説明

抗菌剤およびそれを用いた基材の表面処理方法

【課題】混練することなく、材料の表面等の必要な場所に限定して存在させることが可能で、溶出、揮発等することなく、有効成分の含有が低濃度であっても、抗菌性を抗菌性、防カビ性、抗ウィルス性に優れた効果を持続的に発揮する抗菌剤を提供する。
【解決手段】一般式(1):


(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)で表される有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性、防カビ性、抗ウィルス性を有する抗菌剤およびそれを用いた基材の表面処理方法およびその抗菌性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤は、生活環境の多様化と生活意識の変化に伴い、そのニーズが大きく広がりつつある。現在では、抗菌、防カビ等の化学的技術は、生活関連分野から、プラスチックス工業、電子部品工業等、あらゆる産業分野にわたって応用がなされている。
【0003】
本発明における抗菌とは、微生物、特に細菌、真菌(カビ)の発生、発育を持続的に防止し、それらに起因する加害を未然に防止または回避する一連の技術である。
【0004】
一時的な殺菌には、紫外線または放射線を使う方法、加熱する方法、冷却する方法、加圧する方法等の様々な物理的技術がある。抗菌とは微生物を対象として、一時的な殺菌と異なり、滅菌以下、静菌以上のレベルが長期にわたり持続的に微生物の繁殖を抑制することである。尚、滅菌とは、微生物が死滅または消滅するレベルであり、静菌とは、これら微生物の増殖が抑制されるレベルである。
【0005】
抗菌剤が抗菌活性を示す細菌には、グラム陽性菌またはグラム陰性菌がある。グラム陽性菌には、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌およびボツリヌス菌のような病原体が挙げられる。一方、グラム陰性菌には、サルモネラ菌、大腸菌、クレブシェラ、ヘモフィルス、緑膿菌およびプロテウスのような病原体があげられる。また、真菌には、白癬菌のようにヒトに寄生して病気を起こすものもある。
【0006】
このように、持続的に微生物の繁殖を抑制するために、抗菌剤が広く使用されている。
【0007】
また、抗菌剤には、防カビ性、およびウィルスの消毒等の抗ウィルス性を合わせ持つものが求められる。
【0008】
人間の生活空間には、様々なカビまたはウィルスが存在している。
【0009】
カビの主な種類としては、アオカビ、コウジカビ、ケカビおよびクモノスカビが挙げられる。一般的にはクロカビという名称もあるが、カビは種類を特定することは難しい。その他、ヨーロッパではアカパンカビも一般的であり、壁のしみは往々にしてクラドスポリウムである。
【0010】
一方、ウィルスの主な種類としては、ノロウィルス、ロタウィルス、ライノウィルス、コロナウィルスおよび呼吸器合胞体ウィルスが挙げられる。ウィルスには外膜を持っているものと持たないものとがあるが、概して、外膜を持っているウィルスは、細菌に有効な消毒剤に対して感受性が強く、一方、外膜を持たないウィルスは、抵抗力が強い。外膜を持たない主なウィルスは、RNAウィルスでは、ポリオ等のエンテロウィルスおよびレオウィルスであり、DNAウィルスではアデノウィルス、パポバウィルスおよびB型肝炎ウィルス等である。外膜を持たないRNAウィルスであるポリオ、コクサッキーおよびエコー等のエンテロウィルスは、一般に各種消毒剤に対して抵抗力が強く、アデノウィルスがこれに次ぎ、外膜を持っているヘルペスウィルス、ワクチニアウィルスおよびインフルエンザウィルスは感受性が強い。薬剤の中では、次亜塩素酸ソーダが、どのウィルスに対しても比較的低濃度で有効な消毒剤といわれている。
【0011】
また、抗菌剤の種類は多岐にわたっており、その使用目的によって様々使い分けられている。抗菌剤を分類すると、有機化合物系、無機化合物系または天然物系に大別することができる。
【0012】
有機化合物系の抗菌剤としては、チアゾール系、イミダゾール系、ピリジン系もしくはトリアジン系等の複素環式化合物、アミン、四級アンモニウム化合物もしくはニトリル化合物等の有機窒素化合物、フェノール、クレゾールもしくはハロゲン化フェノール類等の有機酸素化合物、チオール類等の有機硫黄化合物、またはチオリン酸等の有機リン化合物等が知られている。有機化合物系の抗菌剤は、カビ類に対する抗菌性が高いのが特徴である。しかしながら、フィルムや樹脂成型品に添加した場合には、揮発したり、溶出したりして効果を持続することが難しい。また、有機化合物系の抗菌剤には毒性を示すものも多く、特に食品や食品加工、包装の分野において消費者保護の観点から使用が制限される場合がある。
【0013】
一方、唐辛子エキス、キチン、キトサン、ワサビ抽出物、からし抽出物、茶抽出物またはヒノキチオールに代表される天然物系の抗菌剤が知られている。天然物系も有機化合物系と同様に溶出や揮発の問題はあるが、安全性の高さから好んで使用される場合がある。
【0014】
さらに、銀に代表される無機化合物系の抗菌剤が知られており、特に樹脂成型品やフィルム、繊維等に多くの使用実績がある。無機化合物系の抗菌剤は溶出または揮発し難く、抗菌効果が長期間持続しやすく、また安全性が高いことが利点となっている。しかしながら、銀または銀を担持したゼオライト等の微粒子を樹脂に分散させようとした場合、均一に分散することが難しく、また、内部に位置する抗菌剤は外部の菌に対して働きにくいことから、目的とする抗菌効果を得るには、抗菌剤の添加濃度を上げる必要がある。このことから、抗菌効果として特に防カビ効果は有機化合物系に劣ることが指摘されており、高価な銀を使用する点でも使用分野が限られることが課題である。
【0015】
このような背景のもと、抗菌性を持つ化合物基を樹脂に固定化しようとする試みがなされ、複数の先行技術文献に開示される。
【0016】
例えば、特許文献1には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンをポリマーに結合することによって、溶出または揮発を抑えた高分子としての重合体結合抗菌剤が開示されている。
【0017】
また、特許文献2には、ホスホニウムスルホネート基を有するポリアミド系樹脂をからなる抗菌性樹脂フィルムが開示され、当該抗菌性樹脂フィルムは抗菌作用と持続作用を合わせ持つとされている。
【0018】
特許文献1に記載の重合体結合抗菌剤、特許文献2に記載の抗菌性樹脂フィルム、ともに抗菌性を持つ化合物基を結合させて、樹脂に固定化することに成功している。
【0019】
特許文献3には、カルボキシル基を有する重合体が、該カルボキシル基の一部が銀と結合するとともに、該カルボキシル基と多価金属イオンとの結合によって架橋されてなることを特徴とする抗菌性樹脂が開示され、銀イオンによる抗菌性を長期間発揮するとされる。
【0020】
また、ビスメチド酸基を有する帯電防止剤が特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2008−214396号公報
【特許文献2】特開2001−55458号公報
【特許文献3】特開平9−136808号公報
【特許文献4】特開2010−018785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
無機系の抗菌剤に対しては、樹脂中に抗菌剤を均一に分散する試みがなされている。例えば、特許文献3の抗菌性樹脂は、カルボキシル基を有する重合体において、該カルボキシル基の一部が銀と結合するとともに、該カルボキシル基と多価金属イオンとの結合によって架橋されてなり、銀イオンによる抗菌性を長期間発揮するとされる。しかしながら、特許文献3は、樹脂の化学構造中に抗菌性の有機基を含む抗菌剤に関するものではない。
【0023】
また、従来の抗菌性樹脂は、有機化合物系あるいは天然物系を使用した場合には、溶出、揮発等によって長期間持続的な抗菌効果を得ることが難しいという問題があった。
【0024】
また、銀等無機化合物系の抗菌剤を使用した場合には、その耐熱温度の高さから樹脂に練りこむ等の操作は可能であるが、特に防カビ性において十分な抗菌効果が得られず、また、添加した抗菌剤を、抗菌性を必要とする材料の表面等の必要な場所に限定して存在させることが困難であり、過剰な量を必要としてコスト的な課題も大きかった。
【0025】
本発明は、材料の表面等の必要な場所に限定して存在させることが可能で、抗菌性に加え、防カビ性、抗ウィルス性に優れた効果を持続的に発揮する抗菌剤およびそれを用いた基材の表面処理方法およびそれを用いた抗菌性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の抗菌剤は、発明1に示す抗菌剤である。
【0027】
本発明のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する、即ち一般式(1)で表される有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤である。
【0028】
[発明1]
一般式(1):
【化1】

【0029】
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される有機基を含む樹脂を有効成分として含有する抗菌剤。
【0030】
Aが水素原子の場合、ビスメチド酸基の炭素はパ−フルオロメチドの強い電子吸引性により、水素原子をHイオンとして解離しやすく、C−H結合は共有結合性とイオン結合性を併せ有する。このように、ビスメチド酸は、陽イオンによりビスメチド酸塩になり易い。本発明の抗菌剤が含有する、抗菌性の有効成分として作用する有機基は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基のどちらであってもよい。
【0031】
また、本発明の抗菌剤は、発明2〜9に示す抗菌剤である。
【0032】
抗菌剤を樹脂に単に混練し練りこんだ場合と比べて、発明2〜9に示した特定のポリマー鎖にビスメチド酸基を結合させた樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、ポリマー鎖に有効成分であるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させたことで、有効成分の揮発や溶出が抑制され、抗菌性が長期間に亘って持続する。
【0033】
一般式(1)で表される有機基(ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基)を有する繰り返し単位には、発明2の樹脂が有する一般式(2)で表される繰り返し単位(a)が挙げられる。一般式(2)で表される繰り返し単位を例示すると、発明3のエステル結合を有する一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)、発明4の主鎖にスチレン鎖を有する一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)、発明5の主鎖にノルボルネン環を有する一般式(5)で表される繰り返し単位(a−3)が挙げられる。
【0034】
[発明2]
前記樹脂が、一般式(2):
【化2】

【0035】
(式(2)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a)を有する樹脂である発明1の抗菌剤。
【0036】
上記、一般式(1)および一般式(2)における、RまたはRとしては、CF、C、直鎖状もしくは分枝鎖状のC、Cが挙げられ、本発明の抗菌剤において、合成のし易さより、CFが好適に用いられる。
【0037】
[発明3]
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(3):
【化3】

【0038】
(式(3)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基をである。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−1)である発明2の抗菌剤。
【0039】
[発明4]
前記繰り返し単位(a)が、一般式(4):
【化4】

【0040】
(式(4)中、Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−2)である発明2の抗菌剤。
【0041】
[発明5]
前記繰り返し単位(a)が、一般式(5):
【化5】

【0042】
(式(5)中、R10は単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R10に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−3)である発明2の抗菌剤。
【0043】
[発明6]
前記樹脂が、さらに一般式(6):
【化6】

【0044】
(式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。R14は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状もしくは環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R14に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、R11とR12またはR13とR14は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。)
で表される繰り返し単位(b−1)を含む樹脂である発明2の抗菌剤。
【0045】
[発明7]
前記樹脂が、さらに一般式(7):
【化7】

【0046】
(式(7)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、R11とR12またはR13は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。R15は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R15に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよく、R15は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた架橋剤と反応し得る基を含む。)
で表される繰り返し単位(b−2)を含む樹脂である発明2の抗菌剤。
【0047】
[発明8]
前記樹脂がイソシアネート基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた1種以上の基を含む架橋剤により架橋されてなることを特徴とする架橋剤を含む発明7の硬化型抗菌剤。
【0048】
具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、パラホルムアルデヒド、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシランメチロール化メラミンとその誘導体イオウ、ベンゾイルパーオキサイドまたはアゾビスイソブチロニトリルからなる群から選ばれた少なくとも1つの架橋剤が用いられる。
【0049】
次に、発明9〜14に、本発明の抗菌剤を用いた基材の表面処理方法を示す。
【0050】
発明1に示したビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤、特に発明2〜8に示した特定のポリマー鎖にビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させた樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、様々な形態で適用することが可能である。
【0051】
例えば、樹脂の状態で溶剤に溶かした後に塗布し、基体上に塗布し抗菌性皮膜を形成する基材の表面処理方法、シート状とした後に表面に付着する方法等を適用することが可能である。
【0052】
また、樹脂の前駆体である重合性化合物の状態、または樹脂の繰り返し単位の前駆体である重合性化合物の状態、必要に応じて架橋剤を加えた後、塗布または付着させ、加熱または紫外線等の光照射によって、重合あるいは架橋させて強靭な抗菌性樹脂膜とする表面処理方法を採用することが可能である。
【0053】
このように、本発明の基材の表面処理方法によれば、対象物の表面に被覆して、効率的に基材表面に抗菌剤を塗布または付着させることにより、抗菌性を付与することができる。
【0054】
[発明9]
発明1〜8のいずれかの抗菌剤を基材表面に塗布または付着させて皮膜を形成することを特徴とする基材の表面処理方法。
【0055】
[発明10]
一般式(2−1)
【化8】

【0056】
(式(2−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基をである。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位の前駆体である重合性化合物を基材表面に塗布または付着させて発明1〜8の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする基材の表面処理方法。
【0057】
[発明11]
一般式(2−1):
【化9】

【0058】
(式(2−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される重合性化合物に、さらに一般式(6−1):
【化10】

【0059】
(式(6−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。R14は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R14に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、R11とR12またはR13とR14は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。)
または一般式(7−1):
【化11】

【0060】
(式(7−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である、R11とR12またはR13は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。R15は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R15に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよく、R15は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた架橋剤と反応しえる基を含む。)
で表される重合性化合物を加えた後、基材表面に塗布または付着させて発明6または発明7に記載の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする発明10に記載の基材の表面処理方法。
【0061】
尚、以上の繰り返し単位の前駆体である一般式(2−1)、一般式(6−1)または一般式(6−3)で表される重合性化合物は、モノマーに限らず、以上のモノマーを組み合わせたオリゴマーであってもよい。)
[発明12]
さらに、架橋剤を加えた後に、発明8の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする発明9〜11のいずれかの基材の表面処理方法。
【0062】
本発明の基材の表面処理方法において、上記架橋剤としては、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた1種以上の基を含む架橋剤が挙げられる。
【0063】
具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、パラホルムアルデヒド、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシランメチロール化メラミンとその誘導体イオウ、ベンゾイルパーオキサイドまたはアゾビスイソブチロニトリルである群から選ばれた少なくとも1つの架橋剤が用いられる。
【0064】
[発明13]
前記皮膜を、加熱することで、重合または架橋させて硬化膜とすることを特徴とする発明12の基材の表面処理方法。
【0065】
本発明の基材の表面処理方法において、上記重合のための重合開始剤としては、過ピバル酸−tert−ブチルが好適に用いられる。
【0066】
[発明14]
前記皮膜を、光照射することで、重合または架橋させて硬化膜とすることを特徴とする発明12の表面処理方法。
【0067】
本発明の基材の表面処理方法において、上記光重合のための開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好適に用いられる。
【0068】
また、本発明の基材の表面処理方法において、上記重合性化合物、開始剤、架橋剤に限らず、溶媒を用いてもよく、溶媒としては、2−ブタノンまたはシクロヘキサノンが好適に用いられる。
【0069】
[発明15]
発明9〜14の表面処理方法で表面処理することを特徴とする抗菌性部材の作製方法。
【発明の効果】
【0070】
本発明のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する、即ち、一般式(1)で表される有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基の含有が低濃度であっても、抗菌活性を示し、前記樹脂中におけるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基(CFSOC−の含有率が、樹脂に対して少なくとも0.1質量%以上で、その抗菌効
果がみられ、1質量%以上では抗菌活性の高い効果がみられた。
【0071】
また、本発明のポリマー鎖にビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させた樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、抗菌剤を樹脂に単に混練し練りこんだ従来の抗菌剤と比較して、ポリマー鎖に有効成分であるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させたことで、有効成分の揮発や溶出が抑制され、抗菌性が長期間に亘って持続する。
【0072】
即ち、本発明の抗菌剤およびそれを用いた表面処理法により、材料の表面等の必要な場所に限定して存在させることが可能で、抗菌性、防カビ性および抗ウィルス性に優れた効果を持続的に発揮する抗菌剤およびそれを用いた抗菌性部材を提供された。
【0073】
また、本発明のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基の含有が低濃度で抗菌性を示した。
【0074】
また、抗菌剤を樹脂に単に練りこんだ場合に比べ、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤、特に、特定のポリマー鎖にビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させた樹脂を有効成分として含有する本発明の抗菌剤は、ポリマー鎖に有効成分であるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させたことで、有効成分の揮発や溶出が抑制され、抗菌性が長期間に亘って持続する。本発明の抗菌剤において、前記特定の樹脂中のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基の分布を均一にすることは容易であり、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基が片寄ることなく安全性が高い。
【0075】
本発明のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、様々な形態で適用することが可能である。例えば、塗布等の表面処理方法によって、対象物の表面に被覆して、効率的に抗菌性部材に抗菌性を付与することが可能である。このことは、抗菌剤の使用量の削減効果がある。
【0076】
さらに、本発明のビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、幅広い菌に対する抗菌活性を示した。また、抗菌性のみならず、カビやウィルスに対しても有効な抑制効果を示した。
【0077】
本発明により、優れた抗菌性に加え、防カビ性、抗ウィルス性を併せ持ち、且つその持続性を有し、効率的に大量に製造することが可能であり、生活分野のみならず、電子材料等の工業分野等の広い分野での応用や使用が可能な抗菌材およびそれを用いた基材の表面処理方法およびその抗菌性部材が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0078】
1.抗菌剤
最初に、本発明の抗菌剤について説明する。
【0079】
[発明1]
一般式(1):
【化12】

【0080】
(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される有機基を含む樹脂を有効成分として含有する抗菌剤。
【0081】
Aが水素原子の場合、ビスメチド酸基の炭素はパ−フルオロメチドの強い電子吸引性により、水素原子をHイオンとして解離しやすく、C−H結合は共有結合性とイオン結合性を併せ有する。このように、ビスメチド酸は、陽イオンにより、ビスメチド酸塩になり易く、本発明の抗菌剤が含有する、抗菌性の有効成分として作用する有機基は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基のどちらであってもよい。
【0082】
Aは水素原子または陽イオンのいずれかを表し、1価の陽イオンである場合は、一般式(1)で表される有機基(ビスメチド酸基)の陰イオンと、イオン結合によって1対1のビスメチド酸塩を形成してもよい。また、多価の陽イオンは、その価数に相当する陰イオンと塩を形成してもよい。
【0083】
また、Cと結合する陽イオンは、1価の陽イオンまたは多価陽イオンのいずれでもよい。上述の1価の陽イオンとしては、水素イオン(H)、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、銀イオン(Ag)、銅(II)イオン(Cu)、水銀(II)イオン(Hg)、アンモニウムイオン(NH4+)、アルキルアンモニウムイオン、アニリニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラゾーリウムイオン、イミダゾーリウムイオン、ベンズイミダゾーリウムイオン、トリアジニウムイオン、ヘキサヒドロトリアジニウムイオン、トリアゾーリウムイオン、イソオキサゾーリウムイオン、チアゾーリウムイオン、イソチアゾーリウムイオン、ピローリウムイオン、ベンゾチアゾーリウムイオン、チアゾリン−2−オンニウムイオン、イソチアゾリン−3−オンニウムイオン、ベンゾイソチアゾリン−3−オンニウムイオン、ベンゾチアゾリン−2−オンニウムイオンまたはテトラヒドロチアジアジン−2−チオンニウムイオン等が挙げられる。
【0084】
さらに、アルキルアンモニウムイオンとして、モノアルキルアンモニウムイオン(NR
)、ジアルキルアンモニウムイオン(NR)、トリアルキルアンモニウムイオン(NR)またはテトラアルキルアンモニウムイオン(NR)等が挙げられる。さらに、トリアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルアンモニウムイオン(N(CH)、トリエチルアンモニウムイオン(N(C)またはトリブチルアンモニウムイオン(N(C)等が挙げられる。
【0085】
さらに、テトラアルキルアンモニウムイオンとして、テトラメチルアンモニウムイオン(N(CH)、テトラエチルアンモニウムイオン(N(C)またはテトラブチルアンモニウムイオン(N(C)等が挙げられる。
【0086】
さらに、2価の陽イオンとしては、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、ニッケル(II)イオン(Ni2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅(II)イオン(Cu2+)、水銀(II)イオン(Hg2+)、鉄(II)イオン(Fe2+)、コバルト(II)イオン(Co2+)、スズ(II)イオン(Sn2+)、鉛(II)イオン(Pb2+)またはマンガン(II)イオン(Mn2+)等が挙げられる。
【0087】
さらに、3価の陽イオンとしては、アルミニウムイオン(Al3+)、鉄(III)イオン(Fe3+)、クロム(III)イオン(Cr3+)等があげられる。
【0088】
さらに、4価の陽イオンとしては、スズ(IV)イオン(Sn4+)等が挙げられる。
【0089】
また、Aは、錯イオンであってもよく、ジアンミン銀イオン([Ag(NH)、ビオレオ([CoCl(NH)、テトラアンミン亜鉛(II)イオン([Zn(NH2+)、テトラアンミン銅(II)イオン([Cu(NH2+)、テトラアクア銅(II)イオン([Cu(HO)2+)、チオシアノ鉄(III)
イオン([Fe(SCN)]2+)、ヘキサアンミンニッケル(II)イオン([Ni(NH2+)、プルプレオ([CoCl(NH2+)、ヘキサアンミンコバルト(III)イオン([Co(NH3+)、ヘキサアクアコバルト(III)イオン([Co(HO)3+)またはヘキサアンミンクロム(III)イオン([Cr(NH3+)、ローゼオ([Co(NH(HO)3+)等が挙げられる。
【0090】
また、本発明の抗菌剤は、発明2〜9に示す抗菌剤である。
【0091】
抗菌剤を樹脂に単に混練し練りこんだ場合と比べて、発明2〜9に示した特定のポリマー鎖にビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基を結合させた樹脂を有効成分として含有する抗菌剤は、ポリマー鎖に有効成分であるビスメチド酸(CFSOC−を含有させたことで、有効成分の揮発や溶出が抑制され、抗菌性が長期間に亘って持続する。
【0092】
また、一般式(1)で表される有機基を有する樹脂は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基の含有が低濃度であっても、抗菌活性を示し、前記樹脂中における一般式(1)に記載の有機基であるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基(CFSOC−の含有率が、抗菌剤に対して少なくとも0.1mol(モル)%以上で、その抗菌効果がみられ、1mol%以上では抗菌活性の高い効果がみられた。80mol%より多く加えても、その効果は変わらず、かえって酸性が強くなりすぎて扱いづらい。よって、含有率は0.1mol%以上、80mol%以下であることが好ましい。このように、前記抗菌剤は、ビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基(CFSOC−の含有が0.1mol%以上、80mol%以下となるように調製することが好ましい。
【0093】
一般式(1)で表される有機基(ビスメチド酸基、ビスメチド酸塩を含む有機基)を有する繰り返し単位には、発明2の樹脂が有する一般式(2)で表される繰り返し単位(a)が挙げられる。一般式(2)で表される繰り返し単位を例示すると、発明3のエステル結合を有する一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)、発明4の主鎖にスチレン鎖を有する一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)、発明5の主鎖にノルボルネン環を有する一般式(5)で表される繰り返し単位(a−3)が挙げられる。
【0094】
[発明2]
前記樹脂が、一般式(2):
【化13】

【0095】
(式(2)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせを含む2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a)を有する樹脂である発明1の抗菌剤。
【0096】
上記、一般式(1)および一般式(2)における、RまたはRとしては、CF、C、直鎖状もしくは分枝鎖状のC、Cが挙げられ、本発明の抗菌剤において、合成のし易さより、CFが好適に用いられる。
【0097】
[発明3]
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(3):
【化14】

【0098】
(式(3)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基をである。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせを含む2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−1)である発明2の抗菌剤。
【0099】
[発明4]
前記繰り返し単位(a)が、一般式(4):
【化15】

【0100】
(式(4)中、Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−2)である発明2の抗菌剤。
【0101】
[発明5]
前記繰り返し単位(a)が、一般式(5):
【化16】

【0102】
(式(5)中、R10は単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R10に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−3)である発明2の抗菌剤。
【0103】
さらに、本発明の抗菌剤において、繰り返し単位(a)に加え、抗菌剤の有効成分であるビスメチド酸基またはビスメチド酸塩を含む有機基の含有率を調整する、または樹脂の溶剤溶解性、塗布性、機械的特性を調整する、あるいは架橋性官能基を導入するために発明6に記載の繰り返し単位(b−1)、または発明7に記載の繰り返し単位(b−2)を用いてもよい。繰り返し単位(b−1)は架橋基を含まない繰り返し単位であり、繰り返し(b−2)は架橋基を含む繰り返し単位である。
【0104】
2. 繰り返し単位(a)
次いで、本発明の抗菌剤の構成物であるビスメチド酸基を有する繰り返し単位(a)について説明する。
【0105】
一般式(1)に表されるビスメチド酸基を有する繰り返し単位には、発明2の樹脂が有する一般式(2)に表される繰り返し単位(a)が挙げられる。一般式(2)に記載の繰り返し単位(a)を例示すると、発明3のエステル結合を有する一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)、発明4に記載の主鎖にスチレン鎖を有する一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)、発明5に記載の主鎖にノルボルネン環を有する一般式(5)表される繰り返し単位(a−3)が挙げられる。その他、ビニル系の繰り返し単位(a)を含有する樹脂、アミド結合を有する繰り返し単位(a)がある。
【0106】
このように、発明2の抗菌剤が含有するビスメチド酸基を有する樹脂には、発明3のエステル結合を有する一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)、発明4の主鎖にスチレン鎖を有する一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)、発明5の主鎖にノルボルネン環を有する繰り返し単位(a−3)を含有する樹脂がある。その他、ビニル系の繰り返し単位(a)を含有する樹脂、アミド結合を有する繰り返し単位(a)を含有する樹脂が挙げられる。
【0107】
発明3のエステル結合を有する一般式(3)で表される繰り返し単位(a−1)には、以下のエステル系繰り返し単位(a−1)の1〜3が挙げられる。
【化17】

【化18】

【化19】

【0108】
発明4のスチレン結合を有する一般式(4)で表される繰り返し単位(a−2)には、以下のスチレン系繰り返し単位(a−2)が挙げられる。
【化20】

【0109】
発明5の一般式(5)で表される繰り返し単位(a−3)には、主鎖にノルボルネン鎖を有する繰り返し単位(a−3)が挙げられる。
【0110】
主鎖にノルボルネン鎖を有する繰り返し単位(a−3)
【化21】

【0111】
発明2の一般式(2)で表される繰り返し単位(a)には、以下のビニル系の繰り返し単位(a)のアミド系繰り返し単位(a)1、2等、トリスメチド酸基を有する繰り返し単位(a)等が挙げられる。
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【0112】
3.繰り返し単位(b−1)および(b−2)
次いで、本発明の抗菌剤に使用する樹脂が有してもよい繰り返し単位(b−1)および(b−2)について説明する。
【0113】
本発明の抗菌剤において、繰り返し単位(a)に加え、抗菌剤の有効成分である一般式(1)に記載の有機基の含有率を調整する、または樹脂の溶剤溶解性、塗布性、機械的特性を調整する、あるいは架橋性官能基を導入するために発明6の繰り返し単位(b−1)、または発明7の繰り返し単位(b−2)を用いてもよい。繰り返し単位(b−1)は架橋基を含まない繰り返し単位であり、繰り返し単位(b−2)は架橋基を含む繰り返し単位である。
【0114】
本発明の抗菌剤が含有する樹脂は、繰り返し単位(a)のみを含む重合体であってもよいし、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b−1)または繰り返し単位(b−2)を含む重合体であってもよい。
【0115】
繰り返し単位(b−1)に多官能アクリレート等の多官能重合性化合物を用いた場合には、機械的強度の高い樹脂を得ることが可能となり、好適に採用される。
【0116】
また、繰り返し単位(b−1)または繰り返し単位(b−2)に水酸基等の架橋部位を含有する樹脂は、イソシアネート化合物等の硬化剤との反応によって、架橋構造を有する樹脂とすることも可能であり、機械的強度の高い樹脂を得ることが可能となり、好適に採用される。
【0117】
本発明の抗菌剤を含有する樹脂が有してもよい繰り返し単位(b−1)は一般式(6)で表される。
【化27】

【0118】
式中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基を表す。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表す。R14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜35の直鎖状、分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである1価の炭化水素基を表し、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R14に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。
【0119】
また、R11とR12またはR13とR14は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。
【0120】
本発明の抗菌剤を含有する樹脂が有してもよい繰り返し単位(b−2)は一般式(7)で表される。
【化28】

【0121】
式中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基を表す。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子を表し、R11とR12またはR13は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。R15は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜35の直鎖状、分岐状もしくは環状の1価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである1価の炭化水素基を表し、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R15に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。R15は水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた架橋剤と反応し得る少なくとも一つの基であることを特徴とする。
【0122】
繰り返し単位(b−2)として、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物から選ばれた少なくとも一種類以上の化合物が採用される。
【0123】
繰り返し単位(b−2)としてのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(a−1)、繰り返し単位(a−2)または繰り返し単位(a−3)と共重合可能であれば、そのエステル側鎖について特に制限なく使用できる。
【0124】
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルについて、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、あるいはテトラメチレングリコール基を含有したアクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。さらに、不飽和アミドであるアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、またはジアセトンアクリルアミドが挙げられる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸またはメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート、アルキルアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環またはノルボルネン環から選ばれる環構造を有したアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸、あるいはメタクリル酸が挙げられる。また、α位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸または無水マレイン酸が挙げられる。
【0125】
また、繰り返し単位(b−2)として、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルには、フッ素原子またはフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、またはエステル部位にフッ素原子を含有した置換基を含むアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物が挙げられ、さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。さらに、α位に含フッ素アルキル基が導入された重合性化合物としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、またはノナフルオロ−n−ブチル基から選ばれる含フッ素基が導入された重合性化合物が採用される。
【0126】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する重合性化合物としては、エステル部位にパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する重合性化合物であって、その環状構造が、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはヘキサフルオロカルビノール基で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、または含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが挙げられる。また、エステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸またはメタクリル酸のエステルも使用可能である。
【0127】
これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した重合性化合物を用いることも可能である。そのような重合性化合物としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、または1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートが挙げられる。含フッ素重合性化合物は、得られる樹脂の溶剤溶解性の向上や表面特性ならびに撥水性の向上に有効であり、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の有する繰り返し単位(b−1)を与える重合性化合物として、好ましく採用される。
【0128】
また、繰り返し単位(b−1)として、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物は、スチレン、フッ素化スチレン、またはヒドロキシスチレンの他、ヘキサフルオロカルビノール基またはその水酸基を保護した官能基が一つまたは複数個結合した化合物が挙げられる。即ち、フッ素原子またはトリフルオロメチル基で水素を置換したスチレンまたはヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンが挙げられる。含フッ素スチレン系化合物は、含フッ素アクリル酸エステルと同様に、溶剤溶解性の向上や、得られる樹脂の表面特性ならびに撥水性の向上に有効であり、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の有する繰り返し単位(b−1)を与える重合性化合物として、好ましく採用される。
【0129】
また、繰り返し単位(b−1)として、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基から選ばれたヒドロキシル基を含有するアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルが上げられる。また、シクロヘキシル基、ノルボルネル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテル、上記官能基の水素の一部または全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、または含フッ素アリルエーテルが挙げられる。
【0130】
また、繰り返し単位(b−1)として、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、またはその他の重合性不飽和結合を含有した化合物であれば特に制限なく使用可能である。
【0131】
また、繰り返し単位(b−1)としての炭化水素系のオレフィンは、エチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、フッ化炭化水素系のオレフィンは、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、またはヘキサフルオロイソブテンが挙げられる。
【0132】
また、繰り返し単位(b−1)としてのノルボルネン化合物は、ノルボルネン、1−メチルノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、トリシクロ[4.3.0.12.5 ]−3−デセン、トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−ウンデセン、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン、または8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセンが挙げられる。尚、以上の重合性化合物は単独でも2種以上の併用で使用してもよい。
【0133】
繰り返し単位(b−2)として、特に以下の重合性化合物を用いることが好ましい。
【0134】
アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピル、メタクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル、メタクリル酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、[ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル]トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−[2−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、アリルトリクロロシラン、トリクロロビニルシラン、3−メチル−1−ペンテン−4−イン−3−オール、2−(フルフリルチオ)エチルアミン、trans−アコニット酸、アクリル酸、4−アミノけい皮酸、アンゲリカ酸、2−アセトアミドアクリル酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、2−ブロモけい皮酸、4−ブロモクロトン酸、2−ベンジルアクリル酸、カフェイン酸、4−クロロけい皮酸、trans−けい皮酸、シトラコン酸、trans−p−クマル酸、trans−o−クマル酸、trans−m−クマル酸、クロトン酸、α−シアノけい皮酸、1−シクロヘキセン−1−カルボン酸、1−シクロペンテンカルボン酸、α−シアノ−4−ヒドロキシけい皮酸、トラウマチン酸、trans−2−デセン酸、3,4−ジメトキシけい皮酸、trans−2,3−ジメトキシけい皮酸、trans−2,5−ジクロロけい皮酸、フマル酸、フマル酸モノエチル、trans−2−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、イタコン酸モノメチル、マレイン酸 モノアミド、メサコン酸、メタクリル酸、4−メチル−2−ペンテン酸、trans,trans−ムコン酸、ムコブロム酸、ムコクロロ酸、3−メチルクロトン酸、4−メトキシけい皮酸、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリル酸、3−(3−ピリジル)アクリル酸、α−フェニルけい皮酸、シキミ酸、チグリン酸、2−チオフェンアクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸、3−(トリフルオロメチル)けい皮酸、4−(トリフルオロメチル)けい皮酸、2−(トリフルオロメチル)けい皮酸、アリルメルカプタン、アリルグリシジルエ−テル、1,3−ブタジエンモノエポキシド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、アロバルビタ−ル、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジイソプロピリデンアセトン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ジアリルマロン酸ジエチル、1,3−ジベンジリデン−2−シクロヘキサノン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、1,5,9−デカトリエン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、ファルネシルアセタート、ゲラニル−リナロール、ゲラニル ニトリル、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、イソプレン、(±)−リモネン、ミルセン、メチルシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,7−オクタジエン、フマル酸モノエチル、マレイン酸水素エチル、マレイン酸 モノオクチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノイソプロピル、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、6−アクリルアミドヘキサン酸、アクリルアミド、アリルアミン、1−アリル−2−チオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、アリル尿素、3−アミノクロトン酸メチル、3−アミノ−5,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、S−アリル−L−システイン、3−アミノ−4,4,4−トリフルオロクロトン酸 エチル、3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オン、3−ベンザルブチルアミド、クロトンアミド、けい皮酸アミド、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミン、メタクリル酸グリシジルまたはポリエチレングリコールジアクリレートを含む下記の多官能重合性化合物が挙げられる。
【化29】

【0135】
特に、ポリエチレングリコールジアクリレート、スチレン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、2−ノルボルネン等が好適に用いられる。
【0136】
4.架橋剤
次いで、架橋剤について説明する。
【0137】
本発明において、抗菌剤の耐久性を高めるために水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基等の官能基と反応し得る架橋剤を用いてもよい。
【0138】
このような架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド系化合物、クロロシラン類、アルコキシシラン類、メラミン系化合物、イオウまたはイオウ化合物が挙げられる。これらの化合物の中で多官能化合物が、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成した際、樹脂の架橋密度を挙げることが可能で、機械的強度に優れた樹脂が得られることから、好ましく採用される。
【0139】
また、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において、過酸化物やアゾ化合物を架橋剤に使用して、ラジカル反応によって架橋させる樹脂の合成方法も採用可能であり、得られる樹脂に耐久性が得られることからも、本発明の抗菌剤に特に好ましく採用される。
【0140】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用し、水酸基やアミノ基等と反応して樹脂に架橋構造を形成するイソシアネート化合物としては、1,4−フェニレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジクロロビフェニル−4,4’-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’−ジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート、トリレン-2,6−ジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。また、当該ジイソシアネート化合物のウレチジンジオン型二量化物、ビウレット型三量化物、イソシアヌレート型三量化物、1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン等のポリオールのアダクト体等が挙げられる。また、トリフェニルメタンイソシアネート、またはトリス(イソシアナートファニル)チオホスフェイト等のトリイソシアネート等が挙げられる。
【0141】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、化合物としての安定性があり、得られる樹脂に柔軟性が得られることより、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましく採用される。
【0142】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用し、カルボキシル基等と反応して架橋構造を形成するエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル系化合物、グリシジルエステル系化合物、グリシジルアミン系化合物、または脂環式系化合物等が挙げられる。例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2,2―ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、1,7−オクタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、イソシアヌル酸トリグリシジル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3−ブタジエンモノエポキシド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、または1,2−エポキシ−9−デセン等が挙げられる。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、適度な反応性をもった1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルは特に好ましく採用される。
【0143】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用し、フェノール性水酸基等と反応して架橋構造を形成するアルデヒド系化合物としては、ホルムアルデヒド、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、ポリオキシメチレンまたはプロピオンアルデヒドが挙げられる。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、適度な反応性があり、取り扱いが容易であることより、パラホルムアルデヒドが特に好ましく採用される。
【0144】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用し、シロキサン結合を形成する架橋反応に有用なクロロシラン類としては、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ビニルジクロロシラン、ジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、ビス(トリクロロシリル)アセチレン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)シラン、トリクロロ-2-シアノエチルシラン、またはフェニルトリクロロシランが挙げられる。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、反応性がよく、安価であり入手し易いことより、ジメチルジクロロシランが特に好ましく採用される。
【0145】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用される、シロキサン結合を形成する架橋反応に有用なアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、ベンジルトリエトキシシラン、(3-ブロモプロピル)トリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル クロリド、2-シアノエチルトリエトキシシラン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、1,1,1−トリフルオロ−3−(トリメトキシシリル)プロパン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(4−メトキシフェニル)シラン、またはトリメトキシ(p−トリル)シランが挙げられる。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、反応性がよく、安価であり入手し易いことより、ジメチルジメトキシシランが特に好ましく採用される。
【0146】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用される、水酸基等と反応して架橋構造を形成するメラミン系化合物としては、メラミン、メチロール化メラミン、メチロール化メラミン誘導体が挙げられる。また、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物を用いることができる。また、メラミン系化合物単量体あるいは2量体以上の多量体のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。
【0147】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、反応性がよく取り扱いが容易なことより、メチロール化メラミンとその誘導体が特に好ましく採用される。
【0148】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用される、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基等と反応して架橋構造を形成するイオウ及びイオウ化合物としては、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、モルフォリンジスルフィド、または2−(4’−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0149】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、安価であり取り扱いし易いことより、イオウが特に好ましく採用される。
【0150】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用される、アルキル基等へのラジカル反応による架橋に有用な過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキサイドベンゾエート)ヘキシン−3,1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−トリメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピパレート、またはクミルペルピパレート、tert−ブチルペルジエチルアセテートが挙げられる。
【0151】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、反応性よく、得られる樹脂が機械的特性に優れることから、ベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく採用される。
【0152】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成において架橋剤として使用される、アルキル基等へのラジカル反応による架橋に有用なアゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、またはジメチルアゾイソブチレートが挙げられる。
【0153】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の合成において、低価格であり、取り扱いが容易なことから、アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましく採用される。
【0154】
これら架橋剤は、単独あるいは複数を選んで使用することも可能であり、架橋剤の種類や使用量によって硬化速度やポットライフ、得られる樹脂の物性を適当に調整することも可能である。
【0155】
5.重合方法
次いで、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂に、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(a−1)、繰り返し単位(a−2)、または繰り返し単位(a−3)を与える、これら繰り返し単位の前駆体である重合性化合物を単独重合させ樹脂を得る重合方法について説明する。また、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂に、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(a−1)、繰り返し単位(a−2)、または繰り返し単位(a−3)を与える、これら繰り返し単位の前駆体である重合性化合物と、繰り返し単位(b−1)、繰り返し単位(b−2)を与えるこれら繰り返し単位の前駆体である重合性化合物を共重合させ樹脂を得る重合方法について説明する。
【0156】
重合方法には、ラジカル重合および遷移金属による重合がある。
【0157】
初めに、ラジカル重合について、説明する。
【0158】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合およびイオン重合が好ましく、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、またはビニレン重合を採用することが可能である。
【0159】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤またはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合または乳化重合から選ばれる公知の重合方法により、回分式、半連続式または連続式から選ばれる操作で行なう。
【0160】
ラジカル重合開始剤は特に限定されないが、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を合成するには、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、または過硫酸アンモニウムが、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応に好ましく使用される。
【0161】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応において、重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。重合反応において、重合溶媒を用いてもよい。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応における、重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、酢酸エチル、酢酸n−ブチルから選ばれるエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンから選ばれるケトン系、トルエン、シクロヘキサンから選ばれる炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルカルビノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテルから選ばれるアルコール系溶剤を用いることができる。また、水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、または芳香族系から選ばれた種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は、単独あるいは2種類以上を混合してもよい。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応において、共重合反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜選択され、通常は20℃以上、200℃以下の範囲内が好ましく、特に30℃以上、140℃以下の範囲内が好ましい。
【0162】
次いで、遷移金属による重合について説明する。
【0163】
開環メタセシス重合は、共触媒の存在下、IV、V、VI、またはVII属の遷移金属触媒を用いればよく、溶媒の存在下、公知の方法を用いればよい。遷移金属触媒は特に限定されないが、Ti系、V系、Mo系、またはW系の触媒が挙げられ、特に、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応においては、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、または塩化タングステン(VI)が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して0.001mol%以上、10mol%以下、好ましくは、0.01mol%以上、1mol%以下である。
【0164】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、またはアルキルすずが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、またはトリオクチルアルミニウムから選ばれるトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、またはジイソブチルアルミニウムクロライドから選ばれるジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、またはイソブチルアルミニウムジクロライドから選ばれるモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、またはイソブチルアルミニウムセスキクロライドから選ばれるアルキルアルミニウムセスキクロライド類に代表されるアルミニウム系、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、またはトリフェニルクロロすずが挙げられる。共触媒の使用量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0165】
重合溶媒としては重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼンから選ばれる芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、またはシクロヘキサンから選ばれる炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、または1,2−ジクロロエタンから選ばれるハロゲン化炭化水素が挙げられる。本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応において、これらの重合溶剤は単独でも使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。反応温度は、通常は−70℃以上、200℃以下が好ましく、特に−30℃以上、60℃以下が好ましい。
【0166】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金等のVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、またはタングステンから選ばれるIVB乃至VIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。重合触媒は特に限定されないが、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応において、特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、またはプラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドから選ばれるVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、またはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドから選ばれるIVB乃至VIB属の遷移金属類を用いることが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して0.001mol%以上、10mol%以下、好ましくは、0.01mol%以上、1mol%以下である。共触媒としては、アルキルアルミノキサン、またはアルキルアルミニウムが挙げられ、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を得るための重合反応において、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、またはジイソブチルアルミニウムクロライドから選ばれるジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、またはイソブチルアルミニウムジクロライドから選ばれるモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドから選ばれるアルキルアルミニウムセスキクロライド類が挙げられる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50当量以上、500当量以下、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。また、重合溶媒は重合反応を阻害しなければよく、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼンから選ばれる芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、またはシクロヘキサンから選ばれる炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、または1,2−ジクロロエタンから選ばれるハロゲン化炭化水素系、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、またはN−シクロヘキシルピロリドンが挙げられる。これらの重合溶剤は単独あるいは2種類以上を混合してもよい。反応温度は、通常は−70℃以上、200℃以下が好ましく、特に、−40℃以上、80℃以下が好ましい。
【0167】
このようにして得られる本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂の溶液または分散液から、媒質である有機溶媒または水を除去する方法としては、公知の方法を利用できる。例えば、再沈殿、ろ過、または減圧下での加熱留出等の方法が挙げられる。
【0168】
6.基材の表面処理方法
次いで、基材の表面処理方法について説明する。
【0169】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂は、目的とする基材にコーティングし機材の表面処理をすることが可能である。予め重合反応によって得た樹脂を、溶剤に溶解し、これを基材に塗布、乾燥して皮膜を得ることが可能である。また、塗布時に硬化剤を混合して用い、皮膜の強度を向上することも可能であり、本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂のコーティングにおいて、好ましく採用される。
【0170】
また、重合性化合物あるいはこれに硬化剤を混合したものを基材に塗布し、熱や光あるいは触媒を作用させることによって皮膜を硬化させることも可能である。無溶剤で塗布することも可能であり、製造環境を改善するために非常に効果的である。
【0171】
本発明の抗菌剤の有効成分である樹脂を溶解させる溶媒としては、樹脂が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、または2‐ヘプタノンから選ばれるケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテート、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルから選ばれる多価アルコール類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはメチルイソブチルカルビノールから選ばれる一価アルコール類、あるいはその誘導体、ジオキサンのような環式エーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルから選ばれるエステル類、キシレン、またはトルエンから選ばれる芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、またはヘキサフルオロイソプロピルアルコールから選ばれるフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒を使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いて構わない。
【0172】
本発明において、発明1に示したビスメチド酸基を有する樹脂を有効成分として含有する抗菌剤、および発明2〜8に示した特定のポリマー鎖にビスメチド酸基を結合させた樹脂を有効成分として含有する抗菌剤を基材表面に塗布して皮膜を形成する。
【0173】
即ち、本発明は、発明1乃至発明8のいずれかの抗菌剤を基材表面に塗布して皮膜を形成することを特徴とする基材の表面処理方法である。
【0174】
発明2の繰り返し単位(a)、発明3の繰り返し単位(a−1)、発明4の繰り返し単位(a−2)、または発明5の繰り返し単位(a−3)を与える重合性化合物に加えて、発明6の繰り返し単位(b−1)、発明7の繰り返し単位(b−2)を与える重合性化合物を加えてもよく、発明8の架橋剤を加えてもよい。
【0175】
発明1〜8の抗菌剤の有効成分とする樹脂を合成するための2個以上の重合性二重結合を有する多官能性重合性化合物を用意した。詳しくは、発明2〜5に示したビスメチド酸基を有する繰り返し単位(a)を与える重合性化合物、および発明6の繰り返し単位(b−1)、および発明7の繰り返し単位(b−2)を与える重合性化合物を用意した。これら化合物を、溶剤を用いないで直接にガラス基材の上にバーコータ、スプレー、スピンコート等で塗布した後に、または、これら化合物を含む溶液をガラス基材の上にバーコータ、スプレー、スピンコート等で塗布した後に、重合させることで、本発明の無色透明な抗菌剤の皮膜(抗菌性皮膜)が得られた。
【0176】
化合物によっては、溶剤を用いずに基材表面に直接塗布することが可能であり、溶剤を用い溶液とした場合と異なり、重合後に乾燥工程を必要としないため、溶剤を用いないで皮膜を得ることが好適である。
【0177】
尚、溶液で塗布する際は、溶剤には重合に使用可能な溶剤が好適に用いられる。この際、酢酸エチルおよび酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルイソブチルトンまたはシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、n−ヘキサンおよびn−ヘプタン等の炭化水素系溶剤、メタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルカルビノールまたはエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、水、エーテル系溶剤、環状エーテル系溶剤、フロン系溶剤、あるいはトルエンまたはキシレン等の芳香族系溶剤が使用される。これらの溶剤を、単独で、または複数の種類を混合して、重合溶剤として使用することができる。
【0178】
ラジカル重合反応の開始剤としては、アゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、特にアゾビスイソブチロニトリル、tert−ブチルパーオキシピバレート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、または過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。入手しやすく反応性が良好なことより、過ピバル酸−tert−ブチルが、本発明において、特に好適に用いられる。
【0179】
また、ラジカル重合反応を行なうには、光重合開始剤を用いることもでき、アルキルフェノン系では2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、またはオリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]}プロパノン、アシルホスフィンオキサイド系では2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドを用いることが好ましい。光重合開始剤としては、入手しやすく反応性が良好なことより、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが特に好適に用いられる。
【0180】
重合の反応温度は、用いる開始剤の種類によって異なる。熱重合開始剤を使用した場合、通常、50℃以上、150℃以下が好ましく、ハンドリング上、特に80℃〜120℃が好ましい。
【0181】
また、光重合開始剤を使用した場合、PETフィルムのような比較的耐熱性の低い基材上でラジカル重合させることが可能であり、高圧水銀ランプを用いて、約10mW/cm2の条件で10分間照射することにより光硬化させる。重合反応の反応温度は、通常、0℃以上、100℃以下が好ましく、ハンドリング上、特に20℃以上、50℃以下が好ましい。
【0182】
塗布する基材としては、ガラス、プラスチック、金属等があり、電気部品、電子用品、建材、工芸用品、服飾産業用品、医療用品等が例示される。
【0183】
抗菌性樹脂は、必要に応じ、塩酸水溶液や硫酸水溶液中に浸漬し、イオン交換水で洗浄を行うことができる。
【0184】
また、重合性化合物および架橋性化合物を含む原料溶液を多孔質フィルムへ含浸させる、原料溶液に繊維、ナノシリカ微粒子やグラスファイバー等のフィラーを混合すること等によって、抗菌性樹脂の機械的強度を高めてもよい。
【0185】
抗菌性樹脂の厚みに特に制限はないが、20nm以上、1mm以下が好ましい。20nmより薄く塗布することは困難であり、1mmより厚くする必要はない。膜厚は基板上への塗布厚、即ち、単位体積あたりへの塗布量により調整する。
【実施例】
【0186】
以下、本発明について、具体的な実施例を示す。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0187】
本発明の実施例において、発明3のビスメチド酸基を含むアクリル系繰り返し単位(a−1)を樹脂に含有させるための重合性化合物として、MA−ABMDを用いた例を樹脂の合成例1〜11、および実施例1〜11に示した。
【0188】
次いで、発明4のビスメチド酸基を含むスチレン系繰り返し単位(a−2)を樹脂に含有させるための重合性化合物として、BTSB−DMSSを用いた例を、合成例12、13、および実施例12、13に示した。
【0189】
次いで、発明5のビスメチド酸基を含むノルボルネン系繰り返し単位(a−3)を樹脂に含有させるための重合性化合物として、BTSB−NB−OHを用いた例を、合成例14、15、および実施例14、15に示した。
【0190】
さらに、樹脂の合成例1〜15で得られたものを、実施例1〜19にて樹脂膜化し、得られた樹脂膜を試験片として、実施例JIS Z2801:2006「抗菌性試験方法」の方法に従って大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用いて抗菌性試験を行い、抗菌性を評価した。
【0191】
比較例1に、ポリエチレングリコールジアクリレートとモノメチド酸基を有する構造のMA−EATfを反応させてなる樹脂、比較例2に、ポリエチレングリコールジアクリレートとヘキサフルオロカルビノール基(−(CFOH)を有するMA−3,5−HFA−CHOHを反応させてなる樹脂、比較例3にポリエチレングリコールジアクリレートのみを反応させた樹脂、および比較例4としてポリエチレンフィルムを用いて、抗菌活性試験を行い、本発明のビスメチド酸基を含む樹脂(実施例1〜13)と抗菌性を比較した。
【0192】
樹脂の合成例1〜15で用いたビスメチド酸基を含む樹脂は、合成しやすく取り扱いが容易であることから、特に本発明の抗菌剤に好適に用いることができる。
【0193】
具体的には、MA−ABMD、BTSB−DMSS、BTSB−NB−OHが重合したことにより得られたビスメチド酸基を有する繰り返し単位(a)を含む樹脂である。
【0194】
以下に、MA−ABMD、BTSB−DMSS、BTSB−NB−OH、MA−EATf、MA−3,5−HFA−CHOH、BTSB−CDMS、NBOGおよびA−200の構造式を示す。
【化30】

【0195】
以下、本発明の抗菌剤の有効成分としての樹脂に含有させる繰り返し単位を与える、重合性単量体の合成例を示す。
【0196】
[BTSB−DMSSの合成例]
窒素雰囲気下で、還流冷却器を備えた100mlの三口フラスコ内に、マグネシウム2.08g、テトラヒドロフラン22mlを加え、23℃にて攪拌した。引き続き窒素雰囲気下、当該温度で、p−ブロモスチレン14.50g、ジブロモエチレン0.31g、テトラヒドロフラン62mlの混合液を少量ずつ1時間かけて、徐々に三口フラスコ内に滴下した。滴下後、2時間攪拌し続け、23℃にてBTSB−CDMS9.81gを少量ずつ30分かけて、徐々に滴下した。滴下後、30分攪拌し続け、その後、1N塩酸水溶液およびトルエンを加え、攪拌混合する洗浄操作を2回行った。洗浄操作を行った後の内容物はトルエンと共沸させて、脱水操作を行った後、上記ノンフレックスMBP0.25gを加え、150Paの減圧下138〜142℃で減圧蒸留を行い、4−(4,4−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ブチルジメチルシリル)スチレン(以下、BTSB−DMSSと略する)を留出させて、11.42gが得られた。この際、収率は53.9%であった。尚、本合成例の反応式は以下、Reaction Formula(1)に示す通りである。
【0197】
[BTSB−DMSSのスペクトルデータ]
1H−NMR(溶剤:重クロロホルム);σ=6.15−5.97(m,2H),5.72−5.67(m,1H),4.78(t,J=8.0Hz,1H),2.49−2.47(m,2H),1.76−1.69(m,2H),0.63(t,J=8.0Hz,2H),0.10(s,6H)ppm
19F−NMR(溶剤:重クロロホルム);σ=−73.30ppm
【化31】

【0198】
[BTSB−NB−OHの合成例]
窒素雰囲気下で、還流冷却器を備えた100mlの三口フラスコ内に、ビスメチド酸10.06g(0.0359モル)、テトラヒドロフラン17mlを加え、0℃にて攪拌した。引き続き窒素雰囲気下、当該温度で、メチルマグネシウムクロリド(3M)24mlを少量ずつ30分かけて、徐々に三口フラスコ内に滴下した。滴下後、23℃にて30分攪拌し続け、当該温度にて前記構造のNBOG6.46g(0.0359モル)をテトラヒドロフラン24mlに溶解させた溶液を少量ずつ10分かけて、徐々に滴下した。滴下後、3時間攪拌し続け、その後、1N塩酸水溶液およびトルエンを加え、攪拌混合する洗浄操作を2回行った。洗浄操作を行った後の内容物はトルエンと共沸させて、脱水操作を行った後、上記ノンフレックスMBP0.25gを加え、130Paの減圧下149〜152℃で減圧蒸留を行い、ノルボルネン化合物(以下、BTSB−NB−OHと略する)を留出させて、11.4gが得られた。この際、収率は68.9%であった。尚、本合成例の反応式は以下、Reaction Formula(2)に示す通りである。
【0199】
[BTSB−NB−OHのスペクトルデータ]
1H−NMR(溶剤:重クロロホルム);σ=6.15(m,1H),5.92(m,1H),5.57(m,1H),4.04(m,1H),3.63−3.59(m,2H),3.27−3.23(m,2H),2.58−2.52(m,2H),2.36(m,1H),1.82(m,1H),1.58(m,1H),1.50(m,1H),1.27(m,1H),1.14(m,1H),0.51(m,1H)ppm19F−NMR(溶剤:重クロロホルム);σ=−72.80(s,3F),−73.80(s,3F)ppm
【化32】

【0200】
以下に、本発明の抗菌剤に使用する樹脂の重合方法について説明する。
【0201】
[樹脂の合成例1]
ガラス製フラスコ中で、3−メタクリロキシ−1,1−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ブタン酸(以下、MA−ABMDと略する)、1.51g(0.0037mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)2.68g(0.0088mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。
【0202】
ガラス板上に前記溶液5mlを載せ、バーコーターを使用して塗布した。予め80℃に調整した窒素導入装置付きのイナートオーブンに入れ、80℃で30分間加熱した。次に、毎分1℃で昇温させ、さらに120℃にて60分間保持して硬化させ、ガラス基板上に硬化塗膜を形成した。
【0203】
また、予め2枚のガラス板を用意し、隙間ができるようスペーサーとなる厚さ0.2mmの薄いガラスの小片を周辺部に挟み込み、その隙間部分に毛細管現象を利用して前記溶液を注入した。窒素雰囲気下、80℃に昇温させたオーブン内にて30分間保持した後、毎分1℃で昇温させ、さらに120℃にて60分間保持して硬化させた。オーブンから取り出して室温まで冷却した後、水をはったバットに浸漬した。1時間後、樹脂膜をガラス板から剥がし、水分をウエスで拭き取った後、室温で放置して乾燥し、硬化した自立膜を得た。
【0204】
[樹脂の合成例2]
ガラス製フラスコ中に、MA−ABMD、4.06g(0.0100mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)0.76g(0.0025mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、樹脂の合成例1と同様の手順で該溶液を硬化させた。
【0205】
[樹脂の合成例3]
ガラス製フラスコ中に、MA−ABMD、0.528g(0.0013mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)3.435g(0.0113mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、樹脂の合成例1と同様の手順で該溶液を硬化させた。
【0206】
[樹脂の合成例4]
ガラス製フラスコ中に、MA−ABMD、0.053g(0.00013mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)3.760g(0.01237mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、樹脂の合成例1と同様の手順で該溶液を硬化させた。
【0207】
[樹脂の合成例5]
ガラス製フラスコ中に、MA−ABMD、0.053g(0.00013mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)7.864g(0.02587mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、樹脂の合成例1と同様の手順で該溶液を硬化させた。
【0208】
[樹脂の合成例6]
ガラス製フラスコ中に、MA−ABMD、0.0053g(0.000013mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)3.7960g(0.012487mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、樹脂の合成例1と同様の手順で該溶液を硬化させた。
【0209】
[樹脂の合成例7]
ガラス製フラスコ中にて2−ブタノン10.4gへMA−ABMDを5.00g(0.0123モル)溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.057gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を240gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い4.08gの白色固体を得た。
【0210】
GPC測定結果;Mw=80,100、Mw/Mn=2.77
DSC測定結果;Tg=160℃
[樹脂の合成例8]
ガラス製フラスコ中にて2−ブタノン9.8gへMA−ABMDを3.90g(0.0096モル)、スチレン(東京化成工業株式会社製)を1.00g(0.0096モル)溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.094gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を100gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い1.59gの白色固体を得た。
【0211】
GPC測定結果;Mw=31,200、Mw/Mn=1.98
DSC測定結果;Tg=116℃
[樹脂の合成例9]
ガラス製フラスコ中にて2−ブタノン9.8gへMA−ABMDを2.03g(0.0050モル)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン(東京化成工業株式会社製)を0.97g(0.0050モル)溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.049gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を200gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い2.31gの白色固体を得た。
【0212】
GPC測定結果;Mw=74,500、Mw/Mn=2.02
DSC測定結果;Tg=132℃
[樹脂の合成例10]
ガラス製フラスコ中にて2−ブタノン1.4gへMA−ABMDを1.80g(0.0044モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを0.07g(0.0005モル)溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.024gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を100gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い1.77gの白色固体を得た。
【0213】
GPC測定結果;Mw=429,400、Mw/Mn=4.87
DSC測定結果;Tg=148℃
[樹脂の合成例11]
ガラス製フラスコ中にて2−ブタノン10.3gへMA−ABMDを0.20g(0.0005モル)、メタクリル酸メチル(東京化成工業株式会社製)を4.96g(0.0495モル)溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.123gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を105gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い4.13gの白色固体を得た。
【0214】
GPC測定結果;Mw=36,400、Mw/Mn=1.71
DSC測定結果;Tg=148℃
[樹脂の合成例12]
ガラス製フラスコ中にて酢酸ブチル2.8gへBTSB−DMSSを5.08g(0.0105モル)加え、溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.55gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を28gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い4.65gの白色固体を得た。
【0215】
GPC測定結果;Mw=33,300、Mw/Mn=1.44
[樹脂の合成例13]
ガラス製フラスコ中にて酢酸ブチル7.7gへBTSB−DMSSを7.54g(0.0156モル)、アクリロニトリル8.01g(0.1511モル)加え、溶解し混合した。この溶液に重合開始剤として過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.41gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に70℃にて16時間反応を行なった。反応終了後の溶液を120gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い14.90gの白色固体を得た。
【0216】
GPC測定結果;Mw50万以上
[樹脂の合成例14]
ガラス製フラスコ中にてトルエン4.4gへBTSB−NB−OHを9.24g(0.0201モル)を加え、溶解し混合した。この溶液にジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)0.141g、三フッ化ホウ素エチルエーテル2.15gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に23℃にて4時間反応を行なった。反応終了後の溶液を82gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い5.09gの白色固体を得た。
【0217】
GPC測定結果;Mw=9,000、Mw/Mn=1.48
[樹脂の合成例15]
ガラス製フラスコ中にてトルエン4.4gへBTSB−NB−OHを2.47g(0.0054モル)、2−ノルボルネン4.59g(0.0488モル)を加え、溶解し混合した。この溶液にジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)0.200g、三フッ化ホウ素エチルエーテル2.05gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に23℃にて4時間反応を行なった。反応終了後の溶液を80gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、75℃にて減圧乾燥を行い6.31gの白色固体を得た。
【0218】
GPC測定結果;Mw50万以上
合成した樹脂の抗菌性を評価するための試験片を作製した。作製した試験片を用い、JIS Z2801:2006「抗菌性試験方法」の方法に従って大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用いて抗菌性試験を行った。無加工試験片としてはポリエチレンフィルムを用いた。実施例については、上記樹脂の合成例1〜6の硬化物、合成例1〜6の硬化物、合成例7〜15の白色固体から抗菌性樹脂を得る工程について説明する。
【0219】
[実施例1]
樹脂の合成例1で得た硬化物を室温まで冷却後、水に浸漬することで、50mm×50mm×0.05mmの樹脂膜を得た。
【0220】
[実施例2]
樹脂の合成例2で得た硬化物から、実施例1と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0221】
[実施例3]
樹脂の合成例3で得た硬化物から、実施例1と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0222】
[実施例4]
樹脂の合成例4で得た硬化物から、実施例1と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0223】
[実施例5]
樹脂の合成例5で得た硬化物から、実施例1と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0224】
[実施例6]
樹脂の合成例6で得た硬化物から、実施例1と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0225】
[実施例7]
樹脂の合成例7で得た白色固体0.2gをN,N−ジメチルホルムアミド(以後、DMFと略する)3.8gに溶解し混合した。前記溶液をガラス板上に塗布し、120℃に昇温させたオーブン内にて30分間保持した後、毎分1℃で昇温させ、さらに160℃に60分間保持して硬化させ、樹脂膜を得た。
【0226】
[実施例8]
樹脂の合成例8で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0227】
[実施例9]
樹脂の合成例9で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0228】
[実施例10]
樹脂の合成例10で得た白色固体1.50gをシクロヘキサノン10.0gに溶解し、ピリジン0.33g、ヘキサメチレンジイソシアナートを0.10g加えて攪拌し、均一溶液を得た。前記溶液をガラス板上に塗布し、室温にて1時間仮乾燥した後、80℃に昇温させたオーブン内にて30分間保持した後、毎分1℃で昇温させ、さらに130℃に60分間保持して硬化膜を得た。これを1N塩酸水溶液1Lの入ったビーカーに80℃にて1時間浸漬させた後、イオン交換水で洗浄し、75℃にて減圧乾燥を行い、樹脂膜を得た。
【0229】
[実施例11]
樹脂の合成例11で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0230】
[実施例12]
樹脂の合成例12で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0231】
[実施例13]
樹脂の合成例13で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0232】
[実施例14]
樹脂の合成例14で得た白色固体0.2gをDMF3.8gに溶解し混合した。実施例7と同様の手順で樹脂膜を得た。
【0233】
[実施例15]
樹脂の合成例11で得た白色固体0.1gをメチルイソブチルカルビノール9.9gに溶解した。前記溶液を4インチシリコンウェハ基板上にスピンコータにより塗布し、90℃にて3分間乾燥して、厚み20nmの硬化膜を得た。
【0234】
[実施例16]
実施例1と同様の手順で得た樹脂膜から、大きさ50mm×50mmの試験片を切り出し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液200mLに浸漬した。室温で12時間放置後、混合溶液から膜を取り出し、膜表面を蒸留水で洗浄した。液中のナトリウムイオンにより、樹脂膜中のビスメチド酸基は、ナトリウム塩(ビスメチド酸塩)を含む有機基となる。
【0235】
[実施例17]
実施例2と同様の手順で得た樹脂膜から、大きさ50mm×50mmの試験片を切り出し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液200mLに浸漬した。室温で12時間放置後、混合溶液から膜を取り出し、膜表面を蒸留水で洗浄した。液中のナトリウムイオンにより、樹脂膜中のビスメチド酸基は、ナトリウム塩(ビスメチド酸塩)を含む有機基となる。
【0236】
[実施例18]
実施例5と同様の手順で得た樹脂膜から、大きさ50mm×50mmの試験片を切り出し、0.5質量%酢酸銀水溶液500mLに浸漬した。室温で12時間放置後、混合溶液から膜を取り出し、膜表面を蒸留水で洗浄した。液中の銀イオンにより、樹脂膜中のビスメチド酸基は、銀塩(ビスメチド酸塩)を含む有機基となる。
【0237】
[実施例19]
実施例5と同様の手順で得た樹脂膜から、大きさ50mm×50mmの試験片を切り出し、0.5質量%イミダゾール水溶液500mLに浸漬した。室温で12時間放置後、混合溶液から膜を取り出し、膜表面を蒸留水で洗浄した。。樹脂膜中のビスメチド酸基は、イミダゾーリウム塩(ビスメチド酸塩)を含む有機基となる。
【0238】
[比較例1]
ガラス製フラスコ中に、前記構造のモノメチド酸基を含む構造のMA−EATf、0.97g(0.0037mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)3.40g(0.0088mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、実施例1と同様の手順で該溶液を硬化させて樹脂膜を得た。
【0239】
[比較例2]
ガラス製フラスコ中に、前記構造のヘキサフルオロカルビノール基(−(CFOH)を含むMA−3,5−HFA−CHOH、1.85g(0.0037mol)とポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)2.68g(0.0088mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、実施例1と同様の手順で該溶液を硬化させて樹脂膜を得た。
【0240】
[比較例3]
ガラス製フラスコ中にてポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名:A−200)3.80g(0.0125mol)、および重合開始剤としての過ピバル酸−tert−ブチル(日本油脂株式会社製、製品名:パーブチルPV)0.10gを加え、十分に攪拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した。その後、実施例1と同様の手順で該溶液を硬化させて樹脂膜を得た。
【0241】
[比較例4]
無加工試験片としてのポリエチレンフィルム。
【0242】
[比較例5]
比較用試験片としてのナフィオン117フィルム。
【0243】
[抗菌性の評価]
合成した樹脂膜の抗菌性を評価するため、ビスメチド酸基を有する樹脂を含む樹脂膜(実施例1〜18)、ビスメチド酸基を含まない樹脂膜(比較例1〜3、5)、無加工試験片としてのポリエチレンフィルム(比較例4)の厚み0.2mmの樹脂膜から、大きさ50mm×50mmの試験片を切り出し、JIS Z2801:2006「抗菌性試験方法」の方法に従って大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)を用いて抗菌性試験を行った。結果を表1に示す。
【0244】
尚、表1中のメチド量とは、ビスメチド酸基を含む重合性化合物(モノマー1)と、ビスメチド酸基を含まない重合性化合物(モノマー2)の和に占めるモノマー1のモル数の割合である。また滅菌率とは、下記の式によって算出される。抗菌活性値は、無加工品の24時間培養後菌数(B) を抗菌加工品の24時間培養後菌数(C)で除した数の対数値であり、抗菌活性値2.0以上(滅菌率、99%以上)で効果があると定義される。
【化33】

【表1】

【0245】
表1に示すように、本発明の実施例1〜19で得られたビスメチド酸基を有する抗菌剤で表面を被覆してなる抗菌性部材は優れた抗菌活性を示すことが判った。比較して、ビスメチド酸基を有しない抗菌性部材は抗菌活性を示さなかった。
【0246】
[カビ抵抗性の評価]
合成した樹脂膜のカビ抵抗性を評価するため、ビスメチド酸基を有する樹脂を含む樹脂膜(実施例1、3,4、6)、無加工試験片としてのポリエチレンフィルム(比較例4)、ナフィオン117フィルム(比較例5)の樹脂膜から、大きさ、40mm×40mmの試験片を切り出した。
【0247】
試験方法は、JIS Z 2911:2000「 かび抵抗性試験方法(付属書1プラスチック製品の試験)」に準拠し、菌株は表2に示す指定された5種類を混合して用いて行った。
【表2】

【0248】
試験の判定基準は表3に示す通りである。
【表3】

【0249】
試験の結果は表4に示す通りである。実施例1、3、4、6のフィルムでカビ抵抗性がみられ、比較例4、5のフィルムではカビ抵抗性はみられなかった。
【表4】

【0250】
[抗ウィルス性の評価]
合成した樹脂膜の抗ウィルス性を評価するため、ビスメチド酸基を有する樹脂を含む樹脂膜(実施例3、4)、無加工試験片としてのポリエチレンフィルム(比較例4)の厚み約0.2mmの樹脂膜から、大きさ、50mm×50mmの試験片を切り出した。
【0251】
評価ウィルスとして、エンベロープを持つA型インフルエンザウィルス及びエンベロープを持たないネコカリシウィルスを用いた。
【0252】
試験は、試験片にウィルス液を200mlを滴下した後、試験片とウィルスの接触効率を上げるため、大きさ、40mm×40mmのポリプロピレンフィルムを乗せて行った。
【0253】
2時間後、試験片とウィルス液を接触させた液からウィルスを回収し、反応を停止させた液を10倍段階希釈して、反応停止液原液または希釈液をウィルス感染価測定用細胞に感染させ、ウィルス増殖による細胞変性効果を観察した。
【0254】
結果、実施例3、4の樹脂膜はA型インフルエンザウィルスおよびネコカリシウィルスに対して高い抗ウィルス性を示し、希釈液のみならず反応停止液原液において細胞変性効果が全くみられなかった。
【0255】
また、同様な方法で試験したポリエチレンフィルムは、A型インフルエンザウィルスに対しては反応停止液原液から10倍希釈までは細胞変性効果がみられ、10倍希釈以上で細胞変性効果を示さなくなった。ネコカリシウィルスに対しては反応停止液原液から10倍希釈までは細胞変性効果がみられ、10倍希釈以上の希釈率で細胞変性効果を示さなくなった。
【0256】
さらに、同様な方法でナフィオン117フィルム(比較例5)を試験した。結果、A型インフルエンザウィルスに対して溶出液原液では生細胞率が80%以下となり、細胞毒性がみられた。また、10倍以上に希釈した場合には細胞毒性はみられず、抗ウィルス性を示した。ネコカリシウィルスに対しての細胞毒性はみられず、溶出液原液で抗ウィルス性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式(1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される有機基を含む樹脂を有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項2】
前記樹脂が、一般式(2):
【化2】

(式(2)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a)を有する樹脂である請求項1に記載の抗菌剤。
【請求項3】
前記繰り返し単位(a)が、下記一般式(3):
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基をである。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−1)である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項4】
前記繰り返し単位(a)が、一般式(4):
【化4】

(式(4)中、Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−2)である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項5】
前記繰り返し単位(a)が、一般式(5):
【化5】

(式(5)中、R10は単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R10に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位(a−3)である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項6】
前記樹脂が、さらに一般式(6):
【化6】

(式(6)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。R14は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状もしくは環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R14に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、R11とR12またはR13とR14は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。)
で表される繰り返し単位(b−1)を含む樹脂である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項7】
前記樹脂が、さらに一般式(7):
【化7】

(式(7)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子であり、R11とR12またはR13は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。R15は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R15に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよく、R15は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた架橋剤と反応し得る基を含む。)
で表される繰り返し単位(b−2)を含む樹脂である請求項2に記載の抗菌剤。
【請求項8】
前記樹脂がイソシアネート基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた1種以上の基を含む架橋剤により架橋されてなることを特徴とする架橋剤を含む請求項7に記載の硬化型抗菌剤。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の抗菌剤を基材表面に塗布または付着させて皮膜を形成することを特徴とする基材の表面処理方法
【請求項10】
一般式(2−1)
【化8】

(式(2−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基をである。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される繰り返し単位の前駆体である重合性化合物を基材表面に塗布または付着させて請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする基材の表面処理方法。
【請求項11】
一般式(2−1):
【化9】

(式(2−1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは単結合、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、またはこれらの組み合わせである2価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、Rに含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、RとRまたはRとRは、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。CとAは共有結合またはイオン結合で結合し、Aは水素原子または陽イオンである。)
で表される重合性化合物に、さらに一般式(6−1):
【化10】

(式(6−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である。R14は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R14に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよい。また、R11とR12またはR13とR14は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。)
または一般式(7−1):
【化11】

(式(7−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子または炭素数1〜4のフルオロアルキル基である。R12、R13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはハロゲン原子である、R11とR12またはR13は、結合して環を形成してもよく、炭素数3〜12の単環式、二環式または多環式の構造を含んでもよい。R15は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜35の直鎖状、分岐状、環状、もしくは直鎖状、分岐状、環状の組み合わせである1価の炭化水素基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合またはウレタン結合を有していてもよく、R15に含まれる炭素原子の一部が珪素で置換されていてもよく、水素原子の一部または全部がフッ素原子または水酸基で置換されていてもよく、R15は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基またはヒドロシリル基から選ばれた架橋剤と反応しえる基を含む。)
で表される重合性化合物を加えた後、基材表面に塗布または付着させて請求項6または請求項7に記載の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする請求項10に記載の基材の表面処理方法。
【請求項12】
さらに、架橋剤を加えた後に、請求項8に記載の抗菌剤の皮膜を形成することを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の基材の表面処理方法。
【請求項13】
前記皮膜を、加熱することで、重合または架橋させて硬化膜とすることを特徴とする請求項12に記載の基材の表面処理方法。
【請求項14】
前記皮膜を、光照射することで、重合または架橋させて硬化膜とすることを特徴とする請求項12に記載の基材の表面処理方法。
【請求項15】
請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の表面処理方法で表面処理することを特徴とする抗菌性部材の作製方法。

【公開番号】特開2012−92089(P2012−92089A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208995(P2011−208995)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】