説明

押圧ヘッド及び押圧装置

【課題】高さの異なる電気部品を押圧可能な押圧ヘッドを提供する。
【解決手段】本発明の押圧ヘッド10は変形部材20と複数の押圧棒22とを有しており、押圧棒22は変形部材20上に立設されている。押圧棒22の先端が電気部品40に接触すると変形部材20が圧縮され、押圧棒22が移動するので、押圧ヘッド10を移動させて変形部材20の圧縮量が大きくなれば、厚みの薄い電気部品45にも押圧棒22の先端が接触し、押圧される。押圧棒22は横方向には移動しないので、電気部品40、45の位置ずれが起こらず、電気部品40,45と基板30の接続信頼性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押圧ヘッドと、それを用いた押圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気部品と基板との接続には接着剤が広く用いられており、電気部品を基板するために、電気部品を押圧する押圧ヘッドが用いられる。
【0003】
押圧ヘッドは、通常金属やセラミック等の硬質ヘッドが用いられているが、高さの異なる電気部品を同じ基板に接続する場合には、一度の押圧で電気部品の接続を行えないので、その場合はエラストマー等の押圧ゴムを有する弾性体ヘッドを用いる。
【0004】
図10の符号101は弾性体ヘッド110を有する押圧装置を示しており、弾性体ヘッド110は、金属製のヘッド本体111と、ヘッド本体111に取り付けられた押圧ゴム120とを有している。
【0005】
弾性体ヘッド110は硬質ヘッドを用いた場合とは異なり、押圧ゴム120が圧縮変形可能なので、高さの異なる電気部品140、145を一度に押圧して基板130に接続することが可能である。また、ICチップのような電気部品140を実装する場合には、電気部品140を取り囲む接着剤層135(フィレット部分)に混入する気泡(ボイド)の存在が問題になるが、弾性体ヘッド110は電気部品140だけでなくその周囲の接着剤層135にも押し当てられるため、フィレット部分にボイドが発生し難いという利点もある。
【0006】
しかしながら、弾性体ヘッド110を用いて実装する場合、高さの異なる電気部品140、145に対して押圧ゴム120が変形して追従するため、押圧ゴム120に横方向に歪みが生じ、電気部品140、145の位置ずれが起こるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−359264号公報
【特許文献2】特開2005−32952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は位置ずれを起こさずに電気部品を接続可能な押圧ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、接着対象物を被接着対象物に向かって押圧する押圧ヘッドであって、押圧力で変形し、変形状態では復元力を発現する変形部材と、前記変形部材上にそれぞれ立設され、先端で前記接着対象物を押圧する複数本の押圧棒とを有する押圧ヘッドである。
本発明は、変形された前記変形部材上で、前記押圧棒が立設された状態を維持する保持部材を有する押圧ヘッドである。
本発明は、前記保持部材は、リング状の枠体を有し、前記各押圧棒は前記枠体のリングの内側に配置され、前記各押圧棒は前記枠体に対して相対的に移動可能にされた押圧ヘッドである。
本発明は、前記保持部材は複数の筒状体を有する押圧ヘッドである。
本発明は、前記変形部材はエラストマーで構成された押圧ゴムを有し、前記各押圧棒は前記エラストマー上に立設された押圧ヘッドである。
本発明は、前記変形部材は複数個のバネを有し、前記各押圧棒は前記バネ上に立設された押圧ヘッドである。
本発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の押圧ヘッドと、載置台と、前記押圧ヘッドを前記載置台に向かって移動させる移動手段とを有する押圧装置である。
【発明の効果】
【0009】
高さの異なる電気部品を、位置ずれを起こさずに一度に基板に接続可能である。電気部品を基板に押圧する時には、フィレット部も押圧可能なので、フィレット部にボイドが発生しない。従って、本発明の押圧ヘッド及び押圧装置を用いれば、接続信頼性の高い電気装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1の符号1は本発明の押圧ヘッド10を示しており、押圧ヘッド10は台座部12と、保持部材11と、複数本の押圧棒22とを有している。保持部材11はリング状の枠体16と、格子状の仕切部材17とを有している(図2)。
【0011】
台座部12は板状であって、枠体16は台座部12上で台座部12の中心を含む領域を取り囲むように配置されており、変形部材20は台座部12上の枠体16で囲まれた領域に配置されている。
仕切部材17は変形部材20上で枠体16に取り付けられており、変形部材20上の空間を複数に分割している。
【0012】
仕切部材17の格子は、縦方向に伸びる格子子(こうしこ)と横方向に伸びる格子子とで構成されており、仕切部材17で分割された分割空間18は行列状に並んでいる。縦方向に伸びる格子子の間隔は略等しく、横方向に伸びる格子子の間隔も略等しくされており、各分割空間18の大きさは略等しくなっている。
【0013】
分割空間18内部には、上述の押圧棒22が1本乃至複数本ずつ配置されている。各押圧棒22は、下端が変形部材20上に取り付けられ、上端が同一方向に向けられている。ここでは、変形部材20は表面は平坦であり、各押圧棒22はその表面と垂直に立設されている。台座部12の表面と、変形部材20の表面と平行であり、従って、各押圧棒22は台座部12の表面とも垂直になっている。
【0014】
ここでは、各分割空間18に配置された押圧棒22は1本であり、各押圧棒22は同じ太さである。分割空間18の開口の大きさは、押圧棒22の断面積と等しいかわずかに大きく、従って、各押圧棒22の側面は仕切部材17の側面と接触しているか、又は後述するような横方向からの力が加わり、押圧棒22が傾斜しようとしたときには、押圧棒22の側面が仕切部材17の側面に接触する。仕切部材17は枠体16に固定されており、押圧棒22が接触して横方向の力が加わっても仕切部材17は移動しないから、押圧棒22は変形部材20上で立設した状態が維持される。
【0015】
押圧棒22と仕切部材17が接触した場合の摩擦係数は小さく、押圧棒22は仕切部材17と接触した場合であっても軸線方向に移動可能になっている。従って、押圧棒22は仕切部材17と枠体16に対して相対的に移動可能になっている。
【0016】
各押圧棒22の長さは仕切部材17の厚みよりも長く、各押圧棒22の先端は仕切部材17から突き出され、後述するように、押圧対象物を押圧ヘッド10で押圧する時には、押圧棒22の先端が押圧対象物に接触できるように構成されている。
【0017】
ここでは、各押圧棒22の長さはそれぞれ等しくされており、各押圧棒22の先端が同一平面内に位置するので、後述するように、厚みの異なる電気部品を有する押圧対象物に押圧ヘッド10を押し当てる場合、先ず、一番厚い電気部品に押圧棒22の先端が接触し、その電気部品に接触した押圧棒22だけが押圧される。
【0018】
各押圧棒22は金属やセラミック等押圧力によって弾性変形しない非弾性材料で構成され、変形部材20はエラストマー等の弾性材料で構成された押圧ゴムであり、変形部材20は押圧力によって弾性変形可能である。
【0019】
押圧棒22同士は互いに分離され、各押圧棒22はその軸線方向に沿って個別に移動可能に構成されており、変形部材20のうち、押圧された押圧棒22が位置する部分が押圧されて圧縮される。
【0020】
変形部材20は押圧力によって弾性変形可能だから、押圧ヘッド10は押圧対象物に対して更に移動可能であり、押圧ヘッド10を押圧対象物に向かって更に移動させると、圧縮した変形部材20は更に圧縮され、厚みの薄い電気部品にも押圧棒22が接触し、結局、厚みの異なる電気部品全てに押圧棒22の先端が接触する。その状態で更に押圧ヘッド10を押圧対象物に向かって移動させると、全ての電気部品に接触する押圧棒22が押圧される。
【0021】
上述したように、押圧棒22が押圧されると、変形部材20の押圧棒22が位置する部分は圧縮されるが、変形部材20が圧縮される時には復元力が発生し、押圧棒22が押し返される。従って、各電気部品は復元力によって押圧される。
【0022】
電気部品の厚みが異なり、押圧対象物の表面には段差がある場合、その段差の角部分に押圧棒22の先端が接触すると、横方向の力が発生するように押圧棒22の先端がずれるが、上述したように押圧棒22は仕切部材17によって倒れず、立設した状態が維持される。
【0023】
図3の符号1は、上述した押圧ヘッド10を有する本発明の押圧装置を示しており、この押圧装置1は押圧ヘッド10の他に、載置台25と、移動手段28とを有している。
【0024】
図3の符号26は載置台25の押圧対象物が配置される載置面を示しており、押圧ヘッド20は押圧棒22の先端を載置面26に向け、押圧棒22の先端が位置する平面が載置面26と平行になるように移動手段28に取り付けられている。従って、各押圧棒22の先端から載置面26までの距離は略等しくなっている。
【0025】
移動手段28は、載置面26に対して略垂直な方向に押圧ヘッド10を移動させるように構成されており、押圧ヘッド10が移動する時も、各押圧棒22の先端と載置面26との間の距離は略等しいまま維持される。
【0026】
この押圧装置1を用いて、厚みの異なる電気部品を基板に接続する工程について説明する。
図4の符号5は押圧対象物を示しており、押圧対象物5は被接着対象物である基板30と、接着対象物である電気部品とを有している。ここでは、押圧対象物5は厚みの異なる電気部品を有し、図4の符号40は厚い電気部品40を示し、同図の符号45は該電気部品40よりも厚みの薄い電気部品45を示している。
【0027】
基板30は基板本体31を有しており、基板本体31の表面には配線膜が引き回され、配線膜の一部で接続部32が構成されている。
基板30の接続部32が配置された側の表面にはペースト状の接着剤が塗布されるか、フィルム状の接着剤が貼付されて接着剤層35が形成されており、厚い電気部品40と、薄い電気部品45は基板30上の決められた場所に配置され、電気部品40、45の接続端子42、47は接着剤層35を挟んで決められた接続部32上に乗せられている。
【0028】
接着剤層35は電気部品40、45よりも大きく形成され、一部が電気部品40、45からはみ出し、電気部品40、45間に露出している。また、電気部品40、45から接着剤層35がはみ出さない場合であっても、後述する押圧の時には接着剤層35が押圧されて電気部品40、45の外周から一部がはみ出る。
【0029】
この押圧対象物5を、電気部品40、45が配置された側の面を押圧ヘッド10に向けて載置面26に乗せ、後述する押圧時に押圧棒22の間に接着剤層35が入り込まないように、押圧対象物5の上に接着剤層35に対して接着性の低い保護フィルム39を配置する(図5(a))。
【0030】
上述したように、電気部品40、45の厚みは異なるから押圧対象物5の表面には段差が形成されている。
保護フィルム39は樹脂フィルムのような可撓性フィルムで構成されており、保護フィルム39は押圧対象物5の表面の形状に沿って変形するから、保護フィルム39の表面にも押圧対象物5の段差に伴なった段差が形成される。
【0031】
上述したように、押圧ヘッド10は各押圧棒22の先端と載置面26との間の距離が略等しいまま移動するから、移動手段28によって押圧ヘッド10を載置面26に近づけると、厚い電気部品40上で保護フィルム39に押圧棒22の先端が接触し、次いで薄い電気部品45上で保護フィルム39に押圧棒22の先端が接触する(図5(b))。
【0032】
変形部材20は、最も厚い電気部品40と、最も薄い電気部品45の厚みの差以上変形可能な厚さにされており、従って、全ての電気部品40、45が保護フィルム39を介して押圧棒22で押圧される。
【0033】
ここでは、変形部材20が変形可能な量は最も厚い電気部品40の厚さよりも大きくされている。従って、押圧ヘッド10を更に載置面26に近づけると、押圧棒22は電気部品40、45だけでなく、接着剤層35の電気部品40、45を取り囲む部分(フィレット部分)にも押圧される。
【0034】
変形部材20が変形する前は、全ての押圧棒22の先端が枠体16よりも突き出されているが、全ての押圧棒22が押圧対象物5や載置台25に押し当てられて押圧され、軸線方向に移動すると、枠体16の先端が押圧対象物5や載置台25に接触する。
【0035】
ここでは、枠体16の先端は基板30の電気部品40、45が配置された領域よりも外側に接触するようになっており、必要以上の荷重で電気部品40、45が破損されるのを防ぐために、枠体16の先端が接触したところで押圧ヘッド10の移動を停止する(図6(c))。
【0036】
このとき、厚い電気部品40も薄い電気部品45にも押圧棒22の先端が接触して変形部材20が圧縮しており、厚い電気部品40も薄い電気部品45も全て復元力で押圧される。
【0037】
電気部品40、45が押圧されると、電気部品40、45と基板30の間から接着剤層35が押し退けられ、接続端子42、47が接続部32上に直接、又は後述する導電性粒子を介して接触し、電気部品40、45が基板30に電気的に接続される。このとき、上述したフィレット部にも押圧棒22が接触しており、フィレット部は変形部材20の復元力で押圧されるため、フィレット部には空気が入り込まず、ボイドが発生しない。
尚、押圧の際に接着剤層35を昇温させれば、接着剤層35の流動性が高くなるので、小さい押圧力で電気部品40、45が基板30に電気的に接続される。
【0038】
電気部品40、45を押圧する時には押圧棒22の先端は電気部品40,45以外の部分にも押し当てられるため、特に接着剤層35の流動性が高くされていると、押圧棒22の間に接着剤層35が入り込みやすいが、上述したように押圧対象物5上には保護フィルム39が配置されているので、押圧棒22は接着剤層35に直接接触せず、押圧棒22の間に接着剤層35が入り込まない。
【0039】
押圧ヘッド10と載置台25に加熱手段19、29が設けられている。加熱手段19、29は予め通電され、載置台25と押圧ヘッド10は昇温しており、熱伝導によって押圧対象物5が加熱される。
【0040】
接着剤層35は熱硬化性樹脂を含有し、加熱によって硬化する熱硬化性接着剤か、熱可塑性樹脂を含有し、加熱によって接着性を発現する熱可塑性接着剤で構成されている。
【0041】
接着剤層35が熱硬化性接着剤で構成される場合は接着剤層35が熱硬化性樹脂の熱重合温度以上に昇温すると接着剤が硬化し、硬化した接着剤層35で電気部品40、45が基板30に固定される。
【0042】
また、接着剤層35が熱可塑性接着剤で構成される場合は接着剤層35によって電気部品40、45と基板30が接着され、加熱終了後接着剤層35が冷却固化すると電気部品40、45が固化した接着剤層35によって基板30に固定される。従って、電気部品40、45が硬化又は固化した接着剤層35によって機械的に接続される。
【0043】
押圧ヘッド10を押圧対象物5から遠ざかるように移動させ、押圧棒22の先端を押圧対象物5から離し、保護フィルム39を押圧対象物5上から取り除くと、図7に示すような電気装置2が得られる。この電気装置2は基板30に電気部品40、45が電気的に接続されているだけでなく、硬化又は固化した接着剤層35によって機械的にも接続されている。上述したように、押圧の際に電気部品40、45の位置ずれが起こらず、またフィレット部にボイドが発生していないので、この電気装置2の接続信頼性は高い。
【0044】
以上は、保持部材11が枠体16と仕切部材17とを有し、押圧棒22が仕切部材17で分割された分割空間18に配置される場合について説明したが本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
押圧棒22同士の間隔を、押圧棒22が傾斜しようとしたときに隣接する押圧棒22と接触するように狭くし、押圧棒22の束と枠体16との間の距離を、束の最外周の押圧棒22が傾斜しようとしたときに枠体16と接触するように狭くすれば、押圧棒22は互いに隣接する押圧棒22又は枠体16に支えられて倒れないので、仕切部材17が無くても押圧棒22の立設状態が維持される。
【0046】
以上は変形部材20が押圧ゴムである場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図8の符号55は変形部材の他の例を示しており、この変形部材55は複数のバネ56を有している。
【0047】
保持部材57は複数の筒状体58を有しており、各筒状体58は台座部12表面に立設され、各バネ56は筒状体58の内部で下端が台座部12に固定されている。
【0048】
筒状体58の長さはバネ56の長さよりも長く、筒状体58の上端がバネ56の上部空間を取り囲んでいる。その上部空間には押圧棒22が1本ずつ挿入され、押圧棒22の下端がバネ56に取り付けられている。従って、各押圧棒22は筒状体58の内部でバネ56上に立設されている。
【0049】
筒状体58のバネ56の上部空間を取り囲む部分の長さは、押圧棒22の長さよりも短く、押圧棒22の先端は筒状体58から突き出され、押圧対象物5に接触可能になっており、押圧棒22の先端に押圧対象物5が接触して押圧されると、該押圧棒22が取り付けられたバネ56が縮んで押圧部22が軸線方向に台座部12に向かって移動するとと共に、縮んだバネ56が押圧棒22に復元力を与える。
【0050】
この保持部材57では、各筒状体58が押圧棒22の一部を取り囲んでいる。筒状体58の内部空間の断面積は、押圧棒22の断面積と等しいかわずかに大きく、押圧棒22に横方向に力が加わり、押圧棒22が傾斜しようとした時には、押圧棒22の側面は筒状体58の内壁面に接触し、押圧棒22が倒れないようになっている。
【0051】
ここでは、筒状体58は台座部12に固定されており、押圧棒22は筒状体58に接触しても軸線方向に移動可能にされているから、押圧棒22は筒状体58に対して相対的に移動可能になっている。
【0052】
以上は、変形部材55をバネ56で構成し、かつ保持部材57を筒状体58で構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、変形部材55を複数の押圧ゴムで構成し、保持部材57を複数の筒状体58で構成して、1つの筒状体58内部に1つ又は2つ以上の押圧ゴムを配置してもよい。
【0053】
また、変形部材55をバネ56で構成する場合に、枠体16を有する、又は、枠体16と仕切部材17の両方を有する保持部材57で保持部材11を構成してもよい。更に、押圧棒22が倒れる恐れが無い場合には、変形部材20、55が押圧ゴムとバネのいずれの場合も保持部材を設けなくてもよい。
【0054】
以上は、保護フィルム39を介して押圧対象物5に押圧棒22を接触させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接着剤層35の流動性が低く、押圧棒22間に接着剤が入り込む恐れの無い場合には、押圧対象物5に直接押圧棒22の先端を接触させてもよい。
【0055】
押圧棒22は、例えば、軸線と垂直な方向に切断した時の断面形状が正方形又は長方形であり、一辺の長さは50μm以上100μ以下であるが、本発明は特にこれに限定されるものでなく、断面形状が円状や楕円形状のものを用いることもできる。
【0056】
また、図9に示したように、押圧棒22の先端をエラストマー等の弾性材料からなる保護カバー23で覆い、押圧棒22で押圧対象物5を押圧する時には、その保護カバー23を介して押圧対象物5を押圧してもよい。
【0057】
接着剤に用いる熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を1種類以上用いることができ、熱可塑性樹脂としては例えばフェノキシ樹脂、ポリビニルアルコール等を1種類以上用いることができる。
また、熱硬化性接着剤に熱可塑性樹脂を添加させて、接着性を向上させたものを使用することもできる。
【0058】
また上記接着剤に導電性粒子が添加された異方導電性接着剤(ACF、ACP)を使用することもできるし、導電性粒子が添加されていないもの(NCF、NCP)を使用することもできる。
【0059】
加熱手段19、29は載置台25と押圧ヘッド10のいずれか一方だけに設けてもよい。また、載置台25と押圧ヘッド10のいずれにも加熱手段を設けず、外部に配置された加熱手段から赤外線を照射して接着剤層35を加熱してもよい。
【0060】
変形部材20は全ての電気部品40、45が押圧棒22で押圧されるように変形可能であればよい。例えば変形部材20が押圧ゴムを有する場合、その押圧ゴムの厚みは、最も厚い電気部品40の厚みの10倍以上25倍以下であれば、全ての電気部品40、45を押圧可能である。その一例を述べると、最も厚い電気部品(ICチップ)40の厚さが0.4mmの時に、シリコーンゴムからなる押圧ゴムの厚さは10mmである。
【0061】
押圧ゴムを構成する弾性材料は特に限定されないが、一例を述べるとゴム硬度(JIS S 6050に準拠)が40、80のエラストマーが使用可能であった。尚、ゴム硬度がそれぞれ40、60、80のエラストマーについて、測定温度30℃〜240℃の範囲で30℃毎にゴム硬度を測定したところ、ゴム硬度の変化は±2であった。この値は測定誤差範囲と言えるので、ゴム硬度は温度変化による影響を受けない値であることがわかった。
【0062】
押圧ゴムに用いるエラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴムのいずれも用いることができるが、耐熱性、耐圧性の観点からはシリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0063】
保護フィルム39は接着剤層35を構成する接着剤に対して接着性が低いものであれば特に限定されず、例えば、テフロン(登録商標である)のようなフッ素樹脂フィルム、ポリテトラフルオロエチレンをフィルム状に成形したもの、シリコーンゴムをフィルム状に成形したものを用いることができる。
【0064】
また、押圧棒22の先端が押圧対象物5と接触可能であれば、押圧棒22の先端は枠体16の先端から突き出なくてもよく、押圧棒22の先端は枠体16の先端と面一であってもよいし、押圧棒22の先端が枠体16で囲まれた空間内部に位置してもよい。
【0065】
枠体16の形状もリング状に限定されず、押圧棒22の傾斜を防止できるのであればリングに切り込みが1つ以上形成されていてもよい。
基板30の種類は特に限定されず、ガラス基板やガラスエポキシ基板のようなリジッド基板、フレキシブル配線板等種々のものを用いることができる。電気部品40、45の種類も特に限定されず、ICチップ、抵抗素子、コンデンサ等種々のものを用いることができる。また、基板同士の接続に本願の押圧ヘッドを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の押圧ヘッドの一例の断面図
【図2】本発明の押圧ヘッドの一例の平面図
【図3】本発明の押圧装置を示す断面図
【図4】押圧対象物を示す断面図
【図5】(a)、(b):電気部品を基板に接続する工程の前半
【図6】(c):電気部品を基板に接続する工程の後半
【図7】本発明の押圧装置を用いて製造された電気装置の一例を示す断面図
【図8】本発明の押圧ヘッドの他の例の断面図
【図9】押圧棒の先端を示す側面図
【図10】従来技術の押圧ヘッドを説明する断面図
【符号の説明】
【0067】
1……押圧装置 5……押圧対象物 10……押圧ヘッド 11、57……保持部材 16……枠体 20、55……変形部材 22……押圧棒 25……載置台 30……基板(被接着対象物) 40、45……電気部品(接着対象物) 56……バネ 58……筒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着対象物を被接着対象物に向かって押圧する押圧ヘッドであって、
押圧力で変形し、変形状態では復元力を発現する変形部材と、
前記変形部材上にそれぞれ立設され、先端で前記接着対象物を押圧する複数本の押圧棒とを有する押圧ヘッド。
【請求項2】
変形された前記変形部材上で、前記押圧棒が立設された状態を維持する保持部材を有する請求項1記載の押圧ヘッド。
【請求項3】
前記保持部材は、リング状の枠体を有し、
前記各押圧棒は前記枠体のリングの内側に配置され、
前記各押圧棒は前記枠体に対して相対的に移動可能にされた請求項2記載の押圧ヘッド。
【請求項4】
前記保持部材は複数の筒状体を有する請求項2又は請求項3のいずれか1項記載の押圧ヘッド。
【請求項5】
前記変形部材はエラストマーで構成された押圧ゴムを有し、
前記各押圧棒は前記エラストマー上に立設された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の押圧ヘッド。
【請求項6】
前記変形部材は複数個のバネを有し、
前記各押圧棒は前記バネ上に立設された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の押圧ヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の押圧ヘッドと、載置台と、前記押圧ヘッドを前記載置台に向かって移動させる移動手段とを有する押圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−294607(P2007−294607A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119550(P2006−119550)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】