説明

抗菌剤

【課題】
本発明の目的は、多種類の微生物に対して有効な優れた抗菌剤を提供することである。
【解決手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記式(1)で表されるα、β−不飽和ケトン化合物が、優れた抗菌および抗真菌活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。すなわち、本発明は、
<1>下記一般式(1)で表わされるα、β−不飽和ケトン化合物を含有することを特徴とする抗菌剤であり、
【化1】


(1)
(式(1)において、R1は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、R2は、水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、m+nは1〜4の値を満たすものである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、医薬部外品等の分野で有用なα,β−不飽和ケトン化合物を含む抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品や化粧品などの分野で、細菌や真菌(カビ)の有害微生物による種々な感染症の予防や治療、医療用具の滅菌、食品・化粧品工場などの無菌性が要求される場所の殺菌・消毒、製品の品質低下、劣化や腐敗など、有害微生物の繁殖や増殖を制御する技術は、生活環境の多様化と生活意識の変化に伴ってそのニーズが広がり、急速な進歩を遂げている。
有害微生物の制御方法には、紫外線やγ線などを使う方法、加熱やろ過技術などを使った、いわゆる物理的な方法や、種々な抗菌・抗カビ剤、防腐剤を使用する化学的な方法が、従来から行われている。例えば、医薬品として、あるいは医薬品や化粧品などの防腐剤として、ソルビン酸、デヒドロ酢酸及びその塩、安息香酸及びその塩、パラオキシ安息香酸エステル誘導体(パラベン)、イソプロピルメチルフェノール、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム等の第4アンモニウム類、塩酸アルキルアミノエチルグリシン、塩化ステアリルヒドロキシエチルベタインナトリウム等の両面界面活性剤、感光素、ヨウ素などが挙げらる。
【0003】
しかしながら、上記のような防腐剤は安全性の点で問題があるため、添加量や対象となる製品に制限があり、実際に有効な抗菌活性を示す量を配合できないことも多い。例えばパラベンは、皮膚刺激性や感作性の問題から、化粧品などへの配合量が1.0%に定められており、さらには環境ホルモン作用を示すとの指摘もある(例えば非特許文献1及び2)。
また、近年の安全性指向の高まりから、より安全性の高い新規な抗菌剤及び抗カビ剤の研究開発や、抗菌活性の効力を高めることで使用量を減らすなどの試みが数々行われている(例えば特許文献1〜5)。しかしながら、十分な抗菌活性や防腐力を得るのは難しく、なかでも真菌に対する防腐力を高めることは困難である。
有力な抗カビ活性を持つ抗菌剤として、カワラヨモギ(Artemisia cappillaris Thunb.)から抽出されるカピリンが挙げられるが(例えば非特許文献3)、特異な構造を有する物質であるため、安価に安定的に供給することは難しい。
このように、抗菌・抗カビ剤による有害微生物の制御は、衣食住をはじめとする生活関連分野から、プラスチックス製品や電子部品などの産業関連分野においても、きわめて広範囲にわたって応用展開されながら、より有効で安全な抗菌剤・抗カビ剤の開発が望まれている。
【0004】
一方、α、β−不飽和ケトン化合物の一つである1-フェニル-4-ヒドロキシ-2-ブテン-1-オンは特殊な酸化剤を使用する合成方法が報告されている(非特許文献4)。しかし、この化合物を入手容易な化合物を原料として、汎用のカルボン酸の過酸化物を用いる製造方法は知られていない。また、当該化合物の用途についての報告もなされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−73372号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−322591号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−310506号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10−53510号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2004−352688号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】厚生省、「第12回内分泌かく乱物質の健康影響に関する討論会」議事録、p.27−28
【非特許文献2】大石眞之、「パラベンの雄ラット性腺系への影響」、環境ホルモン学会第3回研究発表会要旨集、2000年、p.279
【非特許文献3】大嶋悟士、他3名、「カワラヨモギの抗黴作用と化粧品用抗菌剤への応用」、FRAGRANCE JOURNAL、2002年、p.67−71
【非特許文献4】R.Badri, H.Shalbaf, M.A.Heidary, Synthetic Communications, 31(22), 3473-3479(2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、以上のような状況をふまえ、多種類の微生物に対して有効な優れた抗菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記式(1)で表されるα、β−不飽和ケトン化合物が、優れた抗菌および抗真菌活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。すなわち、本発明は、
<1>下記一般式(1)で表わされるα、β−不飽和ケトン化合物を含有することを特徴とする抗菌剤であり、
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)において、R1は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、R2は、水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、m+nは1〜4の値を満たすものである。)
【0010】
<2>前記記載の一般式(1)が下記式(2)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である前記1記載の抗菌剤であり、
【0011】
【化2】

【0012】
(式(2)において、R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
【0013】
<3>前記記載の一般式(1)が下記式(3)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である前記1記載の抗菌剤であり、
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)において、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R5は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【0016】
<4>前記記載の一般式(1)が下記式(4)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である前記1記載の抗菌剤であり、
【0017】
【化4】

【0018】
(式(4)において、R6は、水素原子または炭素数1〜11の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは1〜3の整数である。)
【0019】
<5>下記式(5)で表される化合物にカルボン酸の過酸化物を用いてエポキシ化した後、塩基性物質を作用させて製造した前記4の式(4)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である。
【0020】
【化5】

【0021】
(式(5)において、R7は、水素原子または炭素数1〜11の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは1〜3の整数である。)
【発明の効果】
【0022】
本発明のα、β−不飽和ケトン化合物は、優れた抗菌・抗真菌活性を有しており、食品、医薬品、医薬部外品の分野を始め、プラスチック製品、紙製品、布製品、革製品等への関連分野に応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
○一般式(1)で表される化合物
本発明において、式(1)のR1は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、R2は、水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、m+nは1〜4の値を満たすものである。
【0024】
式(1)においてR1は、炭素鎖1〜12の炭化水素基であり、当該炭化水素基としては、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。なお、本発明においてアラアルキル基のアリールは、ベンゼンまたはナフタレンであり、好ましくはベンゼンである。
【0025】
式(1)においてR2は、水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、当該炭化水素基は、水酸基を有する直鎖のアルキル基、水酸基を有する分枝アルキル基、または水酸基を有するアラアルキル基であり、好ましくは1位に水酸基を有する直鎖のアルキル基または1位に水酸基を有する分枝アルキル基であり、具体的には、、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが例示され、ヒドロキシメチル基が好適である。
【0026】
式(1)においてR3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、およびエトキシ基などが例示でき、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、水素原子またはメトキシ基がより好ましいものとして例示できる。
式(1)において、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、そしてm+nは1〜4の値を満たすものである。具体的には、m=1およびn=0、m=0およびn=1、m=2およびn=0、m=0およびn=2、m=1およびn=1、m=2およびn=1、またはm=1およびn=2のものが例示でき、m=1およびn=0、m=0およびn=1、m=2およびn=0、m=0およびn=2、またはm=1およびn=1が好ましいものとして例示できる。
【0027】
○式(2)で表される化合物
本発明において、式(2)のR4は、炭素数1〜12の炭化水素基または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である。式(2)のR4が炭化水素基としては、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。式(2)のR4が水酸基を有する直鎖のアルキル基としては、水酸基を有する分枝アルキル基、または水酸基を有するアラアルキル基であり、好ましくは1位に水酸基を有する直鎖のアルキル基または1位に水酸基を有する分枝アルキル基であり、具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが例示され、ヒドロキシメチル基が好適である。
【0028】
本発明において、式(2)のR3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、およびエトキシ基などが例示でき、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、水素原子またはメトキシ基がより好ましいものとして例示できる。
本発明において、式(2)のR3が炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、この結合位置は、3位または4位が好ましい。
本発明において、式(2)のR4が、炭素数1〜12の炭化水素基でR3が水素原子であるものが例示できる。
【0029】
○式(3)で表される化合物
本発明において、式(3)のR4は、炭素数1〜12の炭化水素基または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であある。式(3)のR4が炭化水素基としては、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。式(3)のR4が水酸基を有する直鎖のアルキル基としては、水酸基を有する分枝アルキル基、または水酸基を有するアラアルキル基であり、好ましくは1位に水酸基を有する直鎖のアルキル基または1位に水酸基を有する分枝アルキル基であり、具体的には、、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが例示され、ヒドロキシメチル基が好適である。
【0030】
本発明において、式(3)のR5は、炭素数1〜12の炭化水素基または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である。式(3)のR5が炭化水素基としては、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。式(3)のR4が水酸基を有する直鎖のアルキル基としては、水酸基を有する分枝アルキル基、または水酸基を有するアラアルキル基であり、好ましくは1位に水酸基を有する直鎖のアルキル基または1位に水酸基を有する分枝アルキル基であり、具体的には、、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基などが例示され、ヒドロキシメチル基が好適である。
【0031】
本発明において、式(3)のR5が炭素数1〜12の炭化水素基または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である場合、当該R5を有する官能基の結合位置は2位、3位または4位であり、好ましくは、R4を有する官能基に対して3位である。
本発明において、式(3)のR3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、およびエトキシ基などが例示でき、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、水素原子またはメトキシ基がより好ましいものとして例示できる。
本発明において、式(3)のR3が炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、この結合位置は、R4を有する官能基に対して2位または4位が好ましい。
【0032】
○式(4)で表される化合物
本発明において、式(4)のR6は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。
本発明において、式(4)のR3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、およびエトキシ基などが例示でき、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、水素原子またはメトキシ基がより好ましいものとして例示できる。
【0033】
○式(5)で表される化合物
本発明において、式(5)のR7は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖のアルキル基、分枝を有するアルキル基、アラアルキル基(Aralkyl)、またはアルキル基を有するアラアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、2-(p-トリル)-エチル基などが例示でき、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェネチル基である。
本発明において、式(5)のR3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基いであり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、およびエトキシ基などが例示でき、水素原子、メチル基、またはメトキシ基が好ましく、水素原子またはメトキシ基がより好ましいものとして例示できる。
【0034】
本発明の式(1)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物を下記に例示する。
式(2)のR3が水素原子で、R4が炭素数1〜12のものとしては、1−フェニル−2−ブテン−1−オン、1−フェニル−2−ペンテン−1−オン、1−フェニル−2−ヘキセン−1−オン、1−フェニル−2−ヘプテン−1−オン、1−フェニル−2−オクテン−1−オン、1−フェニル−2−ノネン−1−オン、1−フェニル−2−デセン−1−オンなどが例示できる。
【0035】
式(2)のR3が水素原子で、R4が水酸基を有する炭素数1〜12のものとしては、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−ペンテン−1−オン、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−ヘキセン−1−オン、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−ヘプテン−1−オン、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−オクテン−1−オン、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−ノネン−1−オン、1−フェニル−4−ヒドロキシ−2−デセン−1−オンなどが例示できる。
【0036】
式(2)のR3がメトキシ基で、R4が炭素数1〜12のものとしては、1−(3’メトキシ−)フェニル−2−ペンテン−1−オン、1−(4’メトキシ−)フェニル−2−ペンテン−1−オン、1−(3’メトキシ−)フェニル−2−ヘキセン−1−オン、1−(4’メトキシ−)フェニル−2−ヘキセン−1−オンなどが例示できる。
【0037】
式(2)のR3がメトキシ基で、R4が水酸基を有する炭素数1〜12のものとしては、1−(3’メトキシ−)フェニル−4−ヒドロキシ−2−ペンテン−1−オン、1−(4’メトキシ−)フェニル−4−ヒドロキシ−2−ペンテン−1−オン、1−(3’メトキシ−)フェニル−4−ヒドロキシ−2−ヘキセン−1−オン、1−(4’メトキシ−)フェニル−4−ヒドロキシ−2−ヘキセン−1−オンなどが例示できる。
【0038】
式(3)のR3が水素原子で、R4が炭素数1〜12のもので、R5が炭素数1〜12のもので、m位またはp位についているものとしては、R4とR5とが同一なものと、異なるものとが例示できる。このR4とR5とが同一なものとしては、R4とR5とがp位で、エチル基、プロピル基、ブチル基、またはフェネチル基などのものが例示でき、m位で、エチル基、プロピル基、ブチル基、またはフェネチル基などのものが例示できる。
このR4とR5とが異なるものとしては、R4とR5とがp位で、エチル基とプロピル基、プロピル基とブチル基、エチル基とブチル基、エチル基とフェネチル基などのものが例示でき、m位で、エチル基とプロピル基、プロピル基とブチル基、エチル基とブチル基、エチル基とフェネチル基などのものが例示できる。
【0039】
式(3)のR3が水素原子で、R4が炭素数1〜12のもので、R5が水酸基を有する炭素数1〜12のもので、m位またはp位についているものが例示できる。このR4とR5とがp位で、エチル基とヒドロキシメチル基、プロピル基とヒドロキシメチル基、ブチル基とヒドロキシメチル基、またはフェネチル基とヒドロキシメチル基などのものが例示でき
m位で、エチル基とヒドロキシメチル基、プロピル基とヒドロキシメチル基、ブチル基とヒドロキシメチル基、またはフェネチル基とヒドロキシメチル基などのものが例示できる。
【0040】
式(3)のR3が水素原子で、R4が水酸基を有する炭素数1〜12のもので、R5が水酸基を有する炭素数1〜12のもので、m位またはp位についているものが例示できる。このR4とR5とがp位で、ヒドロキシメチル基とヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基とヒドロキシメチル基、ヒドロキシプロピル基とヒドロキシメチル基、またはヒドロキシブチル基とヒドロキシメチル基などのものが例示でき、m位で、ヒドロキシメチル基とヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基とヒドロキシメチル基、ヒドロキシプロピル基とヒドロキシメチル基、またはヒドロキシブチル基とヒドロキシメチル基などのものが例示できる。
【0041】
式(3)のR3がメトキシ基で、R4が炭素数1〜12のもので、R5が水酸基を有する炭素数1〜12のものが例示できる。
式(3)のR3がメトキシ基で、R4が水酸基を有する炭素数1〜12のもので、R5が水酸基を有する炭素数1〜12のものが例示できる。
【0042】
式(1)で示されるα、β−不飽和ケトン化合物の合成は、R1、R2の種類とm、nが表す整数により異なる場合がある。例えば式(1)中のR1が炭化水素基、m=1、n=0の場合は、アセトフェノンとアルデヒド化合物のアルドール反応によりβ−ヒドロキシケトン化合物を得た後、脱水反応を行うことで容易に調製することができる。
また、例えば、R1とR2が異なる炭化水素基、m=1、n=1を示す場合は、ジアセチルベンゼンの一方のアセチル基とR1CHOとのアルドール反応を行い、つぎに、得られたアルドール生成物のもう一方のアセチル基とR2CHOとの間であらためてアルドール反応を行なった後、脱水反応を行うことで容易に調製することができる。
1、R2が水酸基を有する炭化水素基である場合は、有機合成化学上の常法により水酸基に保護機を導入して所望の反応を行った後、保護基を除去することにより式(1)で示される化合物を合成することもできる。
【0043】
本発明において、アルドール反応は、塩基触媒の存在下実施することが可能である。当該塩基触媒としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルマグネシウムクロリド、s−ブチルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、s−ブチルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムブロミドなどを挙げることができる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウム−t−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、またはリチウムヘキサメチルジシラジドが本発明においては好ましい。
これらの塩基触媒は、原料のアルデヒド化合物に対して、0.1から10等量、好ましくは0.5から3等量が用いられ、また必要に応じて反応を促進する添加剤を反応系に加えてもよい。アセトフェノンとアルデヒド化合物とは化学量論的には等モル反応を行うが、反応を確実に完結させるためにどちらか一方入手容易なほうを小過剰用いることが、本発明においては望ましい。
【0044】
本発明において、アルドール反応に用いる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;ヘキサン、トルエン等などの炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの水溶性溶媒;水;またはこれらの混合溶媒などを好適に使用することができる。
当該アルドールの反応温度は、−100℃から150℃の範囲から選ぶことができ、好ましくは−80℃から100℃である。
【0045】
アルドール反応終了後、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、晶析方法などの従来公知の方法によりβ−ヒドロキシケトン化合物を、分離・精製して得ることができる。
【0046】
本発明の目的とする化合物は、上記で得られたβ−ヒドロキシケトン化合物をさらに脱水させることにより得られる。このβ−ヒドロキシケトン化合物の脱水反応は、塩酸、硫酸、硫酸水素カリウム、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ヨウ素、無水硫酸銅等などの酸;チオニルクロリド、リン酸クロリド等のハロゲン化剤;メタンスルホニルクロリド等のスルホン化剤等を脱水剤として使用することで好適に行うことができる。
【0047】
脱水反応終了後、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、晶析方法などの従来公知の方法により分離・精製して、本発明のα,β−不飽和ケトン化合物を容易に得ることができる。
【0048】
本発明において、式(5)で表される化合物をカルボン酸の過酸化物を用いてエポキシ化した後、塩基性物質を作用させて式(4)で表される化合物を合成することができる。
この反応は、はじめのエポキシ化反応とそれ以降の反応を連続的に実施してもよく、また、一旦、エポキシ化合物を溶媒抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の常法で精製した後、それ以降の反応を実施することもできる。
【0049】
本発明において、カルボン酸の過酸化物は、特に限定されるものではないが、過酢酸、過安息香酸、および3−クロロ過安息香酸などが例示され、過安息香酸または3−クロロ過安息香酸を好適に使用することができる。
本発明の製造方法において、カルボン酸の過酸化物の量は式(5)で表わされる化合物中の二重結合に対して、基本的には化学量論量であり、反応性等を勘案して、化学量論量の0.5〜2.0倍、好ましくは、0.8〜1.2倍を用いるのが好ましい。使用するカルボン酸の過酸化物の量が少なすぎると反応の進行が不十分となり、また、使用する量が多すぎる場合は、コストが増大するとともに副反応が進行しやすくなるので好ましくない。
【0050】
本発明において、この反応は、溶媒中で実施することが好ましく、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル、アセトン、水、および、これらの混合溶媒を使用することができる。
本発明において、カルボン酸の過酸化物と反応させる温度は、使用する過酸化物とその使用量により異なるが、−20℃〜90℃が例示でき、好ましくは0℃〜60℃である。反応温度が低すぎる場合は反応の進行が遅く、また、高すぎる場合は副反応が進行しやすくなるので好ましくない。
本発明において、カルボン酸の過酸化物との反応時間は、条件により異なるが、通常数時間から、数十時間である。
【0051】
本発明において、式(5)で表わされる化合物中の二重結合をエポキシ化した後、塩基性物質を作用させることにより、エポキシ化合物に変換する。当該塩基性物質としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム。水酸化ナトリウム等の無機塩基性物質、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機アミン類、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド類が例示され、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機アミン類を好適に使用することができる。
本発明において、当該塩基性物質の量はカルボン酸の過酸化物に対して、0.1〜3当量であり、好ましくは0.3〜1.2当量である。当該塩基性物質の量が少なすぎると反応の進行が不十分となり、また、使用する量が多すぎる場合は、コストが増大するので好ましくない。
【0052】
本発明において、塩基性物質との反応温度は、使用する物とその使用量により異なるが、−20℃〜90℃であり、好ましくは10℃〜60℃である。当該反応温度が低すぎる場合は反応の進行が遅く、また、高すぎる場合は副反応が進行しやすくなるので好ましくない。当該反応時間は条件により異なるが、通常数時間から、数十時間である。
【0053】
本発明において、反応終了後、一般式(4)で表わされる化合物は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、晶析方法などの従来公知の方法により分離・精製することができる。
【0054】
本発明において、式(1)で表わされる化合物の有効含有量および使用量は、使用形態や使用剤型、使用の対象となる微生物の種類、それらの予想される発生時期および期間等の条件に応じて、広範囲に変えることができる。
【0055】
本発明において、式(1)で表わされる化合物は、単独で優れた抗菌・抗真菌活性を発揮するものではある。通常、本発明の式(1)で表される化合物を抗菌剤として使用する際には、単独で、又は他の抗菌剤などとを組み合わせて用いる時、その濃度は抗菌剤の総量で抗菌製剤中0.001〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。当該濃度が0.001重量%未満では本発明の効果が十分得られず、10重量%を超えると製剤上あるいはコスト的に不利であるので好ましくない。
しかしながら特別な場合は、これらの範囲を超えるか、または下回ることも可能である。例えば他の抗菌剤や抗カビ剤との併用により、相乗効果や相加効果が認められる場合にはさらに低用量で使用できる。
【0056】
本発明において、抗菌剤や防腐剤としての形態には特に制限はなく、粉末状、顆粒状、錠剤状、溶液状、乳濁液状、懸濁液状等、任意の形態で使用することができる。例えば本発明の式(1)で表される化合物を、適宜固体又は液体に担持させて使用することも、また必要に応じて界面活性剤等の他の成分を配合して、エマルジョン、水和剤、粒状材、粉末、スプレー及びエアゾール剤等としても使用できる。さらに抗菌剤の形態に応じて通常の有効基剤を用いてもよく、例えば、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、ビタミンE、アズレンなどの薬剤やその他界面活性剤、溶剤、pH調整剤、防腐剤、甘味剤、香料、粘結剤、研磨剤等を配合することもできる。
たとえば、液状の形態で一液製剤化して用いる場合、一液製剤化する方法には特に制限はなく、溶媒に溶解して一液製剤化することができ、水に懸濁して一液製剤化することもできる。
【0057】
本発明において、式(1)で表わされる化合物を溶媒に溶解して一液製剤化することができる。この場合、殺菌または防腐の対象物が水系の場合には、有効成分の溶解、分散性を考慮して水または親水性有機溶媒を用いることが好ましい。当該親水性有機溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネート等のエステル類、炭素数8以下のアルコール類等を挙げることができる。
【0058】
本発明において、式(1)で表わされる化合物を水に懸濁して一液製剤化する場合、増粘剤としてキサンタンガム、ラムザンガム、グアーガム等を、分散剤としてノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。また、水懸濁剤とするために、ボールミル、アトライター等を用いて湿式粉砕することができる。
【0059】
殺菌または防腐の対象物が、重油スラッジ、切削油、油性塗料等の油系の場合、重油、灯油、スピンドル油等の炭化水素溶媒を用いて一液製剤化することができる。炭化水素溶媒を用いて一液製剤する際には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることもできる。
【0060】
上記のように、本発明の式(1)で表される化合物は、後記の実施例に示すように、各種の細菌や真菌に対して広い抗菌スペクトルを有しており、例えば、点眼剤、消毒剤などの医薬品、洗浄剤、防菌防臭加工繊維製品などの医薬部外品、そのほか、皮革製品、建材、木材、接着剤、プラスチック、フィルム、紙、パルプ、金属加工油などの幅広い分野において有用である。
【0061】
<実施例>
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。%は重量%である。
【0062】
<合成例1>
○1−フェニル−2−ペンテン−1−オンの合成
アセトフェノン(1.2g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解した溶液に、窒素雰囲気下、−78℃にて2.0Mのリチウムジイソプロピルアミド(6mL)を滴下した。同温にて1時間攪拌後、プロピオンアルデヒド(0.80mL,11mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)に溶解した溶液を滴下した。同温で1時間攪拌後、1N塩酸水溶液を滴下し反応を停止した。分取した有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で2回洗浄し、次いで合わせた水相を酢酸エチル(20mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルペンタン−1−オン1.5g(収率84%)を得た。
【0063】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルペンタン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δ ppm:1.02(3H, t, J = 7.6Hz), 1.57-1.65(2H, m), 3.04(1H, dd, J = 8.8, 17.6Hz), 3.18(1H, dd, J = 2.8, 17.6Hz), 3.27(1H, d, J = 2.8Hz), 4.09-4.18(1H, m), 7.45-7.49(2H, m), 7.56-7.60(1H, m), 7.95-7.97(2H, m).
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0064】
上記の3−ヒドロキシ−1−フェニルペンタン−1−オン(0.71g,4.00mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液に、0℃にてトリエチルアミン(1.2mL,8.8mmol)、およびメタンスルホニルクロリド(0.34mL,4.4mmol)を滴下した。加熱還流下1時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)で2回洗浄し、次いで合わせた水相をクロロホルム(20mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−ペンテン−1−オン0.51g(収率75%)を得た(以下、化合物1という)。
【0065】
○化合物1の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.15(3H, t, J = 7.6Hz), 2.32-2.37(2H, m), 6.88(1H, d, J = 15.2Hz), 7.12(1H, dt, J = 6.4, 15.6Hz), 7.45-7.49(2H, m), 7.53-7.57(1H, m), 7.92-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600(cm-1)
【0066】
<合成例2>
○1−フェニル−2−ヘキセン−1−オンの合成
合成例1と同様にしてアセトフェノン(1.2g,10.0mmol)およびn−ブチルアルデヒド(1.00mL,11mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルヘキサン−1−オン1.2g(収率61%)を得た。
【0067】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルヘキサン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.95(3H, t, J = 7.6Hz), 1.45-1.63(4H, m), 3.07(1H, dd, J = 9.2, 17.6Hz), 3.18(1H, dd, J = 2.8, 17.6Hz), 3.22(1H, d, J = 2.8Hz), 4.22-4.26(1H, m), 7.46-7.49(2H, m), 7.56-7.61(1H, m), 7.95-7.97(2H, m)
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0068】
次いで上記の3−ヒドロキシ−1−フェニルヘキサン−1−オン(0.96g,5.00mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−ヘキセン−1−オン0.66g(収率76%)を得た(以下、化合物2という)。
【0069】
○化合物2の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 1.00(3H, t, J = 7.6Hz), 1.54-1.61(2H, m), 2.27-2.33(2H, m), 6.88(1H, d, J = 15.6Hz), 7.12(1H, dt, J = 6.8, 15.6Hz), 7.45-7.57(3H, m), 7.92-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600 (cm-1)
【0070】
<合成例3>
○1−フェニル−2−ヘプタン−1−オンの合成
合成例1と同様にしてアセトフェノン(1.2g,10.0mmol)およびn−ペンタナール(1.16mL,11mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルヘプタン−1−オン1.2g(収率58%)を得た。
【0071】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルヘプタン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.93(3H, t, J = 7.6Hz), 1.36-1.62(6H, m), 3.04(1H, dd, J = 9.2, 17.6Hz), 3.16-3.23(2H, m) , 4.22-4.26(1H, m), 7.46-7.50(2H, m), 7.57-7.61(1H, m), 7.95-7.97(2H, m)
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0072】
次いで上記の3−ヒドロキシ−1−フェニルヘプタン−1−オン(0.83g,4.00mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−ヘプテン−1−オン0.64g(収率85%)を得た(以下、化合物3という)。
【0073】
○化合物3の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.94(3H, t, J = 7.6Hz), 1.38-1.57(4H, m), 2.30-2.36(2H, m), 6.88(1H, d, J = 15.6Hz), 7.06(1H, dt, J = 6.8, 15.6Hz), 7.45-7.56(3H, m), 7.91-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600 (cm-1)
【0074】
<合成例4>
○1−フェニル−2−オクテン−1−オンの合成
合成例1と同様にしてアセトフェノン(1.2g,10.0mmol)およびn−ヘキサナール(1.34mL,11mmol)から、無色結晶性の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルオクタン−1−オン1.59g(収率72%)を得た。
【0075】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルオクタン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.92(3H, t, J = 7.6Hz), 1.24-1.64(8H, m), 3.04(1H, dd, J = 8.8, 17.6Hz), 3.15-3.24(2H, m) , 4.22-4.26(1H, m), 7.46-7.50(2H, m), 7.57-7.61(1H, m), 7.95-7.97(2H, m)
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0076】
次いで上記の3−ヒドロキシ−1−フェニルオクタン−1−オン(1.46g,6.60mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−オクテン−1−オン1.09g(収率81%)を得た(以下、化合物4という)。
【0077】
○化合物4の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.90(3H, t, J = 7.6Hz), 1.32-1.57(6H, m), 2.29-2.35(2H, m), 6.88(1H, d, J = 15.6Hz), 7.06(1H, dt, J = 6.8, 15.6Hz), 7.45-7.56(3H, m), 7.91-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600 (cm-1)
【0078】
<合成例5>
○1−フェニル−2−ノネン−1−オンの合成
合成例1と同様にしてアセトフェノン(1.2g,10.0mmol)およびn−ヘプタナール(1.54mL,11mmol)から、無色結晶性の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルノナン−1−オン1.46g(収率62%)を得た。
【0079】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルノナン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.89(3H, t, J = 7.6Hz), 1.23-1.66(10H, m), 3.04(1H, dd, J = 9.2, 17.6Hz), 3.16-3.24(2H, m) , 4.22-4.26(1H, m), 7.46-7.50(2H, m), 7.57-7.61(1H, m), 7.95-7.97(2H, m)
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0080】
次いで上記の3−ヒドロキシ−1−フェニルノナン−1−オン(0.94g,4.00mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−ノネン−1−オン0.73g(収率84%)を得た(以下、化合物5という)。
【0081】
○化合物5の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.90(3H, t, J = 7.6Hz), 1.28-1.60(8H, m), 2.29-2.35(2H, m), 6.88(1H, d, J = 15.6Hz), 7.06(1H, dt, J = 6.8, 15.6Hz), 7.45-7.58(3H, m), 7.91-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600 (cm-1)
【0082】
<合成例6>
○1−フェニル−2−デセン−1−オンの合成
合成例1と同様にしてアセトフェノン(1.2g,10.0mmol)およびn−オクタナール(1.73mL,11mmol)から、無色結晶性の化合物として3−ヒドロキシ−1−フェニルデカン−1−オン1.55g(収率63%)を得た。
【0083】
・3−ヒドロキシ−1−フェニルデカン−1−オンの理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δ : 0.89(3H, t, J = 7.6Hz), 1.28-1.64(12H, m), 3.04(1H, dd, J = 9.2, 18.0Hz), 3.16-3.23(2H, m) , 4.21-4.22(1H, m), 7.46-7.50(2H, m), 7.57-7.61(1H, m), 7.95-7.97(2H, m)ppm
IR νmax(KBr) : 3400, 2830, 1710 (cm-1)
【0084】
次いで3−ヒドロキシ−1−フェニルデカン−1−オン(1.49g,6.00mmol)から、淡黄色中粘度液状の化合物として1−フェニル−2−デセン−1−オン1.19g(収率86%)を得た(以下、化合物6という)。
【0085】
○化合物6の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm : 0.89(3H, t, J = 7.6Hz), 1.26-1.56(10H, m), 2.29-2.34(2H, m), 6.87(1H, d, J = 15.6Hz), 7.06(1H, dt, J = 6.8, 15.6Hz), 7.45-7.58(3H, m), 7.91-7.94(2H, m)
IR νmax(KBr) : 2830, 1710, 1640, 1600 (cm-1)
【0086】
<合成例7>
○化合物8の合成
2.0 Mリチウムジイソプロピルアミド/テトラヒドロフラン-ヘプタン-エチルベンゼン溶液 (10.0 ml) をテトラヒドロフラン (10 ml) で希釈した溶液を−15℃に冷却した。この溶液に、1,4-ジアセチルベンゼン (1.63 g, 10.0 mmol) のテトラヒドロフラン (30 ml) 溶液を滴下した。30分間攪拌後、プロピオンアルデヒド (2.20 ml, 30.5 mmol)を加えた。同温で15分間攪拌後、飽和食塩水 (20 ml) を加えて分配した。有機層を分取し、水層を酢酸エチル (20 ml) で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することで淡黄色液状の下記式(7)で表される化合物7(1.19g、収率43%)を得た。
【0087】
【化6】

【0088】
・化合物7の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.04(6H,t,J=6.8Hz),1.56−1.70(4H,m),
3.06−3.22(6H,m),4.12−4.20(2H,m),8.05(4H,s)
【0089】
上記の化合物7に<合成例1>と同様の方法で、2当量のメタンスルホニルクロリドを反応させることで、下記式(8)で表される化合物8を合成した。
【0090】
【化7】

【0091】
○化合物8の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.16(6H,t,J=7.2Hz),2.36(4H,dq,J=6.0and7.2Hz),
6.86(2H,d,J=16.4Hz),7.10-7.18(2H,m),7.99(4H,s).
【0092】
<合成例8>
○化合物10の合成
合成例7と同様の方法により、1,4-ジアセチルベンゼンと3-フェニルプロピオンアルデヒドを反応させることで下記式(9)で表される化合物9を調製し、さらに、化合物9を脱水反応に供することで下記式(10)で表される化合物10を合成した。
【0093】
【化8】

【0094】
○化合物9の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.82-1.87(2H,m),1.91-2.04(2H,m),2.72-2.80(2H,
m),2.86-2.93(2H,m),3.12-3.18(6H,m),4.23-4.28(2H,m),7.18-7.31(10H,m),8.00(4H,s).
【0095】
【化9】

【0096】
○化合物10の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :2.64-2.69(4H,m),2.86(4H,t,J=7.6Hz),6.83(2H,d,
J=15.2Hz),7.09(2H,dt,J=7.2 and 15.2Hz),7.20-7.26(10H,m),7.91(4H,s).
【0097】
<合成例9>
○化合物13の合成
2.0 Mリチウムジイソプロピルアミド/テトラヒドロフラン-ヘプタン-エチルベンゼン溶液 (10.0 ml) をテトラヒドロフラン (10 ml) で希釈した溶液をice-saltバスで冷却した。この溶液に、1,4-ジアセチルベンゼン (3.25 g, 20.0 mmol) のテトラヒドロフラン (60 ml) 溶液を滴下した。20分間攪拌後、3-フェニルプロピオンアルデヒド (3.00 ml, 22.8 mmol) を加えた。同温で15分間攪拌後、2 N塩酸 (10 ml) を加えて中和した。飽和食塩水 (30 ml) を加えて分配した。有機層を分取し、水層を酢酸エチル (20 ml) で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色液状の下記式(11)で表される化合物11(2.28 g、収率38%)を得た。
【0098】
【化10】

【0099】
○化合物11の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.77-1.87(1H,m),1.92-2.03(1H,m),2.59(1H,d,
J=7.2Hz),2.65(3H,s),2.72-1.82(1H,m),2.87-2.92(1H,m),3.13-3.18(2H,m),4.21-4.31(1H,m),7.15-7.36(5H,m),7.97-8.08(4H,m).
【0100】
化合物11(1.20g、4.05 mmol) のテトラヒドロフラン (12.0 ml) 溶液に、-78 ℃で2.0 Mリチウムジイソプロピルアミド/テトラヒドロフラン-ヘプタン-エチルベンゼン溶液 (4.10 ml) を滴下した。60分間攪拌後、プロピオンアルデヒド (0.45 ml, 6.24 mmol) を加えた。同温で15分間攪拌後、2 N塩酸 (4 ml) を加えて中和した。飽和食塩水 (20 ml) を加えて分配した。有機層を分取し、水層を酢酸エチル (20 ml) で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで淡黄色液状の下記式(12)で表される化合物12(252mg、収率18%)を得た。
【0101】
【化11】

【0102】
○化合物12の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.03(3H,t,J=7.6Hz),1.46-1.72(2H,m),1.77-1.87
(1H,m),1.92-2.00(1H,m),2.72-2.82(1H,m),2.85-2.97(1H,m),3.13-3.23(4H,m),4.10-4.30(2H,m),7.15-7.36(5H,m),7.97-8.07(4H,m).
【0103】
上記の化合物12に<合成例1>と同様の方法で、2当量のメタンスルホニルクロリドを反応させることで、下記式(13)で表される化合物13を合成した。
【0104】
【化12】

【0105】
○化合物13の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.16(3H,t,J=7.2Hz),2.34-2.39(2H,m),2.64-2.69
(2H,m),2.86(2H,t,J=7.6Hz),6.82-6.88(2H,m),7.06-7.33(7H,m),7.91-7.98(4H,m).
【0106】
<実施例1>
○1-フェニル-4-ヒドロキシ-2-ブテン-1-オン(化合物14)の合成(その1)
1-フェニル-3-ブテン-1-オン (317 mmol) のジクロロメタン (1000 ml) 溶液に、65% 3-クロロ過安息香酸 (100 g, 377 mmol) を加えた。18時間加熱還流後、放冷し、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液 (500 ml) を加えて反応を停止した。有機層を分取し、水層をクロロホルム (200 ml) で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。
つぎに、得られた残渣をアセトン (600 ml) に溶解し、トリエチルアミン (26.0 ml, 187 mmol) を加えて、加熱還流した。3時間後、放冷し、減圧下で溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル (500 ml) および20%炭酸ナトリウム水溶液 (400 ml) を加えて分配した。有機層を回収し、飽和食塩水 (200 ml) で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで淡黄色結晶性の下記式(14)で表される化合物14を得た(24.2g,収率47%)。
【0107】
【化13】

【0108】
○化合物14の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :2.59(1H,br),4.73(2H,s),7.11-7.17(1H,m),7.21-
7.28(1H,m),7.44-7.49(2H,m),7.55-7.96(1H,m),7.97(2H,d,J=7.6Hz).
【0109】
<実施例2>
○化合物14の合成(その2)
1-フェニル-3-ブテン-1-オン (260 mmol) のジクロロメタン (1300 ml) 溶液に、65% 3-クロロ過安息香酸 (70.0 g, 264 mmol) を加えた。室温で20時間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液 (300 ml) を加えて15分間攪拌した。つぎに、トリエチルアミン (38.0 ml, 273 mmol) を加えて攪拌した。5時間後、有機層を分取し、水層をクロロホルム (150 ml) で2回抽出した。合わせた有機層を減圧下で濃縮した。つぎに、濃縮残渣を酢酸エチル (300 ml) に溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液 (100 ml × 2) および飽和食塩水 (100 ml) で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色結晶性の化合物14を得た(8.00g,収率19%)。
【0110】
<実施例3>
○化合物16の合成
2.0 Mアリルマグネシウムクロリド/テトラヒドロフラン溶液 (400 ml) に氷冷下でイソフタルアルデヒド (51.0 g, 380 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 (450 ml) を滴下した。同温で15分間攪拌した後、3 N塩酸 (300 ml) を加えて反応を停止した。酢酸エチル (300 ml) を加えて分配し、有機層を回収した。有機層を飽和食塩水 (300 ml) で洗浄した後、減圧下で溶媒を留去した。
つぎに、得られた残渣をアセトン (1500 ml) に溶解し、冷却した。Jones試薬 (予め、無水クロム酸75.0gを47%硫酸225mlに溶解し、蒸留水を加えて全量を300mlとした溶液) を反応液の温度が-5〜20℃の範囲となるように約20分間で加えた。10分間攪拌後、イソプロピルアルコール (50 ml) を加えた。10分間攪拌後、不溶物を濾別し、減圧下で溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル (400 ml) で抽出し、蒸留水 (300 ml) および飽和食塩水 (150 ml ×2) で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、淡黄色液状の下記式(15)で表される化合物15を得た(収量30.1g)。
【0111】
【化14】

【0112】
○化合物15の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :3.81(4H,d,J=6.8Hz),5.22-5.28(4H,m),6.04-6.14
(2H,m),7.57-7.62(1H,m),8.15-8.18(2H,m),8.54(1H,s).
【0113】
化合物15(61.6 mmol) のジクロロメタン (500 ml) 溶液に、65% 3-クロロ過安息香酸 (33.0 g, 124 mmol) を加えた。室温で20時間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液 (200 ml) を加えて15分間攪拌した。有機層を分取し、水層をクロロホルム (150 ml) で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。
つぎに、濃縮残渣をアセトン (150 ml) に溶解し、トリエチルアミン (5.20 ml, 37.3 mmol) を加えて加熱還流した。3時間後、放冷し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで淡黄色液状の下記式(16)で表される化合物16を得た(1.80g,収率12%)。
【0114】
【化15】

【0115】
○化合物16の理化学的性質
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :3.00-3.41(2H,br),4.48(4H,q,J=4.0Hz),7.13-7.28
(4H,m),7.53(1H,t,J=7.6Hz),8.10(2H,dd,J=4.0 and 7.6Hz),8.44(1H,s).
【0116】
<実施例4>
○1-(4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブテン-1-オン(化合物17)の合成
1-(4-メチルフェニル)-3-ブテン-1-オン (173 mmol) のジクロロメタン (600 ml) 溶液に、 3-クロロ過安息香酸 (222 mmol) を加えた。3時間加熱還流後、放冷した。有機層を10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(200 ml)、10%炭酸ナトリウム水溶液(300 ml)で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。
つぎに、得られた残渣をアセトン (200 ml) に溶解し、トリエチルアミン (87.6 mmol) と酢酸(175 mmol)とをあらかじめアセトン(200 ml)に溶かした溶液を加えて、50℃で攪拌した。1時間後、放冷し、減圧下で溶媒を留去した。残渣にクロロホルム (200 ml) および10%炭酸ナトリウム水溶液 (150 ml) を加えて分配した。有機層を回収し、水層をクロロホルム(50 ml)で3回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した後、トルエンから再結晶することで無色板状結晶の化合物17(下記式(17))を得た(12.7g,収率42%)。
【0117】
【化16】

【0118】
○化合物17の理化学的性質
融点61.7-62.6 ℃
1H-NMR(CDCl3, 400MHz) δppm :1.90 (1H, t, J=6.0 Hz), 2.42 (3H, s), 4.74 (2H, m), 7.12 (1H, dt, J=3.6 and 15.6 Hz), 7.22 (1H, d, J=15.6 Hz), 7.27 (2H, d, J=8.0 Hz), 7.89 (2H, d, J=8.0 Hz).
【0119】
<実施例5>
○抗微生物活性評価
上記の合成例1〜合成例6で調製した、化合物1〜6、及び比較例としてp−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン、和光純薬社製)、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル(ブチルパラベン、和光純薬社製)について、試験菌の増殖を阻止するための最小濃度(MIC)を測定した。
【0120】
(1)被験試料の調製
被験試料は正確に一定量秤量し25.6mg/mlの濃度になるようにdimethylsulfoxide(DMSO)で溶解した。25.6mg/mlを薬剤希釈系列の1本目として順次DMSOを用いて2倍希釈系列を作成した。
【0121】
(2)試験菌株
試験に使用した各種真菌Trichophyton mentagrophytes IFO(NBRC)6124、Trichophyton rubrum IFO(NBRC)5467、Aspergillus niger NBRC6341、Aspergillus terreus NBRC6346、Aureobasidium pullulans NBRC6353、Eurotium tonophilum NBRC8157は独立行政法人 製品評価技術基盤機構から分譲を受けた株を使用した。
2継代培養後27℃10日間Potato Dextrose Agar(Difco)スラントで培養した。培養後スラント表面を0.1%Tween80加生理食塩水で洗浄して分生子浮遊液を作成した。作成した浮遊液をCell strainer(40μm、FALCON)で濾過後生理食塩水により105cell/mlに調整し接種菌液とした。
また細菌はStaphylococcus aureus 209P、Bacillus subutillis ATCC 6633、Escherichia coli NIH JC-2を使用した。継代培養後Mueller Hinton broth(Difco)で37℃24時間培養した培養液を同培地で104cell/mlに調整し接種菌液とした。
【0122】
(3)培養
96穴マイクロプレートの各ウェルに、上記(1)で調製した、DMSOで作成した2倍希釈系列の各被験試料を2μl注入後、真菌はPotato Dextrose Agar、細菌はMueller Hinton agar(Difco)を198μl注入した。注入した寒天が固化後真菌は105cell/ml、細菌は104cell/mlの菌液を2μl培地表面上に接種した。発育コントロールとしては薬剤不含のウェルを設けた。
真菌は30℃で3日〜5日間、細菌は37℃24時間培養した。MICの判定は目視で発育の認められないウェルの中で最も低い濃度をMICとした。
各試験菌に対する各化合物被験試料のMIC(μg/ml)を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
<実施例6>
○抗微生物活性評価
合成例7から合成例11で合成した化合物8,化合物10,化合物13,化合物14,および、化合物16について、試験菌の増殖を阻止するための最小濃度(MIC)を測定した。
各試験菌に対する各化合物被験試料のMIC(μg/ml)を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
化合物1〜6、化合物8,化合物10,化合物13,化合物14,および、化合物16は全ての試験菌に対して良好な抗菌・抗真菌活性を有してした。中でも真菌に対して強い効果を示した。
【0127】
<実施例7>
○保存効力試験
(1)試験菌株
S.aureus NBRC 13276,E.coli NBRC 3972,P.aeruginosa NBRC 13275の細菌3種、A.niger NBRC 9455,C.albicans NBRC 1594の真菌2種は(独)製品評価技術基盤機構から分譲を受けた。
菌は2回の継代培養後、接種用菌液作成のためA.niger NBRC 9455はPotato dextrose agar(Difco)スラントに植え25℃1週間、C.albicans NBRC 1594はサブロー寒天培地(日水)で25℃48時間、細菌3種はトリプトソーヤ(ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト)寒天培地(日水)で37℃24時間培養した。
培養後の菌を0.1%Tween80加生理食塩水で洗浄して菌懸濁液を作成した。作成した菌液をCell strainer(40μm、FALCON)で濾過後OD600における濁度を測定し、事前に調べたOD600と生菌数の検量線から菌量を算定し、細菌は約10CFU/ml、真菌は約10CFU/mlになるように調整し接種菌液とした。
(2)保存溶液製剤処方
表3に保存効力試験に使用した処方(保存製剤処方)を示す。化粧水に使用した場合の保存安定性を知る目的で模擬化粧水を使って試験した。
【0128】
【表3】

【0129】
(3)試験方法
2で処方した液剤に対し0.025〜0.2%の化合物14を加え、さらに1で作成したS.aureus NBRC 13276,E.coli NBRC 3972,P.aeruginosa NBRC 13275、A.niger NBRC 9455,C.albicans NBRC 1594の菌液を最終菌量として細菌は約106CFU/ml、真菌は約10CFU/mlになるように加え、25℃で保存した。保存後1,3,7,14,21,28日目に各々の生菌数を測定した。
【0130】
(4)試験結果
表4〜7に化合物14を使用した処方の保存効力試験の成績を指数表示で示した(unit:log CFU/ml、ND:not detected)。化合物14は0.025〜0.2%の全濃度、1〜4の何れの処方においてもS.aureus,E.coli 等の細菌並びに真菌のA.niger ,C.albicans に対し強く、長期間に渡る抗菌保存効果を示した。即ち、試験した菌、処方の多くは菌接種1日後には菌が検出限界以下(N.D.:<10CFU/ml)となり、その効果は28日間の観察終了まで持続した。また、菌消失まで3日あるいは1週間を要した事例であっても観察終了期間まで効果は持続した。
【0131】
【表4】

【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のα、β−不飽和ケトン化合物は優れた抗菌・抗真菌活性を有しており、食品、医薬品、医薬部外品の分野で抗菌剤又は防腐剤として、さらにプラスチック製品、紙製品、布製品、革製品等への関連分野に応用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるα,β−不飽和ケトン化合物を含有することを特徴とする抗菌剤。
【化1】

(式(1)において、R1は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、R2は、水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは0〜3の整数であり、nは0〜3の整数であり、m+nは1〜4の値を満たすものである。)
【請求項2】
前記記載の一般式(1)が下記式(2)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である請求項1記載の抗菌剤。
【化2】

(式(2)において、R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基である。)
【請求項3】
前記記載の一般式(1)が下記式(3)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である請求項1記載の抗菌剤。
【化3】

(式(3)において、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、R4は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基であり、R5は、炭素数1〜12の炭化水素基、または水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【請求項4】
前記記載の一般式(1)が下記式(4)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物である請求項1記載の抗菌剤。
【化4】

(式(4)において、R6は、水素原子または炭素数1〜11の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは1〜3の整数である。)
【請求項5】
下記式(5)で表される化合物にカルボン酸の過酸化物を用いてエポキシ化した後、塩基性物質を作用させて製造した請求項4の式(4)で表されるα,β−不飽和ケトン化合物。
【化5】

(式(5)において、R7は、水素原子または炭素数1〜11の炭化水素基であり、R3は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、mは1〜3の整数である。)

【公開番号】特開2008−143881(P2008−143881A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10930(P2007−10930)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】