説明

抵抗体組成物およびこれを用いた発熱体

【課題】面状発熱体に用いる抵抗体組成物であって、柔軟性と信頼性の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】柔軟難燃性基材2として、例えば、難燃性ポリエステル繊維で作製された50g/m2目付けのメッシュ状のスパンレース不織布を用いて、この柔軟難燃性基材2上に電極3として、0.03Ω/cm以下の抵抗値を有する錫メッキ撚り銅線を一対として左右対称に糸で部分的に縫い付けて配置している。そして、この一対の電極3が配置された柔軟難燃性基材2上に、カレンダー加工により抵抗体組成物4のフィルム4を作成し、電極3と柔軟難燃性基材2に抵抗体組成物4を熱融着させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の面形状を持つ器具に装着可能な柔軟性を有し、加えて、高い信頼性とPTC特性とを有する抵抗体組成物、及びそれを用いた発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱体の発熱部には、ベースポリマーと、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散して抵抗体インクとして、これを基材に印刷・乾燥して通電により発熱する抵抗体組成物を用いている。特にベースポリマーとして結晶性樹脂を用いてPTC特性を持たせたものが多い。
【0003】
具体的には、図7,8に示すように、面状発熱体は、ポリエステルフィルムなどの電気絶縁性の基材50上に、銀ペースト等の導電性ペーストを印刷・乾燥して得られる一対の櫛形状電極51,52と、これにより給電される位置に配置され、高分子抵抗体インクを印刷・乾燥して得られる高分子抵抗体53とで構成されていた。
【0004】
さらに、基材50と同様の材質の被覆材54で櫛形状電極51,52及び高分子抵抗体53を被覆して保護するようにしていた。
【0005】
図9に示すように、基材50及び被覆材54としてポリエステルフィルムを用いる場合には、被覆材54に例えば変性ポリエチレン系の熱融着性樹脂55を予め接着しておき、熱を与えながら加圧する(熱時加圧)ことにより、基材50と被覆材54とを熱融着性樹脂55を介して接合する。
【0006】
これにより、櫛形状電極51,52、及び高分子抵抗体53は外界から隔離され、長期信頼性を付与されるのである。
【0007】
前記した熱時加圧の手段としては、2本の加熱ロール56、57からなるラミネーター58が一般的である(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0008】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(Positive Temperature Coefficient)を意味しており、このPTC特性を有する高分子抵抗体53は、自己温度調節機能を有する面状発熱体を提供できる。
【0009】
また、抵抗体組成物をインクとしてではなく、結晶性樹脂をベースポリマーとして、これにカーボンブラックやグラファイトなどの導電性物質を混練して作製された混練物を電極ケーブルとともに押し出し成型して形成したものもある。これらは凍結防止用ヒータとして用いられている。
【特許文献1】特開昭56−13689号公報
【特許文献2】特開平6−96843号公報
【特許文献3】特開平8−120182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、ポリエステルフィルムなどの剛直な電気絶縁性の基材50に印刷した櫛形状電極51,52、及び高分子抵抗体53を同じく電気絶縁性の被覆材54で保護する多層構造で、基材50や被覆材54の材質やその厚さによっては柔
軟性に欠け、この面状発熱体を、例えば自動車用座席装置の暖房用ヒータに用いられた場合には、着座感が低下し、また、ハンドルヒータに用いられた場合には手触り感が損なわれるといった問題があった。
【0011】
抵抗体組成物をインクとして作製したものは、塗布量調整により数十ミクロンメートル程度の薄膜状に発熱部を形成できるので、抵抗体組成物そのものの柔軟性を発揮することは容易である。
【0012】
しかしながら、インク状の抵抗体組成物を塗布する面としては、平滑で含浸することがなく、かつ腰のあるポリエステルフィルムなどの電気絶縁性基材を用いる必要があり、このことが柔軟性を損ねる結果となっていた。
【0013】
また、発熱体として、高価な導電性ペーストを櫛型電極として多量に用いる必要があるとともに、複雑な多層構成となるので、コストが高いという欠点を有していた。
【0014】
一方、押し出し成型に用いる抵抗体組成物では、インクに供するものに比べてミリメートル単位の厚肉となり、柔軟性に欠けるとともに、電極ケーブル間が近接した構成となり面状発熱体と言えるものではなかった。
【0015】
Tダイ押し出し加工やカレンダー加工などの薄肉成型法もあるが、これらの加工法に適した抵抗体組成物の提案はされていない。
【0016】
上記従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、インクにすることなく、薄肉成型可能な抵抗体組成物を提供して、柔軟性と器具に装着した際の面状発熱体の使用感と信頼性を向上させるとともに低コスト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の抵抗体組成物は、少なくとも結晶性樹脂組成物と、異なる2種類以上の導電体と、難燃剤と、カップリング剤と、有機過酸化物とからなるものである。
【0018】
この構成により、難燃性と、カップリング剤による導電体と結晶性樹脂組成物との結びつき強化と有機化酸化物により結晶性樹脂組成物の架橋による耐熱性向上とにより高い信頼性を付与できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の抵抗体組成物によれば、薄肉成型可能なものとして、柔軟性と器具に装着した際の使用感と信頼性を向上させるとともに、低コスト化をも図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の抵抗体組成物は、少なくとも結晶性樹脂組成物と、異なる2種類以上の導電体と、難燃剤と、カップリング剤と、有機過酸化物とからなるものである。
【0021】
したがって、難燃性と、カップリング剤による導電体と結晶性樹脂組成物との結びつき強化と有機化酸化物により結晶性樹脂組成物の架橋による耐熱性向上とにより高い信頼性を付与できる。
【0022】
また、結晶性樹脂組成物と導電体と難燃剤とカップリング剤からなる混練物を有機化酸化物で架橋してなる。
【0023】
この構成により、カップリング剤と有機化酸化物を段階的に作用させることにより、カップリング剤および有機化酸化物の効果的な作用を引き出すことが出来る。
【0024】
また、結晶性樹脂組成物として、異なる融点を有する結晶性樹脂、及び低分子量結晶組成物を組み合わせて用いてなる。
【0025】
この構成により、設計発熱温度に見合う結晶性樹脂とともにそれよりも耐熱性(融点)の高い結晶性樹脂を組み合わせて耐熱性を向上させたり、低分子量結晶性組成物を用いることにより急峻な比容積の変化による高いPTC特性を実現できる。
【0026】
また、結晶性樹脂として、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体のいずれか、もしくは組み合わせて用いてなる。
【0027】
この構成により、約100℃以下の飽和発熱温度を有するPTC特性を備えた抵抗体組成物を提供できる。
【0028】
また、低分子量結晶性組成物として、ワックス、界面活性剤のいずれか、もしくは組み合わせて用いてなる。
【0029】
この構成により、結晶性樹脂よりも比容積変化が急峻で高いPTC特性を有する抵抗体組成物を提供できるとともに、導電体の分散安定化と結晶性樹脂との親和性向上を図ることが出来る。
【0030】
また、導電体として、1次粒子形の異なるカーボンブラックと、グラファイトを組み合わせて用いてなる。
【0031】
この構成により、低い抵抗値と高いPTC特性を有する抵抗体組成物を提供できる。
【0032】
また、グラファイトとして、少なくとも粒子径が5〜20ミクロンメートルの球状黒鉛を用いてなる。
【0033】
この構成により、高いPTC特性と高い熱伝導性を有する抵抗体組成物を提供できる。
【0034】
また、難燃剤として、常温で液状、または混練温度以下で融解して液状となるものであって、リン系、窒素系、シリコーン系を単独、もしくは組み合わせて用いてなる。
【0035】
この構成により、難燃性を発揮するとともに、PTC特性を補填する作用を有する。
【0036】
また、本発明の発熱体は、少なくとも柔軟難燃性基材と、前記柔軟難燃性基材上に配置された少なくとも一対の電極と、前記一対の電極と電気的に接続され、発熱する前記のフィルム状の前記の抵抗体組成物と、フィルム状の難燃性ホットメルト材と、保護フィルムを備えてなる。
【0037】
この構成により、柔軟性と難燃性と高い信頼性を有する発熱体を提供できる。
【0038】
また、柔軟難燃性基材としてメッシュ状不織布を用いてなる。この構成により、柔軟で難燃性の高い発熱体を提供できる。
【0039】
また、難燃性ホットメルト材が、結晶性を有し、有機溶剤難溶性のポリエステル樹脂と窒素・リン系の粉末難燃剤とからなる。
【0040】
この構成により、難燃性と、死に際が高抵抗化する信頼性の高い発熱体を提供できる。
【0041】
そして、この発熱体を自動車用座席装置の暖房用熱源に使用したものである。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0043】
(実施の形態1)
図1,2において、面状発熱体1は、柔軟難燃性基材2として、例えば、難燃性ポリエステル繊維で作製された50g/m2目付けのメッシュ状のスパンレース不織布を用いて、この柔軟難燃性基材2上に電極3として、0.03Ω/cm以下の抵抗値を有する錫メッキ撚り銅線を一対として左右対称に糸で部分的に縫い付けて配置している。
【0044】
そして、この一対の電極3が配置された柔軟難燃性基材2上に、カレンダー加工により抵抗体組成物4のフィルム4を作成し、電極3と柔軟難燃性基材2に抵抗体組成物4を熱融着させた。
【0045】
さらに、難燃性ホットメルト材5として、結晶性ポリエステル樹脂(商品名「バイロンGM920」、東洋紡績(株)製)75部と粉末難燃剤(商品名「アデカスタブFP−2100J」、旭電化工業(株)製)25部とで構成し、Tダイ押し出し加工で保護フィルム6として5μmのPETフィルムに50μmの厚みで形成したものを抵抗体組成物4に熱融着してなる。
【0046】
本実施の形態では、中央部を打ち抜いて面状発熱体1としている。
【0047】
なお、一対の電極3に電源を供給するためのリード線は省略している。また、中央部の打ち抜きはこの場所に限定するものではなく、座席の表皮材の形態によりこれ以外の場所にも設ける必要がある。
【0048】
この場合、電極3の配線パターンを変更する必要があるが、これにも対応できることは言うまでもない。
【0049】
抵抗体組成物4は、結晶性樹脂として、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(商品名「CG4002」、融点59℃、住友化学(株)製)70部と、エチレン・メタアクリル酸メチル共重合体(商品名「アクリフトWH206」、融点86℃、住友化学(株)製)30部とで構成した。
【0050】
この結晶性樹脂35重量%と、2種類以上の導電体として、カーボンブラック(商品名「プリンテックスL」、1次粒子径21nm、グサ社製)11重量%と、カーボンブラック(商品名「#10B」、1次粒子径79nm、三菱化学(株)製)22重量%と、グラファイト(商品名「CGB−15」、球状黒鉛、日本黒鉛(株)製)22重量%と、難燃剤(商品名「レオフォスRDP」、リン酸エステル系液状難燃剤、味の素(株)製)13重量%とワックス、ソルビタンステアレート、樹脂改質材(商品名「メタブレンA−3000」、アクリル変性PTFE)とからなる。
【0051】
この面状発熱体1は、図3,4に示したように、座席暖房用の熱源として自動車座席で装置の座部7、及び背もたれ部8に取り付けて使用される。
【0052】
前記座部7、及び背もたれ部8の吊り込み部(図示せず)に対応するために中央部や周縁部に吊り込むための耳部(電気絶縁性基材の延長部)が設けられるが、ここでは省略している。
【0053】
また、このような面状発熱体1を装着した座部7及び背もたれ部8は、一般的に座席に腰掛けた人体による荷重がかかった時に変形し、荷重がかからなくなると復元するウレタンパット等の座席基材9と座席表皮10を備えており、したがって、座部7及び背もたれ部8の座席基材9上に取り付けられる薄い面状発熱体1も、前記した座部7及び背もたれ部8の変形に対応して相似の変形をしなければならない。
【0054】
そのために、種々の発熱パターンの設計、そのための電極3の配置形状を変更する必要があることは言うまでもないが、ここでは省略している。
【0055】
電極3は、相対向するように幅の広い一対(電気的に正側と負側)の主電極3a、3bを面状発熱体1の長手方向の外側部沿って配設され、これに重なるように配設した抵抗体組成物4に主電極3a、3bより給電することで、抵抗体組成物4に電流が流れ、発熱する。
【0056】
上記実施の形態において、抵抗体組成物4はPTC特性を有し、温度が上昇すると抵抗値が上昇し、所定の温度になるように自己温度調節機能を有するようになり、温度コントロールが不要で安全性の高い面状発熱体1としての機能を有するようになる。
【0057】
また、自動車用座席装置に組み込まれるものとしては、着座感や難燃性を満足することができる。
【0058】
着座感は、紙のような音鳴り感がなく、座席表皮材と同等の伸び特性、すなわち、5%の伸びに対して7kgf以下の荷重であることで満足できる。
【0059】
また、PTC特性を有する面状発熱体として速熱性と省エネ性を、従来のチュービングヒータを発熱体とするものに比べて発揮することができる。
【0060】
チュービングヒータを発熱体とするものは、温度制御器を必要として、ON−OFF制御で通電を制御して発熱温度を制御している。
【0061】
ON時のヒータ線温度は約80℃まで上昇するため、座席表皮材とはある程度の距離をおいて配置する必要があるのに対して、本実施の形態の面状発熱体では、発熱温度が40℃〜50℃の範囲に自己制御されるので、座席表皮材近傍に近接して配置することができるものである。
【0062】
発熱温度が低く、座席近傍であることより、速熱性と外部への放熱ロスを低減できることによる省エネ性を実現できる。
【0063】
また、柔軟難燃性基材2に難燃性不織布を用いて、また、抵抗体組成物4に難燃剤を配合することで難燃性を実現できる。
【0064】
難燃性は、面状発熱体1単品での自動車用内装材難燃規格FMVSS302規格(水平着火で不燃性はもとより自己消火するものや、標線間の燃焼速度が80mm/min以下であれば適合する)を満足する必要があり、少なくとも難燃剤の充填量が10重量%以上あれば適合できることを確認した。
【0065】
本実施の形態で得た面状発熱体1を、80℃炉中放置試験、150℃炉中放置試験、−20℃と50℃のヒートサイクル試験を実施した。
【0066】
その結果、それぞれ、500時間、200時間、200回後も抵抗値変化率はいずれも初期の30%以内であった。
【0067】
この要因としては、カップリング剤による導電体、特にカーボンブラックと樹脂との結ぶ付き強化と、有機化酸化物による樹脂間の架橋構造構築による耐熱性向上が寄与していると考えている。
【0068】
また、優れたPTC特性を発揮するために、複数の導電体を組み合わせることと、海島構成とすることを本発明では適用している。
【0069】
そのメカニズムの詳細は現時点では不明であるが以下のように推察している。
【0070】
まず、PTC特性を有する抵抗体組成物とするためには、用いる結晶性樹脂は、その融点が発熱飽和温度以上の近傍にあるものを選択する必要がある。
【0071】
導電体としては、できるだけ少ない添加量で所定の抵抗値を達成することが求められるが、そうした導電体は一般的には導電性カーボンブラックと呼ばれるもので、1次粒子径が約20nm以下でストラクチャー(葡萄の房のように1次粒子の集合体のことをいう。吸油量で相関付けられている)の発達した構造のものであるが、そうした導電性カーボンブラックでは一方で、PTC特性を発現しにくいという欠点を有していた。
【0072】
これは、導電性カーボンブラックではストラクチャーが発達して、結晶性樹脂の温度による比容積の変化(これがPTC特性発現の主因と言われている)によってもストラクチャーの導電パスが切断されにくいことによるといわれている。
【0073】
一方で、1次粒子径の大きいカーボンブラックは優れたPTC特性を有することを発明者らは知見として得ていた。
【0074】
さらに、グラファイトのような導電体は、カーボンブラックに比べるとさらに粒子径が大きく、接点機能が期待できること、これらの複数の導電体を組み合わせることで、厚みが約100ミクロンメートル以下で、面積抵抗が400Ω□以下、体積抵抗が4Ω・cm以下の抵抗を有するとともに、PTC特性のひとつの指標となる20℃の抵抗値の対する50℃の抵抗値の比が1.5以上、20℃の抵抗値の対する80℃の抵抗値の比が5以上の抵抗体組成物とすることができた。
【0075】
こうした低抵抗でありながら優れたPTC特性を発揮できたメカニズムの詳細は不明であるが、結晶性樹脂と複数の導電体を組み合わせたことによる新規な導電パスの形成と、難燃剤を液状としたことで、液体の大きな熱膨張係数を利用することができたことによると考えている。
【0076】
なお、上記実施の形態では、抵抗体組成物として、結晶性樹脂を主として用いたが、さらに柔軟性を付与するために、熱可塑性エラストマーや、メタアクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合物と4フッ化エチレン共重合物との混合物からなる加工助剤や、モンタン酸部分けん化エステルなどのワックス、さらには他のワックス等の可塑剤や分散剤を必要に応じて用いても良いことは言うまでもない。
【0077】
また、導電体の形状としては特に言及しなかったが、球状、不定形以外に、ウィスカーや繊維形状のものと組み合わせても良い。
【0078】
さらに、電極3として、錫メッキ銅線を用いたが、これに限定するものではない。銅・銀合金線、等も用いることができる。
【0079】
(実施の形態2)
図5,6は本発明の実施の形態2を示す。
【0080】
図5,6において、図1,2と相違する点は、柔軟難燃性基材2上に先ず抵抗体組成物4をカレンダー加工によりフィルム状に熱ラミネートした後に電極3を縫製により設けたところである。
【0081】
なお、図1,2と同作用を行う構成については、便宜上同一符号を付し、具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0082】
電極3と抵抗体組成物4との電気的接続をより確実にするために、あらかじめ電極3に別の抵抗体組成物(被覆抵抗体組成物11)を被覆(電極3の周囲に押し出し成型により作製)して作製された被覆電極12を縫製により抵抗体組成物4上に設けて、その後、熱時加圧処理をして電極3と抵抗体組成物4との接続を被覆抵抗体組成物11を介して確実なものとした。
【0083】
この構成においても、実施の形態1と同様、自動車用座席装置の暖房用熱源として面状発熱体1を提供できる。
【0084】
また、実施の形態1例では、電極3の位置が電気絶縁性基材2と高分子抵抗体4との間であるのに対して、本実施の形態では抵抗体組成物4上であるので、電極3、及び被覆電極12の位置の確認が容易であるため、柔軟性を増したり取り付けるための抜き工程を確実に行うことができる。
【0085】
また、後工程での電極3の配置の自由度があるため、抵抗体組成物4を電気絶縁性基材2への貼り合わせ工程を共通化して、種々発熱パターンの面状発熱体1の設計を行うことができる利点を有する。
【0086】
被覆抵抗体組成物11は必ずしもPTC特性を有すものでなくても良い。また、被覆抵抗体組成物11は発熱機能を有する抵抗体組成物4よりも薄膜で形成されるため、その体積抵抗も発熱機能する抵抗体組成物よりも高くても良いことは言うまでもない。
【0087】
また、本実施の形態では、被覆電極12を縫製により固定する場合をしましたが、これに限定するものではない。
【0088】
被覆電極12の被覆抵抗体組成物により抵抗体組成物4上に熱融着により固定しても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明にかかる抵抗体組成物は、柔軟性に富み、信頼性が高く、暖房用発熱体として自動車の座席、ハンドル、その他の部位の暖房に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1における抵抗体組成物を用いた面状発熱体を示す平面図
【図2】図1のX−Y断面図
【図3】同実施の形態1における面状発熱体を取りつけた自動車用座席装置の側面図
【図4】同自動車用座席装置の正面図
【図5】本発明の実施の形態2における抵抗体組成物を用いた面状発熱体を示す平面図
【図6】(a)は図5のX−Y断面図、(b)は(a)の要部の拡大断面図
【図7】従来の面状発熱体を示す平面図
【図8】図7のX−Y断面図
【図9】同発熱体の被覆材の貼り合わせ時の概略構成図
【符号の説明】
【0091】
1 面状発熱体
2 柔軟難燃性基材
3 電極
3 電極
4 抵抗体組成物
5 難燃性ホットメルト材
6 保護フィルム
11 被覆抵抗体組成物
12 被覆電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結晶性樹脂組成物と、異なる2種類以上の導電体と、難燃剤と、カップリング剤と、有機過酸化物とからなる抵抗体組成物。
【請求項2】
結晶性樹脂組成物、導電体、難燃剤、カップリング剤からなる混練物を有機化酸化物で架橋してなる請求項1記載の抵抗体組成物。
【請求項3】
結晶性樹脂組成物として、異なる融点を有する結晶性樹脂、及び低分子量結晶組成物を組み合わせて用いてなる請求項1または2記載の抵抗体組成物。
【請求項4】
結晶性樹脂として、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体のいずれか、もしくは組み合わせて用いてなる請求項3記載の抵抗体組成物。
【請求項5】
低分子量組成物として、ワックス、界面活性剤のいずれか、もしくは組み合わせて用いてなる請求項3記載の抵抗体組成物。
【請求項6】
導電体として、1次粒子形の異なるカーボンブラックと、グラファイトを組み合わせて用いてなる請求項1または2記載の抵抗体組成物。
【請求項7】
グラファイトとして、少なくとも粒子径が5〜20ミクロンメートルの球状黒鉛を用いてなる請求項6記載の抵抗体組成物。
【請求項8】
難燃剤として、常温で液状、または混練温度以下で融解して液状となるものであって、リン系、窒素系、シリコーン系を単独、もしくは組み合わせて用いてなる請求項1または2記載の抵抗体組成物。
【請求項9】
柔軟難燃性基材上に配置された少なくとも一対の電極と電気的に接続して請求項1〜8のいずれか1項記載のフィルム状の抵抗体組成物を配置し、この抵抗体組成物をフィルム状の難燃性ホットメルト材、及び保護フィルムで覆った発熱体。
【請求項10】
柔軟難燃性基材として、メッシュ状不織布を用いてなる請求項9記載の発熱体。
【請求項11】
難燃性ホットメルト材が結晶性を有し、有機溶剤難溶性のポリエステル樹脂と窒素・リン系の粉末難燃剤とからなる請求項9記載の発熱体。
【請求項12】
請求項9〜11いずれか1項記載の発熱体を暖房用熱源として用いた自動車用座席装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129425(P2010−129425A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303991(P2008−303991)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】