説明

抗菌ポリマーフィルム及び抗菌ポリマーフィルムの製造方法

抗菌ポリマーフィルムを製造する方法であって、第1のポリマー材料の第1の層および第2のポリマー材料の第2の層を含有するポリマー基材層を共押し出しする工程であって、第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低い工程と、共押し出し基材を第1の方向に延伸する工程と、選択的に基材層を直交する第2の方向に延伸する工程と、微粒子の抗菌化合物および液体溶媒、並びに好ましくは界面活性剤も含有する組成物をポリマーの第2の層の表面に配置する工程と、第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)よりも高いが第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)未満の温度で延伸されたフィルムをヒートセットする工程と、を有する方法であって、組成物は共押し出し工程の後であってヒートセット工程の前にポリマーの第2の層に塗布され、最終形態のフィルムの第2の層には、第2の層のポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の抗菌化合物を含有する方法が記載される。抗菌フィルムも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は抗菌ポリマーフィルムに関し、特にポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌特性を有するポリマーフィルムの調製はよく知られている。このようなフィルムは、例えば医療およびケータリングといった状況における抗菌性表面の提供に用いられる。抗菌特性は、抗菌剤を用いることによって付与される。このようなフィルムの調製は、典型的には、ポリマーマトリクス中に、または1つもしくは複数の表面上にコーティングとして、抗菌剤を配置することを伴う。望ましくは、抗菌剤は、様々な微生物に対応する広い活性スペクトルを有し、高等生物にとっては低い毒性プロファイルを有しているべきである。金属イオン、特に銀イオンは、抗真菌活性、抗細菌活性、および抗藻活性(以下、抗菌活性と称する)を示すものとして長い間知られてきた。近年、リン酸ジルコニウムに担持された抗菌性金属イオンの使用が提案されてきている。たとえば、米国特許第5441717号、特開平3/83905公報および米国特許第5296238号参照。米国特許第5556699号には、特に、食品および医療器具の包装に有用な、PVC、ポリオレフィン、ポリエステルおよび/またはポリビニルアルコールの層を含む、共押出しフィルムまたはラミネートフィルムにおける、ゼオライト抗真菌剤の使用が開示されている。米国特許第5639466号には(a)5〜40%のラクチドまたは乳酸オリゴマー、(b)0〜20%の有機可塑剤、および(c)60〜95%の乳酸ポリマーまたはコポリマーからなる抗菌組成物で、ポリマー基材上に少なくとも5μmの厚みの層としてコーティングされるものを含む包装フィルムが開示されている。欧州特許出願公開第0846418号には、無機および/または有機の抗細菌剤および親水性物質を含む、食品包装における使用に適した抗細菌性フィルムも開示されている。
国際公開第2004/063254号はポリマー基材層を含み、抗菌化合物を含有するポリマーコーティングがその表面に施された抗菌ポリマーフィルムを開示し、該ポリマーコーティングはヒートシール適性および/またはバリア特性も備える。
国際公開第2006/000755号は、0.05重量%から0.7重量%の銀含有抗菌化合物を含有するポリマー基材層を含む抗菌ポリマーフィルムを開示する。抗菌化合物は、好ましくは重合後であってフィルム形成をする前に基材ポリマーに添加される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より大きい抗菌効果を有する抗菌フィルムを提供することが望ましい。さらに、抗菌剤は比較的高価であり、通常は消費者がコストと抗菌効果とを釣り合わせなけらばならない。抗菌効果を付与する、より安価な抗菌フィルム、またはコストに対してより大きい抗菌効果を有するフィルムを提供することが望まれる。抗菌剤を含有しないフィルムと同程度の低いヘイズおよび高い光沢などの良好な光学特性を示す抗菌フィルムも望まれる。
さらに、抗菌フィルムには、抗菌活性が長い期間保持される優れた耐久性を示すことが望まれる。従来技術の抗菌フィルムでは、抗菌剤はフィルムの表面から失われまたは摩耗する傾向があり、これは抗菌剤が微粒子の形態で存在するこれらの従来技術フィルムで特に問題である。それにもかかわらず、本発明者らは抗菌活性を最大化するために、抗菌剤がフィルムの表面近傍に存在することが引き続き望まれることを見い出した。本発明の特定の目的の1つはこのトレードオフを解決し、優れた初期抗菌活性ばかりではなく、抗菌活性の優れた保持特性が長期間示されるフィルムを提供することである。本発明のさらなる目的は、微粒子の抗菌剤の耐摩耗性が改良された微粒子抗菌剤を含有する抗菌フィルムを提供することである。
本発明の目的は、1つまたは複数の前述した問題点を解決する抗菌フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、抗菌ポリマーフィルムを製造する方法は、
(a)第1のポリマー材料の第1の層および第2のポリマー材料の第2の層を含有するポリマー基材層を共押し出しする工程であって、第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低い工程と、
(b)共押し出し基材を第1の方向に延伸する工程と、
(c)選択的に基材層を直交する第2の方向に延伸する工程と、
(d)微粒子の抗菌化合物および液体溶媒、並びに好ましくは界面活性剤も含有する組成物をポリマーの第2の層の表面に配置する工程と、
(e)第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)よりも高く、しかし第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)未満の温度で延伸されたフィルムをヒートセットする工程とを含み、工程(d)は工程(b)の前に、または工程(b)と工程(c)との間で、または工程(c)の後であって工程(e)の前に実施され、最終形態のフィルムの第2の層は、第2の層のポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の抗菌化合物を含有する。
本発明者らは、フィルム製造プロセス中に、微粒子の抗菌化合物を共押し出しフィルムに塗布することで、抗菌化合物を共押し出しフィルム製造に使用されるポリマー材料に取り込むよりも、予期できぬほどに高い抗菌活性が提供されることを見い出した。さらに、新規な製造プロセスによって、フィルム表面に抗菌化合物を保持することができる。
【0005】
本発明のさらなる態様によれば、第1のポリマー材料の第1の層および第2のポリマー材料の第2の層を含有する共押し出しされ、延伸され、ヒートセットされたポリマー基材層を含有する抗菌ポリマーフィルムが提供され、
(i)第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低く、
(ii)第2の層は、第2の層のポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有し、抗菌化合物は共押し出しフィルムをヒートセットをする前に液体溶媒を用いて第2の層の露出面に適用される。
本発明の一実施形態では、第1のポリマー材料の第1の層および第2のポリマー材料の第2の層を含有する共押し出しポリマー基材層を含有する抗菌ポリマーフィルムが提供され、
(i)第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低く、
(ii)第2の層は、第2の層のポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有し、
(iii)第2の層の露出面は少なくとも1.10の表面積指数および/または少なくとも6°の平均表面勾配を示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】フィルムの表面粗さ特性を本明細書に記載の試験を使用して測定した結果を示す。
【図2】フィルムの表面粗さ特性を本明細書に記載の試験を使用して測定した結果を示す。
【図3】フィルムの表面粗さ特性を本明細書に記載の試験を使用して測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、用語「抗菌」は、微生物群における微生物活性または微生物増殖の抑制を意味し、特に大腸菌(Escherichia coli)および/またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA;多剤耐性黄色ブドウ球菌とも呼ばれる)である。本明細書で使用する場合、用語「抗菌」は対照に対し、24時間後の測定で、微生物群の3ログを超える減少、好ましくは4ログを超える減少、一層好ましくは5ログを超える減少を意味する。好ましい実施形態では、用語「抗菌」は対照に対し、12時間後、好ましくは6時間後、一層好ましくは3時間後の測定で、微生物群の3ログを超える減少、好ましくは4ログを超える減少、一層好ましくは5ログを超える減少を意味する。本願に開示されるフィルムでは、微生物群を高ログで減少させるおよび/または高殺傷率を示す現在市販されている抗菌フィルムを超える改良が示された。明細書によれば抗菌活性は、本明細書の以下に記載されるJIS Z2801:2000の「標準方法」、好ましくは、本明細書の以下に記載されるより厳しい条件のJIS Z2801:2000の「シナリオ方法」によって測定された。
【0008】
抗菌剤は無機化合物、または有機化合物、またはそれらの混合物であってもよい。
本明細書で使用される用語「無機抗菌剤」は、銀、亜鉛、銅などおよび抗菌特性を有する同種の金属または金属イオンを含有する、無機化合物を示す一般的な用語である。該金属を含有する種は、シリカ、または金属酸化物、ゼオライト、合成ゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、セラミック、水溶性ガラス粉末、アルミニウムシリコン、チタンゼオライト、リン灰石、炭酸カルシウムなどの無機物質に担持されていてもよい。他の金属を含有する抗菌化合物には、酢酸水銀および有機亜鉛化合物が挙げられる。
固体有機抗菌剤の例には、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(たとえば、Angus Chemical Co.,バッファローグローブ,イリノイ州,米国製のCanguard RTM409)、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジン−2−チオン(たとえば、Creanova,Inc.,ピスカタウェイ,ニュージャージー州,米国製のNuosept RTMSまたはTroy Chemical Corp.,ウェストハノーバー,ニュージャージー州,米国製のTroysan RTM142)、N−(トリクロロメチル)−チオフタルイミド(たとえば、Creanova,Inc.製のFungitrol RTM11)、ブチル−P−ヒドロキシ−ベンゾエート(たとえば、International Sourcing Inc.,アッパーサドルリバー,ニュージャージー州,米国製のButyl Parabens RTM)、ジヨードメチル−P−トリスルホン(たとえば、Angus Chemical Co.製のAmical RTMWP )、およびテトラクロロイソフタロニトリル(たとえば、Creanova,Inc.製のNuocide RTM960)が挙げられる。
【0009】
金属を含有する抗菌剤に関しては、銀を含有する物質が特に好ましい。抗菌に使用される銀の供給源としては、金属銀、銀塩、および銀を含有する有機化合物が挙げられる。銀塩としては、炭酸銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、安息香酸銀、塩化銀、フッ化銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、硝酸銀、酸化銀およびリン酸銀が挙げられる。銀を含有する有機化合物としては、たとえば、アセチルアセトン酸銀、ネオデカン酸銀およびエチレンジアミン四酢酸銀が挙げられる。銀を含有するゼオライト(たとえば、AgION.TM. Tech. L.L.C.,ウェイクフィールド,マサチューセッツ州,米国製の、Ag(I)として2.5%の銀を含有するAJ10D)は特定の用途に使用される。ゼオライトはポリマーマトリックスの中に担持されると、高等生物に害を与えることなく微生物の殺傷および増殖の抑制に効果的な速度および濃度で銀イオンを供給するので有益である。
【0010】
好ましい実施形態では、抗菌化合物は、米国特許第5441717号または米国特許第5296238号に開示された抗菌化合物から選択される。好ましくは、抗菌化合物の化学式は(i)である。
1abc22(PO43・nH2O (i)
ただし、M1は銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウムおよびクロムから選択される少なくとも1つの金属イオンであり、Aはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンから選択される少なくとも1つのイオンであり、M2は四価金属イオンであり、aおよびbは正の数であり、cは0または正の数であり、(ka+b+mc)=1であり、kは金属M1の価数であり、mは金属Aの価数であり、0≦n≦6である。
好ましくは、M1は銀であり、抗菌化合物の化学式は(ii)である。
Agabc2(PO43・nH2O (ii)
ただし、Aはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンから選択される少なくとも1つのイオンであり、Mは四価金属イオンであり、a、bおよびcは正の数であり、(a+b+mc)=1であり、mは金属Aの価数であり、0≦n≦6である。
化学式(i)の抗菌化合物は、米国特許第5441717号または米国特許第5296238号に記載された方法によって調製されてもよい。抗菌銀イオンはリン酸ジルコニウムに担持される。金属Aは好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択され、好ましくはナトリウムである。金属Mは好ましくはジルコニウム、チタニウムおよびスズから選択され、好ましくはジルコニウムおよびチタニウムから選択され、好ましくはジルコニウムである。
【0011】
パラメータ「a」の値は好ましくは少なくとも0.001であり、一層好ましくは少なくとも0.01であり、好ましくは0.01から0.5の範囲であり、一層好ましくは0.1から0.5の範囲であり、一層好ましくは0.10から0.30の範囲である。一実施形態では、パラメータ「a」の値は0.4から0.5の範囲または0.15から0.25の範囲、好ましくは0.4から0.5の範囲である。
パラメータ「b」の値は好ましくは少なくとも0.2であり、一層好ましくは0.2から0.7の範囲であり、一層好ましくは0.2から0.60の範囲である。一実施形態では、パラメータ「b」の値は0.2から0.3の範囲である。
一実施形態では、抗菌化合物はAg0.18Na0.570.25Zr2(PO43およびAg0.46Na0.290.25Zr2(PO43から選択される。
【0012】
無機抗菌剤の他の特定の例は、ノバロン(東亞合成株式会社)、バクテキラー(カネボウ化成株式会社)、抗菌球状セラミックの微粒子S1、S2、S5(株式会社アドマテックス)、ホロンキラ−(日工株式会社)、ゼオミック(品川燃料株式会社)、アメニトップ(松下電器産業株式会社)、イオンピュア(石塚硝子株式会社)および類似の銀ベ−スの抗菌剤、Z−Nouve(三井金属鉱業株式会社)および類似の亜鉛ベースの抗菌剤、P−25(日本アエロジル株式会社)、ST−135(石原産業株式会社)である。
一実施形態では、抗菌化合物の粒子サイズは体積分布平均粒子直径で約0.1μmから約10μmの範囲であり、さらなる実施形態では約0.2μmから約2.0μmの範囲であり、さらなる実施形態では約0.5μmから約1.5μmの範囲である。抗菌粒子は凝集してもよく、典型的には、最終形態のフィルムの中で凝集し、疑義を回避するために本願における粒子直径とは、主に、非凝集粒子の直径を参照する。
【0013】
第2の層に存在する抗菌化合物の量は第2の層のポリマー材料の約1質量%から約80質量%であり、一実施形態では第2の層のポリマー材料の約15質量%から約80質量%であり、典型的には第2の層のポリマー材料の少なくとも約20質量%であり、より典型的には少なくとも約25質量%であり、より典型的には少なくとも約30質量%であり、より典型的には少なくとも約35質量%であり、より典型的には少なくとも約40質量%であり、より典型的には少なくとも約45質量%であり、より典型的には少なくとも約50質量%である。一実施形態では、第2の層に存在する抗菌化合物の量は第2の層のポリマー材料の約75質量%以下であり、さらなる実施形態では約70質量%以下であり、さらなる実施形態では約65質量%以下である。従って、本発明は、非常に高濃度の抗菌剤をポリマーフィルムの中に配置する方法を提供し、該高濃度は、フィルムを形成する前に抗菌添加物をフィルム形成ポリマー材料に取り込む従来の製造プロセスを使用することでは単純には達成できない。
一実施形態では、第2の層に存在する抗菌化合物の量は第2の層の総ポリマー材料の約1質量%から約15質量%であり、さらなる実施形態では第2の層の総ポリマー材料の約1質量%から約10質量%の範囲であり、さらなる実施形態では第2の層の総ポリマー材料の約5質量%から約10質量%の範囲である。
さらなる実施形態では、存在する抗菌化合物は基材の総ポリマー材料の約2.0質量%以下であり、さらなる実施形態では基材の総ポリマー材料の約0.05質量%から約0.7質量%の範囲である。
【0014】
微粒子の抗菌化合物は第2の層に配置され、抗菌粒子の少なくとも一部は最終形態のフィルムで露出され、すなわち第2の層のポリマー材料に部分的に包埋され、粒子は適切な位置であって、中に沈まずに、ポリマーマトリックスに保持される。一実施形態では、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%の抗菌粒子がこのように配置される。従って本発明のフィルムは非常に高表面濃度で抗菌剤を含有することで特徴づけられる。
本願に開示されているフィルムの表面は従来の非接触干渉法技術を使用することによって適切に特徴付けられ、特に以下に定義される平均表面粗さ(Ra)、二乗平均平方根平均表面粗さ(Rq)、表面積指数および/または平均表面勾配の1つまたは複数のパラメータに基づいている。一実施形態では、本発明のフィルムの表面積指数は少なくとも1.10、好ましくは少なくとも1.15%、好ましくは少なくとも1.20、好ましくは少なくとも1.25、好ましくは少なくとも1.30を示し、および/または平均表面勾配は少なくとも6°、好ましくは少なくとも10°、一層好ましくは少なくとも15°を示す。
【0015】
共押し出しポリマー基材層は自己支持フィルムまたはシートであり、自己支持フィルムまたはシートとは、フィルムまたはシートが支持ベースが無くとも独立して存在することができることを意味する。基材は、以下に記述するフィルム形成材料の2つ以上の分離した層を含有する。たとえば、基材は、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の層を含むことができ、典型的な多層構造は、AB、ABA、ABC、ABAB、ABABA、またはABCBAタイプであり得る。好ましい実施形態では、基材は二層だけを含有する。
基材は任意の好適なフィルム形成ポリマーから形成でき、例えばポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、ポリアミド(ナイロンなど)、PVCおよびポリエステルが挙げられる。好ましい実施形態では、基材はポリエステルであり、特に直鎖状合成ポリエステルである。好ましい基材の直鎖状合成ポリエステルは、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロ−テレフタル酸または1,2−ビス−p−カルボキシフェノキシエタン(ピバリン酸などのモノカルボン酸を含有してもよい)などの、1つまたは複数のジカルボン酸またはそれらの低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステルを、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの1つまたは複数のグリコール、特に脂肪族または脂環式グリコールと縮合することによって得られる。芳香族ジカルボン酸が好ましい。脂肪族グリコールが好ましい。ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、または2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸のようなω−ヒドロキシアルカン酸(典型的にはC3〜C12)のように、ヒドロキシカルボン酸モノマーに由来する単位を含有するポリエステルまたはコポリエステルが使用されてもよい。
【0016】
好ましい実施形態では、基材層に使用されるポリエステルはポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレート、またはそれらに基づくコポリマーから選択される。ポリエチレンテレフタレート(PET)ホモポリマーおよびコポリマーが特に好ましい。本明細書で使用する場合用語PET(またはPEN)コポリマーとは、1つまたは複数の追加のグリコールおよび/または1つまたは複数の追加のジカルボン酸単位と一緒に、エチレングリコールおよびテレフタル酸(またはナフタレンジカルボン酸)に由来するモノマー単位を含有するコポリエステルをいう。
好ましい実施形態では、第1の層のポリエステルはPETである。
【0017】
好ましい実施形態では、第2の層のポリエステルは、1つまたは複数の添加グリコールおよび/または1つまたは複数の添加ジカルボン酸とともに、エチレングリコールおよびテレフタル酸に由来するモノマー単位を含有するコポリエステルであり、特に上記のものである。好ましい実施形態では、第2の層のコポリエステルは、脂肪族および脂環式ジオールからなる群から選択される1つまたは複数のジオール(好ましくは1つのジオール)、好ましくはエチレングリコールと、テレフタル酸(TA)およびイソフタル酸(IPA)由来のモノマー単位を含有する。好ましくは、テレフタレートポリエステル単位に対するイソフタレートポリエステル単位のモル比はイソフタレートが1モル%から40モル%であってテレフタレートが99モル%から60モル%であり、好ましくはイソフタレートが15モル%から20モル%であってテレフタレートが85モル%から80モル%である。好ましい特定の実施形態では、コポリエステルは、約18モル%のエチレンイソフタレートと約82モル%のエチレンテレフタレートとを含有する。
第2の層のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は第1の層のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低いべきであり、好ましくは(TM1−TM2)は少なくとも5℃であり、好ましくは少なくとも10℃であり、好ましくは少なくとも20℃であり、および好ましくは約70℃以下であり、好ましくは60℃以下であり、好ましくは約50℃以下である。一実施形態では、(TM2)は約200℃から約220℃の範囲である。
【0018】
基材の形成は、当該技術分野において知られている技術であり、以下に記載された手順に従う共押し出しによって達成される。一般的には、プロセスは、溶融ポリマーの層を押し出す工程、押し出し物を急冷する工程、および少なくとも1つの方向に急冷された押し出し物を延伸する工程を含む。
基材は一軸に延伸されてもよいが、好ましくは二軸に延伸される。延伸はたとえばチューブまたはフラットフィルムプロセスなどの延伸フィルムを製造するために当該技術分野において知られているどのようなプロセスで達成されてもよい。二軸延伸はフィルムの平面で相互に垂直な2つの方向に引っ張ることによって達成でき、満足な機械特性および物理特性の組み合わせを得ることができる。
チューブプロセスでは、同時二軸延伸は、熱可塑性ポリマーチューブを押し出し、その後急冷し、再加熱し、次に内部ガス圧によって膨張して横方向延伸を生じ、縦方向延伸を生じる速度で引っ張ることによって達成される。
【0019】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、基材形成ポリマーはスロットダイを通して押し出され、直ちにチル鍛造ドラム上で急冷され、ポリマーは急冷されて確実に非晶質状態にされる。次に急冷された押し出し物をポリエステルのガラス転移温度を超える温度で、少なくとも1つの方向に延伸することによって配向される。連続的配向は、平らな、急冷された押し出し物を最初に1つの方向に、ほとんどの場合は縦方向に、すなわちフィルム延伸機を通して順方向に延伸し、次に横方向に延伸することによって達成される。押し出し物の順方向延伸は一組の回転ロールを介してまたは二組のニップロールの間で都合よく実施され、次に横方向の延伸はテンター装置の中で実施される。または、キャストフィルムは二軸テンターで、順方向と横方向の両方向に同時に延伸されてもよい。延伸はポリマーの性質によって決定される程度まで実施され、たとえばポリエチレンテレフタレートはほとんどの場合に、延伸フィルムの寸法が延伸の一方または各方向に元の寸法の2倍から5倍、一層好ましくは2.5倍から4.5倍になるように延伸される。一般に、延伸はポリエステルのTgよりも高い温度、好ましくはTgよりも約15℃高い温度で実施される。一方向だけへの配向が要求される場合には、より大きい延伸倍率(たとえば、約8倍まで)が使用されてもよい。機械方向と横方向へ均等に延伸する必要はないが、釣り合いのとれた特性が望まれる場合にはそうすることが好ましい。
【0020】
延伸フィルムは寸法を拘束したヒートセットによって寸法が安定化する。ヒートセット工程はポリエステルのガラス転移温度を超えるがそれらの融解温度未満の温度で通常は実施され、ポリエステルの結晶化を誘導する。本発明では、ヒートセット工程の温度は第1の層の融解温度未満であるが第2の層の融解温度を超える温度であり、通常は抗菌コーティング組成物の液体溶媒を蒸発させるのに充分な温度にも選択されるべきである。本発明では、最終形態のフィルムの第1の層は典型的には比較的高結晶化され、第2の層は典型的には比較的低結晶化され、これらは本明細書に記載の組成およびプロセスの特徴の組み合わせの結果である。1つの実施形態では、ヒートセット条件は実質的にすべての液体溶媒(すなわち少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%)を蒸発させるのに充分な条件である。したがって実際のヒートセット温度および継続時間はフィルムおよびコーティング組成物の組成によって異なるが、実質的にフィルムの機械特性を劣化されるように選択されてはならない。これらの制約の中で、通常ヒートセット温度は約180℃から245℃が望ましい。ヒートセット工程の継続時間はヒートセット区域を通過するフィルムウェブの速度によって変化するが、典型的な継続時間は約30秒から約180秒の範囲であり、典型的には約100秒から約160秒の範囲である。ヒートセット間に、少量の寸法緩和が、「トーイン(toe−in)」として知られる手順によって横方向、TDで実施される。トーインは2%から8%程度の寸法収縮を含むが、低線張力が要求され、フィルム制御および巻き取りが問題になるので、機械方向(MD)の類似する寸法緩和を実施することは困難である。
【0021】
多層基材の共押し出しは、複数のオリフィスダイの独立したオリフィスを通してそれぞれのフィルム形成層を同時に共押し出し、その後に依然として溶融している層を一体化することによって、または、好ましくは、最初にそれぞれのポリマーの溶融流をダイマニホールドにつながるチャネル内で一体化し、その後に相互混合のない層流条件下でダイオリフィスから一緒に押し出す単一チャネル共押し出しのいずれかによって実施されてもよく、これにより多層ポリマーフィルムが製造され、上記に記載されたように配向され、ヒートセットさてもよい。
【0022】
一実施形態では、基材は熱収縮性である。当業者に知られているように、フィルムの収縮特性は製造中に使用される延伸比率とヒートセット条件とによって決定される。一般的に、ヒートセットされていないフィルムの収縮挙動はフィルムが製造中に延伸される程度に対応する。ヒートセットがされていない場合には、高程度に延伸されたフィルムは続いて熱にさらされた場合には高度に収縮し、少量だけ延伸されたフィルムは少量の収縮だけしか示さない。ヒートセットは延伸されたフィルムに対して寸法安定性を与え、フィルムを延伸された状態に「固定」する効果を有する。従って、フィルムの熱作用下における収縮挙動は、製造中に実施された延伸操作後にフィルムがヒートセットされたか否か、およびどの程度実施されたかに依存する。一般的に、ヒートセット操作中に温度T1を経たフィルムは、製造後に続いて熱にさらされた場合には、温度T1よりも低い温度では実質的に収縮を示さない。したがって、収縮特性を付与するためには、延伸が実施された後に基材をヒートセットしないか、または比較的低温度および/または比較的短い継続時間で部分的にヒートセットする。収縮性基材はフィルムの1つの方向または両方の方向に収縮を示してもよい。1つの寸法の収縮程度は、直交方向への収縮程度と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、100℃の水浴中に30秒置いた場合に、収縮は約0%から約80%の範囲であり、さらなる実施形態では約5%から約80%の範囲であり、さらなる実施形態では約10%から60%の範囲である。
【0023】
基材の適切な厚さは約5μmから350μmの間であり、特に約12μmから約250μmの間であり、特に約12μmから約125μmの間であり、特に約12μmから約50μmの間である。一実施形態では、第2の層の厚さは全基材の厚さの約0.1%から約30%であり、さらなる実施形態では約0.1%から約20%であり、さらなる実施形態では約0.1%から約10%であり、さらなる実施形態では約0.2%から約5%であり、さらなる実施形態では約0.5%から約2%である。さらなる実施形態では、第2の層の厚さは約0.1μmから約10μmの範囲であり、さらなる実施形態では約0.2μmから約5μmの範囲であり、さらなる実施形態では約0.5μmから約2μmの範囲である。さらなる実施形態では、第2の層の厚さは微粒子の抗菌剤の粒子サイズの関数によって制御される。すなわち、一実施形態では、第2の層厚さT(μm単位)はDが抗菌粒子の体積分布平均粒子直径(μm単位)である場合のT/D比によって示され、T/D比は0.3から10の範囲であり、さらなる実施形態では0.3から5の範囲であり、さらなる実施形態では0.4から4.0の範囲であり、さらなる実施形態では0.5から3.5の範囲であり、さらなる実施形態では0.5から2.5の範囲であり、さらなる実施形態では0.6から2.0の範囲である。
【0024】
ポリマー基材は、ポリマーフィルムの製造に従来から使用されているどのような添加剤も都合よく含有してもよい。従って、染料、顔料、発泡剤、滑剤、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤、難燃剤、熱安定剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、蛍光増白剤、光沢改良剤、劣化促進剤、粘度調整剤および分散安定化剤といった薬剤を、適宜、基材中に取り入れてもよい。特に、基材は、微粒子の無機質フィラーまたは非相溶性樹脂フィラーなどの、1つまたは複数の微粒子のフィラーを含有してもよい。微粒子の無機質フィラーには、アルミナ、シリカおよびチタニアなどの金属または半金属酸化物、焼成白土ならびに、カルシウムおよびバリウムのカーボネートおよびサルフェートなどのアルカリ金属塩が挙げられる。Aerosil(登録商標)OX50またはSeahostar(登録商標)KEP30またはKEP50などのフィラー粒子が、層のポリマー材料の質量に対して約0%から約5%の量で存在してもよく、一層好ましくは0.1質量%から2.5質量%存在してもよい。層の組成物の成分は従来の方法で一緒に混合されてもよい。たとえば、層ポリマーを誘導するモノマー反応物と混合することによって、または、タンブルブレンドまたはドライブレンドによって、または、押出機中で混ぜ合わせることによって成分をポリマーと混合してもよく、その後冷却し、通常の場合に粒子またはチップへ粉砕する。マスターバッチ技術を使用してもよい。
【0025】
フィルムの散乱可視光%(ヘイズ)は、ASTM D1003基準にしたがって測定して、好ましくは50%未満、好ましくは30%未満、好ましくは15%未満、好ましくは12%未満、好ましくは9%未満、好ましくは6%未満、一層好ましくは3.5%未満、特に2%未満である。この実施形態では、基材はフィラーを添加していないか、または典型的にはごく少量が添加されており、通常は基材ポリマーの0.5質量%未満、好ましくは0.2質量%未満である。
抗菌剤は液体コーティング媒体の形態で基材に塗布され、それは水溶液または有機溶液、分散またはエマルションであり、しかし典型的には分散であり、特に水性分散液である。コーティング組成物は従来の手順に従って製造されてもよい。たとえば、抗菌剤は充分に撹拌してコーティング媒体に直接添加されてもよい。または、確実に一様に分布させるために、適切な液状媒質に事前に分散されまたは事前に混合され、次に事前に分散され/事前に混合された抗菌剤を充分に撹拌して主コーティング組成物に添加してもよい。水性コーティング組成物では、表面乳化剤が抗菌剤の分散を補助するために使用されてもよい。
【0026】
有機溶媒と水との混合物ばかりではなく、非水性有機溶媒も使用できるが、適切な液体溶媒は水である。液体溶媒は充分に揮発性であり、ヒートセット工程中に除去されるべきである。一実施形態では、液体溶媒は充分に揮発性であり、実質的にすべての液体溶媒(すなわち少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%)はヒートセット工程中に蒸発する。
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、基材表面のぬれ性を補助するために界面活性剤を含有する。従来のどのような界面活性剤を使用してもよく、適切な界面活性剤としては、エトキシル化非イオン性界面活性剤、アルコールエトキシレート界面活性剤、ならびに、アルコールアルコキシレート界面活性剤、例えばアルキルフェノールエトキシレート界面活性剤およびエトキシル化ソルビタン脂肪酸界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどが挙げられる。
【0027】
コーティングは「インライン」、すなわちフィルム製造のプロセス中に基材に適用される。コーティングは延伸操作の実施前に、または延伸基材に適用されてもよい。しかしながら、コーティング組成物の塗布は、好ましくは延伸操作中に実施される。従って、コーティングは好ましくは二軸延伸操作の2つの段階(長手方向および横手方向)の間にフィルム基材に塗布され、すなわち「延伸間(inter−draw)」コーティングとして塗布される。従って、フィルム基材はヒートセットされる前に、最初に縦方向に一連の回転ローラ上で延伸され、コーティング組成物でコーティングされ、次にテンターオーブンの中で横手方向に延伸されてもよい。コーティング組成物は、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、ビードコーティング、スロットコーティング、静電吹きつけコーティング、押し出しコーティングまたは溶融コーティングなどの任意の好適な従来のコーティング技術によってポリマーフィルムに塗布されてもよい。基材にコーティング組成物を堆積させる前に、その露出面は、望ましくは、当該技術分野において知られているように化学的または物理的に表面改質処理を実施して、面とその後に塗布されるコーティングとの間の結合を改良してもよい。物理的な表面改質処理としては、火炎処理、イオン衝撃、電子ビーム処理、紫外光処理、およびコロナ放電が挙げられる。
コーティング組成物は液状コート量で約0.5μmから約50μmの範囲で基材に塗布される。
コーティング組成物のコーティング溶媒は、本明細書の上記に記載のフィルム製造プロセスのヒートセット工程中に通常は実質的に除去される。
【0028】
本発明に使用されるプロセス条件および組成の特徴の組み合わせによって、製造プロセスのヒートセット工程中に、基材の第2の層の溶融ポリマー材料中に抗菌剤が少なくとも部分的に包埋される。ヒートセット工程中に発生する湿潤/結合相互作用によって、微粒子の抗菌剤がポリマーマトリックスによって適切な位置に堅固に保持されるフィルムとなる。走査型電子顕微鏡(SEM)によるフィルム表面分析によって、最終形態のフィルムのポリマーマトリックスの表面上または直下に抗菌剤が保持されていることが分かり、フィルムを製造する前に同程度の量の抗菌剤が取り込まれたポリマーを使用して製造されたフィルムに比較して、著しく異なる表面プロファイルを示すことが分かった。
望ましい場合は、わずかな圧力を微粒子の添加物の層に印加して粒子を第2の層の中に押圧してもよく、該圧力は典型的にはテンターの中で印加され、典型的には横方向に延伸させる段階の直前である。第2の層と結合しないまたは第2の層に侵入しない過剰な微粒子の添加物は、例えばコート基材を反転させることで、空気噴射で粒子を分散させることで、または粒子を刷毛で落とし、または洗浄することでその表面から粒子を除去してもよい。コート基材は空気中で冷却され、または第2の層への粒子の結合を完了するために急冷されてもよく、およびフィルムの表面から過剰な粒子のすべてが除去される前または後のいずれかに冷却または急冷操作が実施されてもよい。
【0029】
一実施形態では、抗菌フィルムは共押し出しされた第2の層から離れた第1の層の表面に配置されたコーティング層を含有し、このコーティング層は水蒸気および/または酸素に対するバリアを与えるのに充分なバリアコーティング層である。一実施形態では、コーティングは0.01g/100平方インチ/日から10g/100平方インチ/日、好ましくは0.01g/100平方インチ/日から0.1g/100平方インチ/日、一実施形態では0.1g/100平方インチ/日から1.0g/100平方インチ/日の範囲の水蒸気透過速度を与えるのに充分であり、および/またはが0.01から10cm3/100平方インチ/日/気圧、好ましくは0.01から1cm3/100平方インチ/日/気圧、一実施形態では0.1から1cm3/100平方インチ/日/気圧の範囲の酸素透過速度を与えるのに充分である。適切な塗布量(coat weights)の範囲は0.01g/m2から14g/m2、好ましくは0.02g/m2から1.5g/m2である。従来のバリアコーティングとしては、PVDC、PCTFE、PE、PP、EVOHおよびPVOHが挙げられる。PVDC層はガスおよび水蒸気の両方に対するバリアを与えるために特に適切であり、EVOHおよびPVOH層はガスに対するバリアを与えるために特に適切であり、一方PCTFE、PEおよびPP層は水蒸気に対するバリアを与えるために特に適切である。適切な層は当該技術分野において知られており、たとえば、米国特許第5328724号(EVOH)、米国特許第5151331号(PVDC)、米国特許第3959526号(PVDC)、米国特許第6004660号(PVDCおよびPVOH)に開示されている。適切なPVDCポリマー層は65質量%から96質量%の塩化ビニリデンと、4%から35%の塩化ビニル、アクリルニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、またはアクリル酸メチルなどの1つまたは複数のコモノマーとのコポリマーであり、一般にサランと称する。適切なグレードは、約7質量パーセントのメタアクリロニトリル、3質量パーセントのメタクリル酸メチル、および0.3質量パーセントのイタコン酸のコモノマーを含有する。
【0030】
さらなる実施形態では、抗菌フィルムは、共押し出しされた第2の層から離れた第1の層の表面上に配置されたコーティング層を含有し、このコーティング層は、本明細書に記載の試験方法によってこれをヒートシールした場合に、100g/インチから2500g/インチのヒートシール強度を与えるのに充分なシーラントコーティング層である。好ましくは、ヒートシール強度は少なくとも約300g/インチであり、好ましくは少なくとも500g/インチであり、好ましくは少なくとも750g/インチである。適切な塗布量の範囲は0.5g/m2から14g/m2であり、好ましくは1.0g/m2から10g/m2である。適切なヒートシール可能なコーティングまたはシーラントコーティングとしては、エチレン酢酸ビニル(EVA)、非晶質ポリエステル(APET)、ポリエチレン(PE)などのオレフィンポリマー、カプロラクトン、エチレンメタクリル酸(EMAA)などの酸コポリマー、サーリンなどのアイオノマー、およびスチレンイソプレンスチレン(SIS)などのスチレンコポリマーが挙げられる。適切な層は当該技術分野において知られている。米国特許第4375494号および米国特許第6004660号は非晶質コポリエステルシーラント層について記述している。適切なコポリエステルは、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を含有してもよい。適切な芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、または2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、適切な脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸またはピメリン酸が挙げられる。好ましい芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸である。好ましい脂肪族ジカルボン酸はセバシン酸、アジピン酸およびアゼライン酸から選択される。特に好ましい脂肪族ジカルボン酸はセバシン酸である。コポリエステル中に存在する芳香族ジカルボン酸の濃度は、コポリエステルのジカルボン酸成分を基準にして、好ましくは40モル%から80モル%の範囲、一層好ましくは45モル%から65モル%、特に50モル%から60モル%の範囲である。コーティング層のコポリエステルのグリコール成分は、好ましくは、2個から8個、一層好ましくは2個から4個の炭素原子を含有する。適切なグリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。脂肪族グリコール、特にエチレングリコールまたは1,4−ブタジオールが好ましい。特に好ましい実施形態では、脂肪族グリコールは1,4−ブタジオールである。該コポリエステルのガラス転移点は、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満、特に−50℃から0℃の間の範囲、特に−50℃から−10℃の範囲であり、融点の範囲は90℃から250℃、一層好ましくは110℃から175℃、特に110℃から155℃である。該コポリエステルの特に好ましい例は(i)アゼライン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのコポリエステル、(ii)アジピン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはエチレングリコールとのコポリエステル、および(iii)セバシン酸およびテレフタル酸と脂肪族グリコール、好ましくはブチレングリコールとのコポリエステルである。好ましいポリマーとしては、ガラス転移点(Tg)が−40℃であり融点(Tm)が117℃である、セバシン酸/テレフタル酸/ブチレングリコール(好ましくは45〜55/55〜45/100の相対モル比で成分を有するもの、一層好ましくは50/50/100の相対モル比で成分を有するもの)のコポリエステル、および、Tgが−15℃であってTmが150℃である、アゼライン酸/テレフタル酸/エチレングリコール(好ましくは40〜50/60〜50/100の相対モル比で成分を有するもの、一層好ましくは45/55/100の相対モル比で成分を有するもの)のコポリエステルが挙げられる。適切なEVAポリマーはデュポン社からエルバックス(Elvax)(登録商標)樹脂として入手することができる。典型的にはこれらの樹脂の酢酸ビニル含有量は9%から40%の範囲、典型的には15%から30%の範囲である。
【0031】
さらなる実施形態では、抗菌フィルムは、共押し出された第2の層から離れた第1の層の表面上に配置されるコーティング層を含有し、このコーティング層はバリア特性とヒートシール特性の両方を提供し、この点ではPVDCコーティングが適切である。
バリアおよび/またはシーラントコーティング層は、共押し出された第2の層から離れた基材の第1の層に、インライン(たとえば従来の両面インラインコーティングプロセスによって)またはオフラインのどちらかによって適用されてもよい。コーティングは既に延伸された基材に適用されてもよい。しかしながら、コーティング組成物の塗布は、好ましくは本明細書で上述した延伸操作の間または前に実施される。コーティング組成物は、水溶液または有機溶液で、分散またはエマルションで、好適にはニートの形態で、本明細書で上述した任意の好適な従来のコーティング技術でポリマーフィルム基材に塗布される。コーティング組成物を基材の上に塗布する前に、その露出面は本明細書で上述した表面改質処理が施されてもよい。バリアおよび/またはシーラントコーティング層の厚さは典型的には約0.01μmから14.0μmの範囲である。一実施形態では、コーティングの厚さは約5μm以下であり、好ましくは約4μm以下であり、好ましくは約2μm以下であり、好ましくは約1μm以下である。好ましくは、コーティング層は約0.02μmから約1.5μmの範囲であり、好ましくは0.02μmから約1.0μmの範囲である。一実施形態では、コーティング層の厚さは0.5μm以上の厚さである。
本明細書に記載のフィルムは、例えば医療およびケータリングなどの状況および機器、並びに食品包装などのさまざまな用途における抗菌性表面の提供に用いることができる。他の用途としては、洗面所、ごみ処理、動物の餌入れ、学校、プール区域、自動車備品、パブリック・アクセス(public access)備品、公共の座席、公共交通備品、おもちゃ、および他の工業、農業、商業、または消費者製品が挙げられる。
【0032】
以下の試験方法を使用してポリマーフィルムの特定の特性を決定できる。
(i)ヘイズ(散乱透過可視光%)はGardner Hazegard SystemXL−211を用いて、ASTM D1003に従って測定する。
(ii)水蒸気透過速度はASTM D3985によって測定される。
(iii)酸素透過速度はASTM F1249によって測定される。
【0033】
(iv)抗菌活性は、JIS Z2801:2000に従って主に評価され、本明細書では「標準方法」として参照される。JIS Z2801に記載された方法を使用して調製された大腸菌(7.6×105細胞/ml;ATCC8739)またはMRSA(7.7×105細胞/ml;NCTC11939)のいずれかの一定量(400μl)の対数期細胞懸濁液を、40mm×40mmポリエチレンフィルム(無菌ストマッカー袋から切り取った)を使用した3個の試験表面の複製のそれぞれに35℃で24時間密接に接触させた。生存個体群のサイズがJIS Z2801に記載された方法を使用して決定された。JIS Z2801に記載されたTrypcase Soya Agar寒天培地へのスパイラル希釈(spiral dilution)および混釈平板方法によって懸濁液中の生存細胞が数えられた。次にこれらの平板は35℃で24時間培養され、次にカウントされた。追加の3個の複製の強化されていない表面も上述された方法で植菌されたが、ゼロ時間制御データを提供するために、存在する微生物個体群サイズが直ちに分析された。すべてのデータはコロニー形成単位(CFU)/cm2に変換され、次にガウス分布に合致するデータセットを提供するように変換された。検出されたすべての結果の統計的有意性が分散分析(ANOVA;P=0.05)によって試験され、平均の信頼区間が演算され、箱髭図として表示された。それぞれの平均間の差異はANOVA演算中に最小有意差(LSD)法によって分析された。
抗菌活性も、汚染液体の散布(すなわち汚染液体の残留物)に由来する微生物個体群の処理系の効果を検討できるJIS Z2801:2000の修正版を使用して評価でき、これは本明細書では「シナリオ方法」と称する。両方の露出条件(温度&湿度)および使用される液体は標準方法に対して異なる。すなわち、無菌1.5%BSA(ウシ血清アルブミン)、無菌蒸留水または無菌人工尿溶液(19.4gの尿素、8.0gの塩化ナトリウム、0.6gの塩化カルシウム、1.0gの硫酸マグネシウムおよび971.0gの無菌蒸留水)のいずれかに懸濁しているMRSA(6.2×106細胞/ml)または大腸菌(4.6×106細胞/ml)のいずれかの一定量(100μl)の対数期細胞懸濁液が複製試料の上に植菌され、相対湿度65%20℃で24時間まで覆いをせずに放置された。上述のように植菌されたものからランダムに選択された複製(3個の)試料上の生存個体群のサイズは3時間、6時間、12時間および24時間の間隔でJIS Z2801に記載された方法を使用して決定された。残りの試験方法は標準方法として上述された記載に従って実施された。
【0034】
(vi)ヒートシール強度は、Sentinel(登録商標)装置中、250°F(約121℃)で、30psi(約0.21MPa)の下、滞留時間0.35秒間で、フィルム試料をそれ自体とヒートシールする(コーティング層がコーティング層と接触する)ことにより、測定する。
(vii)収縮は、フィルム試料(約1インチ(2.54cm)の帯状片)を、100℃の水浴中に30秒間配置することにより測定し、収縮の計算には熱処理前後における長さの差を用いた。
(viii)フィルムの耐久性は様々な方法を使用して評価された。従って、耐久性は皿洗浄機を使用した加速エージング試験によって評価することができる(以降「皿洗浄機試験」と称する)。試料は皿洗浄機の中で繰り返し40℃サイクルに晒され、抗菌活性は上述の標準試験を使用してエージング試験前、次に10サイクル後、20サイクル後、40サイクル後および60サイクル後に試験された。
さらに、目視検査を含む簡単な粘着力試験および耐摩擦試験も耐久性を評価するために使用することが有益である。使用された方法は以下の表1に記載される。
【0035】
【表1】

【0036】
(ix)結晶融解温度(TM)は示差走査熱量測定計(DSC)ASTM E794を使用して測定された。
(x)体積分布メジアン粒径は全ての粒子の体積の50%に相当する等価球径であり、体積%と粒子の直径との関連を示す累積分布曲線から読み取られ、しばしば「D(v,0.5)」値と称する。メジアン粒子サイズは選択された粒子サイズより下の粒子体積の百分率を示す累積分布曲線をプロットし、第50百分位数を測定することにより決定されてもよい。パラメータはCoulter LS230粒径分析計(Coulter Electronics Ltd,ルートン,英国)を使用して測定されてもよい。
【0037】
(xi)フィルムの銀含有量、すなわち最終形態のフィルムの抗菌剤の含有量の測定は以下のように実施される。最初に試料を加圧マイクロ波分解システムを使用して硝酸中で消化した。これらの消化物中の不溶性物質は測定する前に濾過された。次にそれぞれの試料の新たな部分を沸騰硫酸中で溶解させ、過酸化水素で酸化させ、この調製ルートによって不溶性物質が存在しないきれいな消化物が提供された。それぞれの消化物の銀含有量は、標準に準拠して新たに調製されたマトリックスを参照して、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)によって決定された。両方の調製ルートの結果は類似した。
【0038】
(xii)表面平滑性
表面平滑性は、当該技術分野において知られている従来の非接触、白色、垂直位相シフト干渉法を使用して測定された。使用する機器は波長604nmの光源を使用するWyko NT3300表面プロファイラである。ここで参照するものとして挙げられているWYKO Surface Profiler Technical Reference Manual(Veeco Process Metrology,アリゾナ州,米国,2007年6月,その開示は参照により本願明細書に援用される)によれば、その技術を用いて得られるデータには以下のものがある。
・平均パラメータ、平均粗さ(Ra):平均表面から測定された、評価領域内の測定高さ偏差の絶対値の算術平均。
・平均パラメータ、二乗平均平方根粗さ(Rq):平均表面から測定された、評価領域内の測定高さ偏差の二乗平均平方根の平均。
・極値パラメータ、最大輪郭ピーク高さ(Rp):平均表面から測定された、評価領域内の最大ピークの高さ。
・平均極値パラメータ、平均最大輪郭ピーク高さ(Rpm):評価領域内の10個の最大ピークの算術平均値。
・表面積指数:表面の比平面度の測度。
・平均表面勾配:試料領域上でx方向およびy方向のそれぞれの方向で隣接する画素間の平均勾配に基づいて演算される表面のピークの平均勾配の尺度。
【0039】
粗さパラメータおよびピーク高さは、試料表面領域の平均レベル、すなわち「平均表面」と比較して、従来の技術に従って測定される。(ポリマーフィルム表面は完全に平面では無い場合があり、表面を横切ってしばしば緩やかな起伏がある。平均表面とは、起伏および表面高さの始まり(surface height departures)の中心を通り、平均表面の上と下とで等体積になるように輪郭を分割する面である。)表面輪郭分析は、表面輪郭測定器の「視野」(一回の測定で走査される領域である)内のフィルム表面の個別の領域を走査することによって実施される。フィルム試料は個別の視野を使用して、または配列を形成する連続する視野を走査して分析されてもよい。本明細書で実施される分析はWykoNT9800表面輪郭測定器の全分解能を利用し、それぞれの視野は480×640画素を含む。Ra、Rq、Rpm、Rpおよび表面積指数を測定するために、倍率50倍の対物レンズを使用して分解能を高めた。得られた視野は94μm×126μmの寸法を有し、画素サイズは0.1968μmである。156個の測定からなる隣接する視野は組み合わされて(すなわち「縫い合わせられ(stiched)」、測定領域の20%を重ね合わせた)、1.0mm×1.2mm寸法の単一の大きな視野を形成した。これを3回繰り返し、統計的に信頼できる表面粗さパラメータを得た。表面勾配を測定するために、20回測定して平均値を決定した。
【0040】
表面積指数は「3次元表面積」および「横方向表面積」から以下のように演算される。試料領域の「3次元(3D)表面積」はピークと谷を含めた全ての露出した3D表面積である。「横方向表面積」は、横方向に測定された表面積である。3D表面積を演算するためには、表面高さを有する4個の画素が、X、Y、Z寸法を有し中心に位置する画素を生成するために使用される。得られた4個の三角形の面積を使用して近似的な体積を生成する。この四画素ウィンドウは全データセットの中を移動する。横方向表面積は各画素のXY寸法と視野の画素数を掛け合わせることにより演算する。表面積指数は3D表面積を横方向表面積で除算することにより演算され、表面の相対平坦性の尺度である。指数が1に非常に近いと非常に平坦な表面を示し、横方向面積(XY)は全3D面積(XYZ)に非常に近い。
本明細書ではピークから谷の値を「PV95」と呼び、平均表面の面を基準とした表面高さを関数とする正負表面高さの周波数分布から得られる。PV95の値は、データポイントの最高および最低の2.5%を除くことで、分布曲線の95%のピークから谷の表面高さデータを包含するピークから谷の高さの差である。PV95パラメータは表面高さのピークから谷の広がり全体にとって統計的に重要な尺度である。
平均表面勾配は、本願ではRa値に基づいて演算され、それぞれの画素間の、2点間の勾配のすべてをx方向とy方向のそれぞれの方向で決定した。それぞれの2点間の勾配角度は、画素間の高さの差(すなわち勾配角の「対辺」)を横方向の分離距離(すなわち勾配角の「隣辺」)で除算したtan-1(すなわち逆正接関数)を計算することによって評価される。本願における平均表面勾配の値はx値とy値との算術平均である。
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。実施例は例示を目的にのみするもので、上記本発明を制限することは意図されていないことを理解するべきである。詳細部分の変更は本発明の範囲から逸脱しない範囲で実施可能である。
【実施例】
【0041】
実施例1
コーティング組成物は抗菌剤Alphasan(登録商標)RC2000(ミリケン社製(英国)、粒子サイズは1.0μmであり、10質量%の銀を含有する)の水性分散液(17%の全固形物)として調製され、以下の成分を混合した。
(i)825グラムのAlphasan(登録商標)RC2000、
(ii)25gのCaflon(登録商標)NP10界面活性剤(ユニバール(Univar)社製、英国)の10%水溶液を250グラム、
(iii)組成物を5000gにする脱イオン水。
界面活性剤を適切な大きさのビーカの中に入れ、渦を発生するようにマグネチックスターラで充分に撹拌しながら水を添加し、その後徐々にAlphasanを添加した。ウルトラ−ターラックス(Ultra−Turrax)攪拌機を使用して速度357rpmで30分間の高せん断速度で、混合物をさらに混合した。
【0042】
PET(本願で定義される「第1の層」を形成する)を含有するポリマー組成物はテレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール(82/18/100)(本願で定義される「第2の層」を形成する)を含有するコポリエステルと共に共押し出され、冷却された回転ドラム上にキャストされ、80℃から81℃の温度に予備加熱され、元の寸法からおおよそ3.4倍に押し出し方向に延伸された。次に抗菌コーティング組成物がオフセットグラビアコーティングでライン速度の90%(すなわちグラビアロールの接線速度はフィルムウェブ速度の90%である)で塗布され、液状塗料の量を約15.9μmとした。フィルムは温度約95℃に加熱され、温度110℃のテンターオーブンの中を通り、フィルムが横方向に元の寸法から約3.6倍に延伸された。二軸延伸フィルムは、フィルムウェブ速度11.9m/分の従来手段で、所定の温度(225℃、220℃および200℃)の3つの区域で連続加熱されてヒートセットされた。3つの区域それぞれのおおよその滞留時間は40秒であった。最終形態のフィルムの総厚は100μmであり、第2の層のコポリエステルは約0.8μm厚であった。
最終形態のフィルム中の微粒子の抗菌剤の量は基材の総ポリマー材料の質量の4340ppmであり、銀含有量は基材の総ポリマー材料の質量の434ppmであった。最終形態のフィルムの第2の層の微粒子の抗菌剤の量は、第2の層の総ポリマー材料の54質量%であった。SEM分析によって大量に凝集し、高表面濃度で抗菌粒子が第2の層から突き出ていることが示された。
【0043】
実施例2、3および4
(i)コポリエステル層の厚さを変化させること、並びに(ii)3つのヒートセット区域の温度はそれぞれ205℃、220℃および220℃であり、ヒートセット中に約6%〜7%緩和させたこと以外は実施例1の手順を繰り返した。WykoおよびSEM分析によって、大量に凝集して表面に高濃度で抗菌粒子が第2の層から突き出ていることが明らかになった。実施例は以下の表2で特徴付けられる。
【表2】

【0044】
実施例5
ライン速度の70%を使用して実施例1の手順を繰り返した。
【0045】
比較例1および2
共押し出し二層フィルムは、(i)フィルムの両方の層がPETであること、(ii)予備加熱温度と横方向延伸温度は、それぞれ85℃および100℃であること、(iii)3つのヒートセット区域の温度は、それぞれ195℃、210℃および195℃であること、(iv)第2の層の厚さは4μmであること、並びに(v)抗菌剤はフィルムを製造する前に20,000ppm(2%;比較例1)と80,000ppm(8%;比較例2)の濃度で溶融ポリマーに添加することによって第2の層に組み込まれたことを除いて実質的に実施例1に従って調製した。。これらのフィルムの抗菌活性は低いことが分かった。表面分析によって抗菌剤は表面付近にないことが明らかになった。
【0046】
比較例3
共押し出し二層フィルムは、(i)第2の層の厚さが1μmであること、および(ii)抗菌剤はフィルムを製造する前に50,000ppm(5%)の濃度で溶融ポリマーに添加することによって第2の層に組み込まれたことを除いて実質的に実施例1に従って調製した。観測された抗菌活性は低かった。WykoおよびSEM分析によって、抗菌粒子は殆ど凝集せずに第2の層のポリマーマトリックス中に深く沈み込んでいることが明らかになり、実施例1に比較して表面濃度が低かった。
【0047】
比較例4
抗菌組成物でコーティングされた共押し出し二層フィルムが、(i)基材の両方の層がPETホモポリマーであること、(ii)第2の層の厚さが1μmであること、および(iii)ライン速度が80%で、液状塗料量が約13.3μmであることを除いて、実施例1の方法で調製した。観測された抗菌活性は低かった。抗菌粒子は充分に結合しておらず、フィルムは非常に脆かった。
【0048】
上記のフィルムの抗菌活性を測定し、その結果を以下の表3および表4に示す。表3のデータはJIS Z2801:2000に基づく試験を使用して収集された。表4のデータは本明細書に記載の「シナリオ方法」(JIS Z2801:2000の修正版)を使用して収集された。本発明によるフィルムはすべて優れた抗菌効果を示し、比較例のフィルムよりも優れている。
実施例1、実施例3および実施例4の耐久性を本明細書に記載の試験を使用して、比較例4と比べて試験し、その結果を以下の表5に示す。本発明によるフィルムは優れた耐久性を示した。
上記のフィルムの表面粗さ特性を本明細書に記載の試験を使用して測定し、その結果を以下の表6および図1〜図3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌ポリマーフィルムを製造する方法であって、
(a)第1のポリマー材料の第1の層および第2のポリマー材料の第2の層を含有するポリマー基材層を共押し出しする工程であって、前記第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は前記第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低い工程と、
(b)前記共押し出し基材を第1の方向に延伸する工程とを含み、
(c)前記基材層を直交する第2の方向に延伸する工程を含んでもよく、
(d)微粒子の抗菌化合物および液体溶媒を含有し、好ましくは界面活性剤も含有してもよい組成物を前記第2のポリマー層の表面に配置する工程と、
(e)前記第2のポリマー材料の前記結晶融解温度(TM2)よりも高く、しかし前記第1のポリマー材料の前記結晶融解温度(TM1)未満の温度で延伸されたフィルムをヒートセットする工程とを含み、
工程(d)は工程(b)の前に、または工程(b)と工程(c)との間で、または工程(c)の後であって工程(e)の前に実施され、
最終形態のフィルムの前記第2の層は、前記第2の層の前記ポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の前記抗菌化合物を含有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記組成物は、さらに界面活性剤を含有し、および/または前記液体溶媒は水である方法。
【請求項3】
第1のポリマー材料の第1の層と第2のポリマー材料の第2の層とを含有する、共押し出しされ、延伸され、ヒートセットされたポリマー基材層を含有する抗菌ポリマーフィルムであって、
(i)前記第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は前記第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低く、
(ii)前記第2の層は、前記第2の層の前記ポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有し、前記抗菌化合物は前記共押し出しフィルムをヒートセットする前に液体溶媒を用いて前記第2の層の露出面に塗布されるフィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層の露出面は少なくとも1.10の表面積指数および/または少なくとも6°の平均表面勾配を示す方法またはフィルム。
【請求項5】
第1のポリマー材料の第1の層と第2のポリマー材料の第2の層とを含有する共押し出しポリマー基材層を含有する抗菌ポリマーフィルムであって、
(i)前記第2のポリマー材料の結晶融解温度(TM2)は前記第1のポリマー材料の結晶融解温度(TM1)よりも低く、
(ii)前記第2の層は、前記第2の層の前記ポリマー材料の約1質量%から約80質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有し、
(iii)前記第2の層の露出面は少なくとも1.10の表面積指数および/または少なくとも6°の平均表面勾配を示すフィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層は、前記第2の層の前記ポリマー材料の約15質量%から約80質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有する方法またはフィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層の前記ポリマー材料の少なくとも30質量%の量の前記抗菌化合物が存在する方法またはフィルム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層は、前記第2の層の前記ポリマー材料の約1質量%から約15質量%の量の微粒子の抗菌化合物を含有する方法またはフィルム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記抗菌化合物は、銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウムおよびクロムから選択される金属または金属イオンを含む無機化合物である方法またはフィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記抗菌化合物の化学式はM1abc22(PO43・nH2Oであり、
1は銀、銅、亜鉛、スズ、水銀、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウムおよびクロムから選択される少なくとも1つの金属イオンであり、
Aはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンから選択される少なくとも1つのイオンであり、
2は四価金属イオンであり、
aおよびbは正の数であり、cは0または正の数であり、(ka+b+mc)=1であり、
kは金属M1の価数であり、
mは金属Aの価数であり、
0≦n≦6である方法またはフィルム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記抗菌化合物の化学式はAgabcZr2(PO43・nH2Oであり、
Aはアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンであり、
a、bおよびcは正の数であり、(a+b+mc)=1であり、
mは金属Aの価数であり、
0≦n≦6である方法またはフィルム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法またはフィルムにおいて、
aは0.1から0.5の範囲である方法またはフィルム。
【請求項13】
請求項10、11または12に記載の方法またはフィルムにおいて、
bは少なくとも0.2である方法またはフィルム。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
金属Aはナトリウムであり、mは1である方法またはフィルム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
抗菌化合物は、銀を含有する方法またはフィルム。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
抗菌化合物の粒子サイズは体積分布平均粒子直径が約0.1μmから約10μmの範囲である方法またはフィルム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記基材の総ポリマー材料の約2.0質量%以下の前記抗菌化合物が存在する方法またはフィルム。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第1の層と第2の層の前記ポリマー材料はポリエステルから選択される方法またはフィルム。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第1の層の前記ポリマー材料はポリエチレンテレフタレートである方法またはフィルム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層の前記ポリマー材料は、エチレングリコール、テレフタル酸およびイソフタル酸に由来するモノマー単位を含有するコポリエステルである方法またはフィルム。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記基材は二軸延伸される方法またはフィルム。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層の厚さは、全基材の厚さの約0.1%から約30%である方法またはフィルム。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
前記第2の層の厚さは、約0.1μmから約10μmの範囲である方法またはフィルム。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
Tが前記第2の層の厚さであり、Dが抗菌粒子の体積分布平均粒子直径である場合に、T/D比は0.3から10の範囲である方法またはフィルム。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の方法またはフィルムにおいて、
フィルムのヘイズは50%未満である方法またはフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−522725(P2011−522725A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513049(P2011−513049)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001459
【国際公開番号】WO2009/150424
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】