説明

把持装置

【課題】微小部品を把持するのに適した把持装置を提供する。
【解決手段】把持装置100は、把持部110と、本体部120と、モータ部130とを備え、取り付けプレート121によってXYZステージ等に取り付けられる。把持部110は、把持対象物を把持(狭持)するための一対のフィンガー部を備え、本体部120の内部に収容された機構及びモータ部130の内部に収容されたモータによって駆動されて、その先端が開閉することで、把持対象物を把持(狭持)する。また、把持装置100では、XYZステージ等を制御して、作業用ベース上に載置された把持対象物に対して、把持装置100全体を下降させている際に、なんらかの理由で、把持部110の先端等が、把持対象物等に接触してしまった場合、把持部110が、本体部120に対して上方に移動することができるように構成されており、それによって、把持対象物等が破損等するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小部品を把持するのに適した把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研究開発や多品種少量生産の現場では、顕微鏡下で、ピンセットなどを利用して、レーザダイオード等の微小部品を基板上の所定の位置に実装することが行われている。
【0003】
しかしながら、ピンセットなどで微小部品を把持する場合、力加減が難しく、微小部品をはじき飛ばしたり、微小部品に損傷を与えたりするおそれがあった。
【0004】
このような問題に対処可能な把持装置として、特開2006−341361号公報には、把持対象物を把持(狭持)するための一対のフィンガー部を備え、本体ホルダーによって、XYZステージに取り付けられた把持装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、当該把持装置においても、例えば、XYZステージ等の操作を誤り、把持装置を把持対象物に向けて垂直方向(Z軸方向)に下降させる際等に把持対象物にフィンガー部の先端を押し当ててしまったりすると、把持対象物である微少部品をはじき飛ばしたり、微少部品に損傷を与えたりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−341361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、微小部品を把持するのに適した把持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る把持装置は、少なくとも一方が支軸を中心に揺動可能な一対のフィンガー部と、前記一対のフィンガー部の後端の開閉をすることによって、前記一対のフィンガー部の先端の開閉を制御する開閉機構部とを備え、前記一対のフィンガー部は、前記開閉機構部に対して、直線移動可能に構成されており、前記開閉機構部は、前記一対のフィンガー部の後端部と当接する一対の当接面を有し、前記一対の当接面はそれぞれ、前記開閉機構部に対する前記一対のフィンガー部の移動方向と平行になるように形成されており、前記一対のフィンガー部の後端部は、前記一対の当接面と点接触していることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記一対のフィンガー部はそれぞれ、その後端部に、前記当接面と点接触するための当接部材を備え、前記当接部材は、前記当接面と点接触するための球面部を備えるようにしてもよい。更に、前記球面部は、前記当接面と転がり接触するようにしてもよい。また、前記当接部材は、前記当接面と点接触するための当接球と、当該当接球を回転可能に支持するための複数の支持球とを備えるようにしてもよい。
【0010】
また、以上の場合において、前記開閉機構部は、前記一対のフィンガー部の後端部の内側面と当接する一対の当接面を有する一対の開閉部材と、前記一対のフィンガー部の後端が閉じる方向に、前記少なくとも一方のフィンガー部を付勢する付勢部材(例えば、ばね)とを備え、前記一対の開閉部材は、その間隔を広げるように移動することで、前記一対のフィンガー部の後端を押し広げるようにしてもよい。この場合、前記一対のフィンガー部はそれぞれ、支軸を中心に揺動可能であり、前記開閉機構部は、前記一対の開閉部材と当接する一対の突起部を有する回転部材を更に備え、前記回転部材が一方方向に回転すると、前記一対の突起部は、前記一対の開閉部材の間隔が広がるように、前記一対の開閉部材を押すようにしてもよい。
【0011】
あるいは、前記開閉機構部は、前記一対のフィンガー部の後端部の外側面と当接する一対の当接面を有する一対の開閉部材と、前記一対のフィンガー部の後端が開く方向に、前記少なくとも一方のフィンガー部を付勢する付勢部材とを備え、前記一対の開閉部材は、その間隔を狭めるように移動することで、前記一対のフィンガー部の後端を押し狭めるようにしてもよい。この場合、前記一対のフィンガー部はそれぞれ、支軸を中心に揺動可能であり、前記開閉機構部は、前記一対の開閉部材と当接する一対の突起部を有する回転部材を更に備え、前記回転部材が一方方向に回転すると、前記一対の突起部は、前記一対の開閉部材の間隔が狭まるように、前記一対の開閉部材を押すようにしてもよい。
【0012】
また、以上の場合において、前記一対のフィンガー部の前記開閉機構部に対する移動を検知する手段(例えば、変位センサ)を更に備えるようにしてもよい。また、前記回転部材を回転させる回転駆動部(例えば、モータ)を更に備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微小部品を把持するのに適した把持装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による把持装置100の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明による把持装置100の使用状態を示す図である。
【図3】把持装置100の内部構造を説明するための図(その1)である。
【図4】把持装置100の内部構造を説明するための図(その2)である。
【図5】把持装置100の内部構造を説明するための図(その3)である。
【図6】把持装置100の内部構造を説明するための図(その4)である。
【図7】当接部材304の構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明による把持装置の構成を示す斜視図である。同図に示すように、本発明による把持装置100は、把持部110と、本体部120と、モータ部130とを備えるものであり、例えば、取り付けプレート121によってXYZステージ等に取り付けられて使用される。
【0017】
把持部110は、把持対象物を把持(狭持)するための一対のフィンガー部を備えるものであって、本体部120の内部に収容された機構及びモータ部130の内部に収容されたモータによって駆動されて、その先端が開閉することで、把持対象物を把持(狭持)する。
【0018】
図2は、本発明による把持装置の使用状態を示す図である。同図は、自動制御されるXYZステージに、本発明による把持装置を取り付けて使用する場合の例を示すものである。
【0019】
同図に示した使用例においては、本発明による把持装置100は、取り付けプレート121によって、XYZステージ210に取り付けられている。XYZステージ210は、それぞれモータ駆動されるXステージ211、Yステージ212及びZステージ213によって構成されており、各ステージ211〜213をモータ制御することにより、把持装置100の位置決めをすることができる。
【0020】
また、把持装置100を使った各種作業を行うための作業用ベース220は、XYθステージ230に取り付けられている。XYθステージ230は、それぞれモータ駆動されるXステージ231、Yステージ232及びθ(水平回転)ステージ233によって構成されており、各ステージ231〜233をモータ制御することにより、作業用ベース220の位置や向き(作業用ベース220に載せられた把持対象物の位置や向き)を調整することができる。
【0021】
本発明による把持装置100では、例えば、XYZステージ210を制御して、作業用ベース220上に載置された把持対象物に対して、把持装置100全体を下降させている際に、なんらかの理由で、把持部110の先端等が、把持対象物や作業用ベース220等に接触してしまった場合、把持部110が、本体部120に対して上方に逃げる(移動する)ことができるように構成されており、それによって、把持対象物や把持部110が破損等するのを防止することができるようになっている。
【0022】
また、それとは逆に、例えば、把持部110の先端で把持対象物を把持(挟持)した状態で、XYZステージ210を制御して、把持装置100全体を上昇させようとした際に、把持対象物が作業用ベース220に張り付いていた等の理由で、把持対象物を持ち上げることができない場合、把持部110が、本体部120に対して下方に逃げる(移動する)ことができるように構成されており、把持対象物を持ち上げることができない状態のまま、把持装置100全体を上昇させることで、把持対象物が破損等するのを防止することができるようになっている。
【0023】
次に、把持装置100の構造の詳細について説明する。
【0024】
図3〜図6は、把持装置100の内部構造を説明するための図である。図3及び図4は、把持装置100の側面図であり、図3は基本となる状態を示し、図4は、図3に示した状態から把持部110が上昇した状態を示している。一方、図5及び図6は、把持装置100を背面斜め下側(図3における右下側)から見た図であり、図5は、把持部110の先端が開いた状態を示す図であり、図6は、把持部110の先端が閉じた状態を示す図である。
【0025】
図3及び図5に示すように、把持装置100は、把持部110と、可動ベース部310と、本体ベース部320と、開閉機構部330と、モータ部130とを備える。
【0026】
把持部110は、一対のフィンガー部111を備え、当該一対のフィンガー部111が支軸112を中心に揺動することによって、その先端で把持対象物を把持(狭持)するものである。把持部110の詳細については後述する。
【0027】
可動ベース部310は、把持部110が取り付けられる部材であって、把持部110と共に、本体ベース部320に対して、垂直方向(図3における上下方向)に移動可能な部材である。すなわち、可動ベース部310は、垂直方向(図3における上下方向)に延びるように本体ベース部320に取り付けられているシャフト323に沿って、上下動できるように構成されている。可動ベース部310の本体ベース部320に対する上下動動作の詳細については後述する。また、図3に示すように、把持部110は、フィンガー部111の先端が斜め下を向くように、可動ベース部310に取り付けられている。
【0028】
本体ベース部320は、本体部120のベースを構成する部材であり、当該本体ベース部320に対して、可動ベース部310、開閉機構部330及びモータ部130が適宜取り付けられている。なお、図5及び図6では、把持部110の構成が見えるように、本体ベース部320の底面を構成する板状部材321の中間部分を切り欠いて示している。
【0029】
開閉機構部330は、一対のフィンガー部111の後端を開閉することによって、一対のフィンガー部111の先端の開閉を制御するものである。開閉機構部330の詳細については後述する。
【0030】
モータ部130は、その内部に、開閉機構部330を駆動するためのモータが収容されているものである。なお、後述するように、モータ部130に収容されたモータは、開閉機構部330を構成する回転部材を回転駆動することで、開閉機構部330を駆動する。
【0031】
次に、把持部110の詳細について説明する。
【0032】
図3及び図5に示すように、把持部110は、一対のフィンガー部111と、フィンガー部ベース113とを備える。
【0033】
フィンガー部111は、支軸112を中心に揺動する部材であって、把持対象物を把持(狭持)するための部材である。前述したように、把持部110は、一対、すなわち、2つのフィンガー部111を備える。
【0034】
図5に示すように、フィンガー部111の後端部は、L字状に形成されている。すなわち、フィンガー部111の後端部は、まず、フィンガー部111の長手方向と垂直に、外側に向けて曲げられ、更に、フィンガー部111の長手方向に、後側に向けて曲げられている。その結果、一対のフィンガー部111の対向する後端部の間の幅が広くなるようになっている。そして、L字状に曲げられたフィンガー部111の対向する一対の内側面にはそれぞれ、当接部材304が取り付けられている。
【0035】
当接部材304は、開閉機構部330(具体的には、後述する開閉部材)と点接触する部材であって、当該当接部材304が、開閉機構部330によって外側方向に押されることにより、後端が開くように一対のフィンガー部111が支軸112を中心に回転する。当接部材304の詳細については後述する。
【0036】
フィンガー部ベース113は、把持部110のベースを構成する部材であり、その先端部において、支軸112を介して、各フィンガー部111が揺動可能に取り付けられるとともに、可動ベース部310と連結されて、可動ベース部310と一体をなす部材である。
【0037】
次に、開閉機構部330の詳細について説明する。
【0038】
図3及び図5に示すように、開閉機構部330は、一対の開閉部材331と、リニアガイド332と、回転部材333と、一対の圧縮コイルばね334とを備える。なお、簡単のため、図3(及び図4)では、一対の圧縮コイルばね334、及び、当該一対の圧縮コイルばね334を保持する一対のばね保持部328については省略してある。
【0039】
一対の開閉部材331は、一対のフィンガー部111の後端部に設けられた一対の当接部材304を外側方向に押すことで、一対のフィンガー部111の後端を押し広げるものである。本実施形態においては、開閉部材331はそれぞれ、リニアガイド332のスライダ(キャリッジ)に固定されており、水平方向(図5における左右方向)にのみ直線移動可能なように構成されている。
【0040】
図4及び図6に示すように、各開閉部材331は、一対のフィンガー部111の後端部の間に配置されて、当接部材304が当接する面(当接部材当接面)を提供する垂下部3311と、フィンガー部111の後端と、回転部材333との間に配置されて、リニアガイド332のスライダ3321に固定されると共に、回転部材333が備える一対の突起部3332が当接する面(突起部当接面)を提供する水平部3312とを有する。
【0041】
各開閉部材331の垂下部3311が提供する当接部材当接面はそれぞれ、可動ベース部310の本体ベース部320に対する移動方向と平行になるように形成される。また、本実施形態では、一対の当接部材当接面は、互いに平行、かつ、各開閉部材331の移動方向と垂直をなすように形成されており、一対の開閉部材331の当接部材当接面は、互いに平行な状態を保ったまま移動することになる。同様に、各開閉部材331の水平部3312が提供する突起部当接面も、互いに平行、かつ、各開閉部材331の移動方向と垂直をなすように形成されており、一対の開閉部材331の突起部当接面は、平行な状態を保ったまま移動することになる。
【0042】
リニアガイド332は、一対の開閉部材331の移動方向を規制するものであって、一対の開閉部材331を取り付けるため、2つのスライダ3321を有している。リニアガイド332のレール3322は、水平方向(図6における左右方向)に延びるように、本体ベース部320に固定されており、2つのスライダ3321はそれぞれ、本体ベース部320に対して、水平方向(図6における左右方向)にのみ直線移動できるようになっている。
【0043】
回転部材333は、回転することで、一対の開閉部材331のそれぞれを外側方向に押して、その間隔を広げる部材であって、モータ部130内に収容されたモータの出力軸と適宜連結されて、当該出力軸と一体となって回転する部材である。
【0044】
図3に示すように、回転部材333は、開閉部材331の上方に配置されており、回転ベアリング322によって、回転可能に本体ベース部320に取り付けられている。
【0045】
また、図4及び図6に示すように、回転部材333は、背の低い円柱状部材3331と、当該円柱状部材3331の開閉部材331の水平部3312と対向する回転面(図4における底面)に、開閉部材331を押して移動させるための一対の突起部3332を有している。当該一対の突起部3332は、円柱状部材3331の回転面に立設された2本のピンと、当該2本のピンの先端部に装着された回転ベアリングとによって構成されている。なお、回転部材333の構造は、基本的に、前述した特開2006−341361号公報に記載されているものと同様である。
【0046】
一対の圧縮コイルばね334は、一対のフィンガー部113の後端部の外側面を挟むように配置されており、後端が閉じるように一対のフィンガー部111を付勢する部材である。すなわち、圧縮コイルばね334の付勢力によって、フィンガー部111の後端部に設けられた各当接部材304は、対向する開閉部材331(垂下部3311)に押し付けられることになる。
【0047】
図5及び図6に示すように、一対の圧縮コイルばね334の外側の端部は、本体ベース部320に取り付けられた一対のばね保持部328に保持されている。なお、前述したように、図3及び図4では、一対の圧縮コイルばね334及び一対のばね保持部328については省略してある。また、一対の圧縮コイルばね334の内側の端部は、各フィンガー部111の後端部の外側面に取り付けられた当接部材304の後端部カバー3041に形成された穴3042(図4参照)に嵌め込まれる。
【0048】
次に、当接部材304の詳細について説明する。
【0049】
図7は、当接部材304の構造を説明するための図である。同図(a)は平面図を示し同図(b)は正面図を示し、同図(c)は断面図を示している。
【0050】
同図に示すように、当接部材304は、当接球701と、複数の支持球702と、ベース部703と、キャップ部704とを備える。
【0051】
当接球701は、開閉部材331に当接する球状の部材であって、開閉部材331と点接触するものである。また、当接球701は、複数の支持球702に支持された状態で、任意の方向になめらかに回転することができるものである。
【0052】
複数の支持球702は、ベース部703に設けられた穴(凹部)に収容されて、当接球701を回転可能に支持する球状の部材である。各支持球702は、当接球701と比較して、充分に小さくなるように形成されており、当接球701を支持するのに充分な個数(本実施形態では、20個)が使用される。
【0053】
ベース部703は、当接部材304のベースを構成する部材であって、その上面に、複数の支持球702を収容するための穴(凹部)が形成されている。複数の支持球702を収容するための穴(凹部)は、球の一部を平面で切り取ったような形状を有しており、複数(例えば、20個)の支持球702を収容できるような大きさに形成される。
【0054】
キャップ部704は、ベース部703の上面を覆うように取り付けられて、当接球701を回転可能に保持するものであって、その中央部分に、当接球701の一部を露出させるための孔が形成されている。
【0055】
当接部材304は、以上のような構造を有するので、各開閉部材331の当接部材当接面と点接触することができ、更に、点接触状態を保ったまま、当該当接部材当接面上を任意の方向になめらかに移動することができる。
【0056】
次に、以上のような構成を有する把持装置100の動作について説明する。
【0057】
まず、把持部110の開閉動作について説明する。
【0058】
前述したように、図5は、把持部110(一対のフィンガー部111)の開状態を示し、図6は、把持部110(一対のフィンガー部111)の閉状態を示している。
【0059】
図5及び図6に示すように、一対のフィンガー部111は、その後端部の間に、開閉部材331(垂下部3311)を挟むように配置されると共に、その後端部は、付勢部材としての一対の圧縮コイルばね334によって、後端が閉じる方向に付勢されている。
【0060】
図5に示した状態において、モータ部130に収容されたモータを動作させ、回転部材333を時計回りの方向に回転させると、回転部材333の回転に伴い円弧を描くように移動する一対の突起部3332(回転ベアリング)によって、一対の開閉部材331が外側に向かって(同図における左右方向に)押される。その結果、各開閉部材331が外側に向かって移動を開始し、それに伴い、各開閉部材331によって、当該各開閉部材331に当接する当接部材304を介して、各フィンガー部111の後端部が外側に向かって押される。圧縮コイルばね334の付勢力に逆らって、回転部材333をそのまま回転をさせていくと、一対のフィンガー部111の後端は開いていき、一対のフィンガー部111の先端は閉じていく。その結果、最終的に、図6に示した閉状態に至る。
【0061】
一方、同図に示した状態において、モータ部130に収容されたモータを動作させ、回転部材333を反時計回りの方向に回転させると、一対のフィンガー部111は、一対の圧縮コイルばね334により後端が閉じる方向に付勢されており、それに伴い、各開閉部材331は、フィンガー部111の後端部に設けられた当接部材304を介して内側に向かって付勢されているので、回転部材333の回転に伴い円弧を描くように移動する一対の突起部3332(回転ベアリング)に追従して、一対の開閉部材331が一対のフィンガー部113の後端部と共に内側に向かって移動することになる。回転部材333をそのまま回転させていくと、フィンガー部111の後端は閉じていき、フィンガー部111の先端は開いていく。その結果、最終的に、図5に示した開状態に至る。
【0062】
以上説明したように、把持装置100においては、回転部材333を左右に回転させることにより、フィンガー部111の先端で、把持対象物の把持及び開放を行うことができる。従って、回転部材333の回転を細かく制御することによって、把持対象物を把持する力加減を細かく制御することが可能になる。
【0063】
次に、把持部110の本体ベース部320に対する上下動動作について説明する。
【0064】
前述したように、把持装置100においては、把持装置100全体を上昇又は下降させる際に、なんらかの理由で、把持部110(フィンガー部111)が上昇又は下降できない状態になっているとき、把持部110は、本体ベース部320に対して下方又は上方に逃げる(移動する)ことができるようになっている。従って、例えば、本体ベース部320に対する、把持部110の動きを変位センサ等のセンサ(不図示)で検知するようにすれば、把持装置100全体を上昇又は下降させているにも関わらず、把持部110が上昇又は下降できないという異常状態を検出することができるようになり、自動制御する際などに、把持対象物や把持部110に損傷等が発生するのを防止することが可能となる。
【0065】
図3に示した状態において、可動ベース部310は、垂直方向に延びるシャフト323に沿って上下動できるように、シャフト323に上下動可能に装着されたリニアベアリング(ボールブッシュ)を介して、シャフト323に取り付けられている。なお、同図では、シャフト323は1本しか見えていないが、実際は、2本のシャフト323が、把持部110を挟むように配置されて、上端部及び下端部において本体ベース部320に固定されている。
【0066】
そして、図3に示すように、可動ベース部310は、その上方に配置された圧縮コイルばね324によって、下方に付勢されている。より具体的には、まず、圧縮コイルばね324によって、押圧部材311が下方に付勢され、当該押圧部材311によって、可動ベース部310が下方に付勢される。なお、圧縮コイルばね324の上端は、本体ブロック部320に取り付けられたばね保持部325によって保持されている。
【0067】
押圧部材311は、正面(同図における左側)から見ると下向きのコの字状の形状を有しており、下向きのコの字状の形状の両側の垂直部分の先端が、可動ベース部310の上面に当接することになる。一方、本体ベース部320には、押圧部材311の下向きのコの字状の形状の両側の垂直部分が挿入される2つの矩形状の孔(不図示)が形成されており、押圧部材311は、その下向きのコの字状の形状の両端部が、本体ベース部320に形成された矩形状の孔に挿入された状態で、圧縮コイルばね324によって、下方に付勢されている。従って、押圧部材311は、その一部(下向きのコの字状の形状の水平部分の底面)が、本体ベース部320の一部(2つの矩形状の孔に挟まれた部分)に当接することによって、下方への移動を停止することになる。
【0068】
一方、図3に示すように、可動ベース部310は、その下方に配置された別の圧縮コイルばね326によって上方にも付勢されている。なお、同図では、当該圧縮コイルばね326は1つしか見えていないが、実際は、2つの圧縮コイルばね326が、把持部110を挟むように配置されて、可動ベース部310を上方に付勢している。各圧縮コイルばね326の下端は、本体ブロック部320に取り付けられたばね保持部327によって、保持されている。可動ベース部310の下側に配置された圧縮コイルばね326は、可動ベース部310の上側に配置された圧縮コイルばね324より、ばね定数が小さくなるように選択されている。すなわち、可動ベース部310は、上側の圧縮コイルばね324及び下側の圧縮コイルばね326によって上下方向から付勢されていることになるが、可動ベース部310を押し上げる力より押し下げる力の方が強くなり、把持部110に外力が働いていない状態では、押圧部材311が本体ベース部320に当接して静止した状態で、可動ベース部310は静止することになる。このように、押圧部材311が本体ベース部320に当接して静止した状態が安定した状態で、図3は、このような安定した状態を示している。
【0069】
図3に示した状態で、例えば、フィンガー部111の先端等が把持対象物等に当接して、フィンガー部111に上向きの力が働くと、可動ベース部310に対しても上向きの力が働くこととなる。そして、その上向きの力が一定以上になると、可動ベース部310は、圧縮コイルばね324の付勢力に抗して、シャフト323に沿って上向きに移動を開始することになる。
【0070】
この際、フィンガー部111の後端部に設けられた当接部材304は、開閉部材331の当接部材当接面上を、点接触状態を保ったまま、なめらかに移動することになる。すなわち、開閉部材331の当接部材当接面に当接する当接球701が、複数の支持球702に支持された状態でなめらかに回転することで、フィンガー部111は、開閉部材331に対して、点接触状態を保ったまま、なめらかに移動することになる。また、開閉部材331の当接部材当接面は、可動ベース部310(フィンガー部111)の本体ベース部320に対する移動方向と平行になるように形成されているので、一対のフィンガー部111は、その開き具合(開度)を変えることなく、上方に移動をすることができる。従って、例えば、フィンガー部111が把持対象物を把持している状態で把持装置100全体を下降させている際等に、フィンガー部111が作業用ベース220等に接触したとしても、フィンガー部111の把持状態(開度)に影響を与えることなく、本体ベース部320に対して、フィンガー部111をなめらかに動かすことが可能となる。
【0071】
一方、図3に示した状態で、例えば、フィンガー部111の先端で把持した把持対象物が、張り付き等により作業用ベース220等から離れない状態で、把持装置100全体を上昇させる等して、フィンガー部111に下向きの力が働くと、可動ベース部310に対しても下向きの力が働くこととなる。そして、その下向きの力が一定以上になると、可動ベース部310は、圧縮コイルばね326の付勢力に抗して、シャフト323に沿って下向きに移動を開始することになる。
【0072】
この際、フィンガー部111の後端部に設けられた当接部材304は、前述したように、開閉部材331の当接部材当接面上を、点接触状態を保ったまま、なめらかに移動することになり、一対のフィンガー部111は、その開度を変えることなく、下方に移動することになる。
【0073】
このように、把持装置100においては、本体ベース部320に対して、把持部110が上下動することができるので、例えば、本体ベース部320に対する、把持部110の動きを変位センサ等で検知するようにすれば、把持部110と把持対象物や作業用ベースとの意図せぬ接触や、把持対象物の作業用ベースへの張り付き等の異常を検出することができ、把持対象物や把持部110に対する損傷等を防止することが可能となる。
【0074】
また、把持装置100においては、上下動する可動部が、基本的に、把持部110と可動ベース部310のみで構成されているので、上下動する可動部を比較的軽量にすることができ、フィンガー部111等が誤って把持対象物等にぶつかった際の衝撃を小さくすることができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、当然のことながら、本発明の実施の形態は上記のものに限られない。例えば、前述した把持装置100においては、一対の圧縮コイルばね334によって、一対のフィンガー部111の後端部を、当該後端部が閉じる方向に付勢していたが、付勢部材として圧縮コイルばねを支軸112より前に配置し、当該圧縮コイルばねによって、一対のフィンガー部111の後端が閉じる方向に、一対のフィンガー部111を付勢することも考えられる。
【0076】
また、前述した把持装置100においては、一対の圧縮コイルばね334によって、一対のフィンガー部111の後端部を、当該後端部が閉じる方向に付勢するとともに、開閉部材331によって、一対のフィンガー部111の後端が開く方向に、各フィンガー部111の後端部の内側面を押すことで、各フィンガー部111を回転させていたが、それとは逆に、一対のフィンガー部111の後端部を、当該後端部が開く方向に付勢するとともに、開閉部材によって、一対のフィンガー部111の後端が閉じる方向に、各フィンガー部111の後端部の外側面を押すことで、各フィンガー部111を回転させて、一対のフィンガー部111の先端の開閉を実現することも考えられる。
【0077】
例えば、付勢部材として、圧縮コイルばねを一対のフィンガー部111の間に配置して、一対のフィンガー部111の後端が開く方向に、一対のフィンガー部111を付勢するとともに、各フィンガー部111の後端部を上述したものとは逆向き、すなわち、内側にL字状に曲げ、各フィンガー部111の後端部の外側面に当接部材304を外向きに設けるようにし、更に、このように形成された一対のフィンガー部111の後端部を、上述した各開閉部材331を垂直軸を中心に180°回転させたもの(この場合、当接部材当接面は内側を向くことになる)で挟むようにし、かかる一対の開閉部材の突起部当接面(この場合、突起部当接面は外側を向くことになる)を、前述した回転部材333より径を大きくした回転部材の突起部で挟み込むようにすることが考えられる。この場合、一対のフィンガー部の後端が開いた状態で、回転部材を回転させると、回転部材の突起部によって、一対の開閉部材が内側方向に押されて、一対のフィンガー部の後端が押し狭められ、一対のフィンガー部の先端が開いていくことになる。また、一対のフィンガー部の後端が閉じた状態で、回転部材を逆方向に回転させると、一対のフィンガー部113は、圧縮コイルばねにより後端が開く方向に付勢されているので、回転部材の突起部の動きに追従して、一対のフィンガー部の後端は押し広げられていき、一対のフィンガー部の先端が閉じていくことになる。
【0078】
また、前述した把持装置100においては、フィンガー部111の後端部に設けられた当接部材304は、開閉部材331と転がり接触するように構成されていたが、異常の検出に要求される感度等に応じて、すべり接触するように構成することも考えられる。この場合、例えば、当接部材304の当接球701が回転しないように構成することが考えられる。
【0079】
また、前述した実施形態では、一対のフィンガー部111が、左右対称の動作を行うようにしていたが、前述した特開2006−341361号公報に記載されているように、一対のフィンガー部が、左右非対称の動作を行うようにすることも考えられる。
【符号の説明】
【0080】
100 把持装置
110 把持部
111 フィンガー部
112 支軸
113 フィンガー部ベース
120 本体部
121 取り付けプレート
130 モータ部
210 XYZステージ
211 Xステージ
212 Yステージ
213 Zステージ
220 作業用ベース
230 XYθステージ
231 Xステージ
232 Yステージ
233 θステージ
304 当接部材
3041 当接部材の後端部カバー
3042 穴
310 可動ベース部
311 押圧部材
320 本体ベース部
321 板状部材
322 回転ベアリング
323 シャフト
324,326 圧縮コイルばね
325,327,328 ばね保持部
330 開閉機構部
331 開閉部材
3311 垂下部
3312 水平部
332 リニアガイド
3321 スライダ
3322 レール
333 回転部材
3331 円柱状部材
3332 突起部
334 圧縮コイルばね
701 当接球
702 支持球
703 ベース部
704 キャップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が支軸を中心に揺動可能な一対のフィンガー部と、
前記一対のフィンガー部の後端の開閉をすることによって、前記一対のフィンガー部の先端の開閉を制御する開閉機構部と
を備え、
前記一対のフィンガー部は、前記開閉機構部に対して、直線移動可能に構成されており、
前記開閉機構部は、前記一対のフィンガー部の後端部と当接する一対の当接面を有し、
前記一対の当接面はそれぞれ、前記開閉機構部に対する前記一対のフィンガー部の移動方向と平行になるように形成されており、
前記一対のフィンガー部の後端部は、前記一対の当接面と点接触している
ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記一対のフィンガー部はそれぞれ、その後端部に、前記当接面と点接触するための当接部材を備え、
前記当接部材は、前記当接面と点接触するための球面部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記球面部は、前記当接面と転がり接触する
ことを特徴とする請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記当接部材は、
前記当接面と点接触するための当接球と、
当該当接球を回転可能に支持するための複数の支持球と
を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記開閉機構部は、
前記一対のフィンガー部の後端部の内側面と当接する一対の当接面を有する一対の開閉部材と、
前記一対のフィンガー部の後端が閉じる方向に、前記少なくとも一方のフィンガー部を付勢する付勢部材と
を備え、
前記一対の開閉部材は、その間隔を広げるように移動することで、前記一対のフィンガー部の後端を押し広げる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記一対のフィンガー部はそれぞれ、支軸を中心に揺動可能であり、
前記開閉機構部は、前記一対の開閉部材と当接する一対の突起部を有する回転部材を更に備え、
前記回転部材が一方方向に回転すると、前記一対の突起部は、前記一対の開閉部材の間隔が広がるように、前記一対の開閉部材を押す
ことを特徴とする請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
前記開閉機構部は、
前記一対のフィンガー部の後端部の外側面と当接する一対の当接面を有する一対の開閉部材と、
前記一対のフィンガー部の後端が開く方向に、前記少なくとも一方のフィンガー部を付勢する付勢部材と
を備え、
前記一対の開閉部材は、その間隔を狭めるように移動することで、前記一対のフィンガー部の後端を押し狭める
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持装置。
【請求項8】
前記一対のフィンガー部はそれぞれ、支軸を中心に揺動可能であり、
前記開閉機構部は、前記一対の開閉部材と当接する一対の突起部を有する回転部材を更に備え、
前記回転部材が一方方向に回転すると、前記一対の突起部は、前記一対の開閉部材の間隔が狭まるように、前記一対の開閉部材を押す
ことを特徴とする請求項7に記載の把持装置。
【請求項9】
前記一対のフィンガー部の前記開閉機構部に対する移動を検知する手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115864(P2011−115864A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273135(P2009−273135)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(598113900)アクテス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】