説明

抗老化剤

【課題】皮膚の老化予防・改善作用に優れた新規な抗老化剤の提供。
【解決手段】ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分とする抗老化剤。また、この溶媒抽出物が、コラゲナーゼ活性阻害作用および/または繊維芽細胞増殖作用を有し、かつこの植物が、オーク木材からなるチップまたはウィスキー熟成用樽である新規な抗老化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の老化防止・改善作用を有する抗老化剤に関する。また、本発明は、皮膚の老化予防・改善作用を付与した皮膚化粧料及び美容作用を付与した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックス線維の分解をするマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が種々の病態に関係していることが明らかとなっている。MMPの中でも、線維芽細胞等の間葉系細胞や、炎症部位に存在する好酸球等により産生される間質系のコラゲナーゼが、ガン細胞の転移や潰瘍形成、歯周炎やう歯形成に関与することが報告されている(非特許文献1、特許文献1)。
【0003】
一方、人の皮膚のシワやタルミの形成過程で起きる皮膚弾性の減少などの老化については、真皮線維芽細胞より産生されるコラゲナーゼがコラーゲンの傷害による3次元構造の変性に関わることが明らかとなっている。従って、そのコラゲナーゼの活性を抑制し、皮膚の弾力や張りを維持するコラゲナーゼを防止することがシワやタルミの形成阻止、すなわち、皮膚の老化防止に重要である。
【0004】
特許文献2には、クスノハガシワ抽出物を有効成分として含有するコラゲナーゼ阻害剤、およびクスノハガシワ抽出物を配合した美容用飲食品などが記載されている。
特許文献3には、ホップの抽出物を有効成分として含有してなるコラゲナーゼ阻害剤、該コラゲナーゼ阻害剤を含有する食品が記載されている。
しかしながら、いずれのコラゲナーゼ阻害剤も老化防止作用が弱く、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−181129号公報
【特許文献2】特開2003−146837号公報
【特許文献3】特開2005−8541号公報
【非特許文献1】河医研研究年報 38,1988,p25−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、皮膚の老化防止作用に優れた抗老化剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物が優れた繊維芽細胞増殖作用やコラゲナーゼ活性阻害作用を有し、皮膚の老化予防・改善作用を有する抗老化剤として有用であることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する抗老化剤、
(2) 溶媒抽出物が、コラゲナーゼ活性阻害作用および/または繊維芽細胞増殖作用を有することを特徴とする前記(1)に記載の抗老化剤、
(3) 溶媒抽出物が、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液、該抽出液の濃縮物または該抽出液の乾燥物であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の抗老化剤、
(4) ブナ科コナラ属植物がオーク類であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗老化剤、
(5) ブナ科コナラ属植物がオーク類木材からなるチップまたはウイスキー熟成用樽の形態であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗老化剤、
(6) 溶媒が、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の抗老化剤、
(7) 低級アルコールがエタノールであることを特徴とする前記(6)に記載の抗老化剤、
(8) 溶媒のエタノールの濃度が10〜100容量%であることを特徴とする前記(7)に記載の抗老化剤、
(9) 溶媒が、エタノール含有物を蒸留したものであることを特徴とする前記(1)に記載の抗老化剤、
(10) 溶媒抽出物が、エタノール含有物を蒸留したものをオーク樽中でオーク樽材と接触させることにより得られるものであることを特徴とする前記(1)に記載の抗老化剤、
(11) エタノール含有物を蒸留したものが、ウイスキー貯蔵前原酒である前記(10)に記載の抗老化剤、
(12) 接触期間が0.5年以上であることを特徴とする前記(10)または(11)に記載の抗老化剤、
(13) 溶媒抽出物が、ウイスキーまたはその濃縮物あるいは乾燥物である前記(1)に記載の抗老化剤、
(14) 飲食品、香粧品または医薬品である前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤、
(15) 外用香粧品または外用医薬品である前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤、
(16) 口中用の香粧品または経口医薬品である前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤、
(17) 前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止作用を有する飲食品、
(18) 前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止のために用いられる旨の表示を付した飲食品、
(19) 前記(1)〜(13)のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止用香粧品、
(20) 皮膚の老化を防止するための香粧品である前記(19)に記載の香粧品、
(21) ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する繊維芽細胞増殖作用剤、および
(22) ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有するコラゲナーゼ活性阻害剤、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗老化剤は皮膚の老化予防及び改善作用に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において抗老化剤とは、皮膚の老化予防や改善作用を有するものをいい、具体的には、外的因子(紫外線、空気の乾燥等)や、加齢に伴う皮膚の保湿機能や弾力性の低下、肌の張りや艶の減少、荒れ、シワ、くすみ等の老化症状を予防または改善するものをいう。
【0011】
本発明の抗老化剤は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0012】
(ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物)
本発明で原料として用いられるブナ科(Fagaceae)コナラ属(Quercus sp)植物としては、例えば、ミズナラ(学名:Q.mongolica Fisch. ex Turcz. var. grosseserrata (Bl.) Rehd. et Wils.)、カシワ(学名:Quercus dentata Thunb)、コナラ(学名:Quercus serrata Thunb )、クヌギ(学名:Quercus acutissima Carruth)、シラカシ(学名:Quercus myrsinaefolia Bl.)、ホワイトオーク(学名:Quercus alba L.)、コモンオーク(リムーザンオーク、フレンチオークまたはスパニッシュオークとも呼ばれる。学名:Quercus robur L.)、セシルオーク(学名:Quercus petraea (Mattuschka) Lieblein)、コルクオーク(学名:Quercus suber L.)等が挙げられる。古来、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられてきた植物の多くはこれらの属に属する。本発明では、これらの中でも、オーク類と称される植物をブナ科コナラ属植物として用いるのが好ましい。前記オーク類とは、ブナ科コナラ属の植物のうち、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられた植物群をいう。本発明においてはこのオーク類を好適に用いることができるが、中でも、ホワイトオーク、コモンオーク、セシルオークやミズナラを特に好適に用いることができる。
これらの植物について、原料として用いる部位は特に制限されるものではなく、幹、葉、枝、樹皮、花、実などを用いることができる。また、それらは採取直後に用いてもよいし、乾燥させた後に用いてもよい。必要により、例えば粉砕、切断、細切、成形等の加工をして用いることもできる。例えば、前記植物の木材から得られるチップ、木粉、樽等の加工品を用いることができる。樽は溶媒抽出に使用する前に内面を焼く等の加熱処理をするのが好ましい。
【0013】
本発明で用いる抽出溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、アルコール、水、これらの混合溶媒などの公知の溶媒であってよいが、好ましくは低級アルコール、または低級アルコールと水との混合溶媒である。ここで低級アルコールとしては、例えば、炭素数1〜4のアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)が挙げられる。溶媒中の低級アルコールの濃度は、老化防止作用の強い抽出物が得られる濃度とすることが肝要であり、具体的には、通常約10〜100容量%、好ましくは約30〜99容量%である。最終的に飲食品等にも配合することを考慮すると、安全性の観点から、抽出溶媒はエタノールと水との混合溶媒であるのがよい。また、前記混合溶媒には、低級アルコールと水のほか、抽出効率を大きく損わない範囲で他の成分が含まれていてもよい。例えば、所望により糖類、塩類またはアミノ酸などの水溶性成分や各種他の溶媒(例えば酢酸エチル、アセトン)が含まれていてもよい。
そのため、例えば低級アルコールとしてエタノールを用いる場合、抽出溶媒としてのエタノールと水との混合溶媒は、工業的な試薬級のエタノールを水と混合したものであってもよいし、あるいは、各種アルコール製品やその仕掛品であってもよい。アルコール製品やその仕掛品としては、例えばウイスキー、焼酎、日本酒、ビール、発泡酒、スピリッツ、ウオッカまたはそれらの仕掛品などが挙げられる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【0014】
また、例えば、植物原料で樽を成形し、その中に溶媒を注入して抽出を行う場合には、溶媒として、エタノール含有物を蒸留したものを好適に用いることができる。ここでいう、エタノール含有物を蒸留したものとは、エタノールを含有する液を蒸留して得られる蒸留物をいう。前記蒸留物は、麦芽、米、ブドウ等を原料の一部としてとして糖化、醗酵させて得られるエタノール含有物を、単式蒸留または複式蒸留することにより得られる。前記蒸留物としては、例えば、焼酎、ウオッカ、ウイスキー貯蔵前原酒(モルトウイスキーの原酒のニューポット、グレンウイスキーの原酒のニューメイク)などが挙げられる。これらの中でも、前記蒸留物として、ウイスキー貯蔵前原酒を好適に用いることができる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【0015】
本発明で原料として用いられる植物、すなわちブナ科コナラ属植物の溶媒による抽出方法としては、特に限定されるものではなく、溶媒を上記植物原料と接触させることにより行われる。溶媒中に植物原料を浸漬させるか、溶媒中に植物原料を加え加熱還流するか、あるいは、植物原料を用いて樽等の容器を成形し、その中に溶媒を注入してもよい。溶媒と植物原料との接触後は、接触状態のまま静置保存してもよいし、加熱還流や浸漬抽出などの抽出手段は公知手段であってよく、抽出条件などについては所望に応じて適宜設定することができる。また、前記の抽出は常温で行われても加温で行われてもよい。抽出温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、所望に応じて適宜に設定されるが、操作上、溶媒の沸点以下であるのが好ましい。抽出に要する時間は、温度条件や抽出方法にもよるが、通常約30分〜30年程度であるが、溶媒として前記の蒸留物を用いる場合には、約1.5年以上、より具体的には約1.5〜30年程度が好ましい。
【0016】
本発明によれば、上記抽出後、自体公知の手段に従って、ブナ科コナラ属植物(その処理物または加工品を含む)を、老化防止成分を含有する抽出液と分離する。分離手段としては、例えば遠心分離、ろ過などの公知の分離手段が挙げられる。かくして得られる抽出液はさらに濃縮してもよいし、また濃縮乾固してもよい。濃縮は常圧または減圧下に行われる。濃縮によって濃縮液の容積を約5〜70容量%、好ましくは約10〜50容量%に減少させるのがよい。乾固物は、老化防止成分を含む抽出液から溶媒を好ましくは減圧下に蒸発させることによって得られる。さらに、本発明の溶媒抽出物には、抽出によって得られた抽出物を更に例えばカラムクロマトグラフィー等で分画精製したものが含まれる。
【0017】
このようにして得られた溶媒抽出物、すなわち抽出操作の完了した抽出液、抽出液の溶媒を部分的に除去した濃縮物または溶媒を全部除去した乾燥物、カアラムクロマトグラフィー精製品は、そのまま老化防止剤として使用してもよいし、さらに例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプンまたは下記実施例で記載する具体例等の適当な液体または固体の賦形剤または増量剤を加えて老化防止剤に使用してもよい。老化防止剤中の溶媒抽出物の混合割合は、特に限定されないが、抽出物の性状(抽出液、濃縮物、または乾燥物)により、例えば、約0.01〜100重量%の範囲で適宜設定できる。
【0018】
また、本発明によれば、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を含有する飲食品、香粧品および医薬品などを調製することができる。溶媒抽出物の配合量は、特に限定されないが、抽出物の性状(抽出液、濃縮物、または乾燥物)により、例えば、約0.01〜100重量%、好ましくは約0.1〜80重量%の範囲で適宜設定できる。
【0019】
本発明の飲食品としては、飴、トローチ、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、ゼリー、水ようかん、アルコール飲料、コーヒー飲料、ジュース、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、牛乳、乳清飲料、乳酸菌飲料等があげられ、これら飲食品に対して、溶媒抽出物(または老化防止剤)を適量含有させて、本発明の飲食品として提供される。
これらの飲食品は、例えば、溶媒抽出物(または老化防止剤)以外に、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェノール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルアラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等、通常の食品原料として使用されている添加剤を適宜配合して、常法に従って製造することができる。
【0020】
本発明でいう香粧品とは、化粧品や香料製品と称される製品を含むが、これらを提供する場合、化粧水、化粧クリーム、乳液、ファンデーション、口紅、整髪料、ヘアトニック、育毛料、シャンプー、リンス、入浴剤といった非口中用の香粧品や、歯磨き類、洗口液、うがい薬、口腔香料といった口中用の香粧品に対して、溶媒抽出物を適量含有させて、香粧品を調製することができる。
これらの香粧品は、例えば、植物油等の油脂類、ラノリンやミツロウ等のロウ類、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール類、エステル類、種々の界面活性剤、色素、香料、ビタミン類、植物・動物抽出成分、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐・殺菌剤、保湿剤(例えば尿素、ヒアルロン酸)等、通常の香粧品原料として使用されている添加剤を適宜配合して、常法に従って得ることができる。
【0021】
医薬品として用いる場合には、必要により各種添加剤を配合して、溶媒抽出物(または老化防止剤)を適量含有させて、各種剤形の医薬品として調製することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、エキス剤等の経口医薬品として、あるいは、軟膏、眼軟膏、ローション、クリーム、貼付剤、坐剤、点眼薬、点鼻薬、注射剤といった非経口医薬品として、提供することができる。これらの医薬品は、各種添加剤と用いて常法に従って製造すればよい。使用する添加剤には特に制限はなく、通常用いられているものを使用することができ、その例としてはデンプン、乳糖、白糖、マンニトール、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等の固形担体、蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノール等のアルコール、またはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の液体担体、各種の動植物油、白色ワセリン、パラフィン、ロウ類等の油性担体等が挙げられる。
【0022】
医薬品として投与する場合、有効成分たる溶媒抽出物の投与量は、溶媒抽出物の形態、剤形、投与ルート、患者の状態、年齢などにより変動するが、1日あたり、通常1〜500mg/kg程度、好ましくは5〜50mg/kg程度である。
【0023】
なお、本発明の溶媒抽出物を用いて飲食品、香粧品または医薬品を調製する場合には、他の活性成分、例えば、エラグ酸、アスコルビン酸、ハイドロキノン、コウジ酸、プラセンタエキス、アルブチンや、あるいは、火棘、キョウニン、カリン、ヒノキ、ジャスミン、ヤワーピリーピリなどの植物の抽出成分などとあわせて用いることができる。このような植物抽出成分と本発明の溶媒抽出物との配合割合は、一概には云えないが、重量割合で通常約1:9〜9:1である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
1.コラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性の評価方法
コラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性は、MMP−1活性測定キット(BIOMOL)を用いて評価した。すなわち、96穴マイクロプレートに、反応バッファー(50mM HEPES、10mM CaCl2、0.05% Brij−35、1mM DTNB、pH7.5)、MMP−1酵素、被験物質を添加し、37℃で30分間プレインキュベートした。その後、基質(thiopeptolide)を添加し、37℃で60分間反応させ、412nmの吸光度Aを測定した。コントロールとして、上記反応系において被験試料を添加せずに同様の操作を行い、412nmの吸光度Bを測定し、下記の式からコラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性率を算出した。
〔数1〕
阻害率(%)=(1−A/B)×100
【0026】
2.ウイスキーの製造
ウイスキーの貯蔵前原酒として用いられるニューポットを調製した。すなわち、発芽した大麦(麦芽)を粉砕し、温水と混合し糖化させ、濾過した糖液に酵母を加え発酵させ、アルコール度数が7.0〜7.5容量%の醪(もろみ)を得た。醪を銅製のポットスチル(単式蒸留器)にいれて二度蒸溜し、アルコール濃度60容量%のアルコール含有の組成物(ニューポット)を得た。
別に、ウイスキー製造用の樽(内容量230リットル)をホワイトオークを用いて製造した。樽の内面は直火で加熱処理した。
当該ウイスキー樽に上述のアルコール含有組成物(ニューポット)を210リットル入れ栓をし、貯蔵庫にて室温で保存した。
【0027】
3.ウイスキーのコラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性評価
前記2の方法による保存期間18年以上の抽出物を複数種類ブレンドして得られたサントリーウイスキー山崎(登録商標)18年を、エバポレーション後、減圧乾燥し、得られた乾燥物を被験試料とした。対照品として、前記2のニューポットを、同様に、エバポレーション後、減圧乾燥を行って得た乾燥物を用いた。
それらを上述の方法でコラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性を測定した。結果を表1に示した。対照品と比較して、ウイスキー乾燥物は、強いコラゲナーゼ(MMP−1)阻害活性が認められた。また、その阻害作用は、容量依存性であることが確認された。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例2
1.ヒト真皮線維芽細胞の増殖活性の方法
ヒト真皮線維芽細胞(クラボウ(株)製)を10%FBS含有D−MEM培地で培養した。細胞を96穴マイクロプレートで24時間前培養した後、被験試料を添加した。3日間培養した後、WST−1 cell proriferation assay system(TaKaRa)を用いて細胞増殖活性を測定した。
【0030】
2.線維芽細胞増殖作用の評価
実施例1の3.で作製した乾燥物を用い、線維芽細胞増殖作用の評価を行った。コントロールを100%としたときのそれぞれの結果を表2に示した。
WST−1法を用いて、ウイスキー乾燥物の線維芽細胞の増殖に与える影響を調べた結果、ウイスキー乾燥物に、増殖促進作用が認められた。その値は、ポジコンであるアスコルビン酸リン酸マグネシウムよりも強いことが確認された。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例3 皮膚用ゲルの調製
精製水80gにポリアクリル酸ソーダ0.5gを溶かし、これに、実施例1の3で作製したウイスキーの乾燥物1gをエチルアルコール18.5gと共に加え、ゲルを調製した。
【0033】
実施例4 カプセル剤の調製
【表3】

【0034】
(カプセル剤の製法)
表3の処方に従って、ウイスキーの乾燥物と乳糖を混合し、打錠後粉砕したものに処方量のステアリン酸マグネシウムを混合した。混合物500mgずつを2号カプセルに充填して、1カプセル中に5mgのウイスキー乾燥物を含有するカプセル剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、皮膚の老化予防・改善作用を有する医薬品、飲食品、香粧品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する抗老化剤。
【請求項2】
溶媒抽出物が、コラゲナーゼ活性阻害作用および/または繊維芽細胞増殖作用を有することを特徴とする請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項3】
溶媒抽出物が、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液、該抽出液の濃縮物または該抽出液の乾燥物であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗老化剤。
【請求項4】
ブナ科コナラ属植物がオーク類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項5】
ブナ科コナラ属植物がオーク類木材からなるチップまたはウイスキー熟成用樽の形態であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項6】
溶媒が、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項7】
低級アルコールがエタノールであることを特徴とする請求項6に記載の抗老化剤。
【請求項8】
溶媒のエタノールの濃度が10〜100容量%であることを特徴とする請求項7に記載の抗老化剤。
【請求項9】
溶媒が、エタノール含有物を蒸留したものであることを特徴とする請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項10】
溶媒抽出物が、エタノール含有物を蒸留したものをオーク樽中でオーク樽材と接触させることにより得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項11】
エタノール含有物を蒸留したものが、ウイスキー貯蔵前原酒である請求項10に記載の抗老化剤。
【請求項12】
接触期間が0.5年以上であることを特徴とする請求項10または11に記載の抗老化剤。
【請求項13】
溶媒抽出物が、ウイスキーまたはその濃縮物あるいは乾燥物である請求項1に記載の抗老化剤。
【請求項14】
飲食品、香粧品または医薬品である請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項15】
外用香粧品または外用医薬品である請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項16】
口中用の香粧品または経口医薬品である請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止作用を有する飲食品。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止のために用いられる旨の表示を付した飲食品。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれかに記載の抗老化剤を含有することを特徴とする老化防止用香粧品。
【請求項20】
皮膚の老化を防止するための香粧品である請求項19に記載の香粧品。
【請求項21】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する繊維芽細胞増殖作用剤。
【請求項22】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有するコラゲナーゼ活性阻害剤。


【公開番号】特開2006−249018(P2006−249018A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69513(P2005−69513)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(500572649)財団法人岐阜県国際バイオ研究所 (10)
【Fターム(参考)】