220521)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】