説明

投写型表示装置

【課題】投写型表示装置において、装置の筐体とスクリーンとの距離を短縮可能とし、低コスト化、小型化、簡素化を図り、良好な投写性能を有する。
【解決手段】投写型表示装置は、4つのレンズ群からなる屈折光学系1と、屈折光学系1と共軸系で負のパワーを持つ反射光学系2とを有する投写光学系10を備える。画像表示素子3の表示面の中心が光軸Zに対して偏心配置され、表示面の中心の拡大側共役位置が光軸Zに対して鉛直上方に位置するとき、共役像の下端中央に結像する光束11の下光線11sと、共役像の上端中央に結像する光束13の上光線13uとの交点14が、屈折光学系1の最も反射光学系2に近いレンズ面の面頂点よりも縮小側に位置する。屈折光学系1の縮小側から2番目および3番目のレンズ群のみを光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型表示装置に関し、特に、画像表示素子に表示された画像を屈折光学系および反射光学系を用いてスクリーン上に結像させる投写光学系を備えた投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示素子で表示された画像を、投写光学系によりスクリーン上に拡大投写する投写型の画像表示装置が使用されている。このような投写型表示装置に使用可能な投写光学系としては、例えば下記特許文献1、2に記載のような、複数枚のレンズからなる屈折光学系と、ミラーを含む反射光学系とを組み合わせたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−58754号公報
【特許文献2】特開2010−72374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投写型表示装置の分野においては開発競争が進んでおり、装置の小型化および低コスト化が望まれている。さらに近年では、スクリーン上で十分な大きさの拡大映像を得つつ、投写距離を短くできることが要求されるようになってきている。そのためには、投写光学系が搭載される装置の筐体とスクリーンとの距離の短縮化が必要となる。
【0005】
上記特許文献1、2に記載の屈折光学系は回転対称な同軸系レンズと回転非対称な自由曲面を有する複数のレンズからなり、反射光学系は回転非対称な自由曲面を有するミラーからなる。上記特許文献1、2に記載の光学系では、投写距離が変化したときのフォーカス調整は、レンズを同軸系レンズの光軸の方向に移動させるだけでなく、回転非対称な自由曲面を有するレンズを同軸系レンズの光軸と異なる方向にも移動させて行うように構成されている。しかしながら、このようなフォーカス調整方法では、光学部材を移動させるための装置構成が複雑となる上に装置の大型化を招きコストアップの要因となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、装置の筐体とスクリーンとの距離を短縮可能で、低コスト化が図られ、小型で簡素な構成でありながら、良好な投写性能を有する投写型表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の投写型表示装置は、縮小側の共役面上に画像を表示させる画像表示素子と、該画像を拡大側の共役面上に共役像として投写する投写光学系とを具備する投写型表示装置であって、投写光学系は、縮小側から順に、実質的に4つのレンズ群からなる屈折光学系と、負のパワーを持つ反射光学系とを備え、屈折光学系と反射光学系とは共通の光軸を有し、画像表示素子の画像を表示する表示面の中心が光軸に対して偏心して配置され、表示面の中心の拡大側共役位置が光軸に対して鉛直上方に位置しているとき、共役像の下端中央に結像する光束の下光線と、共役像の上端中央に結像する光束の上光線との交点が、屈折光学系の最も反射光学系に近いレンズ面の面頂点よりも縮小側に位置し、屈折光学系の4つのレンズ群のうち、縮小側から2番目および3番目のレンズ群のみを光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の投写型表示装置においては、屈折光学系は、絞りと、該絞りよりも拡大側に配置された2枚以上の非球面レンズとを有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の投写型表示装置においては、屈折光学系は、絞りと、該絞りよりも縮小側に配置された1枚以上の非球面レンズとを有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の投写型表示装置においては、屈折光学系および反射光学系を構成する全ての光学面が、回転対称面で構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の投写型表示装置においては、屈折光学系の最も縮小側のレンズ群が2面以上の接合面を含み、該レンズ群に含まれる接合レンズを構成する正レンズのd線に対するアッベ数の平均値が70以上であることが好ましい。
【0012】
なお、上記「拡大側」とは、被投写側(スクリーン側)を意味し、縮小投写する場合も、便宜的にスクリーン側を拡大側と称するものとする。一方、上記「縮小側」とは、原画像表示領域側(ライトバルブ側)を意味し、縮小投写する場合も、便宜的にライトバルブ側を縮小側と称するものとする。
【0013】
なお、上記「実質的に4つのレンズ群からなる該屈折光学系」とは、該屈折光学系が、4つのレンズ群以外に、実質的にパワーを有さないレンズやレンズ群、絞りやカバーガラス等レンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、手ぶれ補正機構等の機構部分等を持つ場合も含むものとする。
【0014】
なお、上記「レンズ群」とは、必ずしも複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0015】
なお、上記「屈折光学系の最も反射光学系に近いレンズ面」における「最も〜近い」は、光軸上における並び順で考えるものとする。
【0016】
なお、上記「回転対称面」とは、回転対称軸を中心とした回転面(一部が欠けたものを含む)で構成された面を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の投写型表示装置は、複数のレンズからなる屈折光学系と、負のパワーを持つ反射光学系とを備えた投写光学系を用いており、折り返し光路を形成できるため、良好な投写性能を実現しながら、装置の筐体とスクリーンとの距離を短縮することができる。また、本発明の投写型表示装置では、共役像に結像する2つの光線の交点と屈折光学系の最も反射光学系に近いレンズ面の面頂点との位置関係を好適に設定しているため、結像に用いられる光束と光学部材が干渉しないように構成しながら、全系のコンパクト化を図り、筐体とスクリーンとの距離を短縮することができる。
【0018】
さらに、本発明の投写型表示装置は、レンズ群の光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うように構成されているので、光軸と異なる方向に移動させなくてもフォーカス調整が可能であり、装置構成を小型で簡素なものとすることができる。さらにまた、本発明の投写型表示装置は、屈折光学系の縮小側から2番目および3番目のレンズ群のみを用いてフォーカス調整を行うインナーフォーカス方式を採っているため、フォーカス調整時の屈折光学系の全長を不変とすることができる。これにより、最も拡大側のレンズの近傍で、異なる方向に進行する複数の光束が交わるような光線密度が高い構成を採ったとしても、フォーカス調整時における光束と部材との干渉の回避が容易になり、小型化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる投写型表示装置の主要部の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例1にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図3】スポットダイヤグラムの座標を説明するための図
【図4A】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が465mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図4B】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が465mmのときの歪曲格子を示す図
【図5A】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が575mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図5B】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が575mmのときの歪曲格子を示す図
【図6A】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が680mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図6B】本発明の実施例1にかかる投写光学系の投写距離が680mmのときの歪曲格子を示す図
【図7】本発明の実施例2にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図8A】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図8B】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときの歪曲格子を示す図
【図9A】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図9B】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときの歪曲格子を示す図
【図10A】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が690mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図10B】本発明の実施例2にかかる投写光学系の投写距離が690mmのときの歪曲格子を示す図
【図11】本発明の実施例3にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図12A】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図12B】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときの歪曲格子を示す図
【図13A】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図13B】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときの歪曲格子を示す図
【図14A】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が700mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図14B】本発明の実施例3にかかる投写光学系の投写距離が700mmのときの歪曲格子を示す図
【図15】本発明の実施例4にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図16A】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図16B】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときの歪曲格子を示す図
【図17A】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図17B】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときの歪曲格子を示す図
【図18A】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が685mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図18B】本発明の実施例4にかかる投写光学系の投写距離が685mmのときの歪曲格子を示す図
【図19】本発明の実施例5にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図20A】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図20B】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときの歪曲格子を示す図
【図21A】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図21B】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときの歪曲格子を示す図
【図22A】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が685mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図22B】本発明の実施例5にかかる投写光学系の投写距離が685mmのときの歪曲格子を示す図
【図23】本発明の実施例6にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図24A】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が460mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図24B】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が460mmのときの歪曲格子を示す図
【図25A】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が580mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図25B】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が580mmのときの歪曲格子を示す図
【図26A】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が695mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図26B】本発明の実施例6にかかる投写光学系の投写距離が695mmのときの歪曲格子を示す図
【図27】本発明の実施例7にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図28A】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が440mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図28B】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が440mmのときの歪曲格子を示す図
【図29A】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が535mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図29B】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が535mmのときの歪曲格子を示す図
【図30A】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が650mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図30B】本発明の実施例7にかかる投写光学系の投写距離が650mmのときの歪曲格子を示す図
【図31】本発明の実施例8にかかる投写光学系の構成を示す断面図
【図32A】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図32B】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が450mmのときの歪曲格子を示す図
【図33A】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図33B】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が550mmのときの歪曲格子を示す図
【図34A】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が650mmのときのスポットダイヤグラムを示す図
【図34B】本発明の実施例8にかかる投写光学系の投写距離が650mmのときの歪曲格子を示す図
【図35】本発明の一実施形態にかかる投写型表示装置の概略的な構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる投写型表示装置100の主要部の構成を示す断面図である。図2は、投写型表示装置100に用いられる投写光学系10の構成を示す断面図である。図1および図2に示す構成例は、後述の実施例1の投写光学系に対応するものである。他の実施例についても基本的な構成は同様のため、ここでは図1および図2に示す例を参照しながら説明する。
【0021】
投写型表示装置100は、縮小側の共役面上に画像を表示させる画像表示素子3と、該画像を拡大側の共役面であるスクリーン5上に共役像として投写する投写光学系10とを備える。投写光学系10は、実質的に4つのレンズ群からなる屈折光学系1と、負のパワーを有する反射光学系2とを備える。
【0022】
屈折光学系1は、縮小側から拡大側へ向かって順に配置された第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4からなる。図2に示す例では、第1レンズ群G1はレンズL1〜L7の7枚のレンズからなり、第2レンズ群G2はレンズL8からなり、第3レンズ群G3はレンズL9、L10からなり、第4レンズ群G4はレンズL11、L12からなる。ただし、本発明の屈折光学系の各レンズ群を構成するレンズの枚数は必ずしも図1、図2に示す例に限定されない。
【0023】
屈折光学系1は内部に絞り8を有する。図2に示す例では絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されているが、絞り8の位置はこれに限定されない。また、絞り8は仮想絞りも含めて考えるものとする。なお、図では絞り8は概念的に図示されている。
【0024】
反射光学系2は、例えば図2に示す例のように、凸面の非球面形状をなす1枚の反射ミラー4により構成することができる。
【0025】
投写光学系を屈折光学系のみで構成したものは、投写光学系を内蔵する筐体とスクリーンとの距離を長くする必要があるが、本実施形態のように、投写光学系を屈折光学系と反射光学系を組み合わせて構成したものは、光路が折り返し光路となるため筐体とスクリーンとの距離を短くすることができる。
【0026】
また、屈折光学系のみからなる投写光学系では、焦点距離を短く、つまり広角化をしようとすると、どうしても拡大側のレンズが大きくなりすぎてしまうのに対し、屈折光学系と反射光学系を組み合わせた投写光学系では、拡大側のレンズを小さくすることが可能なため、焦点距離を短くすることができ、広角化するのに適しているという特長がある。
【0027】
本実施形態の屈折光学系1と反射光学系2とは、共通の光軸Zを有するものである。屈折光学系1と反射光学系2とを同軸に配置することにより、投写光学系10の組立精度を高めることができ、組立作業も容易となり、高性能、低コスト化に貢献することができる。
【0028】
屈折光学系1の縮小側には、カバーガラス6と、色合成プリズムおよび光偏向プリズム等を想定したガラスブロック7が配されている。図1、図2では、カバーガラス6の拡大側の面が、画像表示素子3の表示面と同一面上にあるように配置した例を示しているが、カバーガラス6と画像表示素子3の表示面の間に空気間隔があるように配置してもよい。なお、図1、図2においては、画像表示素子3と、画像表示素子3の画像を表示する表示面とを一体的に図示している。
【0029】
なお、以下では、図1に示すように、x、y、z軸からなる直交座標系を考え、紙面鉛直方向をy方向とし、紙面水平方向をz方向とし、このz方向が光軸Zと同方向になる配置としたときについて説明するものとする。
【0030】
投写型表示装置100では、画像表示素子3の表示面の中心は、光軸Zよりも鉛直下方となるように光軸Zに対して偏心して配置されている。図3に、画像表示素子3の表示面上をXY平面としたときの画像表示領域内の各位置の座標の一例を示す。ここで、X方向、Y方向は前述のx方向、y方向と同方向である。図3に示すX軸とY軸の交点が光軸Zの位置に対応する。
【0031】
図3に示す最大の矩形が画像表示素子3の表示面である。すなわち、図3に示す丸付きの数字1、5、15、11の位置を4隅とする矩形は画像表示素子3の表示面の半分の領域となる。図3の丸付きの数字の3の位置が、画像表示面の中心である。図3の丸付きの数字の1〜15の各位置のXY座標を図31の右側の表に示す。
【0032】
図3に示す丸付きの数字の1、3、5の位置から射出した光束はそれぞれ、スクリーン5上に拡大投写された共役像の下端中央に結像する光束11、共役像の中心に結像する光束12、共役像の上端中央に結像する光束13となる。図1および図2に、これらの光束11〜13を示す。
【0033】
画像表示素子3の表示面の中心の拡大側共役位置は光軸Zに対して鉛直上方に位置している。上述したような位置関係において、投写型表示装置100では、光束11の下光線11sと、光束13の上光線13uとが交差する交点14が、屈折光学系1の最も反射光学系2に近いレンズ面の面頂点よりも縮小側に位置するように構成される。なお、ここでいう「屈折光学系1の最も反射光学系2に近いレンズ面」とは、屈折光学系1が有するレンズのうち光軸Z上の並び順における最も拡大側のレンズの拡大側のレンズ面であり、図2に示す例では、レンズL12の拡大側のレンズ面となる。
【0034】
図2に示すような、屈折光学系1と、負のパワーを有する反射光学系2とからなる投写光学系10では、反射光学系2で反射された光束は屈折光学系1の最も反射光学系に近い位置にあるレンズL12の上方を通ることになる。このとき、共役像の下端中央に結像する光束11の下光線11sと、共役像の上端中央に結像する光束13の上光線13uとの交点14に注目し、その位置を上記のように好適に設定することにより、結像に用いられる光束と光学部材が干渉しないように構成しながら、屈折光学系1と反射光学系2を接近させて全系のコンパクト化を図り、筐体とスクリーンとの距離を短縮することができる。
【0035】
なお、光束11の下光線11sとは、光束11に含まれる光線のうち屈折光学系1とスクリーン5との間において最も光軸に近い光線のことを意味する。光束13の上光線13uとは、光束13に含まれる光線のうち屈折光学系1とスクリーン5との間において最も光軸から遠い光線のことを意味する。また、図2に示す例では、光束11、13の光束径は絞り8の開口径により決定されているが、光束径の決定方法は必ずしもこれに限定されず、別途設けられた遮光部材や、投写型表示装置の仕様等に基づいてもよい。
【0036】
さらに、投写光学系10は、屈折光学系1を構成する4つのレンズ群のうち、縮小側から2番目および3番目のレンズ群である第2レンズ群および第3レンズ群G3のみを光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うように構成されている。本実施形態の投写光学系10によれば、フォーカス調整の際に、レンズ群を移動させる方向は光軸方向のみであり、光軸と異なる方向に移動させなくてもよいため、装置構成を簡素なものとすることができ、装置の小型化に有利となる。
【0037】
また、フォーカス調整の際に、屈折光学系1を構成するレンズ群のうち、最も拡大側のレンズ群と最も縮小側のレンズ群は固定されているインナーフォーカス方式を採用しているため、屈折光学系の全長を変えずにフォーカス調整を行うことができる。
【0038】
本実施形態では、図2に示すように、最も拡大側のレンズの近傍で、反射光学系2への入射光束と反射光学系2からの反射光束が交わるような幾何学的配置を採っている。このような光線密度が高い構成は光束と光学部材・メカ部材が干渉しやすいが、上記のようなインナーフォーカス方式を採用することにより、光束と部材の干渉の回避が容易になり、装置の小型化を促進することができる。
【0039】
なお、屈折光学系1は、絞り8よりも拡大側に2枚以上の非球面レンズを有することが好ましい。これにより、軸外収差の補正に有利になり、非点収差や像面湾曲を良好に補正することが容易になる。
【0040】
また、屈折光学系1は、絞り8よりも縮小側に1枚以上の非球面レンズを有することが好ましい。これにより、球面収差やコマ収差を良好に補正することが容易になる。
【0041】
また、屈折光学系1および反射光学系2を構成する全ての光学面が、回転対称面で構成されていることが好ましい。これにより、回転非対称面で構成する場合に比べて製造性が向上し、低コスト化を図ることができる。また、前述のように屈折光学系1と反射光学系2とは同軸に配置されていることから、光学系の全長を短くしたり反射ミラーのサイズを小さくしたりした場合に懸念される歪曲収差等の諸収差を良好に補正することが可能となる。
【0042】
さらに、屈折光学系1の最も縮小側のレンズ群となる第1レンズ群G1は、負レンズと正レンズが接合された接合レンズを含むことが好ましく、2面以上の接合面を含むことが好ましい。また、第1レンズ群G1中の接合レンズを構成する正レンズのd線に対するアッベ数の平均値が70以上であることが好ましく、さらには、80以上であることがより好ましい。屈折光学系1の最も縮小側のレンズ群が有する接合面と接合レンズを構成する正レンズとを上記のように構成することにより、軸上色収差と倍率の色収差を良好に補正することが容易になる。
【0043】
次に、図35を参照しながら、投写型表示装置100の概略的な構成について説明する。図35に、投写光学系10と、光源10と、照明光学系30とを備えた投写型表示装置100の概略的な構成例を示す。なお、図35では、投写光学系10は、概念的に図示されている。照明光学系30は、色分解のためのダイクロイックミラー32、33と、全反射ミラー38a〜38cと、コンデンサレンズ36a〜36cと、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34とを備えている。コンデンサレンズ36a〜36cと、クロスダイクロイックプリズム34との間には、ライトバルブとしての透過型液晶パネル31a〜31cが配置されている。なお、図35では光源20とダイクロイックミラー32の間の構成は図示を省略している。
【0044】
光源20からの白色光は、ダイクロイックミラー32、33で3つの色光光束(G光、B光、R光)に分解された後、それぞれ全反射ミラー38a〜38cにより光路を偏向されてコンデンサレンズ36a〜36cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型液晶パネル31a〜31cに入射して光変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、投写光学系10に入射して、投写光学系10によりスクリーン5に投写される。
【0045】
なお、図35に示す構成では、ライトバルブとして透過型液晶パネルを用いているが、本発明の投写型表示装置に使用可能なライトバルブはこれに限定されない。本発明の投写型表示装置に使用可能なライトバルブとしては、透過型液晶パネル以外の透過型表示素子を用いることも可能であり、また、照明光学系の構成を適宜設定することにより、反射型表示素子を用いることも可能であり、その場合は例えば、反射型液晶パネルやDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス:登録商標)等を用いることができる。
【0046】
次に、本発明の投写型表示装置に用いられる投写光学系の具体的な実施例1〜8について説明する。
<実施例1>
実施例1の投写光学系の構成は図2に示したとおりである。実施例1の投写光学系の屈折光学系1は、縮小側から拡大側へ向かって順に配置された第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4の4つのレンズ群からなる。第1レンズ群G1は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、両凹形状のレンズL5および両凸形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズと、両凸形状のレンズL7とが配列されて構成されている。
【0047】
第2レンズ群G2は、両凸形状のレンズL8から構成されている。第3レンズ群G3は、縮小側から順に、両凹形状のレンズL9と、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL10とが配列されて構成されている。第4レンズ群G4は、縮小側から順に、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL11と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL12とが配列されて構成されている。絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。レンズL4、レンズL11、レンズL12は両側の面が非球面である。
【0048】
実施例1の投写光学系は、レンズ群としては第2レンズ群G2および第3レンズ群G3のみを光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うように構成されている。実施例1の投写光学系の反射光学系2は、非球面形状の1枚の反射ミラー4からなる。実施例1の投写光学系の屈折光学系1および反射光学系2を構成する全ての光学面が、回転対称面で構成されている。
【0049】
表1の上段の表に実施例1の投写光学系の基本レンズデータを示す。この表では、Siの欄には最も縮小側の構成要素の縮小側の面を1番目として拡大側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄にはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。また、Ndjの欄には最も縮小側の構成要素を1番目として拡大側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)のレンズのd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjの欄にはj番目の構成要素のd線に対するアッベ数を示している。
【0050】
この表には、カバーガラス6から反射ミラー4までの基本レンズデータを示しており、反射ミラー4のNdjの欄には「反射面」と記載している。曲率半径の符号は、面形状が縮小側に凸の場合を正、拡大側に凸の場合を負としている。
【0051】
表1のDiの欄の最下欄の可変4と記載された間隔は、反射ミラー4とスクリーンとの間隔であり、投写距離に対応するものである。投写距離に応じて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔が変化するため、表1のこれらの間隔に相当する欄にはそれぞれ可変1、可変2、可変3と記入している。表1の下段の表に、投写距離に対応する可変4の値と、そのときの可変1、可変2、可変3の値を示す。反射ミラー4により光の進行方向が変わるため可変4は負の値で示している。なお、実施例1の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ31.1mmである。
【0052】
なお、基本レンズデータの長さの単位としてここではmmを用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることも可能である。表1において、面番号に*印が付いた面は非球面であり、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示している。
【0053】
表2に実施例1の投写光学系の各非球面の非球面係数を示す。表2の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10−n」を意味し、「E+n」は「×10」を意味する。非球面係数は、下式で表される非球面式における各係数K、Am(m=3、4、5、…)の値である。なお、下記各表では、所定の桁でまるめた数値を記載している。
【数1】

ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:光軸近傍の曲率
K、Am:非球面係数(m=3、4、5、…)
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
図4Aに投写距離が465mmのときの実施例1の投写光学系によるスクリーン上でのスポットダイヤグラムを示す。図4Aの各スポットダイヤグラムの枠の横幅が5000μmに対応する。各スポットダイヤグラムの図の左側に記載された丸付きの数字は、前述したように図3に示す画像表示素子3の表示面上での位置に対応している。図3のX、Y座標値の単位はmmである。また、図4Bに投写距離が465mmのときの実施例1の投写光学系によるスクリーン上での歪曲格子(Distortion Grid)を示す。
【0057】
同様に、図5A、図5Bにそれぞれ、投写距離が575mmのときの実施例1の投写光学系によるスクリーン上でのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図6A、図6Bにそれぞれ、投写距離が680mmのときの実施例1の投写光学系によるスクリーン上でのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。図4A、図4B、図5A、図5B、図6A、図6Bはいずれも波長550nmに関するものである。
【0058】
なお、以下の実施例2〜8の説明において、実施例1のものと略同様のものについては重複説明を省略する。例えば、以下の実施例2〜8の投写光学系の構成図において、レンズの符号とレンズ群の符号を除き、実施例1のものと同一符号のものは、実施例1のものと略同一の機能および構成を有するものである。また、以下の実施例2〜8の投写光学系の表、スポットダイヤグラムにおける記号とその意味は実施例1のものと基本的に同様であり、スポットダイヤグラムと歪曲格子が波長550nmに関するものである点についても、実施例1のものと同様である。
【0059】
<実施例2>
図7に実施例2の投写光学系の構成を示す。実施例2にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0060】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および両凸形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL5および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0061】
第2レンズ群G2は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL7と、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL8および縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL9の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0062】
第3レンズ群G3は、縮小側から順に、両凹形状のレンズL10と、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL11と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL12とが配列されて構成されている。第4レンズ群G4は、近軸領域で両凹形状のレンズL13から構成されている。絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。レンズL4、レンズL12、レンズL13は両側の面が非球面である。
【0063】
表3、表4にそれぞれ、実施例2の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例2の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ26.5mmである。
【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
図8A、図8Bにそれぞれ、実施例2の投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図9A、図9Bにそれぞれ、実施例2の投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図10A、図10Bにそれぞれ、実施例2の投写光学系の投写距離が690mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0067】
<実施例3>
図11に実施例3の投写光学系の構成を示す。実施例3にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0068】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および両凸形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL5および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズと、絞り8と、両凸形状のレンズL7とが配列されて構成されている。
【0069】
第2レンズ群G2は、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL8および縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL9を縮小側からこの順に貼り合わせた接合レンズから構成されている。
【0070】
第3レンズ群G3は、縮小側から順に、両凹形状のレンズL10と、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL11と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL12とが配列されて構成されている。第4レンズ群G4は、近軸領域で両凹形状のレンズL13から構成されている。レンズL4、レンズL12、レンズL13は両側の面が非球面である。
【0071】
表5、表6にそれぞれ、実施例3の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例3の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ27.1mmである。
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
図12A、図12Bにそれぞれ、実施例3の投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図13A、図13Bにそれぞれ、実施例3の投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図14A、図14Bにそれぞれ、実施例3の投写光学系の投写距離が700mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0075】
<実施例4>
図15に実施例4の投写光学系の構成を示す。実施例4にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0076】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および両凸形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL5および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0077】
第2レンズ群G2は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL7と、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL8および縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL9の貼り合わせからなる接合レンズと、両凹形状のレンズL10と、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL11とが配列されて構成されている。
【0078】
第3レンズ群G3は、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL12から構成されている。第4レンズ群G4は、近軸領域で両凹形状のレンズL13から構成されている。絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。レンズL4、レンズL12、レンズL13は両側の面が非球面である。
【0079】
表7、表8にそれぞれ、実施例4の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例4の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ29.9mmである。
【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
図16A、図16Bにそれぞれ、実施例4の投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図17A、図17Bにそれぞれ、実施例4の投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図18A、図18Bにそれぞれ、実施例4の投写光学系の投写距離が685mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0083】
<実施例5>
図19に実施例5の投写光学系の構成を示す。実施例5にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0084】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および両凸形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL5および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0085】
第2レンズ群G2は、両凸形状のレンズL7から構成されている。第3レンズ群G3は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL8および縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL9の貼り合わせからなる接合レンズと、両凹形状のレンズL10と、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL11と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL12とが配列されて構成されている。
【0086】
第4レンズ群G4は、近軸領域で両凹形状のレンズL13から構成されている。絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。レンズL4、レンズL12、レンズL13は両側の面が非球面である。
【0087】
表9、表10にそれぞれ、実施例5の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例5の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ27.6mmである。
【0088】
【表9】

【0089】
【表10】

【0090】
図20A、図20Bにそれぞれ、実施例5の投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図21A、図21Bにそれぞれ、実施例5の投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図22A、図22Bにそれぞれ、実施例5の投写光学系の投写距離が685mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0091】
<実施例6>
図23に実施例6の投写光学系の構成を示す。実施例6にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0092】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL4と、両凹形状のレンズL5および両凸形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズと、絞り8と、両凸形状のレンズL7とが配列されて構成されている。
【0093】
第2レンズ群G2は、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL8から構成されている。第3レンズ群G3は、両凹形状のレンズL9から構成されている。第4レンズ群G4は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL10と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL11と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL12とが配列されて構成されている。レンズL4、レンズL11、レンズL12は両側の面が非球面である。
【0094】
表11、表12にそれぞれ、実施例6の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例6の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ30.04mmである。
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
図24A、図24Bにそれぞれ、実施例6の投写光学系の投写距離が460mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図25A、図25Bにそれぞれ、実施例6の投写光学系の投写距離が580mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図26A、図26Bにそれぞれ、実施例6の投写光学系の投写距離が695mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0098】
<実施例7>
図27に実施例7の投写光学系の構成を示す。実施例7にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0099】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL2および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL3の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で両凸形状のレンズL4と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL5および縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL6の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0100】
第2レンズ群G2は、両凸形状のレンズL7から構成されている。第3レンズ群G3は、両凸形状のレンズL8および両凹形状のレンズL9を縮小側からこの順に貼り合わせた接合レンズから構成されている。第4レンズ群G4は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL10および拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL11の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL12と、近軸領域で両凹形状のレンズL13とが配列されて構成されている。絞り8は第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置されている。レンズL4、レンズL12、レンズL13は両側の面が非球面である。
【0101】
表13、表14にそれぞれ、実施例7の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例7の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ26.0mmである。
【0102】
【表13】

【0103】
【表14】

【0104】
図28A、図28Bにそれぞれ、実施例7の投写光学系の投写距離が440mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図29A、図29Bにそれぞれ、実施例7の投写光学系の投写距離が535mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図30A、図30Bにそれぞれ、実施例7の投写光学系の投写距離が650mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0105】
<実施例8>
図31に実施例8の投写光学系の構成を示す。実施例8にかかる投写光学系は、実施例1にかかる投写用変倍光学系と略同様の構成とされているが、屈折光学系の各レンズ群が有するレンズの構成が以下に述べるように実施例1のものと相違している。
【0106】
第1レンズ群G1は、縮小側から順に、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL1と、近軸領域で縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL2と、縮小側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL3および両凸形状のレンズL4の貼り合わせからなる接合レンズと、近軸領域で両凸形状のレンズL5と、両凹形状のレンズL6および両凸形状のレンズL7の貼り合わせからなる接合レンズとが配列されて構成されている。
【0107】
第2レンズ群G2は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL8と、縮小側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL9とが配列されて構成されている。第3レンズ群G3は、縮小側から順に、両凸形状のレンズL10と、両凹形状のレンズL11および両凸形状のレンズL12の貼り合わせからなる接合レンズと、両凹形状のレンズL13とが配列されて構成されている。
【0108】
第4レンズ群G4は、縮小側から順に、拡大側に凸面を向けた負メニスカス形状のレンズL14と、近軸領域で拡大側に凸面を向けた正メニスカス形状のレンズL15と、近軸領域で拡大側に平面を向けた平凹形状のレンズL16とが配列されて構成されている。レンズL2、レンズL5、レンズL15、レンズL16は両側の面が非球面である。絞り8はレンズL9の縮小側の面と一致している。
【0109】
表15、表16にそれぞれ、実施例8の投写光学系の基本レンズデータ、各非球面の非球面係数を示す。実施例8の投写光学系の絞り8の開口部の直径はφ29.9mmである。
【0110】
【表15】

【0111】
【表16】

【0112】
図32A、図32Bにそれぞれ、実施例8の投写光学系の投写距離が450mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図33A、図33Bにそれぞれ、実施例8の投写光学系の投写距離が550mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示し、図34A、図34Bにそれぞれ、実施例8の投写光学系の投写距離が650mmのときのスポットダイヤグラム、歪曲格子を示す。
【0113】
上述の実施例1〜8は、各実施例のスポットダイヤグラム、歪曲格子からわかるように、諸収差が良好に補正されて、高性能な投写光学系となっている。
【0114】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の投写光学系の各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数の値は、適宜変更することが可能である。本発明の屈折光学系はレンズのみからなるものに限定されず、レンズ群が反射素子や回折光学素子を含むものであってもよい。また、本発明の投写型表示装置に用いられるライトバルブや、光束分離または光束合成に用いられる光学部材は、上記構成に限定されず、種々の態様の変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 屈折光学系
2 反射光学系
3 画像表示素子
4 反射ミラー
5 スクリーン
6 カバーガラス
7 ガラスブロック
8 絞り
10 投写光学系
11、12、13 光束
11s 下光線
13u 上光線
14 交点
20 光源
30 照明光学系
31a〜31c 透過型液晶パネル
32、33 ダイクロイックミラー
34 クロスダイクロイックプリズム
36a〜36c コンデンサレンズ
38a〜38c 全反射ミラー
100 投写型表示装置
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
L1〜L16 レンズ
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の共役面上に画像を表示させる画像表示素子と、該画像を拡大側の共役面上に共役像として投写する投写光学系とを具備する投写型表示装置であって、
前記投写光学系は、縮小側から順に、実質的に4つのレンズ群からなる屈折光学系と、負のパワーを持つ反射光学系とを備え、
前記屈折光学系と前記反射光学系とは共通の光軸を有し、
前記画像表示素子の前記画像を表示する表示面の中心が前記光軸に対して偏心して配置され、前記表示面の中心の拡大側共役位置が前記光軸に対して鉛直上方に位置しているとき、前記共役像の下端中央に結像する光束の下光線と、前記共役像の上端中央に結像する光束の上光線との交点が、前記屈折光学系の最も前記反射光学系に近いレンズ面の面頂点よりも縮小側に位置し、
前記屈折光学系の前記4つのレンズ群のうち、縮小側から2番目および3番目のレンズ群のみを光軸方向に移動させることによりフォーカス調整を行うように構成されていることを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
前記屈折光学系は、絞りと、該絞りよりも拡大側に配置された2枚以上の非球面レンズとを有することを特徴とする請求項1記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記屈折光学系は、絞りと、該絞りよりも縮小側に配置された1枚以上の非球面レンズとを有することを特徴とする請求項1または2記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記屈折光学系および前記反射光学系を構成する全ての光学面が、回転対称面で構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記屈折光学系の最も縮小側のレンズ群が2面以上の接合面を含み、該レンズ群に含まれる接合レンズを構成する正レンズのd線に対するアッベ数の平均値が70以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図11】
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【図15】
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【図19】
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【図23】
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【図27】
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【図31】
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【図35】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B】
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【公開番号】特開2013−29788(P2013−29788A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167673(P2011−167673)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】