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抗菌被覆方法
説明

抗菌被覆方法

本発明は、広範囲の表面上に高接着性の抗菌材料蒸着するための効率的方法を対象とする。医療デバイスの表面等のポリマーおよび他の表面への酸化銀の付着増強をもたらす、制御陰極アークプロセスが記載される。基板上への抗菌材料の直接蒸着は、費用効果的方法として可能であり、被覆デバイスが体内で使用される場合、数週間かけて高抗菌活性を維持する。一実施形態において、本発明は、イオンプラズマ蒸着プロセスを使用して、基板上に抗菌材料を蒸着し、抗菌粒子の別個の層を形成する方法を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第60/762,769号(2006年1月27日出願)、米国仮出願第60/763,262号(2006年1月30日出願)、米国仮出願第60/776,537号(2006年2月25日出願)、および米国仮出願第60/779,917号(2006年3月6日出願)の利益を主張し、これらの出願の開示は参考として援用される。本願は、米国仮出願第60/434,784号(2002年12月18日出願)の利益を主張する、米国特許出願第10/741,015号(2003年12月18日出願)の一部継続出願であり、該出願の開示は参考として援用される。
【0002】
本発明は、医療用途で使用されるデバイスおよび材料上に抗菌表面を形成するために有用な、修飾金属被覆を調製するための陰極アークイオンプラズマ蒸着方法に関する。特に、本発明は、高度に制御された条件下で、銀(Ag)、および他の抗菌金属、またはそれらの組み合わせを蒸着し、改良された付着力を有し、長期間かけて活性を維持する、抗菌被覆を形成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
銀、亜鉛、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、クロム、ニッケル、銅、白金、および金等の金属の殺菌特性は、十分実証されている。これらの金属のうち、銀(イオまたは化合物の形態)は、おそらく最も良く知られており、最も広く使用される抗菌金属である。元素銀は、一定の抗菌効果を有するが、概して、多くの抗菌用途に対し過度に非反応性である。酸化銀の塗装およびインクがその反応度および溶解度の低減をもたらすという観察結果によって示されるように、酸化型銀は、抗菌剤としてより活性が高いと考えられている。
【0004】
溶液ベースの化学反応による容認方法によって、酸化銀、および銀と他の材料との組み合わせを使用して、銀の反応度を改良するための試みがなされてきた。特許文献1は、皮膚感染を治療するための、過酸化ベンゾイル等の酸化剤と組み合わせた含水硝酸銀等の金属銀塩溶液の使用について記載している。
【0005】
特許文献2は、銀金属粒子およびセラミックまたは塩基金属粒子をプラスチック製品の表面に包埋し、抗細菌特性をプラスチック製品に付与するステップを開示している。極めて微細な銀金属粒子が、含水銀塩溶液から化学蒸着によって得られる。
【0006】
銀粒子を生成する解法は、抗菌活性銀を提供可能であるが、これらの方法がその用途に制限されるように、結果として生じる銀粒子の構造をほとんど制御できない。さらに、含水硝酸銀等の一部のイオン種は、皮膚炎の可能性があるため、多くの用途に対し過度に反応性であり、したがって、慎重に監視および制御される必要がある。溶液ベースの化学反応の別の課題は、有害な副産物を生成しない安定した組み合わせを開発することである。水性溶液内で生じ得る種々の成分との副作用を一部理由として、ペースト、塗料、ポリマー、またはゲルの溶液内に結合された銀イオンは、保存寿命が短い傾向がある。
【0007】
抗菌金属イオンの徐放(sustained release)を生じさせることが可能な抗菌表面に対する特有の必要性がある。抗菌イオンの徐放を生じさせるための表面能力は、手術および創傷用包帯および帯具、手術用縫合糸、カテーテル、および他の医療デバイス、インプラント、補綴材、歯科用途、ならびに組織再生に特に有用であろう。また、抗菌材料の徐放から利益を得る他のデバイスとして、医療用道具および表面、レストランの表面、フェイスマスク、衣類、ドアノブ、および他の備品、スイミングプール、温水浴槽、飲料水浄水器、冷却システム、多孔親水性材料、加湿器、および空調システムを含む。
【0008】
金属イオンの徐放を生じさせるための方法は、特許文献3に記載されている。該方法によると、デバイスは、銀等の第1の金属と、スイッチを通して第1の金属に接続されている白金等の第2の金属とで被覆される。体液存在下の銀および白金金属の存在によって、銀イオンを放出または遊離するように意図されたガルバニック作用が生じる。イオンの放出は、デバイス外部で操作されるスイッチによって制御される。
【0009】
また、電流を銀被覆創傷包帯または医療デバイスに印加する技術は、特許文献4および特許文献5の主題でもある。外部スイッチ制御または外部電流の使用によって、金属イオン放出率を向上可能であるが、そのような外部制御または電流は、種々の用途に対し実践的ではない場合がある。
【0010】
特許文献6は、放出を維持するための外部電流を必要とせず、抗菌イオンの徐放を提供する抗菌表面を生成するプロセスを記載している。該開示によると、多層金属薄膜は、スパッタリングまたは蒸発プロセスを使用して、基板上に蒸着される。異なる層に対し異なる金属の組み合わせを使用し、層表面に粗面化またはテクスチャ処理を施すためにエッチング技術を採用することによって、複数のミクロ層インターフェースを生成可能である。複数のインターフェースは、体液に曝されると、ガルバニックおよび非ガルバニック作用によって、イオンの放出を提供する。
【0011】
また、特許文献7も、抗菌イオンの徐放を提供する抗菌被覆を開示している。被覆は、特定の蒸着パラメータを使用したスパッタリング技術によって調製される。被覆は、金属イオンの徐放に必要であると主張される、「原子無秩序」を呈する金属膜として記載されている。
【0012】
四酸化四銀(Ag)の単一秩序結晶は、皮膚疾患の治療における抗菌剤として、有用であると主張されている(特許文献8)。しかしながら、そのような組成は、局所使用以外に対して非実践的であり、再適用せずに長期間(すなわち、数日)にかけた抗菌材料の徐放を提供するその能力は、実証されていない。
【0013】
抗菌材料の蒸着は、一般に、銀および酸化銀被覆を生成するための3つの特有の方法のうちの1つ制限される。これらの方法のそれぞれは、重大な不利点を有し、いずれも、高接着性があり、医療デバイスおよび器具の表面上に均等に分布される抗菌膜を効率的に生成するように開発されてはいない。スパッタリング、浸漬、およびイオンビーム支援蒸着等の技術プロセスの一般に使用される状態は、可撓性基板または弾性デバイスに対し制限された接着性を有する被覆をもたらす。接着性を増加するための付加層が時として必要となり、処理時間において多大なコストを要する。
【0014】
真空中での陰極アークによる基板上への金属材料蒸着は、当技術分野において周知である。他のプラズマ蒸着方法とは対照的に、イオンプラズマ蒸着(Ion Plasma Deposition;IPD)は、特許文献9に記載されるように、高純度の高密度多成分被覆を生成可能である。しかしながら、従来の陰極アーク蒸着方法は、ある不利点を被っている。標的材料の非効率的使用および粒子制御の欠如によって、高額材料の無駄が生じ得る。蒸着される材料に対する制御の欠如によって、様々な大きさの粒子が形成され、非均一被覆の蒸着へとつながり得る。典型的には、陰極アークプロセスもまた、基板表面を非常に高温まで加熱する必要があり、基板材料に損傷を及ぼす可能性があり、基板の選択が厳しく制約される。
【特許文献1】米国特許第4,828,832号明細書
【特許文献2】米国特許第5,824,267号明細書
【特許文献3】米国特許第4,886,505号明細書
【特許文献4】米国特許第4,219,125号明細書
【特許文献5】米国特許第4,411,648号明細書
【特許文献6】米国特許第6,365,220号明細書
【特許文献7】米国特許第5,837,275号明細書
【特許文献8】米国特許第6,258,385号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0185182号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、所望の用途において、任意の表面に付着し、制御放出率を有し、寿命が長く、非毒性である抗菌材料の継続的必要性を解決する。これらの特徴を有する抗菌被覆は、本明細書に記載される新規の陰極アークIPD蒸着プロセスを使用して、広範囲の基板表面上に蒸着可能である。
【0016】
本発明の目的は、イオンプラズマ蒸着プロセスを使用して、基板上に抗菌材料を蒸着し、抗菌粒子の別個の層を形成する方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、任意の最終生成物上に抗菌表面を生成する方法を提供し、したがって、複雑な化学反応、ペースト、印刷、および結合技術を採用する必要性を排除することである。
【0018】
本発明の別の目的は、治療に効果的なレベルで、長期間体内で抗菌剤の徐放を生じさせる、抗菌表面を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、金属イオンの徐放のために、1つ以上の要素の分散金属および/または金属/金属酸化物を基板内に含浸または蒸着することによって、抗菌表面を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
故に、特に好ましい実施形態では、本発明は、表面内または上に分散される一酸化物、二酸化物、および多価酸化物の組み合わせとして設計され得るナノ、ピコ、およびミクロサイズの結晶性金属ならびに金属酸化物化合物の固体構造内に結合される、銀または他の金属イオンの蒸着、含浸、あるいは層化を提供する。次いで、銀イオンは、酵素活性により、病原菌と接触することによって放出され、あるいは水を添加または体液と接触させることによって、放出されることになる。
【0021】
開示されるプロセスは、制御組成を必要とする様々な種々のデバイスの製造に有用であるが、包帯等の小面積から非常に広面積用のロール、あるいは滅菌性、殺菌性、殺生物性、または抗菌性表面を必要とするカテーテル、柄、またはインプラント等の個々の部品の製造に特に有用である。本プロセスによって、イオン化酸素または他のガスと組み合わせられるイオン化材料の分量、粒子径、およびエネルギが制御され、広範囲の一価、二価、多価酸化物および窒化物、ならびに層の組み合わせに適用可能である。
【0022】
本プロセスは、抗菌生成物の作製、または既存の生成物および原材料の表面処理のために使用可能である。同時に、本プロセスは、抗菌活性の向上または他のナノ技術デバイスへの電力供給のための小型エネルギデバイスを作製するために使用可能である(例えば、マイクロポンプ、インプラント、ガルバニック表面、および他の電力を必要とするデバイスに電力を供給するための酸化銀電池)。
【0023】
故に、本発明の一側面は、潜在的抗菌金属を含有する陰極標的を真空室内に載置して、陰極に電力を供給し、陰極でアークを生成させ、陰極金属をイオン化粒子のプラズマにイオン化するステップと、酸素等の反応性ガスを真空室内に導入して、ガスをイオン化プラズマ粒子と反応させ、蒸着プロセス中に、制御方法で基板を標的から近位または遠位に移動させることによって、基板上のプラズマ粒子の蒸着を制御するステップを含む、基板上に抗菌表面を蒸着するためのプロセスを提供することである。
【0024】
蒸着プロセスのさらなる制御は、陰極への電力供給がアーク生成速度を変化させるように調節される、アーク制御手段によって達成されてもよい。
【0025】
本発明の別の側面は、金属酸化物粒子の分散を含む抗菌表面を基板上に提供することであり、金属は、銀、ニッケル、亜鉛、銅、金、白金、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、クロム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0026】
本発明は、選択された基板材料上に抗菌材料を蒸着するプロセスに関する。基板は、金属、セラミック、プラスチック、ガラス、可撓性シート、多孔性紙、セラミック、またはそれらの組み合わせ等の任意の材料であることができる。基板は、任意のいくつかのデバイスを含むことが可能であるが、医療デバイスは、特に好ましい。そのような医療デバイスとして、カテーテル、インプラント、ステント、気管チューブ、整形外科用ピン、シャント、排液管、補綴デバイス、歯科用インプラント、包帯、および創縫合材を含む。しかしながら、本発明は、そのようなデバイスに制限されず、フェイスマスク、衣類、手術道具および表面等の医療技術分野において有用な他のデバイスに及んでもよいことを理解されたい。
【0027】
移植感染症に関する2つの重要な要因がある。移植手術の際の最近の導入と、手術後の経皮開口部である。経皮デバイスは、感染症の主な原因場所である。デバイスが皮膚から分離すると、皮膚とデバイスとの間に裂溝が形成され、細菌汚染が生じる。
【0028】
さらなる側面では、本発明は、人体および動物、ならびに他の用途に使用される医療デバイス上に、調整抗菌表面または他の構成要素を提供するために改良された、より経済的方法に関する。
【0029】
抗菌材料は、任意の固体材料または抗菌特性を有する材料の組み合わせであることができる。好ましい材料は、潜在的抗菌特性を有し、生体適合性(すなわち、意図された環境に損傷を及ぼさない)である金属である。そのような金属として、銀、亜鉛、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、クロム、ニッケル、銅、白金、および金を含む(本明細書では、「抗菌金属」と称される場合がある)。用語「潜在的抗菌特性」は、これらの金属が、その元素状態において、典型的には、過度に非反応性であるため、効果的な抗菌剤として作用できない事実を認識していることを意味する。しかしながら、金属がイオン化されると、より強固な抗菌効果を有する。したがって、抗菌金属は、金属のイオン化によって実現される潜在的抗菌特性を有する。イオン化されると、抗菌金属もまた、例えば、窒化物、酸化物、および/またはそれらの組み合わせから成る化合物を形成する窒素または酸素等の種々の反応性ガスと結合可能である。
【0030】
(定義)
イオンプラズマ蒸着(Ionic Plasma Deposition;IPD)は、標的材料上への陰極アーク放電を使用して、高度に励起されたプラズマを生成する方法である。
【0031】
また、真空アークとして周知の陰極アークも、固体金属からプラズマを生成するためのデバイスである。アークが金属と衝突し、アークの高電力密度によって、金属が蒸発およびイオン化し、アークを持続するプラズマを生成する。真空アークは、雰囲気ガスではなく、金属蒸気そのものがイオン化されるため、高気圧アークとは異なる。
【0032】
マクロまたはマクロ粒子は、単一イオンよりも大きい粒子であり、ナノ(または、小)粒子は、約100ナノメートルの大きさの粒子であり、中マクロ粒子は、100ナノメートル〜約1ミクロンであり、大マクロ粒子は、1ミクロンよりも大きい粒子である。
【0033】
電源の電場が原子から電子の一部または全部を跳ね飛ばすように、十分に強力な電源によって、ガスクラスタ、物体、または標的等の原子群が分裂されると、クーロン爆発が生じる。電子がないと、イオン群は、正電荷のクーロン反発によって爆発する
プラズマ蒸着(Plasma Vapor Deposiiton;PVD)は、任意の化学反応を伴わずに、真空中、原料が基板に物理的に転移される、気相内薄膜蒸着プロセスである。この種の蒸着として、熱蒸発電子ビーム蒸着およびスパッタリング蒸着を含む。IPDプロセスは、物理蒸着の亜型である。
【0034】
本明細書で使用される用語「医療デバイス」は、加工される材料にかかわらず、ステント、カテーテル、種々のインプラント等を含む、医療分野で使用されるすべてのデバイスに広く及ぶことを意図する。医療デバイスに対する本明細書の参考文献、および他の医療参考文献は、動物用デバイスおよび用途も含むと理解される。
【0035】
用語「潜在的抗菌特性」は、一部の金属は、その元素状態において、典型的には、過度に非反応性であるため、効果的な抗菌剤として作用できないが、しかしながら、金属がイオン化されると、より強固な抗菌効果を呈し得るという事実を認識していることを意味する。したがって、抗菌金属は、多くの場合、金属のイオン化によって実現される潜在的抗菌特性を有する。イオン化されると、抗菌金属もまた、例えば、窒化物、酸化物、およびそれらの組み合わせから成る化合物を形成する窒素または酸素等の種々の反応性ガスと結合可能である。
【0036】
本明細書で使用される「多価」は、1つ以上の原子価状態を示しイオン上の電荷、またはその電子状態に基づいて特定のイオンに付与され得る電荷を示すと理解されたい。
【0037】
酸化銀は、別途記載がない限り、一重項酸化銀(AgO)として定義される。
【0038】
本明細書で使用される用語「約」は、ある特定の数が、必ずしも正確ではなく、使用される特定の手順または方法による判断によって増減し得ることを示すように意図される。
【0039】
PEEKは、ポリエーテルエーテルケトンである。
【0040】
PTFEは、ポリテトラフルオロエチレンである。
【0041】
EPTFEは、延伸ポリテトラフルオロエチレンである。
【0042】
UHMWPEは、超高分子量ポリエチレンである。
【0043】
特許請求の範囲を定義するために使用される「1つ」は、必ずしも単一種に制限されないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、制御可能放出、基板内への被覆包埋、特定材料のための低稼働温度、従来の陰極アークプロセスと比較して、処理効率における大幅に改良された処理量、拡張性、および広範囲の基板材料への適用を含む、他の最先端の抗菌被覆および抗菌被覆を蒸着するためのプロセスに優るいくつかの利点を提供する。
【0045】
さらに、酸化銀、酸化銅、および窒化ハフニウム被覆を含む、従来のIPD法を使用しては得られない優れた被覆が得られた。これらの材料は、米国特許第5,454,886号に略述されるような、より高額なプロセスと同程度の厚さで、高抗菌活性を有する(参照することによって、本明細書に援用される)。したがって、新しいIPDベースの方法を採用することによって、同一抗菌結果得ながら、より薄い被覆およびより短い処理時間を達成可能である。より高い処理量も可能となり、特に医療業界にとって、製造費削減をもたらし得、非常に重要な利点である。
【0046】
開示されたプロセスを使用して得られた膜の優位性に貢献する要因は、マクロ粒子蒸着において、減少ではなく、増大をもたらし、実際に膜質を向上させる新しいIPDプロセスを発見したことである。従来の陰極アーク蒸着プロセスの使用における当業者の優勢な傾向は、長年、より清潔かつ均一な膜を生成するために、蒸着されるマクロ粒子を低減することであった。業界における従来の知恵として、マクロ粒子は、一般に、蒸着される膜の質に対し有害であるとされていた。
【0047】
本発明は、選択された基板材料上に抗菌材料を蒸着するプロセスに関する。基板は、金属、セラミック、プラスチック、ガラス、可撓性シート、多孔性紙、セラミック、またはそれらの組み合わせ等の任意の材料であることができる。基板は、任意のいくつかのデバイスを含むことが可能であるが、医療デバイスは、特に好ましい。そのような医療デバイスとして、カテーテル、インプラント、ステント、気管チューブ、整形外科用ピン、シャント、排液管、補綴デバイス、歯科用インプラント、包帯、および創縫合材を含む。しかしながら、本発明は、そのようなデバイスに制限されず、フェイスマスク、衣類、手術道具および表面等の医療技術分野において有用な他のデバイスに及んでもよいことを理解されたい。
【0048】
移植感染症に関する2つの重要な要因がある。移植手術の際の最近の導入と、手術後の経皮開口部である。経皮デバイスは、感染症の主な原因場所である。デバイスが皮膚から分離すると、皮膚とデバイスとの間に裂溝が形成され、細菌汚染が生じる。
【0049】
したがって、本発明は、人体および動物、ならびに他の用途に使用される医療デバイス上に、抗菌表面または他の構成要素を提供するために改良された、より経済的方法に関する。抗菌材料は、任意の固体材料または抗菌特性を有する材料の組み合わせであることができる。好ましい材料は、潜在的抗菌特性を有し、生体適合性(すなわち、意図された環境に損傷を及ぼさない)である金属である。そのような金属として、銀、亜鉛、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、クロム、ニッケル、銅、白金、および金を含む(本明細書では、「抗菌金属」と称される場合がある)。本発明によると、抗菌金属は、真空中、微粒子成分のプラズマに標的金属の陰極をイオン化することによって、基板の表面上または内に蒸着される。国際特許出願公開第WO03/044240号に記載のようなイオンプラズマ蒸着デバイス(該出願の内容は、参照することによって、本明細書に援用される)は、本発明に従って修正し、その記載された方法に従って、抗菌材料の制御蒸着を実行するために使用可能である。
【0050】
新しいIPDプロセスを使用して得られた膜の優位性に貢献する要因は、マクロ粒子蒸着の減少ではなく、増大によって、実際に膜質を向上させることを発見したことである。陰極アーク蒸着プロセスの使用における当業者の優勢な傾向は、長年、より清潔かつ均一な膜を生成するために、マクロ粒子数を低減することであった。業界における従来の知恵として、マクロ粒子は、一般に、蒸着される膜の質に対し有害であるとされていた。
【0051】
対照的に、マクロ粒子の増加量によって、酸化銀膜の抗菌活性を制御する効果的な方法がもたらされることが見いだされた。周囲組織への銀の速放性のため、純AgOの厚く、ほぼマクロ粒子が含まれていない被覆が適用可能である。より調整された放出のためには、持続放出方式が使用される。
【0052】
陰極アークを使用して、基板上に被覆を蒸着する場合、標的から噴出されるマクロ粒子の相対量が制御可能である。マクロ粒子は、完全に蒸発されずに、標的から噴出される金属の溶融塊である。これらの塊は、濃密であり、純粋標的材料から成る。これらの塊の表面は、通常、帯電されているが、材料全体は、中性である。
【0053】
マクロ粒子がプラズマを通過すると、外表面が酸化され、粒子外側にAgOの被覆と、内側に純銀を有する、「コーティングキャンディ」のような構造を形成する。これは、持続放出型カプセルのような作用をする。
【0054】
持続放出効果は、AgOの外側「シェル」の固有の不安定性と、より安定性のある純銀の内側「シェル」とによって生じる。酸化銀の外側被覆は、比較的迅速にその抗菌活性を放出し、周囲の細菌を殺生する。放出プロセスの際、内側の純銀は酸化され、経時的に抗菌活性を維持するために徐々に放出される。その期間は、マクロ粒子径によって判断される。したがって、マクロ粒子の特定の大きさの特定の被覆は、選択された期間の間、抗菌活性を維持するように設計可能である。マクロ粒子の典型的大きさは、活性を維持するために望ましい期間の長さに応じて、10nm〜10ミクロンである。
【0055】
溶出は、抗菌活性において重要な要因である。しかしながら、溶出される銀の量は、Ag/AgO被覆デバイスの抗菌活性に関連する。溶出率は、感染および生物膜形成に対し効果的であるために、一定レベルで生じる必要がある。最小定率は、平方インチ当たり約0.005mgのAg(0.0048mg/平方インチ)である。本明細書で開示される方法によって調製された酸化銀被覆の抗菌活性は、少なくとも60日間、この速度で溶出することになる。他の方法によって調製された銀/酸化銀被覆は、7日間を超えて、定率で溶出することはない。
【0056】
本発明の別の重要な特徴は、酸化銀被覆をデバイス表面内に包埋し、したがって、他の蒸着方法によって蒸着される被覆と比較して、優れた接着性が得られる能力である。プラスチックに対し100nm以上、金属およびセラミックに対し10nm以上まで包埋された被覆が得られ得るように、包埋プロセスは、標的から特定の距離において、アーク制御方法を使用することによって制御可能である。
【0057】
イオンプラズマ蒸着プロセスを実行するために好適なデバイスは、図1に図示される。図1に示されるように、標的材料の陰極1は、真空室4内に配置される。陰極1は、電源5によって陰極に供給された電力からアークを陰極で生成することによって、イオン化される。プラズマ成分は、基板2を標的1との間で移動させる制御機構3によって、選択、制御、あるいは基板へ誘導される。
【0058】
また、図2に示されるように、電源6の追加制御を使用して、アーク速度を制御することによって、プラズマ成分のさらなる制御を提供することが可能である。
【0059】
所望の抗菌金属が銀の場合、例えば、銀陰極は、選択された基板とともに、イオンプラズマ蒸着デバイスの真空室内に載置される。陰極として使用される銀は、低純度の銀金属も使用可能であるが、好ましくは、医療グレード(すなわち、純度99.99%)銀であり、任意の潜在的毒性材料を回避する。
【0060】
真空室は、典型的には、0.1mT〜30mTの範囲の好適な作業圧力に加圧される。しかしながら、徐放率を有する効果的な抗菌表面を生成するIPDプロセスの能力は、典型的な範囲0.1mT〜30mT内の任意の特定の作業圧力に依存しない。同様に、イオンプラズマ蒸着プロセスは、作動温度にも依存しない。典型的な作動温度は、25〜75℃の範囲であり、この範囲内の任意の温度は、抗菌表面を生成するために好適である。
【0061】
基板は、回転台等の上で回転させ、または流入蒸着材料の軌道に対し任意の配向で、蒸着領域を通過させて転動させることが可能である。電力が陰極に供給され、陰極で電気アークを生成する。この電力は、原料に適切な電圧において、数アンペア〜数百アンペアの範囲の電流であることができる。電圧は、典型的には、12ボルト〜60ボルトの範囲であり、長さ数インチ〜数フィートであり得る原料の大きさに対し適切に比例される。電気アークは、銀イオンのプラズマ、中性帯電粒子、および電子に銀金属陰極をイオン化する。典型的定率10〜1000sccmで、酸素がプラズマに導入され、銀イオンと結合し、酸化銀粒子を形成する。酸化銀粒子は、所望のイオン放出率および基板の最終使用に応じて、1ナノメートル未満から約50ミクロンの範囲の粒子径を有し得る。
【0062】
また、持続期間にわたって効果的な放出率を得るために、抗菌表面の金属イオン放出率を制御することも可能である。そのような制御金属放出は、一価、二価、および多価酸化物を含む、種々の構造の酸化物の組み合わせを基板上に蒸着することによって得られる。酸化物の組み合わせは、イオン濃度の制御および抗菌活性増強のための金属イオンの徐放に貢献する、異なるイオン放出率を呈する。また、プラズマ内で酸化されると、多価酸化物が中性金属粒子上に生成され得る。これは、種々の大きさおよび原子価状態の酸化物の組み合わせを生成することによって、蒸着される材料の徐放をさらに向上させる。そのような組み合わせの利点は、より長い期間にわたるイオン放出の増加である。次いで、酸化銀粒子は、酸化銀粒子の分散形態で基板表面上に蒸着される。
【0063】
また、抗菌反応を送達する際の抗菌表面の効果は、抗菌表面を形成するための処理時間に依存する。5秒から数分のより長い処理時間によって、異なる抗菌反応を有する抗菌表面がもたらされる。
【0064】
また、制御金属放出は、異なる金属酸化物の組み合わせを基板上に蒸着することによって得られる。これらの組み合わせとして、銀とチタニウム、銀と金、銀と銅、銀銅と金を含む。他の材料も、共蒸着金属、合金として、または交代層として、種々の組み合わせで結合可能である。プラズマ環境の制御および柔軟性によって、より幅広い組み合わせが可能となり、故に、広範囲のカスタマイズされた被覆が可能となる。
【0065】
本発明は、以下の非制限実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0066】
(材料および方法)
試料溶出試験−溶出試験を行い、被覆されたポリプロピレン試料の銀溶出プロファイルを測定した。銀溶出試験は、一定期間をかけて、被験物質から放出された銀の量を測定するための定量法を提供する。試験は、現在の食品医薬品局(FDA)医薬品安全性試験実施基準(Good Laboratory Practice;GLP)米国連邦規則第21条第58章に従って行われた。各被験物質は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)分光分析法による銀溶出分析用に温度37°±1℃で注入するために、USP0.9%NaClに抽出された。各試料は、別々に、一定期間、10mLのUSP 0.9% NaCl中に載置された。本研究の間使用された期間は、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、2〜7日、10日、15日、20日、25日、および30日であった。各時点において、試料周囲の流体を清潔なガラス容器に静かに注ぎ入れ、新しいNaClを試料容器に添加した。注がれた液体は、脱イオン水とともに総量50mLにし、次いで、酸消化され、ICPによって銀含有量を調べた。
【0067】
試料抑制帯域(Zone of Inhibition;ZOI)試験 − ZOI試験は、簡易な抗菌活性24時間試験である。本試験は、定量的ではなく、連続希釈試験が保証されるかどうかを示すに十分な情報のみ提供する。本試験は、組織再生または壊死に関する情報は提供しない。
【0068】
試料連続希釈試験−連続希釈試験は、所与の体積当たりの最近量の正確な測定値を提供する。対照試料と比較した場合、抗菌被覆活性の定量的測定値を提供可能である。
【0069】
標準的細菌溶液は、0.5マクファーランド標準(McFarlandstandard)から調製される。本標準は、625nmで0.08〜0.1ODを示すように較正され、標準細菌数1.5×10cfu/mLを提供する。
【0070】
以下の本発明の実施形態は、詳細に記載されているが、それら実施形態の修正および適合が当業者によって成され得ることは明白である。そのような修正は、本発明の範囲内であることを理解されたい。
【0071】
(実施例1 銀被覆カテーテル(公開方法))
銀被覆カテーテルは、米国特許第5,454,886号の実施例6に記載の同一手順を使用して調製された。銀金属が、マグネトロンスパッタリングを使用して、ラテックスフォーリカテーテル(Foley Catheter)の2.5cm部分上に蒸着された。作動条件は、公開実施例に基づいて、可能な限り近似させて実行された。すなわち、蒸着率は、1分当たり200A°、アルゴン作業ガス圧は、30mTorr、基板の温度と被覆金属銀の融点の比率(T/Tm)は、0.30であった。本実施例では、基板が円形かつ粗面であるため、入射角は可変であった。つまり、入射角は、円周周囲、およびより微細な規模で、多数の表面特徴の側面および上面にわたって変化した。S.aureus(黄色ブドウ球菌)に対する抗菌効果は、抑制帯域によって試験された(表1)。
【0072】
【表1】

以前に公開された同一T/Tm条件下、特許第5,454,889号の実施例6に記載と同一条件を繰り返したところ、チューブ周囲の観察された抑制帯域(ZOI)は、報告されたZOIより有意に少なかった。ZOI試験は、特許第5,454,886号の実施例1に報告されたS.aureusを使用して行われた。
【0073】
(実施例2 DCマグネトロンスパッタ抗菌被覆(公開方法))
続いて、特許第5,454,886号に記載の実施例7の手順を行った。電力0.5kW、Ag/O40mTorr、初期基板温度20℃、陰極/陽極距離100mm、および最終膜厚300nmの条件を使用して、99.99%純銀を表面上にDCマグネトロンスパッタリングすることによって、テフロン(登録商標)被覆ラテックスフォーリカテーテルを被覆した。使用された作業ガスは、市販のAgおよび99/1wt%Ag/Oであった。
【0074】
被覆の抗菌効果は、抑制帯域試験によって試験された。ミューラー・ヒントン寒天培地(Mueller Hinton Agar)を、ペトリ皿に分注した。寒天プレートは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC#25923の群生による植接種に先立って、表面乾燥させた。接種材料は、製造者の指示により再構成されたバクトロールディスクス(Bactrol Discs)(Difco,M.)から製造した。接種直後、試験される被覆材料を寒天表面上に載置した。この皿を37℃で24時間培養した。培養期間の後、ZOIが測定され、さらに補正抑制帯域を求めた(補正抑制帯域=抑制帯域−寒天と接触している試験材料の直径)。公開結果は、非被覆試料に対する抑制帯域を示さなかった。作業ガス圧40mTorrを使用して、99/1wt%Ag/O中でスパッタされたカテーテルに対し、補正抑制帯域11mmが報告された。
【0075】
表2に記載の公開条件下、本実験繰り返した。1mm未満の小ZOIが認められた。
【0076】
【表2】

上記公開条件を繰り返した際、実験結果によって、1mm未満の小ZOIが示された。
【0077】
(実施例3 複合銀抗菌膜(公開方法))
本実施例は、特許第5,454,886号の実施例11で見いだされたように、反応性スパッタリングによって形成された複合抗菌被覆を調製するための最先端の手順を実証する。表3は、公開スパッタリング条件、および公開手順の以下のステップで得られた実験結果と比較した比較研究に使用された条件を示す。
【0078】
【表3】

(実施例4 酸化銀被覆カテーテルの体外試験)
本実施例は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の範囲にわたって、抗菌被覆の効果を実証する。一般抑制帯域に対する試験菌として、グラム陽性菌は、大便レンサ球菌(E.faecalis)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus MR)、およびS.epidermis(ブドウ球菌)、グラム陰性菌は、大腸菌(E.coli)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、および緑膿菌(P.aerugosia)とした。
【0079】
ZOIを試験するために使用された方法は、4日間のプレート毎の転移最大値とした。上記細菌のそれぞれを、トリプシン大豆寒天上に広げた。予め準備されたプレートに細菌を接種し、3等分し、200nm酸化銀で被覆された1インチの長さフォーリカテーテル試料を、接種後の各部分の中心に載置した。試料は、37℃で培養器に載置され、24、48、72、および96時間の時点でZOIを測定した。
【0080】
総ZOIは、ZOIから試料幅を差し引くことによって定義する。本実験に対し、測定は総ZOIから成り、2つに分けられた。測定可能ZOIおよび生物膜が存在せず、菌が試料上に成長または試料に付着しない場合、測定は、0.0mmとなる。生物膜が観察される場合、−1.0mmと記録される。プレート毎の転移は、生物膜が示されるか、または測定値0.0mmが2つの転移に対し記録されるまで繰り返した。各菌は、3つのプレートを有し、各プレートは、隣接試料および対照カテーテルに対し3つのデータ点を有していた。測定は、毎日行われた。プレート毎の3つの測定を平均化し、1日のプレートZOIを求めた。これは、濃度が過度に濃いまたは薄いスワブを補正するために行われた。得られた測定値はすべて、mmで記録した。測定値0.0は、菌が銀試料に成長したが、銀試料カテーテル上に付着または生物膜を生成しなかったことを示す。すべての対照試料は、例外なく、1日目から生物膜を有していた。結果を表4に示す。
【0081】
【表4−1】

【0082】
【表4−2】

(実施例5 酸化銀被覆カテーテルの体内試験)
本実施例は、ウサギにおける200nm酸化銀被覆を有する2つの同一片のカテーテル材料の体内試験を実証する。試験デバイスは、ETO殺菌された。2つのカテーテル片のそれぞれに対し、カテーテル(長さ約4インチ)の抗菌部分の4つのセグメントを調製した。試験デバイスは、規定通り使用し、室温に保たれた。
【0083】
全部で8つのカテーテルセグメント(各カテーテル材料の4つのセグメント)を、雌のニュージーランドホワイト(New Zealand White)ウサギに移植した。1日目の移植に先立って、当該動物の体重を計測し、ケタミン/キシラジン混合物(87mg/mLケタミン、13mg/mLキシラジン)0.1mL/kgの静脈注射による麻酔を行った。当該動物は、生後23〜25週間で、1日目の体重は2.63kgであった。
【0084】
カテーテル移植後1週間、攻撃菌(S.aureusまたはE.coli)を、各カテーテル侵入部位周囲の皮膚に載置した(各カテーテル材料の2つのセグメントは、S.aureusで攻撃し、各カテーテル材料の残りの2つのセグメントは、E.coliで攻撃した)。当該動物は、細菌攻撃から48時間後屠殺した。
【0085】
処置パラメータを表5に示す。細菌攻撃は、使用プロトコルに従って8日目に行った。
【0086】
【表5】

傍脊椎領域を電気クリップで挟み、ポビドンヨードおよび70%アルコールで調製した。当該動物は、背中に沿って8つの移植部位を有した。各部位は、正中線から2.5〜5.0cmにあり、部位は、約2.5cm離間させた。移植部位は、マジックインキで識別した。
【0087】
各移植部位において、皮膚を筋肉まで16ゲージ針で穿刺した。カテーテルセグメントは、針のIDを筋肉に挿入し、針を除去し、皮膚を通して筋肉内に移植されたカテーテルセグメントの半バンを残した。カテーテル材料の1部分を、各部位に移植した。ウサギは、2つの同一片のそれぞれの4つのセグメント、つまり全部で8つのインプラントを移植された。暴露されるカテーテルセグメントは、滅菌包帯で覆った。当該動物の背中上の移植部位の位置は、表6に示す。
【0088】
【表6】

8日目、各暴露されるカテーテルセグメントから滅菌包帯を除去した。各カテーテル侵入部位周囲の皮膚は、2.2×10CFU/mL S.aureusまたは5.10×10CFU/mL E.coliを含む1mL懸濁液の表面滴下を受けた。各カテーテル材料の1セグメントは、S.aureusで攻撃し、各カテーテル材料の1セグメントは、E.coliで試験した。接種後、カテーテルセグメントは、滅菌包帯で再度覆われた。各部位に使用された接種菌を表7に示す。
【0089】
【表7】

10日目、Brain Chemistry Optimization Programプロトコル01−11−21−22−02−026に従って、市販の安楽死薬の溶液の静脈注射によって、当該動物を安楽死させた。インプラント全体を無菌状態で回収し、定量的細菌測定用に提出した。筋肉および皮膚の経路領域における表面スワブを抽出した。いくつかのカテーテルは抜脱され、移植経路が可視できなかったため、本研究では、スワブを回収しなかった。移植経路周囲の筋肉の一部は、10%中性緩衝ホルマリン内に載置し、有資格獣医病理学者による評価のためにColorado Histo−Prep(Fort Collins,CO)に提出した。8つの移植部位のうち4つ(部位番号1、6、7、および8)に対し、インプラントの内部および外部部分を、トリプシン大豆肉汁(Tryptic Soy Broth)に別々に回収した。これらは、皮膚に存在するカテーテルの一部を依然としていた部位であった。
【0090】
表8から分かるように、臨床的観察結果は、ウサギは健康なままであり、感染の兆候がないことを示した。
【0091】
【表8】

各試験材料に対し、1移植部位にS.aureusを接種し、1移植部位にE.coliを接種した(部位番号1、6、7、および8)。接種部位に対し、2つの移植位置(内部および外部として識別)が、微生物成長および識別用に評価された。皮膚上のカテーテル部分は、外部移植部位として識別され、皮膚下のカテーテル部分は、内部移植部位として識別された。
【0092】
接種日に(8日目)、皮膚外部に可視インプラントが存在しなかったため、残りの4つの移植部位(部位番号2〜5)に対しては、接種は行わなかった。これらの部位に対し、カテーテルの皮下部分を微生物成長および識別用に評価した。
【0093】
3659−16カテーテル材料で移植され、S.aureusで攻撃された部位(部位番号1)に対し、攻撃菌の陽性成長が、内部および外部移植部位の両方で識別された。659−16カテーテル材料で移植され、E.coliで攻撃された部位(部位番号6)に対し、常在性ブドウ球菌(Staphylococcus hominis)として識別された細菌成長が、内部移植部位に存在した。この成長は、環境汚染によるものであった。この部位では、攻撃菌(E.coli)の成長は、内部または外部移植部位でも識別されなかった。
【0094】
3659−17カテーテル材料で移植され、S.aureusで攻撃された部位(部位番号8)に対し、攻撃菌の陽性成長が、外部移植部位のみで識別された。3659−17カテーテル材料で移植され、E.coliで攻撃された部位(部位番号7)に対し、成長は、内部または外部移植部位でも存在しなかった。
【0095】
接種されなかった残りの4つの移植部位(部位番号2〜5)に対し、細菌成長は存在しなかった。表9を参照されたい。
【0096】
【表9】

任意の移植部位において、組織反応または感染の著しく明確な兆候はなかった。すべての移植部位に対し、移植位置に皮下筋膜および筋肉の黒〜灰色の変色があった。結果を表10に示す。
【0097】
【表10】

銀/酸化銀含浸抗菌カテーテルは、細菌、細菌集落、および生物膜の形成を防ぐ結果を示した。抗菌結果は、すべての移植部位にわたって一貫し、抗菌被覆は、8日目のE.coliまたはS.aureusによる微生物攻撃後も効果的なままであった。壊死は認められなかった。病変は、筋肉内の異物反応、皮下組織内の急性炎症反応と一貫していた。
【0098】
(実施例6 酸化銀被覆の溶出)
全部で20の試験試料(典型的な酸化銀被覆で被覆された1cmポリプロピレン)を評価した。両試験群に対し全部で10の異なる試料から、2つの試料を抽出した。本試験は、各時点で存在する銀の量を測定するために、誘導結合プラズマ分析を使用して二重に行われた。次いで、各試験群の全部で10の報告された値に対し、値を平均化した。溶出値は、mg/試料(この場合、mg/平方インチ)で求められた。
【0099】
試料はすべて、NaCl 溶液内で、最初の24時間にかけて一貫した反応を示した。値がほぼ24時間の時点で横ばいになる前に、ほぼ4時間の時点で、若干のピークを迎えた。
【0100】
すべての試料は、その反応において非常に一貫していた。値は、1日目から5日目まで、かなり安定していた。次いで、ほぼ6日目の時点でピークを迎え、その後、7日目から30日目まで横ばいとなった。
【0101】
被覆ポリプロピレン試料の全時点にかけての平均的溶出は、平方インチ当たり約0.005mg(0.0048mg/平方インチ)であった。試料は、本研究の期間全体にかけて、非常に一貫した銀溶出を示した。4時間の時点と、6日目以降、生理食塩水中で若干のピークを迎えた。本研究は、溶出値と、ポリプロピレンに対する平方インチ当たり1.05mg(外部試験から得た)のおよその総銀値とを使用して行われた。
【0102】
(実施例7 ePTFE被覆基板の体内治癒試験)
本実施例は、体内試験を通して、壊死を生じさせない200nm酸化銀被覆の能力を実証した。1cmePTFE試料は、標準的200nm酸化銀被覆で被覆され、上記実施例6で略述したように、ウサギに皮下移植した。基板は、移植された酸化銀被覆部分周囲の組織の治癒を研究するために、9日目および22日目に外植した。結果を表11に示す。
【0103】
【表11】

表11で使用された略語は、以下の通りである。
Occ 時折
PMSs 多核白血球
Mps ムコ多糖体
SSCs 紡錘状細胞
MF マイクロファイバ
Base 好塩基球
W 〜を有する/〜を伴う
Ncf 好中球走化因子
(実施例8 可動基板による陰極アーク蒸着)
本実施例は、マクロ粒子径に及ぼす可動基板の影響を実証し、したがって、酸化銀の放出を制御する。
【0104】
基板1を、標的から30インチの距離の可動ホルダ内に載置した。室を、5E−4Torrのレベルに加圧した。アークが、電流100アンペアおよび16ボルトで開始した。酸素を、200SCCMで室に導入した。基板は、15秒毎に1インチの速度で、標的に近づくように平行移動させた。これは、基板が標的から8インチ離間するまで継続した。
【0105】
補助実験では、基板2を、同一電流、電圧、合計時間および酸素流率で、標的から30インチの距離に載置した。今回、基板は、左側固定であった。
【0106】
初期ZOI試験では、24時間で、同一の大きさの帯域を示した。いくつかの細菌に対しプレート転移を行い、その結果を表12に示した。蒸着プロセスの際に標的の方へ移動した基板が、左側固定の基板よりも長い期間抗菌活性を示したことが分かる。
【0107】
ZOI試験に加え、2つの基板の断面を、SEM分析を使用して調べた。試料1では、マクロ粒子の量および大きさは、膜の厚さとともに増加した。すなわち、基板近くのマクロ粒子は小量かつ小さく、その数および大きさは、膜成長厚に伴って増加した。反対に、試料2の断面は、マクロ粒子はほとんどなく、均一であった。
【0108】
【表12−1】

【0109】
【表12−2】

(実施例9 アーク制御)
本実施例は、生成されるマクロ粒子の大きさおよび周波数の直接的関連を実証する。本実施例では、2つの試料種を事前形成した。1つ目は試料3であり、アーク制御を有さず、基板は、標的から12インチの距離に載置された。2つ目は試料4であり、アーク制御を有し、基板はまた、標的から12インチの距離に載置された。両試料は、別個の種類に対し別個の時間で室内に載置され、5E−4Torrに加圧された。アークは、開始時のすべての電力供給に対し100アンペアに設定した。各標的は、開始時合計200アンペアとなる2つの電源を有していた。試料3は、アーク制御なしで、5分間稼働した。試料4は、300 hertzに最適化されたスイッチング電流で稼働した。
【0110】
スイッチングは、標的に対し常に200アンペアを維持したが、各電力供給は増減したため、どの時点においても、電力供給に対し電流が等しいわけではなかった。これによって、アークは、特定の時間において、特定の距離移動し、それによってマクロ粒子密度および大きさを制御した。
【0111】
試料3および4に対し、SEM断面解析を行った。膜厚は、全体を通して一貫していたが、試料4は、試料3よりも大幅に上回る平均的マクロ粒子径および密度を有することが認められた。試料3の平均的マクロ粒子径は、約1ミクロンであり、密度は10/cmであった。試料4の平均的マクロ粒子径は、約3ミクロンであり、密度は10/cmであった。
【0112】
(実施例10 金属上のAgO体外試験)
本実施例は、Ti−6−4およびCoCrMo上のAgO被覆の効果をする。試料5および7は、通常の手順を使用して洗浄し、標的から12インチの距離で真空室内に載置された。典型的な酸化銀被覆を試料片上に蒸着し、3日間ZOI試験を行った。試料5はTi−6−4、試料6はCoCrMoである。結果を表13に示す。
【0113】
【表13−1】

【0114】
【表13−2】

本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更および修正が成され得、さらに同等物と置換され得ることは、当業者によって理解されるであろう。特に、各設計の化学的および薬学的詳細は、若干異なる場合があり、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって修正され得ることを理解されるであろう。そのような修正はすべて、添付の請求項の範囲内に包含されるものとして意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】図1は、IPDデバイスの略図である。1.標的材料、2.被覆される基板、3.基板を標的から近位または遠位に移動させるための機構、4.真空室、および5.標的用電源。
【図2】図2は、IPDデバイスの別の実施形態である。1.標的材料、2.被覆される基板、3.基板を標的から近位または遠位に移動させる能力を有する機構、4.真空室、5.標的用電源、および6.アークの速度を測定するアーク制御。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に抗菌被覆を生成するための陰極アークイオンプラズマ蒸着方法であって、
選択された基板を陽極と陰極標的との間に位置付けることであって、該標的は、イオン性金属を含む、ことと、
該陰極標的および該基板を格納する真空室内に酸素ガスを導入することであって、該室は、約0.1〜約30mTorrに加圧される、ことと、
該陽極と該陰極標的との間にアーク放電を生成することであって、該アークへの電力は、随意に、可変的に制御され、1nm〜50ミクロンの範囲の粒子を生成する、ことと、
アーク放電の際、所定の時間の間、約25℃〜約75℃の温度において、約1インチ〜約50インチの範囲内で、該標的に向かう該基板の移動または該標的から離れる該基板の移動を調節し、厚さ約50nm〜約5ミクロンを有する高密度の接着性抗菌被覆を該基板上に蒸着することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アークへの電力は、単一可変電源によって、または陰極標的に対向する位置に取設された少なくとも2つの独立した可変電力によって、外部から制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アークへの電力は約12〜約60ボルトに調節され、前記基板上への100〜200nm被覆の蒸着の際、5〜約500アンペアを提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン性金属は、銀、金、白金、銅、タンタル、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、および亜鉛から成る群から選択される金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属は銀である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板は金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、チタニウム、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、合金、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基板はポリマーまたはセラミックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーは、ポリプロピレン、ポリウレタン、EPTFE、PTFE、ポリイミド、ポリエステル、PEEK、UHMWPE、またはナイロン、あるいはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーはPEEKまたはポリエチレンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金属基板上に蒸着される高接着性のAg/AgO抗菌膜であって、該Ag/AgOは、深さ約10ナノメートルまで該基板に含浸する、Ag/AgO抗菌膜。
【請求項12】
ポリマー基板上に蒸着される高接着性のAg/AgO抗菌膜であって、該Ag/AgOは、深さ約100ナノメートルまで前記表面に含浸する、Ag/AgO抗菌膜。
【請求項13】
チタニウム、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、それらの組み合わせおよびそれらの合金から成る群から選択される金属上に蒸着される、請求項11に記載のAg/AgO抗菌膜。
【請求項14】
ポリプロピレン、ポリウレタン、EPTFE、PTFE、ポリイミド、ポリエステル、PEEK、UHMWPE、またはナイロン、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む、ポリマー基板上に蒸着される、請求項12に記載のAg/AgO抗菌膜。
【請求項15】
カテーテル、弁、ステント、およびインプラントから成る群から選択されるデバイスを含む、請求項1に記載の基板。
【請求項16】
前記デバイスは、カテーテルである、請求項15に記載の基板。
【請求項17】
前記カテーテル、弁、ステント、およびインプラントは、ポリマー、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の基板。
【請求項18】
前記カテーテルは、ポリマーを含む、請求項16に記載の基板。
【請求項19】
前記ポリマーは、ポリプロピレン、ポリウレタン、EPTFE、PTFE、ポリイミド、ポリエステル、PEEK、UHMWPE、およびナイロンから成る群から選択される、請求項18に記載の基板。
【請求項20】
銀/酸化銀イオンプラズマ蒸着膜において、抗菌活性を増加させるための陰極アークイオンプラズマ蒸着方法であって、陰極アーク標的からの基板の距離を調節することと、該標的からの該基板の該距離と関連して、該膜に蒸着される銀の量を監視することとを含み、該膜の増加した抗菌活性は、該膜内の銀/酸化銀比の減少と相関する、方法。
【請求項21】
アーク速度を調節することと、蒸着される銀/酸化銀の粒子径を監視することとをさらに含み、マクロ粒子数の増加が、前記膜の抗菌活性を増加させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって調製された被覆。
【請求項23】
蒸着時間を増加させて所望の膜厚を得ることをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項24】
金属、ポリマー、またはセラミック表面上に蒸着される銀/酸化銀抗菌膜であって、該銀/酸化銀は、深さ約10nm〜約10nmまで該金属表面に包埋され、該膜は、厚さ約50nm〜約5ミクロンを有し、使用後少なくとも28日間抗菌活性を維持する、銀/酸化銀抗菌膜。
【請求項25】
金属、ポリマー、またはセラミック医療デバイスの表面上に蒸着される、請求項24に記載の銀/酸化銀抗菌膜。
【請求項26】
前記医療デバイスは、カテーテル、ステント、インプラント、または弁である、請求項25に記載の膜。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−524479(P2009−524479A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552353(P2008−552353)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001695
【国際公開番号】WO2007/087269
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508225037)カメレオン サイエンティフィック コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】