説明

抗菌剤およびカルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオールならびにカルバクロールから選択される活性成分を含んでなる医薬組成物

本発明は、カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物の中から選択される少なくとも1種の第一の治療用活性物質、ならびに抗菌剤である少なくとも1種の第二の治療用活性物質を含んでなる医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種の治療用活性物質を含んでなる医薬組成物に関するものであり、そのうちの1種は、他の種に対して増強作用を発揮するものであり、ならびに本発明は、前記組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治療剤の有効性は、使用される用量に依存し、部分的耐性の場合、所望の有効性に到達させるために治療剤の用量を増加させることを必要とすることが知られている。この用量増加は、処置患者の病態をかなり複雑にし得る副作用および急性毒性または慢性毒性の問題をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記部分的耐性は、完全耐性に変わり得る。この場合、用量増加により、もはやいずれの有益な治療効果をも持たず、毒性作用だけが観察される。このような場合の治療は、治療剤を変えることにある。
【0004】
この事象の連鎖は、それ自体繰り返され、最も重大な状況:複数治療剤に対する完全耐性(多剤耐性)となり得る。
【0005】
例えば、特に免疫抑制患者の治療は益々困難となり、患者の予想寿命は、相応して短くなる。さらに、患者の生活の質は、高用量の治療剤の投与によってかなり影響を受ける。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも2種の治療用活性物質を組み合わせることを提案することにより、これらの問題を軽減することに関するものであり、そのうちの1種が、他の種の活性を増強し、各々の治療用活性物質の用量を低下させる可能性があるのみならず、耐性微生物により引き起こされる感染症患者の治療を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この点において、本発明は、
− カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の治療用活性物質、および
− 抗生物質である少なくとも1種の第二の治療用活性物質、
を含んでなることを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0008】
該第一の治療用活性物質は、化学合成または植物源から得ることができる。
【0009】
本発明の組成物における抗生物質は、ベータラクタム類、セファロスポリン類、ホスホマイシン、グリコペプチド類、ポリミキシン類、グラミシジン類、チロシジン、アミノシド類、マクロライド類、リンコサミド類、シナジスチン類、フェニコール類、テトラサイクリン類、フシジン酸、オキサゾリジノン類、リファマイシン類、キノロン類、フルオロキノロン類、硝酸化生成物、スルファミド類、トリメトプリム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0010】
ペニシリン類、オキサシリン、クロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、メタンピシリン、ピバンピシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシリン、ピブメシリナム、スルバクタム、タゾバクタム、イミペネム、セファレキシン、セファドロキシル、セファクロル、セファトリジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セホキシチン、セファマンドール、セホテタン、セフロキシム、セホタキシム、セフスロジン、セホペラゾン、セホチアム、セフタジダイム、セフトリアキソン、セフィキシム、セフポドキシム、セフェピム、ラタモキセフ、アズトレオナム、バンコマイシン、バンコシン、テイコプラニン、ポリミキシンB、コリスチン、バシトラシン、チロスリシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、アミカシン、シソマイシン、ジベカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、リンコマイシン、クリンダマイシン、バージニアマイシン、プリスチナマイシン、ダルホプリスチン−キヌプリスチン、クロラムフェニコール、チアムフェニコール、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、フシジン酸、リネゾリド、リファマイシン、リファンピシン、ナリジクス酸、オキソリン酸、ピペミド酸、フルメキン、ペフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、スパルフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ニトロキソリン、チルボキノール、ニトロフラントイン、ニフロキサジド、メトロニダゾール、オルニダゾール、スルファジアジン、スルファメチゾール、トリメソプリム、イソニアジドならびにそれらの誘導体および混合物からなる群から選択されることがより好ましい。前記抗生物質、さらに具体的にアモキシシリンは、任意にクラブラン酸と組み合わせて使用できる。
【0011】
より特に好ましい抗生物質組成物は、第一の治療用活性物質が、カルベオールまたはカルバクロールであり、抗生物質が、アモキシシリンまたはリファンピシンである組成物である。
【0012】
別のより特に好ましい抗生物質組成物は、第一の治療用活性物質が、カルベオールであり、抗生物質が、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシンまたはポリミキシンBである抗生物質組成物である。
【0013】
さらに別のより特に好ましい抗生物質組成物は、前記第一の治療用活性物質が、アルファ−イオノンまたはベータ−イオノンであり、抗生物質が、セファゾリンである抗生物質組成物である。
【0014】
なお別のより特に好ましい抗生物質組成物は、前記第一の治療用活性物質が、チモールであり、抗生物質が、イソニアジドである抗生物質組成物である。
【0015】
また、前記第一の治療用活性物質が、カルバクロールであり、抗生物質が、クラブラン酸と組み合わせたアモキシシリンである抗生物質組成物が、より特に好ましい。
【0016】
本発明はまた、カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物からなる群から選択される第一の治療用活性物質を含有する少なくとも1つの第一の容器、および抗生物質である第二の治療用活性物質を含有する少なくとも1つの第二の容器を含んでなることを特徴とするキットを提案する。
【0017】
最後に本発明は、カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、およびそれらの異性体、誘導体ならびに混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の治療用活性物質、および抗生物質である少なくとも1種の第二の治療用活性物質を、細菌感染症患者に同時にまたは連続的に投与することを特徴とする細菌による感染症を治療する方法を提案する。
【0018】
好ましくは、前記方法において、10mg/体重1kg/日ないし200mg/体重1kg/日の前記第一の治療用活性物質、および1mg/体重1kg/日ないし100mg/体重1kg/日の抗生物質である第二の治療用活性物質を、細菌感染症患者に同時にまたは連続的に投与する。
【0019】
好ましくは、この方法において、前記第一の治療用活性物質が、カルバクロール、カルベオール、オイゲノール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、およびチモールからなる群から選択され、前記第二の治療用活性物質が、アモキシシリン、アンピシリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシンB、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リファンピシン、イソニアジドおよびセファゾリンからなる群から選択される。
【0020】
本発明は、以下の説明的記述において、ならびに高度耐性株の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)で実験的に感染されたマウスにおいて、未処置であるか、またはアモキシシリン単独で処置されたか、またはカルベオール単独で処置されたか、またはアモキシシリンおよびカルベオールを含んでなる本発明による抗生物質の医薬組成物で処置されたインビボ試験の結果を提供する単独の添付図面を参照にして、より良好に理解され、他の目的ならびにそれらの利点がより明瞭になるであろう。
【0021】
本発明による医薬組成物は、第一の治療用活性物質として純粋な形態でチモール、オイゲノール、カルバクロール、ボルネオール、カルベオール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、それらの誘導体および異性体ならびに混合物を含んでなる。
【0022】
前記化合物は、周知の抗生物質の特性を有する。
【0023】
チモール、オイゲノール、カルバクロール、ボルネオールおよびカルベオール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノンは、種々の芳香族植物抽出物において種々の割合で見られる。すなわち、それらは、このような植物から精製できる。しかしながら、それらは、化学合成によって極めて簡便に得ることができる。
【0024】
実際、本発明により現在、前記化合物は、本分野に特異的な医薬品として既に使用されている公知の抗生物質など、多数の治療用活性物質に対して増強作用を有することが発見されている。
【0025】
したがって、本発明の医薬組成物に含まれる第二の治療用活性物質は、それ自体公知であり、本分野に特異的な医薬品として既に使用され、その活性が増強される抗生物質である。
【0026】
本発明の医薬組成物に使用できる本分野に特異的な医薬品として既に使用され、それらの効果が純粋な第一の治療用活性物質によって増強される公知の抗生物質の例としては、3つの系に属する:アモキシシリンおよびアンピシリンによって代表されるベータ−ラクタム系、セファゾリンによって代表されるセファロスポリン系、クロルテトラサイクリンによって代表されるテトラサイクリン系、リファンピシンによって代表されるリファマイシン系、ポリミキシンによって代表されるペプチド系、ストレプトマイシンによって代表されるアミノシド系、クロラムフェニコールによって代表されるフェニコール系、エリスロマイシンによって代表されるマクロライド系。
【0027】
前記化合物は、単独または互いに組み合わせて使用できる。それらが抗生物質活性を有する限り、それらの誘導体もまた使用できる。
【0028】
より特にカルバクロール、カルベオール、チモール、アルファ−イオノンおよびベータ−イオノンと組み合わせて使用される、任意にクラブラン酸と組み合わされたアモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、イソニアジド、セファゾリンおよびポリミキシンBであることが極めて特に好ましい。
【0029】
当然ながら、本発明による医薬組成物は、上述の抗生物質のみの使用に限定されるものではない。実際、本発明に定義された第一の治療用活性物質により発揮された増強効果を考慮すると、他の公知または将来の抗生物質もまた首尾よく使用できる。
【0030】
本発明による医薬組成物は、前記少なくとも第一および第二の治療用活性物質の同時投与または連続投与に好適であるように製剤化できる。
【0031】
本発明の医薬組成物の製薬形態は、その使用に適合される必要がある。例えば、それは、溶液、懸濁液、錠剤またはその他の形態で使用できる。非経口投与用組成物は一般に、使用直前に任意に調製できる製薬的に許容できる滅菌溶液または懸濁液である。
【0032】
非水溶液または懸濁液の調製のために、オリーブ油、ゴマ油またはパラフィン油もしくはオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル類を使用することが可能である。滅菌水溶液は、水中の治療用活性物質の溶液から構成できる。水溶液は、pHが適切に調整されている限り静脈投与に好適であり、例えば、十分な量の塩化ナトリウムまたはグルコースを添加することによって等張にする。
【0033】
実際、抗生物質の化学構造を考慮し、第二に、カルベオール、カルバクロール、チモール、オイゲノール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、およびボルネオールの化学構造を考慮すると、この理論により拘束されるものではないが、カルベオール、カルバクロール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、アルファ−イオノンおよびベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物は、抗生物質と相互作用して、体内の生理的液体により容易に拡散し、標的感染細胞の細胞質内により容易に拡散する構造を有する複合体が形成されると考えられる。
【0034】
しかしながら、本発明の医薬組成物の種々の成分が、ツイーン(Tween)またはトリトン(Triton)などの界面活性剤あるいはエタノールまたはDMSO(ジメチルスルホキシド)などの溶媒の存在下で混合される場合、第一および第二の治療用活性物質の活性分子は、界面活性剤と溶媒の分子と会合し、増強複合体を形成しないことが示されている。
【0035】
粘性による分散手段として水性寒天懸濁液が使用される場合、増強複合体を形成することが現在発見されている。
【0036】
したがって、本発明の医薬組成物は、界面活性剤と溶媒なしで調製されることが好ましい。例えば、該医薬組成物は、非固化濃度での寒天、例えば、1リットルの懸濁液当り1グラムから5グラムの寒天の添加により粘性化された水性懸濁液として調製される。
【0037】
本発明の医薬組成物は、前記第一および第二の治療用活性物質のそれぞれの用量を用いて耐性微生物により引き起こされた局所または全身感染症の治療を可能にし、これらの用量は、これらの一方または他方(前記第一および第二の治療用活性物質単独)による、同一の感受性微生物感染症の治療に必要な用量よりも少ない。実際、本発明の医薬組成物は、前記第一の治療用活性物質の用量の使用を可能にし、前記第二の治療用活性物質と組み合わされる場合、それらの用量は、前記第一の治療用活性物質が単独で使用される場合に必要な用量よりも約3倍から10倍低くなり、前記第一の治療用活性物質と組み合わされる場合の前記第二の治療用活性物質の用量は、前記第二の治療用活性物質が単独で使用される場合に必要な用量よりも約2倍から10倍低くなる。
【0038】
この結果により、以下の利点を有する治療を提供できる:
− 感受性微生物に対してごく低用量で有効、
− 治療剤に耐性の微生物に対して有効、
− 数種の治療剤に耐性の微生物に対して有効、
− 再発現象の制御、
− 耐性微生物の選択現象の制御。
【0039】
これら全ての場合において、ごく低用量の投与を可能にする増強のために当業者に周知の毒性および/または副作用の危険性の注目すべき減少がある。
【0040】
さらに、治療で生じる費用は、使用される活性物質が少量のため減少する。
【0041】
本発明による医薬組成物は、リポソームの形態であるか、またはシクロデキストリンまたはポリエチレングリコールなどの支持体と会合できる。
【0042】
本発明の医薬組成物は、主として治療剤に対する耐性および高用量の使用から生じる治療剤の毒性を一般に含んでなる微生物剤に関連した問題に対処するための簡便かつ有効な手段である。
【0043】
実際、カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノンおよびベータ−イオノン、ならびにそれらの誘導体、混合物および異性体は、単純な分子であり、どれも毒性を有するものとしての記載がなく、それらの添加による第二の治療用活性物質に対する増強効果により、はるかに低い用量の前記第二の治療用活性物質の使用を可能にする。
【0044】
次に第一の変形において、細菌感染症患者を治療する方法は、少なくとも1種の前記第二の治療用物質、すなわち、好適な抗生物質の好適な用量で組み合わされた少なくとも1種の前記第一の治療用活性物質の好適な用量を含んでなる、医師により判定された本発明の医薬組成物の用量を、前記患者に投与することにある。
【0045】
第二の変形において、細菌感染症患者を治療する方法は、少なくとも1種の前記第一の治療用物質の医師により判定された用量に次いで、少なくとも1種の前記第二の治療用物質、すなわち、好適な抗生物質の好適な用量を、またはその逆の様式で前記患者に連続的に投与することにある。
【0046】
これに関して、本発明は、前記第一の治療用活性物質の1種を含有する少なくとも1つの第一の容器、および前記第二の治療用活性物質の1種を含有する少なくとも1つの第二の容器を含んでなるキットを提供する。
【0047】
前記キットは、同時投与に関して、所望の第一の治療用物質および所望の抗生物質の好適な用量の混合物を医療従事者が要求に応じて調製できるか、または少なくとも1種の前記第一の治療用活性物質の好適な用量に次いで、少なくとも1種の前記第二の治療用物質、すなわち、好適な抗生物質の好適な用量を、またはその逆の様式で連続的および別個に投与できる。しかしながら、患者への投与直後に増強複合体を形成させ、作用させるために同時使用の混合物が好ましいものとなろう。
【0048】
限定するのではなく説明目的で提供される種々の実施形態を記載する以下の実施例において、本発明は、より明確になるであろう。
(実施例)
【0049】
実施例1:カルベオールにより増強されたアモキシシリン(Amox−P)による種々の細菌株の処理
インビトロ試験:種々の細菌株に対する最少殺菌濃度(MBC)の決定
実験は、病院環境内で単離されたさまざまな感受性を有するグラム陰性およびグラム陽性細菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も有効で最も広範に使用されている抗生物質の1つであるアモキシシリンであった。
【0050】
本発明による抗菌医薬組成物は、種々の濃度のアモキシシリンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度(0.3mg/mlに等しい)のカルベオールとを混合することにより調製された。殺菌効果を生じた0.3mg/mlのカルベオールと組み合わされたアモキシシリンの最少濃度が決定された。各々の場合、抗生物質の活性は、アモキシシリン単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0051】
表1は、最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0052】











【表1】

【0053】
表1は、本発明の組成物が、アモキシシリン単独またはカルベオール単独と比較して、これら種々の感受性を有する株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを明確に示している。
【0054】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたアモキシシリン濃度は、殺菌効果を示すことができるアモキシシリン単独の濃度よりも少なくとも10倍低かったことを見ることができる。
【0055】
実施例2
インビボ試験
10匹のマウス群を、アモキシシリン耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の1,000,000細胞(コロニー形成単位)の腹腔内注入により実験的に感染させた。
【0056】
第一群は、感染させた未処置の対照マウスから構成された。
【0057】
第二群は、24時間感染後、10mg/体重1kg/日の用量のアモキシシリン単独で胃管栄養法により処置された感染マウスより構成された。
【0058】
第三群は、24時間感染後、120mg/体重1kg/日の用量のカルベオール単独で胃管栄養法により処置された感染マウスより構成された。
【0059】
第四群は、24時間感染後、2mg/体重1kg/日の用量のアモキシシリンおよび120mg/体重1kg/日の用量のカルベオールの本発明の医薬組成物(AMOX−P)を用いて、胃管栄養法により処置された感染マウスより構成された。
【0060】
この生存率は、経時的に測定された。結果は図1に示され、該医薬組成物で処置されたマウスのみが、感染10日後に、依然として生存していたことを示している。他のマウスは、感染2日後と3日後との間に全て死亡した。
【0061】
実験期間中に死亡したマウス(未処置マウスおよびアモキシシリン単独で処置されたマウス)の臓器検査により、腎、肺および骨髄に肺炎桿菌の高負荷が明らかとなった。対照的に、本発明の医薬組成物で処置して処置中止7日後に殺処理したマウスは、肺と骨髄にいかなる細菌も示さなかった。
【0062】
腎臓において、10匹のマウスのうち3匹だけが、未処置感染対照において見られたものの10%に相当する極めて低負荷の肺炎桿菌を依然として有した。
【0063】
その結果、本実施例のようにアモキシシリンとカルベオールとを組み合わせることによるアモキシシリンの増強により、インビトロの最少殺菌濃度の減少に関して意外な結果を示し、この増強が、全身感染のインビボモデルで見られたことは明瞭と思われる。
【0064】
全身感染は、生命を脅かす可能性があり、治療するための最も困難な形態の感染であり、特に全身感染は、耐性が増加した微生物の選択によっては再発する可能性があるので、本発明の医薬組成物は、明快な利点を有している。
【0065】
細菌感染を治療する方法は、カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、およびそれらの異性体、誘導体、ならびに混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の純粋な治療用活性物質の医師により判定された用量、および本分野で特異的な医薬品として臨床で既に使用されている周知の抗生物質である少なくとも1種の第二の治療用物質の判定された用量を、細菌感染症患者に同時または連続的に投与することにある。
【0066】
一般に、10mg/体重1kg/日ないし200mg/体重1kg/日の前記第一の治療用活性物質と、1mg/体重1kg/日ないし100mg/体重1kg/日の本分野で特異的な医薬品として臨床で既に使用されている公知の抗生物質である前記第二の治療用活性物質を、細菌感染症患者に同時にまたは連続的に投与する。
【0067】
実施例3:カルベオールにより増強されたアンピシリン(Ampi−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も広範に使用されている抗生物質の1つであるベータ−ラクタム系からのアンピシリンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のアンピシリンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強アンピシリンに対してAmpi−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、アンピシリン単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0068】
表2は、μg/mlでの最小発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0069】
【表2】

【0070】
表2は、本発明の組成物が、アンピシリン単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0071】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたアモキシシリン濃度は、殺菌効果を示すことができるアモキシシリン単独の濃度よりも少なくとも5倍から50倍低かったことを表2に見ることができる。
【0072】
したがって、カルベオールによるアンピシリンの増強により、アンピシリン用量を大きく減少させるのみならず、低用量で殺菌作用を提供した。
【0073】
実施例4:アルファ−イオノンおよびベータ−イオノンにより増強されたセファロスポリン(Cepha−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も広範に使用されている抗生物質の中にあるベータ−ラクタムの別のクラスであるセファロスポリン系からのセファゾリンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のセファゾリンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のアルファ−イオノンおよびベータ−イオノンとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強セファゾリンに対してCepha−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、セファゾリン単独、またはアルファ−イオノンまたはベータ−イオノン単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0074】
表3は、μg/mlでの最小発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0075】
【表3】

【0076】
表3は、本発明の組成物が、セファゾリン単独またはアルファ−イオノンまたはベータ−イオノン単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0077】
実際、アルファ−イオノンまたはベータ−イオノン単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/ml濃度でのアルファ−イオノンまたはベータ−イオノンを用いることによって、殺菌活性を生じたセファゾリン濃度は、殺菌効果を示すことができるセファゾリン単独の濃度よりも少なくとも10倍低かったことを表3に見ることができる。
【0078】
したがって、アルファ−イオノンまたはベータ−イオノンによるセファゾリンの増強により、セファゾリン用量を大きく減少させるのみならず、低用量で殺菌作用を提供した。
【0079】
実施例5:カルベオールにより増強されたポリミキシンB(Polymix−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も古い抗生物質の1つであるペプチド系からのポリミキシンBであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のポリミキシンBと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強ポリミキシンBに対してPolymix−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、ポリミキシンB単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0080】
表4は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0081】
【表4】

【0082】
表4は、本発明の組成物が、ポリミキシンB単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0083】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたポリミキシンB濃度は、殺菌効果を示すことができるポリミキシンB単独の濃度よりも少なくとも2.5倍から10倍低かったことを表4に見ることができる。
【0084】
したがって、カルベオールによるポリミキシンBの増強により、耐性グラム陰性菌(大腸菌およびサルモネラ菌)に対してポリミキシンBの有効用量を大きく減少させるのみならず、通常、ポリミキシンBに対して感受性のないグラム陽性菌(表皮ブドウ球菌、枯草菌)に対してもその活性スペクトルを拡大させた。
【0085】
実施例6:カルベオールにより増強されたクロラムフェニコール(Chloram−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も古い抗生物質の1つであるフェニコール系からのクロラムフェニコールであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のクロラムフェニコールと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強クロラムフェニコールに対してChloram−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、クロラムフェニコール単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0086】
表5は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0087】
【表5】

【0088】
表5は、本発明の組成物が、クロラムフェニコール単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0089】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたクロラムフェニコール濃度は、殺菌効果を示すことができるクロラムフェニコール単独の濃度よりも少なくとも10倍から50倍低かったことを表5に見ることができる。
【0090】
したがって、カルベオールによるクロラムフェニコールの増強により、耐性グラム陰性菌(大腸菌およびサルモネラ菌)に対してクロラムフェニコールの有効用量を大きく減少させるのみならず、通常、その作用が静菌的のみであるグラム陽性菌(表皮ブドウ球菌、枯草菌)に対してもその活性スペクトルを拡大させた。
【0091】
実施例7:カルベオールにより増強されたクロルテトラサイクリン(Tetra−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も古い抗生物質の1つであるクロルテトラサイクリンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のクロルテトラサイクリンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強クロルテトラサイクリンに対してTetra−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、クロルテトラサイクリン単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0092】
表6は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0093】
【表6】

【0094】
表6は、本発明の組成物が、クロルテトラサイクリン単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0095】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたクロルテトラサイクリン濃度は、殺菌効果を示すことができるクロルテトラサイクリン単独の濃度よりも少なくとも25倍から50倍低かったことを表6に見ることができる。
【0096】
したがって、カルベオールによるクロルテトラサイクリンの増強により、クロルテトラサイクリンの用量を大きく減少させるのみならず、極めて低用量で殺菌作用を提供した。
【0097】
実施例8:カルベオールにより増強されたストレプトマイシン(Strepto−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も重要な抗生物質の中にあるアミノシド系の1つの重要なメンバーであるストレプトマイシンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のストレプトマイシンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強ストレプトマイシンに対してStrepto−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、ストレプトマイシン単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0098】
表7は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0099】
【表7】

【0100】
表7は、本発明の組成物が、ストレプトマイシン単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0101】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたストレプトマイシン濃度は、殺菌効果を示すことができるストレプトマイシン単独の濃度よりも少なくとも10倍低かったことが表7に見ることができる。
【0102】
したがって、カルベオールによるストレプトマイシンの増強により、ストレプトマイシンの用量を大きく減少させるのみならず、極めて低用量で殺菌作用を提供した。
【0103】
実施例9:カルベオールにより増強されたエリスロマイシン(Erythro−P)による種々の細菌株の処理
実験は、病院環境内で単離された数種の耐性菌株を用いて実施された。使用された抗生物質は、最も重要な抗生物質の中にあるマクロライド系の1つの重要なメンバーであるエリスロマイシンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のエリスロマイシンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルベオールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強エリスロマイシンに対してErythro−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、エリスロマイシン単独、またはカルベオール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0104】
表8は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0105】
【表8】

【0106】
表8は、本発明の組成物が、エリスロマイシン単独またはカルベオール単独と比較して、試験株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0107】
実際、カルベオール単独のMBCよりも6.6倍低い0.3mg/mlのカルベオール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたエリスロマイシン濃度は、殺菌効果を示すことができるエリスロマイシン単独の濃度よりも少なくとも2倍から5倍低かったことを表8に見ることができる。
【0108】
したがって、カルベオールによるエリスロマイシンの増強により、殺菌効果を示すことができるエリスロマイシンの用量を大きく減少させた。
【0109】
実施例10:カルバクロールにより増強されたリファンピシン(Rifam−P)による種々のマイコバクテリア株の処理
実験は、動物病院環境内で単離された2種の耐性マイコバクテリア株を用いて実施された。使用された抗生物質は、抗結核系の1つの重要なメンバーであるリファンピシンであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のリファンピシンと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のカルバクロールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強リファンピシンに対してRifam−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、リファンピシン単独、またはカルバクロール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0110】
表9は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0111】
【表9】

【0112】
表9は、本発明の組成物が、リファンピシン単独またはカルバクロール単独と比較して、試験マイコバクテリア株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0113】
実際、カルバクロール単独のMBCよりも3.3倍低い0.3mg/mlのカルバクロール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたリファンピシン濃度は、殺菌効果を示すことができるリファンピシン単独の濃度よりも少なくとも25倍低かったことを表9に見ることができる。
【0114】
したがって、カルバクロールによるリファンピシンの増強により、通常、リファンピシンに対して感受性のない急速増殖のマイコバクテリアに対して殺菌効果を示すリファンピシン用量をかなり減少できた。
【0115】
実施例11:チモールにより増強されたイソニアジド(Izon−P)による種々のマイコバクテリア株の処理
実験は、動物病院環境内で単離された2種の耐性マイコバクテリア株を用いて実施された。使用された抗生物質は、抗結核系の1つの重要なメンバーであるイソニアジドであった。本発明による抗生物質の医薬組成物は、種々の濃度のイソニアジドと溶液または賦形剤の1リットル当り0.3gの副次的阻止濃度のチモールとを混合することにより調製された。本発明のこの医薬組成物は、増強イソニアジドに対してIzon−Pと命名された。各々の場合、抗生物質の活性は、イソニアジド単独、またはチモール単独、もしくは本発明の組成物を用いて決定された。
【0116】
表10は、μg/mlでの最少発育阻止濃度(MIC)および最少殺菌濃度(MBC)を決定するための静的試験結果を示している。
【0117】
【表10】

【0118】
表10は、本発明の組成物が、イソニアジド単独またはチモール単独と比較して、試験マイコバクテリア株に対して注目すべき殺菌活性を有したことを示している。
【0119】
実際、チモール単独のMBCよりも3.3倍低い0.3mg/mlのチモール濃度を用いることによって、殺菌活性を生じたイソニアジド濃度は、殺菌効果を示すことができるイソニアジド単独の濃度よりも少なくとも25倍低かったことを表10に見ることができる。
【0120】
したがって、チモールによるイソニアジドの増強により、通常、イソニアジドに対して感受性のない急速増殖のマイコバクテリアに対して殺菌効果を示すイソニアジド用量をかなり減少できた。
【0121】
実施例12:カルバクロールにより増強されたアモキシシリンの存在下での耐性変異株の選択
以下の実験は、本発明で開示された増強が、耐性変異株の選択を防止することを確認するために実施された。
【0122】
5μg/mlのアモキシシリンに対して感受性を有する大腸菌株を、3μg/mlの副次的阻止濃度の存在下で培養し、次いでアモキシシリンの増加濃度(4μg/ml次いで5μg/ml次いで6μg/ml...)を含有する栄養培地(ミュラー・ヒントン(Muller Hinton))に接種した。同じ手法を、カルバクロール単独のMIC、すなわち500μg/mlよりも2倍低い濃度でカルバクロールにより増強されたアモキシシリンを用いて実施した。この実験は、各サブクローニングにおいて、新たなアモキシシリン濃度に耐性の変異株が、サブクローニングが生じた株よりも耐性のある株を発生させて増加するという原理に基づいた。
【0123】
この実験結果は、耐性増加の変異株の選択および変異株を得るために必要とされるサブクローニング数を示す表11に報告されている。
【0124】
【表11】

【0125】
本発明の組成物による14回の連続サブクローニングが、3μg/mlから出発して17μg/mlのAmox−P濃度に対して耐性変異株を選択するのに必要であるが、一方、アモキシシリン単独による17μg/mlに対する耐性変異株は、4回だけのサブクローニングで得られたことを、表11は示している。アモキシシリン単独の50μg/mlまでに及ぶさらに高度の耐性を有する変異株は、9回のサブクローニング後に得られたが、一方、Amox−Pによる17μg/ml超の濃度に対する耐性変異株は選択されなかった。
【0126】
実際、これらのデータは、一方では、カルバクロール単独のMICよりも2倍低い0.5mg/mlのカルバクロール濃度を使用することにより、アモキシシリン単独と比較して(それぞれ14回のサブクローニング対4回のサブクローニング)、本発明の組成物による耐性変異株を選択することは、はるかにより困難であったことを示している。さらに、アモキシシリン単独に対して耐性の変異株の選択は、本実験における最高濃度の50μg/mlまでより容易に継続したが、一方、本発明の組成物の存在下での耐性は、17μg/mlでプラトーに達した。
【0127】
したがって、カルバクロールによるアモキシシリンの増強により、耐性変異株を選択する可能性をかなり減少させたことが分かる。
【0128】
実施例13:カルバクロールにより増強されたアモキシシリン+クラブラン酸の存在下での耐性変異株の選択
この組合せは、クラブラン酸0.125gに対してアモキシシリン1gの割合で調製された。
【0129】
以下の実験は、本発明で開示された増強が、耐性変異株の選択を防止し得ることを確認するために実施された。
【0130】
5μg/mlのアモキシシリンの濃度でアモキシシリン/クラブラン酸の組合せに対して感受性を有する大腸菌株を、3μg/mlの副次的阻止濃度の存在下で培養し、次いでアモキシシリン/クラブラン酸の組合せの増加濃度(4μg/ml次いで5μg/ml次いで6μg/ml...)を含有する栄養培地(ミュラー・ヒントン(Muller Hinton))に接種した。同じ手法を、カルバクロール単独のMIC、すなわち500μg/mlよりも2倍低い濃度でカルバクロールにより増強されたアモキシシリン/クラブラン酸を用いて実施した。この実験は、各サブクローニングにおいて、新たなアモキシシリン/クラブラン酸濃度に耐性の変異株が、サブクローニングが生じた株よりも耐性のある株を発生させて増加するという原理に基づいた。
【0131】
この実験結果は、耐性増加の変異株の選択および変異株を得るために必要とされるサブクローニング数を示す表12に報告されている。
【0132】
【表12】

【0133】
本発明の組成物による17回の連続サブクローニングが、3μg/mlから出発して20μg/mlの濃度に対して耐性変異株を選択するのに必要であるが、一方、アモキシシリン/クラブラン酸単独による20μg/mlに対する耐性変異株は、8回だけのサブクローニングで得られたことを、表12は示している。アモキシシリン/クラブラン酸単独の50μg/mlまでに及ぶさらに高度の耐性を有する変異株は、13回のサブクローニング後に得られたが、一方、本発明の組成物による20μg/ml超の濃度に対する耐性変異株は選択されなかった。
【0134】
実際、これらのデータは、一方では、カルバクロール単独のMICよりも2倍低い0.5mg/mlのカルバクロール濃度を使用することにより、アモキシシリン/クラブラン酸単独と比較して(それぞれ17回のサブクローニング対8回のサブクローニング)、本発明の組成物による耐性変異株を選択することは、はるかにより困難であったことを示している。さらに、アモキシシリン/クラブラン酸単独に対して耐性の変異株の選択は、本実験における最高濃度の50μg/mlまでより容易に継続したが、一方、本発明の組成物の存在下での耐性は、20μg/mlでプラトーに達した。
【0135】
したがって、カルバクロールによるアモキシシリン/クラブラン酸の増強により、耐性変異株を選択する可能性をかなり減少させたことが分かる。
【0136】
前記第一の治療用活性物質による抗生物質の増強により、耐性菌と戦うために必要な用量を減少させることができ、抗生物質の活性スペクトルを拡大し、静菌的作用を殺菌作用に変換し、耐性変異株をはるかに出現しにくくし得ることは、上記実施例の全てから明瞭であると思われる。
【0137】
当然ながら、本発明は、あくまで例示として示された、本明細書に記載され説明された実施形態に決して限定されるものではない。
【0138】
それどころか、本発明は、本明細書に記載された方法ならびに本発明の趣旨においてそのように実施されるそれらの組合せ全ての技術的等価形態を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】10匹のマウス群を、アモキシシリン耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の1,000,000細胞(コロニー形成単位)の腹腔内注入により実験的に感染させた場合の生存率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の治療用活性物質、および
− 抗生物質である少なくとも1種の第二の治療用活性物質、
を含んでなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記第一の治療用活性物質が、化学合成または天然化合物から得られることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗生物質が、アモキシシリン、アンピシリン、セファゾリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、リファンピシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クラブラン酸、およびイソニアジドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記第一の治療用活性物質が、カルバクロールまたはカルベオールであり、前記抗生物質が、アモキシシリンまたはリファンピシンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第一の治療用活性物質が、カルベオールであり、前記抗生物質が、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、およびポリミキシンBから選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第一の治療用活性物質が、アルファ−イオノンまたはベータ−イオノンであり、前記抗生物質が、セファゾリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第一の治療用活性物質が、チモールであり、前記抗生物質が、イソニアジドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第一の治療用活性物質が、カルバクロールであり、前記抗生物質が、クラブラン酸と組み合わされたアモキシシリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第一および第二の治療用活性物質が、寒天水溶液に懸濁されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
− カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物からなる群から選択される第一の治療用活性物質を含有する少なくとも1つの第一の容器、および
− 抗生物質である第二の治療用活性物質を含有する少なくとも1つの第二の容器を含んでなることを特徴とするキット。
【請求項11】
− カルベオール、チモール、オイゲノール、ボルネオール、カルバクロール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、ならびにそれらの異性体、誘導体および混合物からなる群から選択される少なくとも1種の第一の治療用活性物質、および
− 抗生物質である少なくとも1種の第二の治療用活性物質、
を同時にまたは連続的に細菌感染患者に投与することを特徴とする細菌により引き起こされた感染症を治療する方法。
【請求項12】
− 10mg/体重1kg/日ないし200mg/体重1kg/日の前記第一の治療用活性物質、および
− 2mg/体重1kg/日ないし100mg/体重1kg/日の抗生物質である前記第二の治療用活性物質
を同時にまたは連続的に細菌感染患者に投与することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の治療用活性物質が、カルバクロール、オイゲノール、チモール、アルファ−イオノン、ベータ−イオノン、カルベオールから選択され、前記第二の治療用活性物質が、アモキシシリン、アンピシリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシンB、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、リファンピシン、イソニアジド、セファゾリン、およびクラブラン酸と組み合わされたアモキシシリンから選択されることを特徴とする請求項11または12のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540507(P2008−540507A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510671(P2008−510671)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001350
【国際公開番号】WO2006/120567
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507375878)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED SCIENTIFIC DEVELOPMENTS
【Fターム(参考)】