投影型表示装置
【課題】照明投影分離と色分離合成との機能を単純で安価・小型な構成で実現した光学部品を備える投影型表示装置を提供する。
【解決手段】プリズム11,12のプリズム接合面13に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜14を有する色分離合成プリズム10を備え、偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材を経た照明光をダイクロイック膜14に第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜14により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用のDMD素子6G,6RBに導き、複数のDMD素子6G,6RBで変調されて射出される複数の色光をダイクロイック膜14に第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜14により色合成して投影レンズに向けて出射させるようにした。
【解決手段】プリズム11,12のプリズム接合面13に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜14を有する色分離合成プリズム10を備え、偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材を経た照明光をダイクロイック膜14に第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜14により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用のDMD素子6G,6RBに導き、複数のDMD素子6G,6RBで変調されて射出される複数の色光をダイクロイック膜14に第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜14により色合成して投影レンズに向けて出射させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反射型空間光変調器を用いた投影型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、投影型表示装置としては、各種方式のものがあるが、その一例として、複数の反射型空間光変調器を用いる多板型の投影型表示装置がある。
【0003】
このような投影型表示装置の一つに、特許文献1に示されるように反射型空間光変調器として反射型ライトバルブを用いた投影型表示装置がある。図10は、特許文献1に示される投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源101からの照明光を偏光ビームスプリッタ102の偏光膜102aを透過させて第1〜第3プリズム103A,103B,103Cの組合せからなる色分離合成用のプリズム103に入射させる。ここで、照明光の内、青色光Bは第1プリズム103Aの青色反射ダイクロイック膜103aで反射させることで色分離してプリズム面103bで全反射させ青色用の反射型液晶ライトバルブ104Bに導く。また、照明光の内、赤色光Rは第2,第3プリズム103B,103Cの接合面の赤色反射ダイクロイック膜103cで反射させることで色分離しプリズム面103dで全反射させて赤色用の反射型液晶ライトバルブ104Rに導く。照明光の内、緑色光Gは赤色反射ダイクロイック膜103cを透過させることで色分離してプリズム面103eで全反射させて緑色用の反射型液晶ライトバルブ104Gに導く。
【0004】
反射型液晶ライトバルブ104B,104R,104Gは、いずれも多数の画素を有し、色信号によって選択された画素部分へのP偏光の入射光をS偏光に変換して反射・射出する変調機能を有する。これら反射型液晶ライトバルブ104B,104R,104Gからの反射光は、入射光(照明光)と逆の方向に進行し、プリズム面103bでは色合成光となって偏光ビームスプリッタ102に再び入射する。ここで、色合成光の内、変調光であるS偏光は、偏光膜102aで反射されることで照明光と分離されて投影レンズ105に投影光として入射し、投影レンズ105によってスクリーン等に投影される。
【0005】
また、非特許文献1に示されるように反射型空間光変調器としてDMD素子(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式の投影型表示装置がある。図11は、非特許文献1に示される2チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源111から出射される照明光(白色光)中の赤色光Rと緑色光Gとを透過させるイエーロY領域と、赤色光Rと青色光Bとを透過させるマゼンタM領域とが光軸に対して時分割で交互に切り換えられるカラーホイール112を備える。このカラーホイール112、インテグレータロッド113およびリレー光学系114を透過した照明光は、プリズム115A,115Bからなる照明投影分離用プリズム115に入射し、エアーギャップを有するプリズム面115aで全反射されてプリズム116A,116Bからなる色分離合成プリズム116に入射する。色分離合成プリズム116に入射した照明光のうち、赤色光Rは、赤色反射ダイクロイック膜116aで反射させることで色分離され、プリズム面116bで全反射されて赤色用のDMD素子117Rに導かれる。一方、色分離合成プリズム116に入射した照明光のうち、緑色光Gまたは青色光Bは、カラーホイール112の回転に従い時分割で、赤色反射ダイクロイック膜116aを透過させて色分離され、緑/青色用のDMD素子117GBに導かれる。
【0006】
ここで、DMD素子117R,117GBは、μmサイズの無数の極小反射鏡を配列させた半導体型投影デバイスであり、色信号に基づき例えば所定の振れ角±12°の高速な振れ動作により角度制御を行うことで偏向反射された色光を投影させるよう色光の変調を行うものである。DMD素子117Rにより反射される赤色光Rは、色分離合成プリズム116のプリズム面116cに略垂直に入射し、プリズム面116bで全反射され、さらに赤色反射ダイクロイック膜116aで反射され、照明投影分離用プリズム115を経て投影レンズ118に投影される。一方、DMD素子117GBにより時分割で反射される緑色光Gまたは青色光Bは、色分離合成プリズム116のプリズム面116dに略垂直に入射し、ダイクロイック膜116aを透過して赤色光Rと色合成され、照明投影分離用プリズム115を透過して投影レンズ118に投影される。
【0007】
図12は、非特許文献1に示される3チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源121から出射される照明光(白色光)は、インテグレータロッド122およびリレー光学系123を透過し、プリズム124A,124Bからなる照明投影分離用プリズム124に入射し、エアーギャップを有するプリズム面124aで全反射されてプリズム125A,125B,125Cからなる色分離合成プリズム125に入射する。色分離合成プリズム125に入射した照明光のうち、青色光Bは、青色反射ダイクロイック膜125aで反射させることで色分離され、プリズム面125bで全反射されて青色用のDMD素子126Bに導かれる。一方、色分離合成プリズム125に入射した照明光のうち、赤色光Rは、青色反射ダイクロイック膜125aを透過後、赤色反射ダイクロイック膜125cで反射させることで色分離され、エアーギャップを有するプリズム面125dで全反射されて赤色用のDMD素子126Rに導かれる。さらに、緑色光Gは、青色反射ダイクロイック膜125a、赤色反射ダイクロイック膜125cを透過して緑色用のDMD素子126Gに導かれる。
【0008】
DMD素子126Bにより反射される青色光Bは、色分離合成プリズム125のプリズム面125eに略垂直に入射し、プリズム面125bで全反射され、さらに青色反射ダイクロイック膜125aで反射され、照明投影分離用プリズム124を経て投影レンズ127に投影される。また、DMD素子126Rにより反射される赤色光Rは、色分離合成プリズム125のプリズム面125fに略垂直に入射し、プリズム面125dで全反射され、さらに赤色反射ダイクロイック膜125cで反射され、照明投影分離用プリズム124を経て投影レンズ127に投影される。さらに、DMD素子126Gにより反射される緑色光Gは、色分離合成プリズム125のプリズム面125gに略垂直に入射し、赤色反射ダイクロイック膜125c、青色ダイクロイック膜125aを透過して、赤色光Rおよび青色光Bと色合成され、照明投影分離用プリズム124を透過して投影レンズ127に投影される。
【0009】
さらに、特許文献2に示されるように、反射型空間光変調器としてDMD素子を用いた3板型の投影型表示装置がある。図13は、特許文献2に示される投影型表示装置の概要を示す概略平面図であり、図14は、その概略側面図である。この投影型表示装置では、全反射型光分離プリズム131に入射した照明光は、全反射面131aで全反射され、クロスダイクロイックプリズム132に入射する。クロスダイクロイックプリズム132に入射した照明光は、2つのクロスダイクロイック面132a,132bにおいて赤色光R、緑色光G、青色光Bの3原色に色分離される。色分離された各色光は、互いに直交する3方向に向かい、各色光に対応させたDMD素子133R,133G,133Bに入射する。各DMD素子133R,133G,133Bは、極小反射鏡をオン/オフ制御することで各色光に対応する画像を形成し、これを偏向反射する。
【0010】
各DMD素子133R,133G,133Bで偏向反射された各色光(変調光)は、クロスダイクロイックプリズム132で再合成され、全反射型分離プリズム131を経て投影レンズ134へ向かい、スクリーン等に投影される。
【0011】
【特許文献1】特開2000−171923号公報
【特許文献2】特開2007−25287号公報
【非特許文献1】光技術情報誌「ライトエッジ」No.19/特集 映像…デジタル化時代に向けて(2000年7月発行)第3章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に示される投影型表示装置の場合、照明投影分離を行うための偏光ビームスプリッタ102と色分離合成を行うプリズム103とが別体で構成されている。加えて、偏光ビームスプリッタ102は、2個のプリズム102A,102Bからなり、色分離合成用のプリズム103は異なる種類の3個のプリズム103A〜103Cからなり、合計5個のプリズムが必要となる。3板型の反射型液晶ライトバルブに代えて、2板型の反射型ライトバルブを用いる構成にしても、色分離合成用のプリズムは異なる種類の2個のプリズムからなり、合計4個のプリズムが必要となる。よって、照明投影分離および色分離合成のための光学部品の数や種類が多く、光学系が大型化・コストアップ化する要因となっている。
【0013】
また、色分離合成用のプリズム103を構成する少なくとも2つのプリズム103A,103Bは、全反射のためにエアーギャップを介して配置されるため、エアーギャップの精度を確保したまま両者を保持するのが難しく、プリズム103の作製が複雑で製造コストがかかるものとなる。色分離合成用のプリズム103と偏光ビームスプリッタ102との間についても、全反射のためにエアーギャップが必要であり、エアーギャップの精度を確保したまま両者を保持するのが難しく、プリズム103と偏光ビームスプリッタ102の作製が複雑で製造コストがかかるものとなる。また、投影レンズ105に達するまでに光軸に対して斜めに配置されたエアーギャップを透過する光(特に、エアーギャップを往復する赤色光Rと青色光B)が存在し、その光量ロスが大きなものとなってしまう。
【0014】
これらの問題点は、非特許文献1における照明投影分離用プリズム115,124、色分離合成プリズム116,125や、特許文献2に示される全反射型光分離プリズム131、クロスダイクロイックプリズム132の場合も同様である。
【0015】
即ち、これらの従来技術によれば、照明投影分離と色分離合成とを別体構成としていることによる問題点と、エアーギャップ介在に伴う問題点とがある。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エアーギャップ介在に伴う問題点を解消して、照明投影分離と色分離合成との機能を単純で安価・小型な構成で実現した光学部品を備える投影型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる投影型表示装置は、色信号に基づき色光を変調する複数の反射型空間光変調器と、照明光の偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材と、投影レンズとを備える投影型表示装置であって、第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素のプリズム接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、前記フィルタ部材を経た照明光を前記ダイクロイック膜に前記第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の前記反射型空間光変調器に導き、前記複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光を前記ダイクロイック膜に前記第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して前記投影レンズに向けて出射させるようにしたことを特徴とする投影型表示装置。
【0018】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がそれぞれ異なる特性を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がシフトする特性を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1のプリズム要素は、前記照明光が入射する第1の面部分と第1の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第2の面部分とを有し、前記第2のプリズム要素は、第2の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第3の面部分と色合成されてスクリーンに向かう変調光を通過させる第4の面部分とを有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1のプリズム要素は、前記第1の面部分と前記第2の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であり、前記第2のプリズム要素は、前記第3の面部分と前記第4の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1および第2のプリズム要素は、それぞれ三角柱形状であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜から前記各反射型空間光変調器に至る光路および前記各反射型空間光変調器から前記ダイクロイック膜に至る光路において反射面を有しないことを特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記各反射型空間光変調器の変調面から出射してスクリーンに向かう変調光は、該反射型空間光変調器の上面に対して垂直な方向に出射することを特徴とする。
【0025】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記反射型空間光変調器として、3原色のうちの1色用の反射型空間光変調器と、3原色のうちの残りの2色を時分割で共用する反射型空間光変調器とを備える2板型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる投影型表示装置は、第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素のプリズム接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、フィルタ部材を経た照明光をダイクロイック膜に第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の反射型空間光変調器に導き、複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光をダイクロイック膜に第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して投影レンズに向けて出射させるようにしたので、単純で安価・小型な1個の接合型の色分離合成プリズムによって照明投影分離と色分離合成の機能を実現することができるという効果を奏する。このためにも、プリズム接合面に所定の特性を有するダイクロイック膜を有する接合型の1個の色分離合成プリズムを備えればよいので、照明光や投影光の光路上にエアーギャップが介在せず、よって、エアーギャップ介在に伴う光量ロス等の問題点も併せて解消できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態である投影型表示装置について図面を参照して説明する。
【0028】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態にかかる投影型表示装置を示す概略構成図である。本実施の形態の投影型表示装置1は、反射型空間光変調器としてDMD素子(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式の2板型の投影型表示装置への適用例を示す。
【0029】
本実施の形態の投影型表示装置1は、概略的には、光源2、波長選択性偏光素子3、インテグレータロッド4、リレー光学系5、色分離合成プリズム10、2つのDMD素子6G,6RB、および投影レンズ7を備える。
【0030】
光源2は、DMD素子6G,6RBを照明する照明光として白色光を発光出力するためのものである。波長選択性偏光素子3は、光源2から出射された白色光(照明光)の偏光方向を波長選択的にP偏光からS偏光に変換するためのフィルタ部材として設けられたものである。図2は、波長選択性偏光素子3の構成例を示す概略正面図である。本実施の形態で用いる波長選択性偏光素子3は、ホイール形状に形成されて中心軸周りに回転駆動されるもので、例えば、放射状に均等に4分割された領域R−CS,B−CSを交互に有する。領域R−CSは、白色光に含まれる3原色RGB中の赤色光Rの偏光方向をP偏光からS偏光に変換する領域であり、緑色光Gや青色光Bは偏光変換されずに透過する。領域B−CSは、白色光に含まれる3原色RGB中の青色光Bの偏光方向をP偏光からS偏光に変換する領域であり、緑色光Gや赤色光Rは偏光変換されずに透過する。よって、これら領域R−CS,B−CSを白色光の光軸上に位置させて波長選択性偏光素子3を回転させることにより、赤色光Rと青色光Bとの偏光状態が時分割的に交互にP偏光からS偏光に変換され、緑色光Gは偏光変換されず、投影光として常に有効になる。なお、領域R−CS,B−CSを構成する分割数は、適宜でよく、例えば均等2分割構成であってもよい。また、波長選択性偏光素子3の前段に、白色光の偏光状態をP偏光に揃える偏光変換素子を備えるようにすれば、光利用効率が向上する。
【0031】
インテグレータロッド4は、照明光を均質化させるために必要に応じて設けられるもので、フライアイレンズ等であってもよい。リレー光学系5は、インテグレータロッド4を経た照明光を、色分離合成プリズム10の所定位置に入射させるためのものである。
【0032】
また、DMD素子は、非特許文献1、特許文献2等に示されるように、μmサイズの無数の極小反射鏡を配列させた半導体型投影デバイスであり、色信号に基づき例えば所定の振れ角±12°の高速な振れ動作により角度制御(オンオフ制御)を行うことで偏向反射された色光を投影させるよう色光の変調を行うものである。本実施の形態では、3原色RGBのうちの1色である緑色光G用のDMD素子6Gと、残りの2色である赤色光Rと青色光Bとの2色分を波長選択性偏光素子3に従い時分割で共用するDMD素子6RBとを備える2板型として構成されている。
【0033】
さらに、投影レンズ7は、DMD素子6G,6RBによって変調された色光として色分離合成プリズム10から出射される投影光を図示しないスクリーンに向けて投影させるためのものである。
【0034】
ついで、本実施の形態の特徴とする色分離合成プリズム10について説明する。図3は、色分離合成プリズムの構成例を示す正面図である。本実施の形態で用いる色分離合成プリズム10は、三角形の対称断面形状を有する三角柱状の2個のプリズム(プリズム要素)11,12をプリズム接合面13で一体に接合させることで全体がキュービック形状に形成されたプリズムであり、プリズム接合面13にダイクロイック膜14を有する。なお、色分離合成プリズム10の形状は、機能的にキュービック形状であれば足り、その頂部等を一部切り欠いた形状とすることも可能である。その場合は、三角柱状のプリズム11,12の断面である三角形の頂部等が一部切り欠かれた形状となる。この三角形は、左右対称としてもよく、非対称とすることもできる。第1のプリズム要素であるプリズム11は、プリズム面10a,10bとプリズム接合面13とで三角形が定義可能な形状であり、立体的には三角柱状のものである。第2のプリズム要素であるプリズム12は、プリズム面10c,10dとプリズム接合面13とで三角形が定義可能な形状であり、立体的には三角柱状のものである。
【0035】
ここで、ダイクロイック膜14は、入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定される入射角度依存性を持たせたもので、照明光の色分離用、および投影光の色合成用として機能する。図4(a)(b)は、本実施の形態で用いるダイクロイック膜14が有する入射角度依存性を示す特性図である。図4(a)は、ダイクロイック膜14に対して入射角62°でP偏光が入射する場合のダイクロイック膜14のRGB各色波長域の透過反射特性を示している。この場合、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光はダイクロイック膜14によって反射されるのに対して、緑色G波長域のP偏光はダイクロイック膜14を透過する特性を示す。なお、S偏光はいずれの波長域であってもダイクロイック膜14によって反射される。
【0036】
一方、図4(b)は、ダイクロイック膜14に対して入射角45°でP偏光が入射する場合のダイクロイック膜14のRGB各色波長域の透過反射特性を示している。この場合、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光はダイクロイック膜14を透過するのに対して、緑色G波長域のP偏光はダイクロイック膜14によって反射される特性を示す。なお、S偏光はいずれの波長域であってもダイクロイック膜14によって反射される。
【0037】
すなわち、図4では、ダイクロイック膜14は、入射角62°と入射角45°との違いにより、各色波長域のP偏光に関して、緑色G波長域のP偏光は、透過から反射へ、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光は、反射から透過へ、透過反射特性が反転するようにシフトさせる特性を有する。
【0038】
このため、波長選択性偏光素子3を経てプリズム面10aから色分離合成プリズム10に入射する照明光は、ダイクロイック膜14に対して第1の入射角θ1=62°で入射するように光路設定されている。さらに、ダイクロイック膜14を透過した緑色光G(P偏光)は、色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのままプリズム面10cを透過して色分離合成プリズム10から出射することでDMD素子6Gに直接導かれてこのDMD素子6Gの上面に対して斜めに照明するように光路設定されている。また、ダイクロイック膜14で反射された赤色光Rおよび青色光Bも、色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのままプリズム面10bを透過して色分離合成プリズム10から出射することでDMD素子6RBに直接導かれてこのDMD素子6RBの上面に対して照明するように光路設定されている。
【0039】
また、DMD素子6Gのオンオフ制御に伴う微小ミラーの振れ動作による偏向反射に従い、DMD素子6Gによってプリズム面10cに対して照明光と異なる角度で再入射する投影光が色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのまま直接ダイクロイック膜14に向かうように光路設定されている。即ち、DMD素子の上面に対してはその斜め方向から照明光が入射するものであり、DMD素子から出射される変調光のうちスクリーン(投影レンズ7)に向かういわゆるオン光はDMD素子の上面に対して垂直に出射されるものである。この際、緑色光Gによる投影光は、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射するように設定されている。また、DMD素子6RBのオンオフ制御に伴う微小ミラーの振れ動作による偏向反射に従い、DMD素子6RBによってプリズム面10bに対して照明光と異なる角度で再入射する投影光が色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのまま直接ダイクロイック膜14に向かうように光路設定されている。この際、赤色光Rや青色光Bによる投影光は、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射するように設定されている。ここで、本実施の形態では、プリズム面10dが投影光の出射面となり、このプリズム面10dに対して投影レンズ7が所定位置に位置付けられている。
【0040】
このような構成において、色分離合成プリズム10の作用について、図5〜図7を参照して説明する。まず、光源2から出射された照明光中の赤色光R、青色光BのP偏光は波長選択性偏光素子3によって交互にS偏光に変換され、緑色光GのP偏光はP偏光のまま波長選択性偏光素子3を透過する。
【0041】
ここで、波長選択性偏光素子3を透過した緑色光G(P偏光)は、色分離合成プリズム10のプリズム面10aを透過してダイクロイック膜14に第1の入射角θ1=62°で入射する。この際、図4(a)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は緑色光G(P偏光)を透過させる特性を有する。よって、第1の入射角θ1=62°で波長選択性偏光素子3に入射した緑色光G(P偏光)は、図5(a)に示すように、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10cを経て緑色用のDMD素子6Gに直接導かれ、DMD素子6Gを照明する。
【0042】
一方、波長選択性偏光素子3を透過した赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)、または赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、色分離合成プリズム10のプリズム面10aを透過してダイクロイック膜14に第1の入射角θ1=62°で入射する。この際、図4(a)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は赤色光Rおよび青色光Bを偏光方向がP偏光であってもS偏光であっても反射させる特性を有する。よって、第1の入射角θ1=62°で波長選択性偏光素子3に入射した赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)、または赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、図5(b)に示すように、波長選択性偏光素子3で反射され、そのままプリズム面10bを経て赤色および青色用のDMD素子6RBに直接導かれ、DMD素子6RBを照明する。すなわち、照明光路上に偏光ビームスプリッタが存在しないので、共用のDMD素子6RBは、常にダイクロイック膜14で反射されそのままプリズム面10bを経た赤色光Rおよび青色光Bによって照明される。このようにして、照明光は、ダイクロイック膜14によって、緑色光Gと赤色光Rおよび青色光Bとに色分離される。
【0043】
緑色光G(P偏光)で照明されたDMD素子6Gは、緑色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(a)に示すように、緑色光G(P偏光)を偏向させて、プリズム面10cに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。この緑色光G(P偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は緑色光G(P偏光)を反射させる特性を有する。よって、第2の入射角θ2=45°で波長選択性偏光素子3に入射した緑色光G(P偏光)は、図6(a)に示すように、波長選択性偏光素子3で反射されて、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射する。
【0044】
一方、波長選択性偏光素子3のR−CS領域に照明光が当っている場合に、赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)で照明されたDMD素子6RBは、青色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(b)に示すように、赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)を偏向させて、プリズム面10bに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は青色光B(P偏光)を透過させ、赤色光R(S偏光)を反射させる特性を有する。よって、図6(b)に示すように、青色用の色信号に基づき変調された青色光B(P偏光)は、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射し、赤色光R(S偏光)は、波長選択性偏光素子3で反射されて廃棄される。
【0045】
また、波長選択性偏光素子3のB−CS領域に照明光が当っている場合に、赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)で照明されたDMD素子6RBは、赤色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(c)に示すように、赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)を偏向させて、プリズム面10bに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は赤色光R(P偏光)を透過させ、青色光R(P偏光)を反射させる特性を有する。よって、図6(c)に示すように、赤色用の色信号に基づき変調された赤色光R(P偏光)は、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射し、青色光B(S偏光)は、波長選択性偏光素子3で反射されて廃棄される。
【0046】
すなわち、図6(a)に示す緑色光G(P偏光)の投影を常に行うとともに、図6(b)(c)に示す青色光B(S偏光)と赤色光R(S偏光)の投影を時分割で交互に行うこととなる。よって、投影レンズ7に対する投影光としては、ダイクロイック膜14の機能により、緑色光Gと青色光B、または緑色光Gと赤色光Rとの色合成が時分割で交互に行われ、これらの色合成されたカラー画像がスクリーン上に表示されることとなる。
【0047】
このように本実施の形態の投影型表示装置1によれば、同一形状の2個の三角形状のプリズム11,12を接合させて全体がキュービック形状に形成された単純で安価・小型な1個の色分離合成プリズム10だけで、照明投影分離と色分離合成とを行わせることができ、照明投影分離および色分離合成のための光学系を構成する部品を減らすことができる。特に、分離された各色光が反射や全反射をせずに直接、DMD素子6G,6RBに導かれるので、各プリズム面10a〜10dが全反射条件等による制約を受けることがなく、設計の自由度を向上させることができる。また、色分離合成プリズム10の全体をキュービック形状に形成することで、ケスタ型形状とする場合よりも、一層の小型化が可能となる。また、プリズム接合面13に所定の特性を有するダイクロイック膜14を有する接合型の1個の色分離合成プリズム10を備えればよいので、照明投影分離および色分離合成のための光学系を構成する色分離合成プリズム10にエアーギャップが存在せず、エアーギャップに伴う光量低下等の問題も回避することができる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。以下、各種変形例を例示する。
【0049】
(変形例1)
図7は、変形例1の波長選択性偏光素子3Aの構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。変形例1では、ホイール形状の波長選択性偏光素子3に代えて、ドラム状の波長選択性偏光素子3Aを用いたものである。波長選択性偏光素子3Aは、その外周面上に領域R−CS,B−CSが交互に均等分割されて回転駆動されるもので、外周面の特定位置に入射する照明光に対して領域R−CS,B−CSが時分割的に偏光方向変換機能を発揮し、内部に一体に形成された円錐台形状のミラー41で所望の方向に反射させる。
【0050】
なお、波長選択性偏光素子3Aと一体的なミラー41に代えて、図8に示すように、固定配置させた固定ミラー42によって波長選択性偏光素子3Aを透過した光を所望方向に反射させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、図9に示すように、波長選択性偏光素子3Aおよびミラー41に対する入射方向を逆に設定してもよい。この際、光源2からの照明光を波長選択性偏光素子3Aとインテグレータロッド4との間付近に集光させるようにすれば、ドラム状の波長選択性偏光素子3Aおよびインテグレータロッド4における光束径を小さくすることができる。
【0052】
(変形例2)
この他、フィルタ部材としては、カラーリンク社のカラースイッチ(登録商標)を用いるようにしてもよい。また、回転式の波長選択性偏光素子3,3Aに限らず、直線状に往復移動するタイプであってもよい。
【0053】
また、反射型空間光変調器に関する2板型の構成として、本実施の形態では、赤色光R用と青色光B用とで時分割で共用するようにしたが、緑色光G用と赤色光R用とで時分割で共用し、あるいは、緑色光G用と青色光B用とで時分割で共用するようにしてもよい。その場合は、当然に本実施例の図4で説明した特性とは異なる特性が必要となる。波長選択性偏光素子3,3A(フィルタ部材)の構成も、このような構成に対応させて、偏光方向を変換させる色光を変更すればよい。また、本実施の形態では、ダイクロイック膜14に対する第1の入射角θ1=62°とし、第2の入射角θ2=45°としたが、これらを入れ替えて、第1の入射角θ1=45°とし、第2の入射角θ2=62°とし各色光に対する色分離特性、色合成特性を変更させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態にかかる投影型表示装置を示す概略構成図である。
【図2】波長選択性偏光素子の構成例を示す概略正面図である。
【図3】色分離合成プリズムの構成例を示す正面図である。
【図4】ダイクロイック膜の入射角依存特性を示す特性図である。
【図5】色分離合成プリズムの照明光に対する作用を示す正面図である。
【図6】色分離合成プリズムの投射光に対する作用を示す正面図である。
【図7】変形例1の波長選択性偏光素子の構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。
【図8】変形例1の波長選択性偏光素子の別の構成例を示す断面図である。
【図9】変形例1の波長選択性偏光素子のさらに別の構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。
【図10】特許文献1に示される投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図11】非特許文献1に示される2チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図12】非特許文献1に示される3チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図13】特許文献2に示される投影型表示装置の概要を示す概略平面図である。
【図14】図13の概略側面図である。
【符号の説明】
【0055】
3,3A 波長選択性偏光素子
6G,6RB DMD素子
7 投影レンズ
10 色分離合成プリズム
11,12 プリズム
13 プリズム接合面
14 ダイクロイック膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の反射型空間光変調器を用いた投影型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、投影型表示装置としては、各種方式のものがあるが、その一例として、複数の反射型空間光変調器を用いる多板型の投影型表示装置がある。
【0003】
このような投影型表示装置の一つに、特許文献1に示されるように反射型空間光変調器として反射型ライトバルブを用いた投影型表示装置がある。図10は、特許文献1に示される投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源101からの照明光を偏光ビームスプリッタ102の偏光膜102aを透過させて第1〜第3プリズム103A,103B,103Cの組合せからなる色分離合成用のプリズム103に入射させる。ここで、照明光の内、青色光Bは第1プリズム103Aの青色反射ダイクロイック膜103aで反射させることで色分離してプリズム面103bで全反射させ青色用の反射型液晶ライトバルブ104Bに導く。また、照明光の内、赤色光Rは第2,第3プリズム103B,103Cの接合面の赤色反射ダイクロイック膜103cで反射させることで色分離しプリズム面103dで全反射させて赤色用の反射型液晶ライトバルブ104Rに導く。照明光の内、緑色光Gは赤色反射ダイクロイック膜103cを透過させることで色分離してプリズム面103eで全反射させて緑色用の反射型液晶ライトバルブ104Gに導く。
【0004】
反射型液晶ライトバルブ104B,104R,104Gは、いずれも多数の画素を有し、色信号によって選択された画素部分へのP偏光の入射光をS偏光に変換して反射・射出する変調機能を有する。これら反射型液晶ライトバルブ104B,104R,104Gからの反射光は、入射光(照明光)と逆の方向に進行し、プリズム面103bでは色合成光となって偏光ビームスプリッタ102に再び入射する。ここで、色合成光の内、変調光であるS偏光は、偏光膜102aで反射されることで照明光と分離されて投影レンズ105に投影光として入射し、投影レンズ105によってスクリーン等に投影される。
【0005】
また、非特許文献1に示されるように反射型空間光変調器としてDMD素子(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式の投影型表示装置がある。図11は、非特許文献1に示される2チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源111から出射される照明光(白色光)中の赤色光Rと緑色光Gとを透過させるイエーロY領域と、赤色光Rと青色光Bとを透過させるマゼンタM領域とが光軸に対して時分割で交互に切り換えられるカラーホイール112を備える。このカラーホイール112、インテグレータロッド113およびリレー光学系114を透過した照明光は、プリズム115A,115Bからなる照明投影分離用プリズム115に入射し、エアーギャップを有するプリズム面115aで全反射されてプリズム116A,116Bからなる色分離合成プリズム116に入射する。色分離合成プリズム116に入射した照明光のうち、赤色光Rは、赤色反射ダイクロイック膜116aで反射させることで色分離され、プリズム面116bで全反射されて赤色用のDMD素子117Rに導かれる。一方、色分離合成プリズム116に入射した照明光のうち、緑色光Gまたは青色光Bは、カラーホイール112の回転に従い時分割で、赤色反射ダイクロイック膜116aを透過させて色分離され、緑/青色用のDMD素子117GBに導かれる。
【0006】
ここで、DMD素子117R,117GBは、μmサイズの無数の極小反射鏡を配列させた半導体型投影デバイスであり、色信号に基づき例えば所定の振れ角±12°の高速な振れ動作により角度制御を行うことで偏向反射された色光を投影させるよう色光の変調を行うものである。DMD素子117Rにより反射される赤色光Rは、色分離合成プリズム116のプリズム面116cに略垂直に入射し、プリズム面116bで全反射され、さらに赤色反射ダイクロイック膜116aで反射され、照明投影分離用プリズム115を経て投影レンズ118に投影される。一方、DMD素子117GBにより時分割で反射される緑色光Gまたは青色光Bは、色分離合成プリズム116のプリズム面116dに略垂直に入射し、ダイクロイック膜116aを透過して赤色光Rと色合成され、照明投影分離用プリズム115を透過して投影レンズ118に投影される。
【0007】
図12は、非特許文献1に示される3チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。この投影型表示装置では、まず、光源121から出射される照明光(白色光)は、インテグレータロッド122およびリレー光学系123を透過し、プリズム124A,124Bからなる照明投影分離用プリズム124に入射し、エアーギャップを有するプリズム面124aで全反射されてプリズム125A,125B,125Cからなる色分離合成プリズム125に入射する。色分離合成プリズム125に入射した照明光のうち、青色光Bは、青色反射ダイクロイック膜125aで反射させることで色分離され、プリズム面125bで全反射されて青色用のDMD素子126Bに導かれる。一方、色分離合成プリズム125に入射した照明光のうち、赤色光Rは、青色反射ダイクロイック膜125aを透過後、赤色反射ダイクロイック膜125cで反射させることで色分離され、エアーギャップを有するプリズム面125dで全反射されて赤色用のDMD素子126Rに導かれる。さらに、緑色光Gは、青色反射ダイクロイック膜125a、赤色反射ダイクロイック膜125cを透過して緑色用のDMD素子126Gに導かれる。
【0008】
DMD素子126Bにより反射される青色光Bは、色分離合成プリズム125のプリズム面125eに略垂直に入射し、プリズム面125bで全反射され、さらに青色反射ダイクロイック膜125aで反射され、照明投影分離用プリズム124を経て投影レンズ127に投影される。また、DMD素子126Rにより反射される赤色光Rは、色分離合成プリズム125のプリズム面125fに略垂直に入射し、プリズム面125dで全反射され、さらに赤色反射ダイクロイック膜125cで反射され、照明投影分離用プリズム124を経て投影レンズ127に投影される。さらに、DMD素子126Gにより反射される緑色光Gは、色分離合成プリズム125のプリズム面125gに略垂直に入射し、赤色反射ダイクロイック膜125c、青色ダイクロイック膜125aを透過して、赤色光Rおよび青色光Bと色合成され、照明投影分離用プリズム124を透過して投影レンズ127に投影される。
【0009】
さらに、特許文献2に示されるように、反射型空間光変調器としてDMD素子を用いた3板型の投影型表示装置がある。図13は、特許文献2に示される投影型表示装置の概要を示す概略平面図であり、図14は、その概略側面図である。この投影型表示装置では、全反射型光分離プリズム131に入射した照明光は、全反射面131aで全反射され、クロスダイクロイックプリズム132に入射する。クロスダイクロイックプリズム132に入射した照明光は、2つのクロスダイクロイック面132a,132bにおいて赤色光R、緑色光G、青色光Bの3原色に色分離される。色分離された各色光は、互いに直交する3方向に向かい、各色光に対応させたDMD素子133R,133G,133Bに入射する。各DMD素子133R,133G,133Bは、極小反射鏡をオン/オフ制御することで各色光に対応する画像を形成し、これを偏向反射する。
【0010】
各DMD素子133R,133G,133Bで偏向反射された各色光(変調光)は、クロスダイクロイックプリズム132で再合成され、全反射型分離プリズム131を経て投影レンズ134へ向かい、スクリーン等に投影される。
【0011】
【特許文献1】特開2000−171923号公報
【特許文献2】特開2007−25287号公報
【非特許文献1】光技術情報誌「ライトエッジ」No.19/特集 映像…デジタル化時代に向けて(2000年7月発行)第3章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に示される投影型表示装置の場合、照明投影分離を行うための偏光ビームスプリッタ102と色分離合成を行うプリズム103とが別体で構成されている。加えて、偏光ビームスプリッタ102は、2個のプリズム102A,102Bからなり、色分離合成用のプリズム103は異なる種類の3個のプリズム103A〜103Cからなり、合計5個のプリズムが必要となる。3板型の反射型液晶ライトバルブに代えて、2板型の反射型ライトバルブを用いる構成にしても、色分離合成用のプリズムは異なる種類の2個のプリズムからなり、合計4個のプリズムが必要となる。よって、照明投影分離および色分離合成のための光学部品の数や種類が多く、光学系が大型化・コストアップ化する要因となっている。
【0013】
また、色分離合成用のプリズム103を構成する少なくとも2つのプリズム103A,103Bは、全反射のためにエアーギャップを介して配置されるため、エアーギャップの精度を確保したまま両者を保持するのが難しく、プリズム103の作製が複雑で製造コストがかかるものとなる。色分離合成用のプリズム103と偏光ビームスプリッタ102との間についても、全反射のためにエアーギャップが必要であり、エアーギャップの精度を確保したまま両者を保持するのが難しく、プリズム103と偏光ビームスプリッタ102の作製が複雑で製造コストがかかるものとなる。また、投影レンズ105に達するまでに光軸に対して斜めに配置されたエアーギャップを透過する光(特に、エアーギャップを往復する赤色光Rと青色光B)が存在し、その光量ロスが大きなものとなってしまう。
【0014】
これらの問題点は、非特許文献1における照明投影分離用プリズム115,124、色分離合成プリズム116,125や、特許文献2に示される全反射型光分離プリズム131、クロスダイクロイックプリズム132の場合も同様である。
【0015】
即ち、これらの従来技術によれば、照明投影分離と色分離合成とを別体構成としていることによる問題点と、エアーギャップ介在に伴う問題点とがある。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エアーギャップ介在に伴う問題点を解消して、照明投影分離と色分離合成との機能を単純で安価・小型な構成で実現した光学部品を備える投影型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる投影型表示装置は、色信号に基づき色光を変調する複数の反射型空間光変調器と、照明光の偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材と、投影レンズとを備える投影型表示装置であって、第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素のプリズム接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、前記フィルタ部材を経た照明光を前記ダイクロイック膜に前記第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の前記反射型空間光変調器に導き、前記複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光を前記ダイクロイック膜に前記第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して前記投影レンズに向けて出射させるようにしたことを特徴とする投影型表示装置。
【0018】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がそれぞれ異なる特性を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がシフトする特性を有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1のプリズム要素は、前記照明光が入射する第1の面部分と第1の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第2の面部分とを有し、前記第2のプリズム要素は、第2の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第3の面部分と色合成されてスクリーンに向かう変調光を通過させる第4の面部分とを有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1のプリズム要素は、前記第1の面部分と前記第2の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であり、前記第2のプリズム要素は、前記第3の面部分と前記第4の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記第1および第2のプリズム要素は、それぞれ三角柱形状であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記ダイクロイック膜から前記各反射型空間光変調器に至る光路および前記各反射型空間光変調器から前記ダイクロイック膜に至る光路において反射面を有しないことを特徴とする。
【0024】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記各反射型空間光変調器の変調面から出射してスクリーンに向かう変調光は、該反射型空間光変調器の上面に対して垂直な方向に出射することを特徴とする。
【0025】
また、本発明にかかる投影型表示装置は、上記発明において、前記反射型空間光変調器として、3原色のうちの1色用の反射型空間光変調器と、3原色のうちの残りの2色を時分割で共用する反射型空間光変調器とを備える2板型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる投影型表示装置は、第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素のプリズム接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、フィルタ部材を経た照明光をダイクロイック膜に第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の反射型空間光変調器に導き、複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光をダイクロイック膜に第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して投影レンズに向けて出射させるようにしたので、単純で安価・小型な1個の接合型の色分離合成プリズムによって照明投影分離と色分離合成の機能を実現することができるという効果を奏する。このためにも、プリズム接合面に所定の特性を有するダイクロイック膜を有する接合型の1個の色分離合成プリズムを備えればよいので、照明光や投影光の光路上にエアーギャップが介在せず、よって、エアーギャップ介在に伴う光量ロス等の問題点も併せて解消できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態である投影型表示装置について図面を参照して説明する。
【0028】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態にかかる投影型表示装置を示す概略構成図である。本実施の形態の投影型表示装置1は、反射型空間光変調器としてDMD素子(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing)方式の2板型の投影型表示装置への適用例を示す。
【0029】
本実施の形態の投影型表示装置1は、概略的には、光源2、波長選択性偏光素子3、インテグレータロッド4、リレー光学系5、色分離合成プリズム10、2つのDMD素子6G,6RB、および投影レンズ7を備える。
【0030】
光源2は、DMD素子6G,6RBを照明する照明光として白色光を発光出力するためのものである。波長選択性偏光素子3は、光源2から出射された白色光(照明光)の偏光方向を波長選択的にP偏光からS偏光に変換するためのフィルタ部材として設けられたものである。図2は、波長選択性偏光素子3の構成例を示す概略正面図である。本実施の形態で用いる波長選択性偏光素子3は、ホイール形状に形成されて中心軸周りに回転駆動されるもので、例えば、放射状に均等に4分割された領域R−CS,B−CSを交互に有する。領域R−CSは、白色光に含まれる3原色RGB中の赤色光Rの偏光方向をP偏光からS偏光に変換する領域であり、緑色光Gや青色光Bは偏光変換されずに透過する。領域B−CSは、白色光に含まれる3原色RGB中の青色光Bの偏光方向をP偏光からS偏光に変換する領域であり、緑色光Gや赤色光Rは偏光変換されずに透過する。よって、これら領域R−CS,B−CSを白色光の光軸上に位置させて波長選択性偏光素子3を回転させることにより、赤色光Rと青色光Bとの偏光状態が時分割的に交互にP偏光からS偏光に変換され、緑色光Gは偏光変換されず、投影光として常に有効になる。なお、領域R−CS,B−CSを構成する分割数は、適宜でよく、例えば均等2分割構成であってもよい。また、波長選択性偏光素子3の前段に、白色光の偏光状態をP偏光に揃える偏光変換素子を備えるようにすれば、光利用効率が向上する。
【0031】
インテグレータロッド4は、照明光を均質化させるために必要に応じて設けられるもので、フライアイレンズ等であってもよい。リレー光学系5は、インテグレータロッド4を経た照明光を、色分離合成プリズム10の所定位置に入射させるためのものである。
【0032】
また、DMD素子は、非特許文献1、特許文献2等に示されるように、μmサイズの無数の極小反射鏡を配列させた半導体型投影デバイスであり、色信号に基づき例えば所定の振れ角±12°の高速な振れ動作により角度制御(オンオフ制御)を行うことで偏向反射された色光を投影させるよう色光の変調を行うものである。本実施の形態では、3原色RGBのうちの1色である緑色光G用のDMD素子6Gと、残りの2色である赤色光Rと青色光Bとの2色分を波長選択性偏光素子3に従い時分割で共用するDMD素子6RBとを備える2板型として構成されている。
【0033】
さらに、投影レンズ7は、DMD素子6G,6RBによって変調された色光として色分離合成プリズム10から出射される投影光を図示しないスクリーンに向けて投影させるためのものである。
【0034】
ついで、本実施の形態の特徴とする色分離合成プリズム10について説明する。図3は、色分離合成プリズムの構成例を示す正面図である。本実施の形態で用いる色分離合成プリズム10は、三角形の対称断面形状を有する三角柱状の2個のプリズム(プリズム要素)11,12をプリズム接合面13で一体に接合させることで全体がキュービック形状に形成されたプリズムであり、プリズム接合面13にダイクロイック膜14を有する。なお、色分離合成プリズム10の形状は、機能的にキュービック形状であれば足り、その頂部等を一部切り欠いた形状とすることも可能である。その場合は、三角柱状のプリズム11,12の断面である三角形の頂部等が一部切り欠かれた形状となる。この三角形は、左右対称としてもよく、非対称とすることもできる。第1のプリズム要素であるプリズム11は、プリズム面10a,10bとプリズム接合面13とで三角形が定義可能な形状であり、立体的には三角柱状のものである。第2のプリズム要素であるプリズム12は、プリズム面10c,10dとプリズム接合面13とで三角形が定義可能な形状であり、立体的には三角柱状のものである。
【0035】
ここで、ダイクロイック膜14は、入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定される入射角度依存性を持たせたもので、照明光の色分離用、および投影光の色合成用として機能する。図4(a)(b)は、本実施の形態で用いるダイクロイック膜14が有する入射角度依存性を示す特性図である。図4(a)は、ダイクロイック膜14に対して入射角62°でP偏光が入射する場合のダイクロイック膜14のRGB各色波長域の透過反射特性を示している。この場合、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光はダイクロイック膜14によって反射されるのに対して、緑色G波長域のP偏光はダイクロイック膜14を透過する特性を示す。なお、S偏光はいずれの波長域であってもダイクロイック膜14によって反射される。
【0036】
一方、図4(b)は、ダイクロイック膜14に対して入射角45°でP偏光が入射する場合のダイクロイック膜14のRGB各色波長域の透過反射特性を示している。この場合、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光はダイクロイック膜14を透過するのに対して、緑色G波長域のP偏光はダイクロイック膜14によって反射される特性を示す。なお、S偏光はいずれの波長域であってもダイクロイック膜14によって反射される。
【0037】
すなわち、図4では、ダイクロイック膜14は、入射角62°と入射角45°との違いにより、各色波長域のP偏光に関して、緑色G波長域のP偏光は、透過から反射へ、青色B波長域および赤色R波長域のP偏光は、反射から透過へ、透過反射特性が反転するようにシフトさせる特性を有する。
【0038】
このため、波長選択性偏光素子3を経てプリズム面10aから色分離合成プリズム10に入射する照明光は、ダイクロイック膜14に対して第1の入射角θ1=62°で入射するように光路設定されている。さらに、ダイクロイック膜14を透過した緑色光G(P偏光)は、色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのままプリズム面10cを透過して色分離合成プリズム10から出射することでDMD素子6Gに直接導かれてこのDMD素子6Gの上面に対して斜めに照明するように光路設定されている。また、ダイクロイック膜14で反射された赤色光Rおよび青色光Bも、色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのままプリズム面10bを透過して色分離合成プリズム10から出射することでDMD素子6RBに直接導かれてこのDMD素子6RBの上面に対して照明するように光路設定されている。
【0039】
また、DMD素子6Gのオンオフ制御に伴う微小ミラーの振れ動作による偏向反射に従い、DMD素子6Gによってプリズム面10cに対して照明光と異なる角度で再入射する投影光が色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのまま直接ダイクロイック膜14に向かうように光路設定されている。即ち、DMD素子の上面に対してはその斜め方向から照明光が入射するものであり、DMD素子から出射される変調光のうちスクリーン(投影レンズ7)に向かういわゆるオン光はDMD素子の上面に対して垂直に出射されるものである。この際、緑色光Gによる投影光は、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射するように設定されている。また、DMD素子6RBのオンオフ制御に伴う微小ミラーの振れ動作による偏向反射に従い、DMD素子6RBによってプリズム面10bに対して照明光と異なる角度で再入射する投影光が色分離合成プリズム10内で反射や全反射されることなく、そのまま直接ダイクロイック膜14に向かうように光路設定されている。この際、赤色光Rや青色光Bによる投影光は、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射するように設定されている。ここで、本実施の形態では、プリズム面10dが投影光の出射面となり、このプリズム面10dに対して投影レンズ7が所定位置に位置付けられている。
【0040】
このような構成において、色分離合成プリズム10の作用について、図5〜図7を参照して説明する。まず、光源2から出射された照明光中の赤色光R、青色光BのP偏光は波長選択性偏光素子3によって交互にS偏光に変換され、緑色光GのP偏光はP偏光のまま波長選択性偏光素子3を透過する。
【0041】
ここで、波長選択性偏光素子3を透過した緑色光G(P偏光)は、色分離合成プリズム10のプリズム面10aを透過してダイクロイック膜14に第1の入射角θ1=62°で入射する。この際、図4(a)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は緑色光G(P偏光)を透過させる特性を有する。よって、第1の入射角θ1=62°で波長選択性偏光素子3に入射した緑色光G(P偏光)は、図5(a)に示すように、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10cを経て緑色用のDMD素子6Gに直接導かれ、DMD素子6Gを照明する。
【0042】
一方、波長選択性偏光素子3を透過した赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)、または赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、色分離合成プリズム10のプリズム面10aを透過してダイクロイック膜14に第1の入射角θ1=62°で入射する。この際、図4(a)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は赤色光Rおよび青色光Bを偏光方向がP偏光であってもS偏光であっても反射させる特性を有する。よって、第1の入射角θ1=62°で波長選択性偏光素子3に入射した赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)、または赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、図5(b)に示すように、波長選択性偏光素子3で反射され、そのままプリズム面10bを経て赤色および青色用のDMD素子6RBに直接導かれ、DMD素子6RBを照明する。すなわち、照明光路上に偏光ビームスプリッタが存在しないので、共用のDMD素子6RBは、常にダイクロイック膜14で反射されそのままプリズム面10bを経た赤色光Rおよび青色光Bによって照明される。このようにして、照明光は、ダイクロイック膜14によって、緑色光Gと赤色光Rおよび青色光Bとに色分離される。
【0043】
緑色光G(P偏光)で照明されたDMD素子6Gは、緑色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(a)に示すように、緑色光G(P偏光)を偏向させて、プリズム面10cに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。この緑色光G(P偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は緑色光G(P偏光)を反射させる特性を有する。よって、第2の入射角θ2=45°で波長選択性偏光素子3に入射した緑色光G(P偏光)は、図6(a)に示すように、波長選択性偏光素子3で反射されて、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射する。
【0044】
一方、波長選択性偏光素子3のR−CS領域に照明光が当っている場合に、赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)で照明されたDMD素子6RBは、青色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(b)に示すように、赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)を偏向させて、プリズム面10bに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。赤色光R(S偏光)および青色光B(P偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は青色光B(P偏光)を透過させ、赤色光R(S偏光)を反射させる特性を有する。よって、図6(b)に示すように、青色用の色信号に基づき変調された青色光B(P偏光)は、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射し、赤色光R(S偏光)は、波長選択性偏光素子3で反射されて廃棄される。
【0045】
また、波長選択性偏光素子3のB−CS領域に照明光が当っている場合に、赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)で照明されたDMD素子6RBは、赤色用の色信号に基づき変調動作を行い、図6(c)に示すように、赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)を偏向させて、プリズム面10bに対して照明光の場合と異なる角度で再入射させる。赤色光R(P偏光)および青色光B(S偏光)は、そのまま直接ダイクロイック膜14に導かれるが、ダイクロイック膜14に対して第2の入射角θ2=45°で入射する。この際、図4(b)に示す特性によれば、波長選択性偏光素子3は赤色光R(P偏光)を透過させ、青色光R(P偏光)を反射させる特性を有する。よって、図6(c)に示すように、赤色用の色信号に基づき変調された赤色光R(P偏光)は、波長選択性偏光素子3を透過して、そのままプリズム面10dから投影光として投影レンズ7に向けて出射し、青色光B(S偏光)は、波長選択性偏光素子3で反射されて廃棄される。
【0046】
すなわち、図6(a)に示す緑色光G(P偏光)の投影を常に行うとともに、図6(b)(c)に示す青色光B(S偏光)と赤色光R(S偏光)の投影を時分割で交互に行うこととなる。よって、投影レンズ7に対する投影光としては、ダイクロイック膜14の機能により、緑色光Gと青色光B、または緑色光Gと赤色光Rとの色合成が時分割で交互に行われ、これらの色合成されたカラー画像がスクリーン上に表示されることとなる。
【0047】
このように本実施の形態の投影型表示装置1によれば、同一形状の2個の三角形状のプリズム11,12を接合させて全体がキュービック形状に形成された単純で安価・小型な1個の色分離合成プリズム10だけで、照明投影分離と色分離合成とを行わせることができ、照明投影分離および色分離合成のための光学系を構成する部品を減らすことができる。特に、分離された各色光が反射や全反射をせずに直接、DMD素子6G,6RBに導かれるので、各プリズム面10a〜10dが全反射条件等による制約を受けることがなく、設計の自由度を向上させることができる。また、色分離合成プリズム10の全体をキュービック形状に形成することで、ケスタ型形状とする場合よりも、一層の小型化が可能となる。また、プリズム接合面13に所定の特性を有するダイクロイック膜14を有する接合型の1個の色分離合成プリズム10を備えればよいので、照明投影分離および色分離合成のための光学系を構成する色分離合成プリズム10にエアーギャップが存在せず、エアーギャップに伴う光量低下等の問題も回避することができる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。以下、各種変形例を例示する。
【0049】
(変形例1)
図7は、変形例1の波長選択性偏光素子3Aの構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。変形例1では、ホイール形状の波長選択性偏光素子3に代えて、ドラム状の波長選択性偏光素子3Aを用いたものである。波長選択性偏光素子3Aは、その外周面上に領域R−CS,B−CSが交互に均等分割されて回転駆動されるもので、外周面の特定位置に入射する照明光に対して領域R−CS,B−CSが時分割的に偏光方向変換機能を発揮し、内部に一体に形成された円錐台形状のミラー41で所望の方向に反射させる。
【0050】
なお、波長選択性偏光素子3Aと一体的なミラー41に代えて、図8に示すように、固定配置させた固定ミラー42によって波長選択性偏光素子3Aを透過した光を所望方向に反射させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、図9に示すように、波長選択性偏光素子3Aおよびミラー41に対する入射方向を逆に設定してもよい。この際、光源2からの照明光を波長選択性偏光素子3Aとインテグレータロッド4との間付近に集光させるようにすれば、ドラム状の波長選択性偏光素子3Aおよびインテグレータロッド4における光束径を小さくすることができる。
【0052】
(変形例2)
この他、フィルタ部材としては、カラーリンク社のカラースイッチ(登録商標)を用いるようにしてもよい。また、回転式の波長選択性偏光素子3,3Aに限らず、直線状に往復移動するタイプであってもよい。
【0053】
また、反射型空間光変調器に関する2板型の構成として、本実施の形態では、赤色光R用と青色光B用とで時分割で共用するようにしたが、緑色光G用と赤色光R用とで時分割で共用し、あるいは、緑色光G用と青色光B用とで時分割で共用するようにしてもよい。その場合は、当然に本実施例の図4で説明した特性とは異なる特性が必要となる。波長選択性偏光素子3,3A(フィルタ部材)の構成も、このような構成に対応させて、偏光方向を変換させる色光を変更すればよい。また、本実施の形態では、ダイクロイック膜14に対する第1の入射角θ1=62°とし、第2の入射角θ2=45°としたが、これらを入れ替えて、第1の入射角θ1=45°とし、第2の入射角θ2=62°とし各色光に対する色分離特性、色合成特性を変更させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態にかかる投影型表示装置を示す概略構成図である。
【図2】波長選択性偏光素子の構成例を示す概略正面図である。
【図3】色分離合成プリズムの構成例を示す正面図である。
【図4】ダイクロイック膜の入射角依存特性を示す特性図である。
【図5】色分離合成プリズムの照明光に対する作用を示す正面図である。
【図6】色分離合成プリズムの投射光に対する作用を示す正面図である。
【図7】変形例1の波長選択性偏光素子の構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。
【図8】変形例1の波長選択性偏光素子の別の構成例を示す断面図である。
【図9】変形例1の波長選択性偏光素子のさらに別の構成例としてXY平面図、YZ平面図およびその断面図を併せて示す図である。
【図10】特許文献1に示される投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図11】非特許文献1に示される2チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図12】非特許文献1に示される3チップ方式の投影型表示装置の概要を示す概略構成図である。
【図13】特許文献2に示される投影型表示装置の概要を示す概略平面図である。
【図14】図13の概略側面図である。
【符号の説明】
【0055】
3,3A 波長選択性偏光素子
6G,6RB DMD素子
7 投影レンズ
10 色分離合成プリズム
11,12 プリズム
13 プリズム接合面
14 ダイクロイック膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色信号に基づき色光を変調する複数の反射型空間光変調器と、照明光の偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材と、投影レンズとを備える投影型表示装置であって、
第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素の接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、前記フィルタ部材を経た照明光を前記ダイクロイック膜に前記第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の前記反射型空間光変調器に導き、前記複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光を前記ダイクロイック膜に前記第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して前記投影レンズに向けて出射させるようにしたことを特徴とする投影型表示装置。
【請求項2】
前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がそれぞれ異なる特性を有することを特徴とする請求項1に記載の投影型表示装置。
【請求項3】
前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がシフトする特性を有することを特徴とする請求項2に記載の投影型表示装置。
【請求項4】
前記第1のプリズム要素は、前記照明光が入射する第1の面部分と第1の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの第1の反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第2の面部分とを有し、
前記第2のプリズム要素は、第2の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの第2の反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第3の面部分と色合成されてスクリーンに向かう変調光を通過させる第4の面部分とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項5】
前記第1のプリズム要素は、前記第1の面部分と前記第2の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であり、前記第2のプリズム要素は、前記第3の面部分と前記第4の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であることを特徴とする請求項4に記載の投影型表示装置。
【請求項6】
前記第1および第2のプリズム要素は、それぞれ三角柱形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項7】
前記ダイクロイック膜から前記各反射型空間光変調器に至る光路および前記各反射型空間光変調器から前記ダイクロイック膜に至る光路において反射面を有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項8】
前記各反射型空間光変調器の変調面から出射してスクリーンに向かう変調光は、該反射型空間光変調器の上面に対して垂直な方向に出射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項9】
前記反射型空間光変調器として、3原色のうちの1色用の反射型空間光変調器と、3原色のうちの残りの2色を時分割で共用する反射型空間光変調器とを備える2板型であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項1】
色信号に基づき色光を変調する複数の反射型空間光変調器と、照明光の偏光方向を波長選択的に変換するフィルタ部材と、投影レンズとを備える投影型表示装置であって、
第1と第2のプリズム要素からなりこの第1と第2のプリズム要素の接合面に第1の入射角と第2の入射角との入射角の違いに依存して各色波長域の偏光光の透過反射特性が決定されるダイクロイック膜を有する色分離合成プリズムを備え、前記フィルタ部材を経た照明光を前記ダイクロイック膜に前記第1の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により複数の色光に分離し、分離された各色光を対応する色光用の前記反射型空間光変調器に導き、前記複数の反射型空間光変調器で変調されて射出される複数の色光を前記ダイクロイック膜に前記第2の入射角で入射させて該ダイクロイック膜により色合成して前記投影レンズに向けて出射させるようにしたことを特徴とする投影型表示装置。
【請求項2】
前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がそれぞれ異なる特性を有することを特徴とする請求項1に記載の投影型表示装置。
【請求項3】
前記ダイクロイック膜は、入射する角度に対応して透過反射する波長領域がシフトする特性を有することを特徴とする請求項2に記載の投影型表示装置。
【請求項4】
前記第1のプリズム要素は、前記照明光が入射する第1の面部分と第1の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの第1の反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第2の面部分とを有し、
前記第2のプリズム要素は、第2の前記反射型空間光変調器への照明光の出射とこの第2の反射型空間光変調器からの変調光の入射の両方の光を通過させる第3の面部分と色合成されてスクリーンに向かう変調光を通過させる第4の面部分とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項5】
前記第1のプリズム要素は、前記第1の面部分と前記第2の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であり、前記第2のプリズム要素は、前記第3の面部分と前記第4の面部分と前記接合面とで三角形が定義可能な形状であることを特徴とする請求項4に記載の投影型表示装置。
【請求項6】
前記第1および第2のプリズム要素は、それぞれ三角柱形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項7】
前記ダイクロイック膜から前記各反射型空間光変調器に至る光路および前記各反射型空間光変調器から前記ダイクロイック膜に至る光路において反射面を有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項8】
前記各反射型空間光変調器の変調面から出射してスクリーンに向かう変調光は、該反射型空間光変調器の上面に対して垂直な方向に出射することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の投影型表示装置。
【請求項9】
前記反射型空間光変調器として、3原色のうちの1色用の反射型空間光変調器と、3原色のうちの残りの2色を時分割で共用する反射型空間光変調器とを備える2板型であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の投影型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−180793(P2009−180793A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17670(P2008−17670)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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